説明

帯電ローラ

【課題】 導電性支持軸と導電性接着剤層が剥がれることにより生じる白いもや状の画像の発生を抑えることを目的とする。
【解決手段】 導電性支持軸の外周に、導電性接着剤層と導電性弾性体層を設けた帯電ローラにおいて、該導電性支持軸と該導電性接着剤層の間に、珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層を有し、該粒状金属が粒状アルミニウム及び粒状亜鉛であることを特徴とする帯電ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に用いられる帯電ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置において、感光体を帯電する手段として、様々な帯電手段が用いられている。帯電手段として、以前はコロナ放電を利用されていたが、近年、放電によるオゾン発生等の問題から、感光体に帯電部材を接触させて帯電する接触帯電方式が多く利用されるようになっている。接触帯電方式では、帯電部材に直流電圧に交流電圧を重畳して印加するか、直流電圧のみを印加する。
【0003】
接触帯電方式に用いられる帯電部材としては、ローラ形状、ブレード形状、ブラシ形状、ベルト形状等種々の形態のものがあるが、一般的には、ローラ形状のもの、すなわち、帯電ローラが多く採用されている。帯電ローラとしては、導電性支持軸の外周に、導電性弾性体層を設け、更に、導電性弾性体層の表面には、機能を付加するために表面層を形成したものが一般的である。このような帯電ローラは、様々な使用環境、使用条件で長期間使用されるものであり、いずれの層も隣接する層との密着性が求められる。そのため、導電性支持軸と導電性弾性体層の間に導電性接着剤層を設ける。
【0004】
特許文献1には、導電性ローラの導電性支持軸が開示されている。金属製の芯金、円筒体として、鉄、ステンレス、アルミニウムが挙げられている。また、高剛性の樹脂に導電剤を分散した樹脂製の芯金も開示されている。具体的には、高剛性の樹脂としてポリアセタール、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等が挙げられている。また、導電剤として、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤を分散したものである。
【0005】
特許文献2にも、導電性ローラの導電性支持軸が開示されている。金属として、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられている。また、セラミック、合成石、プラスチックなどの非導電性物質に導電性被覆することが開示されている。導電性弾性体層と導電性支持軸との間に中間層を設けることも開示されている。これらに開示されている導電性支持軸には、以下に示すような課題がある。
【0006】
帯電ローラは、感光体を均一に帯電する為に、感光体に強く押し当てられており、変形し感光体と接触している。変形は、主として導電性弾性体層に生じるが、その変形は、導電性接着剤層と導電性支持軸の界面に、それらを引き剥がす方向に力を生じさせる。そのため、導電性支持軸と導電性接着剤層の接着力が低いと導電性接着剤層と導電性支持軸が剥がれる場合がある。導電性接着剤層と導電性支持軸が剥がれると帯電ローラ表面に変形を生じる。帯電ローラの表面に変形を生じると、帯電ローラは、感光体を均一に帯電することができない。そのため、出力した画像には、変形部分に対応したところに白いもや状の部分を生じる。
【0007】
一方、前述した構成の帯電ローラを高温高湿下に放置すると、放置時間が長くなるにつれて、導電性支持軸と導電性接着剤層の接着力が低下していく傾向が見られる。この現象は、上述した導電性支持軸の材質によらない。このような、導電性支持軸と導電性接着剤層の接着力の低下は、前述した導電性弾性体層の変形による導電性支持軸と導電性接着剤層の剥がれを生じやすくなる。現在の一般的な、装置の使用環境、印刷スピード、装置寿命においては、このような課題は顕在化していない。
【0008】
しかし、今後、装置を使用する環境はますます多岐にわたり、より高温高湿下で使用されることも想像される。また、印刷スピードの高速化が求められており、印刷スピードの高速化は着実に進んできている。更に、装置の寿命も長くすることが求められている。このような状況において、上述した課題が表面化する事態が予想され、その対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−212780号公報
【特許文献2】特開2007−272030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高温高湿下で長期間使用され、高速印刷可能な画像形成装置において、導電性支持軸と導電性接着剤層が剥がれることにより生じる白いもや状の画像の発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
導電性支持軸の外周に、導電性接着剤層と導電性弾性体層を設けた帯電ローラにおいて、該導電性支持軸と該導電性接着剤層の間に、珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層を有し、該粒状金属が粒状アルミニウム及び粒状亜鉛であることを特徴とする帯電ローラである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性支持軸と導電性接着剤層が剥がれることにより生じる白いもや状の画像の発生を抑えることできる。特に、高温高湿下に長期間放置することによって、導電性支持軸と導電性接着剤層の接着力が低下し、導電性支持軸と導電性接着剤層の剥がれることにより生じる白いもや状の画像の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る帯電ローラの概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略図である。
【図3】本発明に係るプロセスカートリッジの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明の帯電ローラの概略構成図を示す。101が導電性支持軸、102が珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層であり、粒状金属は、粒状アルミニウム、粒状亜鉛である。103は導電性接着剤層、104は導電性弾性体層、105は表面層である。
【0015】
(導電性支持軸)
導電性支持軸101は、帯電ローラの表面に導電性支持軸を介して給電するために導電性を有する。また、帯電ローラは、押圧され感光体表面に接触するものであるため、導電性支持軸は、その力に耐えることができる剛性が必要である。本発明の導電性支持軸としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属性(合金製)を用いることができる。また、導電性が無い材料の表面に金属等の導電性層を設けたものであっても良い。
【0016】
(珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層)
珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層102は、珪素を含むバインダと粒状金属からなり、粒状金属は、粒状アルミニウム、粒状亜鉛である。
【0017】
(珪素を含む無機バインダ)
本発明の珪素を含む無機バインダは、SiO2からなる。その末端や結合の一部には、粒状金属や処理液に含まれる他成分が結合している場合もある。
【0018】
本発明の珪素を含む無機バインダは、例えば、珪酸金属塩、珪素酸化物や、各種シリケート、シランカップリング剤を用いて形成する。処理液の他成分との容易に混合できる点から、シランカップリング剤が好ましい。例えば、ビニルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノ−プロピルトリメトキシシランが挙げられる。特に、処理液の安定化のためには、エポキシ官能性シランが好ましい。例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシランが挙げられる。これらカップリング剤は、加熱、焼成することによって、粒状金属の表面及び、粒状金属間にSiO2を形成する。それにより、粒状金属同士を結着し、また、導電性支持体上に粒状金属を固定し、層を形成する。
【0019】
(粒状金属)
本発明の粒状金属は、粒状アルミニウム、粒状亜鉛である。粒状金属の平均粒径は、0.1μm以上、50μm以下、特には5μm以上、30μm以下が好ましい。この範囲であると粒状金属の凝集を防ぐことが可能となり、均一な層を形成することができる。粒状金属は、箔状であることが好ましい。箔状であるとは、粒状金属の径の内、最も小さい径(厚さ)に対して、粒状金属の平均粒径が、大きいものを言う。本発明では、5≦粒状金属の平均粒径/粒状金属の径の内、最も小さい径(厚さ)≦30であることが好ましい。箔状であることで珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層内で積み重なった構造をとることが容易になり、球状である場合に比べ、導電性接着剤層との密着性が向上する。
【0020】
(導電性接着剤層)
本発明の、導電性接着剤層103は、樹脂、ゴム成分、導電剤、可塑剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、分散剤、溶剤等からなる。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。本発明の導電性接着剤に好適に用いられる樹脂としては、具体的には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、水蒸気、ガスの透過性の低い樹脂が好ましく、フェノール樹脂が好ましい。また、これらの樹脂に加え、耐熱性の向上や、導電性弾性体層との接着力を向上させるために、ゴム成分を混合しても良い。例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。特に、ニトリルブタジエンゴムは、導電性弾性体層と導電性接着剤層の接着力を高めることが可能で有り好ましい。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化錫の導電性金属酸化物等の導電性粒子、または前記導電性粒子を他の粒子と複合化した導電性複合粒子等が挙げられる。
【0021】
(導電性弾性体層)
導電性弾性体層104は、未加硫ゴム組成物を加硫することにより得られる。未加硫ゴム組成物を構成するゴム成分としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0022】
前記未加硫ゴム組成物中に分散させる導電粉としては、例えば、カーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉、導電性の繊維、等が挙げられる。また、イオン導電剤等を用いてもよい。前記ポリマー原料100質量部に対して5〜200質量部添加される。
【0023】
加硫剤としては硫黄、金属酸化物、有機酸化物等、無機充填剤としてカーボンブラック、タルク、クレー、炭酸カルシウム等があげられ、その他公知の加硫促進剤、プロセスオイル等が適宜添加される。
【0024】
(表面層)
導電性弾性体層の表面には、表面層105を設けることができる。表面層105は、帯電ローラとして必要な機能性を満たす為に設ける。例えば、抵抗の調整等を目的として設ける。表面層105としては、公知のものが使用可能であるが、例えば、バインダ、導電剤、粗し剤、絶縁性の無機微粒子からなるものが挙げられる。バインダとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。本発明の表面層のバインダとしては、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化錫の導電性金属酸化物等の導電性粒子、または前記導電性粒子を他の粒子と複合化した導電性複合粒子等が挙げられる。これらを適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値とすることができる。粗し剤は、帯電部材の表面に微小な凹凸を形成することができ、帯電均一性の向上を図ることができる。表面の微小な凹凸は特にDC帯電方式には有効である。粗し材としては、ウレタン系微粒子やシリコーン系微粒子、アクリル系微粒子などの高分子化合物からなる微粒子を用いることが好ましい。
【0025】
(電子写真装置)
図2は、本発明の帯電ローラを用いた電子写真装置の概略図である。電子写真感光体201を帯電する帯電ローラ202。露光を行う潜像形成装置208。トナー像に現像する現像装置203。転写材204に転写する転写装置205。電子写真感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置207。トナー像を定着する定着装置206などから構成される。電子写真感光体201は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体201は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電ローラ202は、電子写真感光体201に所定の力で押圧されることにより接触配置される。帯電ローラ202は、電子写真感光体201の回転に従い従動回転し、帯電用電源213から所定の直流電圧を印加することにより、電子写真感光体201を所定の電位に帯電する。
【0026】
電子写真感光体201に潜像を形成する潜像形成装置208は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された電子写真感光体201に、画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置203は、電子写真感光体201に接触して配設される接触式の現像ローラを有する。感光帯電極性と同極性に静電処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。転写装置205は、接触式の転写ローラを有する。電子写真感光体201からトナー像を普通紙などの転写材204(転写材204は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される)に転写する。クリーニング装置207は、ブレード型のクリーニング部材、回収容器を有し、転写した後、電子写真感光体201上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落として回収する。ここで、現像装置203にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置207を取り除くこと可能である。定着装置206は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材204に定着し、機外に排出する。電子写真感光体201、帯電ローラ202、現像装置203、及び、クリーニング装置207などを一体化し、画像形成装置に着脱可能に設計された、図3に示すプロセスカートリッジを用いることもできる。
【0027】
[実施例]
以下に本発明の具体的な実施例について説明する。
【0028】
<実施例1>
帯電ローラの材料として以下の材料を用意した。
【0029】
(導電性支持軸)
導電性支持軸として、SUM24L製の全長、252mm、φ6の円柱状の棒を用意した。
【0030】
(導電性支持軸の処理液の作成)
導電性支持軸の処理の材料として下記表1に記載の材料を混合し、高速で撹拌して亜鉛、アルミニウムスラリーを得た。
【0031】
【表1】

【0032】
また、下記表2の材料を混合してバインダ液を調製した。
【0033】
【表2】

【0034】
先に調製した亜鉛、アルミニウムスラリーとバインダ液とを混合、攪拌して混合液を得た。混合液を2時間攪拌後、攪拌を続けながら、ヒドロキシセルロース5質量部を徐々に加え、導電性支持軸の処理液を得た。
【0035】
(導電性支持軸の処理)
得られた導電性支持軸の処理液に導電性支持軸をディッピングすることで処理液を導電性支持軸上に成膜した。成膜後、350℃の高温炉に投入し、30分加熱して、処理を施した導電性支持軸を得た。
【0036】
(導電性接着剤層の作成)
導電性接着剤層は、用意した導電性接着剤をロールコーターを用いて、処理を施した導電性支持軸の両端部13mmを除く部分に塗布した。その後170℃のオーブンで20分加熱し、導電性接着剤層が積層された導電性支持軸を得た。尚、導電性接着剤の膜厚は平均で8μmであった。
【0037】
(導電性接着剤)
導電性接着剤層の材料として熱硬化性接着剤(メタロックU−20)を用意した。
【0038】
(導電性弾性体層)
導電性弾性体層としては、以下に示す未加硫ゴム組成物を、導電性接着剤層を塗布した導電性支持軸上に積層することにより作成した。
【0039】
(ゴム組成物)
下記表3の材料をオープンロールを用いて混合した。
【0040】
【表3】

【0041】
(導電性ロールの作成)
クロスヘッド押し出し機に芯金の供給機構、弾性ローラの排出機構を有する装置を用意した。用意した芯金を芯金の供給機構からクロスヘッドに連続的に供給した。芯金の搬送速度は、60mm/secとした。クロスヘッドには内径がφ9.0mmであるダイスを取り付け、あらかじめ押出し機とクロスヘッドを80℃に温調した。クロスヘッドに供給した芯金は、押し出し機より供給される未加硫ゴム組成物が積層される。その際、未加硫ゴム組成物を積層した芯金は、続いて連続的に供給される芯金により押されることにより、クロスヘッドを通過し、クロスヘッドから排出される。
【0042】
次に、熱風により170℃の雰囲気にあらかじめ全体が温まっている熱風加硫炉の中に未加硫ゴム組成物を被覆した芯金を入れて、60min加熱を行った。その後、ゴムの長さが228mmになるように端部の余分なゴムを切断、除去処理を行い、導電性ローラを得た。次に、ゴム部分の表面を回転砥石で研磨することによって、端部直径8.45mm、中央部直径8.5mmの導電性弾性ローラを得た。
(表面層の作製)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が18質量%となるように調整した。この溶液555.6質量部、上記アクリルポリオール溶液の固形分100質量部に対して、下記表4の材料を入れ混合溶液を調製した。
【0043】
【表4】

【0044】
*このとき、ブロックHDIとブロックIPDIの混合物は、「NCO/OH=1.0」となるように添加した。
【0045】
450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、樹脂粒子として架橋タイプアクリル粒子「MR50G」(商品名、綜研化学製)を5.44質量部(アクリルポリール100重量部に対して20重量部相当量)を添加した後、更に30分間分散して表面層形成用塗料を得た。
【0046】
この表面層形成用塗料を、導電性弾性ローラに1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、導電性基体上に表面層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度は2mm/secになるように調節し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。
【0047】
このようにして、導電性弾性ローラ上に表面層を有する帯電ローラを作製した。
得られたローラを高温高湿下での放置後と、高温高湿下の放置後に耐久試験を行った後に以下の方法で評価した。
【0048】
(1.高温高湿下での放置後の評価)
得られたローラを40℃95%環境下に2ヶ月間放置した。放置後のローラの導電性接着剤層と導電性支持軸の接着強度と画像評価を行った。
【0049】
(接着強度の評価)
ローラの周方向に5mm幅で導電性支持軸まで達する切れ目を入れ、ローラの片端部の導電性弾性体層をつかみ、反対の端部方法へ引っ張り、接着強度を確認した。評価基準を以下に示す。
【0050】
A:接着面のすべての部分の面積で導電性接着剤層と導電性支持軸が容易に剥がすことができないもの。
【0051】
B:接着面の約6割以上の面積で導電性接着剤層と導電性支持軸が容易に剥がすことができないもの。
【0052】
C:接着面の約3割以上の面積で導電性接着剤層と導電性支持軸が容易に剥がすことができないもの。
【0053】
D:接着面のほぼ全ての面積で導電性接着剤層と導電性支持軸が容易に剥がすことができるもの。評価結果を表5に示す。
【0054】
(画像評価)
続いて、ローラを以下に示すような装置を用いて画像評価を行った。 本試験で使用した電子写真式レーザープリンターは、キヤノン製LBP5400を改造し、記録メディアの出力スピードは、200mm/secで画像解像度は600dpiとした。画像の評価は全て、低温低湿(15℃、10%)で行い、ハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)画像を出力しておこなった。以下の基準で評価した。評価結果を表5に示す。
【0055】
A:画像に白いもや状のものが無い。
【0056】
B:画像に白いもや状のものがあるが軽微であり、実用上問題ない。
【0057】
C:画像に白いもや状のものがあり、画質が低下している。
<耐久後>
以下に示した耐久試験を行い、高温高湿下放置後の評価と同様な評価を同様な評価基準で行った。
【0058】
(2.耐久試験後の評価)
上述した装置を用いて、1枚の画像を出力後に電子写真装置の回転を停止させ、再び画像形成を再開する動作を繰り返し(E文字1%印字画像を間欠耐久)、10000枚の画像出力を行い、10000枚目の画像について前記画像評価の基準に基づいて評価した。
【0059】
<実施例2>
実施例1のアルミニウム粒子を平均粒径17μmの球状アルミニウム粒子に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0060】
<実施例3>
実施例1において亜鉛粒子を平均粒径8μmの球状亜鉛粒子に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0061】
<実施例4>
実施例2の亜鉛粒子を平均粒径8μmの球状亜鉛粒子に変えた以外は実施例2と同様に帯電ローラを作製し評価した。
【0062】
<実施例5>
実施例1の亜鉛粒子を平均粒径32μm、厚さ2μmの箔状の亜鉛フィラーに変更し、アルミニウム粒子を平均粒径3μm、厚さ0.6μmの箔状のアルミニウムフィラーに変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
【0063】
<実施例6>
実施例5においてアルミニウム粒子を平均粒径4μmの球状のアルミニウム粒子に変更した。それ以外は実施例5と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
【0064】
<実施例7>
実施例1において亜鉛粒子を平均粒径4μm、厚さ0.3μmの箔状に変更し、アルミニウム粒子を平均粒径31μm、厚さ1.5μmの箔状に変更した。それ以外は実施例1と同様に帯電ローラを作製、評価した。
【0065】
<実施例8>
実施例7の亜鉛粒子を平均粒径2μmの球状亜鉛粒子に変更した以外は実施例7に従った。
【0066】
<実施例9〜10>
実施例1においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして帯電ローラの作製、評価を行なった。
【0067】
実施例9:平均粒径3μm、厚さ0.6μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例10:平均粒径4μmの球状アルミニウム粒子。
【0068】
<実施例11〜12>
実施例3においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実施例3と同様にして帯電ローラの作製、評価を行なった。
【0069】
実施例11:平均粒径3μm、厚さ0.6μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例12:平均粒径4μmの球状アルミニウム粒子。
【0070】
<実施例13〜14>
実施例7においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実子例7と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0071】
実施例13:平均粒径16μm、厚さ1.2μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例14:平均粒径17μmの球状アルミニウム粒子。
【0072】
<実施例15>
実施例8においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実施例8と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0073】
実施例15:平均粒径16μm、厚さ1.2μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例16:平均粒径17μmの球状アルミニウム粒子。
【0074】
<実施例17〜18>
実施例5においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実子例5と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0075】
実施例17:平均粒径16μm、厚さ1.2μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例18:平均粒径17μmの球状アルミニウム粒子。
【0076】
<実施例19>
実施例1においてアルミニウム粒子を平均粒径31μm、厚さ1.5μmの箔状のアルミニウムフィラーに変えた以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0077】
<実施例20>
実施例3においてアルミニウム粒子を平均粒径31μm、厚さ1.5μmの箔状のアルミニウムフィラーに変えた以外は実施例3と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0078】
<実施例21>
実施例7においてアルミニウム粒子を平均粒径3μm、厚さ0.6μmの箔状のアルミニウムフィラーに変えた以外は実施例7と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0079】
<実施例22>
実施例1においてアルミニウム粒子を平均粒径4μmの球状アルミニウム粒子に変えた以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0080】
<実施例23〜24>
実施例8においてアルミニウム粒子を下記のものに変えた以外は実施例8と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0081】
実施例23:平均粒径3μm、厚さ0.6μmの箔状のアルミニウムフィラー;
実施例24:平均粒径4μmの球状アルミニウム粒子。
【0082】
<実施例25>
実施例5においてアルミニウム粒子を平均粒径31μm、厚さ1.5μmの箔状のアルミニウムフィラーに変えた以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0083】
<実施例26>
実施例1において導電性支持軸をSUS304に変更した以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0084】
<実施例27>
実施例2において導電性支持軸をSUS304に変更した以外は実施例2と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0085】
<実施例28>
実施例3において導電性支持軸をSUS304に変更した以外は実施例3と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0086】
<実施例29>
実施例4において導電性支持軸をSUS304に変更した以外は実施例4と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0087】
<比較例1>
実施例1において導電性支持軸の処理を行わない以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。その結果、高温高湿下での放置後に導電性接着剤層と導電性支持軸の接着強度は不十分であった。また、画像には白もや状のものが発生し、画質が低下したため、高温高湿下で放置した後の耐久試験を実施しなかった。
【0088】
<比較例2>
実施例27において導電性支持軸の処理を行わない以外は実施例27と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0089】
<比較例3>
実施例1において導電性支持軸をSUM24Lに無電解ニッケルメッキ(厚さ3μm)に変更し、導電性支持軸の処理を行わない以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製、評価した。
【0090】
上記実施例1〜29及び比較例1〜3の評価結果を下記表5に示す。
【0091】
【表5】

【符号の説明】
【0092】
101:導電性支持軸
102:珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層
103:導電性接着剤層
104:導電性弾性体層
105:表面層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持軸、導電性接着剤層および導電性弾性体層をこの順に有する帯電ローラであって、該導電性支持軸と該導電性接着剤層の間に、珪素を含む無機バインダと粒状金属からなる層を更に有し、該粒状金属が粒状アルミニウム及び粒状亜鉛であることを特徴とする帯電ローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−98491(P2012−98491A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245831(P2010−245831)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】