説明

帯域幅調整の構造と方法を具備した誘電体導波管フィルタ

【課題】セラミック導波管フィルタの帯域幅を調整するための構造と方法。
【解決手段】セラミック導波管フィルタ100は、誘電セラミック材料のモノブロック101に複数のスリット124、126により複数の共振部114、116,118、120、122を構成し、両端の共振部114、122には入出力貫通孔146、148が設定される。また、ステップがモノブロック101のノッチ136、138により設定され。セラミック導波管フィルタ100の帯域幅は、モノブロック101の外面と入出力貫通孔146、148の直径またはその一方に対しステップの高さ・厚さと方向を調整することにより調整が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2010年5月17日付で「帯域幅調整の構造と方法を具備した誘電体導波管フィルタ」という名称で出願された米国仮特許出願第61/345,382号の出願日の利益を主張するものであり、同出願の全開示内容をそのまま参照として本出願に明示的に援用している。
【0002】
本発明は一般に誘電体導波管フィルタに関するものであり、さらに具体的には誘電体導波管フィルタの帯域幅を調整するための構造と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミック誘電体導波管フィルタが当業界でよく知られている。今日のエレクトロニクス業界では、セラミック誘電体導波管フィルタは通常、すべての共振子を通過帯域周波数に合わせて調整する“全極型”構造の設計となっている。この種の設計では、通過帯域外の減衰量を増加させる方法の一つは、共振子の数を増加させることである。そして、導波管フィルタの極の数により、通過帯域挿入損失や阻止帯域減衰などの重要な電気特性が決まる。また、共振セルや共振子としても知られている共振空洞の長さと幅に基づいて、導波管フィルタの中心周波数を設定する。
【0004】
ハイネらの米国特許第5,926,079号には、5つの共振子がモノブロックの全長に沿って縦に連続的に配置され、電気信号が連続共振子を流れて通過帯域を形成するという従来技術のセラミック誘電体モノブロック導波管フィルタが開示されている。ハイネらの米国特許第5,926,079号で開示された型式の導波管フィルタは、例えばグリーンらの米国特許第4,692,726号の貫通孔共振器を具備した従来の誘電体モノブロックフィルタによる場合と同様のフィルタリングの目的に使用されている。導波管フィルタの典型的な応用例として、携帯電話ネットワークの基地局送受信機での使用を挙げられる。
【0005】
また、当業界ではよく知られていることであるが、例えば、ハイネらの米国特許第5,926,079号で開示されたセラミック導波管フィルタでは、セラミック導波管フィルタの長さと幅により導波管フィルタの通過帯域周波数が決まり、導波管フィルタの高さと厚さにより導波管フィルタ共振子の無負荷“Q”および導波管フィルタ通過帯域中の挿入損失が決まる。ハイネらの米国特許第5,926,079号では、共振子間に形成されたモノブロックブリッジの部位およびモノブロックに設定された隣接スロットの中心に入出力非貫通孔を配置することにより導波管フィルタの必要な外部結合帯域幅が決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,926,079号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製造工程での入出力非貫通孔のメッキ加工については信頼できる評価はなく、フィルタ性能が予期しない結果になる可能性もある。一方、入出力貫通孔のメッキ加工については一部の用途で満足の行く評価が得られており、例えば米国特許出願公報第2010/0024973で開示された型式の導波管遅延線の比較的細い共振子では有効であることが分かっている。しかし、メッキされた入出力貫通孔と結合すると、厚い導波管フィルタと併用する場合、帯域が過度に狭いフィルタだけしか使用できない外部帯域幅となってしまう。
【0008】
本発明は、メッキされた入出力貫通孔を含有する厚い導波管フィルタに挿入損失を増加させることなく必要な外部帯域幅を提供するための斬新な構造と方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般的に、複数の外面を含有する誘電材料のモノブロック、モノブロックの外面の1つから離間された外面を含有する最低1つのステップおよびモノブロックを貫通する最低1つの入出力貫通孔から成り、入出力貫通孔によりモノブロック外面の1つと該最低1つのステップの外面の各々に第1・第2開口部が設定される導波管フィルタに関する。
【0010】
1つの実施例では、最低1つのステップがモノブロックの外面の1つから内側に延びてモノブロックにノッチを設定し、最低1つの入出力貫通孔の第2開口部がノッチに終端を持つ。
【0011】
1つの実施例では、導波管フィルタがモノブロックに設定されたRF信号ブリッジをさらに具備し、RF信号ブリッジがノッチと共にモノブロックの部位に位置してシャントゼロが設定される。
【0012】
1つの実施例では、モノブロックが第1端面のある第1端部を含有し、ノッチが第1端部に位置し、RF信号ブリッジが第1端面と最低1つの入出力貫通孔との間のモノブロックに位置する。
【0013】
1つの実施例では、モノブロックの中へと延びノッチに終端を持つスリットによりRF信号ブリッジが設定される。
【0014】
別の実施例では、最低1つのステップの外面がモノブロック外面の1つから外側に延びる。
【0015】
また、ある特別な実施例では、本発明は導電外面を含有する誘電材料のモノブロック、少なくても第1・第2のステップ、第1・第2ステップを貫通する少なくても第1・第2の入出力貫通孔から成り、モノブロック外面および第1・第2ステップの各々に第1・第2対向開口部が設定される導波管フィルタに関する。
【0016】
第1・第2ステップはモノブロックに設定された各々の第1・第2ノッチにより設定され、第1・第2入出力貫通孔の第2開口部は各々の第1・第2ノッチに終端を持つ。
【0017】
1つの実施例では、第1・第2ノッチがモノブロックに設定された各々の第1・第2対向端部に設定され、複数のRF信号ブリッジがモノブロックの全長に沿って離間された関係で延びて複数の共振子が設定される。
【0018】
1つの実施例では、第1・第2端部が各々の第1・第2端面、複数のRF信号ブリッジの1つ、ならびにモノブロックの第1端部に第1ノッチと共に位置する第1入出力貫通孔を含有し、かかる位置関係により複数のRF信号ブリッジの1つが第1端面と第1入出力貫通孔の間に位置してシャントゼロが設定される。
【0019】
1つの実施例では、第1ノッチが第2ノッチよりも長い。
【0020】
また、本発明は、外面のある誘電材料のモノブロック、少なくても第1のステップ、モノブロックを貫通し第1ステップとモノブロック外面の各々の開口部に終端を持つ少なくても第1の入出力貫通孔を提供し、モノブロック外面に対するステップ高さの調整により導波管フィルタの帯域幅を調整することを最低限の手順とする導波管フィルタ帯域幅の調整方法に関する。
【0021】
1つの実施例では、ステップがモノブロックに設定されたノッチにより設定され、ステップ高さの調整手順にノッチ高さの調整手順が含まれる。
【0022】
1つの実施例では、ステップがモノブロック上の突起部により設定され、ステップ高さの調整手順に突起部高さの調整手順が含まれる。
【0023】
この方法は、第1入出力貫通孔の直径の調整により導波管フィルタの帯域幅を調整するという手順を具備している場合もある。
【0024】
本発明のその他の利点と特徴は、次に続く本発明の好適実施例に関する詳細な説明、添付図面、特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上述の特徴とその他の特徴は、添付図面に関する下記の説明により最もよく理解できる。
【図1】図1は、本発明のセラミック誘電体導波管フィルタの1つの実施例を示す拡大斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すセラミック誘電体導波管フィルタの拡大縦断面図である。図2Aは、外側に突起した端部ステップを具備したセラミック誘電体導波管フィルタの別の実施例を示す破断縦断面図である。
【図3】図3は、片端にシャントゼロを具備した本発明のセラミック誘電体導波管フィルタの別の実施例を示す拡大斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すセラミック誘電体導波管フィルタの拡大縦断面図である。
【図5】図5は、図1、1、2、2Aに示すセラミック誘電体導波管フィルタに設定されたステップのサイズ(高さと厚さ)と方向の変化に対応して、図1、2、2Aに示す型式のセラミック誘電体導波管フィルタの外部帯域幅(MHz)や結合が変化する様子を示すグラフである。
【図6】図6は、図1と2に示す型式のセラミック誘電体導波管フィルタに設定された入出力貫通孔の直径の変化に対応して、図1と2に示す型式のセラミック誘電体導波管フィルタの外部帯域幅(MHz)や結合が変化する様子を示すグラフである。
【図7】図7は、図1と2に示すセラミック誘電体導波管フィルタの性能を表すグラフである。
【図8】図8は、シャントゼロを通過帯域上に設定した(高域側のシャントゼロ)図3と4に示すセラミック誘電体導波管フィルタの性能を表すグラフである。
【図9】図9は、シャントゼロを通過帯域下に設定した(低域側のシャントゼロ)図3と4に示すセラミック誘電体導波管フィルタの性能を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1と2は、一般に平行6面体の形状のモノブロック101で作られ、セラミックなどの適当な誘電材料から成り、縦方向に対向する上部水平面102と下部水平面104、縦方向に対向する垂直側面106と108、横方向に対向する垂直側端面110と112を含有する本発明のセラミック誘電体導波管フィルタの1つの実施例を表している。
【0027】
モノブロック101は複数の共振部(共振空洞、共振セルまたは共振子とも呼ぶ)114、116、118、120、122を含有し、該共振部はモノブロック101の全長縦方向に離間され、モノブロック101の外面102、104、106、108に離間された位置に垂直に切り込まれた複数のスリットすなわちスロット124と126により分離される。
【0028】
スリット124は、モノブロック101の側面106の全長に沿って離間した平行関係で設けられている。各スリット124は、側面106および対向する上部水平面102と下部水平面104、すなわちモノブロック101本体の一部に切り込まれている。スリット126は、モノブロック101の対向側面108の全長に沿って離間した平行関係かつ側面106に設定された各スリット124と対向し共平面となる関係で設けられている。各スリット126は、側面108および対向する上部水平面102と下部水平面104、すなわちモノブロック101本体の一部に切り込まれている。
【0029】
対向、離間、共平面の関係のため、スリット124と126によりモノブロック101の概略中心に位置する複数のRF信号ブリッジ128、130、132、134が設定され、該ブリッジが共振子114、116、118、120、122間に延びて各共振子を相互接続する。図の実施例では各RF信号ブリッジ128、130、132、134の幅は対向スリット124から126までの距離に依存し、図の実施例ではモノブロック101の幅の約3分の1である。
【0030】
どの図にも示していないが、スリット124と126の厚さや幅およびスリット124と126が各側面106と108からモノブロック101本体に延びる深さや距離は特別な用途に応じて変更でき、それによりRF信号ブリッジ128、130、132、134の幅と長さを変更し、導波管フィルタ100の電気的結合と帯域幅を制御し、延いては導波管フィルタ100の性能特徴を制御できることが理解できよう。
【0031】
導波管フィルタ100、具体的にモノブロック101は、通常L形の窪み部、溝部、肩部または刻み部から成る対向端部ステップすなわちノッチ136と138をモノブロック101の下部面104、対向側面106と108、対向側端面110と112に追加的に具備、設定し、該ノッチからは誘電セラミック材料が除去される。
【0032】
別の方法で説明すると、図1と2の実施例では、第1・第2ステップ136と138は、モノブロック101の残りの高さb(図2)を下回る高さa(図2)のモノブロック101の対向端部170と172により設定される。
【0033】
さらに別の方法で説明すると、図1と2の実施例では、各ステップ136と138はモノブロック101上に設定された各端部共振子114と122の通常L形の窪み部または刻み部から成り、該窪み部または該刻み部はモノブロック101の下部面104の内側に位置し、該下部面から離間され、該下部面に平行な一般に水平の第1面すなわち天井140と、モノブロック101の各側端面110と112の内側に位置し、該側端面から離間され、該側端面に平行な一般に垂直の第2面すなわち壁142とを含有する。
【0034】
導波管フィルタ100、具体的にモノブロック101は第1・第2貫通孔146と148の形態の第1・第2電気RF信号入出力電極を追加的に具備し、該貫通孔の各々はステップ136と138の面140とモノブロック101の上部面102との間のモノブロック101本体、具体的にはモノブロック101に設定された各端部共振子114と122の本体を該ステップ面と該上部面に対し垂線の関係で貫通している。具体的に説明すると、一般に円筒形の入出力貫通孔146と148はモノブロック101の各対向側端面110と112から離間され該側端面に対し通常、平行であり、一般に円形の開口部150と152の位置と終端の各々がステップ面140とモノブロック上部面102に設定される。
【0035】
図1と2の実施例では、RF信号入出力貫通孔146は側端面110とステップ壁すなわちステップ面142との間のモノブロック101内部に位置し、該側端面と該ステップ面に対し一般に離間した平行関係で該内部を貫通している。一方、RF信号入出力貫通孔148は側端面112とステップ壁すなわちステップ面142との間のモノブロック101内部に位置し、該側端面と該ステップ面に対し一般に離間した平行関係で該内部を貫通している。
【0036】
モノブロック101の外面102、104、106、108、110、112のすべておよび入出力貫通孔146と148の内部面は、入出力貫通孔146と148の各々の開口部152を囲むモノブロック上部面102上の被覆されない(セラミック露出)一般に円形の部位すなわちリング154と156を除いては、例えば銀などの適当な導電材料で被覆されている。どの図にも示していないが、部位154と156が各入出力貫通孔146と148により各ステップ136と138の水平面すなわち天井140に設定された開口部150の方を囲めることも理解できよう。
【0037】
本発明では、ステップ136と138の一方または両方を導波管フィルタに設定する際に、入出力貫通孔146と148を具備したモノブロック101の各部位(すなわち、低い高さの各端部共振子114と122を具備したモノブロック101の部位)にのみ設定することにより、モノブロック高さの減少がモノブロック101のごく一部に限られるため、フィルタ100の外部帯域幅、結合、Q値(すなわち、2つの端部共振子114と122の帯域幅により設定され、フィルタの内部帯域幅よりも比例的に高くなる値を有する帯域通過フィルタの設計と性能の主要パラメータ)をフィルタ100の挿入損失への影響を最小限にして調整できる。
【0038】
また、各入出力貫通孔146と148の部位にのみステップ136と138の一方または両方を設けることにより、米国特許第5,926,079号で開示された製造の難しい非貫通孔がモノブロック内の一部しか通らないのに対し、モノブロック101を貫通する入出力貫通孔を具備したモノブロック101の製造が可能になる。
【0039】
さらに、図1と2はモノブロック101の窪み端部または刻み端部の各々に設定されたステップ136と138を具備した導波管フィルタ100を表しており、該窪み端部または該刻み端部(すなわち、モノブロック101の下部面104からモノブロック101本体内側に向けて延び、モノブロック101の残りよりも低く薄い“ステップダウン式”または“ステップイン式”の部位)からは誘電体セラミック材料が除去されるわけであるが、本発明では別の導波管フィルタの実施例もあり、ノッチ136と138の一方または両方を図2Aの導波管フィルタ実施例100aに示した突起部138aのような突起部に置き換えられることも理解できよう。
【0040】
具体的に説明すると、図2では、ステップはモノブロック101aの残りの高さb(図2A)を上回る高さa(図2A)のモノブロック101aの端部領域又は部分172aにより設定される(すなわち、モノブロック101aの下部縦水平面104aから外側に向けて突起し、モノブロック101aの残りよりも高く厚い“ステップアップ式”または“ステップアウト式”の領域又は突起138a)。
【0041】
さらに具体的に説明すると、モノブロック101aには、モノブロック101aの下部面104a、対向側面(図示なし)、側端面112aから外側に突起した肩部領域又は部分から成る端部ステップすなわち突起部138aが具備、設定される。別の方法で説明すると、ステップ138aはモノブロック101aの外側肩部、具体的には端部共振子122aの外側肩部から成り、該肩部はモノブロック101aの下部面104aの外側に位置し、該下部面から離間され、該下部面に平行な一般に水平の外側の第1面140aと、モノブロック101aの側端面112aの内側に位置し、該側端面から離間され、該側端面に平行な一般に垂直の第2面すなわち壁142aとを含有する。
【0042】
導波管フィルタ100a、具体的にモノブロック101aは第1貫通孔148aの形態の電気RF信号入出力電極を具備し、該貫通孔はステップ138aの面140aとモノブロック101aの上部面102aとの間のモノブロック101a本体、具体的には端部共振子122aを該ステップ面と該上部面に対し垂線の関係で貫通している。さらに具体的に説明すると、一般に円筒形の入出力貫通孔148aはモノブロック101aの側端面112aから離間され該側端面に対し通常、平行であり、各々がステップ面140aとモノブロック上部面102aに位置し、終端する、一般に円形の開口部150aと152aを規定する。
【0043】
図2Aの実施例では、RF信号入出力貫通孔148aは側端面112aとステップ壁すなわち面142aとの間のモノブロック101a内部に位置し、該側端面と該ステップ面に対し一般に離間した平行関係で該内部を貫通している。
【0044】
図2Aの実施例では、外部ステップすなわち突起部138aを導波管フィルタに設定する際に、入出力貫通孔148aを具備したモノブロック101aの部位にのみ設定することにより、モノブロック高さ・厚さの減少がモノブロック101aのごく一部に限られるため、外部帯域幅、結合、フィルタ100aのQ値をフィルタ100aの挿入損失を最小限にして調整できる。
【0045】
また、入出力貫通孔148aの部位にステップ138aを設けることにより、米国特許第5,926,079号で開示された製造の難しい非貫通孔がモノブロック内の一部しか通らないのに対し、モノブロック101aを貫通する入出力貫通孔を具備したモノブロック101の製造が可能になる。
【0046】
従って、本発明では、図1と2では導波管フィルタ100の“ステップダウン式”または“ステップイン式”の第1・第2ステップ136と138のサイズ(すなわち深さまたは厚さ)を増減することにより、また、図2Aでは“ステップアップ式”または“ステップアウト式”のステップ138aのサイズ(すなわち高さ)を増減することにより、導波管フィルタの外部帯域幅を最初に調整できる。
【0047】
図5は、2.1GHz導波管フィルタ100の外部帯域幅(Ext BW(MHz))変化のシミュレーションを関数D/bで表したグラフである。D(図2と2A)は、図1と2に示した導波管フィルタ100の“ステップダウン式”または“ステップイン式”のステップ136と138の深さ・厚さもしくは上記の別の実施例として図2Aに示した“ステップアップ式”または“ステップアウト式”のステップ138aの高さである。そして、bはモノブロック101の高さ・厚さである。具体的には、x軸に沿って延びる負の値は高さ・厚さの異なる負の“ステップダウン式”または“ステップイン式”のステップを表し、正の値は高さの異なる正の“ステップアップ式”または“ステップアウト式”のステップを表していることに気付くことができよう。
【0048】
また、本発明では、導波管フィルタ100の外部帯域幅を調整するための別個の手段も可能となり、すなわち第1・第2入出力貫通孔146と148の一方または両方の直径を調整、変更できる。
【0049】
図6は、2.1GHz導波管フィルタ100の外部帯域幅(Ext BW(MHz))変化のシミュレーションを関数d/bで表したグラフである。dは入出力貫通孔146と148の直径で、bはモノブロック101の高さ・厚さである。具体的には、x軸に沿った百分率の値(%)は、モノブロック101の全高・全厚bの約6.25%からモノブロック101の全高・全厚bの約18.75%まで拡大する貫通孔を表していることに気付くことができよう。
【0050】
ここでは詳しく説明していないが、ステップすなわちノッチ136と138の一方または両方の長さを調整することにより導波管フィルタ100の性能を調整できることも分かるであろう。
【0051】
図7は、図1と2に示した導波管フィルタ100の実際の性能(すなわち、ライン162)を表すグラフである。
【0052】
図3と4は本発明によるセラミック誘電体導波管フィルタ1100の2番目の実施例を表し、フィルタ1100は片側にステップすなわちノッチ1138を具備し、下記に詳述するようにRF信号ブリッジ1136および入出力貫通孔1148との併用によりシャントゼロ1180がフィルタ1100の片側に設定される。
【0053】
セラミック導波管フィルタ1100は、導波管フィルタ100と同様に、誘電セラミック材料の一般に平行6面体の形状のモノブロック1101で作られ、縦方向に対向する上部水平面1102と下部水平面1104、縦方向に対向する垂直側面1106と1108、横方向に対向する垂直側端面1110と1112を含有する。
【0054】
モノブロック1101は複数の共振部(共振空洞、共振セルまたは共振子とも呼ぶ)1114、1116、1118、1120、1122、1123を含有し、該共振部はモノブロック1101の全長縦方向に離間され、スリットすなわちスロット124と126に関して上に説明した場合と同様に、モノブロック1101の外面1102、1104、1106、1108に離間された位置に垂直に切り込まれた複数のスリットすなわちスロット1124と1126により分離され、RF信号ブリッジ128〜134の構造と機能に関し上に説明した場合と同様に、該スロットの具備によりモノブロック1101の通常、中心に位置する複数のRF信号ブリッジ1128、1130、1132、1134、1135が設定され、該ブリッジが共振子1114、1116、1118、1120、1122間に延びて各共振子を相互接続する。
【0055】
導波管フィルタ1100、具体的にモノブロック1101は、通常L形の窪み部、溝部、肩部または刻み部から成る端部ステップすなわちノッチ1136と1138をモノブロック101の下部面1104、対向側面1106と1108、対向側端面1110と1112に追加的に具備、設定し、該ノッチからは誘電セラミック材料が除去される。
【0056】
別の方法で説明すると、図1と2の導波管フィルタ100のステップすなわちノッチ136と138と同様に、導波管フィルタ1100の第1・第2ステップすなわちノッチ1136と1138は、モノブロック1101の残りの高さ・厚さを下回る高さ・厚さのモノブロック1101の対向端部1170と1172を具備している。
【0057】
さらに別の方法で説明すると、ステップすなわち各ノッチ1136と1138はモノブロック1101の通常L形の窪み部または刻み部から成り、該窪み部または該刻み部はモノブロック下部面1104の内側に位置し、該下部面から離間され、該下部面に平行な一般に水平の第1面1140と、モノブロック1101の各側端面1110と1112の内側に位置し、該側端面から離間され、該側端面に平行な一般に垂直の面すなわち壁1142とを含有する。
【0058】
導波管フィルタ1100、具体的にモノブロック1101は第1・第2貫通孔1146と1148の形態の第1・第2電気RF信号入出力電極を追加的に具備し、該貫通孔の各々はステップすなわちノッチ1136と1138の面1140とモノブロック1101の上部面1102との間を該ステップ面と該上部面に対し垂線の関係で貫通している。具体的に説明すると、一般に円筒形の入出力貫通孔1146と1148はモノブロック1101の各対向側端面1110と1112から離間され該側端面に対し通常、平行であり、一般に円形の開口部1150と1152の位置と終端の各々がステップ面1140とモノブロック上部面1102に設定される。
【0059】
導波管フィルタ100に関して上に説明した場合と同様に、モノブロック1101の外面1102、1104、1106、1108、1110、1112のすべておよび入出力貫通孔1146と1148の内部面は、各入出力貫通孔1146と1148の開口部1152を囲むモノブロック上部面1102上の被覆されない(セラミック露出)一般に円形の部位すなわちリング1154と1156を除いては、銀などの適当な導電材料で被覆されていることを理解できよう。どの図にも示していないが、部位1154と1156が各入出力貫通孔1146と1148の開口部1150の方を囲めることを理解できよう。
【0060】
導波管フィルタ1100のステップすなわちノッチ1136と1138には導波管フィルタ100のステップすなわちノッチ136と138と同様の長所と利点があり、かかる長所と利点に関しては上の説明を参照されたい。
【0061】
しかし、導波管フィルタ1100がモノブロック1101の片端にシャントゼロ1180を追加的に具備しているという点で導波管フィルタ1100は導波管フィルタ100と異なっている。モノブロック端部1172がモノブロック対向端部1170より長く追加端部共振子1123を具備しており、端部1172に沿って延びるステップすなわちノッチ1138がモノブロック対向端部1170に沿って延びるステップすなわちノッチ1136よりも長く、RF信号ブリッジ1135を設定するスリット1124と1126がステップすなわちノッチ1138を具備するモノブロック1101の部位に配置されており(すなわち、かかる位置関係により、RF信号ブリッジ1135を設定するスリット1124と1126がモノブロック1101の上部縦水平面1102およびステップすなわちノッチ1138のある下部水平面1140に沿って配置されて該上部水平面と該下部水平面を分割し、端部共振子1123が設定される)、また、入出力貫通孔1148もステップすなわちノッチ1138を具備するモノブロック1101の部位に配置されている(すなわち、かかる位置関係により、入出力貫通孔1148の開口部1152がモノブロック1101の上部縦水平面1102に位置し終端を持ち、入出力貫通孔1148の対向開口部1150がステップすなわちノッチ1138、具体的にはステップすなわちノッチ1138の水平面1140に位置し終端を持つ)という特徴が組み合わされた結果として、該シャントゼロは設定、創出される。
【0062】
従って、図の実施例では、ステップすなわちノッチ1138の長さは、該ノッチがRF信号ブリッジ1135を設定するスリット1124と1126の両方およびRF入出力貫通孔1148を通過し、共振子1122を設定するモノブロック1101の部位の縦水平面1140に終端を持つように設定され、また、該共振子は端部共振子1123の隣に位置し、RF信号ブリッジ1135により該端部共振子から分離される。
【0063】
もっと具体的に説明すると、図3と4の実施例では、RF信号ブリッジ1135を設定し共振子1122と1123を分離するスリット1124と1126は、入出力貫通孔1148とモノブロック1101の端面1112との間のステップすなわちノッチ1138に位置している。従って、図の実施例では、入出力貫通孔1148は、ノッチ1138の垂直面1142とRF信号ブリッジ1135を設定するスリット1124および1126との間のモノブロック1101とノッチ1138に位置する。
【0064】
本発明の実施例では、シャントゼロ1180の電気特性や性能特性および導波管フィルタ1100の性能はいくつかの異なるパラメータの変更や調整により調整、制御でき、該パラメータとしては、モノブロック端部1172と端部共振子1123の長さ、ステップすなわちノッチ1138の長さL(図4)、ステップすなわちノッチ1138の高さ、深さ、厚さDs(図4)、モノブロック1101におけるステップすなわちノッチ1138の位置、スリットすなわちスロット1124と1126からモノブロック端面1112までの距離を含むステップすなわちノッチ1138の全長沿いのスリットすなわちスロット1124と1126の位置、ステップすなわちノッチ1138におけるスリットすなわちスロット1124と1126のサイズ(すなわち、幅と深さ)、ステップすなわちノッチ1138の全長沿いの入出力貫通孔1148の直径、モノブロック1101の幅、モノブロック1101の残りの幅に対する端部共振子1123の幅などの変数や特徴を挙げられる。
【0065】
図8と9は、高域側のシャントゼロ(図8)と低域側のシャントゼロ(図9)のいずれかを具備した導波管フィルタ1100の性能を示した(すなわち、減衰を周波数関数で示した)グラフである。どの図にも示しておらず、ここでは詳しく説明していないが、シャントゼロ1180の長さ、具体的にモノブロック端部1172と端部共振子1123の長さによりシャントゼロが高域側のシャントゼロと低域側のシャントゼロのいずれであるかが決定されることを理解できよう。例えば、シャントゼロ1180を長くすると、具体的には端部共振子1123を長くすると、低域側のシャントゼロが設定される。
【0066】
また、どの図にも示しておらず、ここでは詳しく説明していないが、シャントゼロ1180に関し上で説明した場合と同様に、高域側または低域側のシャントゼロはモノブロック1101の片端のステップすなわちノッチ1136にも設定できることが分かるであろう。さらに、シャントゼロ1180に関し上で説明した場合と同様に、高域側または低域側のシャントゼロは図2Aの導波管フィルタ100aの外部ステップ138aにも設定できることが分かるであろう。
【0067】
以上、本発明を図の実施例の参照により説明したが、当業者は本発明の精神と範囲から逸脱することなく形態と詳細の変更が可能であることを認識しよう。説明した実施例はあらゆる観点で代表的な例であり、本発明を制限するものでないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外面を含有する誘電材料のモノブロック、前記モノブロックの前記外面の1つから離間された外面を含有する最低1つのステップおよび前記モノブロックを貫通する最低1つの入出力貫通孔を具備し、前記入出力貫通孔により前記モノブロックの前記外面の1つと前記最低1つのステップの前記外面の各々に第1・第2開口部が設定される導波管フィルタ。
【請求項2】
前記最低1つのステップの前記外面が前記モノブロックの前記外面の前記1つから内側に延びて前記モノブロックにノッチを設定し、前記最低1つの入出力貫通孔の前記第2開口部がノッチに終端を持つ請求項1記載の導波管フィルタ。
【請求項3】
前記モノブロックに設定されたRF信号ブリッジをさらに具備し、前記RF信号ブリッジが前記ノッチと共に前記モノブロックの部位に位置してシャントゼロが設定される請求項2記載の導波管フィルタ。
【請求項4】
前記モノブロックが第1端面のある第1端部を含有し、前記ノッチが前記第1端部に設定され、前記RF信号ブリッジが前記第1端面と前記最低1つの入出力貫通孔との間の前記モノブロックに位置する請求項3記載の導波管フィルタ。
【請求項5】
前記モノブロックの中へと延び前記ノッチに終端を持つスリットにより前記RF信号ブリッジが設定される請求項4記載の導波管フィルタ。
【請求項6】
前記最低1つのステップの前記外面が前記モノブロックの前記外面の前記1つから外側に延びる請求項1記載の導波管フィルタ。
【請求項7】
導電外面を含有する誘電材料のモノブロック、少なくとも第1・第2のステップ、前記第1・第2ステップを貫通し、前記モノブロックの前記外面および前記第1・第2ステップの各々に第1・第2対向開口部を設定する少なくとも第1・第2の入出力貫通孔から成る導波管フィルタ。
【請求項8】
前記第1・第2ステップが前記モノブロックに設定された各々の第1・第2ノッチにより設定され、前記第1・第2入出力貫通孔の前記第2開口部が各々前記第1・第2ノッチに終端を持つ請求項7記載の導波管フィルタ。
【請求項9】
前記第1・第2ノッチが前記モノブロックの各々の第1・第2対向端部に設定される請求項7記載の導波管フィルタ。
【請求項10】
前記モノブロックの長さに沿って離間された関係で延びて複数の共振子を設定する複数のRF信号ブリッジを更に具備する請求項9記載の導波管フィルタ。
【請求項11】
前記第1・第2端部が各々の第1・第2端面、前記複数のRF信号ブリッジの1つ、ならびに前記モノブロックの前記第1端部に前記第1ノッチと共に位置する前記第1入出力貫通孔を含有し、かかる位置関係により前記複数のRF信号ブリッジの前記1つが前記第1端面と前記第1入出力貫通孔の間に位置して第1シャントゼロが設定される請求項10記載の導波管フィルタ。
【請求項12】
前記第1ノッチが前記第2ノッチよりも長い請求項11記載の導波管フィルタ。
【請求項13】
外面のある誘電材料のモノブロック、少なくとも第1のステップ、前記モノブロックを貫通し前記第1ステップと前記モノブロックの前記外面の各々の開口部に終端を持つ少なくとも第1の入出力貫通孔を提供する手順と、前記モノブロックの前記外面に対する前記ステップの高さの調整により導波管フィルタの帯域幅を調整する手順を少なくとも具備する導波管フィルタ帯域幅の調整方法。
【請求項14】
前記ステップが前記モノブロックに設定されたノッチにより設定され、前記ステップの高さを調整する前記手順に前記ノッチの高さを調整する手順が含まれる請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ステップが前記モノブロック上の突起部により設定され、前記ステップの高さを調整する前記手順に前記突起部の高さを調整する手順が含まれる請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記第1入出力貫通孔の直径の調整により導波管フィルタの帯域幅を調整する手順を更に具備する請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−244451(P2011−244451A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108951(P2011−108951)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(391027343)シーティーエス・コーポレーション (23)
【氏名又は名称原語表記】CTS CORPORATION
【Fターム(参考)】