説明

帯状電極の製造方法、帯状電極の製造装置および電池の製造方法

【課題】集電体シートに精度良く電極ペーストを塗工する方法の提供
【解決手段】帯状の集電体シート10の両面に電極ペースト21、22が塗工された帯状電極の製造方法において、集電体シート10の第1面11に電極ペースト21を塗工する第1塗工工程と、集電体シート10の第2面12に電極ペースト21を塗工する第2塗工工程とを有している。第2塗工工程は、第1塗工工程で第1面11に塗工された電極ペースト21がはまり得る溝33が外周面に形成されたバックロール32に第1面11を巻き掛け、集電体シート10を進行させつつ、バックロール32に巻き掛けられた集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状電極の製造方法に関し、特に、帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状電極の製造方法(特に、帯状の集電体シートの両面に電極ペーストを塗工する方法)は、例えば、特開2000−353514号公報に開示されている。同公報に開示された塗工装置は、繰出部から繰り出される集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する。そして、乾燥室で電極ペーストを乾燥させた後、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する。そして、再び乾燥室でペースト材料を乾燥させた後、巻取り部に巻き取っている。なお、同公報に開示された方法では、集電体シートの第2面をロールに巻き掛け、ロール間で集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工している。ここで、集電体シートの第1面は、集電体シートの裏表両面のうち、先に電極ペーストが塗工される面であり、集電体シートの第2面は、後で電極ペーストが塗工される面である。
【特許文献1】特開2000−353514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
帯状電極は、集電体シートに対して電極ペーストを出来る限り精度良く塗工したい。同公報に開示されているように、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する工程において、集電体シートの第2面をロールに巻き掛け、ロール間で電極ペーストを塗工している。この場合、集電体シートは、ロール間では集電体シートに作用する張力などによって撓んだり、ばたついたりする。このため塗布ノズルとの距離が安定しない場合があるなど、電極ペーストを精度良く塗工することが難しい。本発明は、かかる帯状電極に関し、電極ペーストを精度良く塗工できる製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る帯状電極の製造方法は、帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極の製造方法であり、集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する第1塗工工程と、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する第2塗工工程とを有している。第2塗工工程では、第1塗工工程で第1面に塗工された電極ペーストがはまり得る溝が外周面に形成されたバックロールが用いられる。そして、当該バックロールに第1面を巻き掛け、当該集電体シートを進行させつつ、当該バックロールに巻き掛けられた集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する。
この帯状電極の製造方法によれば、第2塗工工程では、第1塗工工程で第1面に塗工された電極ペーストがはまり得る溝が外周面に形成されたバックロールが用いられている。このため、当該溝に第1塗工工程で第1面に塗工された電極ペーストがはまり、電極ペーストが塗工される集電体シートの第2面を平坦に保ち易く、第2面に電極ペーストをより精度良く塗工できる。
【0005】
この場合、バックロールに形成された溝の幅は、例えば、第1面に塗工された電極ペーストの塗工幅よりも広いとよい。また、バックロールに形成された溝の幅は、例えば、帯状の集電体シートの幅よりも狭いとよい。
かかる帯状電極の製造方法は、集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極を有する電池の製造方法に採用することができる。
また、本発明に係る帯状電極の製造装置は、帯状の集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する第1塗工部と、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する第2塗工部とを備えている。第2塗工部は、集電体シートの第1面が巻き掛けられるバックロールを備え、バックロールの外周面には、第1塗工工程で集電体シートの第1面に塗工された電極ペーストがはまり得る溝が形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態に係る帯状電極の製造方法を図面に基づいて説明する。なお、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付している。
【0007】
本発明者が考えている帯状電極の製造方法は、以下のような工程を含んでいる。すなわち、まず、図1および図2に示すように、帯状の集電体シート10の第1面11に電極ペースト21を塗工し、乾燥させる。次に、図3に示すように、集電体シート10の第1面11をバックロール32aに巻き掛けて、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工し、乾燥させ、集電体シートの両面に電極ペーストを塗工する。ここで、電極ペーストは、電極活物質を含むペースト状の材料であり、例えば、電極活物質と導電材とバインダ(結合材)などを混ぜ合わせてペースト状にした電極合材ペーストが含まれる。また、かかる電極ペーストを塗工し、乾燥させることによって、集電体シート10に電極活物質を含むいわゆる電極合材層を形成することができる。
【0008】
この場合、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する工程において、集電体シート10がバックロール32aに支持されているので、電極ペースト22を塗布する塗布ノズル40に対する集電体シートの距離を安定させることができる。このため、特許文献1に記載されているように、ロール間で張設された部位で集電体シートに電極ペーストを塗工する場合に比べて、電極ペーストを精度良く塗工することができる。
【0009】
しかしながら、本発明者は、かかる第2面に形成された電極ペーストの幅などの塗工精度が、第1面に比べて悪くなる場合があると考えた。
すなわち、帯状電極は、図1〜図3に示すように、集電体シート10の幅方向の両端に電極ペースト21、22が塗工されない未塗工部13、14を設け、幅方向の中間部分に電極ペースト21、22を塗工する場合がある。このように、集電体シート10の幅方向の一部に電極ペースト21、22が塗工されない未塗工部13、14がある場合には、集電体シート10の第1面11に、既に電極ペースト21が乾燥した電極合材層が盛り上がっている。
このため、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する工程では、図4に示すように、集電体シート10の一部(例えば、図4では集電体シート10の端部m)がバックロール32aから浮いた状態になり、集電体シート10の第2面に段差が生じ得る。このため、集電体シート10の第2面12に塗工される電極ペースト22にダレやゆがみが生じる可能性がある。
本発明者は、かかる知見を基に、集電体シート10の第2面12において、かかる電極ペースト22のダレやゆがみを抑制し、集電体シートに対して電極ペーストを出来る限り精度良く塗工できる方法を創案した。
【0010】
本発明の一実施形態に係る帯状電極の製造方法は、第1塗工工程と、第2塗工工程とを有している。第1塗工工程は、図1および図2に示すように、集電体シート10の第1面11に電極ペースト21を塗工する。第2塗工工程は、図5および図6に示すように、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する。
この実施形態では、集電体シート10の幅方向の両端に電極ペースト21、22が塗工されない未塗工部13、14がある。電極ペースト21、22は、当該未塗工部13、14を除く幅方向の中間部分に塗工される。
【0011】
帯状電極を製造する製造装置60(ここでは、集電体シートに電極ペーストを塗工する装置)は、図7に示すように、繰出部61と、塗工部62と、乾燥部63と、巻取部64とを備えている。
繰出部61は、ロール状に巻き取られた集電体シート10がセットされ、集電体シート10を繰出す部位である。塗工部62は、集電体シート10に電極ペースト21、22を塗工する部位である。乾燥部63は、塗工部62で集電体シート10に塗工された電極ペースト21、22を乾燥させる部位である。巻取部64は、電極ペースト21、22が塗工された集電体シート10がロール状に巻き取られる部位である。繰出部61から繰出された集電体シート10は、図7に示すように、複数のガイドロール66に案内されて、繰出部61から塗工部62、乾燥部63を順に通り巻取部64に至る経路で走行する。なお、図示は省略するが、製造装置60は、集電体シート10を精度良く搬送する公知の手段を備えているとよい。例えば、当該集電体シート10の走行経路に、集電体シート10の幅方向の位置を検出する位置検知装置や、集電体シート10の幅方向のズレを補正する補正装置や、集電体シート10に適当な張力を作用させる張力調整装置など、種々の装置を設けるとよい。これにより、塗工部62に供給される集電体シート10を精度良く搬送することができる。
【0012】
この実施形態では、塗工部62は、2つのバックロール30、32と、電極ペースト21、22を塗布する塗布ノズル40とを備えている。
バックロール30は、図7に示すように、集電体シート10の第1面11に電極ペースト21を塗工する場合に、集電体シート10が通され、集電体シートを支持するロールである。この場合、集電体シート10は、所定のガイドロール66aに通されて、当該バックロール30に案内される。バックロール32は、図8に示すように、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する場合に、集電体シート10が通され、集電体を支持するロールである。この場合、集電体シート10は、所定のガイドロール66bに通されて、当該バックロール32に案内される。また、この実施形態では、塗布ノズル40は、図7および図8に示すように、バックロール30とバックロール32にそれぞれ概ね対向する位置に移動可能に構成されている。
なお、当該塗布ノズル40の移動機構については図示および詳細な説明を省略する。また、この実施形態では、塗布ノズル40は、バックロール30とバックロール32にそれぞれ概ね対向する位置に移動可能に構成されているが、塗布ノズル40は、これに限定されない。例えば、バックロール30とバックロール32にそれぞれ概ね対向する位置に、それぞれ異なる塗布ノズル40を設けても良い。
【0013】
次に、第1塗工工程を説明する。第1塗工工程では、図7に示すように、集電体シート10は第1面11に電極ペースト21が塗工される。この実施形態では、かかる第1塗工工程では、ロール状に巻き取られた無垢の集電体シート10が繰出部61にセットされる。集電体シート10は、繰出部61から繰出され、所定のガイドロール66aを通して、バックロール30に通される。バックロール30には、集電体シート10の第2面12が巻き掛けられる。塗布ノズル40は、当該バックロール30に概ね対向する位置に移動させておき、図1に示すように、集電体シート10を走行させつつ、バックロール30に巻き掛けられた集電体シート10の第1面11に電極ペースト21を塗工する。
【0014】
この際、バックロール30は、図1および図2に示すように、円筒形状のロールであり、集電体シート10の第2面12は、バックロール30の外周面に概ねぴったりと合う。このため、集電体シート10の第1面11は、バックロール30の外周面に沿って概ね平坦になり、当該第1面11に精度良く電極ペースト21を塗工できる。第1面11に電極ペースト21が塗工された集電体シート10は、乾燥部63に供給して乾燥させる。その後、集電体シート10は、巻取部64においてロール状に巻き取られる。
【0015】
次に、第2塗工工程を説明する。第2塗工工程では、集電体シート10は第2面12に電極ペースト22が塗工される。この実施形態では、かかる第2塗工工程では、第1塗工工程で、第1面11に電極ペースト21が塗工され、その後ロール状に巻き取られた集電体シート10が繰出部61にセットされる。集電体シート10は、図8に示すように、繰出部61から繰出され、所定のガイドロール66bを通して、バックロール32に通される。バックロール32には、集電体シート10の第1面11が巻き掛けられる。塗布ノズル40は、当該バックロール32に概ね対向する位置に移動させておき、図5に示すように、集電体シート10を走行させつつ、バックロール32に巻き掛けられた集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する。
【0016】
この帯状電極の製造方法によれば、第2塗工工程では、第1塗工工程で第1面11に塗工された電極ペースト21がはまり得る溝33が外周面に形成されたバックロール32が用いられている。そして、当該バックロール32に第1面11を巻き掛けて集電体シート10を進行させつつ、当該バックロール32に巻き掛けられた集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する。
この際、集電体シート10の第1面11に塗工された電極ペースト21が、バックロール32の溝33にはまるので、電極ペースト22が塗工される第2面12を平坦に保ち易く、第2面12に電極ペースト22をより精度良く塗工できる。
そして、第2面12に電極ペースト22を塗工した後、集電体シート10は、乾燥部63に供給され、第2面12に塗工された電極ペースト22を乾燥させて巻取部64においてロール状に巻き取られる。
【0017】
このように、この実施形態では、バックロール32の外周面に、第1塗工工程で第1面11に塗工された電極ペースト21がはまり得る溝33が形成されている。このため、電極ペースト21が盛り上がった第1面11をバックロール32に巻き掛けても、集電体シート10の第2面12を概ね平坦に保つことができる。このため、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22をより精度良く塗工することができる。
さらに、この実施形態では、集電体シート10の第2面12に電極ペースト22を塗工する第2塗工工程において、集電体シート10の第1面11がバックロール32に巻き掛けられているので、塗布ノズル40と集電体シート10との距離が安定する。また、バックロール32の溝33に第1塗工工程で第1面11に塗工された電極ペースト21がはまるので、塗布ノズル40に対して集電体シート10が幅方向にも大きくずれ難い。このため、塗工部62での集電体シート10の走行が安定し、集電体シート10の第2面12に対して、電極ペースト22をさらに精度良く塗工することができる。
【0018】
以上、本発明の一実施形態に係る帯状電極の製造方法および当該製造方法を具現化した帯状電極の製造装置の一例を説明した。本発明に係る帯状電極の製造方法および帯状電極の製造装置は上述した実施形態に限定されない。
【0019】
例えば、第2塗工工程で用いられるバックロール32に形成された溝33の幅x1は、図6に示すように、第1面11に塗工された電極ペースト21の幅x2に応じて、適切な幅にするとよい。この実施形態では、当該溝33の幅x1は、第1面11に塗工された電極ペースト21の幅x2よりも広くしている。このように溝33の幅x1を設定することにより、集電体シート10の電極ペースト21を確実に、バックロール32の溝33にはめることができる。さらに、溝33の幅x1は、集電体シート10の幅x3よりも狭くしている。これにより、溝33の外側において、バックロール32の外周面によって、集電体シート10の未塗工部13、14を支持することができる。
また、溝33の深さy1は、第1面11に塗工された電極ペースト21の盛り上がり量に応じて設定するとよい。この実施形態では、当該溝33の深さy1は、第1面11に塗工された電極ペースト21の盛り上がり量と同じ深さにしている。なお、電極ペースト21の盛り上がり量は、若干斑が生じ得るので、溝33の深さy1は、第1面11に塗工された電極ペースト21の盛り上がり量に対して、多少の差があってよい。溝33の深さy1は、電極ペースト21の盛り上がり量に対して多少の差があっても、当該溝33が全くない場合(図3、図4に示す場合)に比べて、集電体シート10を平坦に保つことができ、電極ペースト22を精度良く第2面12に塗工することができる。また、図6に示す例では、溝33の縁33aは、略直角に切り立っているが、当該溝33の縁33aは、バックロール32の幅方向外側に向けて広がったテーパ面で形成してもよい。溝33の縁33aをテーパにすることによって、集電体シート10の第1面11に塗工された電極ペースト21がはまり易くなる。この場合、溝33の縁33aは、両縁をテーパにしてもよいし、何れか一方の縁だけテーパにしてもよい。
【0020】
また、上述した実施形態では、集電体シート10の幅方向の両端に電極ペースト21、22が塗工されない未塗工部13、14があり、電極ペースト21、22は、当該未塗工部13、14を除く幅方向の中間部分に塗工される帯状電極を例示した。かかる帯状電極は、例えば、集電体シート10を幅方向の中心線に沿って切断して、捲回電極用の帯状電極として用いられる。帯状電極は、かかる形態に限定されない。例えば、図9に示すように、集電体シート10の両面に幅方向に複数本の電極ペースト81、82、83を塗工してもよい。この集電体シート10は、図中のz1〜z5で長さ方向に切断することによって、6本の帯状電極にすることができる。
この場合、集電体シート10の第2面12を塗工する工程においては、図10に示すように、当該電極ペースト81〜83に対応して溝33bが形成されたバックロール32bを用いるとよい。これにより、集電体シート10に塗工された電極ペースト81〜83が、バックロール32bの溝33bにはまる。これにより、第2塗工工程において集電体シート10が概ね平坦になり、第2面12に精度良く電極ペースト81〜83を塗工することができる。また、図示は省略するが、バックロールの溝を1つとし、当該溝の幅は、集電体シート10に塗工された複数の電極ペースト81〜83が全てはまり得る幅にしてもよい。
【0021】
本発明に係る帯状電極の製造方法は、帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極を有する電池の製造方法において、当該帯状電極を製造する方法に採用することができる。本発明に係る帯状電極の製造方法によれば、集電体シートの両面に精度良く電極ペーストを塗工することができる。このため、電池を製造する際の歩留まりを減少させることができる。以下、集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極を有する電池の製造方法を説明する。
【0022】
当該帯状電極を用いて製造された電池について例示する。電極ペースト21、22が塗工された集電体シート10は、集電体シート10や電極ペースト21、22の材料に応じて、正負の帯状電極を構成する。そして、電池を製造する場合には、当該集電体シート10は所定の幅に切断され、セパレータを介して電極ペースト21、22が塗工された部位を重ねられる。
【0023】
例えば、リチウムイオン二次電池(lithium-ion secondary battery)の捲回電極体100は、図11および図12に示すように、帯状正極101と、第1帯状セパレータ102と、帯状負極103と、第2帯状セパレータ104とが、順に重ねられて巻き取られている。なお、帯状正極101は、正の帯状電極であり、帯状負極103は負の帯状電極である。また、以下の説明において、適宜、帯状正極101と、帯状負極103を総称して「帯状電極」という。
【0024】
帯状正極101は、この実施形態では、アルミニウム箔からなる集電体シート131(正極集電体)の両面にリチウムを含む電極材料132(正極活物質)が塗工されている。当該電極材料132としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などが挙げられる。
帯状負極103は、この実施形態では、銅箔からなる集電体シート141(負極集電体)の両面に電極材料142(負極活物質)が塗工されている。当該電極材料142に含まれる負極活物質としては、例えば、グラファイト(Graphite)やアモルファスカーボン(Amorphous Carbon)などの炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等などが挙げられる。
帯状セパレータ102、104は、イオン性物質が透過可能な膜であり、この実施形態では、ポリプロピレン製の微多孔膜を用いている。
【0025】
この実施形態では、正負の帯状電極101、103は、それぞれ集電体シート131、141に電極材料132、142が塗工されている。電極材料132、142は集電体シート131、141の幅方向片側に偏って塗工されており、集電体シート131、141の幅方向反対側の縁部には塗工されていない。正負の帯状電極101、103のうち、集電体シート131、141に電極材料132、142が塗工された部位を塗工部101a、103aといい、集電体シート131、141に電極材料132、142が塗工されていない部位を未塗工部101b、103bという。
【0026】
図12は、帯状正極101と、第1帯状セパレータ102と、帯状負極103と、第2帯状セパレータ104とが順に重ねられた状態を示す幅方向の断面図である。帯状正極101の塗工部101aと帯状負極103の塗工部103aは、それぞれ帯状セパレータ102、104を挟んで対向している。図11および図12に示すように、捲回電極体100の捲回方向に直交する方向(巻き軸方向)の両側において、帯状正極101と帯状負極103の未塗工部101b、103bは、帯状セパレータ102、104からそれぞれはみ出ている。当該帯状正極101と帯状負極103の未塗工部101b、103bは、捲回電極体100の正極と負極の集電体101b1、103b1をそれぞれ形成している。
【0027】
かかるリチウムイオン二次電池では、放充電時に、帯状正極101の塗工部101aと帯状負極103の塗工部103aの間で、帯状セパレータ102、104を通してリチウムイオンが行き来する。この際、リチウムイオンの析出するのを防止するため、帯状正極101の塗工部101aは、帯状負極103の塗工部103aからはみ出ないようにしたい。帯状正極101の塗工部101aは、帯状負極103の塗工部103aからはみ出ないように構成することによって、放充電時に、リチウムイオンの析出するのを防止することができる。
【0028】
このため、図11および図12に示すように、帯状正極101の両側において、帯状正極101の塗工部101aの縁から帯状負極103の塗工部103aの縁がはみ出る距離d1、d2に、それぞれ予め定めた距離を確保している。
また、帯状正極101の塗工部101aと帯状負極103の塗工部103aが、それぞれ帯状セパレータ102、104からはみ出ないようにして内部短絡を防止している。帯状正極101の塗工部101aと帯状負極103の塗工部103aの幅については、製造上の誤差があったり、帯状正極101と帯状負極103、および、帯状セパレータ102、104が重ねられる際に幅方向にずれが生じたりする。このため、誤差やずれを許容するべく、帯状負極103の塗工部103aの幅bと帯状正極101の塗工部101aの幅aとの差分(b−a)、第1帯状セパレータ102と第2帯状セパレータ104の幅c1、c2と帯状負極103の塗工部103aの幅bとの差分((c1、c2)−b)に所要の距離を設定している。
【0029】
この帯状電極101、103において、電極ペースト21、22を精度良く塗工することができれば、上述した距離d1、d2、差分(b−a)および差分((c1、c2)−b)を小さく設定することができる。本発明に係る帯状電極の製造方法によれば、集電体シート10に電極ペースト21、22を精度良く塗工することができるので、上述した距離d1、d2、差分(b−a)および差分((c1、c2)−b)を小さく設定することができる。これによって、各帯状電極101、103や帯状セパレータ102、104の歩留まりを良くすることができ、しいては電池の生産コストを低減させることができる。
【0030】
かかる捲回電極体100は、図13に示すように、電池ケース300に収容される。電池ケース300には、電解液が注入される。電解液は、適当な電解質塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を適当量含むジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等の混合溶媒のような非水電解液で構成することができる。
また、電池ケース300には、正極外部端子301と負極外部端子303が設けられている。正極外部端子301は捲回電極体100の正極集電体101b1(図11参照)と電気的に接続され、負極外部端子303は捲回電極体100の負極集電体103b1(図11参照)と電気的に接続される。
なお、電池ケース300は、従来の単電池と同様に、安全弁や電解液注入孔等が設けられている。また、図示しないが、各単一の電池1000の正極外部端子301および負極外部端子303を相互に直列に接続することによって所望する電圧の組電池を構築することができる。
【0031】
以上、帯状電極について、リチウムイオン二次電池を構成する帯状電極を例示したが、リチウムイオン二次電池を構成する帯状電極は上記に限定されない。また、本発明に係る帯状電極の製造方法で製造される帯状電極は、リチウムイオン二次電池を構成する帯状電極に限らない。本発明に係る帯状電極の製造方法は、種々の帯状電極の製造方法に適用できる。すなわち、リチウムイオン二次電池以外の二次電池や蓄電池など帯状電極を有する種々の電池について、本発明に係る帯状電極の製造方法を、帯状電極を製造する方法として採用することができる。
【0032】
また、本発明は、上記のとおり、二次電池の寿命について信頼性を向上させる構造として優れている。かかる特性により、本発明に係る電池は、例えば、図14に模式的に示すように、自動車等の車両1に搭載されるモーター(電動機)用の電池1000として好適に使用でき、具体的に一例を挙げれば、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車の電源(二次電池)として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態において、集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する工程を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態において、集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する工程を示す断面図。
【図3】集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する工程を示す斜視図。
【図4】集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する工程を示す断面図。
【図5】本発明の一実施形態において、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する工程を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施形態において、集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する工程を示す断面図。
【図7】本発明の一実施形態における帯状電極の製造装置を示す図。
【図8】本発明の一実施形態における帯状電極の製造装置を示す図。
【図9】集電体シートに電極ペーストを塗工するパターンの変形例を示す図。
【図10】バックロールの変形例を示す図。
【図11】帯状電極を用いた捲回電極体の構造を示す図。
【図12】帯状電極を用いた捲回電極体の断面図。
【図13】集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極を有する電池の構造を示す図。
【図14】電池を搭載した車両を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
10 集電体シート
11 集電体シートの第1面
12 集電体シートの第2面
13、14 未塗工部
21、22 電極ペースト
30 集電体シートの第1面を塗工する際のバックロール
32、32a、32b 集電体シートの第2面を塗工する際のバックロール
33、33b バックロールの外周面に形成された溝
40 塗布ノズル
60 帯状電極の製造装置(集電体シートに電極ペーストを塗工する装置)
61 繰出部
62 塗工部
63 乾燥部
64 巻取部
66 ガイドロール
81-83 電極ペースト
100 捲回電極体
101 帯状正極(帯状電極)
101a、103a 塗工部
101b、103b 未塗工部
101b1 正極集電体
102、104 帯状セパレータ
103 帯状負極(帯状電極)
103b1 負極集電体
131 集電体シート
132 電極材料(正極材料)
141 集電体シート
142 電極材料(負極材料)
300 電池ケース
301 正極外部端子
303 負極外部端子
1000 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極の製造方法において、
前記集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する第1塗工工程と、
前記集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する第2塗工工程と、
を有し、
前記第2塗工工程では、前記第1塗工工程で前記第1面に塗工された前記電極ペーストがはまり得る溝が外周面に形成されたバックロールが用いられ、
当該バックロールに前記第1面を巻き掛け、前記集電体シートを進行させつつ、当該バックロールに巻き掛けられた集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する、帯状電極の製造方法。
【請求項2】
前記バックロールに形成された溝の幅は、前記第1面に塗工された前記電極ペーストの幅よりも広いことを特徴とする、請求項1に記載の帯状電極の製造方法。
【請求項3】
前記バックロールに形成された溝の幅は、前記帯状の集電体シートの幅よりも狭いことを特徴とする、請求項1に記載の帯状電極の製造方法。
【請求項4】
帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極の製造装置であって、
前記集電体シートの第1面に電極ペーストを塗工する第1塗工部と、
前記集電体シートの第2面に電極ペーストを塗工する第2塗工部と、
を備え、
前記第2塗工部は、
前記集電体シートの第1面が巻き掛けられるバックロールを備え、
前記バックロールの外周面には、前記第1塗工工程で前記集電体シートの第1面に塗工された前記電極ペーストがはまり得る溝が形成されている、帯状電極の製造装置。
【請求項5】
帯状の集電体シートの両面に電極ペーストが塗工された帯状電極を有する電池の製造方法において、
前記帯状電極の製造方法に、請求項1に記載の帯状電極の製造方法が採用された、電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−49906(P2010−49906A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212513(P2008−212513)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】