説明

幅木

【課題】壁面の下端部を見栄えよく見切り施工できるとともに、床面を照明できる照明機能を有する幅木を提供することである。
【解決手段】壁面Wに沿って取着されるボディ部1とカバー部2とからなる幅木Aであって、該カバー部2は上記ボディ部1の上端面に回動自在に支持される天面21とこの天面21に連接して垂下する垂下片22とから形成されるとともに、上記垂下片22の内面に延設された係合部がボディ部1に延設された係合受け部に係合することにより幅木内部に収納空間5、6を形成し、この収納空間5に照明装置7が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は幅木に関する。さらに詳しくは、ボディ部とこのボディ部に回動自在に支持され、上記ボディ部を覆うカバー部とからなる幅木の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、一般住宅、病院、オフィス等の室内や廊下等において床面の長手方向と壁面との取り合いは幅木によって見切り施工される。従来、この幅木としては、主として見栄え上の問題あるいは椅子やテーブル等の家具や車椅子の車輪等の接触から壁面を保護する等の目的から、一般的に合板等の木質系材料、アルミニウム等の金属板、硬質プラスチック、あるいはこれらを複合させた各種材料を板状に加工し、表面化粧したものが使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、上述した本来の見切り施工に加えて幅木にさらに他の機能を付与して見切り空間を有効に利用する試みがなされている。
【0004】
例えば、実開平2−114318号公報には、カバー本体の下端縁と床面との間に適宜な間隔を保って幅木本体の前部側に内部を開放するカバーを開閉自在に装備し、その幅木本体の内部に電気プラグを長手方向に沿って配置したワイヤー状の導体と接触させてスライド移動可能に備え付け、電気プラグに連結するコードをカバーの下側から引き出し可能にした幅木が提案されている。
【0005】
上記のように構成した幅木を使用することにより、その効果として、幅木本体の前部側を簡単に開閉可能なカバーで開閉できるため、電気プラグを幅木本体の長手方向に沿ってスライド移動させ、または電気プラグにコンセントを差し込み、あるいは電話線やテレビのアンテナ線等を内部に導通するときでも容易に作業できると述べられている。
【0006】
そればかりでなく、それらを幅木本体の内部にすべて収容させて装備でき、かつそれらのコードをカバーの下側から外部に引き出すことができるため、カバーを途中で切断する必要がないので見栄えを良好に保ってしかも電気プラグで感電するような事態を防止できるとの効果が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−114318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実開2−114318号公報記載に係る幅木においては、その第2図に示されているように、上記幅木を構成するカバー本体の下端縁と床面との間には隙間Hが設けられている。この隙間Hは指を差し入れカバーを開閉するとともに、コンセントのリード線の引き出し口ともなっている。
【0009】
しかしながら、上記隙間Hが存在することによって、チリやほこりが幅木内部に侵入し易く、幅木内部を清潔に保つためには、常に清掃する必要がある。たとえ、頻繁に清掃を行ったとしても、知らぬ間に、電気プラグとコンセントとの間に綿ほこりが蓄積され、それが湿気を帯びた場合には漏電することがあり、火災の原因ともなる。
【0010】
本願発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記したような危険性を排除し、壁面の下端部を見栄えよく見切り施工できるとともに、床面を照明できる照明機能を有する幅木を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る幅木は、壁面に沿って取着されるボディ部とカバー部とからなり、該カバー部は上記ボディ部の上端面に回動自在に支持される天面とこの天面に連接して垂下する垂下片とから形成されるとともに、上記垂下片の内面に延設された係合部がボディ部に延設された係合受け部に係合することにより幅木内部に収納空間を形成し、この収納空間に照明装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
上記照明装置としては、特に限定されるものではないが、低電力で高い照明能力を発揮するLEDが好ましく用いられる。また、照明装置以外にも各種機能を付与することが可能であり、例えば、上記照明装置に替えて芳香剤カートリッジを装着して、室内に香りを拡散させるようにしてもよい。さらに、収納空間を区切って設け、他の収納空間に電話線やテレビのアンテナ線、パソコン用の光ファイバー等の配線類等を収納してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1記載の発明に係る幅木においては、ボディ部とこのボディ部の上端面に回動自在に支持されるカバー部とからなり、このカバー部は天面とこの天面に連接して垂下する垂下片とから形成されているため、カバー部を閉じたとき、内部に収納空間を形成することができる。
【0014】
そして、この収納空間に照明装置を設け、垂下片に導光部を内設することにより、見切り部を構成する幅木本来の機能に加えて、夜間に床面を照明する常夜灯として用いられる。あるいは、緑色に着色して非常時の誘導灯、さらに、ショールーム等で所望の色に着色して装飾用としても用いることができる。
【0015】
さらに、収納空間を区切って設け、他の収納空間に電話線やテレビのアンテナ線、パソコン用の光ファイバー等の配線類等を収納することもできる。
【0016】
また、上記垂下片の内面に係合部を延設し、この係合部を受ける係合受け部がボディ部に延設されているため、例えば係合部を嵌合凸部とし、係合受け部を嵌合凹部とすることによって、カバー部は凹凸嵌合によって開閉自在、かつしっかりと閉じることができる。さらに、上記嵌合凸部と嵌合凹部とからなる凹凸嵌合部を上記収納空間の仕切り部とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本願発明のボディ部とカバー部からなる幅木を示す側断面説明図、(b)は上記カバー部を回動して閉じ、上記垂下片に付設された弾性片を床面に当接させた状態を示す側断面説明図。
【図2】(a)は上記カバー部の内面で天面と中央嵌合係合部とで形成される収納空間に照明装置を設置した状態を示す側断面説明図、(b)は上記カバー部の内面で天面と中央嵌合係合部とで形成される収納空間に芳香剤カートリッジを設置した状態を示す側断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明に係る幅木の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、本願発明のボディ部1とカバー部2とからなる幅木Aを示す側断面説明図である。図示するように、上記ボディ部1はタッピングビスTで壁面Wに固定されるとともに、上記カバー部2の天面21はボディ部1の上端面に公知の回動軸、例えばヒンジHによって回動自在に結合され、この天面21に連接して垂下片22が垂設されている。
【0019】
この垂下片22の下端部の床面Fとの当接面には弾性を有する軟質材料から形成された弾性片221が付設されている。また、上記垂下片22には後記する導光部222が内設されている。さらに、上記垂下片22おいて、その内面の略中央部と略下端部には係合部としての中央嵌合凸部31と下部嵌合凸部32とがカバー部2の長手方向に延設されている。
【0020】
また、上記ボディ部1には、上記中央嵌合凸部31と下部嵌合凸部32に対応する位置に係合受け部としての中央嵌合凹部41と下部嵌合凹部42とがボディ部1の長手方向に延設されている。
【0021】
図1(b)は、上記カバー部2を回動して閉じ、上記垂下片22に付設された弾性片221を床面Fに当接させた状態を示す側断面説明図である。図示するように、上記カバー部2を回動して中央嵌合凸部31と中央嵌合凹部41とを嵌合係合し、下部嵌合凸部32と下部嵌合凹部42とを嵌合係合することによって、本願発明に係る幅木Aとすることができる。
【0022】
このとき、上記幅木Aは、床面Fに見切りを形成するとともに、内部には中央嵌合係合部fと下部嵌合係合部gとによって区切られて収納空間5および収納空間6が形成される。
【0023】
上記ボディ部1とカバー部2とを構成する材料としては、一般的に合成樹脂製のものが用いられる。例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等公知の熱可塑性樹脂の成形品をあげることができる。
【0024】
上記カバー部2の垂下片22の下端に付設される弾性片221としては、例えば、軟質ポリウレタン、合成ゴム、天然ゴム等の軟質の弾性材料を帯状に形成したものが用いられ、この弾性片221と上記垂下片22の下端面とは、熱硬化性樹脂系の接着剤による接着等の手段によって複合一体化されている。このようにすることにより、カバー部2と床面Fとの間に隙間がなく弾性片221がぴったりと当接するため、幅木Aの内部にチリやほこりが侵入することを防げる。また、床面Fの不陸を吸収して幅木Aの直線性を保ち、見栄えよく見切り部を形成することができる。
【0025】
図2(a)は、上記カバー部2の内面で天面21と中央嵌合係合部fとで形成される収納空間5に照明装置7、例えばLEDを設置した状態を示す側断面説明図である。ここで、中央嵌合係合部fと下部嵌合係合部gとで形成される収納空間6には電線や電話線等が通る配線8が収納されている。
【0026】
上記LEDはボディ部1に取り付けられ、電源線は壁面Wの内部に埋設されている。また、LEDのオン・オフ動作は図示しないセンサによって自動的に動作し、周囲が暗くなるとセンサが感知して自動的に点灯し、明るくなると消灯する。
【0027】
上記したLEDからの光はカバー部2の垂下片22に内設された導光部222から外部に照射される。上記導光部222は透明または半透明の材料、例えばポリスチレン、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン・ポリアクリル共重合体樹脂等から形成され、着色して用いてもよい。
【0028】
上記導光部222は、白色、昼光色等に着色して夜間に床面を照明する常夜灯として用いられる。あるいは、赤色、オレンジ色等の警戒色に着色し、使用者の注意を喚起するようにしてもよい。また、緑色に着色して非常時の誘導灯としてもよい。さらに、ショールーム等で所望の色に着色して装飾用として用いてもよい。
【0029】
図2(b)は、上記カバー部2の内面で天面21と中央嵌合係合部fとで形成される収納空間5に芳香剤カートリッジ9を設置した状態を示す側断面説明図である。ここで、図2(a)と同様に、中央嵌合係合部fと下部嵌合係合部gとで形成される収納空間6は電線や電話線等が通る配線8を収納する空間とされている。
【0030】
このとき、上記収納空間6には、電線や電話線等の配線8に替えて上記芳香剤カートリッジ9に送風する送風装置を設けてもよい。このように、収納空間6から送風することによって、通気部223から室内に芳香を十分に拡散させることができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、カバー部2の天面21はボディ部1の上端面にヒンジ結合Hによって回動自在に支持されているが、ボディ部1とカバー部2とを一体的に形成し、両者の接合部をフィルム状に薄く形成して、屈曲自在としてもよい。さらに、ボディ部1を壁面WにタッピングビスTで固定する方法に替えて接着剤で接着してもよい。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
A 本願発明に係る幅木
F 床面
W 壁面
H ヒンジ
T タッピングビス
f 中央嵌合係合部
g 下部嵌合係合部
1 ボディ部
2 カバー部
21 天面
22 垂下片
221 弾性片
222 導光部
223 通気部
31 中央嵌合凸部
32 下部嵌合凸部
41 中央嵌合凹部
42 下部嵌合凹部
5 収納空間
6 収納空間
7 照明装置
8 配線
9 芳香剤カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って取着されるボディ部とカバー部とからなる幅木であって、該カバー部は上記ボディ部の上端面に回動自在に支持される天面とこの天面に連接して垂下する垂下片とから形成されるとともに、上記垂下片の内面に延設された係合部がボディ部に延設された係合受け部に係合することにより幅木内部に収納空間を形成し、この収納空間に照明装置が設けられた幅木。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−87605(P2013−87605A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232400(P2011−232400)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)