説明

帯電防止性作業長靴及び帯電防止性作業長靴の製造方法

【課題】 防塵性に優れた帯電防止性能を有する帯電防止性作業長靴及び帯電防止性作業長靴の製造方法を提供する。
【解決手段】 底面1aに靴底6が固着されている胛部1と、通電性を有する素材よりなっている胴部3とが接合されている帯電防止性作業長靴10において、胛部1と胴部3との接合部を覆うパッド部4が帯電防止性作業長靴10内面に設けられているから、接合部における段差をなくし、接合部に塵や埃が蓄積しない防塵性に優れ、パッド部4により履き心地が向上した帯電防止性作業長靴10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胛被部及び靴底が通電性材料よりなる帯電防止性作業長靴及び帯電防止性作業長靴の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体製造工場のようなクリーンルームにおける作業では、塵や埃が生じないようにする必要がある。そこで、クリーンルームにおいて用いられる作業靴は、静電気の発生を防止するために、作業靴を構成する靴底、中底及び胛被部(甲被部)が帯電防止性(静電性)を有するものによって構成されている。このような帯電防止性作業靴としては、上縁が踝よりやや下方に位置するように踝よりやや下方までを覆うように形成された胛被部を備えた帯電防止性作業短靴や、上縁が踝よりやや上方の位置から膝下までの間の任意の位置となるように胛被部及び脚胴部が形成された帯電防止性作業長靴などがある(例えば特許文献1)。特に、後者の帯電防止性作業長靴は、使用者(履用者)の衣服を帯電防止性作業長靴内に納めることにより、衣服に起因する塵や埃を防止することができるから、その需要が広がってきている。このような帯電防止性作業長靴としては、帯電防止性作業短靴の胛被部の上縁付近外側または内側にポリエステルなどによりなる脚胴部(筒部)を縫合したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−155501号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の帯電防止性作業長靴は、胛被部と脚胴部との接合箇所付近に隙間(段差)が形成されてしまい、この隙間に塵や埃のようなゴミがたまりやすいという問題がある。胛被部と脚胴部との接合方法としては、脚胴部が胛被部の外側となるように接合する方法と、脚胴部が胛被部の内側となるように接合する方法とがある。前者の方法により作製された帯電防止性作業長靴では胛被部上縁付近の外面(外側)と脚胴部との間に、後者の方法により作製された帯電防止性作業長靴では胛被部上縁付近の内面(内側)と脚胴部との間に、隙間が形成される。このため、従来の帯電防止性作業長靴には、胛被部の上縁付近の接合箇所付近に形成された隙間に塵や埃がたまりやすいという問題がある。
【0005】
また、帯電防止性作業長靴は、塵や埃などの塵芥の発生を嫌うクリーンルームにおいて使用されるものであるから、塵や埃を落とすために、通常、一週間に一回程度の洗濯がなされる。しかし、上述した接合箇所付近に形成された隙間にたまった塵や埃は、洗濯によってきれいに除去することが困難であり、逆に洗濯によって隙間に塵や埃がたまることもある。このように、帯電防止性作業長靴の胛被部の縁部付近の胛被部と脚胴部との接合部に形成された隙間は、帯電防止性作業長靴に起因して発生する塵や埃の原因となっていた。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、胛被部と脚胴部との接合部に前記のような隙間を有さない、防塵性に優れた帯電防止性能を有する帯電防止性作業長靴及び帯電防止性作業長靴の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の帯電防止性作業長靴は、底面に靴底が固着されている胛被部と、通電性を有する素材よりなっている脚胴部とが接合されている帯電防止性作業長靴において、前記胛被部と前記脚胴部との接合部を覆うパッド部が前記帯電防止性作業靴内面に設けられていることを特徴とする。
請求項2記載の帯電防止性作業長靴は、請求項1に記載の帯電防止性作業長靴において、前記胛被部の底面及び前記靴底が通電性材料よりなるものであることを特徴とする。
請求項3記載の帯電防止性作業長靴は、請求項1に記載の帯電防止性作業長靴において、前記胛被部及び前記靴底が通電性材料よりなるものであることを特徴とする。
請求項4記載の帯電防止性作業長靴の製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の帯電防止性作業長靴の製造方法であって、前記脚胴部と前記パッド部とを接合する第1の接合工程と、前記第1の接合工程において前記パッド部が接合された前記脚胴部と前記胛被部とを接合する第2の接合工程と、前記第1の接合工程において前記脚胴部が接合された前記パッド部と前記胛被部とを接合する第3の接合工程とを有することを特徴とする。
請求項5記載の帯電防止性作業長靴の製造方法は、請求項4に記載の帯電防止性作業長靴の製造方法において、前記第3の接合工程が、前記パッド部と前記胛被部との間に緩衝材を配設して前記パッド部と前記胛被部とを接合するものであることを特徴とする。
請求項6記載の帯電防止性作業長靴の製造方法は、請求項3または4に記載の帯電防止性作業長靴の製造方法において、前記第2の接合工程が、前記第1の接合工程において前記パッド部が接合された前記脚胴部と前記胛被部とを、前記胛被部の前記脚胴部に接している面の反対の面から縫合するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯電防止性作業長靴は、胛被部と前記脚胴部との接合部を覆うパッド部によって、胛被部と脚胴部との間の段差をなくし、胛被部と脚胴部とを一体化することができる。帯電防止性作業長靴内面において胛被部と脚胴部とを一体化することにより、接合部の隙間(段差)を無くすことができる。これにより、接合部の隙間にゴミがたまることを防止することができるから、接合部に塵や埃(塵芥)が蓄積しない、防塵性に優れた帯電防止性作業長靴を提供することができるという効果を奏する。
さらに、本発明の帯電防止性作業長靴は、内部に備えているパッド部により履き心地が改良されている。これにより、履用者が長時間着用した場合の疲労を軽減することができるという効果を奏する。
すなわち、本発明の帯電防止性作業長靴はパット部を備えていることにより、胛被部と脚胴部とを一体化して接合部における隙間を無くすことができるから、隙間に塵芥が蓄積せず防塵性に優れており、しかも靴の履き心地が大幅に改善された静電気の蓄積を防ぐ帯電防止性能を有した作業用靴を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明の帯電防止性作業靴の製造方法によれば、胛被部と脚胴部との接合部を覆うパッド部によって、胛被部と脚胴部とを一体化した前記本発明の帯電防止性作業長靴を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態である帯電防止性作業長靴を示す側面図
【図2】本発明の実施形態である帯電防止性作業長靴の内部構造を示す図1の帯電防止性作業長靴の一部を切り取った状態を示す側面図
【図3】本発明の帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部正面図
【図4】本発明の帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部断面図
【図5】従来の帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔帯電防止性作業長靴〕
以下、図1、図2に基づいて、本発明の帯電防止性作業長靴の一実施形態について説明する。本発明の帯電防止性作業長靴には、例えば、帯電防止性ロングブーツ、帯電防止性ハーフブーツ、脚胴部を有する帯電防止性作業靴などが含まれている。
図1は、本発明の実施形態である帯電防止性作業長靴を示す側面図であり、図2は、図1に示した帯電防止性作業長靴の一部を切り取った状態、具体的には外側の一部を切り取った状態における図1の帯電防止性作業長靴の内面を示した側面図である。
【0011】
図1、2に示したとおり、本実施の形態の帯電防止性作業長靴10は、胛部(胛被部)1、爪先補強部2、胴部(脚胴部)3、パッド部4、履口絞り部5、靴底6及びファスナー7を備えている。
【0012】
胛部1は、踝から先の部分(足)を包む、足の中足骨及び踵骨を覆う程度の丈の低い形状のものであって、合成樹脂材料若しくは合成皮革材又はゴム材など防水性に優れた材料により形成されている。胛部1は、帯電防止性を有する素材(帯電防止性素材)により構成することとしても良い。胛部1の底面1aを帯電防止性素材(通電性材料)により構成すれば、靴底6を帯電防止性素材により構成することにより、胛部1において生じた静電気を底面1aと靴底6とを介して、床面に放電すること(アース)ができる。また、胛部1の全体を帯電防止性素材により構成すれば、胛部1において生じた静電気のアースをより確実にすること及び、大気中に放電することが可能となる。
前記の帯電防止性素材としては、例えば、上述した材料に銅やアルミニウムなどの金属又はこれらを含有する合金などの帯電防止性(導電性、通電性、静電性)金属繊維又は導電性カーボンブラックの粉末や繊維などの帯電防止性物体が混入されているものを用いることができる。
爪先補強部2は、胛部1により覆われている足のつま先部を、外部の衝撃から保護するためのものであり、使用の際に想定される衝撃を受けた場合でも、胛部1がつぶれて作業者が足を怪我することがないように、必要十分な強度とされている。ただし、本発明の帯電防止性作業長靴10は、爪先補強部2を備えていることは必ずしも必要でなく、爪先補強部2を備えないものとして構成することとしてもよい。
【0013】
胴部3は、踝から膝下までの間を包むものであり、帯電防止性を有する柔軟性布巾材料により構成されている。帯電防止性を有する柔軟性布巾材料としては、例えば、炭素繊維のような帯電防止性を有する繊維が織り込まれた表面布若しくは、表面布を芯材布に貼着して積層したものを挙げることができる。より具体的には、帯電防止性を有する防塵用生地、帯電防止性を有する防塵用生地の裏面にウレタンスポンジに合成繊維を合わせたものを貼り合わせたもの、又は帯電防止性を有する防塵用生地の裏面に合成繊維のメッシュ材を貼り合わせたものを用いることができる。
このように、胴部3は、帯電防止性を有した柔軟性布巾材料(防塵用生地)によりなっているから、摩擦その他によって静電気が発生し難い。したがって、胴部3は、静電気の発生によって塵や埃を吸引して付着させることがないから、特に塵埃の存在を極度に嫌うクリーンルーム及びクリーンルームに関わる作業において好適なものである。
本実施の形態の帯電防止性作業長靴10は、その上縁が踝近傍であって踝を覆う比較的短い態様のものであるため、胴部3の長さは、その上縁がふくらはぎ下部近傍に位置する程度の長さとされている。帯電防止性作業長靴10を、その上縁が膝下近傍に位置しておりふくらはぎ全体を覆う態様のものとする場合、胴部3の長さもそれに対応させた長さとすればよい。
【0014】
パッド部4は、胛部1と胴部3との接合部を覆うように帯電防止性作業長靴10の内部に形成されている。このように胛部1と胴部3の接合によって形成された隙間をパッド部4で覆うことにより、胛部1と胴部3とを一体化すること、すなわち、帯電防止性作業長靴10内面の胛部1と胴部3との接合部に段差が形成されないスムーズな形状とすることができるから、隙間にたまったゴミに起因する塵や埃がクリーンルーム内に発生することを防止することができる。
パッド部4は、胛部1上縁部内面に沿って帯状に形成されており、帯の両側において胛部1と胴部3とに接合されている。これによって、接合部の隙間をパッド部4で覆うことができ、その覆われた隙間に対応する分だけ隙間からの塵や埃の発生を防止すること(防塵)ができる。このように、パッド部4による防塵効果は、隙間がパッド部4により覆われることによって奏されるものであるから、パッド部4によって全部の隙間を覆うことは必要ではなく、製造に要する手間(コスト)と得られる効果との関係に照らして最適な範囲を覆うこととすればよい。パッド部4を構成する素材は、クッション性(緩衝性)に優れた伸縮性のある素材を用いればよく、例えば、伸縮性に富んだ合成樹脂材料、合成皮革材などを用いることができる。
【0015】
ゴムパッド(緩衝材)40は、胛部1とパッド部4との間に設けられており、帯電防止性作業長靴10の内側においてパッド部4により覆われている。パッド部4の内部に、伸縮性のある素材よりなるゴムパッド40が設けられていることにより、帯電防止性作業長靴10の履き心地を向上させて、長時間着用した場合における履用者の疲労を軽減することができる。例えば、クリーンルーム内において、膝を曲げて行う作業がなされる場合、ゴムパッド40が設けられていることによって、胛部1の上縁部に沿って帯電防止性作業長靴10を履用者(作業者)の足にフィットさせ、帯電防止性作業長靴10の中の足が胛部1の底面1aから浮くことを防止することができるから、作業者の疲労を軽減させることができる。
【0016】
履口絞り部5は、胴部3の上縁において胴部3を折り返し、当該折り返した部分にゴム紐などの伸縮性素材を入れて、当該折り返された部分の縁(胴部3の上縁とは反対側)に沿って胴部を縫い合わせることにより形成されている。この構成により、履口絞り部5が胴部3の口径が伸び縮みする方向に一定の範囲内で伸縮するものとなる。このように、胴部3の上端に履口絞り部5が設けられていることにより、履用者がファスナー7を開いて胛部1に足を入れる動作を容易にすることができ、また、ファスナー7を閉じた状態では、履口絞り部5を脚にぴったりと適合(フィット)させることができる。なお、本実施の形態の帯電防止性作業長靴10は比較的短い態様のものであるから、その上縁すなわち履口絞り部5が脚のふくらはぎの下部において脚にフィットするようになっている。
【0017】
靴底6は、胛部1の底面に固着されたものである。靴底6と胛部1とを固着する方法は、接着剤などを用いた接着による方法、胛部1と靴底6とを同一材料により一体成型する方法のいずれの方法であってもよい。帯電防止性を有する素材により靴底6を構成することとすれば、靴底6を通じて床に放電すること(アース)ができる。帯電防止性を有する素材としては、例えば、上記の材料に銅やアルミニウムなどの金属又はこれらを含有する合金などの帯電防止性金属繊維又は帯電防止性カーボンブラックの粉末や繊維などの帯電防止性物体が混入されているものを用いることができる。
【0018】
以上のように、本実施の形態の帯電防止性作業長靴10は、帯電防止性を有する材料を含んで構成されているから、帯電防止性物質を通じて人体及び作業衣に生じた静電気を室内の大気中や床に放電させることができる。また、胛部1と胴部3とにより形成された隙間をパッド部4で覆っているから、当該隙間からの塵や埃の発生を防止することができる。この隙間の塵や埃は、洗濯によって洗い流すことが困難であり、逆に洗濯の際に溜まってしまうものであるから、パッド部4によって隙間を覆うことは、頻繁に洗濯される帯電防止性作業長靴10に起因する塵や埃の発生を防止するため特に有効である。このように、本実施の形態の帯電防止性作業長靴10は、塵や埃の存在を嫌う作業を行うクリーンルームなどで履用されるものとして非常に適している。
【0019】
〔帯電防止性作業長靴の製造方法〕
以下、図3、図4に基づいて、上述した帯電防止性作業長靴10の製造方法について説明する。
図3は、本発明の帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部正面図であり、図4は、図3において一点鎖線A−Bで示した部分で切断し、矢印の方向に見た断面を示す帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部断面図である。図3では、パッド部4の縫製工程に対応した状態を(a)(b)(c)を用いて示しており、図4では、図3に(a)(b)(c)を用いて示した各工程に対応した状態を同様に(a)(b)(c)を用いて示している。
【0020】
図3及び図4はいずれも、(a)が胴部3とパッド部4とを接合する第1の接合工程を説明するためのものであり、(b)が第1の接合工程においてパッド部4が接合された胴部3と胛部1とを接合する第2の接合工程を説明するためのものであり、(c)が第1の接合工程において胴部3が接合されたパッド部4と胛部1とを接合する第3の接合工程を説明するためのものである。
【0021】
図3(a)に示すように、第1の接合工程では、胴部3の裏側(履いたときに帯電防止性作業長靴10の内側となる側)に、パッド部4を予め縫い付けておく。より具体的には、胴部3の胛部1と接合される側の端部3aと、パッド部4の一方側の端部4aとを合わせて(端部3aと端部4aとがほぼ重なるようにして)、端部3a及び端部4aから約5mm程度に位置する縫合部3c、縫合部4cにおいて、胴部3とパッド部4とを縫い合わせる。
上述した第1の接合工程により、胴部3とパッド部4とが接合(縫合)された状態を図4(a)に示す。同図に示すように、端部3aと端部4aとがほぼ重なるようにして、縫合部3c・縫合部4cで胴部3とパッド部4とを縫合することにより、胴部3の裏側(図4(a)の向かって右側)に、パッド部4が接合される。このとき、パッド部4の端部4aとは反対側の端部4bは、胛部1に縫合されていない自由な状態となっている。
【0022】
図3(b)は、図3(a)とは、反対側(反対の面)から胴部3を見たものである。図3(b)に示すように、第2の接合工程では、胛部1の裏側(履いたときに帯電防止性作業長靴10の内側となる側)に胴部3を縫い付ける作業を、胛部1の表側から行う。胛部1の胴部3と接合される側の端部には、補強を目的として当該端部付近の胴部3の両面を3mm〜5mm程度の幅で覆うように補強テープ11が予め縫い付けられている。胴部3と胛部1との接合は、胛部1と胴部3との重なりが5mm程度となるようにして、補強テープ11上の縫合部11cにおいてなされる。この接合(縫合)は、胛部1の表側から行われるものであるから、縫合作業者が補強テープ11及び縫い付け代Cを目で見ながら、ミシンを走らせる作業をすることができる。このため、胛部1の補強テープ11により補強されている部分において胛部1と胴部3とを縫い合わせて(ドッキング縫い付け)、胛部1と胴部3との接合を確実に行うことができる。なお、胛部1と胴部3との重なりにより形成される端部は、後にパッド部4で覆われて塵や埃がたまるということはないから、胛部1と胴部3との重なりは5mm程度でなくとも後にパッド部4により覆うことができる程度のものであればよい。
上述した第2の接合工程により、胛部1、胴部3及びパッド部4が縫合された状態を図4(b)に示す。同図に示すように、胛部1、胴部3及びパッド部4は、胛部1の補強テープ11上に縫い目が位置するように形成された縫合部11cにおいて、相互に接合されている。これにより、胛部1、胴部3及びパッド部4の接合を確実かつ強固なものとすることができる。
上述した第1の接合工程において予め胴部3にパッド部4を接合しておくことにより、続いて行われる第2の接合工程において、胛部1が胴部3に接している面の反対の面から胴部3を胛部1に縫合すること、すなわち縫合作業者が胛部1の表側から補強テープ11を見ながら胛部1と胴部3との縫合を行うことが可能となる。このため、胛部1と胴部3とを補強テープ11上で縫合して、胛部1と胴部3との接合を強固なものとすることができる。また、この縫合により、第1の接合工程において胴部3に予め接合させた靴胛パッド部4を、補強テープ11上の縫合部11cにより胛部1に対しても接合することができる。なお、従来の方法を用いた場合の問題点について後に説明する。
【0023】
図3(c)は、図3(a)と同じ側から胴部3を見たものである。図3(c)に示すように、第3の接合工程では、パッド部4をひっくり返して、当該パッド部4と胛部1の裏側との間に、図3(c)に点線で示したゴムパッド40を挿入しながら、端部4b付近の縫合部4dにおいて、パッド部4を胛部1に縫い付ける。上述した第3の接合工程により、胛部1と胴部3との接合部をパッド部4により覆って、胛部1と胴部3とを一体化することができる。
図4(c)は、胛部1と胴部3とが一体化された状態を示している。同図に示すようにパッド部4は、縫合部11cにおいて胛部1及び胴部3と接合されており、当該接合部において、パッド部4が胛部1及び胴部3を覆っている。そして、パッド部4と胛部1との間に配されたゴムパッド40により、帯電防止性作業長靴10をフィット性及び履き心地の良いものとすることができる。
【0024】
以上のように、本実施の形態の帯電防止性作業長靴10の製造方法によれば、第1の接合工程において予め胴部3にパッド部4を接合しておくことにより、続いてなされる胛部1と胴部3とを接合する第2の接合工程を胛部1の表面側から行うことができるから、胛部1の補強テープ11上で接合(縫合)して、確実な接合を実現することができる。そして、第2の接合工程に続いてなされる第3の接合工程において、胴部3に接合されたパッド部4を胛部1に接合することにより、胛部1と胴部3との接合部をパッド部4により覆うことができる。また、第3の接合工程において、パッド部4の中にゴムパッド40を挿入することとすれば、パッド部4のクッション性を向上させて、帯電防止性作業長靴10の履き心地を良くすることができる。
【0025】
〔従来の製造方法〕
従来の製造方法を用いた場合に生じる問題につき、以下に説明する。図5は、従来の帯電防止性作業長靴の製造方法を示す要部正面図であり、(a)(b)(c)は、当該製造方法をこの順に段階的に示したものである。
図5(a)は、図3(a)に示した第1の接合工程を経ずに、図3(b)に示した第2の接合工程により、胛部101の内側(裏側)に胴部103を縫い付けた状態を示している。胛部101と胴部103とをドッキングさせるドッキング縫い付けは、胛部101側の胴部103端に補強テープ112が縫い付けられた状態でなされる。そして、胴部103は、補強テープ112に沿うように、補強テープ112近傍の胴部103上に縫い目が位置する縫合部111cにおいて胛部101と縫い合わせられる。このため、従来の方法によると、胛部101と胴部103(補強テープ112)との間に隙間が生じる。図5(a)では、胴部103の補強テープ112の奥の胛部101との間に隙間が形成されている。この隙間(段差)に塵や埃がたまることが、クリーンルームに生じる塵や埃の一因となる。
【0026】
そこで、接合部における胛部101と胴部103との段差をなくして両者を一体化するためには、この段差をパッド部104によって覆う必要がある。パッド部104により段差を覆うには、パット部104を、その一方の縁に沿って胴部103に縫い付ける作業、および他方の縁に沿って胛部101に縫い付ける作業が必要となる。前者の縫い付け作業によりパッド部104の胴部103への接合を確実に行うには、パッド部104を胴部103に縫い付けるだけでは十分ではなく、その縫い目が、胴部103と重なっている胛部101の端部を補強している補強テープ111の上を通るようにすることが必要である。しかし、胛部101の裏側(内側)に胴部103を縫い付けた後に、パッド部104の縫い付け作業を行う場合、胴部103の裏側からパッド部104の縫い付けを行うこととなる。胴部103の裏側から作業をする場合、胛部101の端は胴部103に隠れているから、作業者が胛部101端の補強テープ111を見ながら、パッド部104の縫い付け作業を行うことはできない。ここで、胛部101の端を補強する補強テープ111は、通常3mm〜5mm程度の非常に狭い幅で形成されているから、胴部103の裏側から、補強テープ111上に縫い目が位置するように縫合することは極めて困難である。
したがって、作業者が胴部103の裏側から、胛部101の補強テープ111を見ないでパッド部104を接合した場合、胴部103の裏側から見るとパッド部104に形成された縫合部104c(縫合部103c)が図5(b)に示したような一直線のきれいな縫い目となっているときであっても、通常、胴部103の表側(胛部101の表側)から見ると、縫合部103c(縫合部104c)は、図5(c)に示すように、胛部101の補強テープ111と胴部103との間を行き来するように波打って形成されることとなる。この結果として、パッド部104の胛部101および胴部103への縫い付けが外れやすくなり、十分な機能を備えた帯電防止性作業長靴を製造することができないという問題が生じる。
【0027】
これに対して、上述した本発明の帯電防止性作業長靴の製造方法は、胛部1と胴部3とを縫い合わせる第2の接合工程を行う前に、パッド部4を胴部3に予め縫い付けておくことにより(図3、図4参照)、作業者が胛部1の表側から補強テープ11を見ながら胛部1と胴部3とを縫い合わせることができるから、容易に補強テープ11上に縫い目が位置するように胛部1と胴部3とを縫合することができる。この縫合によりパッド部4をも胛部1に対して接合することができる。すなわち、本発明のポイントは、靴胛パッド部4を胛部1に予め縫い付けておく第1の接合工程を備えていることである。これにより、胛部1、胴部3、靴胛パッド部4という3枚の布の縫い付けを2枚の布の縫い付けと同様の方法により行うことが可能となる。なお、現在用いられている通常のミシンを用いた縫い方によると、ばらばらの3枚の布を重ねて縫い付けることはできない。このため、あらかじめパッド部4を胴部3に縫い付けておく第1の接合工程を用いない場合、胛部1と胴部3とパッド部4とを、これらの端部付近において接着剤などで予め貼り付けておく作業が必要となる。しかし、このような作業は、現実的ではなく、不可能に近いものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、塵や埃の発生を防止し、クリーンルームなどにおける作業に好適な帯電防止性作業長靴および帯電防止性作業長靴の製造方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 胛部(胛被部)
1a 底面
3 胴部(脚胴部)
4 パッド部
6 靴底
10 帯電防止性作業長靴
40 ゴムパッド(緩衝材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に靴底が固着されている胛被部と、通電性を有する素材よりなっている脚胴部とが接合されている帯電防止性作業長靴において、
前記胛被部と前記脚胴部との接合部を覆うパッド部が前記帯電防止性作業靴内面に設けられていることを特徴とする帯電防止性作業長靴。
【請求項2】
前記胛被部の底面及び前記靴底が通電性材料よりなるものであることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性作業長靴。
【請求項3】
前記胛被部及び前記靴底が通電性材料よりなるものであることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性作業靴。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の帯電防止性作業長靴の製造方法であって、
前記脚胴部と前記パッド部とを接合する第1の接合工程と、
前記第1の接合工程において前記パッド部が接合された前記脚胴部と前記胛被部とを接合する第2の接合工程と、
前記第1の接合工程において前記脚胴部が接合された前記パッド部と前記胛被部とを接合する第3の接合工程とを有することを特徴とする帯電防止性作業長靴の製造方法。
【請求項5】
前記第3の接合工程が、前記パッド部と前記胛被部との間に緩衝材を配設して前記パッド部と前記胛被部とを接合するものであることを特徴とする請求項4に記載の帯電防止性作業長靴の製造方法。
【請求項6】
前記第2の接合工程が、前記第1の接合工程において前記パッド部が接合された前記脚胴部と前記胛被部とを、前記胛被部の前記脚胴部に接している面の反対の面から縫合するものであることを特徴とする請求項4または5に記載の帯電防止性作業長靴の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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