説明

巻取り装置

本発明は、並列配置された2つのスピンドル支持体(10.1,10.2)を有する巻取り装置に関する。これらの各スピンドル支持体に、片持ち式に突き出して回転可能に支承された、巻管(8)を受容すると同時に複数の糸(1.1,1.2)を複数のボビン(9)に巻取るためのそれぞれ1つの巻取りスピンドル(7.1,7.2)が配置されている。前記巻取りスピンドルは、これらの巻取りスピンドルに対応配置されたスピンドル駆動装置(23,37)によって逆方向に駆動され、この場合、巻取りスピンドル間に、共通の糸供給部(2.1,2.3)が形成されている。巻取りスピンドルの逆の回転方向にも拘わらず、同じ巻取り形状でしかも同じ糸供給を有するボビンを形成するために、巻取りスピンドルが軸受端部に、巻管(8)の一方の巻管端部のためのそれぞれ1つの当接面(17.1,17.2)を有しており、これらの当接面(17.1,17.2)が、隣接し合う2つのストッパ面(8)内に配置されていて、これら2つのストッパ面(8)が互いに間隔(A)を形成している。これによって、巻管におけるボビンの左右非対称配置にも拘わらず、2つの巻取りスピンドルにおいてボビンの鏡面対称的な構成が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列配置された2つのスピンドル支持体を有し、これらのスピンドル支持体に、片持ち式に突き出して回転可能に支承された、巻管を受容すると同時に複数の糸を複数のボビンに巻取るためのそれぞれ1つの巻取りスピンドルが配置されている形式の、請求項1の上位概念部に記載した巻取り装置に関する。
【0002】
このような形式の装置は、国際公開第03/06864号パンフレットにより公知である。
【0003】
この公知の装置においては、複数の糸が同時に、並列配置された2つの巻取りスピンドルにおいてボビンに巻き取られるようになっている。このために、巻取りスピンドルは、それぞれ1つのスピンドル支持体に片持ち式に突き出して、かつ回転可能に配置されている。この場合、巻取りスピンドルは、この巻取りスピンドルに対応配置されたスピンドル駆動装置によって逆回転方向に駆動される。巻取りスピンドル間に、糸供給部と綾振り部材とが配置されている。複数の糸は、複数の巻取りスピンドルにおいてそれぞれ逆回転方向でボビンに巻き取られる。ボビンを受容するために、巻取りスピンドルに巻管が被せ嵌めて緊締されている。このような形式の巻管は、一方の端部領域でキャッチスリットを有しており、このキャッチスリットによって、巻取り開始時に糸がキャッチされ、巻取り開始されるようになっている。複数の糸を巻取る際に、まずキャッチスリットの領域内にいわゆる予備糸が設置され、この予備糸は、続けて行われる作業プロセス内で糸終端部を別のボビンの糸始端部に結びつけるために用いられる。2つの巻取りスピンドルにおいて同じ巻取り方向のボビンを形成するためには、複数の巻管を2つの巻取りスピンドルにそれぞれ異なる向きで保持する必要があるので、予備糸は、一方の巻取りスピンドルでは巻取りスピンドルの軸受端部に向いた側でボビンに巻き取られ、他方の巻取スピンドルでは巻取りスピンドルの自由端部に向いた側でボビンに巻き取られる。これによって、2つの巻取りスピンドルのボビン間のずれが調節され、その結果、種々異なる糸供給を行うことができる。特に、巻取りスピンドルに対応配置された綾振り糸ガイドが、1つの駆動手段によって同時に駆動される綾振り部材を使用する場合、各巻取りスピンドルに対するボビンのずれに基づいて異なった綾振りストロークが形成される、という問題が発生する。これによって、2つの巻取りスピンドルにおいて同じ形のボビンを形成するために、付加的な糸ガイド及び補助装置を設ける必要がある。
【0004】
そこで本発明の課題は、冒頭に述べた形式の巻取り装置を改良して、鏡面対象的に配置されたガイドエレメントにおいて、同じ巻取り方向を有するボビンを簡単な形式で巻取ることができるようにすることである。
【0005】
この課題は本発明によれば、請求項1に記載した特徴を有する巻取り装置によって解決された。
【0006】
本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載された特徴、及びこれらの特徴の組み合わせによって得られる。
【0007】
本発明は、予備糸が一方の端面に止められていることに基づいてボビンが巻管上に左右非対称に保持されていること、つまり、ボビンの中央と巻管の中央との間で軸方向にボビンのずれが形成されるので、巻取りスピンドルに対する予備糸の整列が、巻取りスピンドルにおけるボビンの位置を規定するということに基づいている。本発明による巻取り装置は、2つの巻取りスピンドルにおいて巻管負荷を同じにするというという考え方から離れている。このために、巻取りスピンドルの軸受端部に、巻管の巻管端部のためのそれぞれ1つの当接面が設けられており、この当接面は、互いに隣接し合う2つのストッパ面に配置されている。これら2つのストッパ面間に所定の間隔が保たれているので、巻管は、異なる軸方向位置で相対的に巻取りスピンドルに保持される。この場合、巻取り装置が各巻取りスピンドルにおいてそれぞれ1つだけの巻取り部を有しているか又は複数の巻取り部を有しているかは、重要ではない。複数の巻取り部が形成されている場合、複数の巻管は1本の柱状に、巻取りスピンドルに相前後して被せ嵌められるので、それぞれ巻取りスピンドルの軸受端部における当接面が、巻取りスピンドルにおける巻管の相対位置を規定する。
【0008】
糸供給部、特に綾振り部材において同じ糸供給を維持するために、本発明の実施態様によれば、有利な形式で、前記ストッパ面間の間隔は、同じ巻管を使用した場合に、2つの巻取りスピンドルの巻管に巻き取られたボビンのボビン端部がそれぞれ逆向きになるように、つまり、一方の巻取りスピンドルにおけるボビン端部と他方の巻取スピンドルにおけるボビン端部とが逆向きになるように、設計されている。これによって、2つのスピンドル支持体において複数のボビンの鏡面対称的な配置が得られるので、ボビンの中央に複数の糸の共通の供給面が形成される。
【0009】
この場合、巻取りスピンドルの軸受端部における当接面は、有利な形式で2つのストッパ手段によって形成することができ、これらのストッパ手段は2つの巻取りスピンドルにおいて異なって構成されているか、又は固定されている。ストッパ手段としては、別個のリングエレメントであるか、又は一体成形されたスピンドルフランジであってよい。
【0010】
本発明の特に有利な実施態様によれば、ストッパ面が、巻取りスピンドルの軸受端部によって直接形成されており、この場合、スピンドル支持体は、互いにストッパ面の間隔だけずらして機械フレームに保持されている。これによって、同一に構成された巻取りスピンドル及びスピンドル支持体を使用することができる。糸供給部に対する巻管の相対位置は、機械フレームにおけるスピンドル支持体のずれによって規定される。
【0011】
複数の糸をできるだけ連続的に巻取ることができるようにするために、スピンドル支持体は、回転可能に支承された2つのボビンリボルバによって形成されており、これらのボビンリボルバはそれぞれ2つの巻取りスピンドルを支持している。2つのボビンリボルバのうちの一方に対応配置された巻取りスピンドルが、一方のストッパ面のうちの一方にそれぞれ当接面を有している。
【0012】
本発明による巻取り装置においては、スピンドル駆動装置は、スピンドル支持体に対応配置された摩擦ローラによって形成されているか、又は電動機が対応配置されている、直接駆動される巻取りスピンドルによって形成されている。
【0013】
直接駆動される巻取りスピンドルにおいては、複数の糸は有利な形式で、ボビンの外周面に当接する圧着ローラによって設置される。このような形式の圧着ローラは同時にスピンドル駆動装置を調整するために使用され、この場合、2つの圧着ローラが、一定の回転数で逆方向に回転するように、伝動手段によって互いに接続されている、本発明の巻取り装置の有利な実施態様によれば、2つの圧着ローラのうちの一方の回転速度だけがセンサされるような調整が可能である。
【0014】
複数の糸をボビンに巻き付ける際に糸緊張を調節するために、圧着ローラは有利な形式で、付加的に外部駆動装置によって駆動される。
【0015】
複数の糸を巻取る際にボビンの増大中に変位運動を実施するために、圧着ローラは有利な形式でホルダに堅固に結合されており、該ホルダは、キャリッジ及びキャリッジガイドによって可動に機械フレームに保持されていて、このホルダによって、圧着ローラが巻取りスピンドルに対して相対的に半径方向で変位運動せしめられる。このような形式の変位運動は、有利には摩擦駆動式の巻取りスピンドルにおいても実施することができる。この場合、圧着ローラの代わりに、摩擦ローラがホルダに配置されている。
【0016】
2つの巻取りスピンドル間に形成された糸ガイドによって、綾振り部材を使用することができる。この綾振り部材によって、供給されて来る糸がボビンに巻き付けられる前に往復運動せしめられる。これによって、1つの綾振り駆動装置だけで、互いに向き合う巻取り部において複数の糸を綾振り運動させることができる。しかしながら、2つの別個の駆動装置によって駆動される2つの別個の綾振り部材を設けることもできる。
【0017】
以下に本発明による巻取り装置を図面に示した幾つかの実施例を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1乃至図3は、本発明による巻取り装置の第1実施例のそれぞれ異なる方向で見た概略図、
図4及び図5は、図1に示した実施例の幾つかの駆動思想を示す概略図、
図6及び図7は、本発明による巻取り装置の別の実施例のそれぞれ異なる方向で見た概略図である。
【0019】
図1、図2及び図3には、本発明の第1実施例による巻取り装置のそれぞれ異なる方向で見た概略図が示されている。この場合、図1は本発明の実施例の正面図、図2は側面図、図3は本発明の実施例によるボビンスピンドルの平面図である。以下の説明において特に指摘がなければ、以下の説明はすべての図面に当てはまる。
【0020】
本発明の第1実施例による巻取り装置は2つの巻取り部29.1,29.2を有しており、これらの巻取り部は、1つの機械フレーム12内に並列に配置して構成されている。この場合、巻取り部29.1及び29.2は、中央の左右対称平面を基準にして鏡面対象的に配置されている。右側の巻取り部29.1は、機械フレーム12内に回転可能に支承されたスピンドル支持体10.1より成っている。スピンドル支持体10.1には、第1の巻取りスピンドル7.1と、これに対して180゜ずらして配置された第2の巻取りスピンドル11.1とが、このスピンドル支持体から突き出して保持されている。図示の実施例では、第1の巻取りスピンドル7.1が、複数の糸を巻取るための作業位置にある。第2の巻取りスピンドル11.1は、満管ボビンを空の巻管と交換するための交換位置にある。
【0021】
スピンドル支持体10.1に対して鏡面対称的に、第2の巻取り部29.2には、同じ平面に配置された第2のスピンドル支持体10.2が機械フレーム12内に保持されている。スピンドル支持体10.2は、このスピンドル支持体10.2から突き出す巻取りスピンドル7.2と11.2とを有している。図示の作業状態では、巻取りスピンドル7.2は作業位置にあり、巻取りスピンドル11.2が交換位置にある。
【0022】
スピンドル支持体10.2及び10.2は、この実施例ではボビンリボルバ(ボビン用の回転タレット)として構成されている。このボビンリボルバは、機械フレーム12内に回転可能に支承され、保持されている。2つのボビンリボルバ10.1,10.2は逆の回転方向で駆動可能である。回転駆動装置30は、中央の制御装置21に接続されている。ボビン支持体10.1及び10.2に保持された各巻取りスピンドル7.1,7.2,11.1,11.2には、それぞれ1つのスピンドル駆動装置が対応配置されている。図2には、巻取り部29.2の巻取りスピンドル7.2,11.2のスピンドル駆動装置23.2及び31.2が示されている。2つの巻取り部29.1,29.2の巻取りスピンドルのスピンドル駆動装置23.1,23.2,31.1及び31.2は、中央の制御装置21に接続されている(図3)。
【0023】
各スピンドル支持体10.1,10.2の前方には、糸道内にそれぞれ1つの圧着ローラ6.1,6.2が設けられている。この場合、巻取り部29.1内で、圧着ローラ6.1が巻取りスピンドル7.1と協働して、複数の糸1.1がそれぞれ1つのボビン9に巻き取られるようになっている。糸1.1の巻取り中に、圧着ローラ6.1が、巻き取ろうとするボビン9の外周面に当接する。
【0024】
それに応じて、巻取り部29.2内で、圧着ローラ6.2は、作業位置に存在する巻取りスピンドル(この場合7.2)と協働して、第2の糸群が糸1.2からボビンに巻き取られる。この場合も、圧着ローラ6.2が、巻き取ろうとするボビン9の外周面に当接する。
【0025】
圧着ローラ6.1,6.2はホルダ13に回転可能に支承されていて、ホルダ13によって互いに堅固に結合されている。ホルダ13は、圧着ローラ6.1,6.2の前に配置された綾振り部材4を支えている。綾振り部材4は、巻取り部29.1と29.2との間で糸供給の中心平面に配置されていて、各巻取り部29.1,29.2に複数の綾振り糸ガイド5.1,5.2を有しており、これらの綾振り糸ガイドによって、供給された糸1.1,1.2が綾振りストローク内で往復移動運動せしめられる。綾振り部材4は例えば可逆溝付きドラムによって形成されており、この可逆溝付きドラムは、外周面に、綾振り糸ガイド5.1,5.2をガイドするための単数又は複数の溝を有している。
【0026】
ホルダ13の上側には糸ガイド支持体3が設けられていて、この糸ガイド支持体3は、2つのグループのトップ糸ガイド2.1,2.2を支持している。トップ糸ガイド2.1,2.2は、巻取りスピンドル7.1と7.2との間で糸供給部を形成している。この場合、巻取り部29.1に糸ガイド2.1のグループが対応配置されていて、巻取り部29.2に糸ガイド2.2のグループが対応配置されている。
【0027】
ホルダ13は、キャリッジ15及びキャリッジガイド14.1,14.2によって垂直方向で可動に機械フレーム12に保持されている。この場合、キャリッジ15は、力センサ32によってキャリッジガイド14.1,14.2内で保持されていて、圧着ロータ6.1,6.2がそれぞれ所定の当接力で、糸群1.1,1.2の複数の糸の巻取り作業中に各ボビン9.1,9.2に当接する。力センサ32は2つの負荷軽減シリンダユニット16.1,16.2によって形成されており、これらの負荷軽減シリンダユニットによって、2つの圧着ローラ6.1,6.2並びにホルダの全重量、及び付加的にホルダ13に取り付けられた構成部分例えば綾振り部材4を支える。装置の両側でキャリッジ15に作用する負荷軽減シリンダユニット16.1,16.2は制御装置21に接続されていて、この制御装置21によって、負荷軽減シリンダユニット16.1,16.2の支持作用が制御され得るようになっている。これによって、複数の糸の巻取り中に、圧着ローラ6.1,6.2とボビン9との間に作用する当接力が、全重量の一部によって規定される。図2及び図3に示されているように、巻取りスピンドル7.1,11.1並びに7.2及び11.2の軸受端部にそれぞれ1つの当接面17が形成されており、この当接面17に巻管8の巻管端部が当接する。巻取り部29.1の巻取りスピンドル7.2及び11.2に、それぞれスピンドルフランジ33.2によって当接面17.2が形成されている。この場合、当接面17.2は第1のストッパ面34.2を緊締する。第2の巻取り部29.1において、巻取りスピンドル7.1及び11.1の軸受端部に、スピンドルフランジ33.1によって当接面17.1が形成されている。スピンドルフランジ33.1は同様に構成されているので、当接面17.1が第2のストッパ面34.1を形成している。ストッパ面34.1と34.2との間に、図3に符号Aで示された間隔が形成されている。これによって巻管8は、巻取りスピンドル7.1,11.1及び7.2,11.2においてそれぞれ異なる相対位置で保持されている。
【0028】
時計回り方向で駆動される巻取りスピンドル7.1又は11.1を有する巻取り部29.1においても、また逆時計回り方向で駆動される巻取りスピンドル7.2若しくは11.2を有する巻取り部29.2においても、同じ巻取り方向を有するボビン9形成するために、巻取りスピンドル7.1及び11.1において、巻管8は、それぞれ1つのキャッチスリット35を有する掴み領域が自由なスピンドル端部側に向けられるように、整列され緊締されている。これに対して、巻取りスピンドル7.2及び11.2における巻管8は、掴み領域が軸受端部側に向いて被せ嵌められている。
【0029】
巻取りスピンドル11.1で巻き取られたボビン9においては、巻取りプロセスの開始時に巻管8の外周面に設置された予備糸36が、自由なスピンドル端部に向けられた、ボビン9の側に位置している。これに対して、第2の巻取り部における巻取りスピンドル7.2では、予備糸36が、ボビン9の軸受端部に向いた側に巻き付けられる。これによって2つの巻取り部29.1,29.2では、逆の巻取り方向にも拘わらずそれぞれ、同じ巻取り方向を有するボビンが形成される。
【0030】
図3に示されているように、ストッパ面34.1と34.2との間の間隔Aは、巻管8にボビン9が左右非対称に巻き付けられることに基づく、2つの巻取り部29.1と29.2との間のボビンのずれが、完全に補償されるように、設計されている。これによって、2つの巻取り部29.1及び29.2のボビン9は互いに鏡面対称的に向き合うので、糸1.1及び1.2の糸供給部は同様に構成されている。従ってトップ糸ガイド2.1と2.2とは鏡面対称的に綾振り部材においてガイドされる。
【0031】
図1乃至図3に示した実施例では、巻取り部29.1及び29.2において、糸群1.1及び1.2の4本の糸がそれぞれ1つのボビン9に巻き取られる。基本的に、同時に巻き取られた糸の数は1例として示されているだけであるので、各巻取り部29.1及び29.2毎に1つ又は複数の糸を巻き付けることができる。しかしながら実際には、このような形式の巻取り装置は、もっぱら複数の糸を巻取るために使用される。
【0032】
巻取りスピンドル7.1及び7.2において巻取り過程を開始するために、圧着ローラ6.1及び6.2は、キャリッジ15及び負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2によって下側位置でガイドされる。糸群の糸1.1及び1.2が巻管8においてキャッチされ、予備糸36が巻かれると、巻取り運動が開始される。ボビン9の巻取り中に、負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2は、ボビン9に所定の当接力が働くように調整され、制御される。この当接力は、有利な形式で糸が巻取りスピンドル7.1及び7.2に巻き取られる間一定に保たれる。このために例えば負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2内の負荷軽減圧力が所定の値に調節され、センサされ、制御装置21を介して制御される。このような形式の圧力調整によって、キャリッジ15の変位運動も有利な形式で制御される。
【0033】
糸群1.1,1.2の複数の糸の巻取り中に、ボビン9.1及び9.2の増大に基づいて必要な変位運動は、この実施例では基本的に可動に保持されたキャリッジ15によっても、また可動に保持された巻取りスピンドル7.1及び7.2によっても実施される。圧着ローラ6.1及び6.2がホルダ13に定置に配置されていることによって、ボビン9の増大は、キャリッジ15の運動によって同期的に行われる。
【0034】
スピンドル支持体10.1及び10.2の回転駆動装置30は、変位運動を実施するために有利には段階的に又は連続的に駆動される。この場合、2つのスピンドル支持体10.1及び10.2は、伝動手段によって互いに連結されている。
【0035】
本発明による巻取り装置の前記実施例の駆動思想を説明するために、以下に図4及び図5を用いて2つの可能な例について説明する。見やすくするために図4及び図5には、駆動のために必要な、巻取り部29.1及び29.2の部分だけが後ろから概略的に示されている。
【0036】
図4に示した駆動思想では、巻取り部29.1において巻取りスピンドル7.1がスピンドル端部22.1を介してスピンドル駆動装置23.1に連結されている。スピンドル駆動装置23.1には制御器24.1が対応配置されており、この制御器24.1は上位の制御装置21に接続されている。この場合、巻取りスピンドル7.1に巻き取られたボビン9は、破線で示されている。ボビン9の外周面には、自由に回転可能に支承された圧着ローラ6.1が当て付けられており、この圧着ローラ6.1は同様に破線で示されている。圧着ローラ6.1は、ローラ端部18.1を有している。ローラ端部18.1には、回転数センサ20が対応配置されており、この回転数センサ20によって、圧着ローラ6.1の回転速度を検出することができる。回転数センサ20は制御装置21に接続されている。
【0037】
第2の巻取り部29.1では、巻取りスピンドル7.2がスピンドル端部22.2によってスピンドル駆動装置23.2に連結されている。スピンドル駆動装置23.2に制御器24.2が対応配置されており、この制御器24.2は同様に制御装置21に接続されている。巻取りスピンドル7.2の外周面に形成された、同様に破線で示されたボビン9は、第2の圧着ローラ6.2に接触している。第2の巻取り部29.2の圧着ローラ6.2は同様に自由に回転可能に保持されている。この場合、圧着ローラ6.2はローラ端部18.2で以て、伝動手段19を介して第1の巻取り部29.1の圧着ローラ6.1に連結されている。伝動手段19は、この実施例では、ベルト又はチェーンによって機械的に構成されているので、2つの巻取り部の2つの圧着ローラ6.1及び6.2は、同じ回転数で回転する。巻取り部29.1において複数の糸1.1を巻取るために、巻取りスピンドル7.1はスピンドル駆動装置23.1によって時計回り方向で駆動される。圧着ローラ6.1は、巻き取ろうとするボビン9の外周面に当接し、摩擦を介して逆回転方向で駆動される。
【0038】
糸1.2をボビン9に巻取るために、巻取り部29.2において、巻取りスピンドル7.2がスピンドル駆動装置23.2によって時計回り方向で駆動される。この場合、圧着ローラ6.2はボビン9の外周面に、圧着ローラ6.1の相応の回転数で時計回り方向に回転する。圧着ローラ6.1と6.2との間の回転力伝達は、伝動手段19によって行われる。2つの巻取り部29.1及び29.2は同期的に巻き取られるので、各巻取りボビン7.1及び7.2にボビン9が同様に構成される。
【0039】
糸1.1及び1.2の一定の巻取り速度を得るために、圧着ローラ6.1の回転速度は回転数センサ20によって連続的に検出され、制御装置21に送られる。制御装置21には、圧着ローラ6.1の目標回転数がメモリーされている。検出された圧着ローラ6.1の実際回転数と、メモリーされた圧着ローラ6.1の目標回転数との間の、許容できない差が検出されると、制御信号が発信され、制御器24.1及び24.2に送信される。制御器24.1及び24.2は、所望の形式で圧着ローラ6.1において変えられた実際回転数が得られるように、スピンドル駆動装置23.1及び23.2の駆動回転数を変える。これによって意図1.1及び1.2の全巻取り作業中にボビン9の一定の周速度が調節される。この場合、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、有利な形式で非同期モータによって形成される。
【0040】
図5に示した実施例は、図4に示した実施例とほぼ同じである。この場合、圧着ローラ6.1及び6.2は外部駆動装置25によって駆動される。外部駆動装置25は、この場合、電動機28.1及び28.2並びに所属の制御器27によって形成されている。これによって、圧着ローラ6.1及び6.2の電気的な連結部が外部駆動装置25と組み合わされる。
【0041】
しかしながらまた、圧着ローラ6.1及び6.2を伝動手段に連結して、1つの電動機だけによって駆動することも可能である。
【0042】
図4に示した実施例に対して、巻取りスピンドル7.1及び7.2はそれぞれスピンドル駆動装置23.1及び23.2によって駆動される。この場合、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、非同期モータ又は同期モータとして構成されていてよい。スピンドル駆動装置23.1及び23.2には制御器24が対応配置されている。制御器24は制御装置21に接続されていて、回転数センサ20と共に、ボビン9の周速度を一定に保つための調整回路を形成している。
【0043】
図6及び図7には、本発明による巻取り装置の別の実施例を異なる方向から見た概略図が示されている。図6は正面図、図7は巻取り装置の互いに並んで配置された巻取りスピンドルの概略的な平面図である。特に指摘がなれば、以下の説明は両方の図面に当てはまる。
【0044】
図6及び図7に示した実施例は2つの巻取り部29.1及び29.2を有しており、これらの巻取り部は、機械フレーム12内に並んで構成されている。この場合、巻取り部29.1及び29.2は互いに並んで鏡面対称的に配置されている。巻取り部29.1内において第1の巻取りスピンドル7.1が、片持ち式に突き出して定置のスピンドル支持体10.1によって回転可能に保持されている。スピンドル支持体10.1は機械フレーム12に固定されている。水平方向に隣接して第2の巻取り部29.2内では、第2のスピンドル支持体10.2が同様に機械フレーム12に固定されていう。スピンドル支持体10.2には第2の巻取りスピンドル7.2が片持ち式に突き出して回転可能に支承されている。各巻取りスピンドル7.1及び7.2は、ボビン9を受容するための巻管8を有している。
【0045】
図7に示されているように、巻取りスピンドル7.1の軸受端部には当接面17.1が形成され、巻取りスピンドル7.2には当接面17.2が形成されている。これらの当接面17.2及び17.2は、互いに間隔Aを保っている隣接し合う2つのストッパ面34.1,34.2に位置している。当接面17.1及び17.2は、巻取りスピンドル7.1及び7.2の軸受端部によって直接的に形成されている。このために、スピンドル支持体10.1は、スピンドル支持体10.2よりもやや大きく機械フレーム12から突き出している。これによって、スピンドル支持体10.1とスピンドル支持体10.2との、機械フレーム12から突き出す長さの差が、ストッパ面34.1とストッパ面34.2との間の間隔Aを規定する。ストッパ面34.1と34.2との間隔Aは、2つの巻管8に形成された2つのボビン9のボビン端部が互いに向き合う位置にくるように、設計されている。この場合、巻管8における予備糸36は、巻取りスピンドル7.1では自由端部に巻き付けられ、また巻取りスピンドル7.2では軸受端部に巻き付けられている。
【0046】
図6に示されているように、巻取りスピンドル7.1及び7.2にそれぞれ1つの摩擦ローラ37.1及び37.2が配属(対応配置)されている。これらの摩擦ローラ37.1,37.2は駆動されているので、巻取りスピンドル7.1及び7.2若しくはボビン9は、糸1.1及び1.2を巻取るために摩擦によって駆動される。摩擦ローラ37.1及び37.2はホルダ13に取り付けられている。ホルダ13は、キャリッジ15及びキャリッジガイド14.1及び14.2を介して機械フレーム12において高さ調節可能にガイドされている。キャリッジ15には負荷軽減シリンダユニット16.1及び16.2が作用するようになっており、これによって、一方では摩擦ローラ37.1及び37.3とボビン9との間で必要な当接力が得られ、他方ではボビン9の増大中に必要な、巻取りスピンドル7.1及び7.2に対して相対的な摩擦ローラ37.1及び37.2の変位運動が実施される。この場合、キャリッジ15を調節するための摩擦は、図1〜図3に示した前記実施例とほぼ同じであるので、前記説明が参照される。
【0047】
ボビンスピンドル7.1と7.2との間における糸供給を可能にするために、ホルダ13の上側にトップ糸ガイド2.1及び2.2が配置されている。トップ糸ガイド2.1及び2.2と摩擦ローラ37.1及び37.2との間に綾振り部材4が配置されており、この綾振り部材4は、糸1.1及び1.2の糸道内に突入する綾振り糸ガイド5.1及び5.2を有していて、この綾振り糸ガイド5.1及び5.2によって、糸1.1及び1.2が綾振りストローク内で往復運動せしめられるようになっている。
【0048】
図6及び図7に示した本発明による巻取り装置の実施例では、各巻取りスピンドル7.1及び7.2においてそれぞれ1本の糸が1つのボビンに巻き取られるようになっている。しかしながら、このような形式の巻取り装置を、1つの巻取りスピンドルにおいて複数の糸を巻取るように構成することもできる。図1から図3に示した前記実施例に対して、図6及び図7に示した実施例のものは、一部自動的な巻取り装置に関するものである。この場合、完全に巻き取られたボビンが得られた後で、ボビン交換のために巻取り過程が中断される。巻取り完成されたボビンが空の巻管と交換された後ではじめて、新たな巻取り過程が開始される。この場合も、2つの巻取り部において、同じ巻取り方向のボビンが形成される。
【0049】
本発明による巻取り装置は、特に紡糸されたばかりの新しい糸を巻取るために適している。この場合、糸は紡績装置又は処理装置から引き出される。巻管をずらして緊締することによって、それぞれ共通の糸道平面内で複数の糸を2つの巻取り部に供給することができるので、付加的な変位運動は必要ない、という利点を有している。また、巻取り装置内の糸ガイド手段、例えばトップ糸ガイド及び綾振り部材を、2つの巻取り部において同一に構成することができる。
【0050】
本発明による巻取り装置は、図1乃至図7に示した、個別装置の配置だけに限定されるものではない。基本的に、特に巻取り部内で圧着ローラを、振動によって巻取りスピンドルに対して半径方向で可動に保持することができる。巻取りスピンドル及び圧着ローラの保持は、主に変位運動を実施するためだけのために必要である。同様に、複数の糸をボビンに巻取る前に綾振りするために、各巻取り部に別個の綾振り部材を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による巻取り装置の第1実施例の正面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本発明による巻取り装置のボビンスピンドルの平面図である。
【図4】1実施例による巻取り部29.1及び29.2を後ろから見た概略図である。
【図5】別の実施例による巻取り部29.1及び29.2を後ろから見た概略図である。
【図6】別の実施例による巻取り装置の概略的な正面図である。
【図7】巻取り装置の互いに並んで配置された巻取りスピンドルの概略的な平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1.1,1.2 糸
2.1,2.2 トップ糸ガイド
3 糸ガイド支持体
4 綾振り部材
5.1,5.2 綾振り糸ガイド
6.1,6.2 圧着ローラ
7.1,7.2 巻取りスピンドル
8.1,8.2 巻管
9.1,9.2 ボビン
10.1,10.2 スピンドル支持体
11.1,11.2 非作業位置にある巻取りスピンドル
12 機械フレーム
13 ホルダ
14.1,14.2 キャリッジガイド
15 キャリッジ
16.1,16.2 負荷軽減シリンダユニット
17.1,17.2 当接面
18.1,18.2 ローラ端部
19 伝動手段
20 回転数センサ
21 制御装置
22.1,22.2 スピンドル端部
23.1,23.2 スピンドル駆動装置
24,24.1,24.2 制御器
25 外部駆動装置
26 ベルト駆動装置
27 制御器
28.1,28.2 電動機
29.1,29.2 巻取り部
30 回転駆動装置
31.1,31.2 スピンドル駆動装置
32 力センサ
33.1,33.2 スピンドル支持体
34.1,34.2 ストッパ面
35 キャッチスリット
36 予備糸
37.1,37.2 摩擦ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り装置であって、並列配置された2つのスピンドル支持体(10.1,10.2)を有しており、これらのスピンドル支持体に、片持ち式に突き出して回転可能に支承された、巻管(8)を受容すると同時に複数の糸(1.1,1.2)を複数のボビン(9)に巻取るためのそれぞれ1つの巻取りスピンドル(7.1,7.2)が配置されており、これらの巻取りスピンドル(7.1,7.2)に対応配置された2つのスピンドル駆動装置(23,37)を有していて、これらのスピンドル駆動装置によって巻取りスピンドル(7.1,7.2)が互いに逆方向に駆動されるようになっており、前記巻取りスピンドル(7.1,7.2)の間に形成された糸供給部(2.1,2.2)を有している形式のものにおいて、
巻取りスピンドル(7.1,7.2)が軸受端部に、巻管(8)の一方の巻管端部のためのそれぞれ1つの当接面(17.1,17.2)を有しており、これらの当接面(17.1,17.2)が、隣接し合う2つのストッパ面(8)内に配置されていて、これら2つのストッパ面(8)が互いに間隔(A)を保っていることを特徴とする、巻取り装置。
【請求項2】
前記ストッパ面(34.1,34.2)間の間隔(A)は、同じ巻管(8)を使用した場合に、2つの巻取りスピンドル(7.1,7.2)の巻管(8)に巻き取られたボビン(9)のボビン端部がそれぞれ逆向きになるように、設計されている、請求項1記載の巻取り装置。
【請求項3】
当接面(17.1,17.2)が2つのストッパ手段(33.1,33.2)によって形成されており、この場合、ストッパ手段(33.1,33.2)が巻取りスピンドル(7.1,7.2)にそれぞれ異なって構成されているか、又は固定されている、請求項1又は2記載の巻取り装置。
【請求項4】
ストッパ面(17.1,17.2)が巻取りスピンドル(7.1,7.2)の軸受端部によって形成されており、この場合、2つのスピンドル支持体(10.1,10.2)が互いに、前記ストッパ面(34.1,34.2)間の間隔(A)だけずらして機械フレーム(12)に保持されている、請求項1又は2記載の巻取り装置。
【請求項5】
スピンドル支持体(10.1,10.2)が、回転可能に支承された2つのボビンリボルバによって形成されており、これらのボビンリボルバはそれぞれ2つの巻取りスピンドル(7.1,11.1,7.2,11.2)を支持しており、2つのボビンリボルバ(10.1,10.2)のうちの一方に対応配置された巻取りスピンドル(7.1,11.1,7.2,11.2)が、一方のストッパ面(34.1,34.2)のうちの一方にそれぞれ当接面(17.1,17.2)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項6】
スピンドル駆動装置が、スピンドル支持体(7.1,7.2)に対応配置された2つの摩擦ローラ(37.1,37.2)によって形成されており、これらの摩擦ローラが、巻管(8)又はボビン(9)の外周面に当接していて、巻取り中に一定の回転速度で逆方向に駆動せしめられる、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項7】
スピンドル駆動装置が、巻取りスピンドル(7.1,7.2)に対応配置された複数の電動機(23.1,23.2)によって形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項8】
スピンドル支持体(10.1,10.2)に対応配置された2つの圧着ローラ(6.1,6.2)が設けられており、これらの圧着ローラが、巻取り中に巻管(8)又はボビン(9)の外周面に当接している、請求項7記載の巻取り装置。
【請求項9】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)は、これらの圧着ローラ(6.1,6.2)が一定の回転数で逆方向に回転するように、伝動手段(19)によって互いに接続されている、請求項8記載の巻取り装置。
【請求項10】
圧着ローラ(6.1,6.2)を個別に又は一緒に逆方向に駆動するために、外部駆動装置(25)が設けられている、請求項8又は9記載の巻取り装置。
【請求項11】
圧着ローラ(6.1,6.2)がホルダ(13)に堅固に結合されており、該ホルダ(13)が、キャリッジ(15)及びキャリッジガイド(14.1,14.2)によって可動に機械フレーム(12)に保持されていて、このホルダ(13)によって、圧着ローラ(6.1,6.2)が巻取りスピンドル(7.1,7.2)に対して相対的に半径方向で変位運動せしめられる、請求項8から10までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項12】
糸ガイド(2.1,2.2)に綾振り部材(4)が対応配置されており、該綾振り部材によって、供給されて来る糸(1.1,1.2)が、ボビン(9)上に巻き取られる前に往復運動せしめられるようになっている、請求項1から11までのいずれか1項記載の巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530390(P2007−530390A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505457(P2007−505457)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003135
【国際公開番号】WO2005/095247
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】