説明

希土類金属を含有する硬化性組成物

【課題】硬化が早く生産性に優れ、かつ、耐熱性、透明性に優れる硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】下記特長を有する樹脂組成物を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(A)アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)シリコーン系重合体粒子、
(D)ヒドロシリル化触媒、および
(E)希土類金属を含有する化合物
を含有することを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化が早く生産性に優れ、かつ、耐熱性、透明性に優れる硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は小型で効率よく鮮やかな色の発光をする。また、半導体素子であるため球切れがない。駆動特性が優れ、振動やON/OFF点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。そのため、各種インジケーターや種々の光源として利用されている。一般にLEDは、エポキシ系化合物、シリコーン系化合物等の樹脂ペーストにより基板に接着される。近年、LEDの利用分野の広がりと共に、より信頼性が高く、長期間かつ、高輝度に発光可能なLEDが求められている。高輝度に発光可能なLEDは発熱が大きいため、LEDを接着している樹脂には接着性のほかに高い耐熱性が求められている。また、 接着用樹脂を通過した光を高反射率の材料が用いられた基板によって反射させる構造をとる。そのため、LED近傍は光が部分的に密に閉じ込められ、LED近傍の光密度が極めて高くなる。従って、該LEDを接着している樹脂には接着性、耐熱性のほかに高い透明性が求められている。このような材料として、例えばエポキシ・シリコーン樹脂が知られているが(特許文献1)、その成形加工に長時間の高温での加熱が必要とされるため、製品の製造工程上、より簡便な手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−2233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情から、本発明の目的は、硬化が早く生産性に優れ、かつ、基材との接着性、耐熱性、透明性に優れる硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記特長を有する希土類金属を含有する樹脂組成物を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0006】
1) (A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)シリコーン系重合体粒子、
(D)ヒドロシリル化触媒、および
(E)希土類金属を含有する化合物
を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0007】
2) (A)成分が以下の構造式で表されることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン。
【0008】
3) (B)成分が以下の構造式で表されることを特徴とする1)または2)に記載の硬化性組成物。
一般式(4)
SiO4/2(4)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(5)、(6)
b1b22SiO1/2(5)
b23SiO1/2(6)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(5)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【0009】
4) (A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、(C)成分が1〜50重量部であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0010】
5) (C)成分がシリコーン粒子(C−1)に、アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第1シェル成分(C−2)、さらにその後アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第2シェル成分(C−3)からなる、シリコーン粒子コア−アルコキシシラン縮合物シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0011】
6) (C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が、(b)成分、(c)成分および(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上の成分を縮合させて得られることを特徴とする、5)に記載の硬化性組成物。
(b)成分:一般式(7)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0018】
7) (C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が、(a)成分を必須成分とし、さらに(b)成分、(c)成分および(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上の成分を縮合させて得られることを特徴とする、5)または6)に記載の硬化性組成物。
(a)成分:一般式(10)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R12はアルキル基を示し、R13、R14およびR15は、同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される1官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(7)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0027】
8) (C−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(C−1)成分と(C−2)成分と(C−3)成分を合わせて100重量%)であることを特徴とする、5)〜7)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0028】
9) (E)成分物が、希土類金属の酸化物、水酸化物、塩基性炭酸塩、およびSi−O−M(Mはランタン系希土類金属)結合を有する酸化物、水酸化物から選択される少なくとも1種の化合物、であることを特徴とする1)〜8)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0029】
10) 1)〜9)のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【0030】
11) 放射線を照射することを特徴とする1)〜9)のいずれか一項に記載の組成物の硬化方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の希土類金属の含有した組成物は、容易に硬化し、しかも接着性、耐熱性および透明性に優れる硬化物となる。加えて、本組成物は、放射線を照射することによりさらに容易に硬化する。そのため、例えば、各種基材の接着用として有用である。また、硬化速度が速いため、例えば、該組成物を使用する製品の製造における生産性の向上、省エネルギー化、熱履歴の省略等の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細を説明する。
【0033】
<(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン>
本発明における(A)成分は、後述の(B)成分である一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0034】
直鎖状の(A)成分の例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0035】
また環状の(A)成分の例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0036】
また三次元架橋構造を有する(A)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2 (2)
a23SiO1/2 (3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された重合体が好ましいものとして例示される。
主構造に一般式(1)で表される4官能性の構造単位を用いると、高い架橋密度の主骨格が得られるため、硬化物の強度および硬度を高くすることができるため好ましい。
【0037】
主構造の末端を、一般式(2)、(3)で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端を一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された重合体が、ヒドロシリル化反応による組成物の架橋点となるアルケニル基を簡便な方法で導入する事ができて有利である。またRa1のアルケニル基と、Ra2のアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基の比率を調節することで、(A)成分中のアルケニル基の量を調節する事ができるため、任意の架橋密度が簡便な方法で得られるので好ましい。
【0038】
また、後述の(B)成分の主構造が4官能性の構造単位であり、その主構造の末端を1官能性の構造単位で封鎖した重合体である場合、(A)成分と(B)成分との相溶性が良好で、透明性が高く、また硬度が高い硬化物が得られることから好ましい。
【0039】
前記アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が好ましく、入手性、また、耐熱性・耐光性の観点からビニル基がさらに好ましい。
【0040】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等、などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からメチル基がさらに好ましい。
【0041】
この(A)成分は、一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有していれば良いが、(A)成分中のアルケニル基の含有量は0.1〜10モル/kg、特に0.5〜9モル/kgであることが好ましい。0.1モル/kg以下では硬化物が十分な硬度が得られず、10モル/kg以上では架橋密度が高すぎて耐熱性、耐クラック性が低下する可能性がある。
【0042】
更に上記(A)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0043】
<(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明における(B)成分は、(A)成分とヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0044】
直鎖状の(B)成分の例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0045】
また環状の(B)成分の例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0046】
また三次元架橋構造を有する(B)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(4)
SiO4/2(4)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(5)、(6)
b1b22SiO1/2(5)
b23SiO1/2(6)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(5)で少なくとも2つ封鎖された構造を有するものが好ましいものとして例示される。
主構造に一般式(4)で表される4官能性の構造単位を用いると、高い架橋密度の主骨格が得られるため、硬化物の強度および硬度を高くすることができるため好ましい。
【0047】
主構造の末端を、一般式(5)、(6)で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その構造の末端が一般式(5)で少なくとも2つ封鎖された重合体が、ヒドロシリル化反応による組成物の架橋点となる水素原子基を簡便な方法で導入する事ができる点で有利である。またRb1の水素原子基と、Rb2のアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基の比率を調節することで、(B)成分中のヒドロシリル基の量を調節する事ができるため、任意の架橋密度が簡便な方法で得られるので好ましい。
【0048】
また、先述の(A)成分の主構造が4官能性の構造単位であり、その主構造の末端を1官能性の構造単位で封鎖した重合体である場合、(A)成分と(B)成分との相溶性が良好で、透明性が高く、また硬度が高い硬化物が得られることから好ましい。
【0049】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等、などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からはメチル基がさらに好ましい。
【0050】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、前述の(A)成分のアルケニル基1モルに対して(B)成分のヒドロシリル基が0.3〜5モル、好ましくは0.4〜2モルとなる割合であることが望ましい。(B)成分のヒドロシリル基の量が少ないと、硬化物が十分な硬度が得られず、(B)成分のヒドロシリル基の量が多いと、硬化収縮が大きくなる可能性がある。
【0051】
更に上記(B)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0052】
<(C)シリコーン系重合体粒子>
本発明における(C)成分は、マトリクス樹脂が持つ特徴である高い硬度や透明性を維持したまま、シリコーン系硬化物の耐熱性、耐クラック性や機械的応力緩和能の向上を付与することができる。
【0053】
(C)成分の配合量については、(A)および(B)成分の合計重量を100重量部とした場合、(C)成分が50〜1重量部であることが好ましく、45〜3重量部であることがより好ましい。(C)成分が多いと、配合時に増粘したり、硬化物の透明性が低下したりする場合がある。また(C)成分が少ないと、耐熱性、耐クラック性が不十分になる場合がある。
【0054】
本発明における(C)成分は、シリコーン系重合体粒子であれば特に制限はないが、特に、前記(C)成分がシリコーン粒子をコアとし、アルコキシシラン縮合物を縮合させて得られるシェルからなるシリコーン系重合体粒子を好適なものとして例示することができる。
【0055】
本発明におけるコアシェル構造とは、例えばコアとなる粒子の存在下、コアを形成するモノマー成分とは異なる組成や成分からなるモノマー成分を反応させることで得ることができる。シェル成分をコア粒子に吸収させながらコアシェル構造を形成したり、コア部からシェル部への傾斜構造等を形成したりすることも可能であるが、コア粒子との反応性を有するシェル成分を用い、コア粒子の外側にシェル部を形成したような構造を有する粒子が好ましい構造として例示される。
【0056】
(C−1)成分であるシリコーン粒子と、(C−2)成分である第1シェル成分と、(C−3)成分である第2シェル成分のコアシェル構造を有することにより、(C)成分の表面のシラノール基を減少させることができる。これにより、例えばマトリクスとの親和性や相溶性を向上させることができ、さらにマトリクスに配合した際の配合物の粘度が高くなりすぎたりすることを防ぐことができる。さらにこの配合物の経時変化、特に粘度上昇を防ぐことも可能である。
【0057】
(C−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(C−1)成分と(C−2)成分と(C−3)成分を合わせて100重量%)であることが好ましい。
【0058】
さらには(C−1)成分であるシリコーン粒子35〜96重量%に対して、(C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が2〜37重量%、(C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が2〜28重量%被覆した重合体であることがより好ましい(ただし、(C−1)成分と(C−2)成分と(C−3)成分を合わせて100重量%)。
【0059】
(C−1)成分が少ない場合、粒子の柔軟性が損なわれるため、(C)成分を配合したマトリクス樹脂の耐熱性、耐クラック性が低下する場合があり、(C−2)成分が少ない場合、(C)成分が本来の粒子の形状を維持できずにマトリクス中に(C)成分が流出し、(C)成分を配合したマトリクス樹脂の強度を低下させるなど物性の低下を招くことがある。また(C−3)成分が少ない場合、(C)成分表面のシラノール基を十分に減少させることができず、例えばマトリクス樹脂との相溶性が不十分になったり、配合組成物の粘度が高くなったり、経時的に増粘したりすることがある。
【0060】
(C−1)成分は、シリコーン粒子であれば良いが、一般式(11)
amSiO(4-m)/2(11)
(式中、Raは置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。mは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位を有するオルガノシロキサンから成ることが好ましい。
【0061】
また(C−1)成分は、上記一般式(11)でm=2の構造単位が、(C−1)成分の70モル%以上を占めていることが好ましく、さらに好ましくは80モル%以上を占めていることが好ましい。この成分が少ないと(C−1)成分の柔軟性が損なわれるため、(C)成分を配合したマトリクス樹脂の、硬化後の耐熱性、耐クラック性が低下したりする場合がある。
【0062】
(C−1)成分はオルガノシロキサンの重合により得ることができるが、そのオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状構造のいずれであってもよいが、入手の容易さやコストの観点から、環状構造を有するオルガノシロキサンを用いるのが好ましい。
【0063】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらオルガノシロキサンは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の一価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびそれらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などをあげることができる。
【0065】
また(C−1)成分の分子の末端がシラノール基であることが好ましい。分子の末端にシラノール基を有していることで、後述の(C−2)成分との間で縮合反応により結合を形成するため、安定的なコア−シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子を得ることができる。
【0066】
(C−1)成分の製造方法には、特に限定はないが、通常の乳化重合、分散重合、溶液重合などでも得ることが可能であり、粒径の制御が可能で分布ある点や、操作の簡便性等の点を考慮すると、乳化重合で得ることが好ましい。
【0067】
(C−1)成分は、より粒子径の小さい粒子を得ることができ、さらにラテックス状態での粒子径が狭くできる利点などからもシード重合を利用することが好ましい。シード重合に用いるシードポリマーは特に限定は無いが、アクリル酸ブチルゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンやブタジエン−アクリロニトリルゴム等のゴム成分、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体やスチレン−アクリロニトリル共重合体等の重合体を用いることができる。
【0068】
(C−1)成分は、例えば、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応が速く進行するため有利である。たとえば上記のオルガノシロキサンを含んだ各種原料を、乳化剤および水とともにホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザーなどを用いてエマルジョンとし、ついで、系のpHを酸成分で5以下、好ましくは4以下に調整し、加熱して重合させる。この際に用いる酸成分としては、安定して乳化重合を進行させることができ、またそれ自身も乳化能を併せ持つものが好ましく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホコハク酸などが例示されうる。
【0069】
なお、原料の全部を一括添加したのち、一定時間撹拌してからpHを任意の値に調整してもよく、また原料の一部を仕込んでpHを任意の値に調整したエマルジョンに残りの原料を逐次追加してもよい。逐次追加する場合、そのままの状態、または水および乳化剤と混合して乳化液とした状態のいずれで添加してもよいが、重合速度を速くすることができるので、乳化状態で追加する方法を用いることが好ましい。反応温度、時間は、反応制御の容易さから反応温度は0〜100℃が好ましく、50〜95℃がさらに好ましい。反応時間は、好ましくは1〜100時間であり、さらに好ましくは3〜50時間である。
【0070】
酸性条件下で重合を行う場合、通常、(C−1)成分の骨格を形成しているSi−O−Si結合は、切断と結合生成の平衡状態にある。この平衡は温度によって変化し、低温になるほど高分子量の(C−1)成分が生成しやすくなる。したがって、高分子量の(C−1)成分を得るためには、加熱により重合した後、重合温度以下に冷却して熟成を行うことが好ましい。
【0071】
具体的には、50℃以上で重合を行い重合転化率が75〜90%、さらに好ましくは82〜89%に達した時点で加熱を止め、重合温度より低い温度例えば、10〜50℃、好ましくは20〜45℃に冷却して5〜100時間程度熟成を行うことができる。なお、ここで言う重合転化率は原料中の低揮発分のオルガノシロキサンの(C−1)成分への転化率を意味する。
【0072】
乳化重合に用いる水の量についてはとくに制限は無く、各種原料を乳化分散させるために必要な量であれば良く、あえて例示するなら通常原料の合計量に対して1〜20倍の重量を用いれば良い。
【0073】
乳化重合に用いる乳化剤は、反応を行うpH領域において乳化能を失わないものであれば特に限定なく公知のものを使用することができる。かかる乳化剤の例としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、該乳化剤の使用量にはとくに限定がなく、目的とする(C−1)成分の粒子径などに応じて適宜調整すればよい。
【0074】
充分な乳化能が得られ、かつ得られる(C−1)成分と、それから得られる、前記(C)成分であるシリコーン系重合体粒子の物性に悪影響を与えないという点から、あえて例示するならエマルジョン中に0.005〜20重量%用いるのが好ましく、特には0.05〜15重量%用いるのが好ましい。
【0075】
(C−1)成分のラテックス状態のシリコーン粒子の体積平均粒径は、0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2.0μmがより好ましく、0.05μm〜0.5μmが特に好ましい。体積平均粒径が小さいものは安定的に得ることは難しく、大きいと硬化物にしたときの透明性が悪くなる場合がある。なお、体積平均粒径の測定は、例えば、ナノトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて行うことができる。
【0076】
本発明に用いる(C−1)成分の合成の際に、必要によっては架橋剤、グラフト交叉剤と言われるものを添加することもできる。
【0077】
本発明の(C−1)成分の合成に用いることができる架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの縮合反応に関与できる官能基を3個含むいわゆる3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、1,3ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−3−〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−4−〔2−ジメトキシメチルシリル〕エチル〕ベンゼンなどの縮合反応に関与できる官能基を4個含むいわゆる4官能性架橋剤、さらにはこれら架橋剤のアルコキシ基を縮合させた部分縮合物を挙げることができる。
【0078】
これら架橋剤は、必要に応じ、1種若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。この架橋剤の添加量は、オルガノシロキサン100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。架橋剤の添加量が多いと、(C−1)成分の柔軟性が損なわれるため、(C)成分をマトリクス樹脂に配合した際の耐熱性、耐クラック性が低下する場合がある。また架橋剤の添加量を調節することで、架橋度を変化させることにより(C−1)成分の弾性を任意に調節することができる。
【0079】
本発明に用いることができるグラフト交叉剤は、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0080】
本発明に第1シェル成分(C−2)用いることにより、(C)成分の粒子としてのモルフォロジーを保持することが可能である。例えば(C)成分を配合したマトリクス樹脂から得られる硬化物の耐熱性、耐クラック性向上に寄与することができる。
【0081】
本発明の(C−2)成分に用いるアルコキシシランは、以下の一般式(7)で表される(b)成分である2官能性アルコキシシラン化合物、一般式(8)で表される(c)成分である3官能性アルコキシシラン化合物、一般式(9)で表される(d)成分である4官能性アルコキシシラン化合物、およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)等を用いることが可能であり、これらを加水分解・縮合させることで(C−2)成分が得られる。これらアルコキシシランは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
(b)成分:一般式(7)
【0082】
【化8】

【0083】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0084】
【化9】

【0085】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0086】
【化10】

【0087】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0088】
上記一般式(7)〜(9)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
また、一価の有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等の炭化水素基があげられる。
【0089】
アルコキシシラン化合物を用いて(C−2)成分を得る重合方法は、乳化重合を用いることができる。乳化重合の条件は一般的な条件が適用できるが、特に重合温度に注意を払うことが好ましい。重合の際の温度は、20〜85℃を適用することが好ましい。また、重合時間は1〜50時間が適用できる。
【0090】
また(C―2)成分は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応の際にゲル化を抑制しやすい等の理由により有利である。
【0091】
本発明に用いるアルコキシシラン縮合物(C−3)により、(C−1)成分と(C−2)成分の表面に多数存在するシラノール基を減らすことができる。これにより、粒子表面のシラノール基に由来する様々な問題、例えば(C)成分とマトリクスとの相溶性や親和性の低下する問題や、シリコーンゴムやシリコーン樹脂に配合した際に配合物の粘度が高くなりすぎてしまう問題や、配合物が経時変化して粘度が次第に上昇する問題を解決することができる。
【0092】
またこのようなシラノール基が多数含まれる粒子を配合した際に、例えば硬化物の吸湿の原因となり、冷熱試験の際にクラックが生じたりすることもあったが、このような問題も解決できる。
【0093】
本発明の(C−3)成分はアルコキシシランの縮合物を用いるが、アルコキシシランとしては、以下の一般式(10)で表される(a)成分である1官能性アルコキシシラン化合物およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)を必須成分とすることが好ましい。これらは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0094】
【化11】

【0095】
一般式(10)において、R12はアルキル基を示し、R13、R14、R15は同一または異なる一価の有機基を示す。
上記一般式(10)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
また、一価の有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等の炭化水素基があげられる。
【0096】
さらに(C−3)成分は、前記(b)成分、前記(c)成分および前記(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。(a)成分と、(b)成分、(c)成分および(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上とを組み合わせることで、(a)成分を(C−3)成分に効率よく取り込むことが可能となる。
【0097】
またここで(a)〜(d)成分の少なくともひとつにおいてアルケニル基を含む成分を用いれば、(C)成分にアルケニル基を導入することができる。アルケニル基が導入された(C)成分を、ヒドロシリル化反応により硬化するマトリクス樹脂に配合した組成物は、(C)成分とマトリクス樹脂との間で結合を形成するため、該組成物から得られる硬化物の強度を向上させることができるので好ましい。
【0098】
アルコキシシラン化合物を用いて(C−3)成分を得る重合方法は、乳化重合を用いることができる。乳化重合の条件は一般的な条件が適用できるが、特に重合温度に注意を払うことが好ましい。重合の際の温度は、20〜85℃を適用することが好ましい。また、重合時間は1〜50時間が適用できる。
【0099】
また(C―3)成分は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応の際にゲル化を抑制しやすい等の理由により有利である。
【0100】
乳化重合によって得られた(C)成分であるシリコーン系重合体粒子のラテックスから粒子を分離する方法としては、特に限定は無いが、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法などがあげられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
【0101】
本発明において得られる(C)成分をマトリクス樹脂中に均一に分散させることが可能であり、さらに透明な硬化物を得ることができる点から、マスターバッチ法を用いるのが好ましい。
【0102】
マスターバッチ法としては、水系ラテックス溶液に水に可溶あるいは部分可溶な有機溶剤、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)やケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル)等などを加えることで、粒子どうしを緩凝集させた後、遠心沈降や濾過などの方法で緩凝集体を回収し、この緩凝集体が分散可能な溶剤に再分散させてからマトリクス樹脂と混合し、溶媒を留去させる方法が例示される。
【0103】
<(D)ヒドロシリル化触媒>
本発明における(D)成分であるヒドロシリル化触媒としては、特に制限はなく、任意のものが使用でき、例えば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒を使用することができる。前記白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類やビニルシロキサンとのコンプレックスなどが例示される。白金系触媒の添加量は、(A)成分のアルケニル基1モルに対し、白金原子として10-1〜10-10モルの範囲で用いるのが好ましく、10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがより好ましい。白金触媒が多すぎると短波長の光を吸収するため、得られた硬化物の耐光性が低下するおそれがあり、また少なすぎるとマトリクスが硬化しない場合がある。
【0104】
<(E)希土類金属を含有する化合物>
(E)成分は、本発明の硬化性組成物の硬化性を向上させるための成分である。本発明における(E)成分は、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウムなどの酸化物、水酸化物、塩基性炭酸塩、さらには、Si−O−M(Mはランタン系希土類金属)で示されるケイ素と希土類金属の結合を有する酸化物、水酸化物であればよい。このケイ素を含む希土類金属化合物は、例えば、一般式RdSiX(4-d)(Rは、1価の炭化水素基、Xは加水分解性の基、d=0〜3)で示されるシラン、または、その部分加水分解物と希土類金属化合物を共加水分解することによって得られるものでもよい。
本発明における(E)成分の添加量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量物、好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少なすぎると、硬化促進の効果が不十分であり、添加量が多すぎると、硬化後の組成物の透明性が損なわれる恐れがある。
【0105】
<硬化性組成物>
本発明の希土類金属を含有した硬化性組成物は、容易に硬化し、しかも接着性、耐熱性および透明性に優れる硬化物となる。加えて、放射線の照射により、さらに容易に硬化する。そのため、各種基材の接着用として有用である。また、硬化速度が速いため、例えば、製造における生産性の向上、省エネルギー化、熱履歴の省略等の効果が得られる。前記放射線源としては、紫外線、電子線等が例示される。放射線の強度、照射時間は、用途や生産工程に合わせて、任意に設定される。放射線照射のみで硬化が不十分な場合は、その後のアニールにより、さらに硬化を進行させてもよい。アニール温度としては任意に設定されるが、25〜300℃の温度範囲が好ましく、30〜280℃がより好ましく、35〜260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に硬化させるための時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。アニールは一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。硬化時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で硬化させることもできる。
本発明の硬化性組成物は、基材との接着性を向上させるために、接着性付与剤を添加することができる。
【0106】
本発明における接着性付与剤としては、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を好適に使用することが可能である。
【0107】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0108】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0109】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0110】
前記、ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−s−ブチル、ほう酸トリ−t−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0111】
前記、チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0112】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0113】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、組成物の硬化を阻害する恐れがあるため、影響を考慮しなければならない。
【0114】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0115】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。
【0116】
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。
【0117】
窒素含有化合物としては、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が挙げられる。
【0118】
スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0119】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜104モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜103モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0120】
また、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0121】
本発明の硬化性組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0122】
本発明の硬化性組成物は、光学材料として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0123】
本発明の硬化性組成物は、様々な用途に用いることができる。用途の具体例としては、液晶ディスプレイ分野では、基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0124】
また、カラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0125】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0126】
光学機器分野では、カメラの撮影レンズ、レンズ用材料、ファインダー、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0127】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0128】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0129】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0130】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品、自動車の窓ガラス中間膜が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラス中間膜が例示される。また、航空機用途においては、構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コート、窓ガラス中間膜が例示される。
【0131】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0132】
以下の実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0133】
(耐熱性試験)
耐熱試験として、得られた硬化物を空気中160℃で24時間アニールし、硬化物の性状を目視した。硬化物の性状に変化がない場合は○とし、変色した場合を×とした。
【0134】
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに純水400重量部および10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液12重量部(固形分)を混合したのち窒素雰囲気下で50℃に昇温した。その後アクリル酸ブチル(BA)10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部(固形分)を加えた。
【0135】
30分後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.019重量部、硫酸第一鉄0.019重量部を添加し、1時間攪拌した。BA90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、および、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.18重量部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。さらに1時間の後重合を行い、シードポリマー(体積平均粒径0.020μm)を含むラテックスを得た。
【0136】
次に、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、上述のシードポリマーを2.0重量部(固形分)、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸1.5重量部(固形分)および純水300重量部(シードポリマーを含むラテックスからの持ち込み分を含む)を仕込んだ後、10分間攪拌してから、窒素雰囲気下で系を80℃に昇温させた。これとは別に純水150重量部、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン97重量部、トリメトキシメチルシラン3重量部からなる混合物をホモミキサーにて、8000rpmで5分間強制乳化した後に、この混合液を3.5時間かけて連続追加した。さらに2.5時間の後重合を行い、25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(C−1)成分であるシリコーン粒子(体積平均粒径0.110μm)を含むラテックスを得た。
【0137】
(合成例2)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、合成例1で得られた(C−1)成分であるシリコーン粒子90重量部(固形分)、およびドデシルベンゼンスルホン酸を10重量%水溶液で0.45重量部(固形分)を仕込み、窒素雰囲気下で40℃に昇温させた。
【0138】
これとは別に、純水40重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.1重量部(固形分)、ジメトキシジメチルシラン7.30重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)11.16重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、20分間かけて滴下して加えた。この溶液を40℃に保ったまま5時間攪拌することで(C−2)成分を形成した。
【0139】
次にこの溶液に、純水27重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.03重量部(固形分)、メトキシトリメチルシラン6.42重量部((CH33SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して5.0重量部に相当)、エトキシジメチルビニルシラン1.40重量部(Vi(CH32SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して1.0重量部に相当)、ジメトキシジメチルシラン0.81重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)1.24重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、10分間かけて滴下して加えた。
【0140】
この溶液を40℃に保ったまま4.5時間攪拌することで(C−3)成分を形成した。この系を25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(C)成分であるシリコーン系重合体粒子(体積平均粒径0.112μm)を含むラテックスを得た。
【0141】
(合成例3)
合成例2で得られた(C)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対して酢酸エチル/メタノール=6/4 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿を酢酸エチル/メタノール=3/7 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をさらに酢酸エチル/メタノール=4/6 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。酢酸エチル/メタノール=4/6 (vol/vol)の混合溶媒での洗浄をさらに2回(合計3回)行った後、得られた沈殿35重量部に酢酸エチル350重量部を加えて、(C)成分の酢酸エチル溶液を得た。
【0142】
(合成例4)
合成例3で得られた(C)成分の酢酸エチル溶液に、(A)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部を溶解し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを留去し、(A)成分、(B)成分および(C)成分からなる組成物を得た。
【0143】
(実施例1)
合成例4で得られた(A)成分、(B)成分および(C)成分からなる組成物100重量部に対して、(E)成分である酸化セリウム(和光純薬社製)3重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、(D)成分である白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)を0.0062重量部をこの順に加えた後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状組成物を得た。得られた組成物を、ポリイミドフィルムの上に、厚さ150μmのアプリケーターで膜状に伸ばし、ここに2mm角のガラス製ダイを接触させ、ダイの片面に該液状組成物を付着させた後、ガラスエポキシ製およびポリフタルアミド製平板それぞれにのせた。このサンプルを放射線照射装置(アイグラフィックス製、照射距離80mm、3000Wメタルハライドランプ使用)により、30秒照射したところ、ダイが固定され硬化が進行している様子が観察された。
【0144】
また、該液状組成物を厚さ1mmになるように型に充填し、放射線照射装置により、30秒照射した。得られた硬化物を使用し、上記の耐熱試験を行った。
【0145】
(比較例1)
上記、実施例において、(E)成分を添加せずに、あとは同様に液状組成物を作成した。この液状組成物を、実施例と同様に、ガラス製ダイの片面に付着させた後、ガラスエポキシ製およびポリフタルアミド製平板それぞれにのせた。このサンプルを放射線照射装置により、30秒照射したが、ダイは容易に流動した。
また、該液状組成物を厚さ1mmになるように型に充填し、放射線照射装置により、30秒照射したが、硬化物は得られなかった。
試験結果を表1に示す
【0146】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)シリコーン系重合体粒子、
(D)ヒドロシリル化触媒、および
(E)希土類金属を含有する化合物
を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(A)成分が以下の構造式で表されることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
(B)成分が以下の構造式で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
一般式(4)
SiO4/2(4)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(5)、(6)
b1b22SiO1/2(5)
b23SiO1/2(6)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(5)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、(C)成分が1〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(C)成分がシリコーン粒子(C−1)に、アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第1シェル成分(C−2)、さらにその後アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第2シェル成分(C−3)からなる、シリコーン粒子コア−アルコキシシラン縮合物シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が、(b)成分、(c)成分および(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上の成分を縮合させて得られることを特徴とする、請求項5に記載の硬化性組成物。
(b)成分:一般式(7)
【化1】

(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【化2】

(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【化3】

(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【請求項7】
(C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が、(a)成分を必須成分とし、さらに(b)成分、(c)成分および(d)成分から選ばれる少なくとも1種類以上の成分を縮合させて得られることを特徴とする、請求項5または6に記載の硬化性組成物。
(a)成分:一般式(10)
【化4】

(式中、R12はアルキル基を示し、R13、R14およびR15は、同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される1官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(7)
【化5】

(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【化6】

(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【化7】

(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【請求項8】
(C−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(C−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(C−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(C−1)成分と(C−2)成分と(C−3)成分を合わせて100重量%)であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
(E)成分物が、希土類金属の酸化物、水酸化物、塩基性炭酸塩、およびSi−O−M(Mはランタン系希土類金属)結合を有する酸化物、水酸化物から選択される少なくとも1種の化合物、であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項11】
放射線を照射することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物の硬化方法。

【公開番号】特開2011−84592(P2011−84592A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235988(P2009−235988)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】