説明

帯電防止性樹脂組成物およびその成形体

【課題】低添加量で熱可塑性樹脂に十分な帯電防止能を付与する帯電防止剤を含有してなる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂(A)、一般式(1)に示す帯電防止剤(B)


(式中、Aは炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜1500の基、X1およびX2は、同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜1800のポリアルキレングリコール基を表す。)および相溶化剤(C)として、(c-1)ポリオレフィンあるいは(c-2)α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとオレフィンとの共重合体、(c-3)α、β−不飽和カルボン酸そのエステルとスチレンとの共重合体、(c-4)ポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体から選ばれる1種以上からなる帯電防止性を有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性能を付与し、かつ、良好な機械物性を維持しうる帯電防止性樹脂組成物およびその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂と混練し帯電防止効果をもたらす帯電防止剤としては、大別して低分子型のもの、高分子型のものに分けられる。低分子型は効果の持続性に問題があり、長期的な使用には適さない。
【0003】
そこで帯電防止剤として、高分子型のものが期待されている。高分子型の帯電防止剤としては、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドとビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物とから誘導されるポリエーテルエステルアミド樹脂(特許文献1および2)が知られている。また特許文献3には、ポリアミド系エラストマーと相溶化剤としてα,β−不飽和カルボン酸とオレフィン樹脂との共重合体、SEBS、SEPS樹脂と組合わせてポリスチレンに使用することが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらいずれも帯電防止性能を発現するために必要なエラストマー含量が非常に多く、少量の添加では帯電防止性能が発現しない問題点がある。また帯電防止剤を単に添加しただけでは、樹脂中に分散が不十分となり、表面にブリードアウトしたり、成型体の強度自体が低いという問題点もあった。
【0005】
通常、帯電防止剤を添加することで樹脂成形体の帯電を抑制しようとすると、成形体自体の強度等の機械的特性が悪くなることがあった。また、最近では、帯電防止性能を有し、かつ、軽量である程度の機械的強度を有する成形体が望まれている。このため、少量添加であっても、機械的特性を高く維持しつつ表面抵抗を下げることが可能な帯電防止用樹脂組成物が望まれている。
【0006】
一方、特許文献4には、ポリオレフィンに対して少量の添加により帯電防止効果を発現する高分子型の帯電防止剤に関する報告がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−140541号公報
【特許文献2】特許公報第2565846号
【特許文献3】特開2004−256778号公報
【特許文献4】特開2009−24151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリスチレンやABS樹脂などの熱可塑性樹脂に少量添加することで、帯電防止効果を発現することが可能となる樹脂組成物およびその成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の発明を包含する。
[1]ポリスチレン系樹脂(A)80〜99.8重量部、
帯電防止剤として、下記一般式(1)で表される末端分岐型共重合体(B)0.1〜10重量部、および、
【0010】
【化1】

(式中、Aは炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜1500の基、R1及びR2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、X1およびX2は、同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜1800のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
【0011】
相溶化剤として、(c-1)ポリオレフィンあるいは(c-2)α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとオレフィンとの共重合体、(c-3)α、β−不飽和カルボン酸またはそのエステルとスチレンとの共重合体、(c-4)ポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体、から選ばれる1種以上(C)0.1〜10重量部
(ただし(A)と(B)と(C)の合計量を100重量部とする)
を含有する帯電防止性樹脂組成物。
【0012】
[2]一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1およびX2が、同一または相異なり、一般式(2)または(4)で表される[1]の帯電防止性樹脂組成物。
【0013】
【化2】

(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、X3はポリアルキレングリコール基、または
【0014】
【化3】

(式中、R3はm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX4、−NX56(X4〜X6はポリアルキレングリコール基を表す)で表される基を表し、mはGの結合数であり1〜10の整数を表す)で表される基を表す)
【0015】
【化4】

(式中、X7、X8は同一または異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す)で表される基である。また、X7、X8のいずれか一方は水素または炭素数1〜20のアルキル基であってもよい。
[3]一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1またはX2のどちらかの一方が下記一般式(5)
【0016】
【化5】

(式中、X9、X10は同一または相異なり、それぞれポリアルキレングリコール基を表し、Q1、Q2は同一または相異なり、それぞれ2価のアルキレン基を表す)である[1]または[2]の帯電防止性樹脂組成物。
【0017】
[4]一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1、X2の少なくともいずれか一方が、一般式(6)
【0018】
【化6】

(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す)である[1]〜[3]の帯電防止性樹脂組成物。
【0019】
[5]前記[1]のポリオレフィンがポリエチレン、エチレンとC3〜C20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとの共重合体から選ばれる1種以上である[1]〜[4]の帯電防止性樹脂組成物。
【0020】
[6]前記[1]のポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体がスチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルを含有するスチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またそのエステルを含有するスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選ばれる1種以上からなる[1]〜[5]の樹脂組成物。
[7]前記[1]〜[6]の帯電防止性樹脂組成物からなる帯電防止性成形体。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ポリスチレンやABS樹脂などの熱可塑性樹脂に帯電防止効果を発現する帯電防止剤および相溶化剤を少量添加することで帯電防止性能を付与し、ポリスチレン樹脂やABS樹脂の有する良好な機械物性を維持しうる樹脂組成物およびその成形体を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を説明する。
熱化組成樹脂(A)
本発明に使用される熱可塑性樹脂はポリスチレン系樹脂(A)が好ましく用いられる。
【0023】
ポリスチレン系樹脂としては、ビニル基含有芳香族炭化水素単独またはビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリルエステル、(メタ)アクリロニトリルおよびブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体が挙げられる。
【0024】
具体的には汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)、などのポリスチレンのほかに、ポリビニルトルエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクニトニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体(ASA樹脂)等が挙げられ、それぞれ単独もしくは2種類以上併用して使用することができる。これらの樹脂単独では、表面固有抵抗値は1016以上であると言われている。
【0025】
本発明に用いられるポリスチレン系樹脂は、JIS K7210に準拠したメルトフローレートの測定が可能なものであれば一般的に用いられるすべてのものが該当する。また、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法については、各樹脂において公知の重合方法で得ることができるが、特に限定されるものではない。
【0026】
帯電防止剤(B)
本発明において使用される帯電防止剤(B)としては一般式(1)
【0027】
【化7】

(式中、Aは炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜1500の基、R1及びR2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、X1およびX2は、同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜1800ポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
で表される末端分岐型共重合体が使用される。
【0028】
一般式(1)のAを構成する炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられ、重合体としては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体、あるいいは物性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したのもであってもよい。これらのオレフィンの中でも、他の数2〜8のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜6であり、より好ましくは、炭素数2〜4であり、エチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0029】
Aで表される基のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定された数平均分子量(Mn)は400〜1500であり、好ましくは500〜1300、より好ましくは600〜1200である。ここでの数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算の値である。
【0030】
一般式(1)においてAで表される基のGPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、1.0〜数十のものがあるが、物性の均一性などの点で4.0以下のもの、特に3.0以下のものが好ましい。
【0031】
GPCによるAで表される基の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用いて以下の条件で測定される。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm、長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動層:オルトジクロロベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025重量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1重量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0032】
なお、Aで表される基の分子量は、後述の一方の末端の不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
1、R2としては、Aを構成するオレフィンの二重結合に結合した置換基である水素または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素、メチル基、エチル基、プロピル基などであり、より好ましくは水素またはメチル基である。
【0033】
一般式(1)において、X1、X2は同一または異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜1800、好ましくは100〜1200、より好ましくは200〜800の範囲にあるポリアルキレングリコール基を含む基を表す。このようなポリアルキレングリコール基は、式(1)の炭素原子(C)に、直接ないし、-O-、−S-、−N-結合を介して結合している。
【0034】
分岐アルキレングリコール基の分岐形態は、多価の炭化水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。例えば、主骨格の他の2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
【0035】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体の数平均分子量は2300以下、好ましくは550〜2300、より好ましくは800〜2300であり、特に好ましくは800〜2000である。その数平均分子量は、Aで表される基とX1およびX2の数平均分子量とR1、R2およびC2H分の分子量の和で表される。
【0036】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1およびX2の好ましい例としては、それぞれ同一または異なり、一般式(2)
【0037】
【化8】

(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、X3はポリアルキレングリコール基、または下記一般式(3)
【0038】
【化9】

(式中、R3はm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または異なり、−OX4、−NX56(X4〜X6はポリアルキレングリコール基を表す)で表される基を表し、mはGの結合数であり1〜10の整数を表す)で表される基を表す)
または、一般式(4)
【0039】
【化10】

(式中、X7、X8は同一または異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す)で表される基である。また、X7、X8のいずれか一方は水素または炭素数1〜20のアルキル基であってもよい。
【0040】
一般式(3)において、R3で表される基としては、炭素数1〜20のm+1価の炭化水素基であり、mは1〜10であるが、1〜6が好ましく、1〜2が特に好ましい。
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体の好ましい例としては、一般式(1)中、X1、X2のどちらか一方が、一般式(4)で表される基である末端分岐型共重合体が挙げられる。さらに好ましい例としては、X1、X2のどちらか一方が一般式(4)で表される、他方が、一般式(2)で表される基である末端分岐型共重合体が挙げられる。
【0041】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体の別の好ましい例としては、一般式(1)中、X1およびX2の一方が、一般式(2)で表される基である末端分岐型共重合体が挙げられる。
一般式(4)で表されるX1およびX2のさらに好ましい構造としては、一般式(5)
【0042】
【化11】

(式中、X9、X10は同一または異なり、ポリアルキレングリコール基を表し、Q1、Q2は同一または異なり、それぞれ2価の炭化水素基を表す)で表される基である。
【0043】
一般式(5)においてQ1、Q2で表される2価の炭化水素基は炭素数2〜20の炭化水素基であり、置換基を有していてもいなくてもよく、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモエチルメチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルメチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、炭化水素系のアルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、メチルエチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。Q1、Q2は1種類のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
一般式(2)で表されるX1およびX2のさらに好ましい構造としては、一般式(6)
【0044】
【化12】

(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す)
で表される基である。
【0045】
3〜X11で表されるポリアルキレングリコール基とは、アルキレンオキシドを付加重合することによって得られる基である。X3〜X11で表されるポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、エチレンオキシドであり、特に好ましくはエチレンオキシドである。X3〜X11で表されるポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基である。
【0046】
本発明の帯電防止剤(B)は、次の方法によって製造することができる。
最初に、目的とする重合体中、一般式(1)に対応するポリマーとして、一般式(7)
【0047】
【化13】

(式中、Aは炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜1500の基、R1及びR2は水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基であり、かつ、少なくともどちらか一方は水素原子を表す)
で示される、片末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造する。
【0048】
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0049】
上記(1)〜(4)の方法の中でも、特に(1)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したAを構成するオレフィンを重合または共重合することで上記片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。
【0050】
(1)の方法によるオレフィンの重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれかによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
【0051】
(1)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
【0052】
次に、上記式(7)で表されるポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、一般式(8)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
【0053】
【化14】

(式中、A、R1およびR2は前述の通り)
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
【0054】
(1)過蟻酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
【0055】
また、例えばMw400〜600程度の低分子量の末端エポキシ基含有重合体として、VIKOLOXTM(登録商標、Arkema社製)を用いることができる。
上記方法で得られた一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体に種々の反応試剤を反応させることにより、一般式(9)で表されるようにポリマー末端のα、β位に様々な置換基Y1、Y2が導入された重合体(重合体(I))を得ることができる。
【0056】
【化15】

(式中、A、R1、R2は前述の通り、Y1、Y2は同一または相異なり、水酸基、アミノ基、または下記一般式(10a)〜(10c)を表す)
【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、R3はm+1価の炭化水素基をあらわし、Tは同一または相異なり水酸基、アミノ基を表し、mはTの結合数を表し、1〜10の整数を表す)
【0060】
例えば、一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体を加水分解することにより、一般式(9)においてY1、Y2が両方とも水酸基である重合体が得られ、アンモニアを反応させることによりY1、Y2の一方がアミノ基、他方が水酸基の重合体が得られる。
【0061】
また、末端エポキシ基含有重合体と一般式(11a)で示される反応試剤Aを反応させることにより、一般式(9)においてY1、Y2の一方が一般式(10a)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0062】
【化19】

(式中、E、R3、T、mは前述の通りである)
また、末端エポキシ基含有重合体と一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bを反応させることにより、一般式(9)においてY1、Y2の一方が一般式(10b)または(10c)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0063】
【化20】

【0064】
【化21】

(式中、R3、T、mは前述の通りである)
一般式(11a)で示される反応試剤Aとしてはグリセリン、チオグリセリン、ペンタエリスリトール、ブタンジオール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0065】
一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノフェノール、ヘキサヘチレンイミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、N−(アミノエチル)プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、スペルミジン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
【0066】
末端エポキシ基含有重合体とアルコール類、アミン類との付加反応は周知であり、通常の方法により容易に反応が可能である。
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体は一般式(9)で示される重合体(I)を原料として、アルキレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドが用いられ、より好ましくはプロピレンオキシド及びエチレンオキシドである。
【0067】
触媒、重合条件などのついては、公知のアルキレンオキシドの開環重合を利用することができ、例えば、大津著、「改訂高分子合成の化学」、株式会社化学同人、1971年1月,p,172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられている触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl3、SbCl5、BF3、FeCl3のようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいはAl、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。ここで、フォスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスソニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしてものが利用できる。
【0068】
反応溶媒を使用する場合は、重合体(I)、アルキレンオキシドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化単価水素などが挙げられる。
【0069】
触媒の使用量はフォスファゼン触媒以外については原料の重合体(I)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。フォスファゼン触媒の使用量は、重合温度、経済性等の点から、重合体(I)の1モルに対して1×10-4〜5×10-1モルが好ましく、より好ましくは5×10-4〜10-1モルである。
【0070】
反応温度は通常25〜180℃、好ましくは50〜150℃とし、反応時間は使用する触媒の量、反応温度、オレフィン類の反応性等の反応条件により異なるが、通常数分〜50時間である。
【0071】
一般式(1)で表される化合物の末端分岐型共重合体の数平均分子量は、一般式(9)で示される重合体(I)の数平均分子量と、重合に用いられる重合体(I)の重量、重合させるアルキレンオキシドの重量から計算することができる。
【0072】
以上のような末端分岐型重合体(重合体とも称す)、当該重合体を含有する樹脂組成物、当該重合体及び当該重合体以外の他の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物は、優れた帯電防止作用を有し、帯電防止剤として有用である。
【0073】
また、本発明の帯電防止剤(B)は、上記重合体の他に、添加物として、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、および他の高分子帯電防止剤(本発明の帯電防止剤(B)以外の高分子型帯電防止剤)その他樹脂用添加剤等からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの成分を添加することにより、樹脂組成物の帯電防止性能をさらに向上させることができる。
【0074】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩としては炭素数1〜20のモノカルボン酸またはジカルボン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸等)、炭素数1〜20のスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、チオシアンさんなどの有機酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属と塩、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸、臭化水素酸等)、過塩素酸、硫酸、リン酸などの無機酸の塩が好ましく例として挙げられる。これらの中でも好ましくは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハライド、酢酸カリウム等の酢酸塩、および過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩が挙げられる。上記樹脂組成物中におけるアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の含有量は、重合体または樹脂組成物全量に対して通常0.001〜3重量%、好ましくは0.01〜2重量%である。
【0075】
相溶化剤(C)
本発明において熱可塑性樹脂(A)と帯電防止剤(B)の相溶化剤(C)として用いられる成分としては、(c-1)ポリオレフィン、(c-2)α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルとオレフィンとの共重合体、(c-3)α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルとスチレンとの共重合体、(c-4)スチレンとオレフィンからなるブロック共重合体(たとえばスチレン−エチレンブテン−スチレン3元ブロック共重合体(SEBS)、またはスチレン−エチレンプロピレン−スチレン3元ブロック共重合体(SEPS))、(c-5)α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとスチレンとオレフィンの共重合体、から選ばれる1種以上が用いられる。
【0076】
(c-1)ポリオレフィンとしては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられ、中でもポリエチレンが好ましい。
(c-2)α,β−不飽和カルボン酸として具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられ、また、これらの酸無水物、メチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0077】
α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルとオレフィンとの共重合体におけるオレフィン単位としては、エチレン、プロピレン、ブテンなど単位が挙げられ、このうちエチレン単位が好ましい。共重合体の例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0078】
(c-3)α,β−不飽和カルボン酸あるいはそのエステルを含有するポリスチレンとしては、メタクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)などが挙げられる。
【0079】
(c-4)スチレンとオレフィンからなるブロック共重合体として、3元ブロック共重合体が望ましく、具体的には、スチレン−エチレンブテン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレン3元ブロック共重合体(SEPS)を例示することができる。SEBSならびにSEPSは単独で使用しても良いが、
(c-5)α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとスチレンとオレフィンの共重合体としては、前記(c-4)ブロック共重合体が、α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物ないしそのエステルを含有するものである。
【0080】
(c-2)、(c-3)および(c-4)の共重合体のように、α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物ないしそのエステルを含有する場合、その含有量は、適宜選ぶことができるが、その含量は0.1〜50mol%、好ましくは1〜30mol%,さらに好ましくは2〜15mol%である。
【0081】
相溶化剤(C)中のα、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルを含む場合、α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルの含量が少ない場合、帯電防止剤(B)との反応性が低下し、その結果、良好な帯電防止性能を発現しない。α、β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルの含量が多い場合、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(C)との相容性が低下し、樹脂組成物およびその成形体の機械物性の低下を引き起こす可能性がある。
【0082】
相溶化剤(C)としては中でも、スチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレンが好ましく、特にスチレン−メタクリル酸共重合体が、伸び特性が高いため好ましい。
【0083】
配合比
本発明の帯電防止性樹脂組成物における(A)〜(C)の各構成成分の含有量については以下の通りである。組成物中の(A)〜(C)の合計量を100重量部としたときに、熱可塑性樹脂(A)は80〜99.8重量部、好ましくは84〜98重量部、さらに好ましくは88〜97重量部である。熱可塑性樹脂(A)の含有量が前記下限よりも少ないと樹脂が本来有している機械強度、あるいは成形性が悪化する。一方、熱可塑性樹脂(A)の含有量が前記上限を超えると、帯電防止剤(B)、相溶化剤(C)の添加量が少なくなり十分な帯電防止効果を発現しない。
【0084】
帯電防止剤(B)の含有量は0.1〜10重量部、好ましくは1〜8重量部、さらに好ましくは1.5〜6重量部である。帯電防止剤(B)の添加量が前記下限を下回る場合は、樹脂組成物からなる成形品の表面抵抗値が1.0×1013(Ω)を上回り、帯電防止性能を得るために好ましい値を得ることが困難となる。一方、前記上限を越えると、帯電防止性能は十分に発現するが、成形品の機械強度、成形性などが大幅に悪化することとなる。なお、本発明でいう表面固有抵抗値はJIS K6911に準拠して測定した値をいう。
【0085】
また、相溶化剤(C)の含有量は0.1〜10重量部、好ましくは1〜8重量部、さらに好ましくは1.5〜6重量部である。この範囲の含有量であれば、熱可塑性樹脂(A)に帯電防止性能を付与することが可能となるとともに、樹脂組成物からなる成形品の機械強度、成形性は熱可塑性樹脂(A)の機械強度、成形性と同等となる。なお、相溶化剤の含有量が多すぎると、帯電防止性能が低下することがある。
【0086】
本発明では、上記(B)分岐を有する帯電防止剤を使用しているので、少量であっても高い帯電防止効果を期待できる。
しかしながら、(B)帯電防止剤とともに特定の(C)相溶化剤とを組合わせることで、帯電防止剤(B)のポリスチレンやABSなどのポリスチレン系熱可塑性樹脂に対する分散性が向上し、より帯電防止効果を高めることができる。
【0087】
しかも(A)〜(C)の量比を特定の範囲とすることで、帯電防止剤(B)の効果がより発揮され、少量の使用であっても帯電防止効果が高く、機械的特性にも優れた樹脂組成物を提供できる。特に、相溶化剤として、スチレン−メタクリル酸共重合体を使用すれば、伸び特性を高くすることができる。
【0088】
その他成分
上記樹脂組成物には、その用途に応じて、効果を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。かかる樹脂用添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤(本発明の帯電防止剤(B)以外の高分子型帯電防止剤)などが挙げられる。
【0089】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および、または染料の添加量は、(A)〜(C)からなる樹脂組成物の重量に対して5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0090】
充填剤としてはガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム)および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの充填剤は1種単独または2種以上の併用いずれでもよい。
【0091】
滑剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0092】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0093】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1〜4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4〜30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0094】
酸化防止剤としては、フェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、多環フェノール系(ビスフェノール[2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール等)、リン系(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)の酸化防止剤が挙げられる。
【0095】
難燃剤としては、有機系難燃剤(含窒素系、含硫黄系、含珪素系、含リン系等)、無機系難燃剤(三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、赤リン等)が挙げられる。
【0096】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
【0097】
界面活性剤としては非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0098】
他の高分子型帯電防止剤としては、例えば、公知のポリエーテルエステルアミド等を使用することができ、公知のポリエーテルエステルアミドとしては例えば特開平7−10989号公報に記載のビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。その他、ポリオレフィンセグメントと親水性ポリマーブロックの結合単位が2〜50の繰返し構造を有するブロックポリマーを使用することができ、例えば、米国特許6552131号公報記載のブロックポリマーを挙げることができる。
これら各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、(A)〜(C)からなる樹脂組成物に対して0.1〜30重量%であることが好ましい。
【0099】
製造方法
本発明に係る熱可塑性樹脂(A)、帯電防止剤(B)、相溶化剤(C)からなる樹脂組成物、および樹脂組成物に対してさらに必要に応じて他の改質剤を添加した組成物を製造する方法については、通常熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を製造する場合の公知の製造方法を適宜採用することができるが、例えば、高速撹拌機、または、低速撹拌機等を用いて予め均一に混合した後、樹脂の融点以上において十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で溶融混練する方法や、溶融時に混合混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などを採用することができる。
【0100】
該樹脂組成物の製造は、成形体の成形前に行ってもよいし、製造と成形を同時に行ってもよい。成形前に該樹脂組成物を製造する場合、樹脂組成物の形状は、通常、ペレット、棒状、粉末が好ましい。
【0101】
以下に、本発明に係る熱可塑性樹脂(A)、帯電防止剤(B)、相溶化剤(C)を含んでなる帯電防止性樹脂組成物から得られる成形体の製造方法は公知公用の方法を用いることができる。例えば、以下のような方法を用いて製造することができる。
【0102】
(1)押出成形においては、本発明に係る樹脂組成物を、一般的なTダイ押出成形機で成形することにより、フィルムやシートを成形することができる。
(2)射出成形においては、本発明に係る樹脂組成物のペレットを溶融軟化させて金型に充填し、成形サイクル20〜120秒で成形物が得られる。
【0103】
(3)ブロー成形(射出ブロー成形、延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形)においては、例えば、射出ブロー成形においては、本発明に係る樹脂組成物のペレットを、一般的な射出ブロー成形機で溶融して金型に充填することにより、予備成形体を得る。得られた予備成形体をオーブン(加熱炉)中で再加熱した後に、一定温度に保持された金型内に入れて、圧力空気を送出してブローすることによりブローボトルを成形することができる。
【0104】
(4)真空成形・真空圧空成形においては、上記(1)の押出成形と同様の方法により成形したフィルムやシートを、予備成形体とする。得られた予備成形体を加熱して、一旦、軟化させた後、一般的な真空成形機を用いて、一定温度に保持された金型内で、真空成形、または、真空圧空成形することにより、成形物を成形することができる。
【0105】
(5)積層体成形においては、上記(1)の押出成形の方法で得たフィルムやシートを他の基材と接着剤や熱でラミネーションする方法や、上記(1)の押出成形の方法と同様の方法でTダイから溶融樹脂を直接、紙、金属、プラスチックなどの基材上へ押出す押出ラミネーション法、本発明の樹脂組成物などを別の押出機で各々溶融し、ダイヘッドで合流させて同時に押出す共押出法、これらを組み合わせた共押出ラミネーションなどの方法で積層成形体を得る事ができる。
【0106】
(6)テープヤーン成形においては、上記(1)の押出成形と同様の方法により成形したフィルムやシートを特定の幅にスリットし、60〜140℃の温度範囲で一軸に熱延伸し、場合によってはさらに80〜160℃の温度範囲で熱固定することで成形物を成形することができる。
【0107】
(7)糸成形においては、押出機を用い150〜240℃の温度で溶融させ紡糸口金から吐出させる溶融紡糸法により糸を得ることができる。所望によっては60〜100℃の温度範囲で一軸に熱延伸し、場合によってはさらに80〜140℃の温度範囲で熱固定することで糸を成形することができる。
【0108】
(8)不織布成形においては、スパンボンド法またはメルトブローン法により成形体を成形することができる。スパンボンド法では、上記(7)の糸成形と同様の方法で、多孔の紡糸口金を通し溶融紡糸し、紡糸口金の下部に設置したエアーサッカを用いて延伸しウェブを形成し、捕集面に堆積させ、さらにこれをエンボスロールと平滑ロールにて圧着、熱融着させることで不織布を得る事ができる。メルトブローン法では、多孔の紡糸口金を通し吐出された溶融樹脂が加熱気体吹出口から吹き出される高速度の加熱気体と接触して微細なファイバーに繊維化され、さらに移動支持体上に堆積されることで不織布を得る事ができる。
【0109】
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、上述した種々の成形加工方法により成形することができ、特に限定されることなく様々な用途に好適に使用することができる。また、これらの成形品は、自動車部品、家電材料部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材および日用品、各種フィルム、通気性フィルムやシート、一般産業用途およびレクリエーション用途に好適な発泡体、糸やテキスタイル、医療または衛生用品などの各種用途に利用することができ、好ましくは帯電防止性が必要とされる家電材料部品、電気・電子材料部品、自動車材料部品に利用することができる。具体的には、家電材料部品用途ではパソコン、携帯電話などの製品の筺体部品への展開、電気・電子部品では、反射材料フィルム・シート、偏光フィルム・シートへの展開が、自動車部品材料では、フロントドア、インパネボックスなどのこれまで樹脂部品が用いられている部品への展開が挙げられる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(表面固有抵抗値)
表面固有抵抗測定は、100mm×100mm×2mmの試験片を23±2℃、50±5%RHに状態調節後、JIS−K6911に準拠して行った。
【0111】
(曲げ弾性率)
厚さ3.2mmの試験片をASTM D−790に準拠して、23℃、スパン間距離50mm、曲げ速度2mm/分の条件で行った。
【0112】
(製造例1)
特開2006−131870号公報の合成例2に従って、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)の末端エポキシ重合体(E−1)を合成し、原料とした。
1H−NMR:δ(C22Cl4)0.88(t,3H、J=6.9sHz)、1.18−1.66(m)、2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz)、2.66(dd,1H、J=4.29,5.28Hz)、2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm):121℃
【0113】
1000mlフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E−1)84g(Mn 1118として75mmol)、ジエタノールアミン39.4g(375mmol)、トルエン150gを仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体をろ取した。その後、室温にて減圧乾燥させることにより、重合体(I−1)(Mn=1223、一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、Y1、Y2の一方が水酸基、他方がビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ基を得た。
1H−NMR:δ(C22Cl4)0.88(t,3H,J=6.6Hz)、0.95−1.92(m)、2.38−2.85(m,5H)
融点(Tm):121℃
【0114】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mlフラスコに、重合体(I−1)20.0g、トルエン100gを仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め0℃まで冷却後、予め5.0gの水に溶解した323mgの85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。
その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水およびトルエンを留去した、さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0115】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0gおよび脱水トルエン200gを仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド18.0gを加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型共重合体(T−1)(Mn=2446、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、X1、X2の一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q1=Q2=エチレン基、X9=X10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H−NMR:δ(C22Cl4)0.88(3H,t,J=6.8Hz)、1.06−1.50(m)、2.80−3.20(m)、3.33−3.72(m)
融点(Tm):116℃
【0116】
(実施例1〜13)
表1に記載の樹脂(ポリスチレンまたはABS)、製造例1で合成したポリマー(帯電防止剤)、相溶化剤(いずれも重量部)を二軸押出機((株)テクノベル社製、KZW−15、スクリュー径15mm、L/D=30、温度220℃、回転数200rpm)にて溶融混練し、樹脂組成物を得た。次に東洋精機(株)製30トン射出成形機にて、シリンダー温度220℃、金型温度70℃の条件で100mm×100mm、厚さ2mmの試験片を得た。JIS−K6911に準拠して表面固有抵抗値を測定した。また、厚さ3.2mmの試験片を作成し、ASTM D−790に準拠して曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例1〜5)
実施例と同様の方法で表2に記載の重量比で実施例と同様の操作を行い、各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
【表1】

樹脂
ポリスチレン:日本ポリスチレン社製、H640N
MFR(200℃、5kg)3.0g/10分
ABS:日本エイアンドアル社製、GA−101
MFR(200℃、5kg)2.6g/10分
相溶化剤C−1:エチレン−メタクリル酸共重合体
ニュクレルN1108C(三井デュポンポリケミカル社製)
酸含量11wt%、MFR(190℃、2.16kg)8g/10分
相溶化剤C−2:エチレン−メタクリル酸共重合体
ニュクレルAN4214C(三井デュポンポリケミカル社製)
酸含量2wt%、MFR(190℃、2.16kg)130g/10分
相溶化剤C−3:ポリエチレン
エボリューSP0520(プライムポリマー社製)
MFR(190℃、2.16kg)3.8g/10分
相溶化剤C−4:スチレン−エチレンブテン−スチレン(SEBS)
タフテックH1043(旭化成社製)
スチレン含量67wt%、MFR(190℃、2.16kg)2g/10分
相溶化剤C−5:スチレン−メタクリル酸共重合体
リューレックスA−14(DIC社製)
酸含量10wt%、MFR(230℃、3.8kg)1.7g/10分
【0119】
【表2】

ポリマー1:ペレスタットN6321(三洋化成社製、ポリアミドブロックと親水性ポリマーブロックからなるブロック共重合体)
MFR(215℃、2.16kg)20g/10分
【0120】
上記表1より、実施例の組成物は、表面固有抵抗値が低く、すなわち帯電防止性能に優れていることがわかった。また比較例1と3、2と4とを対比すれば帯電防止剤を配合しただけにくらべて、表面固有抵抗値は、102〜103オーダーさらに低減させることができる。そして、実施例のように特定量の相溶化剤と組合わせることで、表面固有抵抗値を1010Ω前後のレベルにまで低下させることが可能となる。また曲げ弾性率の著しい低下もなく十分な機械的特性も有している。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の熱可塑性樹脂、帯電防止剤、相溶化剤からなる樹脂組成物およびその成形体は従来よりも帯電防止剤の添加量が少なくなる上で有用である。また、帯電防止性を有する。
本発明の成形品は、本発明の帯電防止性樹脂組成物を用いて得られるので、良好な帯電防止性を発現しつつ、熱可塑性樹脂本来の有する曲げ弾性率、引張降伏点強度等の機械物性を得ることが可能である。また、帯電防止性能は半永久的であるとともに、従来よりも帯電防止剤の添加量が少なくなる上で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂(A)80〜99.8重量部、
帯電防止剤として、下記一般式(1)で表される末端分岐型共重合体(B)0.1〜10重量部、および、
【化1】

(式中、Aは炭素数2〜20のオレフィンの重合した数平均分子量が400〜1500の基、R1及びR2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、X1およびX2は、同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜1800のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)
相溶化剤として、(c-1)ポリオレフィンあるいは(c-2)α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとオレフィンとの共重合体、(c-3)α、β−不飽和カルボン酸またはそのエステルとスチレンとの共重合体、(c-4)ポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体、から選ばれる1種以上(C)0.1〜10重量部
(ただし(A)と(B)と(C)の合計量を100重量部とする)
を含有する帯電防止性樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1およびX2が、同一または相異なり、一般式(2)または(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、X3はポリアルキレングリコール基、または
【化3】

(式中、R3はm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX4、−NX56(X4〜X6はポリアルキレングリコール基を表す)で表される基を表し、mはGの結合数であり1〜10の整数を表す)で表される基を表す)
【化4】

(式中、X7、X8は同一または異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す)で表される基である。また、X7、X8のいずれか一方は水素または炭素数1〜20のアルキル基であってもよい。
【請求項3】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1またはX2のどちらかの一方が下記一般式(5)
【化5】

(式中、X9、X10は同一または相異なり、それぞれポリアルキレングリコール基を表し、Q1、Q2は同一または相異なり、それぞれ2価のアルキレン基を表す)である請求項1または2に記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、X1、X2の少なくともいずれか一方が、一般式(6)
【化6】

(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す)である請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1記載のポリオレフィンがポリエチレン、エチレンとC3〜C20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルとの共重合体から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載のポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体がスチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またはそのエステルを含有するスチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、α、β−不飽和カルボン酸または酸無水物またそのエステルを含有するスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選ばれる1種以上からなる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物からなる帯電防止性成形体。

【公開番号】特開2011−184655(P2011−184655A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54438(P2010−54438)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】