説明

巻取ユニット及びそれを備える自動ワインダ

【課題】給糸ボビンから引き出される糸を確実に捕捉して糸継部に導くことができる自動ワインダの巻取ユニットを提供する。
【解決手段】ワインダユニットは、給糸ボビンから引き出される糸を吸引捕捉してスプライサ装置へ導く第1中継パイプ25を備える。また、ワインダユニットは、第1中継パイプ25が有する吸引口32に向けてエアを噴射するセンターノズル81と、吸引口32に発生する吸引流又はセンターノズル81の噴射エアから外れた糸を吸引流に導くようにエアを噴射するフロントノズル82と、を備える。更に、ワインダユニットは前記吸引口32に向けてエアを噴射するバックノズル83を備え、このバックノズル83はセンターノズル81の近傍に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ワインダに関するものであり、詳細には、自動ワインダの巻取ユニットにおいて、給糸ボビンから引き出された糸を捕捉して糸継装置へ導くための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダの巻取ユニットには、従来から、糸切れやクリアラによる糸切断等が発生した際に、パッケージから引き出された上糸と給糸ボビンから引き出された下糸とを糸継ぎする糸継装置が備えられている。この糸継装置へ下糸を導くための構成としては、巻取ユニットに捕捉手段を備え、この捕捉手段の端部で下糸を吸引することにより捕捉し、糸を保持した状態で前記捕捉手段を回動させることによって糸継装置へ導くものが知られている。
【0003】
このような捕捉手段は例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の自動ワインダは、糸供給部から巻取部へ至る経路に設けられた糸継ぎ部と、糸供給部側の糸端を、糸供給部側の糸端捕捉位置で吸引捕捉して上記糸継ぎ部へ案内する糸供給部側糸端吸引捕捉装置と、を備える。また、特許文献1の自動ワインダには、糸供給部側の糸端捕捉位置にある上記糸供給側糸端吸引捕捉装置の吸引口へ噴射エアを吹きつけるための噴射エアノズルが設けられている。特許文献1は、この構成により、糸供給側糸端吸引捕捉装置による吸引保持を失敗することなく確実に行うことができるとする。
【特許文献1】特開2001−310872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成は、噴射エアの空気の流れに乗った糸はそのまま吸引口へと運ばれるものの、空気の流れに乗れなかった糸は異なる方向に弾き飛ばされ、捕捉装置による捕捉に失敗することがあった。また、麻糸や麻混紡の糸等のように剛性の高い糸を巻き取る場合、糸に曲がり癖がついている等の場合には吸引口へ適切に誘導することが困難で、捕捉に失敗することも多かった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、給糸ボビンから引き出される糸を確実に捕捉して糸継部へ導くことができる自動ワインダの巻取ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される自動ワインダの巻取ユニットが提供される。即ち、この巻取ユニットは、給糸ボビンから引き出される糸を吸引捕捉して糸継部へ導く捕捉手段を備える。また、前記巻取ユニットは、前記捕捉手段が有する吸引口に向けてエアを噴射する第1噴射ノズルと、前記吸引口に発生する吸引流又は前記第1噴射ノズルの噴射エアから外れた糸を当該吸引流又は噴射エアへ導くようにエアを噴射する第2噴射ノズルと、を備える。
【0008】
これにより、第1噴射ノズルで糸を吸引口に誘導する一方、吸引口の吸込可能範囲から外れた糸、又は第1噴射ノズルの噴射エアから外れた糸については、第2噴射ノズルによって吸引口又は噴射エアへ導くことができる。従って、捕捉手段による糸の捕捉成功率が向上する。また、剛性の高い糸で曲がり癖が付いているような場合でも、複数の方向からエアが噴射されるので、糸を吸引口に確実に導くことができる。以上により、糸の捕捉に失敗する回数が減るので、糸継作業を含む全体の作業工程のサイクルタイムを短縮できる。
【0009】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記吸引口に向けてエアを噴射する第3噴射ノズルを備え、この第3噴射ノズルは前記第1噴射ノズルの近傍に配置されることが好ましい。
【0010】
これにより、互いに近傍に配置される第1噴射ノズルと第3噴射ノズルとの相乗効果によって、吸引口に向かう気流を広範囲なものとすることができる。
【0011】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記糸を前記吸引口に導くように形成されるガイド部を備えることが好ましい。
【0012】
これにより、糸は、ガイド部に接触して案内されながら、噴射エアによっても吸引口へ誘導される。従って、捕捉手段による糸の捕捉成功率が一層向上する。
【0013】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記ガイド部は板部材で形成されており、前記噴射ノズルの噴射エアを誘導して前記吸引口へ向かう気流を形成することが好ましい。
【0014】
これにより、板部材によって噴射エアの流れを効果的に案内して、吸引口に向かう噴射エアの流れをスムーズに形成することができる。
【0015】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、複数の前記噴射ノズルから選択された一部の噴射ノズルを噴射させることができることが好ましい。
【0016】
これにより、エアを噴射する噴射ノズルを糸種や状況等に応じて選択することで、吸引捕捉を適切に行うことができる。また、捕捉し易い糸種等の場合には最小限の噴射ノズルのみを噴射させることで、無駄な噴射を抑制できる。
【0017】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記噴射ノズル毎に噴射エアの噴射量を調節できることが好ましい。
【0018】
これにより、糸種や状況等によってそれぞれの噴射ノズルの噴射量を調整することで、捕捉率を向上させるとともに無駄な噴射を抑制できる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、前記巻取ユニットを備える自動ワインダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0021】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0022】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0023】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。
【0024】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0025】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ(解舒補助装置)12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(糸継部)14と、クリアラ(糸太さ検出器)15と、を配置した構成となっている。
【0026】
前記ワインダユニット10の下部には、トレー56にセットした状態の給糸ボビン21を適宜のトレー搬送路に沿って搬送できるように構成している。これによって、巻取ユニット本体16の下部に給糸ボビン21を供給して、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。
【0027】
バルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の、芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0028】
また、バルーンコントローラ12近傍には、糸継作業時に発生するビリを防止するためのキンクプリベンタ17が配置されている。このキンクプリベンタ17は回動部とブラシ部31を備え、この回動部の回動は、図2に示すロータリー式のソレノイド55により行われる。糸継作業時には、上述のバルーンコントローラ12を最上端の位置に退避させた状態で、前記回動部が旋回してブラシ部31が給糸ボビン21の上端部分に当接する。これにより、糸継作業時において糸に適切なテンションを付与し、ビリの発生を防止することができる。
【0029】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0030】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0031】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。前記クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0032】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する第1中継パイプ(捕捉手段)25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する第2中継パイプ26と、が設けられている。第1中継パイプ25の先端には吸引口32が形成され、第2中継パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。2つの中継パイプ25,26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0033】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、第1中継パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し(詳細は後述)、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2中継パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、第2中継パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。
【0034】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0035】
以上の構成で、給糸ボビン21がワインダユニット10の下部に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20が前記巻取ボビン22に巻き取られることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0036】
次に図3を参照して、第1中継パイプ25による糸20の捕捉について説明する。図3は、第1中継パイプ25の捕捉位置での噴射手段との配置関係を示した斜視図である。図4は、第1中継パイプ25の吸引口に対する噴射ノズルの配置及びエアの噴射方向を示した平面図である。なお、以後の説明において、ワインダユニット10の正面側及び背面側を、単に「装置正面側」「装置背面側」とそれぞれ称することがある。
【0037】
図3に示すように、本実施形態の中継パイプ25は、先端に吸引口32を備える円筒状のサクションパイプ28と、このサクションパイプ28の先端に回動可能に装着されるクランプ部29を備える。サクションパイプ28には前記負圧源が接続されており、前記吸引口32の近傍に吸引流を発生させることができる。
【0038】
このサクションパイプ28は前述の軸33を中心に回動可能に取り付けられており、下方の捕捉位置と上方の案内位置との間で旋回することができる。前記捕捉位置にある中継パイプ25の先端部近傍には、給糸ボビン21から上方へ引き出される糸の位置を規制するための規制プレート86が水平に向けて配置されている。図3に示すように、規制プレート86は平板状に形成されるとともに、給糸ボビン21から引き出された糸を規制及び案内するための略V字状の切欠き部90を備えている。
【0039】
なお、給糸ボビン21から糸を引き出す方法としては、給糸ボビン21がセットされる前記トレー56の底部から圧縮空気を上方へ噴射することで糸を上方の規制プレート86まで吹き上げる方法等、適宜の方法を採用することができる。
【0040】
この規制プレート86の上面には、センターノズル81と、フロントノズル82と、バックノズル83と、が取り付けられている。更に、前記規制プレート86の上面には、糸に接触することで案内するためのガイド部84が配置されている。
【0041】
前記サクションパイプ28の先端に形成された吸引口32は、中継パイプ25が前記捕捉位置にあるとき、ほぼ水平な横向きとなっている。一方、前記クランプ部29は、サクションパイプ28の先端面に密着して吸引口32を塞ぐ閉鎖位置と、吸引口32を開放する開放位置との間で回動可能に構成されている。前記開放位置では、クランプ部29は図3及び図4に示すようにサクションパイプ28の先端面から離れるように傾き、吸引口32近傍の装置背面側を開放させるようになっている。
【0042】
クランプ部29には図略の付勢バネが取り付けられており、この付勢バネによってクランプ部29は前記閉鎖位置側へ付勢されている。ただし、前記規制プレート86の上面には図略のカム部が備えられており、中継パイプ25が図3及び図4に示す捕捉位置に移動すると、クランプ部29は前記カム部に接触することで前記開放位置に回動するように構成されている。
【0043】
次に、3つの噴射ノズル(センターノズル81、フロントノズル82、及びバックノズル83)について説明する。センターノズル81は、その噴射口を前記吸引口32に略対面させるように、ほぼ横向きに配置されている。センターノズル81は、吸引口32及びその周辺(吸引口32の吸込可能範囲内)に糸を誘導するようにエアを噴射する。また、前記センターノズル81は、前記開放位置にあるクランプ部29の開放側から吸引口32に向かうエアを噴射できるように、図4に示すように噴射口が平面視で若干傾斜している。
【0044】
前記センターノズル81は、上下方向に立ち上げられたガイド部84のガイド壁に固定されている。このように、糸をガイドするための前記ガイド部84は、センターノズル81を取り付けるためのブラケットとしての役割をも果たしており、これによって簡素な構成が実現されている。
【0045】
フロントノズル82は、規制プレート86上において前記センターノズル81よりも装置正面側の位置に配置されており、その噴射口は若干傾斜しつつ装置背面側へ向けられている。また、このフロントノズル82はブラケット88に垂直に取り付けられており、このブラケット88を介して規制プレート86に設けられている。なお、このブラケット88は規制プレート86に対して垂直に備えられる。
【0046】
図4に示すように、フロントノズル82の噴射口は、その噴射方向がセンターノズル81の噴射方向と略直交するように向けられている。また、前述のガイド部84がフロントノズル82の噴射方向に沿うように配置されており、フロントノズル82から噴射された噴射エアの大部分が、ガイド部84に誘導されて前記センターノズル81の噴射口へ向かうように構成されている。
【0047】
バックノズル83は、規制プレート86上において、前記センターノズル81よりも装置背面側に配置されている。また、前記バックノズル83は前記センターノズル81の近傍に配置されている。このバックノズル83は前記フロントノズル82と同様に、ブラケット89を介して規制プレート86に固定されている。
【0048】
バックノズル83の噴射方向は前記センターノズル81と同様に吸引口32に向けられているが、前記センターノズル81の噴射方向よりも更に若干傾斜している。従って、図3及び図4に示すように、センターノズル81からの噴射エアとバックノズル83からの噴射エアの一部が重なるようになっている。また、センターノズル81、フロントノズル82及びバックノズル83の取り付け高さは、各ノズルの噴射エアの噴射口の中心が吸引口32の中心と同じ高さとなるように取り付けられている。このように取り付けることにより、噴射エアの噴射口から吸引口までのエアの流れを作り出すことができる。
【0049】
この構成で、新しい給糸ボビン21が供給される等して糸継作業の必要が生じたときは、前述の吹上げエアによって給糸ボビン21から糸が吹き上げられ、規制プレート86上に糸端が引き出される。このとき、糸は規制プレート86の切欠き部90に入り、前記切欠き部90のガイド作用によって、殆どの場合、サクションパイプ28の吸引口32近傍に案内される。
【0050】
その後、センターノズル81、フロントノズル82及びバックノズル83が作動し、エアが噴射される。これにより、糸が前記吸引口32の吸込可能範囲から外れている場合でも、フロントノズル82の噴射エアによって糸は中継パイプ25の吸込可能範囲に押し出され、吸引口32から吸い込まれて捕捉される。
【0051】
また、センターノズル81の噴射エアの流れ又は前記吸引口32の吸引流から装置背面側に糸が外れている場合でも、バックノズル83の噴射エアによって、糸はセンターノズル81の噴射エアの流れ又は前記吸引流に向けて押し戻される。一方で、センターノズル81の噴射エアの流れ又は前記吸引口32の吸引流から装置正面側に糸が外れている場合でも、フロントノズル82の噴射エアによって、糸はセンターノズル81の噴射エアの流れに向けて押し戻される。このように、サクションパイプ28の吸引口32近傍には、複数の噴射ノズル(センターノズル81、フロントノズル82及びバックノズル83)とガイド部84とによって吸引口32へと向かう気流が生起されているので、糸はこの気流に乗って確実に吸引口32へと導かれる。
【0052】
このように吸引口32で糸を吸引捕捉した後は、軸33を中心として中継パイプ25を上方へ回動させる。この結果、前記捕捉位置から中継パイプ25が上方に移動し、前記カム部はクランプ部29の押動を解除する。従って、クランプ部29は付勢バネの付勢力によって閉鎖位置へ移動し、吸引口32を塞ぐとともに、糸をサクションパイプ28の先端面との間でクランプする。こうして、糸を確実に保持しながら中継パイプ25が案内位置まで回動し、糸をスプライサ装置14まで導いてパッケージ30側の糸と糸継ぎすることができる。
【0053】
なお、3つの噴射ノズル81,82,83は図2に示すように制御弁92に接続されている。この制御弁92はユニット制御部50に接続されており、ユニット制御部50から送信される信号に基づいて、センターノズル81、フロントノズル82及びバックノズル83の噴射の有無及び噴射量を個別に制御できるように構成されている。
【0054】
従って、例えば剛性が小さく捕捉し易い糸の場合は、センターノズル81とフロントノズル82のみを噴射させ、バックノズル83は噴射させないように制御することができる。また、状況によっては、センターノズル81の噴射エアの流量を大きくする一方、フロントノズル82及びバックノズル83の流量を小さくするように制御することができる。あるいは、3つの噴射ノズル流量を同時に大きく又は小さくする制御を行うこともできる。この噴射ノズルの制御は、例えば、前述の機台制御装置等に備えられる操作部をオペレータが操作することで指示することができる。
【0055】
なお、センターノズル81、フロントノズル82及びバックノズル83が噴射するエアの総量は、中継パイプ25のエア吸引量よりも小さくなるように調整されている。これにより、3つの噴射ノズル81,82,83の噴射エアが強すぎることによって吸引口32から糸が弾かれてしまう捕捉ミスを防止できる。また、エアの無駄な噴射が少なくなり、自動ワインダの効率的な運用が可能になる。
【0056】
以上に示すように、本実施形態の自動ワインダのワインダユニット10は、給糸ボビン21から引き出される糸を吸引捕捉してスプライサ装置14へ導く第1中継パイプ25を備える。また、ワインダユニット10は、中継パイプ25が有する吸引口32に向けてエアを噴射するセンターノズル81と、吸引口32に発生する吸引流又はセンターノズル81の噴射エアから外れた糸を前記吸引流に導くようにエアを噴射するフロントノズル82と、を備える。
【0057】
この構成により、センターノズル81で糸を吸引口32に誘導する一方、吸引口32の吸込可能範囲から外れた糸についてもフロントノズル82によって吸引口32へ導くことができる。従って、第1中継パイプ25による糸の捕捉成功率が向上する。また、麻や麻混紡等の剛性の高い糸で曲がり癖が付いているような場合でも、装置の側方及び正面側から噴射エアが噴射されるので、吸引口32に確実に導くことができる。これにより、糸の捕捉に失敗する回数が減るので、糸継作業を含む全体の作業工程のサイクルタイムを短縮できる。
【0058】
また、本実施形態のワインダユニット10は、吸引口32に向けてエアを噴射するバックノズル83を備え、このバックノズル83はセンターノズル81の近傍に配置されるように構成される。
【0059】
この構成により、互いに近傍に配置されるセンターノズル81及びバックノズル83からの噴射エアの相乗効果によって、吸引口32に向かう気流を広範囲なものとすることができる。
【0060】
また、本実施形態のワインダユニット10は、糸を吸引口32に導くように形成されるガイド部84を備える。
【0061】
この構成により、糸は、ガイド部84に接触して案内されながら、各噴射ノズル81,82,83の噴射エアによっても吸引口32へ誘導される。従って、第1中継パイプ25による糸の捕捉成功率が一層向上する。
【0062】
また、本実施形態のワインダユニット10は、ガイド部84は板部材で形成されており、フロントノズル82の噴射エアを誘導して吸引口32へ向かう気流を形成するように構成される。
【0063】
この構成により、図4に示すように、板状のガイド部84によってフロントノズル82の噴射エアの流れを効果的に案内して、吸引口32に向かう気流をスムーズに形成することができる。
【0064】
また、本実施形態のワインダユニット10は、センターノズル81、フロントノズル82、バックノズル83から選択された一部の噴射ノズルを噴射させることができるように構成されている。
【0065】
この構成により、エアを噴射する噴射ノズルを糸種や状況等に応じて選択することで、吸引捕捉を適切に行うことができる。また、捕捉し易い糸種等の場合には、最小限の噴射ノズル(例えば、センターノズル81)のみを噴射させる制御を行うことにより、無駄な噴射を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態のワインダユニット10は、噴射ノズル毎に噴射エアの噴射量を調節できるように構成される。
【0067】
この構成により、糸種や状況によってそれぞれの噴射ノズル81,82,83の噴射量を調整することで、捕捉成功率を向上させるとともに無駄な噴射を抑制できる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0069】
上記実施形態は3つの噴射ノズル81,82,83を備える構成であるが、2つ又は4つ以上の噴射ノズルを配置する構成に変更することができる。例えばバックノズルを省略し、又はフロントノズルを2つ並べて配置する構成が考えられる。また、上記の他にも、噴射ノズルの構成及び配置等を適宜変更することができる。
【0070】
3つの噴射ノズル81,82,83を同時に噴射させずに、例えば噴射の開始タイミング及び終了タイミングをズラして噴射させる構成に変更することができる。
【0071】
上記実施形態のガイド部84は複数備えるように変更することができる。また、前記吸引口32周辺又は前記ガイド部84の上側を覆うようにカバー部材を備えるように変更することもできる。これにより、噴射エアの糸誘導効果を高めるとともに糸の囲い込み効果を増大させ、捕捉率を一層向上させることができる。
【0072】
また、上記実施形態のガイド部84は板状に形成されているが、この構成に代えて、例えば棒状又はブロック状のガイド部に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係るワインダユニットの側面図。
【図2】ワインダユニットの概略的な構成を示す正面図。
【図3】捕捉位置とされた第1中継パイプの吸引口周辺の構成を示した斜視図。
【図4】捕捉位置とされた第1中継パイプの吸引口周辺の構成を示した平面図。
【符号の説明】
【0074】
10 ワインダユニット(自動ワインダの巻取ユニット)
14 スプライサ装置(糸継部)
21 給糸ボビン
25 第1中継パイプ(捕捉手段)
28 サクションパイプ
29 クランプ部(把持部)
32 吸引口
50 ユニット制御部
81 センターノズル(第1噴射ノズル)
82 フロントノズル(第2噴射ノズル)
83 バックノズル(第3噴射ノズル)
84 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから引き出される糸を吸引捕捉して糸継部へ導く捕捉手段を備える自動ワインダの巻取ユニットにおいて、
前記捕捉手段が有する吸引口に向けてエアを噴射する第1噴射ノズルと、
前記吸引口に発生する吸引流又は前記第1噴射ノズルの噴射エアから外れた糸を当該吸引流又は噴射エアへ導くようにエアを噴射する第2噴射ノズルと、
を備えることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記吸引口に向けてエアを噴射する第3噴射ノズルを備え、この第3噴射ノズルは前記第1噴射ノズルの近傍に配置されることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記糸を前記吸引口に導くように形成されるガイド部を備えることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記ガイド部は板部材で形成されており、前記第2噴射ノズルの噴射エアを誘導して前記吸引口へ向かう気流を形成することを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
複数の前記噴射ノズルから選択された一部の噴射ノズルを噴射させることができることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記噴射ノズル毎に噴射エアの噴射量を調節できることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の巻取ユニットを備えた自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155046(P2009−155046A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335375(P2007−335375)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】