説明

帯電部材、その製法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を下げることで、クリーニング部材上に堆積した汚染物質の帯電部材への付着を防止し、この付着に伴う画像不良を改善した電子写真装置を提供する。
【解決手段】基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−W結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置の接触帯電に用いる帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真感光体の表面を帯電する方式の1つとして、接触帯電方式が実用化されている。接触帯電方式は、電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加し、該帯電部材と該電子写真感光体との間の当接部近傍で微少な放電をさせることによって、該電子写真感光体の表面を帯電する方式である。
【0003】
接触帯電方式では、電子写真感光体に対する帯電効率・均一帯電性を向上させるため、電子写真感光体と帯電部材との当接幅を十分にかつ均一に確保する必要がある。従来、このような要求に対して、基体及び該基体上に設けられた導電性弾性層を有する帯電部材が提案されている。しかしながら、導電性弾性層は、低分子量成分を比較的多量に含むことが多いため、この低分子量成分がブリージングし、電子写真感光体及び帯電部材を汚染することがある。そこで、低分子量成分のブリージング抑制を目的として、導電性弾性層上に表面層を設けることがある。
【0004】
また、電子写真感光体のクリーニング部材上に堆積したトナー、トナーに用いられる外添剤、放電生成物や紙粉がすり抜けることによって、電子写真感光体と接触している帯電部材が汚染される。その結果、帯電ムラが生じ、長手方向スジ状の画像が発生する。
【0005】
特許文献1は、ゾルゲル法によって形成される有機・無機ハイブリッド皮膜中に導電性フィラーを分散させることで、水との接触角が大きくなり、トナーの離型性が良化することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1:特開2002−080785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、高速化や高寿命化が求められ、帯電部材に対するトナー、トナーに用いられる外添剤、放電生成物や紙粉などの汚染物質の量が増える傾向にある。そのため、帯電部材は、帯電ムラが生じ、長手方向スジ状の画像不良が発生しやすい傾向にある。帯電部材への汚染物質の付着を抑制する手法としては、帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を下げることが有効である。なぜなら、表面自由エネルギーは付着物との親和性に影響し、摩擦係数、付着物との滑り性に影響し、汚染物質の付着を防止できるからである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を下げることで、クリーニング部材上に堆積した汚染物質の帯電部材への付着を抑制した帯電部材を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−W結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有している帯電部材が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
但し、式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24及びR29〜R32は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。
【0019】
また、本発明によれば、前記帯電部材の製造方法であって、後記する式(11)および(12)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の外周に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含む帯電部材の製造方法が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、前記帯電部材の製造方法であって、後記する式(11)、(12)および(17)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の外周に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含む帯電部材の製造方法が提供される。
【0021】
さらに、本発明によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている上記の帯電ローラとを有する電子写真装置が提供される。
【0022】
さらにまた、本発明によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている上記の帯電ローラとを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナー、トナーに用いられる外添剤、放電生成物や紙粉などが表面に付着し難い帯電部材を得ることができる。また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して提供できるプロセスカートリッジおよび電位写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に係る帯電部材の断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る帯電部材を備えた電子写真装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の表面層用の縮合物1の硬化物の29Si−NMRの測定結果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の表面層用の縮合物1の硬化物の13C−NMRの測定結果を示す図である。
【図5】図5は、動摩擦係数測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る帯電部材は、基体、該基体上に形成された導電性弾性層、および該導電性弾性層上に形成された表面層を有する。帯電部材の最も簡単な構成は、基体上に導電性弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、基体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。帯電部材の代表例であるローラ形状の帯電ローラの断面を示した図1において、101は基体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。
【0026】
<基体>
帯電部材の基体は、導電性を有していればよく(導電性基体)、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製(合金製)の基体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
【0027】
<導電性弾性層>
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーの如き弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0028】
ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム等。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、(株)クラレ製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
【0030】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗値は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗値の好適な範囲は102Ω以上108Ω以下であり、より好適な範囲は103Ω以上106Ω以下である。
【0031】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0032】
陽イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。第四級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等)、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩等)。
【0033】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
【0034】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよび多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。
【0035】
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(Li、Na、Kなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCNおよびNaClなどが挙げられる。
【0036】
また、導電性弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Baなど)の塩(Ca(ClO42など)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコールもしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオールとの錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることもできる。多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。モノオールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンの如き導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして以下のものが挙げられる。Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Reinforcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)。
【0038】
また、導電性弾性層用の導電剤として、以下のものを用いることもできる。天然グラファイトおよび人造グラファイトの如きグラファイト、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛の如き金属酸化物、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムの如き金属、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレンの如き導電性ポリマー。
【0039】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤が挙げられる。
【0040】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、MD−1硬度で60度以上85度以下であることが好ましく、特には70度以上80度以下であることがより好ましい。
【0041】
また、導電性弾性層の形状は、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0042】
<表面層>
本発明に係る帯電部材を構成する表面層は、Si−O−Wの結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有している。
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
但し、式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24及びR29〜R32は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。
【0051】
本発明に係る高分子化合物は、シロキサン結合およびケイ素原子に結合した有機鎖部分が互いに重合している構造を有するため架橋密度が大きい。そのため、帯電部材の弾性層上に該高分子化合物からなる表面層を形成した場合、弾性層中の低分子成分が帯電部材の表面に染み出すことを有効に抑制することができる。加えて、高分子化合物中にSi−O−W結合を有することから、帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を低下させることができる。
【0052】
表面層の膜厚は0.01μm以上0.40μm以下が好ましく、0.05μm以上0.35μm以下がより好ましい。表面層の膜厚は0.01μm以上であれば、帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を低下させる観点から好ましく、0.05μm以上であればより好ましい。また表面層の膜厚は0.40μm以下であれば、表面層の塗工性の観点から好ましく、0.35μm以下であればより好ましい。
【0053】
前記高分子化合物における式(1)中のR1及びR2としては、各々独立に下記式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかであることが好ましい。このような構造とすることで、表面層をより強靭で耐久性に優れたものとすることができる。特に下記式(8)および式(10)に示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性体層への密着性をより一層向上させることができる。
【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
式(7)〜(10)中、N、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数を示し、x’及びy’は、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。
【0059】
上記高分子化合物の一例として、式(1)中のR1が式(3)で示され、R2が式(4)で示されるときの構造の一部を以下に示す。
【0060】
【化17】

【0061】
上記高分子化合物の一例として、式(1)中のR1が式(3)で示され、R2が式(5)で示されるときの構造の一部を以下に示す。
【0062】
【化18】

【0063】
前記高分子化合物におけるタングステンとケイ素との原子数比W/Siは、0.1以上12.5以下であることが好ましく、0.5以上10.0以下がより好ましい。この値は、帯電部材の表面自由エネルギー及び摩擦係数を低下させる観点から0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。またこの値は、コーティング液の安定性及び表面層の塗工性の観点から12.5以下が好ましく、10.0以下がより好ましい。
【0064】
〔表面層の製造〕
本発明において使用される高分子化合物は、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物と、下記式(12)で示される加水分解性タングステン化合物とを加水分解、脱水縮合させて縮合物を得た後、当該縮合物が有するエポキシ基を開裂させて架橋させることで得られる。
【0065】
このとき、式(11)の3官能部位と、式(12)の5官能部位とで生じる加水分解と縮合の程度を制御し、膜物性の弾性率、緻密性を制御することができる。また、式(11)のR33の有機鎖部位を硬化サイトとして用いることで、表面層の強靭さ、および表面層の弾性層への密着性の制御が可能である。また、R33を紫外線照射により開環するエポキシ基を有する有機基とすることで、従来の熱硬化性材料と比較して硬化時間を短縮でき、弾性体層の熱劣化を抑制し得る。
【0066】
【化19】

【0067】
式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す。
【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60及びR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。
【0073】
本発明において使用される高分子化合物は、前記式(11)で示される加水分解性シラン化合物、及び、前記式(12)で示される加水分解性タングステン化合物と、下記式(17)で示される加水分解性シラン化合物との架橋物であることが好ましい。この場合、合成段階での式(11)及び式(12)の化合物の溶解性、塗工性、更に硬化後の膜物性として、電気特性を向上させることが可能となるので好ましい。特にR68がアルキル基の場合、溶解性、塗工性の改善として好ましい。また、R68がフェニル基の場合は、電気特性、特に体積抵抗率の向上に寄与するので好ましい。
【0074】
【化24】

【0075】
但し、上記式(17)中、R68は、アルキル基またはアリール基を示し、R69〜R71は各々独立に炭化水素基を示す。
【0076】
本発明に係る帯電部材は、上記の加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層上に形成した後に、該塗膜中の加水分解縮合物を架橋させて上記高分子化合物を生成し、これを表面層とすることによって製造することができる。
【0077】
〔高分子化合物の製造例〕
ここでは、高分子化合物の製造例として、表面層用のコーティング剤(塗料)の調製方法と、弾性層の外周において高分子化合物を生成させて表面層を得る方法をより具体的に説明する。高分子化合物は、次の工程(1)〜工程(6)を経て製造される。尚、成分(A)は式(11)の加水分解性シラン化合物であり、成分(B)は式(17)の加水分解性シラン化合物、成分(C)は式(12)の加水分解性タングステン化合物である。
(1):成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比(C)/[(A)+(B)]を0.1以上12.5以下に調整する工程、
(2):成分(A)と成分(B)を混合し、成分(D)の水、成分(E)のアルコールを添加した後、加熱還流により加水分解・縮合を行う工程、
(3):前記加水分解・縮合を行った溶液に成分(C)を添加し加水分解・縮合を行う工程、
(4):成分(F)の光重合開始剤を添加し、アルコールで濃度を希釈してコーティング剤(塗料)を得る工程、
(5):基体上に形成された弾性層の外周にコーティング剤を塗布する工程、
(6):加水分解縮合物を架橋反応させてコーティング剤を硬化する工程。
【0078】
尚、工程(2)において成分(A)、(B)及び(C)を同時に添加してもよい。また加水分解性シラン化合物は、成分(A)1種類のみを使用してもよく、また成分(A)を2種類以上、もしくは成分(B)を2種類以上併用してもよい。
【0079】
式(11)中のR34〜R36の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、更にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0080】
以下に、式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0081】
式(17)中のR68のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましく、更には炭素数6〜10のものが好ましい。R68のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R69〜R71の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0082】
以下に、式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
【0083】
式(11)及び式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用し、かつ、式(17)のR68がフェニル基を有する場合、式(17)のR68が炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基を有する加水分解性シラン化合物と併用することが更に好ましい。併用することにより、加水分解・縮合反応を通して構造が変化しても溶媒への相溶性が良向となる。
【0084】
式(12)中のR37〜R41の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0085】
以下に、式(12)で示される構造を有する加水分解性タングステン化合物の具体例を示す。タングステンペンタメトキシド、タングステンペンタエトキシド、タングステンペンタイソプロポキシド、タングステンペンタブトキシド、タングステンペンタフェノキシド。
【0086】
上記各成分のモル比(C)/[(A)+(B)](即ち原子数比W/Si)は、0.1以上12.5以下に調整することが好ましく、更に0.5以上10.0以下にすることが好ましい。0.1以上であれば、表面自由エネルギー及び摩擦係数がより低下し、付着を防止する効果が高くなる。12.5以下では、保全安定性及び塗工性が安定する。
【0087】
成分(D)の水の添加量は、成分(A)、(B)のモル数に対して、(D)/[(A)+(B)]が、0.3以上6.0以下が好ましい。更に1.2以上1.8以下が好ましい。0.3以上であれば、縮合が十分に進行して未反応のモノマーが残存し難く成膜性が良好である。原料の有効使用の観点からもモノマーが残存しない系が望ましい。また6.0以下であれば、縮合の進行が早過ぎることも無く、白濁化や沈殿を防止できる。また、水分が多過ぎることも無いので極性が高過ぎることも無く、縮合物と水、アルコール混合時の相溶性も良好であるため、白濁化や沈殿を防止できる。
【0088】
成分(E)のアルコールとして、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、第1級アルコールと第2級アルコールの混合系、または、第1級アルコールと第3級アルコールの混合系を用いることが好ましい。特にエタノール、メタノールと2−ブタノールの混合液、エタノールと2−ブタノールの混合液、または、エタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合液の使用が好ましい。
【0089】
成分(F)の光重合開始剤は、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合開始剤としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。光重合開始剤はコーティング剤との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトンなどの溶媒に希釈しても良い。
【0090】
各種カチオン重合開始剤の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(18)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、下記式(19)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
以上のように合成されたコーティング剤を実際に塗布する適当な濃度に調整する。このとき塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。特にエタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合溶媒が好ましい。
【0094】
〔表面層の形成〕
このように調製されたコーティング剤は、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの手法によって、弾性層の外周に塗布されコーティング層が形成される。コーティング層に活性化エネルギー線を照射すると、コーティング剤に含まれる加水分解縮合物中のカチオン重合可能なエポキシ基が開裂・重合する。これによって、該加水分解縮合物同士が架橋し硬化し、表面層が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、均一な膜が得られる。このため、感光体への均一で安定した電位を与えることができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0095】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が好ましく用いられる。なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間やランプ出力、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0096】
帯電部材の表面自由エネルギーは35mJ/m2以下が好ましく、30mJ/m2以下がより好ましい。35mJ/m2以下であればトナー、トナーに用いられる外添剤、放電生成物や紙粉などとの親和性が良くないため、表面付近に付着物が存在しても固着しにくくなる。
【0097】
帯電部材の表面層の動摩擦係数は、対ポリエチレンテレフタレート(PET)シートでの測定において0.10以上0.35以下が好ましく、0.10以上0.30以下がより好ましい。0.10以上であれば感光体ドラムとの従動が良好でスリップのおそれがなく、感光体ドラムへ安定して帯電付与することができる。また0.30以下であればトナー、トナーに用いられる外添剤、放電生成物や紙粉などの付着が少ない。
【0098】
<電子写真装置およびプロセスカートリッジ>
本発明に係る電子写真装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とを有し、帯電部材が前記帯電部材であることを特徴とする。また本発明に係るプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されており、帯電部材が前記帯電部材であることを特徴とする。
【0099】
図2によって、本発明に係る電子写真装置及びプロセスカートリッジの概略構成を説明する。21は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体)である。この感光体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。感光体には、例えばロール状の導電性支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを少なくとも有する公知の感光体等を採用すればよい。また、感光体は、感光体表面を所定の極性及び電位に帯電させるための電荷注入層を更に有していてもよい。
【0100】
帯電手段は、帯電ローラ22と帯電ローラに帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1とによって構成されている。帯電ローラは、感光体に所定の押圧力で接触させてあり、本例では感光体の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラに対して帯電バイアス印加電源S2から、所定の直流電圧(本例では─1050Vとする)が印加される(DC帯電方式)ことで、感光体の表面が所定の極性電位(本例では暗部電位─500Vとする)に一様に帯電処理される。
【0101】
露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。Lは露光光である。感光体の帯電処理面に該露光手段により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位(本例では明部電位─150Vとする)が選択的に低下(減衰)して感光体に静電潜像が形成される。
【0102】
反転現像手段としては公知の手段を利用することができる。例えば本例における現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを撹拌する撹拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段は、感光体の表面の静電潜像の露光明部に、感光体の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する(本例では現像バイアス─400Vとする)。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在するが、特にカラー画像を出力する画像形成装置には、トナーの飛散性改善等の目的より、接触現像方式が好ましいといえる。
【0103】
転写手段としての転写ローラ25は公知の手段を利用することができ、例えば金属等の導電性支持体上に中抵抗に調製された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラ等を例示することができる。転写ローラは、感光体に所定の押圧力で接触させてあり、感光体の回転と順方向に感光体の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S4からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。感光体と転写ローラの接触部に不図示の給紙機構から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラにより、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、感光体と転写ローラの接触部において感光体の表面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。
【0104】
トナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機構に導入されて転写部へ再導入される。転写残余トナー等の感光体上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、感光体上より回収される。
【0105】
なお、本例の電子写真装置は、電子写真感光体と帯電ローラを、樹脂成形体などの支持部材によって一体的に支持し、この一体的な構成のまま電子写真装置本体に着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ(不図示)を有する装置であってもよい。電子写真感光体や帯電ローラだけでなく、さらに、現像手段やクリーニング手段も併せて一体的に支持したプロセスカートリッジとしてもよい。
【実施例】
【0106】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0107】
(実施例1)
〔1〕導電性弾性層の形成及び評価
表1に示した材料を6L加圧ニーダー(使用装置:TD6−15MDX、トーシン社製)にて、充填率70体積%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBzTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、導電性弾性層用の混練物1を得た。
【0108】
【表1】

【0109】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形、鋼製の基体(表面をニッケルメッキ加工したもの、以下「芯金」という)を準備した。そして、この芯金上の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを温度80℃で30分間乾燥させた後、さらに120℃で1時間乾燥させた。
【0110】
混練物1を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラを作製した。押出機はシリンダー径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッド、シリンダー及びスクリューの温度を90℃とした。次に上記ローラを異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定して30分間で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定して30分間で通過させ、加硫された導電性弾性ローラを得た。
【0111】
次に、この導電性弾性ローラの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さRzが5.5μmで、振れが18μmの導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。十点平均粗さRzは、JISB6101に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0112】
〔2〕縮合物の合成及び評価
〔縮合物No.1〕
次に、以下の2段階反応によって縮合物No.1を合成した。
【0113】
(合成−1):第1段階反応
下記表2の各材料を混合した後、室温で30分攪拌した。続いてオイルバスを用い、温度120℃で20時間加熱還流を行うことによって、各加水分解性シラン化合物の縮合物中間体1を得た。このときの縮合物中間体1の濃度は、固形分(加水分解性化合物が全て脱水縮合したと仮定した時の、溶液全質量に対する質量比率)として28.0質量%である。
【0114】
【表2】

【0115】
(合成−2):第2段階反応
次に、縮合物中間体1の108.41gに対し、タングステンペンタエトキシド(W)[Gelest(株)製]68.39g(0.215モル)添加し、室温(25℃)で3時間攪拌して縮合物No.1を得た。一連の攪拌は750rpmの速度で行った。原子数比W/Siは1.0であった。
【0116】
・評価〔1〕:縮合物No.1の安定性;
縮合物No.1の安定性を以下の評価基準で評価した。
A:1ヶ月放置しても白濁・沈殿が無い状態である。
B:2週間程度から白濁気味になる状態である。
C:1週間程度から白濁気味になる状態である。
D:合成時に白濁・沈殿が生じる状態である。
【0117】
・評価〔2〕:縮合物No.1の硬化膜中の式(1)の構造の確認;
29Si−NMR、13C−NMR測定[使用装置:JMN−EX400、JEOL社]を用いて、縮合物No.1の硬化物中の式(1)で示される構造の存在の有無を確認した。測定用試料の作成方法を以下説明する。
【0118】
まず、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製]をメタノールで10質量%に希釈した。次いで、25gの縮合物No.1に対して、上記光カチオン重合開始剤のメタノール希釈液を0.7g添加した。これを「縮合物No.1と光重合開始剤との混合物」と称する。上記「縮合物No.1と光重合開始剤との混合物」に対して、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、理論固形分を7.0質量%に調整し、「コーティング液No.1」を得た。
【0119】
次いで、厚さが100μmのアルミニウム製のシートの脱脂した表面に「コーティング液No.1」をスピンコートした。スピンコート装置としては、1H−D7(商品名、ミカサ(株)製)を用いた。スピンコートの条件としては、回転数を300rpm、回転時間を2秒間とした。
【0120】
そして、「コーティング液No.1」の塗膜を乾燥させた後、当該塗膜に対して、波長が254nmの紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させた。当該塗膜が受ける紫外線の積算光量は、9000mJ/cmとした。なお、紫外線の照射には、低圧水銀ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)製]を用いた。
【0121】
次いで、得られた硬化膜をアルミニウム製シートから剥離し、メノウ製の乳鉢を用いて粉砕し、NMR測定用試料を調製した。この試料について核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて29Si−NMRスペクトル、および、13C−NMRスペクトルを測定した。
【0122】
29Si−NMRスペクトルを図3に示す。同図内にスペクトルを波形分離したピークを同時に示した。−64ppm〜−74ppm付近のピークがT成分を示す。ここでT成分とは、有機官能基との結合を1つ有するSiが、Oを介して他の原子(Si、B)との結合を3つ有する状態、つまり−SiO3/2を示す。図3より、エポキシ基を含む有機鎖を持つ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。また13C−NMRスペクトルを図4に示す。開環前のエポキシ基を示すピークは44ppm、51ppm付近に現れ、開環重合後のピークは69ppm、72ppm付近に現れる。図4より未開環のエポキシ基がほとんど残存せずに重合していることを確認した。以上の29Si−NMR測定および13C−NMR測定により、式(1)の構造が縮合物No.1の硬化物中に存在していることを確認した。
【0123】
〔3〕帯電ローラNo.1−1〜1−7の作成および評価
<表面層形成用塗料No.1−1〜1−7の調製>
上記の評価[2]と同様にして調製した「縮合物No.1と光重合開始剤との混合物」に対して、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を用いて、固形分濃度を1.0質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.5質量%、3.5質量%、4.0質量%、および5.0質量%に調整した。これらを各々、表面層形成用塗料1−1〜1−7とした。
【0124】
<表面層の形成>
次に、上記[1]で作成した導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を7本用意し、各々の導電性弾性ローラ1の導電性弾性層の外周部に表面層形成用塗料1−1〜1−7をリング塗布(吐出量:0.120mL/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.130mL)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、硬化(架橋反応による硬化)させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)製]を用いた。このようにして帯電ローラNo.1−1〜1−7を得た。そして、得られた各帯電ローラを下記の評価[3]〜[9]に供した。
【0125】
・評価〔3〕:塗工性;
帯電ローラの表面の外観状態を目視にて以下の基準で判断した。
A:帯電ローラの表面に全く塗工不良がない。
B:帯電ローラの表面の一部に塗工不良がある。
C:帯電ローラの表面の全領域に塗工不良ある。
【0126】
・評価〔4〕:表面層の厚みの測定;
各帯電ローラに形成された表面層の層厚を計測した。切断した帯電ローラの断面を観察し計測した。使用装置:走査型透過電子顕微鏡[製品名:HD−2000、(株)日立ハイテクノロジーズ製]。
【0127】
・評価〔5〕:Si−O−W結合の確認;
各帯電ローラの表面層内のSi−O−W結合の存在をESCA[商品名:Quantum2000、アルバックファイ社]を用いて確認した。すなわち、帯電ローラの表面にX線が照射されるようにし、表面層内の結合様式を評価した。検出されたO1sスペクトルより、帯電ローラの表面層内にSi−O−W結合の存在が確認された。
【0128】
・評価〔6〕:表面自由エネルギーの測定;
各帯電ローラの表面自由エネルギーを算出するために、下記表3に示す、表面自由エネルギーの3成分が既知の3種のプローブ液体に対する接触角を接触角計(商品名:CA−X ROLL型、協和界面株式会社製)を用いて測定した。
【0129】
接触角θの測定条件は以下のとおりである。
測定:液滴法(真円フィッティング)。
液量:1μl。
着滴認識:自動。
画像処理:アルゴリズム−無反射。
イメージモード:フレーム。
スレッシュホールドレベル:自動。なお、下記において、L、Sはそれぞれ液体、固体の当該項目を示す。
γ:分散力項。
γ:極性項。
γ:水素結合項。
【0130】
【表3】

【0131】
上記表3において、γL、γL及びγLは各々、分散力項、極性項および水素結合項を表す。上記表3のプローブ液体3種の表面自由エネルギーの各々(γ、γ、γ)と、測定によって得た各プローブ液体に対する接触角θを、下記計算式(1)に代入し、各プローブ液体についての3つの方程式を作成し、それら3元連立方程式を解くことによって、γS、γS、γSを算出した。そして、γS、γS及びγSの和を表面自由エネルギー(γTotal)とした。なお、本発明の帯電部材の全表面自由エネルギー(γTotal)は、25mJ/mを超えて35mJ/m以下であることが望ましい。
【0132】
【数1】

【0133】
・評価〔7〕:動摩擦係数の測定;
図5の動摩擦係数測定装置を用いて帯電ローラの表面層の動摩擦係数を測定した。この動摩擦係数測定装置において、帯電ローラ201は、ベルト(厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、PET製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ(株)製))202に所定の角度θで接触している。ベルトの一端には重り203が繋がれ、他端には荷重計204が繋がれている。また荷重計には記録計205が接続されている。
【0134】
図5に示す状態で、帯電部材を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計で測定された力をF[g重]、重りの質量とベルトの質量との和をW[g重]とすると、摩擦係数は以下の数式で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。本発明においては、W=100[g重]とし、帯電部材の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃、50%RHとする。結果を表6に示す。
【0135】
【数2】

【0136】
<評価[8]および[9]:帯電ローラの耐久性の評価>
各帯電ローラの耐久性を以下の方法により評価した。まず、電子写真装置として、レーザープリンター[商品名:HP LaserJet P1505 Printer HP社製]を用意した。このレーザープリンターは、A4サイズの紙を縦方向に出力する。上記レーザープリンター用のプロセスカートリッジを7個用意し、各々のプロセスカートリッジに、帯電ローラNo.1−1〜1−7を組み込んだ。これらのプロセスカートリッジを用いて以下の操作を行った。
【0137】
すなわち、評価対象の帯電ローラを組み込んだプロセスカートリッジを装填したレーザープリンターを用いて、低温低湿(温度15℃、湿度10%RH)環境の下で、A4サイズの紙上に電子写真画像を1000枚出力した。電子写真画像は、A4サイズの紙上に、電子写真感光体の回転方向に対して、垂直方向に幅2ドット、間隔118スペースの横線が描かれるような画像である。
【0138】
1000枚の電子写真画像の出力後、上記レーザープリンターを1時間、静止状態に置いた後、黒ベタ画像を1枚出力した。なお、上記電子写真画像の形成は、1枚出力する毎に10秒間かけて電子写真感光体の回転を停止させる、いわゆる、間欠モードで行った。間欠モードでの画像出力は、連続して電子写真画像の形成を行う場合と比較して、帯電ローラと電子写真感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電ローラにとってより過酷な評価条件と言える。
【0139】
評価[8]:黒ベタ画像;
こうして得られた黒ベタ画像について、目視で確認し、下記表4に記載の基準に基づき評価した。なお、下記の評価基準は、帯電ローラの形状が、使用に伴って帯電ローラにトナー等が付着した場合に、黒ベタ画像の両端に横スジを生じやすい形状であることに基づく。
【0140】
【表4】

【0141】
・評価〔9〕:帯電ローラの汚れ;
上記したように、1001枚の画像の出力を終えたレーザプリンターからプロセスカートリッジを取り出し、当該プロセスカートリッジから帯電ローラNo.1−1を取り外してその汚れ具体を目視で観察し、下記表5に記載の基準に基づき評価した。尚、評価〔3〕において塗工性の評価結果がランク「C」のものに関しては、汚れか塗工不良かを判別するのが目視では困難なため、本評価においてもランクを「C」とした。
【0142】
【表5】

【0143】
(実施例2)〜(実施例15)
[1]縮合物No.2〜15の調製および評価;
下記表6に記載の組成としたこと以外は、実施例1における縮合物中間体1と同様の方法により、縮合物中間体2〜9を調製した。
【0144】
次いで、下記表7に記載の組成としたこと以外は、実施例1における縮合物No.1と同様にして縮合物No.2〜15を調製した。得られた縮合物について、実施例1に記載の評価[1]および評価[2]を行った。
【0145】
なお、表6中の成分(A)および成分(B)の欄における略記号EP−1〜EP−5、HeおよびPh、並びに、表7中の成分(C)の欄における略記号W−1は、表8に示す化合物を表す。
【0146】
【表6】

【0147】
【表7】

【0148】
【表8】

【0149】
[2]帯電ローラの作成および評価;
<帯電ローラNo.2〜3の作成>
縮合物No.2を用いて、実施例1と同様にして表面層形成用塗料2−1〜2−5を調製した。なお、各塗料の固形分濃度は、0.1質量%、0.2質量%、1.0質量%、4.0質量%および5.0質量%とした。同様に、縮合物No.3を用いて表面層形成用の塗料3−1〜3−5を調製した。これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラNo.2−1〜2−5、及び帯電ローラNo.3−1〜3−5を作成し、評価[3]〜[9]に供した。
【0150】
<帯電ローラNo.4〜7の作成>
縮合物No.4を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面層形成用塗料4−1〜4−3を調製した。各塗料の固形分濃度は、0.5質量%、1.0質量%、および3.5質量%とした。
【0151】
同様に、縮合物No.5〜7を用いて、表面層形成用塗料5−1〜5−3、表面層形成用塗料6−1〜6−3、および、表面層形成用塗料7−1〜7−3を調製した。これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラNo.4−1〜4−3、帯電ローラNo.5−1〜5−3、帯電ローラNo.6−1〜6−3、および、帯電ローラNo.7−1〜7−3を作成し、評価[3]〜[9]に供した。
【0152】
<帯電ローラNo.8〜15の作成>
縮合物No.8〜17を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面層形成用塗料8〜15を調製した。なお、固形分濃度は、1.0質量%とした。これらの塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラNo.8〜15を作成し、評価[3]〜[9]に供した。上記各実施例に係る帯電ローラの評価[3]〜[9]の結果を表9に示す。
【0153】
【表9】

【0154】
(比較例1)
・比較用の縮合物No.16の調製および評価;
縮合物中間体2を比較用の縮合物No.16として、評価[1]に供した。なお、当該縮合物No.16は、加水分解性タングステン化合物を原料に用いていないため、評価[2]は行わなかった。
【0155】
・帯電ローラNo.16の作成および評価;
縮合物No.16を用いたこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料1−1と同様にして表面層形成用塗料16を調製した。これを用いて、実施例1に係る帯電ローラNo.1−1と同様にして帯電ローラNo.16を作成し、評価[3]、[4]および[6]〜[9]に供した。縮合物の原料に加水分解性タングステン化合物を用いていないため、評価[5]は行わなかった。
【0156】
(比較例2)
・比較用の縮合物No.17の調製および評価;
下記表10に示すように成分(A)および成分(B)を用いず、成分(C)のみを加水分解せしめて比較用の縮合物No.17を調製し、評価[1]に供した。
【0157】
【表10】

【0158】
・帯電ローラNo.17の作成および評価;
上記縮合物No.17を用い、かつ、光カチオン重合開始剤を添加しないこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料1−1と同様にして表面層形成用塗料17を調製した。これを用いて、実施例1に係る帯電ローラNo.1−1と同様にして帯電ローラNo.17を作成した。
【0159】
なお、導電性弾性ローラの表面に形成した表面層形成用塗料19の塗膜は温度250℃で1時間加熱することにより硬化させた。こうして得た帯電ローラNo.17を、評価[3]に供した。また、表面層形成用塗料17は、弾性層表面への塗工性が悪く、成膜が困難であったため、評価[4]、[6]、[7]、[8]及び[9]は行わなかった。また、縮合物の原料に加水分解性タングステン化合物を用いていないため、評価[5]は行わなかった。比較例1及び比較例2の評価結果を表11に示す。
【0160】
【表11】

【符号の説明】
【0161】
101 基体
102 導電性弾性層
103 表面層
21 電子写真感光体
22 帯電部材(帯電ローラ)
23 露光手段
24 現像手段
24a トナー担持体
24b 撹拌部材
24c トナー規制部材
25 転写ローラ
26 クリーニング手段
L 露光光
S2、S4 バイアス印加電源
P 転写材
201 帯電ローラ
202 ベルト
203 重り
204 荷重計
205 記録計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−W結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有していることを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

[式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す;
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

[式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24及びR29〜R32は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。]]。
【請求項2】
前記高分子化合物において、式(1)のR1およびR2が、各々独立に以下の式(7)〜(10)で示されるいずれかである請求項1に記載の帯電部材:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

[式(7)〜(10)中、N、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数を示し、x’及びy’は、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。]。
【請求項3】
前記高分子化合物におけるタングステンとケイ素との原子数比W/Siが0.1以上12.5以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記式(11)および式(12)で示される加水分解性化合物の架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化11】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す;
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

[式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60及びR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。]]。
【請求項5】
前記高分子化合物が、下記式(11)、(12)および(17)で示される加水分解性化合物の架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化16】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す;
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

[式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60及びR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。]]、
【化21】

[式(17)中、R68は、アルキル基またはアリール基を示し、R69〜R71は各々独立に炭化水素基を示す。]。
【請求項6】
請求項4に記載の帯電部材の製造方法であって、前記式(11)および(12)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の外周に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の帯電部材の製造方法であって、前記式(11)、(12)および式(17)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の外周に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項8】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている請求項1〜5のいずれかの一項に記載の帯電部材とを有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている請求項1〜5のいずれかの一項に記載の帯電部材とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−185494(P2012−185494A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30495(P2012−30495)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】