説明

希望面設定式均等散水型散水装置

【課題】
散水装置は円形状や扇状に散水するものが主で、異形や多角形の地形にしかも均等に散水のできる散水装置はない。本考案の散水装置はこれらを解決するもので、自由に散水希望土地形状に合わせて設定散水が可能な、好適な均等散水装置を提供する。
【解決手段】
散水装置のノズル(7)の傾きと散水量を、任意な形状の案内板(10)の選択により散水範囲を容易に設定散水ができ、しかも希望散水面に対し均等で効率のよい散水が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形など異形土地形状面に対し散水希望面のみに散水を可能にし、散水範囲面に対し、散水量を均等に散水ができる散水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畑地など土地の表面に円形状や扇状に散水するだけの散水装置は過去種々あるが、指定した形状の、また多角形や四角形などの土地面に、しかも散水量を均一に水撒き作業が行えるものはない。それらから散水する形状を希望する形状に設定することができても、散水希望範囲に対し散水量を均等に散水できず、部分的に散水量の過多や不足などでムラのある散水が多々あり、狭い住宅地などに付随する異形形状の庭園や畑地などの水撒き作業などには好適な散水装置はなかった。
【0003】
本発明に関連がある公知例として、
【特許文献1】特開昭61−95106 「軌道用融雪装置」
【特許文献2】特開平3−206822 「芝生用散水装置」
【特許文献3】特開平5−253516 「スプリンクラー」
【特許文献4】特願2006−208217「散水範囲可変式回転型散水装置」等が知られている。
【0004】
特開昭61−95106に記載されている方法は、ノズル本体の外筒部分と給水管の内筒部分とに開口した連通孔が一致した時に水の噴射流量を最大にし、連通孔が一致しない時に水の噴射流量を少なくすることにより、長方形状の散水範囲を得ようとするものであるが、外筒と内筒を一度セットすると散水範囲が限定され散水パターンの変更が行えない。また、外筒と内筒の交換を行っても、任意の形状の散水を行うことはできない。
【0005】
特開平3−206822に記載されている方法では、散水範囲を変えるには事前にプログラムの変更を行う必要があり、また芝生生育環境の諸元を測定する装置、散水量の制御装置など散水装置に付属する装置が複雑かつ高価であり、一度設置したら移動が困難である。
【0006】
特開平5−253516に記載されている方法は、散水範囲を変える前にプログラムの変更を行う必要があって取り扱いが簡便でなく、またノズル本体、および角度検出器や圧力調整器などの付属機構を動作させるための外部動力を必要とし、また機構が複雑かつ高価になる。
【0007】
特願2006−208217に記載の方法では散水範囲は任意に設定できるが、しかし散水面に散水する水量にムラが発生する。これは噴射ノズルが散水装置を中心にして、遠距離および近距離共に常時、同水量を噴射しており、それを噴射制御板で噴射距離を変える構造であるためで、散水ムラが生じる事が多々ある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の散水装置は円形状に水を飛散させる装置が主であった。しかし水撒きを必要とする土地の形状は円形状の形は少なく、多くの地形は角形が多い。そのため四角形や多角形などの形状の土地面に従来方式の散水装置で散水作業をすると、希望する散水面の隅々まで散水が行き届かなかったり、また散水作業面が過大になったり、散水により他に飛散水などの迷惑を与えることが多々ある。そして散水装置からの近距離では散水量が多く、遠距離になると散水量が不足傾向になるなど、不均一な散水になるなど使い勝手の良いものとは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の散水装置はこれらを解決するためになされたもので、散水希望土地面と略相似形の案内板を散水装置に組み込み、その形状を習うように、回転した散水装置のノズルの噴射角度を変え散水希望面にのみ散水するようにした。
【0010】
これらから、散水装置の飛散水による他への迷惑も緩和でき、また散水希望面に散水が行き届く。しかし回転式散水装置はその構造上ノズル角度の変化により遠距離散水および近距離散水作業を行うと、近距離では散水量が多くなり、また遠距離では散水量が少なくなる傾向になる。そこで本考案ではノズル角度が近距離散水時は散水量を少なく、遠距離時になる程、散水量が累進する方法とした。
【0011】
このことで結果的に水量も節約できることになる。また、従来技術の制御法よりも機構が簡単かつ安価で、散水面形状を容易に変更、設定できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項2記載の散水装置を使用することで円形状、また扇状散水だけでなく四角形や多角形など多種の形状面への散水も可能になる。
【0013】
これらから散水希望土地形状に合わせ、自由に散水装置の散水範囲を希望散水面形状に設定できるので、必要な面にのみ散水が可能になり、不必要な所への散水や、水掛による他への迷惑などが解消される。
【0014】
また異形状散水で多々生じる散水量のムラなども請求項3記載によれば散水量が散水装置より遠距離、また近距離共に、散水面に対し散水量が均等に散水される。これらにより必要な場所への散水が行き届かないことによる散水不足、また部分的な散水量過多などが解消され、そして他への散水迷惑なども解消され効率の良い散水作業が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の希望面設定式均等散水型散水装置を、水圧調整バルブハンドル(26)付きバルブ(25)を挟んで、汎用給水用バルブソケット(13)に取り付け前の状態を全体略図で示したものである。
【0016】
図について説明するとフレーム(17)上に取り付けたノズルヘッド(11)の上部に取り付けたレバーシャフト(21)には、リターンスプリング(12)を介してパルスレバー(1)を取付る。
【0017】
中心で回転動作をするように支えられたパルスレバー(1)は、噴射方向前方にノズルからの噴射水圧流で動くブレード(6)を取付、他端にはレバー重り(20)を取り付けてある。
【0018】
またノズルヘッド(11)は前方にノズル(7)と下側面に案内板(10)の習い棒であるガイドレバー(9)、そして後方にはレバー重り(20)と動作時に衝突を繰り返すレバーストップピン(19)を取り付ける。
【0019】
図2は散水回転ヘッド部周りを平面図で示したものである。図の説明をすると、図1で示したパルスレバー(1)はノズルヘッド(11)に取り付けたレバー軸(21)上で回転するように組み付け、散水装置が停止時はリターンスプリング(12)の戻し力により実線で示した、パルスレバー基本停止位置(2)の位置状態にあるが、散水装置に通水すると、ノズルから勢いよく水が噴射しパルスレバー先端に付いたブレード(6)に衝突する。
【0020】
そのためブレード(6)は先端が散水装置回転方向に、噴射水を跳ね返る様に曲げてあるので、噴射水はパルスレバー基本位置噴散水方向(5)に飛散する。
【0021】
その時に噴射水の反動を受けブレード(6)は散水装置の回転方向と反対の回転方向の力が生じるため、パルスレバーは点線で示したパルスレバー跳ね位置(3)まで、リターンスプリング(12)を押し返して移動する。
【0022】
ノズル(7)の先端からの散水方向は一時的ではあるが、パルスレバー跳ね位置(3)に先端部のブレード(6)も移動するため、ノズル(7)からの噴射水方向は跳ね返りレバー停止位置(4)に飛散する。
【0023】
しかし点線で示したパルスレバー跳ね位置(3)にある、パルスレバー先端のブレード(6)に衝突する水噴エネルギーがなくなると、パルスレバーはリターンスプリング(12)の戻し力により、実線で示したパルスレバー基本位置噴散水方向(5)方向に戻ろうとする。
【0024】
そしてレバー重り(20)が戻り慣性エネルギーにより勢いよくストップピン(19)に衝突し、その衝突力がノズルヘッド(11)に加わる。
【0025】
そしてまたパルスレバーがパルスレバー基本停止位置(2)になると、ノズル(7)からの水噴は再びブレード(6)に反動力を与えるため、パルスレバーはレバー跳ね上がり位置(3)まで移動し、再びリターンスプルング(12)の力で戻され、レバー重り(20)がストップピン(19)に衝突しノズルヘッド(11)に衝撃力を与える。
【0026】
図3はノズルヘッド周辺を示した正面略図である。前述したノズルヘッド(11)への衝撃は、フレーム(17)に組み付けられたノズルヘッド軸(16)からフレーム(17)へと断続に加わり、フレーム(17)に組み付けられた散水装置主軸(18)を中心にして主軸ホルダ(23)を受軸とし、断続回転をする。
【0027】
本回転式の散水装置はこの動作を繰り返し断続的な回転をする。また主軸スプリング(22)は水漏れ防止リング(24)と共に水漏れを防止すると同時に散水装置全体が断続回転をする時に、むやみに無駄な動作を防止するものである。
【0028】
また案内板(10)は主軸ホルダー(23)部分に容易に取り付け交換のできるものとする。そして散水装置主軸(18)、フレーム(14)そしてノズルヘッド主軸(16)、それに組み合うノズルヘッド(11)は散水する水の通路とするため中空に製作し、ノズルヘッド(11)に組み付けられたノズル(7)まで散水水を供給する。
【0029】
なお前図で述べたパルスレバー軸(21)は図に示すように、ノズルヘッド(11)に垂直に取り付ける。
【0030】
図4は散水用の水路(14)の状態を示す詳細正面図である。図の説明をすると、前述したように散水装置主軸(18)、フレーム(17)、ノズルヘッド軸(16)はそれぞれ中空に製作し、散水用の水路(14)になっている。そしてノズルヘッド軸(16)の中央付近の側面には散水水の出口である略V字形の供給口(15-b)を設ける。
【0031】
図5はノズルヘッド(11)の詳細を左側面図および正面図で示したものである。ノズルヘッド(11)は中央部の側面に水路である穴を、ノズルヘッド軸(16)の取り付く位置まで開けてあり、そしてノズルヘッド軸(16)と接する部分には細長の長方形状の給水口(15-a)とし、その外部にノズル(7)を組み付ける。
【0032】
そしてノズルヘッド(11)をノズルヘッド軸(16)に組み付けた時にノズルヘッド軸(16)の略V字形の供給口(15-b)の出口と、ノズルヘッド(11)の給水口(15-a)の長方形の給水口が、ノズルヘッド(11)がノズルヘッド軸(16)に組み付けた時にノズル(7)の姿勢状態が水平状態を中心にし、ノズルヘッド(11)およびノズル(7)が上向きに傾くに従い、給水口(15-a)と固定状態の供給口(15-b)の流路面積が大きく開口するようにする。
【0033】
またノズルヘッド(11)が水平状態よりノズル(7)共々、下向き方向に傾くに従い、給水口(15-a)と固定状態の供給口(15-b)の流路面積は小さくなるように製作してあるため、ノズル(7)からの散水量は少なくなる。
【0034】
このようにノズルヘッド軸(16)に対し、ノズルヘッド(11)の傾き具合でノズル(7)から噴射する水量が制御される。
【0035】
そして前述したように散水装置本体は散水作動時は、主軸ホルダー(23)を中心にして断続回転をする。
【0036】
そして主軸ホルダー(23)に組み込まれた案内板(10)の外周を、ノズルヘッド(11)に取り付けられたガイドレバー(9)が、案内板(10)の外周を習うように動作し、散水装置の中心部より寸法の長い部分では、ノズルヘッド(11)は上向き、前述したように遠距離へ多量の水量を散水する。
【0037】
また散水装置の主軸ホルダー(23)の中心部より寸法が短い近距離では、ノズルヘッド(11)は水平状態より下向きになり、前述したように水量が制限されノズル(7)から少量の水量が散水される。
【0038】
このように本考案の散水装置は設置した散水装置を中心に遠い距離には多量の散水を、また近い距離には少量の散水をし、結果として散水面全域に均等な散水ができる。
【0039】
ノズル噴射式散水装置は構造上、給水される水圧の変化でノズル(7)からの噴射距離に変化が生じるが、その時には水量調整バルブ(25)のバルブハンドル(26)で水量を調整することで、一律に散水範囲を相図的に調節し散水希望面に合致させることができる。
【0040】
また供給水圧が変化した時も、それに伴う散水面範囲の変化に対して水量調整バルブ(25)のバルブハンドル(26)を調整することで散水面積の調整が可能である。
【0041】
図6は一例として数種の案内板(10-A,10-B,10-C)を示した。希望土地面への散水形状は前述したように案内板(10)の形状で決まるので土地形状に合わせ、薄い形状の板などをハサミなどで裁断し希望の散水形状に設定し製作することもできる。
【0042】
また散水装置は散水希望面の略中央に設置し、散水希望面と略相似形の案内板(10)の、中央部の散水装置取り付け穴部(27)を潜してセットし、散水土地面と同じ方向に取り付ける。
【0043】
図7は、実施例の散水状態の一例を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本考案の希望面設定式均等散水型散水装置の全体略図。
【図2】散水回転ヘッド部周りの平面図。
【図3】ノズルヘッド周辺の正面略図。
【図4】水路の状態を示す詳細正面図。
【図5】ノズルヘッド周りの詳細を示した左側面図および正面図。
【図6】案内板の数種類の一例を示した図。
【図7】実施例の散水状態の一例を示した写真。
【符号の説明】
【0045】
1 パルスレバー
2 パルスレバー基本停止位置
3 パルスレバー跳ね位置
4 パルスレバー跳ね位置散水方向
5 パルスレバー基本位置散水方向
6 ブレード
7 ノズル
8 ノズル取付口
9 ガイドレバー
10 案内板
10-A 楕円形状案内板
10-B 長方形形状案内板
10-C 円形形状案内板
11 ノズルヘッド
12 リターンスプリング
13 バルブソケット
14 水路
15-a 給水口
15-b 供給口
16 ノズルヘッド軸
17 フレーム
18 散水装置主軸
19 レバーストップピン
20 レバー重り
21 レバー軸
22 主軸スプリング
23 主軸ホルダー
24 水漏れ防止リング
25 バルブ
26 バルブハンドル
27 散水装置取り付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの旋回角度に対応して散水落下位置と散水量を調節する機構を設け、散水面形状を調整するとともに、散水面形状が異形面の場合でも散水面に均等に散水できるようにしたことを特徴とする、噴射水衝撃反動力による回転型散水装置。
【請求項2】
ノズルの旋回に追従して散水飛距離を調整するため噴射角度を制御する機構が、水を散布する範囲に略相似形な案内板と、ならい棒及び、飛距離を調整可能なリンク機構からなる請求項1記載の散水装置。
【請求項3】
散水飛距離と散水量を同時に制御する機構が、フレーム、ノズルヘッド軸とノズルヘッド軸に開口した供給口、及びノズルヘッドとノズルヘッドに開口した給水口からなり、長方形状の給水口がノズル噴射角度に合わせて移動し略V字形の供給口を仕切ることにより、ノズルが上向きの場合は流路断面積が大きくなり流量が増え、ノズルが下向きの場合は流路断面積が小さくなり流量を絞るように、ノズル噴射角度に連動して流路断面積を変化させ流量を制御する請求項1及び2記載の散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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