説明

帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法及び帯鋸刃案内装置

【課題】帯鋸刃案内装置の固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃を挟持案内するときの挟持力又は両インサートブロックの間隙を容易に適正値にすることのできる方法及び装置を提供する。
【解決手段】帯鋸刃案内装置1による帯鋸刃5の挟持方法であって、帯鋸刃案内装置1に備えた固定インサートブロック9と可動インサートブロック15によって帯鋸刃5の胴部を挟持するとき、前記固定インサートブロック9及び可動インサートブロック15と前記帯鋸刃5との間の摩擦を抑制し、かつ前記固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙内においての帯鋸刃5の傾斜を抑制するために、前記可動インサートブロック15を、予め設定された押圧力でもって前記固定インサートブロック9側へ移動して、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を挟持した後、前記可動インサートブロック15を不動状態に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸盤における帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法及び帯鋸刃案内装置に係り、さらに詳細には帯鋸刃案内装置に備えた固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃の胴部を挟持して案内する際、帯鋸刃における胴部の厚さが帯鋸刃の種類毎に変わる場合であっても、前記固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙を常に適正な間隙に保持することができる帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法及び帯鋸刃案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯鋸盤には、竪型帯鋸盤と横型帯鋸盤とがあり、上記両帯鋸盤には、帯鋸刃でもってワークの切断を行うとき、ワークに近接したワークの両側位置で帯鋸刃の胴部を挟持して案内する帯鋸刃案内装置が備えられている。上記帯鋸刃案内装置は、帯鋸刃の背部を支持し案内する背部支持部材と、帯鋸刃の胴部を挟持して案内するための固定インサートブロック及び可動インサートブロックと、前記可動インサートブロックを前記固定インサートブロック側へ押圧するためのインサートブロック押圧手段とを備えている。
【0003】
従来、前記インサートブロック押圧手段は、偏心カムを回動して可動インサートブロックを押圧する構成や、小型の油圧シリンダによって可動インサートブロックを押圧する構成が一般的である。前記偏心カムを利用した構成においては、可動インサートブロックを固定インサートブロック側へ移動する位置は常に一定であるので、胴部の薄い帯鋸刃に対応して固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙が適正間隙に設定してあると、胴部が厚い帯鋸刃の場合には、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃の胴部を強固に挟持することがあるという問題がある。逆に、胴部が厚い帯鋸刃に対応して前記間隙を設定すると、胴部が薄い帯鋸刃の場合、帯鋸刃とインサートブロックとの間に大きな間隙を生じ、帯鋸刃が傾斜して切り曲りを生じ易いという問題がある。
【0004】
小型の油圧シリンダによって可動インサートブロックを押圧する構成においては、帯鋸刃における胴部の厚さに拘わりなく、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃の胴部を常に強固に挟持し案内する構成であるから、切曲りを抑制する効果はあるものの、両インサートブロックの摩耗が激しいと共に、帯鋸刃を駆動する動力が大きくなるという問題がある。
【0005】
そこで、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃の胴部を強固に挟持した後に、可動インサートブロックを僅かに戻すことが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−340640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の構成は、可動インサートブロックを油圧シリンダによって固定インサートブロック側へ移動して、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃の胴部を強固に挟持した後に、上記油圧シリンダ内の圧油をブースタの小シリンダ内に吸引して、可動インサートブロックを僅かに戻す構成である。したがって、帯鋸刃における胴部の厚さに拘わりなく固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙を適正な間隙に保持することができる。
【0008】
しかし、油圧回路にブースタを備える構成であるから、油圧回路の構成がそれだけ複雑であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、帯鋸盤における帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法であって、帯鋸刃案内装置に備えた固定インサートブロックと可動インサートブロックによって帯鋸刃の胴部を挟持するとき、前記固定インサートブロック及び可動インサートブロックと前記帯鋸刃との間の摩擦を抑制し、かつ前記固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙内においての帯鋸刃の傾斜を抑制するために、前記可動インサートブロックを、予め設定された押圧力でもって前記固定インサートブロック側へ移動して、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃を挟持した後、前記可動インサートブロックを不動状態に固定することを特徴とするものである。
【0010】
また、帯鋸盤における帯鋸刃案内装置であって、帯鋸刃案内装置における本体ブロックに、帯鋸刃の背部を支持し案内する背部支持部材と、帯鋸刃の胴部を挟持し案内するための固定インサートブロック及び可動インサートブロックと、前記可動インサートブロックを前記固定インサートブロック側へ押圧するためのインサートブロック押圧手段とを備え、上記インサートブロック押圧手段は、予め設定された押圧力でもって前記可動インサートブロックを押圧する押圧作動手段を備えると共に、前記可動インサートブロックを押圧位置に停止保持するためのインサートブロック停止保持手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予め設定された押圧力でもって可動インサートブロックを固定インサートブロック側へ移動して、固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間に帯鋸刃を挟持するものであるから、固定インサートブロック及び可動インサートブロックと帯鋸刃との間の摩擦が必要以上に大きくなることを防止できる。また、固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙を、帯鋸刃の厚さに対応して適正間隙に保持することができ、固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙内において帯鋸刃が大きく傾斜することを防止することができ、ワークの切断時における切曲りを抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る帯鋸刃案内装置の構成を概念的、概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る帯鋸刃案内装置1は、本体ブロック3を備えており、この本体ブロック3には、一般的な竪型帯鋸盤、横型帯鋸盤における帯鋸刃案内装置と同様に、帯鋸刃5の背部を支持し案内するローラ又はブロックなどのごとき適宜の背部支持部材7を備えている。また、前記本体ブロック3には、前記帯鋸刃5の胴部を挟持案内するための固定インサートブロック9を内側に一体的に備えた固定側インサートアーム11が一体に備えられている。
【0014】
さらに、前記本体ブロック3には、前記固定側インサートアーム11と対向する可動側インサートアーム13が備えられており、この可動側インサートアーム13の内側には、前記固定インサートブロック9と対向して前記帯鋸刃5を挟持案内する可動インサートブロック15が、前記固定インサートブロック9に対して接近離反する方向へ移動自在に備えられている。ところで、本実施形態においては、前記可動側インサートアーム13は前記本体ブロック3に一体に設けてある。しかし、前記可動側インサートアーム13は、前記固定側インサートアーム11に対して接近離反する方向へ移動(回動)可能かつ接近した状態に固定可能に設けることもできるものである。
【0015】
前記可動インサートブロック15を、前記固定インサートブロック9に対して接近離反する方向へ移動自在な構成として、前記可動側インサートアーム13を移動自在に貫通したスライドロッド17の先端部が前記可動インサートブロック15に一体的に連結してある。そして、このスライドロッド17の基端側に備えたフランジ部17Fと前記可動側インサートアーム13との間には、前記可動インサートブロック15を固定インサートブロック9から離反する方向へ付勢するコイルスプリングなどのごとき弾性部材19が弾装してある。
【0016】
さらに、前記本体ブロック3には、前記可動インサートブロック15を固定インサートブロック9側へ押圧するためのインサートブロック押圧手段21が備えられている。より詳細には、前記本体ブロック3に備えたブラケット23に枢軸25を介して揺動レバー27が揺動自在(回動自在)に支持されており、この揺動レバー27の先端部(下端部)は前記スライドロッド17におけるフランジ部17Fに当接してある。そして、前記揺動レバー27を揺動するために、前記本体ブロック3には、例えば流体圧シリンダなどのごとき直動型のアクチュエータ29が備えられている。この直動型アクチュエータ29において往復動するピストンロッドなどのごとき往復作動子31の先端部は、前記揺動レバー27の基端部側(上端部側)に備えた被当接部材33に当接してある。
【0017】
上記構成により、前記直動型アクチュエータ29を作動し、往復作動子31によって揺動レバー27を、図1において時計回り方向に回動すると、当該揺動レバー27の下端部でもってスライドロッド17を弾性部材19の付勢力に抗して押圧することになる。したがって、可動インサートブロック15が固定インサートブロック9側へ移動され、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5の胴部を強固に挟圧(挟持)することになる。
【0018】
上述のように、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を強固に挟圧した状態においてワーク(図示省略)の切断を行うと、切り曲りを抑制することができるものの、両インサートブロック9,15と帯鋸刃5との摩擦が大きいと共に両インサートブロック9,15の摩耗が激しくなるという問題がある。
【0019】
そこで、本実施形態においては、前記固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙を、帯鋸刃5における胴部5Bの厚さに対応して適正間隙に保持するための手段が講じられている。より詳細には、前記インサートブロック押圧手段21における前記揺動レバー27を押圧作動する押圧作動手段の1例としての前記アクチュエータ29は、予め実駆的に定められた一定の押圧力でもって前記揺動レバー29を押圧するように構成してある。すなわち、前記アクチュエータ29が、例えば油圧シリンダなどのごとき流体圧シリンダからなる場合には、予め定められた一定圧の作動流体(圧油)が供給されるものである。また、前記アクチュエータ29が、例えばモータによって回転されるボールネジ機構などのごとき構成である場合には、前記モータは、予め定められた一定のトルクでもって回転されるものである。
【0020】
上記構成より理解されるように、押圧作動手段としての前記アクチュエータ29を作動して、前記揺動レバー27を、図1において時計回り方向に回動して、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間に帯鋸刃5を挟圧(挟持)すると、前記固定インサートブロック9と可動インサートブロック15による帯鋸刃5の挟持力は、予め設定された適正な挟持力となる。したがって、固定インサートブロック9及び可動インサートブロック15と帯鋸刃5との間の摩擦が必要以上に大きくなるようなことはないものである。
【0021】
また、前記本体ブロック3には、前述のごとく、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間に、帯鋸刃5を適正な挟持力(挟圧力)でもって押圧挟持(挟圧)したときに、この押圧挟持位置(押圧位置)に前記可動インサートブロック15を停止保持するためのインサートブロック停止保持手段35が備えられている。すなわち、本実施形態においては、上記インサートブロック停止保持手段35として、前記アクチュエータ29における前記往復作動子31を不動状態にロック可能なロックシリンダ37が前記本体ブロック3に備えられている。
【0022】
上記ロックシリンダ37は、前記往復作動子31を締付け可能な構成であって、公知の構成であるが、概略的に説明すると、次のごとき構成である。すなわち、環状のシリンダ本体37A内に、前記往復作動子31を締付可能なテーパ状のコレット37Bを備えると共に、上記コレット37Bを締付け作動するための環状のピストン37Cを往復動自在に備えた構成である。したがって、前記ロックシリンダ37が非動作状態においては、アクチュエータ29における往復作動子31は、図1において左右方向へ往復動可能である。しかし、前記ロックシリンダ37を作動すると、コレット37Bによって往復作動子31が締付けられるので、往復作動子31は、不動状態に固定され停止した状態となるものである。
【0023】
以上のごとき構成において、図1(A)に示すように、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙(間隔)が大きく開かれた状態にあるとき、上記両インサートブロック9,15の間に帯鋸刃5を配置すると共に帯鋸刃5の背部を背部支持部材7に当接する。そして、押圧作動手段の一部を構成するアクチュエータ29を作動すると、図1(A)において、揺動レバー27が時計回り方向に回動され、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間に帯鋸刃5を挟持することになる。
【0024】
この際、前記アクチュエータ29の押圧力は、実験的に予め設定された押圧力であるから、前記固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を必要以上に強固に挟持(挟圧)するようなことはなく、予め設定された適正な押圧力でもって挟持することになる。このように、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を挟持したときには、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙(間隔)は、帯鋸刃5の厚さに対応した適正間隙となるものである。
【0025】
そして、上述のように、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を挟持した状態にあるとき、インサートブロック停止保持手段35であるロックシリンダ37を作動すると、アクチュエータ29における往復作動子31が不動状態にロックされる。したがって、前記可動インサートブロック15は、帯鋸刃15を押圧挟持した押圧位置(挟持位置)に停止した状態に保持される。
【0026】
したがって、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによる帯鋸刃5の挟持力は適正な挟持力であり、かつ前記固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙は、帯鋸刃5の厚さに対応した適正間隙に保持される。よって、固定インサートブロック9及び可動インサートブロック15と帯鋸刃5との間の摩擦が必要以上に大きくなることがなく、また、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15との間の間隙内において帯鋸刃5が大きく傾斜することを抑制でき、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0027】
なお、本発明は前述したごとき実施形態のみに限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。例えば、インサートブロック停止保持手段35として、往復作動子31を締付け自在なコレット37Bを備えたロックシリンダー37を採用した場合を例示した。しかし、インサートブロック停止保持手段35は、固定インサートブロック9と可動インサートブロック15とによって帯鋸刃5を適正の挟持力でもって挟持した位置に、可動インサートブロック15を停止した状態に保持し得る機能があればよいものである。
【0028】
したがって、前記ロックシリンダー37を、ピストンロッドでもって往復作動子31を押圧固定する流体圧シリンダに代えることも可能である。また、前記往復作動子31を固定する構成に代えて、流体圧シリンダのピストンロッドでもってスライドロッド17を押圧固定する構成とすること可能である。さらには、本体ブロック3と揺動レバー27との間に楔部材を係合離脱可能に介在して、揺動レバー27を固定する構成とすることも可能である。すなわち、種々の変形態様でもって実施可能なものである。
【符号の説明】
【0029】
1 帯鋸刃案内装置
3 本体ブロック
5 帯鋸刃
7 背部支持部材
9 固定インサートブロック
15 可動インサートブロック
17 スライドロッド
21 インサートブロック押圧手段
25 枢軸
27 揺動レバー
29 直動型アクチュエータ
31 往復作動子
35 インサートブロック停止保持手段
37 ロックシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋸盤における帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法であって、帯鋸刃案内装置に備えた固定インサートブロックと可動インサートブロックによって帯鋸刃の胴部を挟持するとき、前記固定インサートブロック及び可動インサートブロックと前記帯鋸刃との間の摩擦を抑制し、かつ前記固定インサートブロックと可動インサートブロックとの間の間隙内においての帯鋸刃の傾斜を抑制するために、前記可動インサートブロックを、予め設定された押圧力でもって前記固定インサートブロック側へ移動して、固定インサートブロックと可動インサートブロックとによって帯鋸刃を挟持した後、前記可動インサートブロックを不動状態に固定することを特徴とする帯鋸刃案内装置による帯鋸刃挟持方法。
【請求項2】
帯鋸盤における帯鋸刃案内装置であって、帯鋸刃案内装置における本体ブロックに、帯鋸刃の背部を支持し案内する背部支持部材と、帯鋸刃の胴部を挟持し案内するための固定インサートブロック及び可動インサートブロックと、前記可動インサートブロックを前記固定インサートブロック側へ押圧するためのインサートブロック押圧手段とを備え、上記インサートブロック押圧手段は、予め設定された押圧力でもって前記可動インサートブロックを押圧する押圧作動手段を備えると共に、前記可動インサートブロックを押圧位置に停止保持するためのインサートブロック停止保持手段を備えていることを特徴とする帯鋸刃案内装置。

【図1】
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