説明

布製の電磁保護シース

布製の電磁保護シース(10)が、第1の方向(X)に延びる導電性フィラメント及び導電性フィラメントと織り交ぜられた非導電性フィラメントによって形成される。特に航空用途においてケーブルを遮蔽するための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製の電磁保護シースに関する。
本発明は、一般に、遮蔽特性を備えたシースによる電磁干渉(EMI)からの電気導体又は他の導体の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
布製シースが、米国特許第4684762号において提案されている。
このシースは、繊維の一部分だけが導電性であるフィラメントから織成され又は編組された布(テキスタイル)から成る。
かくして、少なくとも20重量%〜80重量%の導電性繊維を含むフィラメントで形成された縦糸と、1重量%〜20重量%の割合の導電性繊維を含むフィラメントで形成された横糸とから成る布製シースが知られている。
かくして、この種のシースは、長手方向と横方向の両方に導電性フィラメントを有し、かくして、電気的接続を電磁遮蔽布構造体中のフィラメントの交差部のところに作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4684762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高い割合の導電性金属を含むこれらシースは、比較的重量があり、これは、航空用途では特に問題となる。
本発明の目的は、上述の欠点の解決策を提供し、かくして、軽量の電磁保護シース構造体を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、本発明は、布製電磁保護シースにおいて、布は、第1の方向に延びる導電性フィラメント及び導電性フィラメントと織り交ぜられた非導電性フィラメントにより形成されていることを特徴とする布製電磁保護シースを提供する。
【0006】
本出願人の得た知見によれば、導電性フィラメントが布構造体中で互いに交差することなく効果的な電磁保護シースを得ることが可能であった。
したがって、布構造体の導電性フィラメントは、織り交ぜられたフィラメントによって一緒に電気的に接続されているわけではない。
一方向にのみ導体フィラメントを有するこの布構造体は、シースを軽量化し、更に、用いられる布の柔軟性により装着を容易にする。
【0007】
本発明の好ましい特徴によれば、第1の方向は、シースの長手方向に一致する。
したがって、導電性フィラメントは、シースにより覆われるケーブルの効果的な電磁保護をもたらすようシースの長手方向に延びている。
【0008】
非導電性フィラメントは、有利には、少なくとも1本の熱成形可能な糸を含む。
熱成形可能な糸が存在しているので、布の熱処理により自己閉鎖性保護シースを得ることが可能である。
したがって、シースを平らな布から作ることができ、次にこれ自体を熱成形して管状シースを作ることができる。
【0009】
本発明の実用的な一実施形態では、布は、織成されており、導電性フィラメントは、縦糸を構成し、非導電性フィラメントは、横糸を形成する。
【0010】
別の実施形態では、布は、編組されており、導電性フィラメントは、布の長手方向に延び、非導電性フィラメントは、布の長手方向と交差する方向に編組されている。
【0011】
本発明の別の有利な特徴によれば、非導電性フィラメントは、これら非導電性フィラメントが導電性フィラメントのための機械的保護を与えるように、導電性フィラメントの直径よりも大きな直径を有する。
かくして、シースの遮蔽特性は、シースの摩擦により摩耗が生じた場合であっても、劣化せず、摩擦は、直径のより大きな非導電性フィラメントに制限される。
【0012】
本発明の他の特徴及び他の利点は、以下の説明を読むと明らかになろう。
添付の図面は、非限定的な例として提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による電磁保護シースの概略斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電磁保護シースの布を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による電磁保護シースの布を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態を示す、図1に類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による布製電磁保護シースを示している。
本発明のこの実施形態では、保護シースは、平らに形成した布を、次に、熱成形プロセスにより管状シースに変えることにより作られる。
これにより、長手方向にスリットが作られると共に自己閉鎖性の管状電磁保護シース10が作られ、このシースの長手方向縁部10a,10bは、この電磁保護シース10が装着されるケーブルの束の直径に従って大きな又は小さなオーバーラップ部分を有している。
シースのこの自己閉鎖性構造により、ケーブルの束をその端部のところで接続したときでもケーブルの束周りのシースの装着及び保持が容易になる。
長手方向縁部10a,10bを分離してシースをケーブルの束の周りに通すだけで十分である。
この構造により、束へケーブルを追加することが可能となると共にメンテナンス作業中、ケーブルを視認することができる。
次に、このシース10は、形状記憶により縁部10a,10bを互いに当接させた状態で自動的に閉じられる。
【0015】
本発明のこの保護シースを作るために用いられる布は、様々な種類のものであって良く、例えば、織成、編組又は編成プロセスにより作られる。
一般的に言えば、この布は、次の2つのタイプのフィラメント、即ち、
−一方で、第1の方向に、例えば、図1に示された実施形態におけるシース10の長手方向Xに延びる導電性フィラメント、及び
−他方で、導電性フィラメントと織り交ぜられた非導電性フィラメント、
によって形成される。
導電性フィラメントと織り交ぜられたこれら非導電性フィラメントは、シースの長手方向Xに延びる導電性フィラメントと(垂直に又は他の方向に)交差する方向に延びる。
この実施形態では、シースの自己閉鎖特性を提供するため、これら非導電性フィラメントは、少なくとも1本の熱成形可能な糸を含む。
【0016】
より一般的にいえば、導電性フィラメントは、糸又は繊維から成るのが良い。
特に編組若しくは織成ストリップ、又は不織編組ストリップの形態をした糸又は繊維のいかなるタイプの集合体を用いることができる。
導電性糸又は繊維は、金属製のもの又は金属被覆されたものであるのが良い。
したがって、糸又は繊維の集合体としては、金属糸又は繊維、金属被覆された糸又は繊維、又は金属及び金属被覆された糸又は繊維の混合物が挙げられる。
糸又は繊維の集合体は、導電性糸又は繊維の少なくとも一部分を含む。
したがって、導電性フィラメントは、導電性糸又は繊維からのみ成ってもよいし、又は非導電性糸若しくは繊維の一部分のみを含んでも良い。
【0017】
例えば、導電性金属糸又は繊維を銅又はいかなる他の導電性金属材料で作ることができる。
導電性糸又は繊維を同様に、金属被覆された非導電性糸、即ち、例えば銅又は銀の導電性被膜で被覆された糸で作ることができる。
例えばデュポン・ド・ヌムール(du Pont de Nemours)社から入手できるAracon(登録商標)金属被覆ポリマーを用いることができる。
導電性糸又は繊維を同様に、導電性材料の粒子又は繊維入りのポリマー又はエラストマー材料で作ることができる。
例えばノーベルファイバ(Nobbelfiber)社から入手できるX−static(登録商標)材料を用いることができる。
【0018】
同様に、非導電性フィラメントは、糸若しくは繊維、又は、非導電性糸又は繊維の集合体、例えば編組体若しくは編組織成ストリップ若しくは不織ストリップから成るのが良い。
これらの非導電性糸又は繊維は、例えば鉱物若しくは合成繊維又は鉱物と合成繊維との混合物から成る。
鉱物繊維は、例えばガラス繊維であるのが良い。
非導電性合成繊維をポリエステル、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、PEI(ポリエチレンイミン)、PEK(ポリエーテルケトン)又はPEKK(ポリエーテルケトンケトン)で形成するのが良い。
これら繊維は、熱成形可能であるという利点を備えている。
さらに、デュポン・ド・ヌムール社から入手できるNomex(登録商標)メタアラミド繊維又はTeflon(登録商標)PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いることが同様に可能である。
【0019】
図2に示されているように、布の一例は、織成により作られる。
導電性フィラメント11は、織物の縦糸を構成しており、長手方向Xに延びている。
非導電性フィラメント12は、織物の横糸を構成しており、かくして、長手方向Xにほぼ垂直な横方向に延びる。
この例では、導電性フィラメント11は、例えば編組銅線で作られるのが良く、非導電性フィラメントは、熱成形可能なPPSモノフィラメントであるのが良い。
非導電性フィラメント12は、好ましくは、導電性フィラメント11の直径よりも大きな直径を有する。
かくして、摩擦又は摩滅によるシースの摩耗を非導電性フィラメント12に限定することができる。
したがって、摩擦によるシースの摩耗が生じた場合でもシースの遮蔽特性を保持することができる。
【0020】
図3は、布の第2の実施形態を示している。
布は、編組により作られる。
導電性フィラメント11’は、編組布の長手方向Xに延びている。
非導電性フィラメント12’は、布の長手方向Xと交差した方向に編組されている。
したがって、非導電性フィラメントは、導電性フィラメント11’の周りに編組され、布の織り交ぜ構造を形成している。
この実施形態では、導電性フィラメント11’は、編組銅線から成るが、これは本発明を何ら限定するものではない。
非導電性フィラメント12’は、熱成形可能なPPS糸から成る。
勿論、他のタイプの導電性及び非導電性材料又はフィラメントを用いてもよい。
【0021】
上述の2つの実施形態では、布構造体は、フィラメントが交差する場所には、交差する導電性フィラメントを有しないことに留意すべきである。
それにもかかわらず、導電性フィラメントが第1の方向に、この実施形態では、シースの長手方向に互いに平行に延びていれば、電磁保護は効果的なままである。
シースの他の方向への非導電性フィラメントの使用により、シースの重さを制限し、満足な柔軟性を与えることが可能である。
このタイプの電磁保護シースは、比較的軽量であり、航空機のケーブルの束を保護するための、航空用途に特に好適である。
【0022】
熱成形可能な糸の使用により、布構造体を織成又は編組により平らに作ることができ、次に200℃を超える温度で熱処理にかけて、熱成形可能な糸を、シースのほぼ横方向に変形させ、かくして、自己閉鎖性になる。
【0023】
勿論、シース10は、自己閉鎖性である必要はなく、そのかわり、その長手方向縁部10a,10bにクロージャ手段を有しても良い。
図4に示されているように、Velcro(登録商標)テープタイプの自己把持性クロージャ手段13が、シースをケーブルの束の周りで閉じるために、シース10の長手方向縁部10aの内面及び長手方向縁部10bの外面に設けられるのが良い。
シース10は、異なる熱成形処理により自己閉鎖特性を更に有することができる。
例えば、平らに織成され、半分に折り畳まれたシースの冷圧(コールドプレス)により、形状記憶構造をシースに与えることができる。
したがって、そのようなシースは、ケーブルの束の周りに配置された後、ケーブルの束を覆うように閉鎖形状に戻ることができる。
勿論、本発明は、上述の実施形態には限定されない。
【0024】
特に、電磁保護シースは、編成によって同様に形成できる。
同様に、電磁保護シースを適当な織成、編組又は編成技術により閉じられた管状シースの形態に直接作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製電磁保護シースにおいて、前記布は、第1の方向(X)に延びる導電性フィラメント(11,11’)と、前記導電性フィラメント(11,11’)と織り交ぜられた非導電性フィラメント(12,12’)とから形成されている、ことを特徴とする電磁保護シース(10)。
【請求項2】
前記第1の方向は、前記シース(10)の長手方向(X)に一致している、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁保護シース。
【請求項3】
前記非導電性フィラメント(12,12’)は、少なくとも1本の熱成形可能な糸を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁保護シース。
【請求項4】
前記電磁保護シースは、自己閉鎖する、長手方向にスリットされたシースから成る、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電磁保護シース。
【請求項5】
前記電磁保護シースは、前記シース(10)の長手方向縁部(10a,10b)に設けられた自己把持するクロージャ手段(13)を備えている長手方向にスリットされたシースから成る、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁保護シース。
【請求項6】
前記電磁保護シースは、形状記憶体を備えている長手方向にスリットされたシースから成る、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁保護シース。
【請求項7】
前記電磁保護シースは、閉じられた管状シースである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁保護シース。
【請求項8】
前記布は、織成されており、前記導電性フィラメント(11)は縦糸を構成し、前記非導電性フィラメント(12)は横糸を構成している、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁保護シース。
【請求項9】
前記布は、編組体であり、前記導電性フィラメント(11’)は、前記布の長手方向(X)に延び、前記非導電性フィラメント(12’)は、前記布の前記長手方向(X)と交差した方向に編組されている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁保護シース。
【請求項10】
前記導電性フィラメント(11,11’)は、編組銅線から成る、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電磁保護シース。
【請求項11】
前記非導電性フィラメント(12,12’)は、PPS糸から成る、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電磁保護シース。
【請求項12】
前記非導電性フィラメント(12,12’)は、前記導電性フィラメント(11,11’)の直径よりも大きな直径を有する、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電磁保護シース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−526218(P2010−526218A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506967(P2010−506967)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000649
【国際公開番号】WO2008/152243
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508259629)
【Fターム(参考)】