説明

布製品

【課題】需要者の満足感を高めることができ、需要者参加型の新規な布製品を提供する。
【解決手段】通気性はあるが、通液性のない連続性極細繊維でなる不織布に、ネイルエナメルで基準画2が描かれていることを特徴とする。不織布としては、連続性極細ポリエチレン繊維を用いることができる。そしてユーザ側には前記基準画の改変を許容することを宣言して販売することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルエナメルによってペイント可能な布によって構成されていることを特徴とする布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
巷にはありとあらゆる素材からなり、様々なデザインや模様が施された布製品が出回っている。しかしながら、ほとんどのものは、製品を提供する側(製造メーカー等)が同じようなデザインのものを商品として大量に生産し、オリジナリティのないものが広く販売され、そしてそのデザインや模様、色等の流行は、製造メーカー主導の流行に左右されて生み出されているものといえる。
そこで、従来より、既製の布製品ではオリジナリティが無く、面白みに欠けるとして、これに満足できない需要者は、自ら好みの布製品を作成したり、既製の布製品に油性ペン等で模様を描いたり、刺繍を施すことで満足感を得ていた。
近年では、需要者の様々なニーズに応え、安価で流行に応じたものだけでなく、その人の個性を表現できるようなオリジナリティのある下着や上着、パンツ等の衣服や帽子、ハンカチ、バッグ等を含む布製品が求められている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には一の被服で複数種類の着回しを可能とする被服が開示されている。これによれば、飽きることがなく、自分の個性を存分に発揮することができるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−214021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、従来の布製品ではオリジナリティが無く、面白みに欠けるため、近年、需要者参加型の商品の開発が企業においてなされる傾向があり、また女性の間では、爪にさまざまな模様を描くネイルアートが流行しており、爪先で自己表現することもファッションの一部となっている。
このような傾向を受け、需要者の満足感を更に高める新規な商品の開発が求められている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、需要者の満足感を高めることができ、需要者参加型の新規な布製品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る布製品は、通気性はあるが、通液性のない連続性極細繊維でなる不織布に、ネイルエナメルで基準画が描かれていることを特徴とする。ここで基準画とは布製品に予め描かれ、完成品として販売される商品に付された模様、絵柄等をいう。また通気性は中のものがむれないよう空気を通すような性質をいい、通液性とは、液体を通さないような性質をいう。
【0008】
また本発明の布製品において、不織布は、連続性極細ポリエチレン繊維からなり、不織布を構成する繊維の太さは、0.5〜1ミクロンのものとすることができ、ユーザ側には基準画の改変を許容することを宣言して販売するものとすることができる。
更に基準画にラインストーンが施されているものとすることができる。即ち、基準画はネイルエナメルで描かれるものであり、それにラインストーンで装飾を施すものとすることができる。ラインストーンとしては、クリスタルガラスやアクリル、天然石、珊瑚等を用いることができる。そして布製品は、下着、ブラウス、ジャケット、パンツ、帽子、ハンカチ等とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の布製品は、連続性極細繊維でなる不織布に、通常は爪用の塗料として用いられるネイルエナメルで基準画が描かれているものでなるので、布製品に描かれる基準画は、これまでの布製品に施された絵柄、模様とは違ったタッチのものとなり、新規な布製品とすることができる。また本発明の布製品に用いられる不織布は、通気性はあるが通液性がないものなので、帽子、ハンカチ、布バッグ等の布製小物はもちろんのこと、これに留まらず、下着、シャツ、ジャケット等のあらゆる衣服に用いることができる。
【0010】
更に不織布は、連続性極細ポリエチレン繊維を用いることができ、不織布を構成する繊維の太さは、0.5〜1ミクロンのものであるので、ネイルエナメルが生地組織に染み込まず、爪に描くように繊細な絵柄、模様を布に表現することができる。繊維の太さを0.5ミクロンより細いものとすると、布の強度が弱くなり、布製品として構成できない。また繊維の太さを1ミクロンより太いものとすると、繊維同士を結合させる際に想定される以上の隙間が生じ、生地組織にネイルエナメルが入り込んでしまい、きれいに絵柄、模様を描くことができない。
【0011】
そして本発明の布製品によれば、ユーザ側には布製品に描かれた基準画の改変を許容することを宣言して販売するものとすることができる。即ち、ネイルエナメルで描かれた基準画は市販のネイルエナメルを落とすときに用いる除光液で消すことができるので、ユーザ側で基準画を消し、自分の好きな絵柄、模様を布に描いて楽しめるいわば、需要者参加型のこれまでにない新規な布製品を構成することができる。よって、この布製品によれば、従来の既製品では実現し得なかった需要者は自分のオリジナリティを表現することができるので、需要者の満足感を高めることができる。
そしてまた、布製品に描かれた基準画に更にラインストーンが施されているものとすることができるので、布製品のデザイン性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明を適用したアンダーシャツの平面図であり、図1(a)は基準画が描かれていない無地の状態、図1(b)は基準画が描かれた状態を示している。図2は本発明を適用したブラジャーとショーツの平面図、図3は本発明を適用したパンツ、帽子、ハンカチ、ブラウスの平面図である。
【0013】
図中、1はアンダーシャツ、2は基準画、2aはラインストーン、3はブラジャー、4はショーツ、5はパンツ、6は帽子、7はハンカチ、8はブラウスである。
本発明の布製品に用いられる布は、通気性はあるが、通液性のない連続性極細ポリエチレン繊維を結合させてなる不織布でなり、不織布を構成する繊維の太さは、0.5〜1ミクロンである。上記不織布は高密度のポリエチレン100%で構成され、連続性極細長繊維を高圧で紡糸し、それをくもの巣状に積層し熱と圧力で結合させることにより、繊維組織がランダムに絡み合って構成されている。
この不織布を構成する繊維の太さを0.5ミクロンより細い繊維とすると繊維の強度が弱くなり、アンダーシャツ1等、布製品に適用できない。また1ミクロンより太い繊維とすると繊維同士を結合させるときに想定される以上の隙間が生じ、通液性のあるものになってしまう。
【0014】
ここでいう不織布は、上述のように通気性はあるが、通液性のないポリエチレン繊維でなるものであれば、どのようなものでもよく、下記製法の特にいずれかに限定するものではない。不織布は繊維をランダムに配列・重ねあわせたもの(ウェブ)を作り、繊維同士を物理的、化学的にシート状に結合させて製造され、繊維の太さや種類、添加物を加えることにより機能の異なるものとすることができるものである。繊維同士を結合させる製法としては、低融点の繊維を熱ロールで圧着するサーマルボンド法、接着樹脂で結合させるケミカルボンド法、針の微少な突起で繊維同士を絡ませるニードルパンチ法、糸で縫い込むステッチボンド法、高圧水流で絡ませるスパンレース法等がある。
【0015】
本発明の布製品は、上記不織布をいわばキャンバスに見立てて、通常は爪の表面に塗っておしゃれするときに用いられるネイルエナメルで基準画2が描かれていることを特徴とする。ここで基準画2とは布製品に予め描かれ、完成品として販売される商品に付された模様、絵柄、文字等をいう。またここで使用されるネイルエナメルは、ニトロセルロースと溶剤でなる一般に市販されたものを用いることができる。上記溶剤にはトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、エタノール等がある。
【0016】
布製品の基準画2がネイルエナメルで描かれている、また描けることは、従来の布製品のようにプリントされたものとは違うタッチのものとすることができる点やネイルアートを楽しむように布製品を装飾できる点等で新規なものである。また塗料として使用されるネイルエナメルは、化粧品店等で簡単に入手でき、安価で様々な色があり、ラメ入り、パール入りのもの等、バリエーション豊富な塗料である。よってこれを使用できれば、様々な表現が可能である。通常の布であれば、生地組織にネイルエナメルが入り込んでしまい、にじんだりしてきれいにペイントすることができない。この点については実験例と共に、詳しく後述する。また上記不織布によれば、通常ネイルエナメルを落とすときに用いる除光液(ネイルリムーバー)で描いた基準画2を消すことができるので、ユーザ側には基準画2の改変を許容することを宣言して販売するものとすることができる。即ち、本発明の布製品を購入した購入者(ユーザ)は、基準画2を市販の除光液で落とし、ネイルエナメルで自分の好きな模様、絵柄、文字等を自由に描くことができ、その布製品をオリジナリティのあるユニークなものとすることができるのである。
【0017】
図1は本発明をアンダーシャツ1に適用した例を示しており、図1(a)は基準画2が描かれていない無地の状態、図1(b)は基準画2が描かれた状態を示している。
この例のアンダーシャツ1は、上述の不織布でなり、縫製されたもの(図1(a))に、ネイルエナメルで装飾を施されてなるものである(図1(b))。この図例では肩の部分と裾の部分に花と蝶の絵と名前が部分的に描かれているがこの部分だけに限定されるものではなく、もちろん全面に描かれたものとしてもよい。上述のように、布に描かれた基準画2は除光液で消すこともできるので、絵柄を自由に変えることができ、またアンダーシャツ1のユーザの名前を書き換えることもできる。
また商品として市場で販売されるときには、上述の不織布でなる無地のアンダーシャツ1として販売し(図1(a)の状態)、そのアンダーシャツ1にどのような模様等を描くかははじめから購入者に任せるものとしてもよい。販売形態としては、ペイントグッズとしてネイルエナメルをセット販売するものとすることができる。
【0018】
図2は本発明をブラジャー3及びショーツ4に適用した例を示しており、ここでは基準画2に更にラインストーン2aが施されているものを示している。尚、基準画2やラインストーン2aの構成については図例に限定されるものではない。
ラインストーン2aの接着方法は特に限定するものではないが、ネイルエナメルを接着剤としたり、エポキシ系等の樹脂接着剤で接着する他、超音波やプレス機によって熱圧着することができる。ラインストーンとしては、クリスタルガラスやアクリル、天然石、珊瑚等を用いることができる。
【0019】
図3は、本発明をパンツ5、帽子6、ハンカチ7、ブラウス8に適用した例である。このように本発明の不織布は、通気性があるので、衣服に幅広く適用することができる。衣服としては、犬や猫のペット用衣服にも適用できる点は言うまでもない。
図例の帽子、ハンカチの他、かばんやなべつかみ等の台所布製品等のあらゆる布製品に適用できる。また、製品の一部、例えば革のジャケットの一部や綿やニットでなる衣服の一部に上述の不織布を用いれば、適用範囲は更に広がる。
【0020】
(実験例)
以下、本発明を更に詳しく説明するために、表1に実験結果を示すとともに、以下説明する。
下記表1は、比較例1〜5、実施例1として、布以外にも様々な素材に下記ネイルエナメルでペイントする実験を試み、その評価を示したものである。
使用したネイルエナメルは、(株)コーセー:スーパークオンネイル、(株)ドゥ ベスト(ラバンセ ネイルエナメル)、(株)アクス:FSP HAYABUSA NAIL、(株)トレンディハウス:クレヨンアートネイル、クリスチャンディオール社:ネイルエナメル、メイベリン ニューヨーク社:5DAYネイルである。
【0021】
【表1】

【0022】
(比較例1)
比較例1は、編み物系、ニット系の布に上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。カネボウ ソアリオン G330、旭化成 ロイカ A3228、東洋紡 アイシス綿混ソーウェイ T9906にペイントしてみたが、いずれのものにおいても、生地組織にネイルエナメルが入り込みきれいにペイントできなかった。
【0023】
(比較例2)
比較例2は、織物系の布に上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。澤村(株)シホンジョーゼット 7572、東レ シルック パレルS 8425S、シーチングにペイントしてみたが、いずれのものにおいても、生地組織にネイルエナメルが入り込みきれいにペイントできなかった。
【0024】
(比較例3)
比較例3は、シリコンに上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。鈴木油脂工業(株)製 シリコンパットにネイルエナメルでペイントしようとすると、シリコンにネイルエナメルが吸収されてしまいペイントできなかった。
【0025】
(比較例4)
比較例4は、ウレタンとしてモールドカップに上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。ユタックス(株)製 UM−01 三角パット モールドカップにネイルエナメルでペイントしようとすると、ネイルエナメルが吸収されペイントできなかった。
【0026】
(比較例5)
比較例5は、不織布系の布に上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。FGN BYRON社 品番BR24T360N バイリーン、フェルトにペイントしてみたが、いずれのものにおいても、生地組織にネイルエナメルが入り込みきれいにペイントできなかった。
【0027】
(実施例)
実施例1は、不織布系に属するデュポン社のタイベックスに上記ネイルエナメルでペイントを試みた例である。これによれば、生地組織にネイルエナメルが入り込むことがなく、ネイルエナメルで繊細な表現で模様、絵柄、文字を描くことができた。また上記布にネイルエナメルで模様を描いた後、描いた部分を乾燥し、洗濯機で洗濯したところ、描いた部分が落ちることがなく、除光液を上記布にふくませて擦ったところ、生地が劣化することなく、描いた部分を擦り落とすことができた。更に通気性、透湿性があり、その強度も縫製に耐えられるものであるので、あらゆる布製品に適用可能であることがわかった。
【0028】
(結果)
以上より、実施例1のデュポン社のタイベックスによれば、ネイルエナメルを塗料として生地に模様を描くことができ、また除光液によって描いた部分を落とすことができることがわかった。更にこの生地の有する上述の特性によってあらゆる布製品に用いることができることもわかった。
その他、表には表していないが、和紙のような不織布にも試してみたが、綺麗にペイントすることができず、また布製品とするには、縫製・洗濯に耐える強度、特性が必要であるが、適した素材を見出すことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用したアンダーシャツの平面図であり、図1(a)は基準画が描かれていない無地の状態、図1(b)は基準画が描かれた状態を示している。
【図2】本発明を適用したブラジャーとショーツの平面図である。
【図3】本発明を適用したパンツ、帽子、ハンカチ、ブラウスの平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 アンダーシャツ(布製品)
2 基準画
2a ラインストーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性はあるが、通液性のない連続性極細繊維からなる不織布に、ネイルエナメルで基準画が描かれていることを特徴とする布製品。
【請求項2】
請求項1に記載の布製品において、
前記不織布は、連続性極細ポリエチレン繊維からなることを特徴とする布製品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の布製品において、
前記不織布を構成する繊維の太さは、0.5〜1ミクロンのものであることを特徴とする布製品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の布製品おいて、
ユーザ側には前記基準画の改変を許容することを宣言して販売することを特徴とする布製品。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の布製品において、
前記基準画に更にラインストーンが施されていることを特徴とする布製品。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の布製品において、
前記布製品は、下着、ブラウス、ジャケット、パンツ、帽子、ハンカチのいずれかであることを特徴とする布製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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