説明

巻取り機

本発明は、複数の糸をボビン(8.1,・・・,8.5)に巻き上げるための、複数の巻取り箇所(1.1,・・・,1.5)を備えた巻取り機であって、ボビンは、回転可能な1つの巻取りスピンドル(6.1,6.2))に互いに並んで保持されており、各巻取り箇所は糸を往復案内するための綾振り手段(4.1,・・・,4.5)と、該綾振り手段に前置されたヘッド糸ガイド(3.1,・・・,3.5)とを有している形式のものに関する。このような形式の巻取り機において、糸の供給時における種々異なった変向にもかかわらず、巻取り箇所において糸張力を均一化するために、走入する糸の変向を案内する、巻取り箇所のヘッド糸ガイドは、該ヘッド糸ガイドに高周波数の振動を励起する少なくとも1つの振動アクチュエータと連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の巻取り機、すなわち複数の糸をボビンに巻き上げるための、複数の巻取り箇所を備えた巻取り機であって、ボビンは、回転可能な1つの巻取りスピンドルに互いに並んで保持されており、各巻取り箇所は糸を往復案内するための綾振り手段と、該綾振り手段に前置されたヘッド糸ガイドとを有している形式のものに関する。
【0002】
このような形式の巻取り機は例えば、EP0845550A1に基づいて公知である。
【0003】
このような巻取り機は、紡糸されたばかりの合成糸を巻き上げるために使用される。合成糸は紡糸装置において互いに平行に並んでポリマ溶融物からそれぞれ多数のフィラメントストランドとして押出し成形され、冷却されかつ結束される。次いで糸は平行に処理装置において有利にはゴデットシステムを介して案内され、最後に巻取り機において平行にボビンに巻き上げられる。糸は溶融紡糸から巻上げに到るまで、互いに異なる間隔をもって案内される。最初、紡糸装置において糸の間にはそれぞれ、紡糸ノズル装置のノズルピッチによって条件付けられた紡糸間隔が保たれている。冷却後に糸は、著しく小さな処理間隔をもって一緒に処理装置を通して案内するために、まとめられる。この処理間隔は巻取り機への入口前まで糸の間において維持される。巻取り機においては、個々の巻取り箇所におけるボビンのボビン幅によって条件付けられた巻取り間隔を、糸の間に維持することが必要である。従って糸群は処理間隔から巻取り間隔へと拡開される。これにより紡糸装置と処理装置との間の移行領域及び処理領域と巻取り機との間の移行領域には、個々の糸の変向もしくは変位を可能にする糸ガイド手段が設けられている。このような変向もしくは変位に際して、糸における物理的な特性を著しく変化させないためには、移行領域において、特に外側において案内された糸に所定の変向角を維持することが必要である。また糸を巻き上げる場合には、糸において摩擦力に基づいて発生する変向が、糸引張り力を高め、ひいてはボビンに糸を巻き上げる場合に巻取り張力に影響を及ぼす、という問題が発生する。
【0004】
それぞれの巻取り箇所において品質的に等価の糸及び等しいボビンを生ぜしめるために、EP0845550A1において提案された巻取り機の構成では、それぞれの糸に、糸張力に影響を及ぼす供給装置が配属されている。この公知の構成では、供給装置は駆動されるローラによって形成されていて、それぞれ位置に関連した履歴を個別に有する各糸において、所定の糸張力を調整することができるようになっている。このようなシステムは有利には、付加的なゴデットガイドを有しない紡糸装置において使用される。糸が処理装置においてゴデットシステムを介して案内される場合には、このような供給装置は付加的な装置構成コストとなる。
【0005】
糸を処理装置から巻取り機に供給するために、従来技術に基づいて公知の他のシステムにおいても、糸の分配は処理間隔からほとんど拡開されることなく行われる。例えばWO2004/074155に開示された巻取り機では、綾振り手段に前置されたヘッド糸ガイドは、変向ローラによって形成されている。この公知の構成では糸は側部に配置されたゴデットによって、巻取り機の一方の端面側から供給されるので、各変向ローラにおいて糸は90°変向される。このような配置形式によって確かに、処理間隔から巻取り間隔への拡開による大きな変位を回避することができるが、しかしながらこの公知の構成には、巻取り箇所への糸の供給時にそれぞれの糸を、ヘッド糸ガイドにおける大きな巻付けによって案内しなくてはならない、という欠点がある。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の巻取り機を改良して、1つの処理装置からの糸の供給とは無関係に、糸群を、可能な限り実質的な糸張力の差異なしに、巻取り箇所に供給することができる、巻取り機を提供することである。
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、走入する糸の変向を案内する、巻取り箇所のヘッド糸ガイドは、該ヘッド糸ガイドに高周波数の振動を励起する少なくとも1つの振動アクチュエータと連結されているようにした。
【0008】
本発明による巻取り機の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0009】
本発明は、ヘッド糸ガイドにおける糸の巻掛けの程度とは無関係に、極めて摩擦の少ない案内が可能であるという点で傑出している。ヘッド糸ガイドの高周波数の振動によって、接触する段階と接触しない段階とが交互に発生する。そして振動の高周波数によって、糸の追従は糸の質量慣性に基づいて不可能になり、その結果振動振幅は糸の案内中に直接的に接触ゾーンと非接触ゾーンにおいて作用する。これによって糸とヘッド糸ガイドとの間における摩擦を、著しく減じることができる。さらにまた、ヘッド糸ガイドのこのような高周波数の振動は、驚いたことに糸の綾振り特性には何ら影響を及ぼさないということが判明した。特に、糸において極めて動的な運動逆転を生ぜしめる綾振り行程反転部において、場合によってはヘッド糸ガイドの振動によって糸へと導入される、不都合な作用が認識されることはなかった。糸へのヘッド糸ガイドの振動の伝達は、振動の高周波数によって回避することができる。
【0010】
本発明による巻取り機には、各巻取り箇所において供給される糸は僅かな摩擦で巻取り箇所に供給される、という特別な利点がある。そしてまた、ヘッド糸ガイドにおける大きな巻掛け角をも、糸における問題になるような糸張力形成なしに実現することができる。
【0011】
ヘッド糸ガイドにおいて糸を、接触状態と非接触状態とを交互に生ぜしめて案内できるようにするためには、±5μm未満の範囲における極めて小さな振動振幅が、極めて効果的であることが判明している。従って本発明の有利な構成では、振動アクチュエータによって各ヘッド糸ガイドにおいて、±5μm未満の範囲における振動振幅が、有利にはヘッド糸ガイドにおける糸巻掛けの方向で生ぜしめられるようにした。糸巻掛けの方向(巻き掛けられた糸がヘッド糸ガイドに当接力を及ぼす方向)において振動を生ぜしめることにより、極めて小さな振動振幅によって、ヘッド糸ガイドと糸とを互いに引き離すことができる。
【0012】
2000〜2600m/分の範囲における糸の通常の巻上げ速度において、糸を刺激することなく有利な案内状態を得るために、本発明の有利な構成では、振動は10〜100kHzの周波数範囲において生ぜしめられる。これによって極めて細い糸番手であっても、糸を刺激することなくヘッド糸ガイドによって案内することができる。
【0013】
可能な限り各巻取り箇所において同一の案内状態を得るために、巻取り機の有利な構成では、ヘッド糸ガイドは互いに間隔をおいて保持条片に配置されており、該保持条片は振動アクチュエータと連結されている。このように構成されていると、すべてのヘッド糸ガイドを同期させて振動励起することができる。
【0014】
機械フレームの内部において振動励起を回避するために、巻取り機の別の構成では、複数の振動アクチュエータが設けられており、各ヘッド糸ガイドにそれぞれ1つの振動アクチュエータが配属されている。これによってさらに、ヘッド糸ガイドにおいてそれぞれ個々に、糸の巻掛けの程度に依存した振動を励起させることができる。
【0015】
振動励起を回避するために、振動アクチュエータは有利には、隣接配置されたヘッド糸ガイドの振動が位相をずらされて生じるように制御される。このようにすると、振動の重なり状態を完全に排除することができる。
【0016】
特に、振動の持続的な負荷時においても確実な運転を可能にするために、巻取り機の有利な構成では、単数の振動アクチュエータ又は複数の振動アクチュエータはそれぞれ、電気的な励起信号を直接的に振動運動に変換する少なくとも1つの圧電素子によって形成されている。
【0017】
糸群が処理装置に配属されたガイド手段によって中央で巻取り機に供給されるような場合に、本発明による巻取り機の特に有利な構成では、偶数の巻取り箇所が設けられており、ガイド手段は、巻取り箇所に対して中央に保持されている。個々の巻取り箇所に対する糸の供給は、各ヘッド糸ガイドにおいて糸の変向を生ぜしめる拡開を必要とする。
【0018】
巻取り箇所と処理装置との間において可能な限り小さな間隔を得ることができるようにするために、本発明による巻取り機の特に有利な構成では、偶数又は奇数の巻取り箇所が設けられており、糸群を案内するための、ヘッド糸ガイドの上に配置されたガイド手段が、巻取り箇所の端部領域に保持されている。このように構成されていると、各ヘッド糸ガイドにおいて、糸を分配するためにほぼ等しい大きさの巻掛けが生ぜしめられ、これによって各巻掛け箇所において供給される糸を、等しい大きさの巻取り張力でボビンに巻き上げることができる。
【0019】
次に図面を参照しながら本発明による巻取り機の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による巻取り機の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示された第1実施形態の正面図である。
【図3】本発明による巻取り機の別の実施形態を示す側面図である。
【図4】図3に示された別の実施形態の正面図である。
【0021】
図1及び図2には、本発明による巻取り機の第1実施形態が示されており、図1には巻取り機の第1実施形態が側面図で示され、図2には正面図で示されている。図面について特に示唆がない場合には、以下の記載は両方の図に対してなされたものである。
【0022】
本発明による巻取り機のこの実施形態は、全部で4つの巻取り箇所1.1,1.2,1.3,1.4を有しており、これらの巻取り箇所は巻取り機において互いに並んで形成されている(図1)。各巻取り箇所1.1〜1.4においてはそれぞれ1つの糸が供給され、1つのボビンが巻成される。巻取り箇所1.1〜1.4の構造は同一に形成されているので、基本的な構造については、操作側において最初に配置された巻取り箇所1.1を参照して記載する。
【0023】
巻取り箇所1.1は綾振り手段4.1を有しており、この綾振り手段4.1によって、供給された糸2.1は綾振り行程内において往復動させられる。綾振り手段4.1は例えば、綾振り糸ガイドが綾振り行程内において往復動する溝付綾振りドラムによって形成されている。しかしながらまた択一的に、綾振り手段を、逆方向に駆動される複数の羽根先端が糸を引出し時に往復動させる羽根式綾振り装置として、構成することも可能である。
【0024】
綾振り手段4.1にはヘッド糸ガイド3.1が前置されており、このヘッド糸ガイド3.1は、いわゆる綾振り三角形の頂点を形成している。ヘッド糸ガイド3.1は、巻取り箇所1.1への走入部を形成しており、これによって糸を、巻取り機の上に前置された処理装置から巻取り箇所1.1に導くことができる。
【0025】
巻取り箇所1.1において糸2.1を巻き上げるために、ボビン巻管9は、駆動される巻取りスピンドル6.1の周囲に固定されている。巻取りスピンドル6.1はこの場合隣接配置されたすべての巻取り箇所1.2,1.3,1.4に亘って延在しているので、各巻取り箇所1.1〜1.4において、供給された糸2.1〜2.4は同時に巻き上げられる。
【0026】
巻取り箇所1.1におけるボビン8.1の表面に糸2.1を供給するために、圧着ローラ5が綾振り手段4.1と巻取りスピンドル6.1との間に配置されている。圧着ローラ5もまた同様に、巻取り箇所1.1〜1.4の全長に亘って延びている。糸2.1は圧着ローラ5の周囲に部分的に巻き掛けられた後で、ボビン8.1の表面に供給される。
【0027】
巻取り箇所1.1〜1.4において、これらの巻取り個所に配属されたヘッド糸ガイド3.1〜3.4は一緒に保持条片11に配置されている。ヘッド糸ガイド3.1〜3.4は、糸2.1〜2.4の糸群を平行に巻取り箇所1.1〜1.4に導くために、巻成間隔に等しい間隔を有している。保持条片11は保持体12の受容部16の内部において可動に保持されかつ案内されている。保持条片11の一端には振動アクチュエータ15が保持体12に保持されており、この振動アクチュエータ15は保持条片11の自由端部と結合されている。振動アクチュエータ15は、高周波数の振動を生ぜしめるための制御装置(図示せず)を介して作動させられ、その結果保持条片11の固定されたヘッド糸ガイド3.1〜3.4は、保持体12の受容部16内において振動運動を実施する。
【0028】
保持体12は機械フレーム10に支持されている。機械フレーム10は、綾振り手段4.1〜4.4、圧着ローラ5及び巻取りスピンドル6.1を受容及び固定するために働く。図示の実施形態では圧着ローラ5はスイング体13を介して機械フレーム10に旋回可能に保持される。巻取りスピンドル6.1は、機械フレーム10に回転可能に保持された巻取りリボルバ7に、片持ち式に支承されている。巻取りリボルバ7は、巻取りスピンドル6.1に対して180°ずらされて第2の巻取りスピンドル6.2を保持しており、これによって巻取り箇所1.1〜1.4への糸の連続的な巻上げを実施することができる。巻取りリボルバ7及び巻取りスピンドル6.1,6.2にはそれぞれ駆動装置(図示せず)が配属されている。
【0029】
図1及び図2に示された本発明による巻取り機の実施形態では、4つの糸2.1〜2.4から成る糸群がガイド手段14を介して巻取り機に供給される。処理装置(図示せず)の一部であるガイド手段14は、図示の実施形態では、駆動されるゴデット18とオーバランニングローラ19とを備えたゴデットユニットによって形成される。ゴデットユニットにおいて糸2.1〜2.4は互いの間に僅かな間隔、いわゆる処理間隔をおいて、案内される。ガイド手段14は巻取り箇所1.1〜1.4に対して中央に配置されていて、糸2.1〜2.4が中央から巻取り箇所1.1〜1.4に向かって拡開するようになっており、これによって糸2.1,2.2は巻取り箇所1.1,1.2の所属のヘッド糸ガイド3.1,3.2には時計回り方向で巻き掛けられ、糸2.3,2.4は巻取り箇所1.3,1.4の所属のヘッド糸ガイド3.3,3.4には逆時計回り方向で巻き掛けられる。偶数の巻取り箇所1.1〜1.4が選択されているので、各ヘッド糸ガイド3.1〜3.4において供給された糸の糸変向が行われる。従ってヘッド糸ガイド3.1,3.2には時計回り方向で、かつヘッド糸ガイド3.3,3.4には逆時計回り方向で糸が巻き掛けられる。
【0030】
糸2.1〜2.4のガイド中に、ヘッド糸ガイド3.1〜3.4においては、図1の両矢印で示すように、保持条片11と振動アクチュエータ15とによって生ぜしめられる高周波数の振動運動が発生する。保持条片11の振動運動は、この場合水平方向であって、すなわちヘッド糸ガイド3.1,3.4における糸巻掛けの方向(糸2.1〜2.4がヘッド糸ガイド3.1,3.4に当接力を及ぼす方向)に向けられている。この場合保持条片はそのために、長手方向において巻取りスピンドルに対して平行に、振動振幅で往復案内される。
【0031】
一方では糸2.1〜2.4をヘッド糸ガイド3.1〜3.4において変化する段階で接触をもって及び接触なしに案内するため、及び他方では走行する糸2.1〜2.4への振動運動の伝達を回避するために、小さな振幅を有する高周波数の振動運動が振動アクチュエータ15によって生ぜしめられる。例えば保持条片11は、最大で±5μm未満の振動振幅で運動する。方法及び糸型式に応じて2000m/分〜6000m/分の範囲に位置するか又は6000m/分を上回る範囲に位置することがある、糸の巻上げ速度に応じて、ヘッド糸ガイド3.1〜3.4を励起する保持条片11の振動は、10〜100kHzの周波数範囲において生ぜしめられる。これによって、極めて小さな糸番手を有する糸でさえも、振動励起を回避することができる。ヘッド糸ガイド3.1〜3.4の高周波数の振動によって、巻掛けの程度にほとんど依存しない、糸2.1〜2.4の極めて摩擦の少ない案内が可能となる。そして糸の本数が多い場合でも、相応に糸が大きく拡開する場合でも、それぞれの巻取り箇所において、糸を巻き上げるために等しい糸緊張を調節することができる。
【0032】
後置された綾振り手段4.1〜4.4によって、巻取り箇所1.1〜1.4のそれぞれにおいて、糸2.1〜2.4は往復敷設され、巻取りスピンドル6.1において綾巻きボビンが巻成される。糸2.1〜2.4の供給載置は圧着ローラ5を介して一緒に、ボビン8.1〜8.4のそれぞれの表面へと行われる。そのために圧着ローラ5は所定の圧着圧で、ボビン8.1〜8.4の表面に保持される。
【0033】
図3及び図4には、奇数の巻取り箇所を備えた本発明による巻取り機の別の実施形態が示されている。図3の実施形態では5つの巻取り箇所1.1〜1.5が示されており、これらの巻取り箇所1.1〜1.5は、図1に示された実施形態の巻取り箇所と実質的に同一に形成されている。従って、以下においては、同一部分に対する説明の重複を避け、差異についてだけ述べる。
【0034】
図3及び図4に示された本発明による巻取り機の別の実施形態では、巻取り箇所1.1〜1.5には、巻取り機の端面側の端部にガイド手段14が配属されている。このガイド手段14はこの場合、1回巻き掛けられたゴデット18によって形成されていて、このゴデット18において糸は案内されている。糸2.1〜2.5の分配はほぼ水平平面から行われており、この水平平面は、ヘッド糸ガイド3.1〜3.5の少し上に配置されている。これによって各ヘッド糸ガイド3.1〜3.5においては約90°の巻掛けが行われる。このような配置形式には、これによって、極めてコンパクトな紡績装置を形成することができ、この紡績装置は該紡績装置のためにただ1つの上位の階層だけしか必要としない、という特別な利点がある。
【0035】
巻取り箇所1.1〜1.5にはヘッド糸ガイド3.1〜3.5が配属されている。各ヘッド糸ガイド3.1〜3.5は、複数の振動アクチュエータのうちの1つと連結されている。例えばヘッド糸ガイド3.1は振動アクチュエータ15.1と直に結合され、ヘッド糸ガイド3.2は振動アクチュエータ15.2と直に結合され、他のヘッド糸ガイド3.3〜3.5についても同じことが言える。振動アクチュエータ15.1〜15.5は保持体12に保持されている。振動アクチュエータ15.1〜15.5の活性化及び制御は、制御装置17を介して行われる。この場合制御装置17を介して振動アクチュエータ15.1〜15.5を個別に振動励起させることも、又は振動アクチュエータ15.1〜15.5をグループ制御することも可能である。従って制御原理の選択に応じて、ヘッド糸ガイド3.1〜3.5に対して振動アクチュエータ15.1〜15.5を介して、同期的に振動運動を励起させることができる。しかしながらまた、ヘッド糸ガイド3.1〜3.5の振動運動を、位相をずらして行うことも可能である。
【0036】
各振動アクチュエータ15.1〜15.5は所属のヘッド糸ガイド3.1〜3.5において、ほぼヘッド糸ガイドの糸巻掛けの方向に向けられた振動運動を生ぜしめる。この振動運動は有利には各ヘッド糸ガイド3.1〜3.5において、±5μm未満の範囲の僅かな振動振幅をもって、10〜100kHzの周波数範囲で実施することができる。振動アクチュエータ15.1〜15.5はそのために有利には、電気的な励起信号を圧電機械式に直に運動へと変換する圧電素子(図示せず)を有している。圧電素子の運転電圧によって振動の振幅が規定される。さらにこのような圧電素子は種々異なった周波数範囲において確実に運転することができる。
【0037】
本発明による巻取り機の実施形態では、ヘッド糸ガイドはいわゆるスリーブ糸ガイドとして示されている。しかしながら基本的には、ヘッド糸ガイドとして糸を巻取り箇所に案内するために、合成糸をガイドするために汎用のすべての糸ガイドエレメントを使用することができる。例えばスリット形状又はロッド形状の糸ガイドエレメントを使用することが可能である。同様にまたヘッド糸ガイドは、半径方向の振動運動によって周囲において振動が励起されるガイドローラとして形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1.1,1.2,1.3,1.4,1.5 巻取り箇所、 2.1,2.2,2.3,2.4,2.5 糸、 3.1,3.2,3.3,3.4,3.5 ヘッド糸ガイド、 4.1,4.2,4.3,4.4,4.5 綾振り手段、 5 圧着ローラ、 6.1,6.2 巻取りスピンドル、 7 巻取りリボルバ、 8.1,8.2,8.3,8.4,8.5 ボビン、 9 ボビン巻管、 10 機械フレーム、 11 保持条片、 12 保持体、 13 スイング体、 14 ガイド手段、 15,15.1,15.2,15.3,15.4,15.5 振動アクチュエータ、 16 受容部、 17 制御装置、 18 ゴデット、 19 オーバランニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸をボビンに巻き上げるための、複数の巻取り箇所を備えた巻取り機であって、ボビンは、回転可能な1つの巻取りスピンドルに互いに並んで保持されており、各巻取り箇所は糸を往復案内するための綾振り手段と、該綾振り手段に前置されたヘッド糸ガイドとを有している形式のものにおいて、
走入する糸の変向を案内する、巻取り箇所のヘッド糸ガイドは、該ヘッド糸ガイドに高周波数の振動を励起する少なくとも1つの振動アクチュエータと連結されていることを特徴とする巻取り機。
【請求項2】
振動アクチュエータによって各ヘッド糸ガイドにおいて、±5μm未満の範囲における振動振幅が、有利にはヘッド糸ガイドにおける糸巻掛けの方向で生ぜしめられる、請求項1記載の巻取り機。
【請求項3】
ヘッド糸ガイドの振動は振動アクチュエータによって、10〜100kHzの周波数範囲において生ぜしめられる、請求項1又は2記載の巻取り機。
【請求項4】
ヘッド糸ガイドは互いに間隔をおいて保持条片に配置されており、該保持条片は振動アクチュエータと連結されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項5】
複数の振動アクチュエータが設けられており、各ヘッド糸ガイドにそれぞれ1つの振動アクチュエータが配属されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項6】
振動アクチュエータは、隣接配置されたヘッド糸ガイドの振動が同位相で又は位相をずらされて生じるように、制御装置によって制御可能である、請求項5記載の巻取り機。
【請求項7】
単数の振動アクチュエータ又は複数の振動アクチュエータはそれぞれ、電気的な励起信号を直接的に振動運動に変換する少なくとも1つの圧電素子を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項8】
偶数の巻取り箇所が設けられており、糸群を供給するための、ヘッド糸ガイドの上に配置されたガイド手段が、巻取り箇所に対して中央に保持されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項9】
偶数又は奇数の巻取り箇所が設けられており、糸群を供給するための、ヘッド糸ガイドの上に配置されたガイド手段が、巻取り箇所の端部領域に保持されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の巻取り機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−525305(P2012−525305A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507607(P2012−507607)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055201
【国際公開番号】WO2010/124730
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】