説明

帯状部材結束体および帯状部材結束体の製造方法

【課題】最外層の帯状部材が帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられて、縦置き状態に安定して保管する。
【解決手段】帯状部材10の幅および高さ、巻き長さに関係なく最外層の帯状部材10が帯状部材結束体1の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられている。これにより、帯状部材10を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管しても、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状に巻回されて更生管とされる長尺の帯状部材を輸送するために中空円筒状に巻き重ねた帯状部材結束体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老朽化した既設管では、帯状部材を螺旋状に巻回して更生管を製管し、製管された更生管によって内周面をライニングすることが行われている。このような既設管のライニング工法では、既設管の内部に帯状部材を送り込むため、施工現場まで長尺の帯状部材を輸送する必要がある。
【0003】
帯状部材は、通常、輸送用ドラムに巻き重ねられた状態で現場まで輸送される。帯状部材が巻き重ねられる輸送用ドラムは、円板状の一対の側板の中央部間に円筒状の胴体が連結されて構成されており、胴体に長尺の帯状部材が巻き重ねられ、一定長さの帯状部材が巻き重ねられると、帯状部材が巻き重ねられた状態で側板から胴体が引き抜かれるようになっている。そして、帯状部材が巻き重ねられた輸送用ドラムは施工現場まで輸送されて仮置きされ、帯状部材が輸送用ドラムの内周側から繰り出されて既設管内に送り込まれ、既設管内に設置された製管機によって螺旋状に巻回されることにより、更生管が順次製管される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
輸送用ドラムに巻き重ねられる帯状部材の長さは、一般的には、500m〜2000m程度であり、この長さの帯状部材で形成される更生管の長さは、更生管の直径を約2m程度とすれば、約5m〜12m程度となる。したがって、老朽化した既設管のライニング長さが長い場合は、多数の輸送用ドラムを施工現場に持ち込む必要がある。
【0005】
輸送用ドラムは、一度で輸送できる帯状部材長さを長く、かつ、トラックなどで輸送可能な最大の大きさに形成される。具体的には、通常、側板の外径3000mm、胴体の長さ1200mm程度の輸送用ドラムが多用される。したがって、このようなサイズの輸送用ドラムが多数施工現場に持ち込まれて仮置きされると、仮置き期間中、施工現場周辺の交通が渋滞したり、歩行者の通路を塞いだりするという問題がある。
【0006】
この問題を避けるために、輸送用ドラムを1個ずつ施工現場に持ち込むようにすると、輸送用ドラムを一時的に保管しておく場所として、別の場所に広大な空間が必要となる。また、帯状部材を製造し、輸送用ドラムに巻き付ける工場では、必要が生じるまでの間多数の輸送用ドラムを保管しておかねばならなくなるが、その保管可能数には限度があり、帯状部材の製造可能長さ以上に消費があれば、時には一時的な帯状部材の供給量不足が発生する可能性も出てくる。
【0007】
このような問題に対応して、出願人は、輸送用ドラムを用いることなく中空円筒状帯状部材をその解け出しを確実に防止しつつ安定して保管し、輸送することのできる帯状部材結束体とともに、製造ドラムや巻取り装置を用いて帯状部材結束体を製造する製造方法を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
なお、帯状部材10は、図7に示すように、可撓性を有する合成樹脂、例えば、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを押出成形して形成される。そして、帯状部材10は、帯板状の基板11の裏面に複数本の断面T字状の補強リブ12が設けられる一方、基板11の一側縁部の裏面に接合凸部13が立設され、また、その他側縁部に、接合凸部13が設けられた基板11の側縁部が配置されるように、基板11の厚みだけ裏面側に段落ちした段落ち部14が形成されるとともに、その段落ち部14に接合凸部13が嵌入し得る接合凹部15が設けられ、さらに、この接合凹部15に、基板11から離れるにつれて接合凹部15の突出側に位置するように傾斜された傾斜リブ16が形成されている。このような帯状部材10は、幅wおよび高さhを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3022353号公報
【特許文献2】特開2009−107723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、帯状部材結束体は、中空円筒部を左右方向に向けた縦置き状態で保管される。これにより、中空円筒部を上下方向に向けた横倒し状態で保管する場合に比較して保管スペースを有効に利用することができ、また、輸送や施工に際して横倒し状態から起こすことによる荷崩れが発生するのを防止することができる。
【0011】
ここで、帯状部材は、更生する既設管の管径に対応して幅および高さの異なるものが使用される。また、工場において、帯状部材を設定された巻き長さ、例えば、1.0kmや0.5km巻き重ねて結束することにより帯状部材結束体が製造される。
【0012】
したがって、製造ドラムや巻取り装置を用いて帯状部材結束体を製造するとき、帯状部材の種類および巻き長さ、さらには、設定された巻き取りピッチによっては、最外層の帯状部材の終端部が最外層の帯状部材の巻き重ね開始側の幅方向片側に位置する場合が発生する。このような状態で製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管すると、時間の経過によって荷崩れが発生するおそれがある。具体的には、帯状部材結束体を製造する際において、帯状部材を最内層(第1層)から順に巻き重ねて設定された巻き長さ巻き重ねて中空円筒状帯状部材を形成し、最外層の帯状部材の終端部が中空円筒状帯状部材の幅方向の略2/3未満に位置した状態で結束し、帯状部材結束体を製造して縦置き保管すると、図6に示すように、最外層の帯状部材が巻き重ねられていない方向に傾き、荷崩れするおそれがある。この傾向は、帯状部材の高さが10mm以上の場合に顕著になる。
【0013】
なお、帯状部材が幅方向に2/3以上のほぼ全幅にわたって巻き重ねられた場合には、帯状部材結束体を傾くことなく直立状態に安定して保管できることが把握されている。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際に直立状態に安定して保管することのできる帯状部材結束体を提供するとともに、最外層の帯状部材を帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねることのできる帯状部材結束体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の帯状部材結束体は、螺旋状に巻回されることにより更生管とされる長尺の帯状部材を中空円筒状に巻き重ねた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面が周方向に間隔をおいて巻回された複数の結束材によって結束された帯状部材結束体であって、帯状部材の幅および高さ、巻き長さに関係なく最外層の帯状部材が帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられることを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、帯状部材の幅および高さ、巻き長さに関係なく最外層の帯状部材が帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられている。これにより、帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。
【0017】
本発明の帯状部材結束体の製造方法は、着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを算出し、算出された帯状部材の巻回ピッチで帯状部材を巻き重ねることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを算出する。そして、算出された帯状部材の巻回ピッチで帯状部材を設定された巻き長さだけ順に巻き重ねる。
【0019】
この結果、最外層の帯状部材を帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねることができることから、製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。
【0020】
本発明の帯状部材結束体の製造方法は、着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねるとともに、帯状部材の幅および高さ、残りの巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを新たに算出し、新たに算出された帯状部材の巻回ピッチで残りの帯状部材を巻き重ねることを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねる。帯状部材の巻き重ね途中において、再び帯状部材の幅および高さ、残りの帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを新たに算出する。そして、算出された新たな帯状部材の巻回ピッチで残りの帯状部材を順に巻き重ねる。
【0022】
この結果、最外層の帯状部材を帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねることができることから、製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。
【0023】
本発明の帯状部材結束体の製造方法は、着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の内径を算出し、算出された帯状部材結束体の内径で帯状部材を巻き重ねることを特徴とするものである。
【0024】
本発明によれば、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の内径を算出する。そして、算出された帯状部材結束体の内径で帯状部材を設定された巻き長さだけ順に巻き重ねる。
【0025】
この結果、最外層の帯状部材を帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねることができることから、製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。
【0026】
本発明の帯状部材結束体の製造方法は、着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の幅を算出し、算出された帯状部材結束体の幅で帯状部材を巻き重ねることを特徴とするものである。
【0027】
本発明によれば、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の幅を算出する。そして、算出された帯状部材結束体の幅で帯状部材を設定された巻き長さだけ順に巻き重ねる。
【0028】
この結果、最外層の帯状部材を帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねることができることから、製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、荷崩れすることなく直立状態に安定して保管することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の帯状部材結束体によれば、中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、直立状態に安定して保管することができる。
【0030】
また、本発明の帯状部材結束体の製造方法によれば、最外層の帯状部材を帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねた帯状部材結束体を製造することができる。これにより、製造された帯状部材結束体を中空円筒部が左右方向に向いた縦置き保管した際、直立状態に安定して保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の帯状部材結束体の製造方法の一実施形態で製造された帯状部材結束体を模式的に示す側面図およびそのA部拡大断面図である。
【図2】本発明の帯状部材結束体の製造方法の一実施形態の変形例で製造された帯状部材結束体を図1(b)に対応して模式的に示す拡大断面図である。
【図3】本発明の帯状部材結束体の製造方法の他の実施形態で製造された帯状部材結束体を内径の変更前の状態とともに模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明の帯状部材結束体の製造方法のもう一つの実施形態で製造された帯状部材結束体を幅の変更前の状態とともに模式的に示す拡大断面図である。
【図5】帯状部材結束体を示す斜視図である。
【図6】最外層の帯状部材の終端部が中空円筒状帯状部材の幅方向の片側に位置して結束された帯状部材結束体を縦置き状態で保管する場合の側面図およびそのB部拡大断面図である。
【図7】帯状部材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1には、本発明の帯状部材結束体の製造方法の一実施形態で製造された帯状部材結束体1が示されている。
【0034】
この帯状部材結束体1は、老朽化した既設管をライニングする更生管を製管する帯状部材10が巻き重ねられて中空円筒状に形成され、図5に示すように、中空円筒状帯状部材1Aの外周面、内周面および左右の側面にわたってダンボールなどの緩衝材2が周方向に間隔をおいて複数箇所(実施例においては90度の間隔をおいて4カ所)に巻き回されるとともに、各緩衝材2の周囲に紐や帯などの結束材3が巻き回されて結束されることにより形成されている。
【0035】
ここで、最外層の帯状部材10は、図1に示すように、中空円筒状帯状部材1Aの幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられている。
【0036】
これにより、帯状部材結束体1は、帯状部材10が巻き重ねられた中空円筒状帯状部材1Aの巻き重ね方向に対して交差する方向に結束材3によって複数箇所が結束されているため、帯状部材10の解き出しを確実に防止することができる。また、中空円筒部を水平方向に向けて帯状部材結束体1を縦置きして保管する際、直立状態に安定して保管することができる。
【0037】
なお、帯状部材結束体1は、結束材3による結束が終了すると、帯状部材結束体1の外周面に保護材としてのダンボールを巻き回して止着した後、ダンボールの雨水などによる破損を防止するためフィルムを積層するとともに、帯状部材結束体1の外周面および左右の側面に遮光シートを被せて紫外線による帯状部材10の劣化を防止した後、中空円筒部を水平方向に向けて縦置きして保管する。
【0038】
このような帯状部材結束体1は、詳細には図示しないが、製造ドラムや巻取り装置を利用して製造される。
【0039】
この帯状部材結束体1の製造に際して、帯状部材10は、次の式から求められる巻回ピッチで製造ドラムの巻き芯や巻き取り装置の拡径縮径可能なドラムに順に巻き重ねられる。
W:帯状部材結束体1の幅
R:帯状部材結束体1の内径
h:帯状部材10の高さ
w:帯状部材10の幅
L:帯状部材10の巻き長さ
P:巻回ピッチ(帯状部材10の幅w+隣接する帯状部材10,10間の隙間p)
N:巻き重ねられる層の総数
とすると、最内層(第1層)から数えて第n層目の帯状部材10の巻き重ね長さ:L(n)は、2π・(R−h/2+nh)・W/Pであり、最内層(第1層)から数えて第n層までの帯状部材10の巻き重ね長さの合計:L(1〜n)は、2π・(R+h/2)・W/P+・・・+2π・(R−h/2+nh)・W/Pとなる。
【0040】
一方、最外層に実際に巻き重ねられる帯状部材10の長さは、L−(L(1)+・・・+L(N−1))であり、帯状部材結束体1の全幅にわたって最外層に巻き重ねられる帯状部材10の長さ:L(N)よりも小さい。
【0041】
したがって、帯状部材結束体1の幅に占める最外層の帯状部材10の幅の比率:Xは、(L−(L(1)+・・・+L(N−1)))/L(N)で求められ、Xが2/3以上になるようにPを調整すればよい。すなわち、帯状部材10の巻き長さL、帯状部材10の幅w、帯状部材10の高さh、帯状部材結束体1の幅W、帯状部材結束体1の内径Rが既知であり、巻回ピッチPを変数として、Xが2/3以上になるようにPを調整すればよい。
【0042】
具体的には、帯状部材10の巻き長さL=500m、帯状部材10の幅w=100mm、帯状部材10の高さh=20mm、帯状部材結束体1の幅W=1200mm、帯状部材結束体1の内径R=600mmの場合、巻回ピッチP=114mmで、帯状部材結束体1(中空円筒状帯状部材1A)の幅に占める最外層の帯状部材10の幅の比率Xは、約7/10となる。したがって、中空円筒部を左右方向に向けて帯状部材結束体1を縦置き保管した場合、直立状態に安定して保管することができるものとなる。
【0043】
また、帯状部材結束体1を製造する途中において、すなわち、帯状部材10を最内層(第1層)から順に巻き重ねた途中位置において、帯状部材10の幅および高さ、残りの巻き長さ、帯状部材結束体1の幅から算出した新たな巻回ピッチに変更し、少なくとも最外層の帯状部材10を中空円筒状帯状部材1Aの幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねた帯状部材結束体1を製造することもできる(図2参照)。すなわち、最外層の帯状部材10の巻回ピッチPは、その内層の帯状部材10の巻回ピッチPと同じである必要はなく、任意の巻き重ね位置から巻回ピッチPを調整して最外層の帯状部材10が帯状部材結束体1(中空円筒状帯状部材1A)の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねるようにしてもよい。
【0044】
この場合、帯状部材結束体1の外周側表面積に対する最外層の帯状部材10の表面積の割合としては、50%以上が好ましい。すなわち、帯状部材結束体1の自重が最外層の帯状部材10の接地面に作用することから、最外層の帯状部材10の表面積が小さい(巻き重ね回数が少ない)と、接地面積が減少し、帯状部材10の変形を招来するおそれがある。
【0045】
ところで、前述した実施形態においては、帯状部材結束体1の内径Rおよび幅Wを既知とし、帯状部材10の巻回ピッチPを適宜に設定することにより、最外層の帯状部材10を帯状部材結束体1のほぼ全幅Wにわたって巻き重ねる場合を説明したが、帯状部材結束体1の内径Rや幅Wを変更することによっても対応することができる。すなわち、図3および図4に示すように、最外層(第N層)まで巻き重ねた帯状部材10の長さ:L(1〜N)が、帯状部材10の巻き長さLよりも若干大きくなるように、帯状部材結束体1の内径Rや幅Wを設定すれば、第N層が帯状部材結束体1のほぼ全幅にわたって巻き重ねられることになる。
【0046】
例えば、前述したように、最内層(第1層)から数えて最外層(第N層)の巻き重ね長さ:L(N)は、2π・(R−h/2+Nh)・W/Pであり、最内層(第1層)から数えて最外層(第N層)までの巻き重ね長さ:L(1〜N)は、2π・(R+h/2)・W/P+・・・+2π・(R−h/2+Nh)・W/Pとなる。また、最外層(第N層)を巻き重ねて帯状部材10が全て巻き重ねられることから、L(1〜(N−1))<L<L(1〜N)である。
【0047】
一方、帯状部材結束体1の外径:Rとすると、L(N)は、2π・(R−h/2)・W/Pであるから、帯状部材結束体1の内径:Rは、R−Nhとなる。
【0048】
具体的には、帯状部材10の巻き長さL=500m、帯状部材10の幅w=100mm、帯状部材10の高さh=20mm、帯状部材結束体1の幅W=1200mm、帯状部材結束体1の外径R=1000mm、巻回ピッチP=120mmの場合、巻き重ねられる帯状部材10の層の数N=9となり、そのときの内径R=820mmとなる。
【0049】
帯状部材結束体1の製造に際して、その内径を変更するには、製造ドラムを利用する場合は、補強桟のスリットに対する連結材の連結位置を変更すればよく、また、巻取り装置を用いる場合は、拡縮機構を利用してドラムプレートの径を変更すればよい。
【0050】
同様に、L(N)=2π・(R−h/2+Nh)・W/P、L=2π・(R+h/2)・W/P+・・・+2π・(R−h/2+Nh)・W/Pであり、L(1〜(N−1))<L<L(1〜N)、L(N)=2π・(R−h/2)・W/Pであるから、このとき、帯状部材結束体1の幅に占める最外層の帯状部材10の幅の比率:X1は、(L(1〜N)−L)/L(N)で求められ、X1の値が1に近いほど、最外層(第N層)の帯状部材10が中空円筒状帯状部材1Aのほぼ全幅にわたって巻き重ねられることになる。すなわち、X1が1近くなるように帯状部材結束体1の幅:Wを調整すればよい。
【0051】
具体的には、帯状部材10の巻き長さL=750m、帯状部材10の幅w=100mm、帯状部材10の高さh=20mm、帯状部材結束体1の幅W=1150mm、帯状部材結束体1の内径R=1000mm、巻回ピッチP=104mmの場合、巻き重ねられる帯状部材10の層の数N=12となり、そのときの帯状部材結束体1の幅に対して、最外層に巻き重ねられる帯状部材10の占める割合は、0.93となる。すなわち、最外層(第12層)の帯状部材10を帯状部材結束体1(中空円筒状帯状部材1A)の93%にわたって巻き重ねることになる。
【0052】
帯状部材結束体1の製造に際して、その幅を変更するには、製造ドラムを利用する場合は、連結材の長さを変更すればよく、また、巻取り装置を用いる場合は、ドラムプレートの長さをスペーサなどを利用して変更すればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 帯状部材結束体
1A 中空円筒状帯状部材
2 緩衝材
3 結束材
10 帯状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回されることにより更生管とされる長尺の帯状部材を中空円筒状に巻き重ねた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面が周方向に間隔をおいて巻回された複数の結束材によって結束された帯状部材結束体であって、帯状部材の幅および高さ、巻き長さに関係なく最外層の帯状部材が帯状部材結束体の幅方向のほぼ全幅にわたって巻き重ねられることを特徴とする帯状部材結束体。
【請求項2】
着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを算出し、算出された帯状部材の巻回ピッチで帯状部材を巻き重ねることを特徴とする帯状部材結束体の製造方法。
【請求項3】
着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねるとともに、帯状部材の幅および高さ、残りの巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材の巻回ピッチを新たに算出し、新たに算出された帯状部材の巻回ピッチで残りの帯状部材を巻き重ねることを特徴とする帯状部材結束体の製造方法。
【請求項4】
着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の内径を算出し、算出された帯状部材結束体の内径で帯状部材を巻き重ねることを特徴とする帯状部材結束体の製造方法。
【請求項5】
着脱自在な巻き芯回りに、もしくは、拡径縮径可能なドラム回りに帯状部材を順に巻き重ね、巻き重ねられた中空円筒状帯状部材の左右の側面、内周面および外周面を周方向に間隔をおいて巻回した複数の結束材によって結束して帯状部材結束体を製造する製造方法において、帯状部材の幅および高さ、帯状部材の巻き長さ、帯状部材結束体の幅および内径、帯状部材の巻回ピッチに基づいて帯状部材を順に巻き重ねた際に、最外層の帯状部材が帯状部材結束体のほぼ全幅にわたって巻き重ねられるように帯状部材結束体の幅を算出し、算出された帯状部材結束体の幅で帯状部材を巻き重ねることを特徴とする帯状部材結束体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−26004(P2011−26004A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131733(P2010−131733)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】