説明

干果製造用吊り具

【課題】果実を容易で確実に装着できるとともに、製造過程で果実を紐体等で傷付ける虞のない干果製造用吊り具を提供する。
【解決手段】垂下された紐体に取り付けられて果物等を吊す干果製造用吊り具であって、前記果物等のヘタより伸びる果梗の挿入可能な開口部と、該開口部に連設され、対向する延設開口縁部が先端に向かって互いに接近するよう形成されて前記果梗を係止する長溝と、該長溝の外側に配設され、前記果実の一部に当接して保持する保持部とから構成され、前記開口部、長溝、保持部はそれぞれ前記紐体を含む基準面から隆起した部位に形成されたので、果実を容易で確実に装着できるとともに、製造過程で果実を紐体等で傷付ける虞がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、干果を製造するために使用される吊り具に関し、特に干し柿を製造する干果製造用吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
干し柿は、柿の皮を剥いた後、自然乾燥の場合、ビニールハウス等内にのれん状に吊り下げ、長期間天日で乾燥しなければならず、多数の柿を効率的に吊り下げる手段が要望されている。また、乾燥過程における柿のヘタ根本の変色(黒ずみ)の解消、柿と紐体との接触、柿と吊り具との接触量を減少させて干し柿の品質を向上させたい等の要望が存在した。
例えば、従来の干果製造用吊り具は、図9に示すように、垂設された柿なり軸誘導口フレーム1とその下部に水平、あるいはそれに近い角度で一体成型されたV字溝フレーム2から成り、前記柿なり軸誘導口フレーム1の上部に紐はさみ部3を下部に柿なり軸誘導口4を大きく開口形成し、前記V字溝フレーム2には、歯部5を有したV字溝6が設けられたものが提案されていた。このような構成の干果製造用吊り具は、柿なり軸誘導口4からV字溝6へ果梗を挿入して固定した後、紐はさみ部3を紐に掛けて乾燥するものできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−199855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図9に示すような従来の干果製造用吊り具は、重力方向と同じ方向で果実を保持するため、ヘタに全自重が掛かり果実のなり軸周辺からもげ落ちる虞があった。また、紐を横に張り渡し、適宜間隔に紐はさみ部3を掛け果実を吊り下げるので、作業性が悪いものであった。更に、果実が自重で変形し易く、果実のなり軸の付け根内側が変色すると云う欠点が存在した。
また、果実をクリップ等に取り付け、垂直に垂らした紐に取り付ける形式のものでは、果実が自重により変形し易い上に、果肉が紐に食い込み易く干し柿等の品質を劣化させることがあった。
【0005】
この発明は、上記したような不都合を解消するためになされたもので、果梗(果実のなり軸)の挿入可能な開口部と、開口部に連設され果梗を係止する2段階に変化するV字状長溝と、長溝の外側に配設され、果実の一部に当接して保持する保持部とから構成され、前記開口部、長溝、保持部を紐体を含む基準面から立体的に隆起した部位に形成して、果実の自重による変形量を低減し、紐体による損傷、果実の落下、果梗の付け根内側の変色を防止することのできる干果製造用吊り具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下のような内容である。
(1)本発明の干果製造用吊り具は、垂下された紐体に取り付けられて果物等を吊す干果製造用吊り具であって、前記果物等のヘタより伸びる果梗の挿入可能な開口部と、該開口部に連設され、対向する延設開口縁部が先端に向かって互いに接近するよう形成されて前記果梗を係止する長溝と、該長溝の外側に配設され、前記果実の一部に当接して保持する保持部とから構成され、前記開口部、長溝、保持部はそれぞれ前記紐体を含む基準面から隆起した部位に形成されたことを特徴とする。
(2)(1)に記載の干果製造用吊り具において、前記開口部は、前記紐体を含む基準面から凸状に隆起した立体形状の頂部に設けられたことを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の干果製造用吊り具において、前記長溝の先端は、前記紐体の軸線から離れる方向に形成されたことを特徴とする。
(4)(1)〜(3)に記載の干果製造用吊り具において、前記保持部は、前記長溝の外側に少なくとも一つ設けられたことを特徴とする。
(5)(1)〜(4)に記載の干果製造用吊り具において、前記保持部は、平面状に形成されたことを特徴とする。
(6)(1)〜(5)に記載の干果製造用吊り具において、前記紐体と干果製造用吊り具とが接する上端から下端までの長さは、前記長溝の先端が前記紐体の軸線から離れる最大距離より長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、垂下された紐体に取り付けられて果物等を吊す干果製造用吊り具であって、前記果物等のヘタより伸びる果梗の挿入可能な開口部と、該開口部に連設され、対向する延設開口縁部が先端に向かって互いに接近するよう形成されて前記果梗を係止する長溝と、該長溝の外側に配設され、前記果実の一部に当接して保持する保持部とから構成され、前記開口部、長溝、保持部はそれぞれ前記紐体を含む基準面から隆起した部位に形成されたので、果実を安定して保持でき、乾燥工程中に紐体等で損傷を与えたり、果実の落下や果梗の付け根内側の変色を防止でき、品質の向上が図れる。また、干果製造用吊り具自体が立体的に構成されているので、収納時や使用時に絡み合う虞もなく作業の能率向上が図れる。
また、前記開口部は、前記紐体を含む基準面から凸状に隆起した立体形状の頂部に設けられたので、紐から最大限離隔した位置から果梗を長溝に挿入でき、紐体が果実表面に触れることなく、乾燥中に食い込む虞がない。
また、前記長溝の先端は、前記紐体の軸線から離れる方向に形成されたので、製造工程において紐体が果実に食い込まない。
また、前記保持部は、前記長溝の外側に少なくとも一つ設けられたので、果梗と保持部で果実を安定保持することができる。したがって、落下の虞もない。
また、前記保持部は、平面状に形成されたので、果実を平面で安定して保持することができる。
また、前記紐体と干果製造用吊り具とが接する上端から下端までの長さは、前記長溝の先端が前記紐体の軸線から離れる最大距離より長いので、果実の自重により、紐体に対して干果製造用吊り具が回動する量を低減することができる。したがって、製造工程において紐体が果実に食い込むのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態である干果製造用吊り具の背面図である。
【図2】図2は、同干果製造用吊り具の拡大正面図である。
【図3】図3は、同干果製造用吊り具の拡大左側面図である。
【図4】図4は、同干果製造用吊り具の拡大平面図である。
【図5】図5は、図1に示す干果製造用吊り具のA−A線拡大断面図である。
【図6】図6は、図1に示す干果製造用吊り具のB−B線拡大断面図である。
【図7】図7は、図2に示す干果製造用吊り具のC−C線拡大断面図である。
【図8】図8は、同干果製造用吊り具の使用状態を示す説明図である。
【図9】図9は、従来の干果製造用吊り具の一例を示す斜視図である。
【実施例1】
【0009】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である干果製造用吊り具の背面図、図2は本発明の干果製造用吊り具の拡大正面図、図3は本発明の干果製造用吊り具の拡大左側面図である。ここで、本発明の干果製造用吊り具10は、垂下された紐体11に取り付けられて果物等を吊すものであって、果物等のヘタより伸びる果梗の挿入可能な開口部12と、開口部12に連設され、対向する延設開口縁部13aが先端に向かって互いに接近するよう形成されて前記果梗を係止する長溝13と、長溝13の外側に配設され、果実の一部に当接して保持する保持部14とから構成され、開口部12、長溝13、保持部14はそれぞれ紐体11を含む基準面Lから隆起した部位に形成されている。この様に果実の取り付け部位を紐体11から遠ざける事で、保持部14及び紐体11と果肉の接触量を減らすことができる。
【0010】
紐体11は、本実施の形態では、干果製造用吊り具10に取付部15で固着されている。また、取付部15の長さM、つまり、紐体11と干果製造用吊り具10とが接する上端15aから下端15bまでの長さMは、紐体の軸線に対して角度θの鋭角に傾斜して形成された長溝13の先端13bが紐体11の軸線から離れる最大距離Nより長く形成されている。この様に構成することで、果実を取り付けた際に、干果製造用吊り具10が紐体11に対して必要以上に回動するのを防止できる。更に、干果製造用吊り具10に果実を取り付けた際、紐体11が果実から離れる方向に湾曲し、果肉との接触量を減らすことができる。
【0011】
開口部12は、略円形に形成されていおり、紐体11を含む基準面Lから凸状に隆起した立体形状の頂部に設けられている。つまり、干果製造用吊り具10は、果実の取り付け側が凸に湾曲している。基準面Lは、図3において紙面に対して垂直で且つ紐体11を含む面である。
【0012】
長溝13は、開口部12の一部から連設され、対向する延設開口縁部13aが先端に向かって互いに接近するよう、テーパー(V字)状に開設されている。また、長溝13は、開口部12に接続する第1の溝部131とそれに続く先端部の第2の溝部132とから構成されている。第1の溝部131は、V字溝の角度が大きく、第2の溝部132はV字溝の角度が小さく形成されている。このように構成することで、果梗16を開口部12から第2の溝部132まで導く際に円滑に作業することができる。
更に、図6、図7に示すように長溝13の延設開口縁部13aの断面形状も、先尖りのテーパー状に形成されている。このように形成することにより、係止する果実の果梗を確実に保持できる。
【0013】
保持部14は、図2等に示すように本実施の形態では長溝13の両側に平面状に形成され、果実の一部に当接して保持する。また、図3から明らかな様に紐体11を含む基準面Lから隆起した部位に形成されるとともに、基準面Lに対して例えば、28.8度の鋭角に配設されている。また、隆起の反対側の傾斜は、基準面Lに対して例えば、46.2度に形成されている。この傾斜角度は、一実施例であり、他の傾斜角度であってもよい。この様に、保持部14が傾斜しているので、果実の自重による変形量を減らすことができる。
【0014】
次に、以上のように構成された干果製造用吊り具10の使用態様を図8に従って説明する。皮を剥いた柿の果梗16を干果製造用吊り具10の開口部12から挿入した後、長溝13に沿って係止される位置まで前進させる。この時、長溝13は、開口部12に接続するV字角度の大きい第1の溝部131とそれに続くV字角度の小さい第2の溝部132とから構成されているので、果梗16を開口部12から挿入して長溝13で係止する作業を円滑にして作業効率の向上を図ることができる。
また、柿が果梗16の径と略等しい延設開口縁部13aの間隔位置で係止される際、延設開口縁部13aは、先尖りのテーパー状に形成されているので、果梗16を狭い方へ引き込むと果梗表面に食い込み確実に保持できる。また、柿の一部またはへたが平面状の保持部14に当接して柿本体を安定して保持することができる。また、長溝13は、紐体の軸線に対して角度θの鋭角に傾斜して形成されるとともに、長溝13、保持部14はそれぞれ紐体11を含む基準面Lから隆起した部位に形成されているので、柿本体が自重で変形しても、紐体11との接触量を低減することができる。したがって、紐体11による製造過程における干し柿への傷付きを防止できる。更に、柿本体の自重による変形量が減少したためにヘタと果肉間の通気性が向上し、果梗の付け根内側の変色(黒ずみ)を防止することができる。
【0015】
紐体11に複数個取り付けられた干果製造用吊り具10に皮を剥いた柿を取り付けたものを、暖簾状にしてビニールハウス内に吊して天日乾燥或いは乾燥室で人工乾燥する。乾燥の終了した干し柿を取り外す作業も長溝13から引き抜くだけで良く、作業の効率化が図れる。
【0016】
以上の実施例では、基準面Lから隆起した部位の基準面Lに対する角度を28.8度の鋭角にし、隆起の反対側の傾斜傾斜を46.2度に形成する例について説明したが、他の傾斜角度に設定してもよい。また、干果製造用吊り具と紐体との固着は、干果製造用吊り具を射出成型する際に一体的に製造することができる。更に、本発明は上述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0017】
L 基準面
10 干果製造用吊り具
11 紐体
12 開口部
13 長溝
13a 延設開口縁部
13b 先端
14 保持部
15 取付部
15a 上端
15b 下端
16 果梗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂下された紐体に取り付けられて果物等を吊す干果製造用吊り具であって、
前記果物等のヘタより伸びる果梗の挿入可能な開口部と、該開口部に連設され、対向する延設開口縁部が先端に向かって互いに接近するよう形成されて前記果梗を係止する長溝と、該長溝の外側に配設され、前記果実の一部に当接して保持する保持部とから構成され、前記開口部、長溝、保持部はそれぞれ前記紐体を含む基準面から隆起した部位に形成されたことを特徴とする干果製造用吊り具。
【請求項2】
前記開口部は、前記紐体を含む基準面から凸状に隆起した立体形状の頂部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の干果製造用吊り具。
【請求項3】
前記長溝の先端は、前記紐体の軸線から離れる方向に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の干果製造用吊り具。
【請求項4】
前記保持部は、前記長溝の外側に少なくとも一つ設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の干果製造用吊り具。
【請求項5】
前記保持部は、平面状に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の干果製造用吊り具。
【請求項6】
前記紐体と干果製造用吊り具とが接する上端から下端までの長さは、前記長溝の先端が前記紐体の軸線から離れる最大距離より長いことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の干果製造用吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178999(P2012−178999A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43525(P2011−43525)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】