説明

帯状媒体巻出巻取装置及び記録装置

【課題】帯状媒体が巻出巻取される不安定な状態を抑制する。
【解決手段】帯状媒体Mの巻出巻取装置2は、巻出巻取部22と、搬送保持部23と、張力付与部材25及び張力付与部材25の両端を揺動可能に支持するアーム部材26を有して帯状媒体Mに張力を付与する張力付与機構60と、を備え、巻出巻取部22は、帯状媒体Mの非巻出巻取時になると、巻出巻取状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状媒体巻出巻取装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の記録装置に用いられるロール紙等の長尺の作画媒体を巻き取るための記録装置用巻き取り装置が開示されている(特許文献1を参照)。同文献の記録装置用巻き取り装置では、印字作画済み作画媒体の排出経路には水平方向に延びるテンションローラーが、前後方向に移動可能に支持された状態で、作画媒体の裏面に圧接して作画媒体に張力を付与する。
さらに、上記の記録装置用巻き取り装置は、テンションローラーの揺動に応じて揺動するフラグの位置を検出する検出センサーと、検出センサーの信号に基づいて巻き取りモーターの駆動を制御するコントローラーと、を有している。
【0003】
このため、グリップ部からの作画媒体の送り量に応じてテンションローラーが前方に所定量移動すると、巻き取りスクローラーが巻き取りを開始する。また、テンションローラーが作画媒体からの圧力よって所定量後退すると、巻き取りスクローラーが停止する。これにより、巻き取りスクローラーの駆動軸にかかる負荷が常に一定になり、一定のテンションをかけながら用紙が巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−107021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幅の広い帯状メディアに記録するプリンターは、良好な画像を記録するために帯状媒体に与えるテンションを高くしなければならい。このため、テンションローラーが大型化・重量化する傾向にある。
【0006】
巻き取りスクローラーを回転させる機構として安価な小型モーターを使用する場合が多い。しかし、小型モーターは非駆動時には保持力が小さいため、テンションローラーによる負荷に負けて逆回転して、ロール紙が巻き出されてしまう。このような状態を解消するため、小型モーターを一定時間駆動してロール紙を巻き取るものの、小型モーターを停止すると再びロール紙が巻き出されてしまう。したがって、小型モーターの駆動と非駆動が繰り返されて不安定になり、帯状媒体に対して高いテンションを安定して付与することができない問題があった。このため、大型モーターや減速機などを使用する必要があり、コストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたものであり、テンションローラーが大型化された場合でも、コストをかけることなく、帯状媒体が巻出巻取される不安定な状態を抑制して、帯状媒体に安定した高い張力を与えることができる帯状媒体巻出巻取装置及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る帯状媒体巻出巻取装置は、巻回された帯状媒体を巻き出す又は帯状媒体を巻き取って巻回する巻出巻取部と、前記帯状媒体の非巻回領域を搬送可能に保持する搬送保持部と、前記巻出巻取部と前記搬送保持部の間に掛け渡された前記帯状媒体に対して幅方向に沿って接触する棒状の張力付与部材及び前記張力付与部材の両端を回転可能に支持しつつ、前記張力付与部材を前記張力付与部材の中心軸方向に直交する方向に揺動可能に支持する一対のアーム部材を有し、前記帯状媒体に対して張力を付与する張力付与機構と、を備え、前記巻出巻取部は、前記帯状媒体の非巻出巻取時になると、巻出巻取状態を維持することを特徴とする。
【0009】
前記巻出巻取部は、電流制御される駆動部を有し、前記駆動部をホールド制御することを特徴とする。
【0010】
巻出巻取状態を維持し始めてから所定時間経過後に、前記駆動部への電流供給を停止することを特徴とする。
【0011】
前記張力付与部材の位置が変更されると、前記駆動部への電流供給を停止することを特徴とする。
【0012】
前記巻出巻取部は、巻回された前記帯状媒体を巻き出す巻出部と、前記帯状媒体を巻き取って巻回する巻取部と、を備え、前記巻出部と前記巻取部は、同一構成の駆動部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る記録装置は、上述のいずれかの帯状媒体巻出巻取装置と、前記帯状媒体巻出巻取装置から巻き出された又は巻き取られる帯状媒体に対して記録処理を行う記録部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの外観を示す斜視図である。
【図2】プリンターの断面構成図である。
【図3】テンション付与機構を示す斜視図である。
【図4】センサーボックス内の要部斜視図である。
【図5】センサーボックス内の要部斜視図である。
【図6】下限センサーの構成を示す断面図である。
【図7】モーター制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る記録装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、本発明に係る記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンター1と称する)を例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンター1の外観を示す斜視図である。図2は、プリンター1の断面構成図である。
【0017】
プリンター(記録装置)1は、比較的大型のメディア(帯状媒体)Mを扱うラージフォーマットプリンター(LFP)である。メディアMは、例えば64インチ(Inch)程度の幅を有する帯状の媒体であり、例えば塩化ビニル系フィルムや紙などから形成されている。
【0018】
図2に示すように、プリンター1は、ロール・ツー・ロール方式でメディアMを搬送する搬送部2と、メディアMに対してインク(流体)を噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、メディアMを加熱する加熱部4とを有する。これら各構成部は、本体フレーム5に支持されている。
【0019】
搬送部(帯状媒体巻出巻取装置)2は、ロール状に巻回されたメディアMを送り出す巻出部21と、送り出されたメディアMをロール状に巻き取る巻取部(巻出巻取部)22と、巻出部21,巻取部22の間の搬送経路においてメディアMを保持して搬送力を与えると搬送ローラー対(搬送保持部)23と、を有する。
巻出部21、巻取部22、搬送ローラー対23は、小型のモーター(DCモーター)により駆動される。(巻取部22のモーター22mは、図3参照。巻出部21及び搬送ローラー対23の小型のモーターは不図示。)
これらのモーター(モーター22m)は、コントローラーCONTにより電流制御される。巻出部21、巻取部22は、減速機を用いないモーターダイレクトドライブ機構(モーター直結構造)が採用されており、同一仕様・同一サイズの小型のモーター(DCモーター)が用いられる。
なお、モーターダイレクトドライブ機構を採用する場合に限らず、低い減速比の歯車列等を採用する場合であってもよい。
【0020】
さらに、搬送部2は、搬送ローラー対23と巻取部22の間の搬送経路においてメディアMに張力を付与するテンション付与機構60を有している。
テンション付与機構60のテンションローラー25は、アーム部材26R,26Lによって両端側から回転可能に支持されており、メディアMの裏面に幅方向(図2において紙面垂直方向)で接触する構成となっている。テンションローラー25は、メディアMの幅よりも幅方向において長く形成されている。テンションローラー25は、加熱部4のアフターヒーター部43よりも搬送方向下流側に設けられている。
なお、テンションローラー25は、本実施形態ではアルミパイプで構成されているが、アルミパイプに限定されるものではない。
【0021】
記録部3は、搬送ローラー対23の下流側の搬送経路においてメディアMに対してインク(流体)を噴射するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31を搭載して幅方向に往復移動自在なキャリッジ32と、を有する。インクジェットヘッド31は、複数のノズルを備え、メディアMとの関係で選択されて浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインクを噴射可能な構成となっている。
【0022】
加熱部4は、メディアMを加熱することによりインクをメディアMに速やかに乾燥定着させ、滲みやぼやけを防止して、画質を高める構成となっている。加熱部4は、メディアMの搬送経路の一部を構成する支持部材(支持面)を有して、メディアMを巻出部21、巻取部22の間で上方に凸となるように湾曲させて支持すると共に、支持面上のメディアMを加熱する構成となっている。
【0023】
加熱部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向上流側でメディアMを予熱するプレヒーター部41と、記録部3と対向する位置でメディアMを加熱するプラテンヒーター部42と、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向下流側でメディアMを加熱するアフターヒーター部43とを有する。
【0024】
プレヒーター部41は、支持部材の裏面に配置したヒーター41aにより、メディアMを常温から目標温度(プラテンヒーター部42における温度)に向けて徐々に昇温させることによって、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
プラテンヒーター部42は、支持部材(プラテン)の裏面に配置したヒーター42aにより、目標温度を維持した状態でインクの着弾をメディアMに受けさせて、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
アフターヒーター部43は、支持部材の裏面に配置したヒーター43aにより、メディアMを目標温度よりも高い温度まで昇温させ、メディアMに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを速やかに乾燥させ、少なくとも巻取部22で巻き取る前に、着弾したインクをメディアMに完全に乾燥定着させる構成となっている。
【0025】
図3は、テンション付与機構60を示す斜視図である。
テンション付与機構60は、アルミパイプで構成された棒状のテンションローラー25と、テンションローラー25を揺動させるための一対のアーム部材26L,26Rと、テンションローラー25の揺動位置を検出するため各種の部材を備えたセンサーボックス70と、を有している。
【0026】
テンションローラー(張力付与部材)25は、メディアMにテンションを直接付与するものであり、メディアMの幅方向に沿ってメディアMに接触するように配置されている。
【0027】
アーム部材26L,26Rは、テンションローラー25を支持するために連動する一対の棒状部材である。アーム部材26L,26Rは、本実施形態ではアルミ角パイプで構成されているが、アルミ角パイプに限定されるものではない。
【0028】
アーム部材26L,26Rの各一端は、テンションローラー25が回転自在になる状態でテンションローラー25の両端部をそれぞれ支持している。アーム部材26L,26Rの各他端は、同一線上に配置された一対の回転軸88を中心にして揺動(回転)自在に支持されている。
テンションローラー25(アーム部材26L,26R)は、通常状態では、一定の角度範囲内(下限角α1〜上限角α2)で揺動する。下限角α1は例えば40°、上限角α2は例えば50°に設定される。
【0029】
アーム部材26L,26Rは、テンションローラー25の重みによって、回転軸88を中心にしてテンションローラー25の位置が下がる方向に回転する。これにより、テンションローラー25は、メディアMの裏面を押圧して、アーム部材26L,26Rの倒れ角に応じたテンションを与える。
【0030】
そして、搬送部2の巻取部22を停止させた状態で、搬送ローラー対23によりメディアMを搬送すると、徐々にテンションローラー25の位置が下がってアーム部材26L,26Rの倒れ角(後述する角度α:図5参照)が一定の角度範囲から外れる(α<α1)。この場合には、巻取部22を回転させてメディアMを巻き取る。これにより、メディアMがテンションローラー25を押圧して、テンションローラー25の位置を押上げる方向にアーム部材26L,26Rを回転させる。そうすると、アーム部材26L,26Rの倒れ角は一定の角度範囲内に戻る(α1≦α≦α2)。
こうして、テンションローラー25によるメディアMへの過大なテンション付与が防止される。
【0031】
一方、巻取部22によるメディアMの巻き取りが進むと、徐々にテンションローラー25の位置が押上げられて、アーム部材26L,26Rの倒れ角(角度α)が一定の角度範囲から外れる(α2<α)。この場合には、巻取部22の回転を停止させる。そして、再び、搬送ローラー対23によりメディアMが搬送されると、テンションローラー25の位置が下がってアーム部材26L,26Rの倒れ角が一定の角度範囲に戻る(α1≦α≦α2)。
こうして、テンションローラー25によるメディアMへの過小なテンション付与が防止される。
【0032】
このように、搬送部2の巻取部22、搬送ローラー対23の回転のタイミングを制御することにより、アーム部材26L,26Rの倒れ角(角度α)が一定の角度範囲内(α1≦α≦α2)となるように維持される。
したがって、テンション付与機構60(テンションローラー25)は、メディアMに対して一定のテンションを付与することができる。
【0033】
図4は、センサーボックス70の要部斜視図である。なお、センサーボックス70は不図示の保護カバーに覆われているが、図4では省略している。
センサーボックス70は、アーム部材26Lの内側面26Laに対して間隔を有して平行に配置されたセンサー支持板76と、アーム部材26Lに固定されてアーム部材26Lと共に揺動するフラグ部材81と、を有している。
センサー支持板76は、L字形に折り曲げた板片(板金)であって、一方の面(水平面76h)が本体フレーム5に固定され、他方の面(垂直面76v)が鉛直方向に立設して、アーム部材26Lの内側面26Laに平行配置される。
センサー支持板76の水平面76hには、アーム部材26Lの回転軸88を固定するための回転軸固定部72が設けられ、垂直面76vとの間で回転軸88を支持する。
【0034】
センサー支持板76の垂直面76vは、回転軸固定部72を中心にして、半円形(扇形)に形成される。
センサー支持板76の垂直面76vには、下限センサー91を支持するための下限センサー支持部77と、上限センサー92を支持するための上限センサー支持部78とが設けられる。
また、センサー支持板76の垂直面76vには、回転軸88を中心とする円弧形のスリット79が形成される。
【0035】
下限センサー支持部77及び上限センサー支持部78は、板片(板金)をL字形に折り曲げた部材である。
下限センサー支持部77は、センサー支持板76に固定され、下限センサー91がフラグ部材81の外周縁部の鉛直方向上側の端部を挟んだ状態になるように、下限センサー91を支持する。
上限センサー支持部78は、センサー支持板76に固定され、上限センサー92がフラグ部材81の外周縁部の鉛直方向下側の端部を挟んだ状態になるように、上限センサー92を支持する。
【0036】
上述したように、スリット79は、回転軸88を中心とした円弧形のスリット(貫通孔)である。スリット79には、フラグ部材81の固定部81bが挿通される。そして、アーム部材26Lが回転軸88を中心に回転すると、アーム部材26Lに固定されたフラグ部材81の固定部81bがスリット79に沿って揺動する。
【0037】
図5は、センサーボックス70内の要部斜視図である。図5では、センサー支持板76の図示を省略し、主にアーム部材26L及びフラグ部材81について説明する。
【0038】
アーム部材26Lには、フラグ部材81が設けられている。フラグ部材81は、アーム部材26Lの内側面26Laに対して間隔を有して平行配置された半円形(扇形)のフラグ板(揺動部材)81aと、アーム部材26に固定するための固定部81bと、を有する。
なお、フラグ板81aと固定部81bは一体に形成されているが、フラグ板81aと固定部81bをそれぞれ別個に形成して接着等してもよい。
【0039】
フラグ板81aは、アーム部材26Lの内側面26Laに相対(対向)するように、固定部81bを介してアーム部材26Lに固定されている。このため、アーム部材26Lが回転軸88を中心に揺動(回転)すると、フラグ板81aも回転軸88を中心に揺動(回転)する。
【0040】
フラグ板81aの外周縁部(円弧部分)には、下限センサー91及び上限センサー92が配置される。具体的には、フラグ板81aの外周縁部の円周方向の一端(鉛直方向上側)には下限センサー91が配置され、外周縁部の円周方向の他端(鉛直方向下側)には上限センサー92が配置される。
下限センサー91及び上限センサー92は、フラグ板81aに接することなく、フラグ板81aの外周縁部を両面側から挟むように設けられている。
【0041】
図6は、下限センサー91の構成を示す断面図である。なお、上限センサー92も下限センサー91と同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0042】
下限センサー91は、光を発する発光部91aと、発光部91aに対面配置されて発光部91aからの光を受ける受光部91bと、を有している。発光部91aと受光部91bの間には、フラグ板81aの外周縁部が接触することなく挿入可能な程度の間隙がある。
下限センサー91は、発光部91aから光を発して、受光部91bで検出される光に応じた信号を出力する。これにより、下限センサー91から出力される信号を判別することで、発光部91aと受光部91bとの間に、フラグ板81aが存在するか否かが分かる。
【0043】
図5に示すように、アーム部材26L(アーム部材26R)の長手方向がセンサー支持板76の水平面76hに対してなす角度をαとする。この角度αが一定の角度範囲内(α1≦α≦α2)にある場合には、フラグ板81aの外周縁部は、下限センサー91、上限センサー92の両方又は一方により検出される位置に存在する。
【0044】
そして、テンションローラー25の位置が下がって角度αが下限角α1より小さくなると(α<α1)、フラグ板81aは上限センサー92のみにより検出され、下限センサー91では検出されなくなる。
一方、テンションローラー25の位置が上がって角度αが上限角α2より大きくなると(α2<α)、フラグ板81aは上限センサー92では検出されなくなり、下限センサー91のみにより検出される。
【0045】
このように、上限センサー92及び下限センサー91の検出結果に基づいて、コントローラーCONTは、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が適性であるか(一定の角度範囲内にあるか)を判断することができる。
【0046】
印刷時及び非印刷にかかわらず、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が下限角α1より小さくなった場合には、コントローラーCONTは、巻取部22(モーター22m)を駆動制御してメディアMの巻き取りを開始する。巻取部22によるメディアMの巻き取りにより、メディアMがテンションローラー25を押圧してアーム部材26L(アーム部材26R)を上方向に揺動させる。
そして、アーム部材26Lの倒れ角(角度α)が下限角α1よりを超えると、コントローラーCONTは、巻取部22を数秒後に停止させて、メディアMの巻き取りを終了する。
こうして、アーム部材26Lの倒れ角(角度α)が、一定の角度範囲内(α1≦α≦α2)になる。
【0047】
アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が上限角α2より大きくなった場合には、コントローラーCONTは、巻取部22(モーター22m)への電力供給を停止する(既に電力供給を停止している場合もある)。
そして、印刷時においては搬送ローラー対23がメディアMを送り出すことにより、非印刷においては巻取部22を手動で逆回転させてメディアMを巻き戻すことにより、アーム部材26L(アーム部材26R)を下方向に揺動させて、倒れ角(角度α)が上限角α2より小さくなる。
こうして、アーム部材26Lの倒れ角(角度α)が、一定の角度範囲内(α1≦α≦α2)になる。
【0048】
このように、アーム部材26L,26Rの倒れ角(角度α)が一定の角度範囲内(α1≦α≦α2)にあるように維持されるので、テンション付与機構60(テンションローラー25)によるメディアMへのテンション付与を一定(安定)にできる。
【0049】
なお、テンションローラー25は、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が上限角α2よりも大幅に大きくなる位置(上限)まで持ち上げることが可能である。テンションローラー25を上限の位置に退避させた際のアーム部材26Lの倒れ角(角度α)は、例えば95°である。
これは、ユーザーが、巻取部22に巻き取られてロール状のメディアMを巻取部22から取り出す際に、テンションローラー25を作業の邪魔にならない位置に退避させるためである。テンションローラー25の退避動作は、ユーザーの手動で行われる。
このように、テンションローラー25を退避させた場合には、フラグ板81aが上限センサー92及び下限センサー91の両方に検出されなくなる。
一方、アーム部材26Lの倒れ角(角度α)の下限は、フラグ板81aが上限センサー92で必ず検出される位置に設定さえる。
【0050】
そして、アーム部材26L(アーム部材26R)の内側面26Laにおける先端側(センサー支持板76よりもテンションローラー25側)には、アーム部材26L(アーム部材26R)の回転(揺動)を強制停止させるメカニカルストッパ28が設けられる。メカニカルストッパ28は、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が下限又は上限に達すると、センサー支持板76の外周縁部(円弧部分)に当接して、テンションローラー25(アーム部材26L)の揺動を規制する。
【0051】
図7は、メディアMへの印刷処理の終了直後におけるモーター制御方法を示すフローチャートである。
プリンター1のコントローラーCONTは、メディアMへの印刷が終了すると、以下のモーター制御方法を実行する。この際、テンションローラー25(アーム部材26L)の位置は、適正な角度範囲内(α1≦α≦α2)にある。
なお、モーター制御方法は、印刷終了直後に限らず、印刷休止(停止)直後などのメディアMの巻き取りを終了した直後であればよい。
【0052】
最初に、コントローラーCONTは、下限センサー91及び上限センサー92の出力信号に基づいて、下限センサー91及び上限センサー92が共に通光しているかを判定する(ステップS1)。
下限センサー91及び上限センサー92が共に通光している状態とは、下限センサー91及び上限センサー92がフラグ板81aを検出できない状態、すなわちアーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が上限角α2よりも大きい状態である。このような状態は、テンションローラー25を手動により持ち上げて、テンションローラー25を待避位置に移動させたことを意味する。
【0053】
ステップS1において“YES”と判定された場合は、コントローラーCONTは、巻取部22(モーター22m)への電力供給を停止する(ステップS2)。
これにより、巻取部22を手動により回転させることが可能となるので、テンションローラー25を手動で退避位置まで持ち上げた後に、ユーザーがロール状に巻かれたメディアMを巻取部22から取り出す(取り外す)などが可能となる。
そして、モーター制御方法を終了する(END)。
【0054】
一方、ステップS1において”NO”と判定された場合は、コントローラーCONTは、巻取部22の駆動タイマーのカウントを開始する(ステップS3)。
駆動タイマーとは、巻取部22を駆動させる時間を示すカウント値をいう。つまり、コントローラーCONTは、駆動タイマーをカウントしている間は、巻取部22を駆動させ、駆動タイマーが所定の終了値に達すると、巻取部22の回転駆動を停止させる。
【0055】
次に、コントローラーCONTは、プリンター1の主要部(記録部3)の電源がオフになっているかを判定する(ステップS4)。
ステップS4において“YES”と判定された場合は、後述するステップS14の処理を実行する。
【0056】
一方、ステップS4において”NO”と判定された場合、コントローラーCONTは、不図示の巻取オン・オフスイッチのセンサーの検出結果に基づいて、巻取部22の巻取状態(外巻き、内巻き、オフのいずれか)を判定する(ステップS5)。
外巻きとは、図2において巻取部22がメディアMを反時計回りに巻き取ることをいう。内巻きとは、図2において巻取部22がメディアMを時計回りに巻き取ることをいう。
巻取オン・オフスイッチは、ユーザーが手動で操作可能なスイッチである。巻取オン・オフスイッチにより、巻取部22の巻取状態が内巻き、外巻き、オフ(動作しない)のいずれであるかがユーザーにより設定され、この設定情報はセンサーを介してコントローラーCONTに出力される。
【0057】
ステップS5において、コントローラーCONTは、巻取部22の巻取状態が「外巻き」と判定した場合は、巻取部22を外巻き方向へ所定の回転速度で駆動し始める(ステップS6)。
また、ステップS5において、コントローラーCONTは、巻取部22の巻取状態が内巻きと判定した場合は、巻取部22を内巻き方向へ所定の回転速度で駆動し始める(ステップS7)。
【0058】
ステップS5において、巻取部22を回転駆動させた場合(ステップS6,S7)は、ステップS8に進む。
一方、ステップS5において、コントローラーCONTは、巻取部22の巻取状態がオフ、つまり巻取動作しないと判定した場合は、後述するステップS14の処理を実行する。
【0059】
ステップS8においては、コントローラーCONTは、下限センサー91が遮光されているかを判定する。
下限センサー91が遮光されている状態とは、下限センサー91がフラグ板81aを検出できない状態、すなわちアーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が下限角α1よりも小さい状態である。
具体的には、テンションローラー25の重量によってメディアMに大きなテンションがかかり、巻取部22のモーター22mがそのテンションによる負荷に負けて逆回転して、メディアMが巻取部22から巻き出され、テンションローラー25の位置が下がった状態である。このため、テンションローラー25の位置を上げて、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)を一定の適正な角度範囲内(α1≦α≦α2)にして、その状態にする必要がある。
【0060】
そこで、ステップS8において”NO”と判定された場合は、コントローラーCONTは、ステップS6又はS7で設定した回転速度よりも遅くなるように巻取部22を減速させる(ステップS9)。
これにより、巻取部22がモーター22mによってゆっくりメディアMを巻き取り、テンションローラー25の位置が上がり、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が徐々に大きくなる。
そして、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が一定の適正な角度範囲内(α1≦α≦α2)になり、テンションローラー25の位置が適正になる。
【0061】
なお、上述したステップS4において“YES”と判定された場合は、ステップS14へ進む。そして、コントローラーCONTは、巻取部22が動作中であるか、つまりモーター22mに電流が供給されている最中であるかを判定する。巻取部22のモーター22mが動作中である場合は、その動作を継続すべくステップS9へ進み、動作中でない場合は、ステップ2に進んで、モーター制御方法を終了する(END)。
【0062】
ステップS9の後では、コントローラーCONTは、モーター22mの駆動タイマーが所定の終了値に達すると、駆動タイマーのカウントを終了する(ステップS10)。つまり、巻取部22の駆動を停止させる。
【0063】
次に、コントローラーCONTは、ホールド制御フラグをセットする(ステップS11)。
ホールド制御フラグがセットされると、コントローラーCONTは、巻取部22のモーター22mに停止トルクが発生するように、ホールド制御を行う(ステップS12)。
この状態では、巻取部22からメディアMが引出しできなくなる。具体的には、コントローラーCONTは、巻取部22のモーター22mに対して所定の電流(ホールド電流)を供給して、巻取部22からメディアMが引き出されない程度のトルクをモーター22mに発生させる。
これにより、アーム部材26L(アーム部材26R)の倒れ角(角度α)が適正な角度範囲内で維持されて、テンションローラー25が所定の位置で保持される。
【0064】
コントローラーCONTは、ホールド制御フラグがセットされてから所定時間経過が経過するまで、ステップS12を実行する。所定時間は、例えば10〜15分である。
そして、所定時間が経過すると、コントローラーCONTは、ホールド制御フラグをリセットするとともに、巻取部22のモーター22mへのホールド電流の供給を停止する(ステップS13)。
そして、モーター制御方法を終了する(END)。
【0065】
巻取部22のモーター22mのホールド制御を所定時間だけ実行するのは、省電力化を図るためである。すなわち、プリンター1の電源オフから例えば10分間使用されない場合には、プリンター1を当分の間、再使用しないと考えられるため、巻取部22のモーター22mのホールド制御を終了して省電力化を図る。
この結果、巻取部22への電力供給が停止されるので、テンションローラー25の重みによってメディアMが巻取部22から巻き出されることとなる。
【0066】
上述したステップS8において“YES”と判定された場合は、ステップS15へ進む。
ステップS8において“YES”と判定された状態とは、下限センサー91がフラグ板81aを検出している状態である。すなわち、テンションローラー25が適正位置にあり、かつ、巻取部22のモーター22mが回転駆動している状態である。
そして、ステップS15においては、コントローラーCONTは、駆動タイマーが所定の設定値まで到達したかを判定する。
駆動タイマーが所定の設定値まで達する時間は例えば40秒であり、これは巻取部22によってメディアMを巻き取ってテンションローラー25を5°程度、上方に移動させるための時間である。テンションローラー25(アーム部材26L)を5°程度、上方に移動させたとしても、テンションローラー25は適正な位置にある。
【0067】
ステップS15において“NO”と判定された場合は、ステップS4へ戻る。
そして、ステップS15において“NO”と判定される限り、コントローラーCONTは、ステップS4〜S8及びS15を繰り返し実行する。
【0068】
ステップS15において“YES”と判定された場合はステップS16へ進む。
ステップS15において“YES”と判定された場合とは、ステップS4〜S8及びS15が繰り返し実行されて40秒経過した状態である。すなわち、巻取部22が外巻き方向又は内巻き方向に回転駆動して十分な時間が経過しても、メディアMが巻取部22に巻き取られていないことを示す。これは、メディアMが巻取部22により正常に巻き取られていない、異常状態を示す。
【0069】
そこで、ステップS16では、コントローラーCONTは、巻取部22の減速制御を停止する。さらに、ワーニング(警報)処理を行う(ステップS17)。
そして、モーター制御方法を終了する(END)。
【0070】
以上のように、本実施形態のプリンター1は、印刷終了直後などのメディアMの非巻取巻出時においては、メディアMがテンションローラー25の重みによって巻取部22から引き出されないように、巻取部22のモーター22mに所定の電流(ホールド電流)を供給する。これにより、巻取部22のモーター22mに停止トルクが発生して、メディアMが巻取部22から引き出されることが防止される。
このため、プリンター1は、印刷開始が指示された場合には、テンションローラー25が適正位置にあるので、すぐに印刷を実行することができる。
【0071】
また、プリンター1は、印刷が終了して所定時間経過後した場合は、巻取部22のモーター22mへのホールド電流の供給を停止する。これにより、プリンター1が当分再使用されることはない場合に、省電力化を図ることができる。
【0072】
さらに、プリンター1は、ユーザーが手動によりテンションローラー25を持ち上げて待避させた場合にも、巻取部22のモーター22mへのホールド電流の供給を停止する。これにより、ユーザーは巻取部22にロール状のメディアMを取り付けたり取り出したりすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、メディアMの高いテンションを維持させるために、従来から使用されている小型のモーターに所定のタイミングでホールド電流を供給するだけである。このため、巻取部22に減速機を取り付けたり、大型のモーターに変更したりする必要がない。したがって、巻出部21及び巻取部22を同一の構成部品で共通化することができ、製造コストを抑制することができる。
【0074】
本実施形態においては、記録装置がプリンター1である場合を例にして説明したが、これに限らない。複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0075】
また、記録装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録媒体としては、紙や塩化ビニル系フィルム等のプラスチックフィルム以外に、薄く熱伸びする機能紙、基板や金属板などを包含するものとする。
【符号の説明】
【0076】
1…プリンター(記録装置)、 2…搬送部(帯状媒体巻出巻取装置)、 3…記録部、
21…巻出部、 22…巻取部(巻出巻取部)、 23…搬送ローラー対(搬送保持部)、 25…テンションローラー(張力付与部材)、 26R,26L…アーム部材、 60…テンション付与機構、 M…メディア(帯状媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された帯状媒体を巻き出す又は帯状媒体を巻き取って巻回する巻出巻取部と、
前記帯状媒体の非巻回領域を搬送可能に保持する搬送保持部と、
前記巻出巻取部と前記搬送保持部の間に掛け渡された前記帯状媒体に対して幅方向に沿って接触する棒状の張力付与部材及び前記張力付与部材の両端を回転可能に支持しつつ、前記張力付与部材を前記張力付与部材の中心軸方向に直交する方向に揺動可能に支持する一対のアーム部材を有し、前記帯状媒体に対して張力を付与する張力付与機構と、
を備え、
前記巻出巻取部は、前記帯状媒体の非巻出巻取時になると、巻出巻取状態を維持することを特徴とする帯状媒体巻出巻取装置。
【請求項2】
前記巻出巻取部は、電流制御される駆動部を有し、
前記駆動部をホールド制御することを特徴とする請求項1に記載の帯状媒体巻出巻取装置。
【請求項3】
巻出巻取状態を維持しはじめてからから所定時間経過後に、前記駆動部への電流供給を停止することを特徴とする請求項2に記載の帯状媒体巻出巻取装置。
【請求項4】
前記張力付与部材の位置が変更されると、前記駆動部への電流供給を停止することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の帯状媒体巻出巻取装置。
【請求項5】
前記巻出巻取部は、巻回された前記帯状媒体を巻き出す巻出部と、前記帯状媒体を巻き取って巻回する巻取部と、を備え、
前記巻出部と前記巻取部は、同一構成の駆動部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の帯状媒体巻出巻取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の帯状媒体巻出巻取装置と、
前記帯状媒体巻出巻取装置から巻き出された又は巻き取られる帯状媒体に対して記録処理を行う記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22744(P2013−22744A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156433(P2011−156433)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】