説明

帯状コード部材のゴム分離装置

【課題】帯状コード部材から未加硫ゴムを効率よく分離することができるコンパクトなゴム分離装置を提供する。
【解決手段】帯状コード部材1が架け渡される左右一対の支持体2A、2Bと、その架け渡された帯状コード部材1を支持体2A、2Bに向けて押圧する左右一対の押圧手段3A、3Bと、それら左右一対の支持体2A、2B間に配置され、架け渡された帯状コード部材1を巻き取る巻取手段4とを備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状コード部材を対象とするゴム分離装置に関し、更に詳しくは、スチールワイヤなどのコードを引き揃えて未加硫ゴムを被覆した帯状コード部材から、未加硫ゴムを効率よく分離することができるコンパクトなゴム分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのベルト層などの補強材には、スチールワイヤや有機繊維などのコードを引き揃えて未加硫ゴムを被覆した帯状のコード部材が用いられている。この帯状コード部材は、長尺の帯状コード部材から所定の長さに切り出されて使用されるが、その一部は使用されることなく端尺材として残ってしまうことが多い。この未使用の帯状コード部材は、従来は産業廃棄物として処分されていたが、コスト及び対環境性の観点から、コードと未加硫ゴムとに分離して再利用することが望まれていた。
【0003】
そのため、特許文献1は、一方の端部が把持された帯状コード部材を、上下に対向する2枚の刃で挟持し、それらの刃を他方の端部へ向けて移動させて未加硫ゴムを剥ぎ取るようにしたゴム分離装置を提案している。
【0004】
しかし、上記のゴム分離装置では、対向する2枚の刃の間隔を、帯状コード部材の種類に合わせて微調整しなければならないため、作業効率を向上することが難しいという問題があった。また、未加硫ゴムの粘着力に抗して2枚の刃を水平移動させる高出力の駆動機構を備えなければならないため、装置が大型化してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−035334明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、帯状コード部材から未加硫ゴムを効率よく分離することができるコンパクトなゴム分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の帯状コード部材のゴム分離装置は、引き揃えたコードに未加硫ゴムを被覆してなる帯状コード部材から、前記未加硫ゴムを分離するゴム分離装置であって、前記帯状コード部材が架け渡される左右一対の支持体と、前記架け渡された帯状コード部材を前記支持体に向けて押圧する左右一対の押圧手段と、前記左右一対の支持体間に配置され、前記架け渡された帯状コード部材を巻き取る巻取手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯状コード部材のゴム分離装置によれば、帯状コード部材を支持体へ向けて押圧しつつ移動させることにより未加硫ゴムを削ぎ取るようにしているので、帯状コード部材の種類に合わせた調整が必要なるため、効率的に分離作業を行うことができる。また、帯状コード部材を巻き取る回転力の一部を押圧力に変換して未加硫ゴムを剥ぎ取るようにしているので、駆動機構を小型にすることができるため、ゴム分離装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態からなる帯状コード部材のゴム分離装置の斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本発明のゴム分離装置を用いた未加硫ゴムの分離作業を説明する模式図である。
【図4】本発明の別の実施形態からなる帯状コード部材のゴム分離装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態からなる帯状コード部材のゴム分離装置を示す。
【0012】
この帯状コード部材のゴム分離装置(以下、単に「ゴム分離装置」という。)は、帯状コード部材1を架け渡す左右一対の支持体2A、2Bと、その帯状コード部材1を支持体2A、2Bに向けて、それぞれ斜め外側から押圧する左右一対の押圧手段3A、3Bと、左右一対の支持体2A、2Bの中央部に配置され、帯状コード部材1を巻き取る巻取手段4と、一方の支持体2Aの外側に設けられた帯状コード部材1の引張手段5とを備えている。
【0013】
左右一対の支持体2A、2Bは、互いに平行になるよう配置された2本の棒材から構成され、それら棒材は断面V字型の支持部材6により下方から支持されている。また、左右一対の押圧手段3A、3Bは、棒状のスクレイパー7A、7Bを押圧シリンダ8A、8Bに取り付けることにより構成され、支持体2A、2Bに架け渡された帯状コード部材1に対して、押圧シリンダ8A、8Bのロッド9A、9Bが角度θをなすように支持体2A、2Bの外側にそれぞれ配置される。
【0014】
巻取手段4は、支点10に回動可能に取り付けられた2本の棒状体11を、図示しない回転装置に接続する回転軸12の先端に固定することにより構成される。また、引張手段5は、水平シリンダ13に側面が固定されたL型板14の上面に設けられた突部15と、その突部15の近傍へ向けて帯状コード部材1を斜め外側から押圧する保持板16とから構成される。保持板16の下端にはテーパ16aが形成されており、上端は図示しない伸縮装置(例えば、シリンダなど)に接続され、長手方向に移動可能になっている。
【0015】
なお、上述した支持体2A、2B、スクレイパー7A、7B及び棒状体11の長さは、いずれも帯状コード部材1の幅(例えば、約20〜30mm)よりも長くなっている。
【0016】
このようなゴム分離装置を用いた帯状コード部材からの未加硫ゴムの分離作業を、図3に基づいて以下に詳述する。
【0017】
まず、適当な長さ(例えば10〜50cm程度)の帯状コード部材1を、コードの長手方向に沿って左右一対の支持体2A、2Bに架け渡した後に、引張手段5が設けられていない側の押圧シリンダ8を駆動して、スクレイパー7Aで帯状コード部材1を支持体2Aに押圧する(図3(a))。そして、保持板16で帯状コード部材1を突部15へ向けて押圧し、先端のテーパ部16aとの間で挟み込むようにして帯状コード部材1を保持しつつ(図3(b))、水平シリンダ13を駆動してL型板14を保持板16と共に外側へ向けて距離Lだけ移動させる(図3(c))。この距離Lは、左右一対の支持体2A、2B間の距離Xよりも大きい値とする(図2参照)。これにより、帯状コード部材1における、少なくとも支持体2A、2B間に位置する部分の未加硫ゴム17がスクレイパー7Aと支持体2Aとの間で削ぎ取られ、その部分のコード18が露出するようになる。
【0018】
次に、保持板16を引き上げてから、引張手段5が設けられている側の押圧シリンダ8Bを駆動して、コード18が露出した帯状コード部材1をスクレイパー7Bで支持体2Bへ押圧する(図3(d))。そして、巻取手段4の2本の棒状体11を回動させてコード18を挟持すると共に、回転軸12を回転させてコード18が露出した帯状コード部材1を内側へ向けて巻き取る(図3(e))。このとき、スクレイパー7A、7Bは斜め外側から帯状コード部材1を押圧しているため、巻取手段4の回転力の一部が押圧シリンダ8A、8Bのロッド9A、9Bを伸ばす方向に働くので、スクレイパー7A、7Bは支持体2A、2Bへ向けて更に押し付けられることになる。そのため、帯状コード部材1における支持体2A、2Bよりも外側に位置する部分の未加硫ゴム17を削ぎ取りつつ、コード18のみを棒状体11に巻き取ることができる。削ぎ取られた未加硫ゴム17は、支持体2A、2Bに付着・堆積した後に下方へ落下するので、吸引などの適当な手段で回収する。
【0019】
コード18を全て巻き取った後は、回転軸12を停止し棒状体11を開いてコード18を回収する(図3(f))。そして、次回の分離作業に備えて、スクレイパー7A、7B、保持板16及びL型板14を初期位置へ戻す。
【0020】
このように、帯状コード部材1を押圧して未加硫ゴム17を削ぎ取るようにしているので、帯状コード部材1の仕様に合わせた調整が不要となるため、効率的に分離作業を行うことができる。また、コード18を巻き取る回転力の一部を利用して未加硫ゴム17を剥ぎ取るようにしているので、押圧シリンダ8A、8Bを小型にすることができるため、ゴム分離装置をコンパクトにすることができる。
【0021】
上記の巻取手段4における棒状体11の断面は、帯状コード部材1に対向する挟持側の面が曲面となる半円形状とすることが望ましい。そのようにすることで、コード18を曲面で確実に挟持しつつ、曲面と平面との境の角部で折り曲げて巻きぐせを付けることができるので、コード18の巻き取り作業及び巻き取り後のコード18の取扱いを容易にすることができる。このことは、コード18がスチールワイヤからなる場合に、スチールワイヤが角部でキンクするため、特に有利に現れる。
【0022】
また、押圧手段3A、3Bが左右一対の支持体2A、2Bに架け渡された帯状コード部材1を押圧する方向が、その帯状コード部材1に対してなす角度、すなわち支持体2A、2Bに架け渡された帯状コード部材1に対して押圧シリンダ8A、8Bのロッド9A、9Bがなす角度θを10〜40°、好ましくは30°とすることにより、巻取手段4の回転力の一部をスクレイパー7A、7Bの押圧力として効率的に利用することができるため、未加硫ゴム17の削ぎ取りとコード18の巻き取りとを円滑に行うことができる。
【0023】
図4は、本発明の他の実施形態からなるゴム分離装置を示す。
【0024】
このゴム分離装置は、帯状コード部材1の厚さよりも大きな幅の切れ込み19を先端部に形成した丸棒材20を、回転軸12の先端に固定することにより巻取手段4を構成している。このようにすることで、棒状体11のようなコード18を挟持する機構が不要となるため、上記の実施形態よりもゴム分離装置の構造を簡易なものとすることができる。
【0025】
本発明のゴム分離装置は、タイヤのベルト層などの補強材としての帯状コード部材1、特にスチールコードを用いた帯状コード部材1からの未加硫ゴム17の分離に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 帯状コード部材
2A、2B 支持体
3A、3B 押圧手段
4 巻取手段
5 引張手段
6 支持部材
7A、7B スクレイパー
8A、8B 押圧シリンダ
9A、9B (押圧シリンダの)ロッド
10 支点
11 棒状体
12 回転軸
13 水平シリンダ
14 L型板
15 突部
16 保持板
16a テーパ部
17 未加硫ゴム
18 コード
19 切れ込み
20 丸棒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き揃えたコードに未加硫ゴムを被覆してなる帯状コード部材から、前記未加硫ゴムを分離するゴム分離装置であって、
前記帯状コード部材が架け渡される左右一対の支持体と、前記架け渡された帯状コード部材を前記支持体に向けて押圧する左右一対の押圧手段と、前記左右一対の支持体間に配置され、前記架け渡された帯状コード部材を巻き取る巻取手段とを備えた帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項2】
前記左右一対の押圧手段が、前記帯状コード部材を前記左右一対の支持体に向けて斜め外側方向から押圧するようにした請求項1に記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項3】
前記巻取手段が、支点の回りに回動可能な2本の棒状体を、回転軸の先端に固定してなる請求項1又は2に記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項4】
前記棒状体の断面を挟持側が曲面となる半円形状にした請求項3に記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項5】
前記巻取手段が、前記帯状コード部材の厚さよりも大きな幅の切れ込みを先端部に形成した丸棒材を、回転軸の先端に固定してなる請求項1又は2に記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項6】
前記左右一対の支持体のいずれかの外側に、前記架け渡された帯状コード部材を長手方向へ引っ張る引張手段を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項7】
前記押圧手段が前記左右一対の支持体に架け渡された帯状コード部材を押圧する方向が、該帯状コード部材に対して10〜40°の角度をなすようにした請求項2〜6のいずれかに記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項8】
前記コードがスチールワイヤである請求項1〜7のいずれかに記載の帯状コード部材のゴム分離装置。
【請求項9】
前記帯状コード部材がタイヤの補強材である請求項1〜8のいずれかに記載の帯状コード部材のゴム分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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