説明

巻回装置

【課題】圧延材の巻回装置において、従動側シャフト及び駆動側シャフトの傾きを互いに対称にして、コイルの姿勢を水平に維持することにより、圧延材に負荷する張力の板幅方向分布を均一なものとし、形状の良い板を圧延することができる圧延材の巻回装置を提供する。
【解決手段】巻回装置1は、水平方向を向く軸回りに巻回された圧延材Wに対して、圧延材Wの巻芯Cを両側から挟み込む従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dを有している巻回装置1であって、圧延材Wの巻芯Cに対して従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dの傾きが両側で対称になるように、従動側シャフト4F又は駆動側シャフト4Dの少なくとも一方に荷重を付与してバランスを調整するバランス調整手段25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延材をコイル状に巻き取る、又はコイルから圧延材を巻き出すとともに圧延材に張力を負荷する圧延材の巻回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延材をコイル状に巻き取る、又はコイルから圧延材を巻き出すとともに圧延材に張力を負荷する巻回装置として、先端が先細り状に形成されたシャフトを水平方向に進退自在に備えており、圧延材の巻芯であるスプールにシャフトの先端を押し当てることで当該スプールを両側から挟持固定する構造(ダブルコーンシャフト構造)が知られている。
この巻回装置では、圧延材を巻き取ったり張力を付与したりするために、駆動側のシャフトに電動機やブレーキ機構を接続する必要があり、動力伝達用のギアカップリングなどを組み付ける必要があるため、駆動側シャフトが従動側シャフトに比べて長く形成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧延加工が施された金属箔を巻き取りリールの周りにコイル状に巻き取る金属箔の巻き取り装置において、該コイル状の金属箔の層間に挟み込まれる合紙を繰り出す合紙繰り出しロールを備え、前記合紙は前記金属箔よりも幅広である金属箔の巻き取り装置が開示されている。
この合紙の巻き取り装置は、コーン状の固定ジグを備えており、送り出す合紙に適度な張力を付与するためのベルトブレーキを有するものとなっている。つまり、合紙が巻き回されたロール(シャフト)の一端は他端より長めに形成されていて、この長く形成されたロールの一端側に上述したベルトブレーキが取り付けられている。圧延材の方の巻回装置に関しては、具体的な構造の開示はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−22998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従前の巻回装置では、シャフトは軸受で支持されている。ところが、この軸受に関しては、その構造上、軸受隙間の存在をなくすことは不可能である。つまり、軸受を用いて支持されているシャフトでは圧延材に負荷する張力や巻き取ったコイルの質量により、シャフトが傾いてしまう。
また上述したように、巻芯の着脱に合わせて軸方向に引き抜いたり押し出したりするシャフトでは、シャフトとこのシャフトを保持するハウジングとの間にブッシュなどを設けて、ハウジングに対するスライドを可能としている。このようなブッシュを設けた場合も、ブッシュとシャフトの間の隙間またはブッシュとハウジングとの隙間により、シャフトが傾いてしまう。
【0006】
ところが、圧延材に張力を付与したり駆動したりする関係から、電動機やブレーキ機構が設けられた駆動側のシャフトが従動側のシャフトよりも長尺に形成されており、側方に大きく突出したような構造となっている場合が多い。当然、軸方向に長さが異なる従動側シャフトと駆動側シャフトとでは同じ質量となることはなく、両シャフトの質量バランスは両側で非対称となっている。
【0007】
つまり、質量バランスが両側で非対称な従動側シャフトと駆動側シャフトとでは、張力やコイルの質量などによってシャフトが傾いた場合には、その傾き方も当然異なってしまう。その結果、巻き取り中や巻き出し中にコイルの水平度が変動することにより、圧延材に負荷する張力の板幅方向分布が不均一となり、圧延材の板形状が悪化する虞がある。
なお、特許文献1のような合紙の巻回装置では、圧延材の形状に直接は関係しないことに加えて、その重量自体が軽いこともあり、多少傾きが生じても大きな問題とはならず、シャフトの傾きへの対応策を特に採る必要がない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従動側シャフト及び駆動側シャフトの傾きを互いに対称にして、コイルの姿勢を水平に維持することで、圧延材にかかる張力の板幅方向分布を均一にして、形状の良い板を圧延することができる圧延材の巻回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため以下の技術的手段を講じた。
本発明の圧延材の巻回装置は、水平方向を向く軸回りに巻回された圧延材に対して、当該圧延材の巻芯を両側から挟み込む従動側シャフト及び駆動側シャフトを有している巻回装置において、前記圧延材の巻芯に対して従動側シャフト及び駆動側シャフトの水平方向の傾きが両側で対称になるように、前記従動側シャフト又は駆動側シャフトの少なくとも一方に荷重を付与して、水平方向のバランスを調整するバランス調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記バランス調整手段は、前記従動側シャフトに鉛直方向の荷重を付与するウエイト体を備えているとよい。
好ましくは、前記従動側シャフトは反圧延材側へ延設されていると共に、前記従動側シャフトの延設部分を外套するようにウエイト体が設けられているとよい。
好ましくは、前記バランス調整手段は、前記従動側シャフト又は駆動側シャフトの少なくともいずれか一方に鉛直方向の荷重を付与するアクチュエータ機構を備えているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧延材の巻回装置によれば、従動側シャフト及び駆動側シャフトの傾きを互いに対称にして、コイルの姿勢を水平に維持することにより、圧延材に負荷する張力の板幅方向分布を均一なものとし、形状の良い板が圧延できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の巻回装置の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のバランス調整手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1に示すように、第1実施形態の巻回装置1は、鋼、ステンレス、チタン、銅などの圧延材W(薄板)を巻き取ったり巻き出すとともに圧延材に張力を負荷するものであって、圧延材Wを圧延する圧延機の上流側乃至は下流側などに配備されている。例えば、圧延機の上流側に配備された巻回装置1から巻き出された圧延材Wが圧延機で圧延され、圧延機の下流側に配備された巻回装置1で巻き取られている圧延設備においては、圧延機の上流側の巻回装置1が巻出装置、下流側が巻取装置とされている。
【0014】
巻出装置として用いられる巻回装置1も、巻取装置として用いられる巻回装置1も、圧延材Wの巻き方向が異なる点を除けば、ほぼ同じ構成を備えている。それ故、以下では、巻回装置1が巻取装置である場合を念頭に置き説明を行う。なお、以下の説明において、巻回装置1によりコイル状に巻き取られた圧延材Wを単にコイルと呼ぶ。また、このコイルに近い側をコイル側(圧延材側)と呼び、コイルから遠い側を反コイル側(反圧延材側)と呼ぶ。
【0015】
本実施形態の巻回装置1は、水平方向を向く軸芯回りに圧延材Wをコイル状に巻き取るものであり、このコイルを両側から回転自在に支持する2つの支持部を有している。
具体的には、この圧延材Wのコイルは円管状に形成された巻芯C(圧延材W巻き付け用のスプール)の回りに圧延材Wを巻き回したものとなっている。そして、巻回装置1は、コイルの一方側(図1の右側)に配備されて巻芯Cを一方側から支持すると共に回転駆動力を付与する支持部(以降、駆動側支持部3Dという)と、コイルの他方側(図1の左側)に配備されて巻芯Cを他方側から回転自在に且つ従動的に支持する支持部(以降、従動側支持部3Fという)とで構成されている。
【0016】
以下、従動側支持部3Fを主に構成の説明を進める。
従動側支持部3Fは、巻芯Cを回転支持する従動側シャフト4Fと、この従動側シャフト4Fを内部に回転自在に収容する円筒状のハウジング5Fと、このハウジング5Fを床面に対して所定の高さで支持する支持フレーム6Fとを有している。また、支持フレーム6Fに対してハウジング5F及び従動側シャフト4Fを水平方向に移動させるシャフト移動機構7Fが、ハウジング5Fと支持フレーム6Fとの間に設けられている。
【0017】
従動側シャフト4Fは、水平方向を向く軸芯回りに回転自在とされた円柱体である。この従動側シャフト4Fには軸方向の2箇所に軸受8Fが設けられており、これらの軸受8Fを用いて従動側シャフト4Fは後述するハウジング5F内に回転自在に且つ軸方向に移動を規制された状態で収容されている。
この従動側シャフト4Fの先端(コイル側)には円錐形状部9Fが設けられている。円錐形状部9Fは基端側から先端側に向かうにつれて径が小さくなるようなテーパコーン状に形成された部材であり、基端側の外径は従動側シャフト4Fの外径よりも大きく、先端側の外径は巻芯Cの内径より小さくなっている。この円錐形状部9Fの先端を巻芯Cに嵌め込むことで、従動側シャフト4Fとコイルとが一体回転するようになる。
【0018】
ハウジング5Fは、内部が空洞とされた円筒状の部材であり、軸芯が水平方向となるように配備されている。ハウジング5Fの内部には従動側シャフト4Fが同軸状に収容されている。
このハウジング5Fの内径は従動側シャフト4Fの外径より大きく形成されていて、このハウジング5Fの内周面と従動側シャフト4Fの外周面との間の径方向に形成されたスペースに軸受8F(ラジアル軸受及びスラスト軸受)が配備されている。この軸受8Fにより、従動側シャフト4Fはハウジング5Fに対して回転自在であるが軸芯方向への移動が規制されている。ハウジング5Fの一方側(コイル側)からは、従動側シャフト4Fの先端すなわち円錐形状部9Fが突出している。
【0019】
支持フレーム6Fは、従動側シャフト4Fが回転自在に挿入されたハウジング5Fを下方から支持する部材であり、当該ハウジング5F自体を軸方向に移動自在に支持している。
具体的には、支持フレーム6Fは、円筒状であって中空とされた内部にハウジング5Fを収容できる外ハウジング10Fと、この外ハウジング10Fを床面上の所定高さで支持する支持基台11Fとを有する。
【0020】
外ハウジング10Fの内側壁とハウジング5Fの外側壁の間にはブッシュ28が設けられており、軸芯方向にのみ摺動自在となっているため、ハウジング5Fは外ハウジング10Fに対して軸芯方向へ往復移動可能となっている。
外ハウジング10Fの外側壁には、外ハウジング10Fに対してハウジング5F(すなわち従動側シャフト4F)を水平方向に移動させるシャフト移動機構7Fが設けられている。
【0021】
シャフト移動機構7Fは油圧シリンダで構成されており、外ハウジング10Fに対して油圧シリンダの本体側が連結されている。一方、この本体側に対して伸縮自在な油圧シリンダの先端(伸縮ロッド12Fの先端)は、連結部材13Fを介してハウジング5Fの端部(反コイル側の端部)に連結されている。
油圧シリンダを作動させ、伸縮ロッド12Fを縮めるようにすると、ハウジング5Fは外ハウジング10Fに対して軸芯方向でコイル側へ移動して、従動側シャフト4Fの円錐形状部9Fがコイル側へ進出するようになる。
【0022】
ところで、上述したように従動側支持部3Fは、従動側シャフト4F、円錐形状部9F、ハウジング5F、支持フレーム6F及びシャフト移動機構7Fから構成されているが、これらは駆動側支持部3Dにも備えられている。
従動側支持部3Fを構成する部材と駆動側支持部3Dを構成する部材とは、大きさや構造が非常に似通ったものとなっており、その向きや配置はコイルを挟んで、概ね対称となっている。
【0023】
とはいえ以下のように、駆動側支持部3Dは従動側支持部3Fとは異なる構成を有している。
まず、駆動側支持部3Dのハウジング5Dの一方側(コイル側)からは、駆動側シャフト4Dの先端すなわち円錐形状部9Dが突出している。一方、ハウジング5Dの他方側(反コイル側)からは、駆動側シャフト4Dの基端が延設状に突出している。この突出した駆動側シャフト4Dの基端には、駆動電動機(図示略)に接続するためのギアカップリング20が設けられている。このギアカップリング20は、駆動電動機で発生する回転駆動力を駆動側シャフト4Dへ伝達可能であるものの、駆動側シャフト4Dの水平方向への移動を規制はしない。
【0024】
なお、駆動側シャフト4Dの円錐形状部9Dの外周面には、軸方向に沿ってキー21Dが周方向の複数箇所に形成されている。このキー21Dによりコイルの巻芯Cと従動側シャフト4Fとを一体回転可能に固定できる。従動側シャフト4Fの円錐形状部9Fに関し、キー21Fを設けても良いし、不要としても良い。
以上述べた巻回装置1を用いてコイルから圧延材Wを巻き取るに際しては、従動側支持部3Fのシャフト移動機構7Fである油圧シリンダを作動させ、伸縮ロッド12Fを縮めるようにする。すると、従動側支持部3Fのハウジング5Fは外ハウジング10F内でコイル側へ移動して、従動側シャフト4Fの円錐形状部9Fがコイル側へ進出する。同じタイミングで駆動側支持部3Dのシャフト移動機構7Dも作動させ、駆動側シャフト4Dの円錐形状部9Dもコイル側へ進出させる。
【0025】
このようにして、巻芯Cの両側を従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dで挟み込んだ上で、巻芯Cに圧延材Wを巻き付けるようにする。その後、駆動電動機の回転数を上げ、駆動側シャフト4Dを所定の回転数とすることで、圧延機で圧延された薄板状の圧延材Wに張力を付与しつつ巻き取ることができるようになる。なお、駆動側の円錐形状部9Dはキー21Dにより巻芯Cへトルクを伝達し、従動側の円錐形状部9Fはシャフト移動機構7Fの押し付け力に起因する巻芯Cとの摩擦力で従動回転する。
【0026】
コイルが所定の外径に達した後は、駆動側シャフト4Dの回転を止め、その後、従動側支持部3F及び駆動側支持部3Dのシャフト移動機構7F、7Dである油圧シリンダを作動させ、伸縮ロッド12F、12Dを伸ばすようにする。すると、従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dは反コイル側へ移動し、両シャフト4F、4Dから巻芯C、すなわちコイルを取り外すことが可能となる。
【0027】
ところで、従来の巻回装置においては、以下のような問題が存在していた。
すなわち、駆動側シャフトのように駆動力が伝達されない従動側シャフトには、ギアカップリングを取り付ける必要がなく、従動側シャフトは駆動側シャフトほど軸方向に長く形成する必要はない。
このようにシャフトの長さが異なる等の点で、従動側支持部と駆動側支持部とが同じ質量となることはなく、両支持部の質量はバランスが保たれていない。このように質量バランスが崩れた状態では、軸受支点間距離、軸受サイズ、ブッシュ隙間を従動側支持部と駆動側支持部とで対称にしたとしても、圧延張力やコイル質量によるシャフトの傾動具合が駆動側と従動側で異なり、巻き取り中や巻き出し中にコイルの水平度が変動して圧延材に負荷する張力の板幅方向分布が不均一となり、圧延材の形状が悪化する可能性がある。
【0028】
そこで、本発明の巻回装置1には、圧延材Wの巻芯Cに対して従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dの傾きが両側で対称になるように、従動側支持部3F(言い換えれば、従動側シャフト4F)に荷重を付与してバランスを調整するバランス調整手段25が設けられている。
第1実施形態のバランス調整手段25は、所定の質量を有するウエイト体26(錘)を備えている。
【0029】
図2を用いて、第1実施形態のバランス調整手段25の構成を詳しく説明する。
まず、従動側シャフト4Fは、駆動側シャフト4Dと同様にその基端がハウジング5Fよりもさらに基端側に向かって延設され突出している。
そして、この基端側に向かって突出した従動側シャフト4Fの外周面で且つ反コイル側にウエイト体26が設けられている。ウエイト体26は従動側シャフト4Fの端面にボルト等で固定されたエンドプレートにて固定され、従動側シャフト4Fと共に回転する。ウエイト体26の外側にはカバー27が設けられている。
【0030】
ウエイト体26は、従動側シャフト4F延長部の外周面に取り付けられた錘である。このウエイト体26は、従動側シャフト4Fの外周面に嵌り込むような中空の円柱体である。
ウエイト体26は、従動側支持部3Fと駆動側支持部3Dとの質量バランスが両側で対称となるような質量とすることが好ましい。具体的な質量は、現場での実験やコンピュータシミュレーションなどを通じて算出することが可能である。
【0031】
ところで、上記と同等の作用は、従動側シャフト4Fを反コイル側に過大に伸ばし、長尺となった延設部分の質量をウエイト体26とすることでも実現可能であるが、その場合、過大に延設されたシャフトのための空間が必要となる。
このように従動側シャフト4Fにウエイト体26を取り付ければ、従動側支持部3Fと駆動側支持部3Dとの質量バランスが両側で対称となる。その結果、軸受8隙間およびブッシュ隙間による従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dの傾きが両側で互いに対称になり、圧延コイルを水平に保つことができる。圧延コイルが水平に保たれると圧延中に負荷する張力の板幅方向分布が均一となり、形状の良い板を圧延することができる。
【0032】
一例ではあるが、本願の出願人がシミュレーション計算により求めた「シャフトが傾くのに必要な力」を記す。
例えば、従来の巻回装置であれば、駆動側シャフトにおいて、巻芯C嵌め合い部に上向きに約500kgf以上の力が作用したり、下向きに約7000kgf以上の力が作用した際に、駆動側シャフトが上方乃至は下方に傾くことを知見している。それに対して、従動側シャフトにおいては、上向きに約850kgfの力が作用したり、下向きに約1100kgfの力が作用した際に、従動側シャフトが上方乃至は下方に傾くと考えられる。つまり、駆動側シャフトと従動側シャフトとでは、シャフトが傾くのに必要な力が大きく異なり、コイルを巻回した際のシャフトの傾きが両側で非対称になっている。
【0033】
なお、このシミュレーションにおいては、駆動電動機のシャフトならびに電動機側のシャフトに取り付けたギアカップリング20は別途支持されている状態にあると考えて、質量バランスの計算では考慮していない。
一方、本実施形態の巻回装置1であれば、従動側支持部3Fにバランス調整手段25が設けられている故、駆動側シャフト4D、従動側シャフト4Fのどちらにおいても、上向きに約500kgfの力が作用したり、下向きに約7000kgfの力が作用した際に、駆動側シャフト4Dが上方乃至は下方に傾く。つまり、両側のシャフトが傾くのに必要な力がほぼ対称となっていることがわかる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の巻回装置1について説明する。
【0034】
第2実施形態の巻回装置1は、従動側支持部3F(従動側シャフト4F)と駆動側支持部3D(駆動側シャフト4D)との質量バランスを調整するバランス調整手段25を備えている。しかしながら、このバランス調整手段25の構成が第1実施形態とは大きく異なっている。他の構成は第1実施形態とほぼ同じである。
すなわち、第2実施形態のバランス調整手段25は、従動側支持部3Fに設けられたウエイト体26を有しておらず、その代わりに、従動側シャフト4F又は駆動側シャフト4Dの少なくともいずれか一方に鉛直方向の荷重を付与するアクチュエータ機構を備えている。
【0035】
第2実施形態の巻回装置1は、従動側シャフト4Fの基端を延設した部分に鉛直方向の荷重を負荷するアクチュエータ機構を備えており、また従動側シャフト4Fおよび駆動側シャフト4Dの軸方向のストロークを許容する機構を有している。
第2実施形態のバランス調整手段25によれば、従動側支持部3Fと駆動側支持部3Dとの質量バランスを両側で対称とすることができる。
【0036】
例えば、アクチュエータ機構を用いて、従動側シャフト4Fに対して下向きの力を加えることで、第1実施形態のウエイト体26が発する荷重と同等の作用となる。そうすれば、従動側支持部3Fと駆動側支持部3Dとの質量バランスを取ることが可能となり、コイルを巻回した際に従動側シャフト4F及び駆動側シャフト4Dの傾きを互いに対称にして、圧延コイルを水平に保つことにより、圧延中に負荷する張力の板幅方向分布を均一にすることができ、形状の良い板を圧延することができる。
【0037】
ところで、このバランス調整手段25(アクチュエータ機構)は、従動側シャフト4Fだけではなく、駆動側シャフト4Dに設けてもよい。また、駆動側シャフト4D及び従動側シャフト4Fの双方に設けることもできる。
すなわち、駆動側シャフト4Dを反コイル側に延設し、延設した部分にバランス調整手段25を設けることが可能である。具体的には、駆動側シャフト4Dを延設した部分であってハウジング5Dとギアカップリング20との間において、鉛直方向に荷重を負荷するアクチュエータを備えており、またシャフト4Dの軸方向ストロークを許容する機構を有している。
【0038】
このようなアクチュエータ機構を用いたバランス調整手段25によれば、駆動側シャフト4Dに加えられる荷重も制御することが可能となる。その場合、従動側シャフト4Fに加えられる荷重とのバランスをより正確に取ることが可能となり、さらに形状の良い板を圧延することができる。また両側シャフトの傾き自体を無くすことができ、円錐形状部9D、9Fと巻芯Cの摩耗を低減する。
【0039】
なお、今回開示した実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0040】
1 巻回装置
3D 駆動側支持部
3F 従動側支持部
4D 駆動側シャフト
4F 従動側シャフト
5D ハウジング(駆動側)
5F ハウジング(従動側)
6F 支持フレーム(従動側)
7D シャフト移動機構(駆動側)
7F シャフト移動機構(従動側)
8F 軸受(従動側)
9D 円錐形状部(駆動側)
9F 円錐形状部(従動側)
10F 外ハウジング(従動側)
11F 支持基台(従動側)
12F 伸縮ロッド(従動側)
13F 連結部材(従動側)
20 ギアカップリング
21D キー(駆動側)
21F キー(従動側)
25 バランス調整手段
26 ウエイト体
27 カバー
28 ブッシュ
C 巻芯
W 圧延材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向を向く軸回りに巻回された圧延材に対して、当該圧延材の巻芯を両側から挟み込む従動側シャフト及び駆動側シャフトを有している圧延材の巻回装置において、
前記圧延材の巻芯に対して駆動側シャフト及び従動側シャフトの水平方向の傾きが両側で対称になるように、前記従動側シャフト又は駆動側シャフトの少なくとも一方に荷重を付与して水平方向のバランスを調整するバランス調整手段が設けられていることを特徴とする圧延材の巻回装置。
【請求項2】
前記バランス調整手段は、前記従動側シャフトに鉛直方向の荷重を付与するウエイト体を備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧延材の巻回装置。
【請求項3】
前記従動側シャフトは反圧延材側へ延設されていると共に、前記従動側シャフトの延設部分に前記ウエイト体が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の圧延材の巻回装置。
【請求項4】
前記バランス調整手段は、前記従動側シャフト又は駆動側シャフトの少なくともいずれか一方に鉛直方向の荷重を付与するアクチュエータ機構およびシャフトの軸方向ストロークを許容する機構を有することを特徴とする請求項1に記載の圧延材の巻回装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−94789(P2013−94789A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237310(P2011−237310)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】