説明

干渉フィルターを用いた光部品

【課題】反射戻り光が発生し難い干渉フィルターを用いた光部品を、より安価に提供する。
【解決手段】光軸5の延長方向を前後方向として、干渉フィルター3の前方と後方に第1と第2のコリメーターレンズ(51,52)が配置され、前方から光軸に沿う光Linが入力されると所定波長帯域の光Loutを後方へ出力し、干渉フィルターは、前後両端が開口する中空筒状の筐体2a内に、光軸に対して斜めとなるように配置され、筐体内部に、干渉フィルター収納部21と、前方および後方の開口(24,25)からフィルター収納部まで開口の形状を維持しつつ延長する管状の第1および第2の光通路部(22,23)を備え、第1および第2のコリメーターレンズは、筐体の前方および後方のそれぞれの開口に対面し、前方から見たときに、第1のコリメーターレンズの見かけ径φ2に対し、前方の第1の光通路部の開口の径φ1が縮径されている光部品1aとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、干渉フィルターを用いた光部品に関する。具体的には、干渉フィルターを用いた光部品における迷光対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のごとく、干渉フィルターは、ガラス基板上に誘電体薄膜を形成して特定の波長帯域の光を透過し、他の帯域の光を反射する。この干渉フィルターは、例えば、光通信システムを構成する光部品に組み込まれ、光通信に要する波長帯の光とその波長帯以外の光(ノイズなど)とを分離する用途などに供される。図1に、干渉フィルター3を用いた従来の光部品(従来例)1の構造を示した。図1(A)は、光部品1を光軸5を含む面で切断したときの断面図であり、図1(B)は、(A)における円内を拡大した図である。この従来例に係る光部品1は、光軸5上に、フェルール(61,62)に保持された2本の光ファイバー(41,42)が、それぞれの開口端(43,44)が互いに対向するように配置されて、この対向する開口端(43,44)間を光路としている。そして、一方の光ファイバー41に入射された光(入力光)Linを、他方の光ファイバー42から出力光Loutとして出射する構成となっている。
【0003】
光軸5の延長方向を前後方向とすると、干渉フィルター3は、前後の光ファイバー(41,42)の開口端(43,44)間の前後中央付近に配置され、その干渉フィルター3の前後にそれぞれコリメーターレンズ(51,52)が配置されている。また、図示した従来例に係る光部品1では、干渉フィルター3を収納した筐体2の前後に、光ファイバー(41,42)を保持したフェルール(61,52)とコリメーターレンズ(51,52)を筐体(31,32)に収納してなるコリメーター(33,34)を連結した構造となっている。
【0004】
ここで、従来例の光部品1の動作を図1に基づいて説明する。なお、図中では、入力側の光ファイバー41から干渉フィルター3に向かう光路(往路)と、干渉フィルター3から入力側の光ファイバー41に向かう光路(復路)が容易に識別できるように、光軸5に対して対称となる光路の一方のみを示している。そして、従来例の光部品1では、まず、光源から入力側(前方)の光ファイバー41に入射された入力光Linが同じ光ファイバー41の開口端(後端)43から出射されると、その出射光が前方のコリメーターレンズ51を介して平行光L1として干渉フィルター3に入射し、干渉フィルター3がこの入射光L1のうち、特定の波長帯域の光のみを後方へ透過させる。透過光L2は、後方のコリメーターレンズ52を介して出力側(後方)の光ファイバー42の開口端(前端)44に結合する。そして、干渉フィルター3にて透過されなかった光L3は、反射される。なお、ここに示した従来例のように光の入力側から出力側までの光路が直線上にある光部品1では、この干渉フィルター3における反射光L3が入力側のコリメーターレンズ51に直接入射して、入力側の光ファイバー41に結合しないように、干渉フィルター3における光の入射面の法線4を光軸5に対して2゜〜5゜程度傾かせ、干渉フィルター3における反射光L3が筐体2の内面で吸収させるようにしている。
【0005】
ところで、干渉フィルター3によって反射された光L3は、筐体2の内面に向かうことになるが、この反射光L3は、筐体2の内面で完全に吸収されず、その一部が筐体2の内面で反射する。しかも、筐体2の内面が鏡面でないため、干渉フィルター3からの反射光L3が筐体2の内面で正反射せず、図示したように散乱する。そして、その散乱光L4が筐体2の内面でさらに反射と散乱を繰り返す、所謂「迷光」が発生する。なお、迷光は、筐体2内面での散乱に際し、エネルギーの多くは吸収されて熱に変換されるため、最終的には、消滅する。しかし、干渉フィルター3にて反射した光L3が最初に筐体2の内面で散乱したときの光L4の一部L5が、ちょうど干渉フィルター3による反射光L3と一致する光路を逆に辿る場合がある。このような場合、その散乱光L4の一部L5は、入力側の光ファイバー41から出射した光L1が干渉フィルター3にて反射するまでの経路を逆行し、入力側の光ファイバー41に再結合する「反射戻り光」L6となる。
【0006】
そして、その反射戻り光L6が入力側の光ファイバー41を光源方向に向かって伝搬し、光源に至る可能性がある。光通信では、光源として半導体レーザー素子を用いており、その半導体レーザーの発光部に逆戻り光が入射すれば、半導体レーザーの発振特性が変化し、出力が不安定になり、光通信品質が劣化する。この劣化の度合いの指標が周知の反射減衰量であり、その測定方法については以下の非特許文献1などに記載されている。
【0007】
なお、光部品における迷光対策については、以下の特許文献1〜3に記載されている。特許文献1に記載の発明では、干渉フィルターにて反射された光の一部が光の出力側にある受光素子に入射してクロストークが発生するのを防止するために、筐体内に、干渉フィルターの反射光の広がりよりも大きく開口しつつ、奥行き方向に徐々に縮径する錐穴を設け、その錐穴の内面で反射光を反射させて、受光素子に至る光路を辿らないようにしている。また、特許文献2や3には、筐体内面に迷光を吸収するための素材を使用した光部品について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−57859号公報
【特許文献2】特開特開2009−20540号公報
【特許文献3】特開特開2007−17903号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】アジレント・テクノロジー株式会社、”Agilent 81610Aシリーズ・リターン・ロス・モジュールを使用したリターン・ロス測定”、[online]、[平成23年11月4日検索]、インターネット<URL:http://www.home.agilent.com/upload/cmc_upload/All/5988-3435JA.pdf?&cc=JP&lc=jpn>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
引用文献1〜3に記載された光部品では、迷光対策として、干渉フィルターが収納された筐体の内面に、光吸収材を被膜したり、錐穴を穿設したりするなど、何らかの加工を施している。そのため、製造コストが増加する。また、筐体は、射出成形などによって光部品の筐体を一体成形するような場合では、その筐体の内面に光吸収材を塗布したり、錐穴を穿設したりするための加工技術自体が複雑となる。
【0011】
そこで本発明は、反射戻り光が発生し難い干渉フィルターを用いた光部品を、より安価に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、光軸の延長方向を前後方向として、干渉フィルターの前方および後方に、それぞれ第1および第2のコリメーターレンズが配置された光部品であって、
前方から前記光軸に沿う光が入力された際、所定の波長帯域の光を後方へ出力し、
前記干渉フィルターは、前後両端が開口する中空筒状の筐体内に、前記光軸に対して斜めとなるように配置されて、
前記筐体は、内部に、前記干渉フィルターを収納するフィルター収納部と、前方および後方の前記開口から当該フィルター収納部まで前記開口の形状を維持しつつ前後方向に延長する管状の第1の光通路部および第2の光通路部を備え、
前記第1および第2のコリメーターレンズは、前記筐体の前方および後方のそれぞれの開口に対面して配置され、
前方から見たときに、前方の前記第1の光通路部の前記開口の径が、前記第1のコリメーターレンズの見かけ径に対し縮径されている、
ことを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品としている。
【0013】
また、後方から見たときに、後方の前記第2の光通路部の前記開口の径が、前記第2のコリメーターレンズの見かけ径に対し縮径されて、後方から前記光軸に沿う光が入力された際、所定の波長領域の光を前方へ出力する、干渉フィルターを備えた光部品とすることもできる。
【0014】
前記フィルター収納部の形状は、前記干渉フィルターにおいて、入力された光の反射方向が前記光通路部の内部に向かうように形成されていてもよい。
【0015】
前記筐体の前端および後端に、それぞれ、フェルールに保持された光ファイバーと前記第1のコリメーターレンズが保持された第1の光ファイバー・コリメーター、およびフェルールに保持された第2の光ファイバーと前記第2のコリメーターレンズが保持された第2の光ファイバー・コリメーターとが連結されている干渉フィルターを備えた光部品も本発明の範囲であり、前記フェルールが、透明なガラスで形成されている干渉フィルターを備えた光部品であれば、より好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反射戻り光が発生し難い干渉フィルターを用いた光部品を、より安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来例に係る光部品の構造と動作状態を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る光部品の構造と動作状態を示す図である。
【図3】上記実施例に係る光部品におけるその他の動作状態を示す図である。
【図4】比較例に係る光部品の構造と動作状態を示す図である。
【図5】上記従来例に係る光部品と上記実施例に係る光部品のそれぞれにおける反射減衰量特性を示す図である。
【図6】上記実施例の光部品を構成する干渉フィルターの傾斜角度と動作状態との関係を示す図である。
【図7】本発明のその他の実施例に係る光部品の構造と動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
===光部品の構造と基本的な動作===
図2に本発明の一実施例に係る光部品1aの構造を示した。図2(A)は、光部品1aを光軸5を含む面で切断したときの断面図であり、(B)は(A)における円内を拡大した図である。そして、実施例に係る光部品1aは、図1に示した従来例に係る光部品1と同様に、光軸5上に、フェルール(61,62)に保持された2本の光ファイバー(41,42)が、それぞれの開口端(43,44)が互いに対向するように配置され、この対向する開口端(43,44)間を光路としている。そして、一方の光ファイバー41に入射された光(入力光)Linを、他方の光ファイバー42から出力光Loutとして出射する。なお、図中では、光路の往路と復路が分かりやすいように、光軸5に対して一方の光路のみを示している。
【0019】
光部品1aは、光軸5の延長方向を前後方向とすると、干渉フィルター3は、前後の光ファイバー(41,42)の開口端(43,44)間の前後中央付近に配置され、その干渉フィルター3の前後にそれぞれコリメーターレンズ(51,52)が配置された構造を基本とし、例示した光部品1aでは、干渉フィルター3を収納した筐体(以下、フィルターケース)2aの前後に、光ファイバー(41,42)を保持したフェルール(61,62)とコリメーターレンズ(51,52)を筐体(31,32)に収納してなるコリメーター(33,34)を連結した構造となっている。そして、ここまでの構成や構造、動作は、図1に示した従来例と同様である。しかし、本実施例に係る光部品1aでは、干渉フィルター3を収納する筐体(以下、フィルターケース)2aの構造と、そのフィルターケース2aの内部構造とコリメーターレンズ(51,52)の見かけ径φ2との寸法上の関係とに特徴を有して、迷光に起因する反射戻り光の発生を防止することが可能となっている。以下に、本実施例に係る光部品1aの構成や構造をより具体的に説明する。
【0020】
フィルターケース2aは、外観が筒状で、その筒の両端に円形の開口(24,25)を有し、内部にはその両端の開口(24,25)間を連絡するように中空となっている。この中空部分には、干渉フィルター3の収納空間となるフィルター収納部21と、このフィルター収納部21から前および後の開口(24,25)まで連絡する光通路部(22,23)とで構成されている。光通路部(22,23)は、円形断面を有する管状で、その円形断面の径φ1を維持しながら開口(24,25)まで至っている。また、フィルター収納部21は、この例では、光通路部(22,23)よりも径が大きな円筒状である。
【0021】
フィルターケース2aの前後には、コリメーター(31,32)が連結されている。コリメーター(31,32)は、中空円筒状の筐体(以下、鏡筒)(33,34)内にコリメーターレンズ(51,52)を収納したものである。前後の鏡筒(33,34)は、それぞれ、前後両端が円形に開口し、フィルターケース2aと連結している側の開口近辺にコリメーターレンズ(51,52)が配置されている。また、コリメーターレンズ(51,52)の径φ2は、鏡筒(33,34)の開口径とほぼ一致し、この開口径がコリメーターレンズの見かけ径φ2となる。また、鏡筒(33,34)の他方の開口、すなわち、フィルターケース2aに対して外側にある開口には光ファイバー(41,42)を保持したフェルール(61,62)が挿入されている。そして、この光部品1aを前後両端から見たとき、コリメーターレンズ(51,52)の見かけ径φ2に対し、フィルターケース2aの光通路部(22,23)の開口(24,25)が縮径している。すなわち、単純にコリメーターレンズ(51,52)の見かけ径φ2よりフィルターケース2aの開口径φ1が小さいのではなく、前後両端からコリメーターレンズ(51,52)を見たとき、そのレンズ(51,52)の存在領域内にフィルターケース2aの開口(24,25)の領域が包含されている。以下、このような構成や構造を備えた光部品1aの動作を説明と、当該光部品1aに施された迷光対策とについて説明する。
【0022】
===迷光対策について===
上述したように、本実施例に係る光部品1aでは、光軸5に沿った光路において、コリメーターレンズ(51,52)の見かけ径φ2より、光通路部(22,23)の開口径φ1が縮径されている点に特徴がある。図2(B)と、図3に、本実施例に係る光部品1aの動作の概略を示した。なお、本実施例の光部品1aは、相反性であり、前方および後方のいずれの方向から光を入力して、後方および前方へ向けて光を出力する。以下では、干渉フィルター3よりも前方の光路に基づいて、光部品1aの動作や迷光対策について説明する。
【0023】
まず、図2(B)に示したように、前方から干渉フィルター3に入射した光L1に含まれる所定の波長帯域の光L3が当該干渉フィルター3によって反射された際、その反射光L3が前方の光通路部22の内面26にて散乱する場合を考える。この場合は、反射光L3の進行方向における前後方向の成分は、前方向であり、光通路部22の内面26は前後方向に延長している。そのため、当該内面26での散乱光L4の前後方向の成分のほとんどが前方向となる。すなわち、干渉フィルター3側に戻る後方向の成分がほとんど無く、散乱光L3の一部が干渉フィルター3で反射して再度前方に向かうことがない。したがって、光通路部22における散乱光L4の中に、反射光L3の光路を逆に辿る光はほぼ完全にない、と言える。そして、光通路部22の開口径φ1がコリメーターレンズ51の見かけ径φ2よりも縮径されているため、散乱光L4の一部が鏡筒33の後端面35で反射されることもない。したがって、どのような経路であれ、反射光L3の光路を逆に辿る光は存在せず、本実施例に係る光部品1aでは、反射戻り光(図1:L6)が発生しない。
【0024】
ところで、干渉フィルター3の法線4と光軸5との交差角度(傾斜角度)θは、普通、2゜〜5゜程度であり、干渉フィルターの3において光が入射する面は、光軸5に対して垂直に近い。したがって、図3に示したように、干渉フィルター3の傾斜角度θが小さい場合では、干渉フィルター3での反射光L3が、光通路部22の内面26で散乱されず、光通路部22の開口24から前方に直接出射することもあり得る。この場合は、光通路部22の開口24から前方に直接出射した光がコリメーターレンズ51に入射することになる。しかし、コリメーターレンズ51の見かけ径φ2に対して光通路部22の開口径φ1が縮径しているため、コリメーターレンズ51に入射する干渉フィルター3からの反射光L3は、光軸5に対して大きな角度αで傾いているため、この反射光L3がコリメーターレンズ51の外周近辺に入射する。そのため、このコリメーターレンズ51で反射光L3が屈折したとしても、光ファイバー41の開口端43に結合することがない。したがって、反射戻り光が発生しない。
【0025】
なお、本実施例に対する比較例として、図4に、光通路部22の開口径φ1に対してコリメーターレンズ51の見かけ径φ2が縮径している光部品1bを示した。反射光L3が光通路部22の内面26に当たって散乱し、その散乱光L4の一部L7が鏡筒33の後端面35に当たって散乱する。そして、その鏡筒33の後端面35における散乱光L8の一部L9が干渉フィルター3からの反射光L3の光路を逆に辿る可能性がある。すなわち、反射戻り光L6が発生する可能性がある。
【0026】
なお、比較例に係る光部品1bにおいて、干渉フィルター3の傾斜角度θをさらに小さくして、反射光3を直接コリメーターレンズ51に入射させるような場合では、従来例に係る光部品1と同様に、干渉フィルター3からの反射光L3がコリメーターレンズ51の中心付近に入射するため、この反射光L3が光ファイバー41に直接結合する可能性が高い。
【0027】
===反射減衰特性===
以上、本実施例に係る光部品1aにおける迷光対策とその対策によって反射戻り光の発生を防止できる仕組みとを説明した。つぎに、本実施例に係る光部品1aと図1に示した従来例に係る光部品1とを用意し、実際に光ファイバー(41,42)に入射した光の強度と、その光の入力端側に戻ってくる光の強度との比である反射減衰量を測定した。
【0028】
図5(A)および(B)は、図1に示した従来例に係る光部品1、および図2,3に示した本実施例に係る光部品1aのそれぞれにおける反射減衰量の波長依存性を示す図である。なお、従来例に係る光部品1、および本実施例に係る光部品1cは、いずれも、相反性であり、前後いずれからの入力光も干渉フィルター3を透過し、所定の波長帯域の光として後方あるいは前方に出射する。そのため、図5では、前方からの光に対する反射減衰量特性を「入力側」、後方からの光に対する反射減衰量特性を「出力側」としている。
【0029】
まず、図5(A)に示したように、従来例の光部品1では、入力側の特性101に大きな波長依存性があり、反射減衰量が波長によって大きく変化している。また、反射減衰量も透過波長領域のほぼ全域で40db〜50dbと小さい。出力側の特性102は、大きな波長依存性は見られないものの、反射減衰量が総じて40db程度であり、強い反射戻り光が発生していることが認められる。なお、入力側と出力側での特性(101,102)が非対称なのは、干渉フィルター3がガラス基板の片面に誘電体薄膜からなる干渉膜を形成したものであり、ガラス面側から入射した光と、干渉膜側から入射した光とでは、その反射特性が非対称であること、対向する光ファイバー(41,42)の開口端(43,44)を結ぶ直線が光軸5からずれていることなどが考えられる。いずれにしても、大きな反射減衰量が得られず、譬え、入力側と出力側の特性(101,102)が対称的であったとしても、入力側と出力側の平均的な特性となるだけであり、大きな反射減衰量が得られず、大きな波長依存性があることには間違いない。したがって、従来例に係る光部品1では、光源から干渉フィルター3に至る光路の途上に反射戻り光が光源に至らないようにする何らかの他の光部品(光アイソレーター)を設ける必要があり、この光部品1を含めた光通信システムの全体構成を考えれば、コストダウンが難しい。
【0030】
一方、図5(B)に示した実施例の光部品1aでは、入力側、出力側の双方の特性(103,104)において、測定波長領域で50db以上の反射減衰量があり、最大で60dbもある。なお、光強度の測定装置(光パワーメーター)には測定限界があり、その測定限界に基づく反射減衰量の上限が60db程度であることから、図5(B)に示した特性(103,104)から、実施例の光部品1aでは、その反射戻り光の強度が測定限界を下回り、反射戻り光の発生をほぼ完全に防止している、と言える。また、波長依存性も少なく、入力側と出力側の特性(103,104)がほぼ対称となっている。
【0031】
===その他の実施例===
<光部品の構成について>
上記実施例の光部品1aでは、フェルール(61,62)とコリメーターレンズ(51,52)を内蔵したコリメーター(31,32)をフィルターケース2aに連結させていたが、この例に限らず、コリメーターレンズ(51,52)がフィルターケースにおける光通路部(22,23)の開口(24,25)と対面配置されていればよく、例えば、前後二つのコリメーターレンズ(51,52)とフィルターケース2aとを光学実験台の上に固定することで光部品を構成してもよい。
【0032】
<相反性について>
上記実施例の光部品1aは、相反性があり、前後のどちらからでも光を入力することができた。したがって、前後のいずれから見ても、コリメーターレンズ(51,52)の見かけ径φ2より、光通路部(22,23)の開口径φ1が縮径していた。もちろん、前後の一方が入力側として規定されているのであれば、少なくとも、その入力側から光部品1aを見たときにコリメーターレンズ(51または52)の見かけ径φ2に対して光通路部(22または23)の開口径φ1が縮径されていればよい。
【0033】
<フィルター収納部の形状について>
上記実施例の光部品1aでは、フィルター収納部21の形状が円筒状であった。しかし、図6に示した光部品1cのように、干渉フィルター3の法線4と光軸5との角度θが大きいと、干渉フィルター3での反射光L3がフィルター収納部21の内面27にて散乱し、その散乱光L4の一部L5が干渉フィルター3に反射して反射戻り光L6となる可能性がある。そこで、図7に示した光部品1dのように、干渉フィルター3の設置角度に応じて反射光L3が必ず光通路22内に案内されるように、フィルターケース2d内のフィルター収納部21dの形状を変えてもよい。図示した例では、前後方向を短軸とする楕円体状のフィルター収納部21dとしている。なお、周知のごとく、干渉フィルター3は、その法線4と光軸5との角度θが大き過ぎると、干渉フィルター3の干渉膜に入射する光L1の角度が大きくなり、特性が劣化する。そのため、普通は、光軸5に対して垂直に近い角度で傾けて配置している。したがって、干渉フィルター3の設置角度が大きいことに起因する反射戻り光を考慮する必要は少ない、と言える。
【0034】
<フェルールの素材について>
実施例の光部品1aは、干渉フィルター3による反射光L3に起因する反射戻り光については、ほぼ完全に除去できる。しかしながら、光ファイバー(41,42)から出射する光は、直線性が高いレーザー光線であっても、僅かに広がる。そのため、光ファイバー(41,42)の開口端付近で、その光がフェルール(51,52)に当たる。フェルール(51,52)の多くは、ジルコニアなど、見た目が白色、すなわち光を散乱する素材でできており、このフェルール(51,52)に当たった光は散乱し、その散乱光の一部が反射戻り光となる可能性がある。そこで、このフェルール(51,52)を透明なガラス素材とすれば、フェルール(51,52)の光散乱性に由来する反射戻り光も抑制され、より高い反射減衰量を得ることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、光通信技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1,1a〜1d 光部品、2,2a,2d フィルターケース、
3 干渉フィルター、4 干渉フィルターの法線、5 光軸、
21 フィルター収納部、22,23 光通路部、
24,25 光通路部(フィルターケース)の開口、
26 光通路部の内面、27 フィルター収納部の内面、
31、32 コリメーター、33,34 鏡筒、41,42 光ファイバー、
51,52 コリメーターレンズ、61,62 フェルール、
101,102 従来例の光部品の反射減衰量特性、
103,104 実施例の光部品の反射減衰量特性、
L1 干渉フィルターへの入射光、L2 干渉フィルターからの透過光、
L3 干渉フィルターでの反射光、L4,L5,L7,L8,L9 散乱光、
L6 反射戻り光、θ 光軸に対する干渉フィルターの法線の傾斜角度、
φ1 光通路部の開口径、φ2 コリメーターレンズの見かけ径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸の延長方向を前後方向として、干渉フィルターの前方および後方に、それぞれ第1および第2のコリメーターレンズが配置された光部品であって、
前方から前記光軸に沿う光が入力された際、所定の波長帯域の光を後方へ出力し、
前記干渉フィルターは、前後両端が開口する中空筒状の筐体内に、前記光軸に対して斜めとなるように配置されて、
前記筐体は、内部に、前記干渉フィルターを収納するフィルター収納部と、前方および後方の前記開口から当該フィルター収納部まで前記開口の形状を維持しつつ前後方向に延長する管状の第1の光通路部および第2の光通路部を備え、
前記第1および第2のコリメーターレンズは、前記筐体の前方および後方のそれぞれの開口に対面して配置され、
前方から見たときに、前方の前記第1の光通路部の前記開口の径が、前記第1のコリメーターレンズの見かけ径に対し縮径されている、
ことを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品。
【請求項2】
請求項1において、後方から見たときに、後方の前記第2の光通路部の前記開口の径が、前記第2のコリメーターレンズの見かけ径に対し縮径されて、後方から前記光軸に沿う光が入力された際、所定の波長領域の光を前方へ出力する、ことを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品。
【請求項3】
請求項1または2において、前記フィルター収納部の形状は、前記干渉フィルターにおいて、入力された光の反射方向が前記光通路部の内部に向かうように形成されていることを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記筐体の前端および後端に、それぞれ、フェルールに保持された光ファイバーと前記第1のコリメーターレンズが保持された第1の光ファイバー・コリメーター、およびフェルールに保持された第2の光ファイバーと前記第2のコリメーターレンズが保持された第2の光ファイバー・コリメーターとが連結されている、ことを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品。
【請求項5】
請求項4において、前記フェルールは、透明なガラスで形成されていることを特徴とする干渉フィルターを備えた光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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