説明

巻鉄心の溶接装置及びその溶接方法

【課題】巻回された巻鉄心の内周及び外周を溶接する。
【解決手段】巻鉄心11の溶接装置10は、円環状の巻鉄心11を支持する支持装置12と、巻鉄心11に接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する一対の電極17,18と、一対の電極を移動させる電極移動装置20と、巻鉄心11を支持した支持装置21を巻鉄心11の中心軸を回転中心として回転させる支持装置回転手段46とを備える。支持装置12は円環状の巻鉄心11を水平に支持するように構成され、一対の電極が巻鉄心11の中心軸方向の上方であって巻鉄心11の径方向に所定の間隔を空けてかつそれぞれが巻鉄心11の中心軸と平行に設けられ、電極移動装置20が、一対の電極の水平方向における互いの間隔を拡大させ又は減少させる電極離間装置31と、一対の電極と共に電極離間装置31を昇降させる電極昇降装置21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状に巻回された磁性薄帯からなる巻鉄心の内周面又は外周面を溶接する巻鉄心の溶接装置及びその溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源回路や通信回路などをはじめとする各種の電気・電子部品に用いられるトランス用コアやチョークコイル用コアなどの構成材料として、透磁率が高く、高周波域での損失が小さく、飽和磁束密度が大きいなどの特性を有することから、パーマロイやアモルファス磁性合金が多用されるようになってきている。このようなパーマロイやアモルファス磁性合金で磁性部品を構成する場合、まず薄帯化したパーマロイやアモルファス磁性合金を巻回して巻鉄心を形成し、この巻鉄心に巻線を施して磁性部品を作製することが一般的である。
【0003】
このような薄型の巻鉄心では、内径側端部からも形状が崩れやすいことから、磁性薄帯を巻回する際に、先ず、巻回数が2〜5層となったところでこれらの磁性薄帯を溶接により固定する内径側端部固定工程と、その磁性薄帯をさらに所望の巻数となるまで巻回する巻回工程と、その磁性薄帯の終端部を溶接により固定して巻回体とする外径側端部固定工程とを具備する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、巻回数が2〜5層となったところで巻回された磁性薄帯を溶接により固定する内径側端部固定工程を有する従来の製造方法では、磁性薄帯の巻回作業の間に溶接工程を取入れることから、磁性薄帯を迅速に巻回することが困難になり、製造時間が比較的長くなって、巻鉄心の単価を押し上げる不具合があった。
【0006】
この点を解消するためには、磁性薄帯の巻回と溶接を別の工程として、磁性薄帯の巻回を迅速に行わせしめることが考えられる。その場合には、巻回工程と別に溶接工程を行う必要があるけれども、その溶接工程を作業員の手でなくて、機械で行わせるようにすれば、人件費の抑制から比較的安価なコアを得ることが期待できる。このため、そのような機械が熱望されていた。
【0007】
本発明の目的は、巻回された巻鉄心の内周面及び外周面を溶接し得る巻鉄心の溶接装置及びその溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における巻鉄心の溶接装置は、円環状の巻鉄心を支持する支持装置と、巻鉄心に接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する一対の電極と、一対の電極を支持装置に支持された巻鉄心の内周面にそれぞれ接触させ、又は一対の電極を支持装置に支持された巻鉄心の外径面にそれぞれ接触させる電極移動装置と、巻鉄心を支持した支持装置を巻鉄心の中心軸を回転中心として回転させる支持装置回転手段とを備える。
【0009】
支持装置は円環状の巻鉄心を水平に支持するように構成され、一対の電極が巻鉄心の中心軸方向の上方であって巻鉄心の径方向に所定の間隔を空けてかつそれぞれが巻鉄心の中心軸と平行に設けられ、電極移動装置が、一対の電極の水平方向における互いの間隔を拡大させ又は減少させる電極離間装置と、一対の電極と共にその電極離間装置を昇降させる電極昇降装置と、を備えることが好ましい。支持装置回転手段は、巻鉄心とともに支持装置を60度回転させて、一対の電極が接触する位置が円周方向に60度ずれるように構成されることが更に好ましい。
【0010】
本発明における巻鉄心の溶接方法は、一対の電極を円環状の巻鉄心の内周面又は外周面にそれぞれ接触させて一対の電極が接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する溶接工程と、巻鉄心の中心軸を回転中心として巻鉄心を回転させて一対の電極が接触する位置を円周方向に所定の角度ずらす巻鉄心回転工程とを繰り返す方法である。所定の角度が60度であって、単一の巻鉄心に対して外周面と内周面の双方において溶接工程がそれぞれ3回繰り返されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明における巻鉄心の溶接装置及びその溶接方法では、磁性薄帯を巻回して形成された巻鉄心の外周面又は内周面を溶接するので、磁性薄帯の巻回作業の間に溶接工程を取入れるようなことはない。これにより、磁性薄帯を迅速に巻回することが可能になる。また、そのような磁性薄帯の巻回と巻鉄心の内周面又は外周面の溶接を別の工程とし、その別々の工程である磁性薄帯の巻回と溶接を同時に行うようにすれば、単位時間に得られる巻鉄心の数を増加させることができる。また、この溶接は、作業員の手でなくて機械で行うことにより人件費も抑制でき、比較的安価な巻鉄心を得ることができる。
【0012】
また、本発明では、一対の電極を用いて、巻鉄心の内周面又は外周面をそれぞれ抵抗溶接するので、1回の溶接工程において2箇所の溶接箇所を得ることができる。そして、その一対の電極が接触する位置を円周方向に所定の角度ずらすので、巻鉄心の内周面又は外周面において、周方向に所定の角度毎に溶接箇所を設けることができる。巻鉄心では、薄帯の端部が巻鉄心の内周面と外周面に必ず存在するけれども、この内周面又は外周面において、周方向に所定の角度毎に溶接箇所を設けることにより、その薄帯の端部近傍を必ず溶接することが可能になり、その端部が剥がれてしまうようなことを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態における巻鉄心の溶接装置を示す正面図である。
【図2】その溶接装置を示す側面図である。
【図3】その支持装置の上面図である。
【図4】その支持装置の正面図である。
【図5】支持された巻鉄心の内周面が一対の電極により溶接される状態を示す図4のA−A線拡大断面図である。
【図6】支持された巻鉄心の外周面が一対の電極により溶接される状態を示す図5に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2に、本発明における巻鉄心の溶接装置10を示す。この溶接装置10は、円環状の巻鉄心11を支持する支持装置12を備える。この実施の形態における巻鉄心11は、磁気ヘッドに用いられるものを例示し、帯状の金属磁性材料であるパーマロイ薄帯が巻回されたものとする(図5及び図6)。この溶接装置10は、基台10aと、その基台10aに立設された支持部材16を有する。そして、支持装置12は、その支持部材16に設けられて、巻鉄心11を内周において支持するように構成される。
【0016】
具体的に説明すると、図3及び図4に示すように、この支持装置12は、支持本体部13と、その支持本体部13の上面に放射状に移動可能に設けられた複数の支持片14とを備える。この実施の形態では、3個の支持片14が放射状に設けられる場合を例示し、支持本体部13は支持部材16に固定された取付台15に回転軸を鉛直にしてその下部が枢支される(図1及び図2)。支持本体部13の上部には水平なテーブル13cが設けられ、このテーブル13cの上面に3本の支持レール13aが120度毎にテーブル13cの中央部分から放射状に設けられる。この3本の支持レール13aには、支持スライダ13bが移動可能にそれぞれ設けられ、これらの支持スライダ13bに支持片14がそれぞれ取付けられる。
【0017】
3個の支持片14は互いの間隔を拡げることにより円環状の巻鉄心11を内周において支持可能なものであり、巻鉄心11が載置される載置部14aと、その載置部14aに載置された巻鉄心11の内径に挿入され互いの間隔を拡げた場合に巻鉄心11の内周面に当接する当接部14bがその載置部14aに連続してそれぞれ形成される。この当接部14bの高さhは、巻鉄心の厚さdの半分以下に制限され(図4)、この当接部14bは巻鉄心11の内周面の一部に当接するように構成される。そして、支持本体部13は圧縮エアの供給によりスライダ13bを介してその3個の支持片14を放射状に移動可能に構成され、放射状に移動することにより3個の支持片14は図3の破線矢印で示すように互いの間隔を拡げ、載置部14aに載置された巻鉄心11の内周面に当接部14bが当接して円環状の巻鉄心11を水平に支持するように構成される。その一方、支持片14は、図3の実線矢印で示すように互いの間隔を縮めることにより、載置部14aに載置された巻鉄心11の内周面から当接部14bを離間させて、水平な巻鉄心11の支持を解消するように構成される。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明における巻鉄心の溶接装置10は、巻鉄心11に接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する一対の電極17,18と、その一対の電極17,18を移動させる電極移動装置20とを備える。この実施の形態における一対の電極17,18は、断面が円形の棒状物であって、実際に接触した部分を溶接する小径の小径部17a,18aが先端に形成されたものを例示する。このような一対の電極17,18は、巻鉄心11の中心軸方向の上方であって、その巻鉄心11の径方向に所定の間隔を空け、かつ小径部17a,18aを下方の巻鉄心11に向けてそれぞれが巻鉄心11の中心軸と平行に設けられる。
【0019】
一方、電極移動装置20は、一対の電極17,18の水平方向における互いの間隔を拡大させ又は減少させる電極離間装置31と、一対の電極17,18と共にその電極離間装置31を昇降させる電極昇降装置21とを備える。
【0020】
電極昇降装置21は、取付台15より上方の支持部材16に鉛直方向に延びかつ水平方向に所定の間隔を空けて設けられた一対の鉛直レール22,22と、その鉛直レール22,22に移動可能に設けられた鉛直スライダ23,23(図2)と、その一対の鉛直レール22,22におけるそれぞれの鉛直スライダ23,23に水平方向における両端部が取付けられることによりその一対の鉛直レール22,22に昇降可能に架設された鉛直移動台24と、一対の鉛直レール22,22の間にそれらと平行に設けられて鉛直移動台24に螺合された鉛直ボールねじ26と、その鉛直ボールねじ26を回転させる鉛直方向サーボモータ27とを備える。よって、この電極昇降装置21では、鉛直方向サーボモータ27により鉛直ボールねじ26を回転させると、それに螺合する鉛直移動台24を一対の鉛直レール22,22に沿って昇降させるように構成される。
【0021】
一方、電極離間装置31は、鉛直移動台24に水平方向に延びかつ鉛直方向に所定の間隔を空けて設けられた一対の水平レール32,32と、その水平レール32,32に移動可能に設けられた水平スライダ33,33(図2)と、その一対の水平レール32,32におけるそれぞれの水平スライダ33,33に上下の端部が取付けられることによりその一対の水平レール32,32に架設された一対の水平移動台34a,34bと、一対の水平レール32,32の間にそれらと平行に設けられた水平ボールねじ36と、その水平ボールねじ36を回転させる水平方向サーボモータ37とを備える。図1に示すように、水平ボールねじ36は、水平方向サーボモータ37の回転軸37aにジョイント37cを介して取付けられる基端部側に右ねじ部36aが形成され、先端側に左ねじ部36bが形成される。そして、左ねじ部36bに一方の水平移動台34aが螺合して設けられ、右ねじ部36aに他方の水平移動台34bが螺合して設けられる。よって、この電極離間装置31では、水平方向サーボモータ37により水平ボールねじ36を回転させると、右ねじ部36aと左ねじ部36bに別々に螺合する一対の水平移動台34a,34bは、互いに異なる方向に同時にかつ同距離だけ移動することになる。即ち、その一対の水平移動台34a,34bは同時にかつ同距離だけ互いに接近し又は離間することになる。
【0022】
一対の水平移動台34a,34bはそれぞれ金属製であって、図2に示すように、それらの水平移動台34a,34bには絶縁板41を介して端子部材42が水平移動台34a,34bと電気的に絶縁された状態でそれぞれ設けられる。それぞれの端子部材42は、絶縁板41を介して水平移動台34a,34bに設けられた金属製導電部材42aと、その導電部材42aと共に鉛直方向に延びる電極17,18を把持する把持部材42bと、その把持部材42bを導電部材42aに固定する固定ねじ42cとをそれぞれ備える。
【0023】
図1に示すように、一対の電極17,18は、これら金属製導電部材42aの互いに対向する部位に把持部材42bにより把持されて鉛直方向に延びて設けられる。そして、この一対の電極17,18は、それらが重なり合う図2に示す側面図において、それらの中心軸が、支持装置12に支持された水平な巻鉄心11の鉛直に延びる中心軸Cに一致するように設けられる。また、この一対の電極17,18は、それらが水平方向に離間する図1に示す正面図において、巻鉄心11の鉛直に延びる中心軸Cから両側に等しい距離だけ離れるように設けられる。これにより、一対の電極17,18は巻鉄心11の中心軸C方向の上方であって、その巻鉄心11の径方向に所定の間隔を空けて、かつそれぞれが巻鉄心11の中心軸と平行に設けられることになる。
【0024】
導電部材42aには端子43を介してリード線44の一端が電気的に接続され、そのリード線44の他端は、このリード線44を介して電極17,18に電気を流して、その電極17,18が接触する部分の抵抗によりその部分を加熱溶接する図示しない起電装置に接続される。
【0025】
このように、一対の電極17,18が端子部材42を介して一対の水平移動台34a,34bに取付けられた電極離間装置31は、水平方向サーボモータ37により水平ボールねじ36を回転させることにより、一対の水平移動台34a,34bとともに一対の電極17,18が、一対の水平レール32,32に沿って互いに近づき又は離間することになる。そして、電極昇降装置21は一対の電極17,18と共にその電極離間装置31を昇降させることになる。このような電極離間装置31と電極昇降装置21を備える電極移動装置20は、一対の電極17,18を水平方向と鉛直方向に自由に移動させることが可能になる。そして、支持装置12はこのような電極移動装置20の下方にあって、巻鉄心11を水平に支持する。即ち、この電極移動装置20は、一対の電極17,18を移動させることにより、その一対の電極17,18を支持装置12に支持された巻鉄心11の内周面にそれぞれ接触させたり、又はその一対の電極17,18を支持装置12に支持された巻鉄心11の外径面にそれぞれ接触させることができるように構成される。
【0026】
また、この巻鉄心の溶接装置10は、巻鉄心11を支持した支持装置12を巻鉄心11の中心軸を回転中心として回転させる支持装置回転手段46を備える。この実施の形態における支持装置回転手段は、取付台15に取付板15aを介して支持装置12と並列に設けられた回転用サーボモータ46であって、その回転軸46aに主プーリ47が設けられる。一方、取付台15より下方に突出した支持本体部13に従プーリ48が設けられ、その主プーリ47と従プーリ48との間にベルト49が掛け渡される。よって、支持装置回転手段である回転用サーボモータ46が駆動してその回転軸46aが回転すると、その回転はベルト49を介して支持本体部13に伝達され、それにより支持装置12を回転可能に構成される。そして、この支持装置回転手段46は、巻鉄心11とともに支持装置12を少なくとも60度回転させるように構成され、支持装置12を60度回転させた場合には、一対の電極17,18が接触する位置を巻鉄心11の円周方向に60度ずらすように構成される。
【0027】
なお、図示しないが、巻鉄心の溶接装置10には、コントローラが備えられ、コントローラの制御出力は内周支持装置12に圧縮エアを供給する支持用バルブ、電極移動装置20における鉛直方向及び水平方向サーボモータ27,37、支持装置回転手段46における回転用サーボモータ46にそれぞれ接続される。そして、これらは、この図示しないコントローラにより制御されるように構成される。
【0028】
次に、上述した巻鉄心の溶接装置を用いた本発明における巻鉄心の溶接方法について説明する。
【0029】
この巻鉄心11の溶接方法は、一対の電極17,18を円環状の巻鉄心11の内周面又は外周面にそれぞれ接触させて一対の電極17,18が接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する溶接工程と、巻鉄心11の中心軸を回転中心として巻鉄心11を回転させて一対の電極17,18が接触する位置を円周方向に所定の角度ずらす巻鉄心回転工程とを繰り返すことを特徴とする。以下に説明する溶接装置10の動作は図示しないコントローラにより制御され、作業員の手を借りずに、この溶接装置10により、溶接工程と巻鉄心回転工程が自動的に順次繰り返して行われるものとする。
【0030】
溶接工程では、巻鉄心11に一対の電極17,18が接触した部分をそれぞれ抵抗溶接するけれども、その前提として、その巻鉄心11を支持装置12により支持することが必要である。上述した支持装置12による場合には、図3及び図4に示すように、円環状の巻鉄心11に挿入された複数の支持片14の互いの間隔を拡げてその巻鉄心11を内周において支持することになる。ここで、巻鉄心11は、磁性材料からなる薄帯を巻回することにより作られたものであって、例えば、図示しない巻鉄心の内径調整装置(特願2010−93691)等により、その内径又は外径が所定の値に調整されたものである。
【0031】
巻鉄心11を支持装置12に支持させる以前の溶接装置10は、図2に示すように、一対の電極17,18を上昇させて内周支持装置12の上方に作業空間を形成し、図3の実線矢印で示すように内周支持装置12における複数の支持片14は互いに近づけておく。そして、内径又は外径が所定の値に調整された巻鉄心を、例えば全自動の搬送装置により図示しない巻鉄心の内径調整装置等から搬送し、内周支持装置12の上方における作業空間を介して、その巻鉄心11を複数の支持片14における載置部14a上に載置する。このとき、その載置部14aに連続して形成された当接部14bを巻鉄心11の内径内に挿入する。その後、図示しないコントローラにより内周支持装置12における支持本体部13に圧縮エアを供給又は排出し、図3の破線矢印で示すように複数の支持片14を放射状に移動させて互いの間隔を拡げ、図5に示すようにそれらにおける当接部14bを巻鉄心11の内周面に当接させる。このようにして巻鉄心11を内周において支持する。
【0032】
溶接工程では、支持装置12により支持された巻鉄心11に一対の電極17,18を接触させるけれども、その一対の電極17,18の移動は電極移動装置20により行われる。具体的に、一対の電極17,18を巻鉄心11の内周面にそれぞれ接触させるには、図4の実線矢印で示すように、一対の電極17,18が巻鉄心11の上方に位置する状態で電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の内径より小さくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を下降させ、電極17,18における小径部17a,18aを巻鉄心11の内径内に挿入させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を拡大して一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の内周面にそれぞれ接触させる。このとき、巻鉄心11を支持する支持片14の当接部14bの高さhを巻鉄心11の厚さdより小さくすることにより、電極17,18における小径部17a,18aがその当接部14bと干渉するような事態を回避することができる。
【0033】
逆に、図6に示すように、一対の電極17,18を巻鉄心11の外周面にそれぞれ接触させるには、図示しないが、一対の電極17,18が巻鉄心11の上方に位置する状態で電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の外径より大きくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を下降させ、17,18における小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面に対向させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を減少させて一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面にそれぞれ接触させる。
【0034】
このように、一対の電極17,18間を拡大又は縮小することにより、図5及び図6に示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aは巻鉄心11の内周面又は外周面にその直径上においてそれぞれ接触することになる。そして、この一対の電極17,18間に電気を通して、一対の電極17,18が接触する部分、即ち、巻鉄心11の内周面又は外周面において一対の電極17,18における小径部17a,18aが接触する部分をそれぞれ抵抗溶接する。
【0035】
巻鉄心回転工程では、巻鉄心11の中心軸を回転中心として巻鉄心11を回転させて一対の電極17,18が接触する位置を円周方向に所定の角度α(図5及び図6)ずらす。巻鉄心11を回転させるには、それ以前に一対の電極17,18が接触するような状態を解消しておく。具体的には、前の溶接工程において一対の電極17,18が巻鉄心11の内周面に接触していたならば、電極離間装置31の水平サーボモータを駆動して一対の電極17,18間を減少させ、図5の破線矢印で示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の内周面からそれぞれ離間させる。一方、前の溶接工程において一対の電極17,18が巻鉄心11の外周面に接触していたならば、電極離間装置31の水平サーボモータを駆動して一対の電極17,18間を拡大させ、図6の破線矢印で示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面からそれぞれ離間させる。そして、その後の巻鉄心11の回転は支持装置回転手段46(図1及び図2)により行われ、その回転用サーボモータ46を駆動して支持装置12を巻鉄心11とともに、その巻鉄心11の中心軸を回転中心として所定の角度α回転させる。
【0036】
その後、再び溶接工程となり、この工程では、一対の電極17,18を再び巻鉄心11に接触させることになるけれども、前の巻鉄心回転工程において一対の電極17,18が巻鉄心11の内径内に存在する場合には、電極離間装置31の水平サーボモータを駆動して一対の電極17,18間を拡大させ、図5の実線矢印で示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の内周面に再び接触させる。一方、前の巻鉄心回転工程において一対の電極17,18が巻鉄心11の外周面から離間していたならば、電極離間装置31の水平サーボモータを駆動して一対の電極17,18間を減少させ、図6の実線矢印で示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面に再び接触させる。そして、この一対の電極17,18間に電気を通して、一対の電極17,18が接触する部分、即ち、巻鉄心11の内周面又は外周面において一対の電極17,18における小径部17a,18aが接触する部分をそれぞれ抵抗溶接する。
【0037】
そして再び巻鉄心11を回転させる巻鉄心回転工程を行う。本発明の巻鉄心11の溶接方法は、このような溶接工程と巻鉄心回転工程を交互に行うことを特徴とする。このため、図5及び図6に示すように、巻鉄心回転工程における回転角度である所定の角度αが60度であれば、その次の溶接工程において一対の電極17,18が接触する位置は円周方向に所定の角度αである60度ずれ、巻鉄心11の内周面又は外周面において、周方向に60度毎にずれた位置が抵抗溶接されることになる。そして、一対の電極17,18は、巻鉄心11の直径上における位置に接触し、1回の溶接工程においてその直径上における2点をそれぞれ溶接する。このため、巻鉄心11を回転させる所定の角度αが60度である場合には、4回目の溶接工程では同じ位置が溶接されることになる。よって、巻鉄心回転工程において巻鉄心11を回転させる所定の角度αが60度であれば、単一の巻鉄心11に対して外周面又は内周面において溶接工程がそれぞれ3回繰り返されれば、その外周面又は内周面において60度毎に6箇所溶接することができる。
【0038】
一方、先の溶接工程では巻鉄心11の内周面に接触していた一対の電極17,18を次の溶接工程においてその一対の電極17,18を巻鉄心11の外周面に接触させるようにすることもできる。この場合の一対の電極17,18の移動は電極移動装置20により行われ、図5に示すように、先の溶接工程で巻鉄心11の内周面に一対の電極17,18をそれぞれ接触させた場合には、図示しないが、電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の内径より小さくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を上昇させて、一対の電極17,18を巻鉄心11の上方に位置させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の外径より大きくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を再び下降させ、電極における小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面に対向させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を減少させて、図6に示すように、一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の外周面にそれぞれ接触させる。
【0039】
一方、図示しないが、先の溶接工程で巻鉄心11の外周面に一対の電極17,18をそれぞれ接触させた場合には、電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の外径より大きくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を上昇させて、一対の電極17,18を巻鉄心11の上方に位置させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を巻鉄心11の内径より小さくし、その状態で電極昇降装置21によりその一対の電極17,18を下降させ、電極における小径部17a,18aを巻鉄心11の内径内に挿入させる。その後、電極離間装置31により一対の電極17,18間を拡大して一対の電極17,18の小径部17a,18aを巻鉄心11の内周面にそれぞれ接触させる。
【0040】
このように、単一の巻鉄心11に対して外周面又は内周面において60度毎に6箇所溶接した後、巻鉄心11の内周面又は外周面に接触していた一対の電極17,18を次の溶接工程においてその一対の電極17,18を巻鉄心11の外周面又は内周面に接触させ、再び、この溶接工程と巻鉄心回転工程を繰り返すことにより、単一の巻鉄心11に対して外周面及び内周面の双方を溶接することができる。図5には、単一の巻鉄心11の内周面において60度毎に6箇所溶接した場合を例示し、図6には、その後に、巻鉄心11の外周面に一対の電極17,18を接触させ、その内周面において60度毎に6箇所溶接した場合を例示する。このため、巻鉄心回転工程において巻鉄心11を回転させる所定の角度αが60度であり、単一の巻鉄心11に対して外周面又は内周面の双方において溶接工程がそれぞれ3回繰り返されれば、図6(c)の黒丸で示すように、その外周面と内周面の双方において60度毎に6箇所溶接された巻鉄心11を得ることができる。ここで、図5及び図6の黒丸は、巻鉄心11の内周面又は外周面における溶接箇所を示す。
【0041】
そして、外周面と内周面の双方において所望の箇所が溶接された巻鉄心11を得た後には、その巻鉄心11を本溶接装置10から取外す。具体的な手順は、一対の電極17,18を電極移動装置20により図2に示すように上昇させ、内周支持装置12の上方に作業空間を形成する。これと同時に又はその後、内周支持装置12における複数の支持片14を図3の実線矢印で示すように放射状に移動させて互いに近づけ、巻鉄心11の内周面に当接していた当接部14bをその内周面から離間させる。そして、巻鉄心11の上方であって、その一対の電極17,18との間に形成された作業空間を介して作業員又は自動搬送機が巻鉄心11をその内周支持装置12から取外す。このように取外された巻鉄心11はその内周面及び外周面の所定の箇所が溶接されているので、その内径及び外径を変化させることなく次の工程に送ることができる。
【0042】
このような、本発明における巻鉄心の溶接装置10及びその溶接方法では、磁性薄帯を巻回して形成された巻鉄心11の外周又は内周を溶接するので、磁性薄帯の巻回作業の間に溶接工程を取入れるようなことはない。これにより、磁性薄帯を迅速に巻回することが可能になる。また、そのような磁性薄帯の巻回と巻鉄心11の内周又は外周の溶接を別の工程とし、その別々の工程である磁性薄帯の巻回と溶接を同時に並列して行うようにすれば、単位時間に得られる巻鉄心11の数を増加させることができる。また、この溶接は、作業員の手でなくて機械である本発明の溶接装置10により行うことにより、人件費も抑制でき、比較的安価な巻鉄心11を得ることが可能となる。
【0043】
また、本発明では、一対の電極17,18を用いて、巻鉄心11の内周面又は外周面をそれぞれ抵抗溶接するので、1回の溶接工程において2箇所の溶接箇所を得ることができる。そして、その一対の電極17,18が接触する位置を円周方向に所定の角度αずらすことにより、巻鉄心11の内周面又は外周面において、周方向に所定の角度毎に溶接箇所を設けることができる。巻鉄心11では、薄帯の端部11a,11bが巻鉄心11の内周面と外周面に必ず存在することになるけれども、この内周面又は外周面において、周方向に所定の角度α毎に溶接箇所を設けることにより、その薄帯の端部11a,11bの近傍を必ず溶接することが可能になる。例えば、所定の角度を60度すると、巻鉄心11の内周面と外周面には、図6(c)に示すように、巻鉄心11の中心軸を中心として周方向に60度毎に溶接することができる。このため、その薄帯の端部11a,11bをその溶接された60度の範囲に収めることができ、溶接箇所が近傍に位置することから、その端部11a,11bが剥がれてしまうようなことを有効に防止することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、電極移動装置20におけるボールねじ26,36を回転させるものとして、及び支持装置12を回転させる支持装置回転手段46として、サーボモータ27,37,46を用いたけれども、これらは、ボールねじ26,36や支持装置12を回転させ得る限り、サーボモータに代えて流体圧シリンダや流体圧モータを用いても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態では、巻鉄心11を内周において支持する支持装置12を用いて説明したが、円環状の巻鉄心11を支持し得る限り、支持装置は、巻鉄心11を外周において支持するものであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 巻鉄心の溶接装置
11 巻鉄心
12 支持装置
17,18 電極
20 電極移動装置
21 電極昇降装置
31 電極離間装置
46 サーボモータ(支持装置回転手段)
α 所定の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の巻鉄心(11)を支持する支持装置(12)と、
前記巻鉄心(11)に接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する一対の電極(17,18)と、
前記一対の電極(17,18)を前記支持装置(12)に支持された前記巻鉄心(11)の内周面にそれぞれ接触させ、又は前記一対の電極(17,18)を前記支持装置(12)に支持された前記巻鉄心(11)の外径面にそれぞれ接触させる電極移動装置(20)と、
前記巻鉄心(11)を支持した前記支持装置(21)を前記巻鉄心(11)の中心軸を回転中心として回転させる支持装置回転手段(46)と
を備えたことを特徴とする巻鉄心の溶接装置。
【請求項2】
支持装置(12)は円環状の巻鉄心(11)を水平に支持するように構成され、
一対の電極(17,18)が前記巻鉄心(11)の中心軸方向の上方であって前記巻鉄心(11)の径方向に所定の間隔を空けてかつそれぞれが前記巻鉄心(11)の中心軸と平行に設けられ、
電極移動装置(20)が、前記一対の電極(17,18)の水平方向における互いの間隔を拡大させ又は減少させる電極離間装置(31)と、前記一対の電極(17,18)と共に前記電極離間装置(31)を昇降させる電極昇降装置(21)と、を備える請求項1記載の巻鉄心の溶接装置。
【請求項3】
支持装置回転手段(46)は、巻鉄心(11)とともに支持装置(21)を60度回転させて、一対の電極(17,18)が接触する位置が円周方向に60度ずれるように構成された請求項1又は2記載の巻鉄心の溶接装置。
【請求項4】
一対の電極(17,18)を円環状の巻鉄心(11)の内周面又は外周面にそれぞれ接触させて前記一対の電極(17,18)が接触した部分をそれぞれ抵抗溶接する溶接工程と、
前記巻鉄心(11)の中心軸を回転中心として前記巻鉄心(11)を回転させて前記一対の電極(17,18)が接触する位置を円周方向に所定の角度(α)ずらす巻鉄心回転工程と
を繰り返す巻鉄心の溶接方法。
【請求項5】
所定の角度(α)が60度であって、単一の巻鉄心(11)に対して外周面と内周面の双方において溶接工程がそれぞれ3回繰り返される請求項4記載の巻鉄心の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74107(P2013−74107A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212011(P2011−212011)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】