説明

帯状ワークの突合せ接合装置

【課題】 先行及び後行の帯状ワークの切断を高精度で行え、又、両帯状ワークを突合せ溶接する際にアーク光を完全に遮蔽できると共に、両帯状ワークの突合せ部のクリーニングを行えるようにする。
【解決手段】 先行及び後行の帯状ワークW1,W2を支持載置して保持固定すると共に、両帯状ワークW1,W2を自動的に突き合せる左右のテーブル2,2と、左右のテーブル2,2間に配設され、両帯状ワークW1,W2を幅方向に沿って切断する切断装置3と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を挾持固定するクランプ機構5と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接する溶接装置6とを具備した帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、切断装置3の両側近傍位置に、両帯状ワークW1,W2の切断時に両帯状ワークW1,W2の奥側又は前側の側縁部の浮き上がりを防止するワーク押え具4をそれぞれ配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状ワークからリードフレームやコネクター等の各種部品を生産するプレスライン、帯状ワークを所定の幅に切断するスリッターライン、帯状ワークの焼鈍処理を行う焼鈍ライン、帯状ワークの表面処理を行うメッキライン、帯状ワークからパイプを生産する造管ライン等にそれぞれ設置され、ライン上を流れている先行の帯状ワークの後端に新しい後行の帯状ワークの先端を突合せ溶接により接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置の改良に係り、特に、先行の帯状ワークの終端部と後行の帯状ワークの始端部とを切断装置により幅方向に沿って一緒に切断し、両帯状ワークの切断された端面同士を自動的に突合せ固定した後、両帯状ワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにした帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、両帯状ワークを切断装置により一緒に切断する際に、両帯状ワークの切断加工を高精度で行えて両帯状ワークの突合せ部の重なりや変形等を防止することができ、又、両帯状ワークの突合せ部を溶接する際に、アーク光を完全に遮蔽して作業員の目や皮膚を護ることができ、更に、両帯状ワークの突合せ部を溶接する直前に突合せ部のクリーニングを行って溶接欠陥の無い突合せ溶接を行えるようにした帯状ワークの突合せ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コイル状に巻き取られた帯状ワークの加工や熱処理、表面処理等を連続的に行うプレスラインやスリッターライン、焼鈍ライン、メッキライン、造管ライン等に於いては、生産性の向上及び品質の安定化等を図るため、ライン上を流れている先行の帯状ワークの終端に新しい後行の帯状ワークの始端を突合せ溶接により接合し、新しい帯状ワークをライン上へ連続的に供給することが行われている。
【0003】
従来、先行の帯状ワークの終端部と後行の帯状ワークの始端部を切断装置により幅方向に沿って一緒に切断し、両帯状ワークの切断された端面同士を自動的に突合せ固定した後、両帯状ワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにした装置としては、本件発明者が先に開発した帯状金属板(帯状ワーク)の突合せ接合装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即ち、前記突合せ接合装置は、図示していないが、先行の帯状ワークの終端部と後行の帯状ワークの始端部を幅方向に沿って一緒に切断する切断装置と、切断装置の左右位置に両帯状ワークの搬送方向へそれぞれ往復移動自在に配設され、先行の帯状ワークの終端部及び後行の帯状ワークの始端部をそれぞれ幅方向から挾んだ状態で保持固定すると共に、両帯状ワークの切断された端面同士を自動的に突き合せる左右のテーブルと、両帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構と、両帯状ワークの突合せ部を突合せ溶接するタングステン電極棒を挿着した溶接用トーチを備えた前後方向へ往復移動自在な溶接装置等から構成されている。
【0005】
この突合せ接合装置は、先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークを一緒に切断加工する切断装置を溶接作業位置にある溶接装置の直下位置に配設し、前記切断装置の左右位置に両帯状ワークを保持固定してその切断端を突き合せる左右のテーブルを配設する構成としているため、切断加工した両帯状ワークの切断端を自動的に突き合せることができると共に、両帯状ワークの切断加工と突合せ溶接を同じ位置で連続的して行うことができ、作業能率の大幅な向上を図れると云う利点がある。
【0006】
しかし、前記突合せ接合装置に於いては、溶接用トーチが周囲から見える状態になっているため、両帯状ワークの突合せ部を溶接する際に、溶接用トーチに挿着したタングステン電極棒と帯状ワークとの間に発生するアークの強烈な光が周囲に漏れ、作業員に悪影響を及ぼすと云う問題があった。
又、この突合せ接合装置は、左右のテーブルが前部テーブルと後部テーブルに分割されており、前部テーブル及び後テーブルの両方を駆動装置により近接する方向へ移動させ、前部テーブルの上面に取り付けた前部ストッパーと後部テーブルの上面に取り付けた後部ストッパーとで両テーブルに支持載置された帯状ワークを幅方向から挾んだ状態で保持固定するようにしているため、突合せ溶接する帯状ワークの幅が変わると、溶接開始位置も必然的に変わることになり、帯状ワークの幅が変わる度に溶接用トーチの位置を設定し直さなければならず、作業性や取扱性に劣ると云う問題があった。
【0007】
そこで、本件発明者は、これらの問題を解決する新しい帯状ワークの突合せ接合装置を開発し、これを特許出願(特願2008−132735)している。
【0008】
即ち、前記帯状ワークの突合せ接合装置は、図示していないが、溶接装置に、帯状ワークの溶接時に発生するアーク光を遮蔽するトーチカバーを設け、又、左右のテーブルに、帯状ワークの奥側の側縁に当接して帯状ワークをその幅に関係なく一定の位置に位置決めする基準板と、帯状ワークの前側の側縁に当接して基準板とで帯状ワークを幅方向から挾んだ状態で保持固定する帯状ワークの幅方向へ往復移動自在な可動側押え板とをそれぞれ設けたものであり、帯状ワークの溶接時にトーチカバーによりアーク光を遮蔽して作業員を強烈なアーク光から護ることができ、又、帯状ワークを基準板の位置を基準にして基準板及び可動側押え板により幅方向から挾んだ状態で左右のテーブル上面に保持固定しているので、帯状ワークの幅に関係なく溶接開始位置が常に同じになって作業性等に優れていると云う利点がある。
【0009】
しかし、上述した帯状ワークの突合せ接合装置に於いても、未だ解決すべき問題点が残されている。
即ち、前記帯状ワークの突合せ接合装置は、切断装置の左右の固定刃と左右の可動刃とで先行の帯状ワークの終端部及び後行の帯状ワークの始端部を幅方向に沿って一緒に切断する際に、両帯状ワークを長手方向に対して直角に切断することができず、両帯状ワークの対向する切断端がハの字状になることがある。
【0010】
何故なら、切断装置は、両帯状ワークを切断するときに大きな負荷が掛からないように、左右の可動刃の刃先を上下方向へ傾斜させているので、左右のテーブルに保持固定された帯状ワークを切断する際に、左右の可動刃の刃先によって帯状ワークが押され、帯状ワークの切断終了間際に帯状ワークの切断個所近傍の側縁部が撓んでテーブル上面から浮き上がり、この状態で帯状ワークが切断されるからである。
特に、厚みの薄い帯状ワークを切断する際には、帯状ワークが撓み易いので、前記問題がより一層顕著に現われることになる。
【0011】
従って、切断端がハの字状になった両帯状ワークW1,W2を左右のテーブルにより突き合せると、図22(イ)に示すように両帯状ワークW1,W2が傾斜する状態で突き合されることになり、例え、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接できたとしても、両帯状ワークが屈曲した状態で接合されると云う問題があった。
又、切断端がハの字状になった両帯状ワークW1,W2を突き合せると、図22(ロ)に示すように両帯状ワークの突合せ部が弓なりの状態になったり、或いは図22(ハ)に示すように先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2とが部分的に重なったりすることがあった。そのため、精密な突合せ溶接を行えないと云う問題があった。
【0012】
更に、上述した問題の他に前記帯状ワークの突合せ接合装置は、溶接装置にアーク光を遮蔽するトーチカバーを設けているが、このトーチカバーは溶接用トーチの周囲を上面側から覆う構成となっているため、溶接時のアーク光を完全に遮ることができず、トーチカバーの先端から前方へ向かってアーク光が漏れると云う問題があった。
又、左右のテーブルに支持載置された帯状ワークを左右のテーブルに配設した基準板と可動側押え板とで幅方向から挾んだ状態で保持固定するようにしているため、帯状ワークの肉厚が薄いときには帯状ワークが幅方向に撓んでしまい、両帯状ワークの突き合せを正確且つ確実に行えないと云う問題があった。
更に、両帯状ワークの突合せ部に塵埃や金属粉が付着している場合に、この状態で両帯状ワークの突合せ部を溶接すると、塵埃や金属粉によって穴あき等の溶接欠陥を引き起こすと云う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3974464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークの切断加工を高精度で行えて両帯状ワークの突合せ部の重なりや変形等を防止することができ、又、両帯状ワークの突合せ部を溶接する際に、アーク光を完全に遮蔽して作業員の目や皮膚を護ることができ、更に、両帯状ワークの突合せ部を溶接する直前に突合せ部のクリーニングを行って溶接欠陥の無い突合せ溶接を行えるようにした帯状ワークの突合せ接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、先行の帯状ワークの終端部及び後行の帯状ワークの始端部をそれぞれ支持載置して保持固定すると共に、先行の帯状ワークの終端と後行の帯状ワークの始端を突き合せる両帯状ワークの搬送方向へ往復移動自在な左右のテーブルと、左右のテーブル間に配設され、先行の帯状ワークの終端部及び後行の帯状ワークの始端部を幅方向に沿って一緒に切断する切断装置と、両帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構と、クランプ機構により挾持固定された両帯状ワークの突合せ部を突合せ溶接する前後方向へ往復移動自在な溶接装置とを具備した帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記切断装置の両側近傍位置に、切断装置による両帯状ワークの切断時に両帯状ワークの切断個所近傍の奥側又は前側の側縁部を上面側から押えて当該側縁部が撓んでテーブル上面から浮き上がるのを防止するワーク押え具をそれぞれ配設したことに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項2の発明は、ワーク押え具が、左右のテーブルの奥側寄り又は前側寄りの位置で且つ切断装置の両側近傍位置に配設され、テーブル上面との間に帯状ワークの奥側又は前側の側縁部が挿入される隙間を形成する押え板と、押え板に取り付けられ、テーブルと押え板との間に挿入された帯状ワークの奥側又は前側の側縁部上面に当接して帯状ワークの奥側又前側の側縁部を上面側から押えるボールプランジャーとから成ることに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項3の発明は、ワーク押え具の押え板に、ボールプランジャーを帯状ワークの長手方向に沿って複数個配設したことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項4の発明は、溶接装置が、両帯状ワークの突合せ部の後方に位置する待機位置と両帯状ワークの突合せ部の上方に位置する溶接作業位置とに亘って前後方向へ往復移動自在な枠状の上部フレームと、上部フレームに両帯状ワークの幅方向へ往復移動自在に配設されたトーチ走行台と、枠状の上部フレーム内に位置してトーチ走行台に上下動自在に支持され、タングステン電極棒を挿着した溶接用トーチと、トーチ走行台に取り付けられ、少なくとも溶接用トーチの周囲及び上部フレームの一部分を上面側から覆って溶接時に発生するアーク光を遮蔽するトーチカバーとを備えていることに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項5の発明は、トーチカバーの先端部に、枠状の上部フレーム内に位置して両帯状ワークの溶接時に枠状の上部フレーム内から前方へ漏れるアーク光を遮蔽するアークカバーを垂設状態で取り付けたことに特徴がある。
【0020】
本発明の請求項6の発明は、溶接用トーチの前方位置に、溶接用トーチと同期的に前後進して両帯状ワークの突合せ溶接直前に両帯状ワークの突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去する清掃用ブラシを高さ調整自在に配設したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、先行の帯状ワークの終端部及び後行の帯状ワークの始端部を幅方向に沿って一緒に切断する切断装置の両側近傍位置に、切断装置による両帯状ワークの切断時に両帯状ワークの切断個所近傍の奥側又は前側の側縁部を上面側から押えて当該側縁部がテーブル上面から浮き上がるのを防止するワーク押え具をそれぞれ配設する構成としているため、切断装置による両帯状ワークの切断時に、両帯状ワークの切断個所近傍の側縁部が撓んでテーブル上面から浮き上がったりすると云うことがなくなり、直線で平行度の正しい切断面を持つ高精度な切断加工を行えることになる。
その結果、本発明の請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、切断された先行の帯状ワークの終端と後行の帯状ワークの始端との突き合せを高精度で行え、両帯状ワークが屈曲した状態で突き合されたり、両帯状ワークの突合せ部が弓なりの状態になったり、或いは先行の帯状ワークと後行の帯状ワークとが部分的に重なったりすると云うことがなくなり、突合せ部の重なりや変形等が全く無い理想的な突き合せを行え、精密な突合せ溶接を行えることになる。
【0022】
本発明の請求項2乃至請求項6に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、上記効果に加えて更に次のような優れた効果を奏することができる。
【0023】
即ち、本発明の請求項2に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、帯状ワークの側縁部の浮き上がりを防止するワーク押え具が、左右のテーブルの奥側寄り又は前側寄りで且つ切断装置の両側近傍位置に配設され、テーブル上面との間に帯状ワークの奥側又は前側の側縁部が挿入される隙間を形成する押え板と、押え板に取り付けられ、テーブルと押え板との間に挿入された帯状ワークの奥側又は前側の側縁部上面に当接して帯状ワークの奥側又前側の側縁部を上面側から押えるボールプランジャーとから成るため、突合せ溶接する帯状ワークの厚みが変わっても、帯状ワークの側縁部を上面側から確実且つ良好に押えることができる。
【0024】
本発明の請求項3に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、ワーク押え具の押え板に、ボールプランジャーを帯状ワークの長手方向に沿って複数個配設しているため、帯状ワークの側縁部を上面側から確実且つ良好に押えることができ、帯状ワークの側縁部の浮き上がりをより確実に防止することができる。
【0025】
本発明の請求項4に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、溶接装置が少なくとも溶接用トーチの周囲を上面側から覆うトーチカバーを備えているため、帯状ワークの突合せ部を突合せ溶接する際に、トーチカバーによりアーク光が遮蔽されることになり、作業員がアークからの強烈な光を直視したり、目や皮膚に有害な紫外線や赤外線を浴びたりすると云うことがなく、安全に溶接作業を行える。
【0026】
本発明の請求項5に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、トーチカバーの先端部に、枠状の上部フレーム内に位置して溶接時に枠状の上部フレーム内から前方へ漏れるアーク光を遮蔽するアークカバーを垂設状態で取り付けているため、溶接時に発生するアーク光をほぼ完全に遮蔽することができ、溶接作業をより一層安全に行える。
【0027】
本発明の請求項6に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、溶接用トーチの前方位置に、溶接用トーチと同期的に前後進して両帯状ワークの突合せ溶接直前に両帯状ワークの突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去する清掃用ブラシを配設しているため、両帯状ワークの突合せ部に付着している塵埃や金属粉を清掃用ブラシにより除去した直後に溶接を行うことができ、穴あき等の溶接欠陥を引き起こすと云うことがない。
又、本発明の請求項6に記載の帯状ワークの突合せ接合装置は、清掃用ブラシを高さ調整自在に配設しているため、清掃用ブラシが摩耗しても、高さ調整を行うことによって両帯状ワークの突合せ部に付着している塵埃や金属粉を確実且つ良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置の正面図である。
【図2】突合せ接合装置の要部の平面図である。
【図3】突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図4】突合せ接合装置のテーブル部分及び溶接装置の縦断側面図である。
【図5】突合せ接合装置のテーブル部分の縦断正面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【図8】ワーク押え具の拡大縦断正面図である。
【図9】ワーク押え具の拡大縦断側面図である。
【図10】切断装置の側面図である。
【図11】切断装置の正面図である。
【図12】切断装置の平面図である。
【図13】切断装置の一部破断側面図である。
【図14】溶接装置の縦断側面図である。
【図15】圧延装置の側面図である。
【図16】圧延装置を示し、圧延上部が起立位置にある状態の側面図である。
【図17】切断装置の可動板の挿入穴内に帯状ワークの終端部及び始端部を挿入し、帯状ワークの終端部及び始端部をワーククランプにより左右のテーブル上面に保持固定すると共に、帯状ワークの奥側の側縁部をワーク押え具により押えた状態の突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図18】帯状ワークの終端部及び始端部を切断装置により切断した状態の突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図19】左右のテーブルを移動させ、切断した帯状ワークの終端と始端を突き合せた状態の突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図20】溶接装置及び上部治具が前進して帯状ワークの突合せ部の上方位置へ移動した状態の突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図21】左右のテーブル及び下部治具等を上昇させて帯状ワークの突合せ部近傍をクランプ機構で挾持し、帯状ワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接する状態の突合せ接合装置の要部の縦断正面図である。
【図22】従来の帯状ワークの突合せ接合装置を用いて帯状ワークの切断及び突合せを行った状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置を示し、当該帯状ワークの突合せ接合装置は、コイル状に巻き取られているステンレスや鉄、銅等の帯状ワークW1,W2の加工や熱処理、表面処理等を連続的に行うプレスラインやスリッターライン、焼鈍ライン、メッキライン、造管ライン等の各ライン上に設置されており、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の終端に新しい後行の帯状ワークW2の始端を突合せ溶接により接合し、新しい後行の帯状ワークW2を先行の帯状ワークW1に引き続いてライン上へ供給できるようにしたものである。
【0030】
即ち、前記帯状ワークの突合せ接合装置は、図1乃至図4に示す如く、キャビネット本体1と、先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部をそれぞれ支持載置して保持固定すると共に、先行の帯状ワークW1の切断された終端と後行の帯状ワークW2の切断された始端とを自動的に突き合せる左右のテーブル2,2と、先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部を幅方向に沿って一緒に切断する切断装置3と、切断装置3の両側近傍位置に配設され、切断装置3による両帯状ワークW1,W2の切断時に両帯状ワークW1,W2の切断個所近傍の奥側又は前側の側縁部の浮き上がりを防止するワーク押え具4と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構5と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接する溶接装置6と、両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接直前に両帯状ワークW1,W2の突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去する清掃用ブラシ7と、両帯状ワークW1,W2の溶接部を圧延加工する手動式の圧延装置8等から構成されており、板厚が0.2mm〜0.9mm程度の帯状ワークW1,W2の接合に適しているものである。
【0031】
前記キャビネット本体1は、図1に示す如く、底面側に複数のキャスター9及び支持脚10を有すると共に、中間部分に水平姿勢の中間板(図3及び図4参照)を備えており、キャビネット本体1の前面側上部位置には、溶接条件等を設定すると共に、溶接電流や溶接速度等を表示するタッチパネル11と各種のスイッチ12等が配設されている。
又、キャビネット本体1の内部には、溶接用電源装置及びその制御装置(何れも図示省略)、溶接用ガスボンベ及びその付属品(何れも図示省略)、切断装置3及び溶接装置6等の制御装置(図示省略)等がそれぞれ格納されている。
【0032】
前記左右のテーブル2,2は、図2及び図3に示す如く、キャビネット本体1の中間板1aの幅方向中央部分に配置した切断装置3の左右位置に帯状ワークW1,W2の搬送方向(図2及び図3の左右方向)へ往復移動自在に且つ上下動自在にそれぞれ配設されており、先行の帯状ワークW1の終端部と新しい後行の帯状ワークW2の始端部をそれぞれ支持載置して保持固定すると共に、両帯状ワークW1,W2の切断された端面同士を自動的に突き合せるものである。
【0033】
即ち、左右のテーブル2,2は、平面形状がほぼ矩形状に形成されており、キャビネット本体1の中間板1aに上下動自在支持された昇降台13と、昇降台13に帯状ワークW1,W2の搬送方向へ往復移動自在に支持された左右の移動台14,14とによって、帯状ワークW1,W2の搬送方向へ往復移動自在で且つ上下動自在となっている。
【0034】
具体的には、昇降台13は、図3及び図4に示す如く、キャビネット本体1の中間板1aの上面側に複数本の鉛直姿勢の支持軸15を介して上下動自在に支持されており、中間板1aに固定されて昇降台13に連動連結された複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることよって、上下動するようになっている。
この昇降台13は、中央部に切断装置3の一部の部材が挿通される長方形状の貫通穴13a′を形成した横長の長方形状のベース板13aと、ベース板13aの前端部に鉛直姿勢で固定された横長の長方形状の正面板13bと、ベース板13aの両端部にそれぞれ鉛直姿勢で固定された側板13cとから構成されている。
【0035】
又、左右の移動台14,14は、図2乃至図4に示す如く、昇降台13のベース板13a上面にガイドレール17を介して帯状ワークW1,W2の搬送方向へ往復移動自在に支持されており、昇降台13の左右の側板13cと左右の移動台14,14との間にそれぞれ介設した流体圧シリンダ18を伸縮動作させることによって、帯状ワークW1,W2の搬送方向へ往復移動するようになっている。
この左右の移動台14,14は、昇降台13のベース板13a上面に設けたガイドレール17に帯状ワークW1,W2の搬送方向へ移動自在に支持された平面形状コの字形の移動板14aと、移動板14aの前端部に鉛直姿勢で固定された正面側板14bとからそれぞれ構成されており、この左右の昇降台13に左右のテーブル2,2がそれぞれ配設されている。
【0036】
従って、左右のテーブル2,2は、昇降台13と左右の移動台14,14との間にそれぞれ介設した流体圧シリンダ18を伸縮動作させることによって、左右の移動台14,14と一緒に帯状ワークW1,W2の搬送方向へ往復移動し、又、中間板1aに固定されて昇降台13に連動連結された複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることよって、昇降台13及び左右の移動台14,14と一緒に上下動するようになっている。
尚、左右のテーブル2,2の前側寄りの位置で且つ左右のテーブル2,2間には、図2に示す如く、テーブルカバー19が配設されており、左右のテーブル2,2が近接する方向又は離間する方向へ移動しても、左右のテーブル2,2間の前側寄りの位置に間隙ができないように工夫が施されている。これにより、作業員が左右のテーブル2,2で指を詰めると云うことがなく、安全性が確保されることになる。
【0037】
そして、左右のテーブル2,2の奥側部分には、図2に示す如く、先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部とをそれぞれ左右のテーブル2,2上面へ保持固定する左右のワーククランプ20と、帯状ワークW1,W2の奥側の側縁に当接して帯状ワークW1,W2をその幅に関係なく一定の位置に位置決めする左右の位置決めストッパー21とがそれぞれ配設されている。
【0038】
即ち、左右のワーククランプ20,20は、図2乃至図6に示す如く、左右の移動台14,14の移動板14a,14aに立設したシリンダプレート20aと、シリンダプレート20aに形成した二つのピストン穴20a′にOリング20bを介して上下方向へ摺動自在に挿入されたピストン20cと、ピストン穴20a′の下面側開口を閉塞するピストンカバー20dと、ピストン20cに連結され、シリンダプレート20aの上端面から上方へ突出するピストンロッド20eと、ピストンロッド20eに連結され、左右のテーブル2,2に支持載置された帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部上面に当接可能なクランプ爪20fとからそれぞれ構成されており、シリンダプレート20aの下部に形成したポートからピストン穴20a′内の下側に作動流体を供給すると、ピストン20c、ピストンロッド20e及びクランプ爪20fが上昇し、クランプ爪20fと左右のテーブル2,2上面との間に帯状ワークW1,W2の奥側の側辺部を挿入できる間隙が形成され、又、シリンダプレート20aの上部に形成したポートからピストン穴20a′内の上側に作動流体を供給すると、ピストン20c、ピストンロッド20e及びクランプ爪20fが下降し、クランプ爪20fにより帯状ワークW1,W2を左右のテーブル2,2上面へ保持固定するようになっている。
尚、クランプ爪20fは、帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を左右のテーブル2,2上面へ確実且つ良好に保持固定できるように帯状ワークW1,W2の長手方向に沿う長尺板状に形成されており、当該クランプ爪20fの下面には、クランプ爪20fが帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を保持固定したときに帯状ワークW1,W2の上面に傷が付かないようにウレタン板20gが設けられている。
【0039】
一方、左右の位置決めストッパー21,21は、図2、図5及び図7に示す如く、ワーククランプ20のクランプ爪20fの左右位置に配設されてシリンダプレート20aの上面にボルトにより固定されており、両帯状ワークW1,W2の幅方向の位置決めを行うものであり、溶接装置6による溶接開始時の基準位置及び圧延装置8による圧延加工開始時の基準位置になる役目を果たすものである。
又、左右の位置決めストッパー21,21は、図7に示すように左右のテーブル2,2の奥側部分を支持するようになっている。
【0040】
前記ワーク押え具4は、図2及び図3に示す如く、左右のテーブル2,2の奥側寄りの位置で且つ切断装置3の両側近傍位置に配設されており、切断装置3の固定台22の上面に固定され、テーブル2,2上面との間に帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部が挿入される隙間を形成する押え板4′と、押え板4′の先端部に帯状ワークW1,W2の長手方向に沿って一定の間隔を空けて取り付けられ、テーブル2,2と押え板4′との間に挿入された帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部上面に当接して帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を上面側から押える二つのボールプランジャー4″とから成る。
【0041】
又、ボールプランジャー4″は、図8及び図9に示す如く、押え板4′の取り付け穴に圧入され、先端に開口を有するハウジング4aと、ハウジング4a内に配設されたボール4bと、ハウジング4a内に配設され、ボール4bの一部分がハウジング4aの開口から常時突出するように附勢する圧縮コイルスプリング4cとから成り、ハウジング4aの開口から突出するボール4bと左右のテーブル2,2上面との距離が帯状ワークW1,W2の厚みよりも小さめになるように押え板4′に取り付けられている。
【0042】
従って、このワーク押え具4によれば、ボールプランジャー4″と左右のテーブル2,2上面との間に帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を挿入すると、帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部が圧縮コイルスプリング4c及びボール4bによって上面側から押え付けられた格好になり、帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部の浮き上がりを防止することができる。
又、ボールプランジャー4″と左右のテーブル2,2上面との間に帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を挿入すると、ボール4bが圧縮コイルスプリング4cの弾性力に抗して上方へ押し上げられるので、厚みの異なる帯状ワークW1,W2であっても、ボールプランジャー4″と左右のテーブル2,2上面との間に帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を確実且つ良好に挿入することができる。
【0043】
前記切断装置3は、図2及び図3に示す如く、左右のテーブル2,2間に配設されて昇降台13のベース板13aの中央部に取り付けられており、左右のテーブル2,2と一緒に昇降動すると共に、先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部を幅方向に沿って一緒に切断するものである。
【0044】
即ち、切断装置3は、図3、図10乃至図13に示す如く、昇降台13のベース板13aの貫通穴13a′の開口周縁部上面に対向状に配置され、ベース板13aの上面に起立姿勢で固定された左右の固定台22,22と、左右の固定台22,22の上端部に帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定され、その刃先が左右のテーブル2,2の上面と同じ高さ位置にある左右の固定刃23,23と、上半部側がベース板13aの貫通穴13a′を貫通して左右の固定台22,22間に固定されていると共に、下半部側がベース板13aの貫通穴13a′の開口周縁部下方に位置する枠台24と、枠台24内に昇降自在に支持され、先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部がそれぞれ挿入される挿入穴25aを形成した枠状の可動板25と、可動板25の挿入穴25aの内周縁部上縁側に帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定され、左右の固定刃23,23との協働作用により先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部を幅方向に沿って一緒に切断する左右の可動刃26,26と、可動板25の下端部に連結され、枠台24の下端部に鉛直姿勢で上下自在に挿通された一対の連結軸27と、一対の連結軸27の下端部同士を連結する先端ブロック28と、枠台24の下面と先端ブロック28との間に介設され、可動板25を下降させるシリンダ29a及びロッド29bから成る単動型の流体圧シリンダ29と、枠台24と先端ブロック28との間に介設され、可動板25を上方へ附勢する復帰用圧縮コイルスプリング30と、枠台24にポスト31及びプレート32を介して取り付けられ、枠台24に形成したロック穴24c′及び可動板25に形成したロック穴25bにそれぞれ挿入されて可動板25を下降した位置にロックするロックピン33aを備えたロック用流体圧シリンダ33とから構成されている。
【0045】
尚、枠台24は、ベース板13aの貫通穴13a′に挿通されて上半部が左右の固定台22,22間に固定された一対の凸形側板24aと、一対の凸形側板24aの下端部間に固定され、流体圧シリンダ29への作動流体供給口24b′を形成したブロック状の下部材24bと、ロック用流体圧シリンダ33のロックピン33aが挿入されるロック穴24c′を有し、下部材24bの上面に一定の間隔を空けて対向状に配置されて一対の凸形側板24a間に固定された高さの異なる一対の中板24cとから構成されている。
【0046】
又、左右の可動刃26,26を取り付けた可動板25は、復帰用圧縮コイルスプリング30の弾性力によりその挿入穴25aの一部が帯状ワークW1,W2の搬送ライン上に位置して挿入穴25a内に帯状ワークW1,W2の終端部及び始端部を挿入できる上昇位置(図13に示す位置)と、流体圧シリンダ29の伸長動作により可動板25全体が左右のテーブル2,2の上面よりも下方に位置する下降位置(図3に示す位置)とを取り得るようになっている。
【0047】
更に、左右の可動刃26,26は、一方の可動刃26の刃先が他方の可動刃26の刃先よりも上方又は下方へ偏倚する状態で可動板25の挿入穴25aの内周縁部上縁側に取り付けられており、左右の固定刃23,23との協働作用により先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部を一緒に切断する際に切断装置3に大きな負荷が掛からないように工夫されている。
又、左右の可動刃26,26の刃先は、左右のテーブル2,2の奥側へ行くに従って下り傾斜状となっている。
【0048】
而して、前記切断装置3によれば、先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部をそれぞれ左右の固定刃23,23に当接させた状態で上昇位置にある可動板25の挿入穴25a内に挿入し、この状態で可動板25及び左右の可動刃26,26を流体圧シリンダ29により上昇位置から下降位置へ下降させることによって、左右の可動刃26,26と左右の固定刃23,23との間で帯状ワークW1,W2の終端部及び始端部を幅方向に沿って一緒に切断することができ、又、枠台24のロック穴24c′及び下降位置にある可動板25のロック穴25bにロック用流体圧シリンダ33のロックピン33aを挿入することによって、可動板25を下降位置にロックすることができ、更に、ロック用流体圧シリンダ33のロックピン33aを可動板25のロック穴25bから抜けば、復帰用圧縮コイルスプリング30の弾性力によって可動板25が下降位置から上昇位置へ復帰するようになっている。
尚、この切断装置3は、左右の固定刃23,23及び左右の可動刃26,26により切断された帯状ワークW1,W2の切れ端を可動板25の挿入穴25a内に排出し、この切れ端を切断装置3の近傍位置に配設したスクラップケース34内に回収できるようになっている。
【0049】
前記クランプ機構5は、図3及び図20に示す如く、切断装置3の上方位置(帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方位置)に前後方向へ水平移動自在に配設した溶接装置6の上部フレーム38の下面側に設けられ、左右のテーブル2,2により突き合された先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍の上面を保持する上部治具5′と、切断装置3の可動板25の上端部に設けられ、上部治具5′との間で両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を挾持固定する下部治具5″とから構成されており、上部フレーム38を前進させて上部治具5′を下部治具5″の上方位置へ移動させた後、昇降台13及び切断装置3等を上昇させて下部治具5″を上部治具5′へ近接させることによって、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を上部治具5′と下部治具5″とで上下方向から緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
【0050】
具体的には、上部治具5′は、図3に示す如く、後述する溶接装置6の上部フレーム38の下面側に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隔を空けて対向状に配設され、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面に当接し得る銅材により形成した左右の上部クランプ5a,5aから成り、主にアークの拡がりを遮断して両帯状ワークW1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるものである。
【0051】
一方、下部治具5″は、図8及び図13に示す如く、銅材により角柱状に形成されて切断装置3の可動板25の上端面に形成した凹部に挿入固定されたバックバーから成り、その中央部上面には、帯状ワークW1,W2の溶接時にアルゴンガス等のシールドガスが流れるガス溝5bが長手方向に沿って形成され、又、その下面側には、ガス溝5b内へシールドガスを供給するガス通路5cが形成されている。
この下部治具5″は、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、両帯状ワークW1,W2の熱歪等を防止すると共に、両帯状ワークW1,W2の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
尚、35は可動板25の上端部両端に固定したエンドブロックである。
【0052】
前記溶接装置6は、切断装置3の上方位置(帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方位置)に前後方向へ往復移動自在に配設されており、切断装置3の後方に位置する待機位置(キャビネット本体1内に収納された状態)と、可動板25が下降位置にある切断装置3の上方に位置する溶接作業位置(左右のテーブル2,2により突き合された帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方に位置する状態)とを取り得るようになっている。
この溶接装置6は、帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に前方へ引き出され、溶接用トーチ42の先端が自動的に高さ調整され且つ溶接用トーチ42が所定の速度で帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
【0053】
即ち、溶接装置6は、図2乃至図4及び図14に示す如く、キャビネット本体1の中間板1a上面に対向状に立設した取付板36に複数本のガイド軸37を介して前後方向へ往復移動自在に支持された略枠状の上部フレーム38と、中間板1aの上面に帯状ワークW1,W2の幅方向に沿って配置され、シリンダブラケット39を介して上部フレーム38を待機位置(図2及び図4に示す位置)と溶接作業位置(図示省略)とに亘って往復移動させるロッドレスシリンダ40(例えば、マグネット式のロッドレスシリンダ)と、上部フレーム38の上面に両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持されたトーチ走行台41と、枠状の上部フレーム38内に位置してトーチ走行台41に上下動自在に支持され、先端部からシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒42aを挿着した溶接用トーチ42と、トーチ走行台41に設けられ、溶接用トーチ42を上下動させるトーチ上下用駆動装置43と、トーチ走行台41及び溶接用トーチ42を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復走行させるトーチ走行用駆動装置44と、溶接開始前に於ける溶接用トーチ42のタングステン電極棒42aと帯状ワークW1,W2の間隙設定を容易にし、溶接中に於けるタングステン電極棒42aと帯状ワークW1,W2の接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、電極接触検出装置からの検出信号に基づいてトーチ上下用駆動装置43及びトーチ走行用駆動装置44等を制御する制御器(図示省略)と、トーチ走行台41に取り付けられ、少なくとも溶接用トーチ42の周囲及び上部フレーム38の一部分を上面側から覆って溶接時に発生するアーク光を遮蔽するトーチカバー45と、トーチカバー45の先端部に垂設状態で前後方向へ揺動自在に取り付けられ、枠状の上部フレーム38内に位置して溶接時に枠状の上部フレーム38内から前方へ漏れるアーク光を遮蔽するアークカバー46と、上部フレーム38に上下動自在に取り付けられた安全カバー47とから構成されている。
【0054】
具体的には、上部フレーム38は、略枠状に形成されており、帯状ワークW1,W2の幅方向に沿って対向状に配設された長尺板状の左右の上部側板38a,38aと、左右の上部側板38a,38aの前端部同士を連結する上部正面板38bと、左右の上部側板38a,38aの後端部同士を連結する水平姿勢の上部連結板38cと、左右の上部側板38a,38aの下面及び上部連結板38cの下面に固定された上部走行板38dと、上部走行板38dの下面に固定され、ガイド軸37にスライド自在に嵌合される複数のブロック体38eと、上部正面板38bに突設され、キャビネット本体1の前面に固定した上部フレーム受け48の受け穴に抜き差し自在に挿入されるボス部38fとから構成されている。
この上部フレーム38は、ロッドレスシリンダ40により待機位置と溶接作業位置とに亘って往復移動自在となっており、溶接作業位置のときにボス部38fが上部フレーム受け48の受け穴に挿入され、横方向や上下方向へ揺れるのを防止されている。これにより、トーチ走行台41及び溶接用トーチ42は、両帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って正確に移動することになる。
【0055】
トーチ走行台41は、上部フレーム38の左右の上部側板38a,38a上面にガイドレール49を介して帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持されており、左右の上部側板38a,38a間に位置するトーチ上下用プレート41aを備えている。
【0056】
溶接用トーチ42は、トーチ走行台41のトーチ上下用プレート41aにリニアガイド50を介して上下動自在に支持されたトーチ上下用アーム51の先端部にトーチ取付け部材52を介して鉛直姿勢で取り付けられており、略枠状の上部フレーム38内に位置するようになっている。この溶接用トーチ42には、従来公知のTIG溶接用トーチが使用されている。
【0057】
トーチ上下用駆動装置43は、図14に示す如く、トーチ走行台41の上面にトーチ上下用ブラケット43aを介して取り付けたトーチ上下用モータ43bと、トーチ上下用アーム51に固定したボールナット43cと、トーチ上下用モータ43bの出力軸にカップリング43dを介して連結され、ボールナット43cに螺挿された鉛直姿勢のボールネジ43eとから構成されており、トーチ上下用モータ43bによりボールネジ43eを正逆回転させると、廻り止めされたボールナット43cがボールネジ43eに沿って昇降動し、トーチ上下用アーム51及び溶接用トーチ42を上下動させるようになっている。
【0058】
トーチ走行用駆動装置44は、図14に示す如く、トーチ走行台41の上面にトーチ走行用ブラケット44aを介して取り付けたトーチ走行用モータ44bと、トーチ走行用モータ44bの出力軸に取り付けたピニオン44cと、上部フレーム38の一方の上部側板38a上に帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定され、ピニオン44cに噛み合うラック44dとから構成されており、トーチ走行用モータ44bによりピニオン44cを正逆回転させると、トーチ走行台41及びこれに支持された溶接用トーチ42を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復走行させるようになっている。
【0059】
電極接触検知装置(図示省略)は、タングステン電極棒42aと帯状ワークW1,W2の間に於ける溶接電圧の印加の有無を検出する溶接電圧監視回路と、タングステン電極棒42aと帯状ワークW1,W2の接触の有無を検出する接触検知回路等から構成されており、この電極接触検知装置には、特開2001−300759号に開示された電極接触検知装置が使用されている。
【0060】
制御器(図示省略)は、電極接触検出装置からの検出信号に基づいてトーチ上下用駆動装置43を駆動制御して溶接用トーチ42のタングステン電極棒42aの先端と帯状ワークW1,W2との距離(所謂アーク長)を所定の値に自動的に調整し、その後、トーチ走行用駆動装置44を駆動制御してトーチ走行台41を帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させてトーチ走行台41に支持された溶接用トーチ42を所定の速度で帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って直線移動させるようになっている。又、制御器は、溶接中にタングステン電極棒42aと帯状ワークW1,W2とが接触すると、トーチ走行用駆動装置44を停止させると共に、溶接用電源を遮断するようになっている。
【0061】
トーチカバー45は、図4及び図14に示す如く、トーチ走行台41の上面側にトーチ走行台41から前方へ突出する姿勢で固定され、溶接用トーチ42の上端部側が挿入されるトーチ挿入穴45a′を形成したプレート部45aと、プレート部45aに上方へ突出状態で連設され、電源ケーブルやシールドガスの供給ホース、トーチ上下用モータ43b、トーチ走行用モータ44b等が収納されるボックス部45bとから成り、溶接用トーチ42の周囲及び上部フレーム38の一部分を上面側から覆い、溶接時に発生するアークからの強烈な光を遮蔽して作業者をアーク光から守るものである。
このトーチカバー45は、これをトーチ走行台41に固定したときに溶接用トーチ42の上端部側がプレート部45aのトーチ挿入穴45a′から上方へ突出する状態となっているため、溶接用トーチ42からタングステン電極棒42aを取り外す際や溶接用トーチ42にタングステン電極棒42aを挿着する際に邪魔になると云うことがなく、タングステン電極棒42aの交換等を円滑且つ良好に行える。
【0062】
アークカバー46は、図3及び図14に示す如く、トーチカバー45のプレート部45aの先端にヒンジ53を介して垂設状態で前後方向へ揺動自在に取り付けられており、枠状の上部フレーム38内に位置して溶接時に枠状の上部フレーム38内から前方へ漏れるアーク光を遮蔽するものである。
このアークカバー46は、プレート部45aの先端にヒンジ53を介して前後方向へ揺動自在に取り付けられているため、トーチ走行台41が前進してアークカバー46が上部フレーム38の上部正面板38bに当接したときに後方へ揺動するようになっているので、トーチ走行台41の前進に支障を来たすこともない。
【0063】
安全カバー47は、図2乃至図4に示す如く、上部フレーム38の左右の上部側板38a,38a外面にリニアガイド54を介して上下動自在に支持されており、左右のテーブル2,2が上昇したときに左右のテーブル2,2に設けた位置決めストッパー21に当接して押し上げら、又、左右のテーブル2,2が下降したときに左右のテーブル2,2と一緒に下降し、左右のテーブル2,2が昇降動するときに上部フレーム38と左右のテーブル2,2との間に生じる隙間を覆い隠すものである。
【0064】
前記清掃用ブラシ7は、溶接用トーチ42の前方位置に高さ調整自在に配設されており、溶接用トーチ42と同期的に前後進して両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接直前に両帯状ワークW1,W2の突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去するものである。
【0065】
具体的には、清掃用ブラシ7は、図14に示す如く、溶接用トーチ42の前方近傍位置で且つトーチカバー45のプレート部45a上面に設けたブラシフランジ55にネジにより高さ調整自在に支持されたブラシ軸7aと、ブラシ軸7aの下端部に挿着され、柄7b′及び毛先7b″から成る金属製のブラシ7bとから構成されており、ブラシ軸7aを高さ調整してブラシ7bの毛先7b″を両帯状ワークW1,W2の突合せ部の上面に接触させ、この状態でトーチ走行台41を前進させることによって、溶接用トーチ42と同期的に前進して両帯状ワークW1,W2の突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去するようになっている。
【0066】
前記圧延装置8は、左右のテーブル2,2のうち、下流側となるテーブル2の側方位置に配設されて突合せ溶接された両帯状ワークW1,W2の溶接部を圧延加工して溶接部の厚みや組織を均一化するものであり、両帯状ワークW1,W2の溶接部が支持載置される圧延台56と、圧延台56の基端部に支持金具57及び加圧軸58等を介して上下方向へ移動可能で且つ上下方向へ回動可能に取り付けられた圧延上部59と、圧延上部59に帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された圧延ローラ台60と、圧延ローラ台60に回転自在に支持されて帯状ワークW1,W2の溶接部上を転動する圧延ローラ61と、圧延上部59を圧延台56側へ加圧して圧延ローラ61を加圧状態で帯状ワークW1,W2の溶接部へ当接させる加圧手段62とから構成されている。
この例では、圧延装置8は、右側のテーブル2の側方位置に配設されており、昇降台13の右側の側板13c外面に取り付けられて左右のテーブル2,2と同期的に昇降動するようになっている。
【0067】
即ち、圧延装置8は、図1、図2、図15及び図16に示す如く、昇降台13の側板13c外面に帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定され、両帯状ワークW1,W2の溶接部が支持載置される圧延台56と、圧延台56の基端部上面に二本のガイド軸63を介して上下動自在に支持載置された支持金具57と、基端部が支持金具57へ遊びを持たせた状態で加圧軸58により回動自在に取り付けられ、圧延台56に対して平行になる圧延位置(図15に示す位置)と圧延台56に対して起立姿勢になる開放位置(図16に示す位置)とを取り得る圧延上部59と、圧延上部59にリニアガイド64を介して帯状ワークW1,W2の幅方方向へ往復移動自在に支持された取っ手60a付きの圧延ローラ台60と、圧延ローラ台60にローラ軸65を介して回転自在に支持され、圧延上部59が圧延位置にあるときに圧延台56に支持載置された両帯状ワークW1,W2の溶接部上を転動する圧延ローラ61と、圧延上部59に帯状ワークW1,W2の幅方向へ移動調整自在に設けられ、圧延ローラ台60へ当接して圧延ローラ61の移動を規制するロックネジ66a付きのストッパー66と、圧延上部59の上面に貼り付けれ、ストッパー66の位置を決めるためのスケール(図示省略)と、圧延位置にある圧延上部59を圧延台56側へ加圧し、圧延ローラ61を加圧状態で帯状ワークW1,W2の溶接部へ当接させる加圧手段62とから構成されており、加圧手段62により圧延台56側へ向って加圧力が加えられている圧延ローラ61を両帯状ワークW1,W2の溶接部に沿って前後方向へ転動させて両帯状ワークW1,W2の溶接部を圧延加工するようにしたものである。
【0068】
又、加圧手段62は、支持金具57の下面側に取り付けられ、圧延台56の基端部を上下方向へ貫通する上下動自在な固定側加圧軸62aと、圧延台56と固定側加圧軸62aとの間に介設され、圧延上部59の基端部を支持金具57を介して加圧台側へ押圧する固定側圧縮コイルスプリング62bと、圧延台56の先端部に上下方向へ回動自在に取り付けられ、圧延上部59の先端部に形成した二股部59aに挿入自在な取っ手62c′付きの手前側加圧軸62cと、手前側加圧軸62cに移動自在に嵌め込まれ、手前側加圧軸62cが圧延位置にある圧延上部59の二股部59aに挿入されたときに圧延上部59の先端部上面に係止される加圧カラー62dと、手前側加圧軸62cの取っ手62c′と加圧カラー62dとの間に介設され、圧延上部59の先端部上面に係止された加圧カラー62dを圧延上部59の先端部側へ押圧する手前側圧縮コイルスプリング62eとから構成されており、手前側加圧軸62cを上方へ回動させて圧延上部59の二股部に挿入し、加圧カラー62dを圧延上部59の先端部上面に係止させると、圧延上部59が圧延位置に保持されると共に、固定側圧縮コイルスプリング62b及び手前側圧縮コイルスプリング62eによって、圧延上部59が圧延台56側へ加圧されて圧延ローラ61が加圧状態で帯状ワークW1,W2へ当接するようになっている。
【0069】
この圧延装置8に於いては、圧延ローラ台60が圧延上部59の基端部側へ移動したときには、圧延ローラ61の中心が両帯状ワークW1,W2の溶接部の奥側の側端と一致するように設定され、又、圧延ローラ台60が圧延上部59の先端部側へ移動してストッパー66に当接したときには、圧延ローラ61の中心が両帯状ワークW1,W2の溶接部の前側の側端と一致するように設定されている。従って、圧延ローラ61は、両帯状ワークW1,W2の溶接部上で往復移動することになる。
【0070】
尚、図1に於いて、67は昇降台13の左側の側板13c及び圧延装置8の圧延台56に固定したワークガイド板、68は昇降台13のベース板13a前端に固定した正面カバー、69は昇降台13のベース板13a両端に固定した側面カバーである。
【0071】
次に、上述した帯状ワークの突合せ接合装置を用いて先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
【0072】
尚、溶接電流、アーク長、シールドガスの供給量、溶接用トーチ42の走行速度、タングステン電極棒42aの先端形状等の溶接条件は、両帯状ワークW1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。又、両帯状ワークW1,W2には、厚みが0.2mm〜0.9mm程度のステンレスや鉄、銅、銅合金、アルミ合金等の帯状ワークW1,W2が使用されている。
【0073】
先ず、先行の帯状ワークW1の終端部を下流側のテーブル2(この例では、右側のテーブル2)に載せ、先行の帯状ワークW1の奥側の側縁部を右側のワーククランプ20のクランプ爪20fの下方及び右側のワーク押え具4のボールプランジャー4″の下方へそれぞれ挿入し、先行の帯状ワークW1の奥側の側縁を位置決めストッパー21へ押し当てて先行の帯状ワークW1の幅方向の位置決め行うと共に、先行の帯状ワークW1の終端部を切断装置3の上昇位置にある可動板25の挿入穴25a内に挿入し、この状態で右側のワーククランプ20を作動させて先行の帯状ワークW1の終端部を右側のワーククランプ20によりテーブル2上面へ密着状に保持固定する(図17参照)。
【0074】
又、後行の帯状ワークW2の始端部を上流側のテーブル2(この例では、左側のテーブル2)に載せ、後行の帯状ワークW2の奥側の側縁部を左側のワーククランプ20のクランプ爪20fの下方及び左側のワーク押え具4のボールプランジャー4″の下方へそれぞれ挿入し、後行の帯状ワークW2の奥側の側縁を位置決めストッパー21へ押し当てて後行の帯状ワークW2の幅方向の位置決め行うと共に、後行の帯状ワークW2の終端部を切断装置3の上昇位置にある可動板25の挿入穴25a内に挿入し、この状態で左側のワーククランプ20を作動させて後行の帯状ワークW2の終端部を左側のワーククランプ20によりテーブル2上面へ密着状に保持固定する(図17参照)。
【0075】
このとき、幅広のクランプ爪20fにより両帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部を左右のテーブル2,2上面へ保持固定するようにしているため、先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部は左右のテーブル2,2上面へ密着状態で確実且つ良好に保持固定される。然も、左右のテーブル2,2に支持載置された両帯状ワークW1,W2の奥側の側縁部をクランプ爪20fにより左右のテーブル2,2上面へ保持固定するようにしているため、帯状ワークW1,W2を基準板と可動側押え板とで幅方向から挾むようにした従来の突合せ接合装置に比較して帯状ワークW1,W2の幅方向の撓みが無くなり、両帯状ワークW1,W2の突き合せを正確に行えることになる。
又、左右のワーククランプ20の近傍位置に、両帯状ワークW1,W2の幅方向の位置決めを行う位置決めストッパー21を配設しているため、両帯状ワークW1,W2が幅方向へズレることがなくなると共に、帯状ワークW1,W2はその幅に関係なく位置決めストッパー21の位置を基準にして位置決めされる。
【0076】
先行の帯状ワークW1の始端部及び後行の帯状ワークW2の始端部が左右のテーブル2,2に保持固定されたら、切断装置3を作動させて上昇位置にある可動板25を流体圧シリンダ29により下降位置へ下降させる。そうすると、左右の可動刃26,26と左右の固定刃23,23との協働作用により先行の帯状ワークW1の終端部及び後行の帯状ワークW2の始端部が幅方向に沿って一緒に切断加工される(図18参照)。尚、切断装置3の可動板25は、両帯状ワークW1,W2を切断加工した後、ロック用流体圧シリンダ33により下降位置にロックされる。
【0077】
このとき、切断装置3の両側近傍位置にワーク押え具4をそれぞれ配設しているため、切断装置3により両帯状ワークW1,W2を切断する際に、帯状ワークW1,W2の切断個所近傍の奥側の側縁部が撓んでテーブル2,2上面から浮き上がったりすると云うことがなく、直線で平行度の正しい切断面を持つ切断を行えることになり、高精度な切断加工を行える。
特に、ワーク押え具4の押え板4′に、ボールプランジャー4″を帯状ワークW1,W2の長手方向に沿って複数個配設しているため、帯状ワークW1,W2の側縁部の浮き上がりを確実且つ良好に防止することができる。
又、先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部が左右の可動刃26,26及び左右の固定刃23,23により一緒に切断されるため、両帯状ワークW1,W2の切断作業を迅速に行える。
更に、左右の可動刃26,26の一方を他方の可動刃26よりも上方向又は下方向へ偏倚させているため、両帯状ワークW1,W2の切断時に可動刃26及び固定刃23に大きな負荷が掛からず、小さな駆動力でもって両帯状ワークW1,W2を切断することができる。
【0078】
先行の帯状ワークW1の終端部と後行の帯状ワークW2の始端部が幅方向に沿って切断されたら、左右のテーブル2,2が流体圧シリンダ18及び移動台14により近接する方向へ移動し、先行の帯状ワークW1の切断された終端と後行の帯状ワークW2の切断された始端とが密着状態で突き合される(図19参照)。
【0079】
このとき、両帯状ワークW1,W2は、その奥側の側縁部がワーク押え具4により押え付けられているが、ワーク押え具4にボールプランジャー4″を使用しているため、大きな抵抗を受けることなく、近接する方向へ移動する。
【0080】
先行の帯状ワークW1の終端と後行の帯状ワークW2の始端とが突き合されたら、溶接装置6の上部フレーム38がロッドレスシリンダ40により待機位置から溶接作業位置へ前進し、クランプ機構5の上部治具5′を両帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方位置へ移動させる(図20参照)。
この状態で昇降台13が流体圧シリンダ16により上昇し、左右のテーブル2,2及び切断装置3等を上昇させ、左右のテーブル2,2の上面と切断装置3の可動板25に設けた下部治具5″の上面とを上部治具5′の下面と略同じ高さ位置にする。これによって、両帯状ワークW1,W2は、その突合せ部近傍が上部治具5′及び下部治具5″により上下方向から挾持固定されることになる(図21参照)。
尚、左右のテーブル2,2が上昇する際、上部フレーム38に上下動自在に取り付けた安全カバー47が左右のテーブル2,2に設けた位置決めストッパー21に当接して押し上げられ、上部フレーム38と左右のテーブル2,2との間に生じる隙間を安全カバー47により覆い隠すため、作業員が誤って指等を入れると云うことがなく、より安全に作業を行える。
【0081】
両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍がクランプ機構5により上下方向から挾持固定されたら、溶接装置6の溶接用トーチ42がトーチ上下用駆動装置43等により自動的に高さ調整された後、溶接用トーチ42のタングステン電極棒42a先端と一方のエンドブロック35との間にアークを発生させる。アークが安定したら、この状態でトーチ走行台41がトーチ走行用駆動装置44により帯状ワークW1,W2の幅方向へ沿って移動し、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接する。
【0082】
このとき、溶接用トーチ42が略枠状の上部フレーム38内で移動し、且つ溶接用トーの周囲及び上部フレーム38がトーチカバー45により上面側から覆われているため、帯状ワークW1,W2の突合せ部の溶接時に上部フレーム38及びトーチカバー45によりアーク光が遮蔽されることになり、作業員がアークからの強烈な光を直視したり、目や皮膚に有害な紫外線や赤外線を浴びたりすると云うことがなく、安全に溶接作業を行える。然も、トーチカバー45の先端部にアークカバー46を垂設状態で取り付けているため、溶接時に枠状の上部フレーム38内から前方へ漏れるアーク光をほぼ完全に遮蔽することができ、溶接作業をより一層安全に行える。
又、帯状ワークW1,W2をその幅に関係なく位置決めストッパー21の位置を基準にして位置決めしているため、帯状ワークW1,W2はその幅に関係なく溶接開始位置が常に同じになり、溶接用トーチ42のスタート位置を帯状ワークW1,W2の幅に応じて変える必要がない。
更に、溶接用トーチ42の前方位置に清掃用ブラシ7を配設しているため、両帯状ワークW1,W2の溶接時に両帯状ワークW1,W2の突合せ部に付着している塵埃や金属粉を清掃用ブラシ7により除去した直後に溶接を行うことができ、穴あき等の溶接欠陥を引き起こすと云うことがない。
【0083】
両帯状ワークW1,W2の突合せ部の突合せ溶接が終了したら、昇降台13が流体圧シリンダ16により下降して左右のテーブル2,2及び切断装置3等を下降させると共に、溶接装置6の上部フレーム38をロッドレスシリンダ40により溶接作業位置から待機位置へ後退させる。又、左右のワーククランプ20による両帯状ワークW1,W2の保持固定状態を解除する。これによって、突合せ溶接された両帯状ワークW1,W2はフリーの状態となる。
【0084】
フリーの状態になった両帯状ワークW1,W2は、引き続き手動式の圧延装置8によりその溶接部を圧延加工する。
両帯状ワークW1,W2の溶接部を圧延加工するには、圧延上部59が開放位置にある溶接装置6の圧延台56に両帯状ワークW1,W2の溶接部を載せた後、圧延上部59を開放位置から圧延位置へ回動させ、加圧手段62により圧延上部59を圧延台56側へ加圧する。
即ち、手前側加圧軸62cを上方へ回動させて圧延上部59の二股部59aに挿入し、加圧カラー62dを圧延上部59の先端部上面に係止させる。そうすると、圧延上部59が圧延位置に保持されると共に、固定側圧縮コイルスプリング62b及び手前側圧縮コイルスプリング62eによって、圧延上部59が圧延台56側へ加圧されて圧延ローラ61が加圧状態で帯状ワークW1,W2の溶接部へ当接する。
【0085】
圧延上部59が加圧手段62により圧延位置に保持されたら、圧延ローラ台60の取っ手60aを持って圧延ローラ台60を帯状ワークW1,W2の幅方向へ複数回往復移動させ、圧延ローラ台60に回転自在に支持された圧延ローラ61を両帯状ワークW1,W2溶接部上で転動させる。これによって、両帯状ワークW1,W2の溶接部が圧延加工され、両帯状ワークW1,W2の溶接部の厚みや組織が均一化される。
【0086】
このとき、加圧手段62により圧延台56側へ向って加圧力が加えられている圧延ローラ61を両帯状ワークW1,W2の溶接部に沿って前後方向へ転動させて両帯状ワークW1,W2の溶接部を圧延加工するようにしているため、帯状ワークW1,W2の溶接部を確実且つ良好に圧延加工することができ、溶接部の厚みや組織を確実且つ良好に均一化することができる。
又、圧延上部59の基端部側へ移動した圧延ローラ台60の位置を、圧延ローラ61の中心が帯状ワークW1,W2の溶接部の奥側の側端と一致するように設定し、又、圧延上部59の先端部側に、圧延上部59の先端部側へ移動した圧延ローラ台60と当接して圧延ローラ61の移動を規制するストッパー66を帯状ワークW1,W2の幅方向へ移動調整自在に設け、圧延ローラ61が帯状ワークW1,W2の溶接部上で往復移動する構成としているため、圧延ローラ61が帯状ワークW1,W2の溶接部上から外れると云うことがない。
然も、圧延上部59の基端部側へ移動した圧延ローラ台60の位置を、圧延ローラ61の中心が帯状ワークW1,W2の溶接部の奥側の側端と一致するように設定しているため、帯状ワークW1,W2の幅に関係なく圧延加工開始位置が常に同じになる。
【0087】
このように、上述した帯状ワークW1,W2の突合せ接合装置は、両帯状ワークW1,W2の切断加工を高精度で行えて両帯状ワークW1,W2の突合せ部の重なりや変形等が全く無い理想的な突き合せを行え、又、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に、アーク光を完全に遮蔽して作業員の目や皮膚を護ることができ、更に、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する直前に突合せ部のクリーニングを行うので、溶接欠陥の無い突合せ溶接を行える。
【0088】
尚、上記の実施の形態に於いては、切断装置3の左右の可動刃26,26の刃先が左右のテーブル2,2の奥側へ向かって下り傾斜状となっているため、左右のテーブル2,2の奥側寄りの位置で且つ切断装置3の両側近傍位置にワーク押え具4をそれぞれ配設するようにしたが、切断装置3の左右の可動刃26,26の刃先が左右のテーブル2,2の前側へ向かって下り傾斜状となっている場合には、左右のテーブル2,2の前側寄りの位置で且つ切断装置3の両側近傍位置にワーク押え具4をそれぞれ配設し、ワーク押え具4により帯状ワークW1,W2の前側の側縁部を押え付けるようにする。
【0089】
又、上記の実施の形態に於いては、ワーク押え具4の押え板4′に二つのボールプランジャー4″を取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、押え板4′に一つ又は三つ以上のボールプランジャー4″を取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0090】
2は左右のテーブル、3は切断装置、4はワーク押え具、4′は押え板、4″はボールプランジャー、5はクランプ機構、6は溶接装置、7は清掃用ブラシ、38は上部フレーム、41はトーチ走行台、42は溶接用トーチ、42aはタングステン電極棒、45はトーチカバー、46はアークカバー、W1は先行の帯状ワーク、W2は後行の帯状ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行の帯状ワーク(W1)の終端部及び後行の帯状ワーク(W2)の始端部をそれぞれ支持載置して保持固定すると共に、先行の帯状ワーク(W1)の終端と後行の帯状ワーク(W2)の始端を突き合せる両帯状ワーク(W1),(W2)の搬送方向へ往復移動自在な左右のテーブル(2),(2)と、左右のテーブル(2),(2)間に配設され、先行の帯状ワーク(W1)の終端部及び後行の帯状ワーク(W2)の始端部を幅方向に沿って一緒に切断する切断装置(3)と、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構(5)と、クランプ機構(5)により挾持固定された両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部を突合せ溶接する前後方向へ往復移動自在な溶接装置(6)とを具備した帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記切断装置(3)の両側近傍位置に、切断装置(3)による両帯状ワーク(W1),(W2)の切断時に両帯状ワーク(W1),(W2)の切断個所近傍の奥側又は前側の側縁部を上面側から押えて当該側縁部が撓んでテーブル(2),(2)上面から浮き上がるのを防止するワーク押え具(4)をそれぞれ配設したことを特徴とする帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項2】
ワーク押え具(4)は、左右のテーブル(2),(2)の奥側寄り又は前側寄りの位置で且つ切断装置(3)の両側近傍位置に配設され、テーブル(2),(2)上面との間に帯状ワーク(W1),(W2)の奥側又は前側の側縁部が挿入される隙間を形成する押え板(4′)と、押え板(4′)に取り付けられ、テーブル(2),(2)と押え板(4′)との間に挿入された帯状ワーク(W1),(W2)の奥側又は前側の側縁部上面に当接して帯状ワーク(W1),(W2)の奥側又前側の側縁部を上面側から押えるボールプランジャー(4″)とから成ることを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項3】
ワーク押え具(4)の押え板(4′)に、ボールプランジャー(4″)を帯状ワーク(W1),(W2)の長手方向に沿って複数個配設したことを特徴とする請求項2に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項4】
溶接装置(6)は、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部の後方に位置する待機位置と両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部の上方に位置する溶接作業位置とに亘って前後方向へ往復移動自在な枠状の上部フレーム(38)と、上部フレーム(38)に両帯状ワーク(W1),(W2)の幅方向へ往復移動自在に配設されたトーチ走行台(41)と、枠状の上部フレーム(38)内に位置してトーチ走行台(41)に上下動自在に支持され、タングステン電極棒(42a)を挿着した溶接用トーチ(42)と、トーチ走行台(41)に取り付けられ、少なくとも溶接用トーチ(42)の周囲及び上部フレーム(38)の一部分を上面側から覆って溶接時に発生するアーク光を遮蔽するトーチカバー(45)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項5】
トーチカバー(45)の先端部に、枠状の上部フレーム(38)内に位置して両帯状ワーク(W1),(W2)の溶接時に枠状の上部フレーム(38)内から前方へ漏れるアーク光を遮蔽するアークカバー(46)を垂設状態で取り付けたことを特徴とする請求項4に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項6】
溶接用トーチ(42)の前方位置に、溶接用トーチ(42)と同期的に前後進して両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ溶接直前に両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部上面に付着している金属粉や塵埃を除去する清掃用ブラシ(7)を高さ調整自在に配設したことを特徴とする請求項4に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−253491(P2010−253491A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103694(P2009−103694)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(591286823)