説明

巻形逆浸透膜要素

純水流れ案内ネット(100)、逆浸透膜(200)及び給水流れ案内ネット(300)を積み重ねることによって構成された少なくとも1つの浄水膜コンポーネント(11)を中央生成水管(400)に巻き付けることによって巻形逆浸透膜要素(10)が形成される。逆浸透膜(200)は、給水通路(210)が内面によって形成され、生成水通路(220)が隣り合った外面相互間に形成されるよう折り畳まれる。給水流れ案内ネット(300)は、給水通路(210)内に配置され、他方、純水流れ案内ネット(100)は、生成水通路(220)内に配置される。生成水通路(220)は、中央生成水管(400)に向いた純水出口(221)を1つだけ有し、他の3つの側部(222,223,224)は、緊密に封止される。折り畳み線(211)に隣接して位置する給水通路(210)の2つの側部(212,213)の一部分は、中央生成水管(400)に隣接して位置する小径給水入口部分(214)がそれぞれ2つの側部(212,213)に設けられ、濃縮水出口(215)が折り畳み線(211)とは反対側の給水通路(210)の側部に設けられるよう緊密に封止される。本発明の巻形逆浸透膜要素(10)では、膜表面上における水の速度が増大し、膜表面上における濃度分極が弱められ、巻形逆浸透膜要素(10)の汚染速度が減少し、その結果、巻形逆浸透膜要素(10)の有効寿命が延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理の技術分野に属すると共に水から砂、スラッジ、コロイド、微生物、ウイルス、有機物、無機塩及び他の不純物を除去する逆浸透膜要素に関する。特に、本発明は、巻形逆浸透膜要素に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られている巻形逆浸透膜要素は、純水流れ案内ネット、逆浸透膜及び給水流れ案内ネットを積み重ねることによって構成された少なくとも1つの浄水膜コンポーネントを中央生成水管に巻き付けることによって形成され、逆浸透膜は、折り畳まれ、給水流れ案内ネットは、折り畳み状態の逆浸透膜の内面によって形成されている給水通路内に配置され、純水流れ案内ネットは、折り畳み状態の逆浸透膜の外面相互間に形成されている生成水通路内に配置される。かかる巻形逆浸透膜要素では、生成水通路の端面の2つの側部と中央生成水管から見て遠くに位置する生成水通路の側部は、グルーで互いに結合され、それにより中央生成水管に向いた開口部が形成され、他方、浄水膜コンポーネントは、中央生成水管に巻き付けられた後、巻かれてこれらの外面が接着テープで封止される。かかる構造の巻形逆浸透膜要素では、水は、この逆浸透膜要素の一方の端面から給水通路内に流入し、水のうちの何割かは、逆浸透膜の通過後に濾過されて純水になり、次に、純水流れ案内ネットに沿って中央生成水管内に流れ、残りの水は、濾過されていない状態のままであり、即ち、濃縮水は、給水通路内の給水流れ案内ネットに沿って逆浸透膜要素の他方の端面から流出する。かかる逆浸透膜要素では、水の供給方向は、濃縮水の排出方向と同一である。しかしながら、通路の幅が広く、流路が短く、しかも通路内の水の速度が比較的遅いことにより、濃度分極が膜表面上で生じやすくなる場合があり、それにより逆浸透膜要素の汚染が生じると共に脱塩速度及び水出力が減少し、しかも逆浸透膜要素の有効寿命が短くなる。
【発明の概要】
【0003】
先行技術において存在する問題は、本発明に従って、巻形逆浸透膜要素表面の濃度分極を弱め、逆浸透膜要素の汚染をなくし、それにより逆浸透膜要素の有効寿命を延ばすことを目的とする巻形逆浸透膜要素を提供することによって解決される。
【0004】
上述の技術的問題を解決するため、本発明は、以下の技術的解決手段を採用している。
【0005】
純水流れ案内ネット、逆浸透膜及び給水流れ案内ネットを積み重ねることによって構成された少なくとも1つの浄水膜コンポーネントを中央生成水管に巻き付けることによって巻形逆浸透膜要素が形成され、逆浸透膜は、給水通路が内面によって形成され、生成水通路が隣り合った外面相互間に形成されるよう折り畳まれ、給水流れ案内ネットは、給水通路内に配置され、他方、純水流れ案内ネットは、生成水通路内に配置され、生成水通路は、中央生成水管に向いた純水出口を1つだけ有し、他の3つの側部は、緊密に封止される。巻形逆浸透膜要素は、折り畳み線に隣接して位置すると共に中央生成水管から見て遠くに位置する給水通路の2つの側部の一部分が、中央生成水管に隣接して位置する小径原水入口部分がそれぞれ2つの側部に形成され、濃縮水出口が折り畳み線とは反対側の給水通路の側部に形成されるよう緊密に封止されることを特徴としている。
【0006】
本発明の実施形態では、折り畳み線に隣接して位置すると共に中央生成水管から見て遠くに位置する給水通路の2つの側部の一部分は、浄水膜コンポーネントを中央生成水管に巻き付ける前に、中央生成水管から見て遠くに位置する一部分をグルーで結合することにより緊密に封止される。
【0007】
変形例として、折り畳み線に隣接して位置する給水通路の2つの側部の一部分は、浄水膜コンポーネントを中央生成水管に巻き付けた後に巻形逆浸透膜要素の両端部を環状端キャップで施栓することによって緊密に封止され、中央生成水管と端キャップとの間には隙間が存在する。
【0008】
原水入口の長さは、折り畳み線に隣接して位置する給水通路の2つの側部の長さの1/4〜1/3である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、2つの組をなす浄水膜コンポーネントが提供される。
【0010】
上述の技術的解決手段では、折り畳み線に隣接して位置すると共に中央生成水管から見て遠くに位置する給水通路の2つの側部の一部分は、中央生成水管に隣接して位置する小径原水入口部分がそれぞれ2つの側部に形成されると共に濃縮水出口が折り畳み線とは反対側の給水通路の側部に形成されるよう緊密に封止される。かかる構造の巻形逆浸透膜要素では、水は、この逆浸透膜要素の両方の端面の2つの側部で給水通路に設けられた原水入口を経て給水通路内に流入し、水のうちの何割かは、逆浸透膜の通過後に濾過されて純水になり、次に、生成水通路の純水流れ案内ネットに沿って中央生成水管内に流れ、残りの濾過されなかった水、即ち、濃縮水は、給水通路内の給水流れ案内ネットに沿って折り畳み線とは反対側の給水通路の側で濃縮水出口から流出する。換言すると、濃縮水は、浄水膜コンポーネントの巻き方向で巻形逆浸透膜要素の周面から排出され、このことは、原水が巻形逆浸透膜要素内にその一方の端面から流入し、濃縮水が逆浸透膜要素の他方の端面から排出される先行技術の巻形逆浸透膜要素とは異なっている。かかる改良により、本発明の巻形逆浸透膜要素では、膜表面上における水の速度が増大し、膜表面上における濃度分極が弱められ、巻形逆浸透膜要素の汚染速度が減少し、その結果、巻形逆浸透膜要素の有効寿命が延びる。
【0011】
本発明の別の改良では、原水入口の無駄なコーナー部が省かれた巻形逆浸透膜要素を得ることを目的として、濃縮水出口に向いた複数個の小穴を有する水供給管が原水入口内に設けられ、それにより、原水入口のところのスケーリングに起因した水の品質への悪影響が回避される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、水供給管の口は、折り畳み線に隣接して位置する給水通路の側部と整列している。
【0013】
本発明の実施形態では、逆浸透膜は、給水通路の2つの層及び生成水通路の2つの層を形成するよう折り畳まれており、各給水通路層は、その両端部のところに原水入口を備え、原水入口の各々の中には水供給管が設けられている。
【0014】
本発明を図面及び実施形態との関連で以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】巻かれる前における実施形態1による巻形逆浸透膜要素の広げた状態の構造を示す略図である。
【図2】巻かれた後における実施形態1による巻形逆浸透膜要素を示す略図である。
【図3】原水入口を形成するために給水通路を施栓する別の構造を示す略図である。
【図4】実施形態3による巻形逆浸透膜要素の構造を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態1
この実施形態では、巻形逆浸透膜要素10は、図1に示されているように、純水流れ案内ネット100、逆浸透膜200及び給水流れ案内ネット300を積み重ねることによって構成された2組の浄水膜コンポーネント11(この実施形態では2組のコンポーネントが設けられている)を中央生成水管400に巻き付けることによって形成されている。
【0017】
この実施形態では、逆浸透膜200は、給水通路210がその内面によって形成され、生成水通路220がその隣り合う外面相互間に形成されるよう折り畳まれている(浄水膜コンポーネントの下側の層の逆浸透膜の下側外面及び浄水膜コンポーネントの上側の層の逆浸透膜の上側外面も又、巻かれた後、生成水通路を形成する)。給水流れ案内ネット300は、給水通路210内に配置され、純水流れ案内ネット100は、生成水通路220内に配置されている。生成水通路220は、中央生成水管400に向いた純水出口221を1つだけ有し、他の3つの側部212,213,214は、グルー500で緊密に封止される。折り畳み線211に隣接して位置すると共に中央生成水管400から見て遠くに位置する給水通路210の2つの側部212,213の一部分が、中央生成水管400に隣接して位置する小径原水入口部分214がそれぞれ2つの側部212,213に形成され、濃縮水出口215が折り畳み線211とは反対側の給水通路210の側部に形成されるよう緊密に封止される。
【0018】
本発明の実施形態では、折り畳み線211に隣接して位置すると共に中央生成水管400から見て遠くに位置する給水通路210の2つの側部212,213の一部分は、図1に示されているやり方で、即ち、浄水膜コンポーネント11を中央生成水管400に巻き付ける前に、中央生成水管400から見て遠くに位置する上記一部分をグルー500で結合することにより緊密に封止され、その結果、開口部の僅かなセグメントが中央生成水管400に隣接したままになり、それにより原水入口214が形成される。図3に示されているように、浄水膜コンポーネント11を中央生成水管400に巻き付けた後、巻形逆浸透膜要素の両方の端部12,13は、環状端キャップ600で施栓され、かかる端キャップの内側部にはグルーが塗布され、中央生成水管400と端キャップ600との間には隙間が生じ、それにより、原水入口214が形成されている。
【0019】
V=Q/(L1×T)なので(この式において、Vは、水の速度であり、Qは、供給流量であり、L1は、給水通路の長さ、即ち原水入口214の長さであり、Tは、通路の厚さである)、供給流量Qが一定の場合、L1が減少すると水の速度が増大し、その結果、逆浸透膜表面上の水の速度が増大するようになる。実験値により判明したこととして、給水通路の最適長さL1(即ち、原水入口214の長さ)は、折り畳み線に隣接して位置する2つの側部の長さ(即ち、膜の長さ)の1/4〜1/3である。
【0020】
上述の技術的解決手段では、折り畳み線211に隣接して位置すると共に中央生成水管400から見て遠くに位置する給水通路210の2つの側部212,213の一部分は、中央生成水管400に隣接して位置する小径原水入口部分214がそれぞれ2つの側部212,213に形成されると共に濃縮水出口215が折り畳み線211とは反対側の給水通路210の側部に形成されるよう緊密に封止される。図2に示されているかかる構造の巻形逆浸透膜要素では、水は、この逆浸透膜要素の両方の端面12,13の2つの側部で給水通路210に設けられた原水入口214を経て給水通路210内に流入し、水のうちの何割かは、逆浸透膜200の通過後に濾過されて純水になり、次に、生成水通路220内の純水流れ案内ネット100に沿って中央生成水管400内に流れ、残りの濾過されなかった水、即ち、濃縮水は、給水通路210内の給水流れ案内ネット300に沿って折り畳み線211とは反対側の給水通路210の側で濃縮水出口215から流出する。換言すると、濃縮水は、浄水膜コンポーネント11の巻き方向で巻形逆浸透膜要素10の周面から排出され、このことは、原水が巻形逆浸透膜要素内にその一方の端面から流入し、濃縮水が逆浸透膜要素の他方の端面から排出される先行技術の巻形逆浸透膜要素とは異なっている。
【0021】
実施形態2
図3に示されているように、この実施形態は、折り畳み線211に隣接して位置すると共に中央生成水管400から見て遠くに位置する給水通路210の2つの側部212,213の一部分が、異なる仕方で緊密に封止されている点において実施形態1とは異なっている。この実施形態では、浄水膜コンポーネント11を中央生成水管400に巻き付けた後、巻形逆浸透膜要素の両方の端部12,13は、環状端キャップ600で施栓され、かかる端キャップの内側部にはグルーが塗布され、中央生成水管400と端キャップ600との間には隙間が生じ、それにより、原水入口214が形成されている。この実施形態の他の点は、実施形態1の他の点と同一である。かかる封止の仕方は、逆浸透膜要素を組み立てるのがより容易になるので有利である。
【0022】
実施形態3
図4に示されているように、この実施形態は、原水入口の無駄なコーナー部を省き、原水入口のところのスケーリングに起因した水の品質への悪影響を回避した巻形逆浸透膜要素の実現を可能にすることを目的として、給水管800が濃縮水出口214内に設けられ、この給水管800が逆浸透膜要素の一端部のところの原水入口214から逆浸透膜要素の他端部のところの原水入口214まで延び、かかる給水管800が濃縮水出口215に向いた複数個の小穴(図示せず)を有している点において実施形態1及び実施形態2とは異なっている。
【0023】
かかる改良では、原水は、水供給管800内に流れ、次に、かかる水供給管に設けられている小穴を介して濃縮水出口215に向かう方向で給水通路300内に放出される。これにより、水の均等な供給が可能であり、無駄なコーナー部がなくなると共にスケーリングが回避される。
【0024】
この実施形態では、逆浸透膜200は、給水通路210の2つの層及び生成水通路220の2つの層を形成するよう折り畳まれる。給水通路210の各層は、その両端部のところに原水入口214及び濃縮水出口215を有している。各原水入口214は、水供給管800を備えている。また、水供給管の口は、給水通路210の側部212,213と整列している。かかる構造により、給水の円滑な供給が容易になる。
【0025】
上述の説明は、本発明の巻形逆浸透膜要素に関する。上述の詳細な説明から、上述の改良により、本発明の巻形逆浸透膜要素では、水の速度が増大し、巻形逆浸透膜表面の濃度分極が弱められ、巻形逆浸透膜要素の汚染速度が減少し、それにより、巻形逆浸透膜要素の有効寿命が延びることが理解される。
【0026】
しかしながら、上述の実施形態は、単なる例示であって、当業者が本発明を理解すると共に実施することができるようにする目的のために与えられているに過ぎず、上述の実施形態は、本発明の保護範囲を限定するものと解されてはならない。本発明に関して開示された精神に基づく均等な変更例又は改造例は、本発明の保護範囲に含まれるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水流れ案内ネット、逆浸透膜及び給水流れ案内ネットを積み重ねることによって構成された少なくとも1つの浄水膜コンポーネントを中央生成水管に巻き付けることによって形成された巻形逆浸透膜要素であって、前記逆浸透膜は、給水通路が前記逆浸透膜の内面によって形成され、生成水通路が隣り合った前記逆浸透膜の外面相互間に形成されるよう折り畳まれ、前記給水流れ案内ネットは、前記給水通路内に配置され、他方、前記純水流れ案内ネットは、生成水通路内に配置され、前記生成水通路は、前記中央生成水管に向いた純水出口を1つだけ有し、前記給水通路の他の3つの側部は、緊密に封止され、折り畳み線に隣接して位置すると共に前記中央生成水管から見て遠くに位置する前記給水通路の2つの側部の一部分は、前記中央生成水管に隣接して位置する小径原水入口部分がそれぞれ前記2つの側部に形成されると共に濃縮水出口が前記折り畳み線とは反対側の前記給水通路の側部に形成されるよう緊密に封止されている、巻形逆浸透膜要素。
【請求項2】
前記折り畳み線に隣接して位置すると共に前記中央生成水管から見て遠くに位置する前記給水通路の前記2つの側部の前記一部分は、前記浄水膜コンポーネントを前記中央生成水管に巻き付ける前に、前記中央生成水管から見て遠くに位置する前記一部分をグルーで結合することにより緊密に封止される、請求項1記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項3】
前記折り畳み線に隣接して位置する前記給水通路の前記2つの側部の前記一部分は、前記浄水膜コンポーネントを前記中央生成水管に巻き付けた後に前記巻形逆浸透膜要素の両端部を環状端キャップで施栓することによって緊密に封止され、前記中央生成水管と前記端キャップとの間には隙間が存在する、請求項1記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項4】
前記原水入口の長さは、前記折り畳み線に隣接して位置する前記給水通路の前記2つの側部の長さの1/4〜1/3に等しい、請求項1記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項5】
2つの組をなす前記浄水膜コンポーネントが前記中央生成水管に巻き付けられている、請求項1記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項6】
前記濃縮水出口に向いた複数個の小穴を有する水供給管が前記原水入口内に設けられている、請求項1記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項7】
前記水供給管の口は、前記折り畳み線に隣接して位置する前記給水通路の前記側部と整列している、請求項6記載の巻形逆浸透膜要素。
【請求項8】
前記逆浸透膜は、給水通路の2つの層及び生成水通路の2つの層を形成するよう折り畳まれており、各給水通路層は、その両端部のところに原水入口を備え、前記原水入口の各々の中には水供給管が設けられている、請求項6又は7記載の巻形逆浸透膜要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−509285(P2013−509285A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535593(P2012−535593)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/CN2010/072738
【国際公開番号】WO2011/050608
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512112220)エー. オー. スミス (シャンハイ) ウォーター トリートメント プロダクツ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】