説明

帯状ケーブルの支持装置、記録装置、電子機器

【課題】固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が可動部に接続されている帯状ケーブルにおいて、前記帯状ケーブルのループ部を形成する部分の長さが大となっても当該ループ部が垂れ下がることを抑制できるようにすること。
【解決手段】往復移動する可動部5の一方の移動端側に向けて固定支点21Eから立設姿勢で延設され、ループ部25を介して延設先端部27が前記可動部に接続されている帯状ケーブル7の支持装置3であって、前記延設の基端部29での帯状ケーブルの立設姿勢を保持する姿勢保持部35と、前記延設基端部29に対応する位置に配設され、鉛直方向に延びる公転軸31と、前記公転軸を中心に前記ループ部の張出し方向に揺動可能な揺動アーム33であって、該揺動アーム33の揺動自由端側に前記姿勢保持部35が設けられる揺動アーム33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記可動部に接続されている帯状ケーブルの支持装置及び該帯状ケーブルの支持装置を備えた記録装置或いは電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器であるインクジェットプリンター等の記録装置では、記録装置本体(以下、「プリンター本体」ともいう)の内部に幅方向に延びる支持フレームが立設姿勢で設けられており、該支持フレームの前記幅方向に沿って、記録ヘッドを搭載した可動部であるキャリッジが往復移動し得るように配設されている。
そして、前記キャリッジに搭載されている記録ヘッドから吐出される各色のインクの吐出量や吐出タイミングを指令する信号やキャリッジに装着されているインクカートリッジのインク残量に関する信号等を送るFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)と呼ばれている帯状ケーブルが、下記の特許文献1に示すように、前記支持フレームに設けた固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介してその延設先端部が前記キャリッジに接続されている。
【0003】
前記キャリッジの往復移動の範囲は、対応する被記録材(以下、「用紙」ともいう)のサイズにより、その概略が決まっており、対応する用紙のサイズが大きい(例えばA3サイズ)場合には、キャリッジの移動範囲は大きくなり、対応する用紙のサイズが小さい(例えばA4サイズ)場合には、キャリッジの動作範囲は小さくなる。
この時、前記FFCは、ループ部を形成するための前記固定支点から延設先端部までの長さがサイズの大きい(前記の例ではA3サイズ)用紙に合わせて設定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−82381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記FFCの、ループ部を形成するための前記長さがサイズの大きい用紙に合わせて設定されると、キャリッジが前記ループ部の大きさを大きくする方向に移動したときに該ループ部が自重で下方に垂れ下がり、当該ループ部が傾斜姿勢になって用紙の搬送経路上の障害になる問題が発生する。
また、下方に垂れ下がったループ部が下方に位置する支持部材等の構造物に擦れて摩擦によってFFCを断線させたり、記録実行中の用紙の被記録面に接触して記録実行品質を低下させる虞がある。
【0006】
また、この場合、FFCの延設基端部を支持フレーム側に強固に拘束するように押さえる構造にすれば、ループ部全体の自立性が増して前記垂れ下がりは少なくなる。しかし、前記強固な拘束によって、該FFCの前記拘束部位に大きなストレスがかかってFFCを断線させる虞が生じる。
【0007】
本発明の目的は、固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が可動部に接続されている帯状ケーブルにおいて、前記帯状ケーブルのループ部を形成する部分の長さが大となっても当該ループ部が垂れ下がることを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る帯状ケーブルの支持装置の第1の態様は、往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記可動部に接続されている帯状ケーブルの支持装置であって、前記延設の基端部での帯状ケーブルの立設姿勢を保持する姿勢保持部と、前記延設基端部に対応する位置に配設され、鉛直方向に延びる公転軸と、前記公転軸を中心に前記ループ部の張出し方向に揺動可能な揺動アームであって、該揺動アームの揺動自由端側に前記姿勢保持部が設けられる揺動アームと、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、本明細書中において使用する「帯状ケーブル」は、前記FFCがその代表例となるが、それに限定されず、固定支点と可動部との間に配設されてループ部を形成するものは全て含まれる意味で使われている。
また、前記帯状ケーブルにおいて使用する「立設姿勢」とは、帯状ケーブルの幅方向が垂直となる垂直姿勢を中心とする一定角度の範囲の立ち姿勢を意味するものとする。
また「鉛直方向」とは、後述する作用効果が得られる範囲で多少傾いているものも含む意味で使われている。
【0010】
本態様によれば、前記揺動アームの揺動自由端側に姿勢保持部を設けたので、帯状ケーブルの立設姿勢が確実に保持されて帯状ケーブルの全体の自立性が向上する。これにより、帯状ケーブルのループ部を形成する部分の長さが大となっても、可動部が移動して形成されるループ部の垂れ下がりが抑制される。
また、公転軸を中心にループ部の張出し方向に揺動する揺動アームを設けたことにより、帯状ケーブルの延設基端部を支持する支持点がループ部の張出し方向に移動することができる。従って、可動部が移動してループ部の形状が変化していく際に該帯状ケーブルに当該揺動アームから加わるストレスを小さく抑えることができ、以って断線の虞を低減することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第1の態様において、前記姿勢保持部は、前記公転軸と平行な自転軸を中心に回転可能な状態で設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、可動部が移動してループ部の形状が変化していく際に帯状ケーブルにかかる張力は、自転軸を中心とする姿勢保持部の回転によって吸収されるため、帯状ケーブルに過剰な張力がかかることを抑制することができる。
また、可動部が移動してループ部の形状が変化していく際における帯状ケーブルにかかる張力の大きさによって、前記姿勢保持部が自転と前記揺動アームの揺動とが段階的に開始され、以後は、帯状ケーブルにかかる張力の変化とループ部の曲率半径の変化に応じて姿勢保持部の自転と揺動アームの揺動とが効果的に実行される。
【0013】
本発明の第3の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第1の態様または第2の態様において、前記姿勢保持部は、前記帯状ケーブルの長手方向への移動が可能な状態で当該帯状ケーブルを保持していることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、該帯状ケーブルは、当該帯状ケーブルの長手方向への移動が可能な状態で前記姿勢保持部に保持されている。これにより、可動部が移動してループ部の形状が変化していく際における帯状ケーブルの姿勢変化が円滑になり、帯状ケーブルにストレスをかけることなく立設姿勢で帯状ケーブルを保持することが可能になる。従って、帯状ケーブルの延設基端部にストレスがかかった場合に生ずる断線の問題を低減することができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つに態様において、前記揺動アームは、付勢部材によって復位方向に付勢されていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、可動部が移動を開始する前の段階と、可動部が移動を開始した初期の段階では、帯状ケーブルに大きな張力が発生していないから付勢部材の付勢力によって揺動アームを初期位置に安定して位置させることができる。従って、揺動アームの張り出しによる可動部との衝突は生じない。
一方、可動部の移動が進んで、帯状ケーブルにかかる張力が徐々に大きくなって所定の張力に達すると、揺動アームが付勢部材の付勢力に抗してループ部の張出し方向に揺動するように形成することが可能であるため、帯状ケーブルにかかる張力の増大を防止することができる。尚、この状態では可動部はその移動が進んで揺動アームの設置部位を通過して当該揺動アームから離れた位置に在るため、張り出した揺動アームに可動部が衝突することはない。
【0017】
本発明の第5の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記姿勢保持部は、前記帯状ケーブルのループ内面に接触して該ループ内面の位置を規制する内面規制部と、前記帯状ケーブルのループ外面に接触して該ループ外面の位置を規制する外面規制部とを備え、前記内面規制部の進入側と退出側のコーナー部には、面取り加工が施されていることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、本明細書中において使用する「ループ内面」とは、ループ部が形成されている状態におけるループ部内方に位置する帯状ケーブルの面を意味し、本明細書中において使用する「ループ外面」とは、ループ部外方に位置する帯状ケーブルの面を意味する。
【0019】
本態様によれば、帯状ケーブルのループ内面とループ外面の位置がそれぞれ内面規則部と外面記側部とによって規制されているので、帯状ケーブルは、該内面規制部と外面規制部とによって挟まれることによって立設姿勢が確実に保たれている。
また、本態様では内面規制部の進入側と退出側のコーナー部に面取り加工が施されているので、帯状ケーブルが前記内面規制部と外面規制部との間の空間に進入する際と、該空間から退出する際に内面規制部のコーナー部に引っ掛かって円滑な長手方向への移動が妨げられることはない。
【0020】
本発明の第6の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記姿勢保持部の背面と該背面と対向する支持フレームの対向面とのいずれか一方には、クッション材が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、揺動アームが復位方向に揺動して揺動アームの揺動自由端に設けられている姿勢保持部が支持フレームに衝突する際の衝撃及び衝突音がクッション材によって吸収される。従って、姿勢保持部が支持フレームに衝突する際の衝撃及び衝突音が緩和され、前記衝撃によるストレスを帯状ケーブルが受ける虞を低減できる。
【0022】
本発明の第7の態様に係る帯状ケーブルの支持装置は、前記第6の態様において、前記クッション材の当接面の幅寸法は、前記姿勢保持部の背面の幅寸法内に納まる寸法に設定されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、揺動アームが復位方向に揺動して初期位置(退避位置)に移行する際の姿勢保持部の自転位置のバラ付きが防止される。また、姿勢保持部が支持フレームの対向面と平行でない傾斜した姿勢でクッション材に衝突した場合に生ずる当該クッション材の損傷も防止される。
【0024】
本発明の第8の態様に係る記録装置は、記録装置本体の幅方向に立設姿勢で設けられている支持フレームと、前記支持フレームの近傍に位置し、記録ヘッドが搭載され、前記幅方向に往復移動可能な可動部であるキャリッジと、一部が前記支持フレームに沿って固定されている帯状ケーブルであって、往復移動する可動部である前記キャリッジの一方の移動端側に向けて該帯状ケーブルの固定端に位置する固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記キャリッジに接続されている帯状ケーブルと、前記第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様に係る帯状ケーブルの支持装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、前記第1の態様から第7の態様の各作用、効果を記録装置において得ることができ、帯状ケーブルのループ部を形成する部分の長さが大となっても、キャリッジが移動して形成されるループ部の垂れ下がりが抑制される。これにより当該ループ部が垂れ下がることによる被記録材の搬送経路上の障害になる問題や、記録実行中の被記録材の被記録面に接触して記録実行品質を低下させる問題の発生を低減することができる。
【0026】
本発明の第9の態様に係る電子機器は、装置本体の幅方向に立設姿勢で設けられている支持フレームと、前記支持フレームの近傍に位置し、動作実行部が搭載され、前記幅方向に往復移動可能な可動部と、一部が前記支持フレームに沿って固定されている帯状ケーブルであって、往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて該帯状ケーブルの固定端に位置する固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記可動部に接続されている帯状ケーブルと、前記第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様に係る帯状ケーブルの支持装置とを備えていることを特徴とするものである。
ここで、「動作実行部」とは帯状ケーブルを介して動作制御信号を受けて、その制御に基づく動作を実行するものを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る帯状ケーブルの支持装置を備えた記録装置を示し、キャリッジがホームポジションに位置しているときの要部斜視図。
【図2】同上、キャリッジがセンターポジションに移動したときの要部斜視図。
【図3】同上、姿勢保持部が自転を開始するポジションにキャリッジが移動したときの要部斜視図。
【図4】同上、キャリッジがフルポジションに移動したときの要部斜視図。
【図5】図1の要部を拡大した斜視図。
【図6】図4の状態における、キャリッジと帯状ケーブルの支持装置周辺を拡大して示す図4の左方側から見た状態の斜視図。
【図7】図4の状態における帯状ケーブルの支持装置周辺を拡大して示す斜視図。
【図8】実施例1に係る帯状ケーブルの支持装置を示す後方から見た斜視図。
【図9】本発明の実施例2に係る帯状ケーブルの支持装置を示す後方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1から図8に示す実施例1と、図9に示す実施例2を例にとって、本発明の帯状ケーブルの支持装置3と、該帯状ケーブルの支持装置3を備えた記録装置1の構成と、キャリッジ5の移動によって実行される帯状ケーブルの支持装置3の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、帯状ケーブル7として、可動部の一例であるキャリッジ5から延びているFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)を例にとって説明する。最初に図1から図4に基づいて前記帯状ケーブルの支持装置3が備えられる記録装置1の基本的構成について説明する。
【0029】
図示の記録装置1は、一例としてA3ノビサイズまでの用紙Pに対応できるインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。該インクジェットプリンター1のプリンター本体2(「記録装置本体」と同じ符号を使用する)の内部には、帯状ケーブル7の一部を支持する固定部の一例である支持フレーム9が幅方向Bに立設姿勢で設けられている。
また、前記支持フレーム9の近傍には、一例として下面に記録ヘッド11が搭載されているキャリッジ5が、前記支持フレーム9の幅方向であるプリンター本体2の幅方向Bに沿って往復移動可能な状態で設けられている。
【0030】
尚、前記キャリッジ5の往復移動は、キャリッジモーター13を駆動源とし、該キャリッジモーター13の出力軸に取り付けられている図示しないピニオンギアの回転を、図示しないタイミングベルトを介して前記キャリッジ5に伝達することによって行われている。
また、前記記録ヘッド11の下方には、所定のギャップを隔てて支持部材15が設けられており、図示しない給送部から搬送経路に供給された用紙Pは、案内部材17によって案内され、図示しない搬送用ローラーから搬送方向Aの搬送力を得て記録実行領域19の存する前記支持部材15上に導かれるようになっている。尚、支持部材15には複数のリブが前記幅方向に互いに離間して設けられ、前記用紙Pは当該リブの頂部で支持されるようになっている。
【0031】
更に、前記支持フレーム9には、固定支点21となる係止爪23が支持フレーム9の一部を一例として打ち抜いて折り曲げ加工することによって形成されている。そして、帯状ケーブル7の一部は、これらの係止爪23に係止されることによって支持フレーム9に添わせた状態で固定されている。
また、帯状ケーブル7は、該ケーブルの固定端に位置する図1から図4中、左端に位置する固定支点21Eから立設姿勢で左方に延設されており、ループ部25を介してその延設先端部27は、図2から図4に示すように右方に延びて、図5及び図6に示すように前記キャリッジ5の左端面に接続されている。
【0032】
前記固定支点21Eの近傍位置に、帯状ケーブルの支持装置3が配設されている。そして、前記固定支点21Eから延設される帯状ケーブル7の延設基端部29が当該帯状ケーブルの支持装置3によって支持されるように構成されている。
尚、前記帯状ケーブル7は、帯幅方向Cには自立性を有するが、長手方向においては帯厚Dが薄いことによって可撓性を有する材料によって形成されている。そして、本実施例おいては、該帯状ケーブル7の内部には、前記記録ヘッド11から吐出される各色のインクの吐出量や吐出タイミングを指令する信号やキャリッジ5に装着されているインクカートリッジのインク残量に関する信号等を送る図示しない信号線が配設されている。
【0033】
[実施例1](図1から図8参照)
本実施例の帯状ケーブルの支持装置3は、往復移動する前記キャリッジ5の一方の移動端側(図1の左方)に向けて固定支点21Eから立設姿勢で延設され、ループ部25を介して延設先端部27がキャリッジ5に接続されている。そして、前記延設の基端部29での帯状ケーブル7の立設姿勢を保持する姿勢保持部35と、前記延設基端部29に対応する位置に配設され、鉛直方向に延びる公転軸31と、前記公転軸31を中心に前記ループ部25の張出し方向Fに揺動可能な揺動アーム33であって、該揺動アーム33の揺動自由端側に前記姿勢保持部35が設けられる揺動アーム33とを備えている。
すなわち、帯状ケーブル7の立設方向である鉛直方向Eに延びる公転軸31と、前記公転軸31を中心に前記ループ部25の張出し方向Fに揺動する揺動アーム33と、前記揺動アーム33の揺動自由端側に設けられ、前記延設基端部29での帯状ケーブル7の立設姿勢を保持する姿勢保持部35と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0034】
また、図示の実施例に係る帯状ケーブルの支持装置3にあっては、前記公転軸31を支持する軸受部37を備えた支持ベース39と、前記揺動アーム33を前記支持フレーム9と平行となる復位方向Gに常時、付勢する付勢部材の一例である付勢バネ41と、が設けられている。
【0035】
前記姿勢保持部35には、前記公転軸31と平行な自転軸43を支持する軸受部45と、前記帯状ケーブル7のループ内面47に接触して該ループ内面47の位置を規制する内面規制部49と、前記帯状ケーブル7のループ外面51と接触して該ループ外面51の位置を規制する外面規制部53と、が設けられている。
【0036】
前記内面規制部49と外面規制部53との間には、縦長の矩形開口55が左右両側面を貫通するように形成されており、該矩形開口55の一例として右方から前記帯状ケーブル7を進入させて該矩形開口55の一例として左方から前記帯状ケーブル7を退出させて引き出すように構成されている。
尚、前記矩形開口55の幅寸法は、前記帯状ケーブル7の長手方向への自由な移動が可能になるよう、前記帯状ケーブル7の厚さよりも少し大きめの一定寸法に設定されている。
【0037】
この他、前記支持フレーム9の一部には、前記揺動アーム33が支持フレーム9と平行な退避位置Hに来た時、該揺動アーム33の揺動自由端に設けられている前記姿勢保持部35を該支持フレーム9の支持面57から姿勢保持部35の肉厚分、復位方向Gに退避させた退避部59が設けられている。
そして、前記姿勢保持部35の背面36と対向する前記退避部59の対向面60には、一例として前記姿勢保持部35の背面36の幅寸法a内に納まる幅寸法b(図7)の当接面を有する一例として矩形平板状のクッション材61が設けられている。
【0038】
図8に示すように、前記揺動アーム33は、一例として円形断面の棒状部材を矩形ループ状に折り曲げることによって形成されている。
更に、前記揺動アーム33の両端部は、共に鉛直方向Eに向けて折り曲げられており、この折り曲げた部分が前述した公転軸31として機能するように構成されている。
【0039】
また、前記2本の公転軸31のうち、一例として上方に位置する公転軸31には、前述した付勢バネ41の一例である捩りコイルバネのコイル部41aが外嵌している。そして、該コイル部41aの上端から一例として右方に向けて延びている係止端41bが前記支持ベース39に係止され、該コイル部41aの下端から一例として左方に向けて延びている係止端41cが揺動アーム33の矩形ループ部33aの一部に係止されるように構成されている。
【0040】
また、前記揺動アーム33の矩形ループ部33aのうち、揺動自由端に位置する鉛直方向Eに向けて延びている部分が前述した自転軸43として機能するように構成されている。
そして、前記姿勢保持部35には、鉛直方向Eに貫通する穴部が形成されており、該穴部が前述した自転軸43を支持する軸受部45として機能するように構成されている。
【0041】
前記支持ベース39は、一例として矩形平板状の部材で、該支持ベース39の一例として図8における右端縁と下端縁には前方に張り出す係止爪63が設けられている。そして、該係止爪63を利用して前記支持フレーム9の一例として背面側に支持ベース39が取り付けられるように構成されている。
また、前記支持ベース39が取り付けられる部位の支持フレーム9には、前述した退避部59側に延びる切欠き部65が形成されており(図6、図7)、該切欠き部65によって支持ベース39の前面に設けられる前記軸受部37や付勢バネ41との干渉を防止している。
【0042】
また、前記姿勢保持部35の内面規制部49の進入側と退出側のコーナー部67、69(図8)には、面取り加工が施されており、前記帯状ケーブル7の前記矩形開口55に対する円滑な進入と退出を可能にしている。
尚、前記コーナー部67、69(図8)の面取り加工としては、例えば角度が45°に斜めにカットする角面取りでも、コーナー部67、69に丸みを付けるアール面取りでもよいが、帯状ケーブル7の繰り出しが最も円滑に実行される角度ないしアールの大きさの面取り加工を実行する。
【0043】
次に、このようにして構成される本実施例に係る帯状ケーブルの支持装置3の作動態様を、(1)キャリッジがホームポジションに位置しているとき(図1、図5)、(2)キャリッジがセンターポジションに移動したとき(図2)、(3)キャリッジが姿勢保持部の自転が開始するポジションに移動したとき(図3)、(4)キャリッジがフルポジションに移動したとき(図4)に分けて説明する。
【0044】
(1)キャリッジがホームポジションに位置しているとき(図1、図5参照)
キャリッジ5がホームポジションに位置しているときは、ループ部25が最も小さい状態である。この位置にキャリッジ5が位置しているときは、揺動アーム33は、付勢バネ41の付勢力を受けて支持フレーム9と平行な退避位置Hに位置している。そして、前記姿勢保持部35は、前記退避部59の前方に形成される収容空間に収容された状態になっている。
【0045】
前記姿勢保持部35の背面36は、前記退避部59の対向面60に設けられているクッション材61の当接面に当接した状態になっている。
また、前記左端の固定支点21Eから左方に延設された帯状ケーブル7は、そのまま支持フレーム9に沿って左方に延び、途中、前記退避位置Hの姿勢保持部35における矩形開口55を通って、ホームポジションに位置しているキャリッジ5の左側面に至っている。従って、姿勢保持部35や揺動アーム33には帯状ケーブル7からの力は作用していない。
【0046】
(2)キャリッジがセンターポジションに移動したとき(図2参照)
例えば、A4サイズの用紙Pに対して記録を実行する場合には、キャリッジ5は、図1に示すホームポジション側の基準位置と図2に示すセンターポジションとの間で幅方向Bに往復移動するように形成することができる。
キャリッジ5が前記ホームポジションからセンターポジションに向けて移動するにつれて、キャリッジ5の左方にループ部25が徐々に大きく現われるようになる。
【0047】
しかし、キャリッジ5がセンターポジションに移動した状態では、帯状ケーブル7の姿勢保持部35よりも左側に存在する部分の長さが長いので、該姿勢保持部35を介して揺動アーム33を揺動させる力は発生しない。すなわち、姿勢保持部35は、初期状態の姿勢が安定状態であり、図示のように揺動アーム33は支持フレーム9と平行な退避位置Hに位置している。従って、帯状ケーブル7の延設基端部29は、退避位置Hに位置している姿勢保持部35によって立設姿勢が保持されているので、ループ部25の張出し端71はほとんど垂れ下がらない。
【0048】
また、センターポジションにキャリッジ5が到達した状態では、上記の通り、帯状ケーブル7の延設基端部29は、退避位置Hに位置している姿勢保持部35によって立設姿勢で保持されている状態が安定であるので、当該帯状ケーブル7の延設基端部29であって姿勢保持部35に保持されている部分を断線させるような力(ストレス)は作用しない。
【0049】
(3)キャリッジが姿勢保持部の自転が開始するポジションに移動したとき(図3参照)
キャリッジ5が図3に示す前記自転開始ポジションに移動した状態では、帯状ケーブル7の姿勢保持部35よりも左側に存在する部分の長さが図2の状態よりも短くなる。この状態になると、帯状ケーブル7に作用する張力が大きくなって姿勢保持部35を前記退避位置Hから前記張り出し方向Fに移動させようとする力が作用するようになる。
【0050】
しかし、本実施例では、前記力が姿勢保持部35に作用すると、当該姿勢保持部35が自転軸43を中心にして図示のように平面視反時計方向に自転する。この自転によって、姿勢保持部35を前記張り出し方向Fに移動させようとする力の増大が防止される。すなわち、帯状ケーブル7の延設基端部29であって姿勢保持部35に保持されている部分を断線させるような力(ストレス)の発生が防止される。
言い換えると、前記姿勢保持部35の自転によって、帯状ケーブル7の延設基端部29にストレスをかけることなく前記ループ部25が円滑に形成される。
【0051】
また、キャリッジ5が図3に示す前記自転開始ポジションに移動した状態では、前記姿勢保持部35の自転と、当該姿勢保持部35による帯状ケーブル7を立設姿勢で保持する作用とによって前記ループ部25の張出し端71での垂れ下がりはほとんど生じない。
【0052】
(4)キャリッジがフルポジションに移動した時(図4、図6参照)
A4サイズより大きな例えばA3サイズの用紙Pに対して記録を実行する場合には、キャリッジ5は図3に示す自転開始ポジションを超えて更に右方に移動する。
【0053】
キャリッジ5が自転開始ポジションから更に右方に移動すると、帯状ケーブル7の姿勢保持部35よりも左側に存在する部分の長さが図3の状態よりも更に短くなる。この状態になると、帯状ケーブル7に作用する張力が更に大きくなり、付勢バネ41の付勢力に抗して、揺動アーム33が公転軸31を中心にして図示のように平面視反時計方向となる張出し方向Fに揺動し、帯状ケーブル7に作用する張力の増大を防止する。
これにより、前記姿勢保持部35の自転と揺動アーム33の公転軸31を中心にした揺動によって、帯状ケーブル7の延設基端部29にストレスをかけることなく前記ループ部25が円滑に形成される。
【0054】
また、キャリッジ5の移動に伴なってループ部25の形状が大きく変化するが、前記揺動アーム33の公転による支持点Oの張出し方向Fへの移動と、前記姿勢保持部35の自転と、前記姿勢保持部35による帯状ケーブル7の立設姿勢の保持作用とによって、図6中実線で示すように前記ループ部25の立設姿勢が保たれており、図6中仮想線で示すような前記ループ部25の張出し端71での垂れ下がりはほとんど生じない。
【0055】
上記のように構成される本実施例に係る帯状ケーブルの支持装置3によれば、前記揺動アーム33の揺動自由端側に姿勢保持部35を設けたので、帯状ケーブル7の立設姿勢が確実に保持されて帯状ケーブル7の全体の自立性が向上する。これにより、帯状ケーブル7のループ部25を形成する部分の長さが大となっても、キャリッジ5が移動して形成されるループ部25の垂れ下がりが抑制される。
【0056】
また、公転軸31を中心にループ部25の張出し方向Fに揺動する揺動アーム33を設けたことにより、帯状ケーブル7の延設基端部29を支持する支持点Oがループ部25の張出し方向に移動することができる。従って、キャリッジ5が移動してループ部の形状が変化していく際に該帯状ケーブルに当該揺動アームから加わるストレスを小さく抑えることができ、以って断線の虞を低減することができる。
【0057】
[実施例2](図9参照)
図9に基づいて、本発明の実施例2に係る帯状ケーブルの支持装置について説明する。
本実施例では、姿勢保持部35の構造は、前記実施例1のような自転可能で前記揺動アーム33と別体に構成されている構造とは異なっている。すなわち、本実施例に係る帯状ケーブルの支持装置3Aは、揺動アーム33Aと一体構造の姿勢保持部35Aとして構成されている。
【0058】
具体的に説明すると、姿勢保持部35Aはバックル形状に形成されており、揺動アーム33Aの矩形ループ部33aの上下の水平バー73、73から内方に向う鉛直方向Eと平行な係止バー75、75を突設した構造に形成されている。
この姿勢保持部35Aに帯状ケーブル7を支持させる場合には、上下の係止バー75、75の中間に形成されている間隙部77から帯状ケーブル7を差し込んで該係止バー75によって帯状ケーブル7のループ内面47を規制し、矩形ループ部33aの自由端に位置する立設バー79によって帯状ケーブル7のループ外面47を規制するようにする。
【0059】
[他の実施例]
本発明に係る帯状ケーブルの支持装置3及び該帯状ケーブルの支持装置3を備えた記録装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0060】
例えば、揺動アーム33を復位方向Gに付勢するのに使用する付勢バネ41としては、前記実施例のような捩りコイルバネに限らず、板バネや引張りコイルバネあるいは圧縮コイルバネ等であっても構わない。
また、前記実施例では揺動アーム33を公転軸31と自転軸43と一体に構成したが、これらを別体に構成することも可能である。また、前記実施例において退避部59の対向面60に設けたクッション材61を姿勢保持部35の背面36側に設けることも可能である。
【0061】
この他、本発明の帯状ケーブルの支持装置3は、インクジェットプリンター等の記録装置1に限らず、固定支点21Eから立設姿勢で繰り出され、ループ部25を介して延設先端部27が可動部5に接続されている帯状ケーブル7を有する種々の装置に適用可能である。
また、帯状ケーブル7も前記実施例のようなFFCに限らず、帯幅方向Cに自立性を有し、長手方向に可撓性を有する種々の帯状のケーブルに適用可能である。
【0062】
上記実施例の説明においては、帯状ケーブルの支持装置を備えた電子機器として記録装置を例にし、可動部がキャリッジ、動作実行部が記録ヘッドである場合について説明したが、往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が動作実行部を有する前記可動部に接続されている帯状ケーブルを備える電子機器は、上記帯状ケーブルの支持装置を適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、2 プリンター本体(記録装置本体)
3 帯状ケーブルの支持装置、5 キャリッジ(可動部)、7 帯状ケーブル、
9 支持フレーム(固定部)、11 記録ヘッド、13 キャリッジモーター、
15 支持部材、17 案内部材、19 記録実行領域、21 固定支点、
23 係止爪、25 ループ部、27 延設先端部、29 延設基端部、
31 公転軸、33 揺動アーム、33a 矩形ループ部、35 姿勢保持部、
36 背面、37 軸受部、39 支持ベース、41 付勢バネ(付勢部材)、
41a コイル部、41b 係止端、41c 係止端、43 自転軸、
45 軸受部、47 ループ内面、49 内面規制部、51 ループ外面、
53 外面規制部、55 矩形開口、57 支持面、59 退避部、60 対向面、
61 クッション材、63 係止爪、65 切欠き部、67 コーナー部、
69 コーナー部、71 張出し端、73 水平バー、75 係止バー、
77 間隙部、79 立設バー、 P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、
B 幅方向、C 帯幅方向、D 帯厚方向、E 立設方向、F 張出し方向、
G 復位方向、H 退避位置、a 幅寸法、b 幅寸法、R 曲率半径、O 支持点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記可動部に接続されている帯状ケーブルの支持装置であって、
前記延設の基端部での帯状ケーブルの立設姿勢を保持する姿勢保持部と、
前記延設基端部に対応する位置に配設され、鉛直方向に延びる公転軸と、
前記公転軸を中心に前記ループ部の張出し方向に揺動可能な揺動アームであって、該揺動アームの揺動自由端側に前記姿勢保持部が設けられる揺動アームと、を備えていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記姿勢保持部は、前記公転軸と平行な自転軸を中心に回転可能な状態で設けられていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記姿勢保持部は、前記帯状ケーブルの長手方向への移動が可能な状態で当該帯状ケーブルを保持していることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記揺動アームは、付勢部材によって復位方向に付勢されていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記姿勢保持部は、
前記帯状ケーブルのループ内面に接触して該ループ内面の位置を規制する内面規制部と、
前記帯状ケーブルのループ外面に接触して該ループ外面の位置を規制する外面規制部と、を備え、
前記内面規制部の進入側と退出側のコーナー部には、面取り加工が施されていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記姿勢保持部の背面と該背面と対向する支持フレームの対向面とのいずれか一方には、クッション材が設けられていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項7】
請求項6に記載された帯状ケーブルの支持装置において、
前記クッション材の当接面の幅寸法は、前記姿勢保持部の背面の幅寸法内に納まる寸法に設定されていることを特徴とする帯状ケーブルの支持装置。
【請求項8】
記録装置本体の幅方向に立設姿勢で設けられている支持フレームと、
前記支持フレームの近傍に位置し、記録ヘッドが搭載され、前記幅方向に往復移動可能な可動部であるキャリッジと、
一部が前記支持フレームに沿って固定されている帯状ケーブルであって、往復移動する可動部である前記キャリッジの一方の移動端側に向けて該帯状ケーブルの固定端に位置する固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記キャリッジに接続されている帯状ケーブルと、
請求項1から7のいずれか一項に記載された帯状ケーブルの支持装置と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
装置本体の幅方向に立設姿勢で設けられている支持フレームと、
前記支持フレームの近傍に位置し、動作実行部が搭載され、前記幅方向に往復移動可能な可動部と、
一部が前記支持フレームに沿って固定されている帯状ケーブルであって、往復移動する可動部の一方の移動端側に向けて該帯状ケーブルの固定端に位置する固定支点から立設姿勢で延設され、ループ部を介して延設先端部が前記可動部に接続されている帯状ケーブルと、
請求項1から7のいずれか一項に記載された帯状ケーブルの支持装置と、を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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