説明

巻取紙装着装置

【課題】輪転機の稼働率及び生産性を大幅に向上する。
【解決手段】雌ねじ部材を回転駆動して各アームを回転軸と平行方向に個別に移動することで、一対のアームのそれぞれに設けた巻取紙支持手段によって巻取紙を支持可能な巻取紙装着装置において、雌ねじ部材の回転に対応し、雌ねじ部材ごとにそれぞれの回転量に対応する回転量信号を個別に出力するよう設けた雌ねじ回転量信号出力手段と、各アームのそれぞれについて基準位置を設定可能であるとともに、各アームの、回転軸の軸方向位置を変更するに際してそれぞれの停止位置を入力指定可能であり、かつ、回転量信号に基づいてアームの移動量を算出して基準位置に対するアームの現在位置を検知し、各アームを指定された停止位置まで移動し停止させるアーム停止位置制御部とを設ける。これにより、各アームを回転軸と平行方向の所望の位置に停止可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取紙装着装置に係り、特に、アームの停止位置をアームの位置を変更する都度入力指定可能にするとともに、常にアームの現在位置を検知可能とし、指定した位置にアームを停止可能であるように構成した巻取紙装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、輪転機は、その稼働効率及び生産性の向上のために、異なる幅の巻取紙の処理が可能であることが求められている。
【0003】
紙幅の異なる巻取紙を処理する従来の輪転機には、給紙部における巻取紙の装着装置として、左右の両フレームに支持された回転軸に、その軸方向に沿ってラックを設けるとともに、この回転軸にその軸方向に移動可能にアームを設け、さらにこのアームに前記ラックと係合するピニオンを回転可能に設けたものが公知である(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1に記載された従来の輪転機では、手作業によって各ピニオンを回転操作して、回転軸に平行な方向におけるアームの位置を変更することが行われていた。
【0004】
他方、このような煩瑣な手作業をなくす技術として、下記特許文献2に開示される技術が提案されている。下記特許文献2には、間隔をおいて対向する2つのフレームに、回転軸に相当する装着アーム旋回軸(以下、「回転軸」と記載する。)を回転可能に設け、この回転軸に、複数対のアームを回転軸の軸方向に個別に移動可能に、かつそれぞれを軸方向に対向させて設け、雄ねじ部材を、軸方向に対向する一対の両アームを貫通するように前記回転軸に平行に設け、駆動モーターによって回転駆動される雌ねじ部材を、前記雄ねじ部材にねじ結合させるとともに、アームに回転可能にかつ軸方向に結合させて各アームに設け、さらに、回転軸の軸方向に沿って複数のアームの停止位置を予め定めるとともに、アームに設置された近接センサーで回転軸に設置された検出用ブロックを検出して、前記予め定めた停止位置にアームが到達したのを検出可能であるように構成し、前記予め定めた停止位置にアームが到達したのを検出した検出信号によってアームを予め定めた停止位置に停止するようにした、巻取紙装着装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−24608号公報
【特許文献2】特開2000−309454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲した特許文献2に記載されている巻取紙装着装置は、前記検出用ブロックを回転軸に設ける構成であるため、例えば、新聞4ページ分の幅寸法の巻取紙、新聞3ページ分の幅寸法の巻取紙、新聞2ページ分の幅寸法の巻取紙、新聞1ページ分の幅寸法の巻取紙を使用可能な新聞印刷用輪転機によって新聞を印刷する場合のように、変更される巻取紙の幅寸法が大きく相違する場合には容易に適用可能である。
【0007】
しかしながら、変更される巻取紙の幅寸法の差が最大で200数十ミリメートル程度であって、この間で相違する多くの幅寸法の巻取紙を同一の輪転機で処理可能であることを求められる昨今の輪転機(例えば、商業印刷用輪転機など)では、アームの停止位置を数十ミリメートルより小さな寸法の相違で多数設定する必要があり、検出用ブロックを設置するスペースの確保が極めて困難であるとともに、たとえ検出用ブロックを設置し得たとしても、アームの停止を精度よく行い得るよう、各検出ブロックに対して近接センサーの調整を正確に行う必要があるため、組み付けの際に高いスキルが必要となる上、調整工数が多大になるといった問題があった。したがって、特許文献2に記載されている巻取紙の装着装置の適用は、事実上不可能だった。そこで、当該技術分野においては、これらの問題を解決するための工夫が求められていた。
【0008】
本発明は、前記要求に応えるべくなされたものであって、その目的は、アームの停止位置をアームの位置を変更する都度入力指定可能にするとともに、常にアームの現在位置を検知可能とし、指定した位置にアームを停止可能であるように構成した巻取紙装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る巻取紙装着装置は、間隔をおいて対向する2つのフレームに回転可能に支持された回転軸と、回転軸の軸方向に個別に移動可能であり、かつそれぞれを軸方向に対向させるように、前記回転軸に取り付けられた複数対のアームと、各アームの先端部に対して、軸方向に対向して設けられた巻取紙支持手段と、軸方向に対向する一対の両アームを貫通し、前記回転軸に回転軸と平行に支持された雄ねじ部材と、雄ねじ部材にねじ結合するとともに、対向する各アームに回転可能に、かつ軸方向に結合されて設けられた雌ねじ部材と、雌ねじ部材を個別に回転駆動する雌ねじ駆動用モーターと、を備え、前記雌ねじ部材を回転駆動して各アームを回転軸と平行方向に個別に移動することで、一対のアームのそれぞれに設けた巻取紙支持手段によって巻取紙を支持可能な巻取紙装着装置であって、雌ねじ部材の回転に対応し、雌ねじ部材ごとにそれぞれの回転量に対応する回転量信号を個別に出力するよう設けた雌ねじ回転量信号出力手段と、各アームのそれぞれについて基準位置を設定可能であるとともに、各アームの、回転軸の軸方向位置を変更するに際してそれぞれの停止位置を入力指定可能であり、かつ、前記回転量信号に基づいてアームの移動量を算出して前記基準位置に対するアームの現在位置を検知し、各アームを指定された停止位置まで移動し停止させるアーム停止位置制御部と、を設けることで、各アームを回転軸と平行方向の所望の位置に停止可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る巻取紙装着装置によれば、巻取紙を装着するアームを、処理しようとする巻取紙の幅寸法に対応する所望の停止位置に停止することが可能となり、また、幅寸法の相違が小さな様々な幅寸法の巻取紙を、同一の輪転機で処理することが可能となる。したがって、当該輪転機の稼働率及び生産性を大幅に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る巻取紙装着装置の概略構成を示す一部破断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面構造を概略的に示す断面図である。
【図3】紙幅変更の動作の過程を示したフローチャートであり、特に、アーム原点位置登録の過程を示す図である。
【図4】紙幅変更の動作の過程を示したフローチャートであり、特に、アーム位置設定の過程を示す図である。
【図5】紙幅変更の動作の過程を示したフローチャートであり、特に、アーム位置設定の過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る巻取紙装着装置1の概略構成を示す一部破断面図であり、図2は、図1におけるA−A線に沿った断面構造を概略的に示す断面図である。
【0014】
図1及び図2において、1は巻取紙装着装置、2はアーム停止位置制御部、2aは入力手段、9a、9bはフレーム、5は回転軸、3、4はそれぞれ回転軸5の軸方向で対向する一対のアーム3a、3b又は4a、4bからなる支持アーム対、10a、10b、10a’、10b’はレール、11a、11b、11a’、11b’及び12a、12b、12a’、12b’は移動プレートである。また、18は雄ねじ部材、13は雌ねじ部材、14は従動ギヤー、15は駆動ギヤー、16は雌ねじ駆動用モーター、24はギヤー、25は雌ねじ回転量信号出力手段、26はブレーキ、27はトルクリミッターである。回転軸5は、両端をそれぞれフレーム9a、9bに回転可能に支持されていると共に、図示しない回転駆動手段に連結されている。回転軸5の前記両フレーム9a、9bより内側部分の断面形状は略四角形になっていて、軸直角方向の両側の各辺に2本ずつのレール10a、10a’、10b、10b’が軸方向に平行に設けてある。
【0015】
各辺のレール10a、10a’、10b、10b’には、軸方向に離間する2個ずつの移動プレート11a、11b、11a’、11b’及び12a、12b、12a’、12b’がそれぞれレール10a、10a’、10b、10b’に従って移動可能に装着されている。そして、一方の辺側の軸方向一方の移動プレート11a、11bに支持アーム対3を構成する一方のアーム3aの基端部が、また軸方向他方の移動プレート11a’、11b’に他方のアーム3bの基端部が取り付けられており、他方の辺側の軸方向一方の移動プレート12a、12bに支持アーム対4を構成する一方のアーム4aの基端部が、また軸方向他方の移動プレート12a’、12b’に他方のアーム4bのそれぞれの基端部が取り付けられている。
【0016】
また、各支持アーム対3、4には、対向する一対のアーム3a、3b及び4a、4bの、回転軸5の軸心から同一距離の位置に回転軸5の軸方向に貫通する穴が設けてあり、この各穴に雌ねじ部材13が回転可能に、かつ軸方向に移動しないようにして嵌め合わされている。そして、前記雄ねじ部材18、18は、回転軸5と平行に、かつ、それぞれがアーム3a、3b又はアーム4a、4bに設けた前記雌ねじ部材13、13のそれぞれとねじ連結され、アーム3a、3b又はアーム4a、4bを貫通し、前記回転軸5の前記レール10a、10a’を設けた面及びレール10b、10b’を設けた面のそれぞれに個別に、ブラケット20a、20bを介して回転可能に設けられている。そして、この各雄ねじ部材18、18の一端は、モーター用ブラケット及びブラケット20bを介して回転軸5に支持された雄ねじ駆動用モーター22の出力軸に、トルクリミッター21を介して連結されている。
【0017】
さらに、各支持アーム対3、4の各アーム3a、3b及び4a、4bの開放端側には、回転軸5の軸心から同一距離の位置に、回転軸5の軸方向に対向して巻取紙支持手段が、それぞれ対向内側に支持部23を突出して設けてある。
【0018】
他方、雌ねじ部材13には、従動ギヤー14が雌ねじ部材13と一体で回転可能に取り付けられている。また、各アーム3a、3b及び4a、4bのそれぞれには、ブラケット28を介して雌ねじ駆動用モーター16が設けられ、この雌ねじ駆動用モーター16の出力軸は、トルクリミッター27を介して中間軸に連結されている。この中間軸には、前記従動ギヤー14と噛み合う駆動ギヤー15が取り付けられており、この駆動ギヤー15は、ブラケット28に直接又は何らかのブラケットを介して取り付けられた雌ねじ回転量信号出力手段25(以下、「アブソリュートロータリーエンコーダー25」と記載する。)の入力軸に取り付けられたギヤー24とも噛み合って設けられている。また、中間軸には、ブレーキ26が設けられている。そして、雌ねじ駆動用モーター16、アブソリュートロータリーエンコーダー25及びブレーキ26は、それぞれアーム停止位置制御部2とネット回線で連結されている。
【0019】
次に、以上記載したように構成された巻取紙装着装置1の動作について、図3乃至図5のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
まず、図3を参照して、アーム原点位置登録を説明する。このアーム原点位置登録は、当該巻取紙装着装置1の組み立て時、部品交換に伴って初期設定が必要なとき、又は何らかの事象によって登録してあった原点位置に狂いが生じている可能性があるときに実施する。
【0021】
主電源をONにした後、アーム原点位置登録をしようとする支持アーム対3又は4を、回転軸5の中心からの放射方向位置が巻取紙装着位置になるよう、回転軸5を前記図示しない回転駆動手段により回転させる(ステップS301)。なお、ステップS301は、前記巻取紙装着位置に位置するアーム3a、3b又は4a、4bをアーム原点位置登録の対象とするよう構成した場合に実施されるステップであり、ステップS301に代えて、アーム原点位置登録をしようとするアーム3a、3b又は4a、4bをアーム停止位置制御部2の入力手段2a(以下、操作用グラフィックパネル2aとする)によって指定できるよう構成することも可能である。
【0022】
次いで、前記操作用グラフィックパネル2aの「原点登録モード」ボタンを押し、アーム停止位置制御部2をアーム原点位置登録モードに設定する(ステップS302、ステップS303)。原点登録モードに設定した後、前記操作用グラフィックパネル2aの「アーム強制移動」ボタンを押し、巻取紙装着位置にある支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bに係属する雌ねじ駆動用モーター16を起動し、その出力軸に取り付けられた駆動ギヤー15を回転させる。この駆動ギヤー15の回転により、駆動ギヤー15と噛み合わされた従動ギヤー14とギヤー24が回転される。従動ギヤー14の回転により、これと一体になっている雌ねじ部材13が回転され、ねじ連結された雄ねじ部材18に沿って、ねじ進みにより移動され、これにともない、当該雌ねじ部材13が回転可能かつ軸方向に移動しないようにして嵌め合わされているアーム3a、3b、4a、4bのいずれかが雌ねじ部材13とともに雄ねじ部材18に沿って移動される。当該操作をアーム3a、3b、4a、4bのそれぞれについて個別に行い、各アーム3a、3b、4a、4bを、それぞれについて予め定めた回転軸5の軸方向の所定のアーム原点位置に、正確に位置合わせして停止する(ステップS305)。なお、当該所定のアーム原点位置への正確な位置合わせに際しては、各アーム3a、3b、4a、4bの停止位置がアーム原点位置となるよう適宜の計測機器で正確に計測して各アーム3a、3b、4a、4bの停止位置を正しく定めるか、又は正確に計測してマーキングした停止位置に正しく一致させて停止位置を定める等により行う。
【0023】
各アーム3a、3b、4a、4bを所定のアーム原点位置に停止した後、アブソリュートロータリーエンコーダー25への通電に異常がないこと、及びアブソリュートロータリーエンコーダー25とアーム停止位置制御部2を結ぶ回線上に異常がないことが自動確認され(ステップS306)、これらに異常があるときは、その旨を適宜の手段で出力する。
【0024】
次いで、前記操作用グラフィックパネル2aの「登録実行」ボタンを押して(ステップS307)、各アーム3a、3b、4a、4bに係属する各アブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値を「零」にリセットする(ステップS308)。すなわち、雌ねじ駆動用モーター16を作動させて各アーム3a、3b、4a、4bを雄ねじ部材18に沿って移動させるときに当該雌ねじ駆動用モーター16の作動にともなって回転位相値を変えるアブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値が「零」となる位置が、各アーム3a、3b、4a、4bのそれぞれのアーム原点位置として登録される。ステップS308が終了すると、前記アーム原点位置登録モードが自動的に解除される。
【0025】
なお、前記ステップS306で異常が確認されると、前記ステップS308が実行不能となる。また、巻取紙装着装置1をアーム原点位置登録モードに設定した後に、ステップS308に至らずにアーム原点位置登録モードを解除するときは、前記操作用グラフィックパネル2aの「原点登録モード」ボタンを再度押すことによって当該解除が可能である(ステップS304)。
【0026】
次に、図4及び図5を参照して、支持アーム対3又は4を回転軸5の軸方向における所望の位置に停止する際に実行される所望位置設定(以下、プリセットとする)を説明する。なお、図4及び図5にて記載された処理フローは連続したものであり、両図で一連のフローチャートが示されている。
【0027】
主電源がONされ、アーム停止位置制御部2が安定状態になった後、アブソリュートロータリーエンコーダー25への通電に異常がないこと、及びアブソリュートロータリーエンコーダー25とアーム停止位置制御部2とを結ぶ回線上に異常がないことが確認されると(ステップS407)、プリセット対象の各アーム3a、3b又は4a、4bに係属するアブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の当該時点の回転位相値、つまりプリセット対象の各アーム3a、3b又は4a、4bの当該時点の位置に関するデータがアーム停止位置制御部2に取り込まれる(ステップS408)。
【0028】
また、主電源がONされ、アーム停止位置制御部2が安定状態になった後、プリセットを開始する前に支持アーム対3、4を目視し、プリセットをしようとする支持アーム対3又は4の回転軸5の中心からの放射方向位置が巻取紙装着位置にあることを確認するとともに、該当する支持アーム対3又は4が現在紙幅プリセット中でないことをグラフィックパネル2aの画面表示で確認する(ステップS401)。この時、プリセットしようとする支持アーム対3又は4が上記巻取紙装着装置にないときは、回転軸5を前記図示しない回転駆動手段により回転させ、支持アーム対3又は4を巻取紙装着位置にする。
【0029】
プリセットをしようとする支持アーム対3又は4がプリセット中でないこと、及び上記巻取紙装着位置にあることを確認したのち、グラフィックパネル2aの入力ボタンによって、処理しようとする巻取紙の幅に対応して予め定めた、各アーム3a、3b又は4a、4bの、回転軸5の軸線方向における所定停止位置を入力設定する(ステップS402)。なお、アーム停止位置制御部2は、予め巻取紙の幅寸法と所定停止位置とを関連づけて設定された巻取紙の幅寸法を指定する押しボタンの選択操作によって停止位置の設定が可能な構成であっても、テンキー操作による数値入力によって停止位置の設定が可能な構成であっても、これら双方によって停止位置の設定が可能な構成であっても差し支えなく、予め巻取紙の幅寸法と所定停止位置とを関連づけて設定された巻取紙の幅寸法を指定する押しボタンの選択操作によって停止位置の設定が可能な構成であるときは、巻取紙の幅寸法と所定停止位置とを関連づけての巻取紙の幅寸法を指定する押しボタンの設定は、処理する巻取紙の幅寸法の種類の増減又は変更に合わせて適宜に変更可能であってよい。
【0030】
ステップS402による入力に基づいて、プリセットの対象となる支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの、基準位置から入力設定された所定停止位置まで移動したときの、アブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値(目標値)が、アーム停止位置制御部2によって演算される(ステップS410)。
【0031】
また、前記ステップS402の実行に伴い、プリセットが可能な状態か否かが自動確認される(ステップS403)。詳細には、
(1)回転軸5の回転位相が、支持アーム対3又は4のいずれかが巻取紙装着位置にある回転位相となっていること、
(2)巻取紙装着位置にあってプリセット対象となっている支持アーム対3又は4に巻取紙が装着されていないこと、
(3)アブソリュートロータリーエンコーダー25への通電が正常であること、
(4)入力設定したアーム3a、3b又は4a、4bの停止位置が、アーム3a、3b又は4a、4bの移動可能な範囲内であること、
(5)アーム停止位置制御部2が原点登録モードでないこと、
(6)巻取紙装着位置にあってプリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bに係属する雌ねじ駆動用モーター16の通電経路上に異常がないこと、
の少なくとも6つの事項が自動確認される。そして、これら事項のなかに満足されない事項があるときは、その旨を適宜の手段で出力するとともに、ステップS403に続くステップが実行不能となる。
【0032】
次いで、グラフィックパネル2aの「開始」ボタンを押して(ステップS404)、プリセット開始信号を出力する(ステップS405)。プリセット開始信号が出力されると、前記アーム停止位置制御部2に取り込まれた、プリセット対象となっている各アーム3a、3b又は4a、4bの当該時点の位置に関するデータ、つまりプリセット対象となっている各アーム3a、3b又は4a、4bに係属するアブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の当該時点の回転位相値(現在値)と、前記アーム停止位置制御部2によって演算されたアブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値(目標値)が、比較される(ステップS411)。なお、この比較にあたっては、プリセットの対象となる支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの、所定停止位置への停止制御においてハンチングが生じないように、この目標値に、巻取紙装着に支障を生じない程度の幅±αを持たせて比較する。
【0033】
当該比較において、現在値が前記幅を有する目標値に含まれないときは、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bに係属する前記ブレーキ26がOFFされ、同様に係属する雌ねじ駆動用モーター16が動作し、その出力軸に取り付けられた駆動ギヤー15を回転させる。この駆動ギヤー15の回転により、駆動ギヤー15と噛み合わされた従動ギヤー14とギヤー24が回転される。従動ギヤー14の回転により、これと一体になっている雌ねじ部材13が回転され、ねじ連結された雄ねじ部材18に沿って、ねじ進みにより移動され、これにともない、当該雄ねじ部材13が回転可能かつ軸方向に移動しないように嵌め合わされているアーム3a、3b、4a、4bのいずれかの雌ねじ部材13とともに雄ねじ部材18に沿って移動される。この移動は、現在値が幅を有する目標値より小さいときは、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bが、支持アーム対3又は4の間隔を広げる方向に移動し、現在値が幅を有する目標値より大きいときは、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bが、支持アーム対3又は4の間隔を狭める方向に移動する(ステップS412)。
【0034】
また、前記ギヤー24の回転により、アブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸が回転し、その回転位相値、つまり現在値が変化する。この変化する現在値を、幅を有する目標値と比較して(ステップS413)、現在値が幅を有する目標値に含まれるまでステップS412とステップS413を繰り返す。現在値が幅を有する目標値の範囲に含まれた時点で、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bが設定された停止位置に到着したものと看做され(ステップS501)、当該プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bに係属するブレーキ26がONされるとともに、同様に係属する雌ねじ駆動用モーター16が停止される(ステップS502)。そして、所定時間経過後、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの現在値が幅を有する目標値に含まれるか再確認する(ステップS503)。これは、アブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値の読み込みが僅かに遅れることを考慮した確認である。この再確認において、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの現在値が幅を有する目標値の範囲から外れているときは、再度ステップS412、S413、S501、S502、S503を繰り返す。再確認において、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの現在値が幅を有する目標値の範囲に含まれているときは、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bが設定された停止位置に到達していることが確定しているとされ(ステップS504)、プリセットが正常に終了し(ステップS505)、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの停止位置がグラフィックパネル2aに表示され(ステップS508)、プリセットが終了する。
【0035】
他方、ステップS411の比較において、現在値が幅を有する目標値の範囲に含まれているときは、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bが設定された停止位置に到達していることが確定しているとされ(ステップS504)、前記同様、プリセットが正常に終了し(ステップS505)、プリセット対象となっている支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bの停止位置をグラフィックパネル2に表示して(ステップS506)、プリセットが終了する。
【0036】
なお、このプリセット作動中に何らかの異常が生じたとき、例えば、予め定めた時間内にプリセットが正常に終了しなかったときや、アブソリュートロータリーエンコーダー25の入力軸の回転位相値が予め定めた値を超えたときは、グラフィックパネル2aに予め定めた異常を知らせる表示を出力するとともに、プリセット作動を異常の生じた時点で終了する。
【0037】
また、前記の通りプリセットが終了し、支持アーム対3又は4のアーム3a、3b又は4a、4bにおける巻取紙支持手段の支持部23にて支持アーム対3又は4に巻取紙を装着した後、巻取紙を回転軸の軸方向に移動する場合には、雄ねじ駆動用モーター22を作動させて雄ねじ部材18を回転させ、アーム3a、3bに係属する2つの雌ねじ部材13、13又はアーム4a、4bに係属する2つの雌ねじ部材13、13を、雄ねじ部材18に対して一斉に同一方向に同距離だけ移動させ、各雌ねじ部材13が係属するアーム3a、3b又は4a、4bを雄ねじ部材18に対して一斉に同一方向に同距離だけ移動する。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、輪転機の巻取紙装着アーム及びこの巻取紙装着アームを備えた輪転機の給紙装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 巻取紙装着装置、2 アーム停止位置制御部、2a 入力手段(操作用グラフィックパネル)、3,4 支持アーム対、3a,3b,4a,4b アーム、5 回転軸、6a,6b 巻取紙、7 ガイドローラー、8 紙継装置、9a,9b フレーム、10a,10b,10a’,10b’ レール、11a,11b,11a’,11b’,12a,12b,12a’,12b’ 移動プレート、13 雌ねじ部材、14 従動ギヤー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて対向する2つのフレームに回転可能に支持された回転軸と、
回転軸の軸方向に個別に移動可能であり、かつそれぞれを軸方向に対向させるように、前記回転軸に取り付けられた複数対のアームと、
各アームの先端部に対して、軸方向に対向して設けられた巻取紙支持手段と、
軸方向に対向する一対の両アームを貫通し、前記回転軸に回転軸と平行に支持された雄ねじ部材と、
雄ねじ部材にねじ結合するとともに、対向する各アームに回転可能に、かつ軸方向に結合されて設けられた雌ねじ部材と、
雌ねじ部材を個別に回転駆動する雌ねじ駆動用モーターと、
を備え、
前記雌ねじ部材を回転駆動して各アームを回転軸と平行方向に個別に移動することで、一対のアームのそれぞれに設けた巻取紙支持手段によって巻取紙を支持可能な巻取紙装着装置において、
雌ねじ部材の回転に対応し、雌ねじ部材ごとにそれぞれの回転量に対応する回転量信号を個別に出力するよう設けた雌ねじ回転量信号出力手段と、
各アームのそれぞれについて基準位置を設定可能であるとともに、各アームの、回転軸の軸方向位置を変更するに際してそれぞれの停止位置を入力指定可能であり、かつ、前記回転量信号に基づいてアームの移動量を算出して前記基準位置に対するアームの現在位置を検知し、各アームを指定された停止位置まで移動し停止させるアーム停止位置制御部と、
を設けることで、各アームを回転軸と平行方向の所望の位置に停止可能としたことを特徴とする巻取紙装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−17157(P2012−17157A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154079(P2010−154079)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000151416)株式会社東京機械製作所 (48)
【Fターム(参考)】