干渉増大を含む無線エネルギー伝達装置及び方法
無線エネルギー伝達用の装置を開示し、この装置は、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1及び第2共振構造の特徴的サイズより大きい。電力発生器が第1共振構造に結合され、第1共振構造または第2共振構造を、それらの共振角周波数から離れて、これらの共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、相殺的な遠距離場干渉によってこれらの共振構からの放射を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
合衆国法典第119条(e)により、本願は、米国特許仮出願第61/127661号、2008年5月14日出願に基づいて優先権を主張する。
本願は、同じ権利者が保有する次の出願の主題にも関連する:米国特許出願第12/055963号、2008年3月26日出願;米国特許出願第11/481077号、2006年7月5日出願;米国特許仮出願第60/698422号、2005年7月12日出願;米国特許仮出願第60/908383号、2007年3月27日出願;米国特許仮出願第60/908666号、2007年3月28日出願;及び国際特許出願第PCT/US2007/070892号、2007年6月11日。
これら従来の特許出願の内容は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
本発明は、無線エネルギー伝達に関するものである。無線エネルギー伝達は例えば、自立型電気装置または電子装置に電力を供給するような用途において有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
(情報伝達用に非常に良好に動作する)全方向アンテナの放射モードは、エネルギーの大部分が自由空間内で浪費されるので、こうしたエネルギー伝達には適していない。レーザーまたは高指向性アンテナを用いた指向性のある放射モードは、長距離(伝達距離LTRANS≫LDEV、ここにLDEVは装置及び/またはエネルギー源の特徴的サイズ)用のエネルギー伝達用にも効率的に用いることができるが、途切れのない見通し線の存在、及び移動体の場合は複雑な追跡(トラッキング)システムを必要とする。一部の伝達方式は誘導に頼るが、一般に非常に近距離(LTRANS≪LDEV)または低電力(〜mW)エネルギーの伝達に限定される。
【0004】
近年の自立型電子機器(例えばラップトップ・コンピュータ、携帯電話、家庭用ロボット、これらのすべてが一般に化学エネルギー蓄電に頼る)の急速な発達は、無線エネルギー伝達の必要性の増加をもたらしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/127661号
【特許文献2】米国特許出願第12/055963号
【特許文献3】米国特許出願第11/481077号
【特許文献4】米国特許仮出願第60/698422号
【特許文献5】米国特許仮出願第60/908383号
【特許文献6】米国特許仮出願第60/908666号
【特許文献7】国際特許出願第PCT/US2007/070892号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つの共振物体間の効率的な無線エネルギー伝達は、これらの共振物体が「強結合」レジーム(型)で動作するならば、中距離で達成することができる。共振結合された物体の放射遠距離場間の相殺的な干渉を利用することによって、エネルギー伝達の効率を増加させる方法、あるいは有害であり得るか他の通信システムに対する妨害を生じさせ得る放射電力を抑制する方法の実現について説明する。「強結合」は、遠距離場干渉がなければ、効率的なエネルギー伝達にとって必要な条件である。現実システム:即ち(複数の)自己共振導体コイル、誘導負荷付き導体コイル、誘導負荷付き導体ロッド、及び誘電体円板の場合は、「強結合」を示すことができ、これらのすべてが高いQ値の電磁共振モードを有する。また、無線エネルギー伝達システムについての、遠距離場干渉を考慮に入れた解析モデルを開発することもできる。この解析モデルを用いて、干渉の存在下での効率増大及び干渉抑制を実証することができる。実現の例では、2つの現実システム、即ち容量負荷付き導体コイル及び誘電体円板の場合に、上記の原理に基づく改善された性能を説明し、これらは共に、高いQ値の電磁共振モード及び遠距離場干渉を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この装置は電源も含み、この電源は第1共振構造に結合され、第1共振構造または第2共振構造を、これらの角周波数から離れて、これらの共振構造の奇数次(オッド)ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、これらの共振構造からの放射を相殺的な遠距離場干渉によって低減する。
【0008】
いくつかの例では、上記電源は、第1共振構造または第2共振構造を、上記角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、これらの共振構造からの放射を相殺的遠距離場干渉によって大幅に抑制する。
【0009】
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用い、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この方法は、第1共振構造または第2共振構造を、これらの角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、これらの共振構造からの放射を相殺的遠距離場干渉によって低減するステップを含む。
【0010】
いくつかの例では、上記第1共振構造または第2共振構造を、上記角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、これらの共振構造からの放射を相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制する。
【0011】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。距離Dの所望範囲について、これらの共振構造の共振角周波数に起因する放射干渉によって伝送効率Tを増加させ、この増加は、放射干渉を考慮せずに計算した伝送効率Tに対する増加である。
【0012】
いくつかの例では、これらの共振構造の共振角周波数を、これらの共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tを最適化するように選択する。
【0013】
1つの態様では、方法が無線エネルギー伝達装置を設計するステップを含み、この装置は、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この方法は、これらの共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に起因するこれらの共振構造間の放射干渉によって伝送効率がほぼ最適化されるように選択するステップを含む。
【0014】
いくつかの例では、これらの共振構造の共振角周波数を、これらの共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tが最適化されるように選択する。
【0015】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含む。このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数1】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数2】
として定義される。上記装置は、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、装置からの放射の総量を、干渉がない場合の装置からの放射の量に比べて低減するように構成され、強干渉係数は次式のように定義される:
【数3】
【0016】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.01及びQ2/Q2,rad≧0.01を有する。上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.1及びQ2/Q2,rad≧0.1を有する。上記装置は、0.001より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.01より大きい。上記装置は、0.001より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.1より大きい。上記装置は上記第2共振構造を含む。
【0017】
動作中には、電力発生器が、上記第1及び第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、ここで、Ugは、電力発生器が第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、電力発生器が第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義される。この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義される。
【0018】
D1はUVradにおよそ等しく、D2はUVradにおよそ等しい。Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率に対する比率を最大にするように選定する。Ugは
におよそ等しい。fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さい。fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さい。上記装置はさらに電力発生器を含む。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に、電力負荷が結合速度κlで結合され、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、Ulは、電力負荷が第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、電力負荷が第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義される。Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定する。駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数と異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVradに等しく、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVradに等しく、Ulは
におよそ等しい。
【0019】
第1及び第2共振構造の少なくとも一方は、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つである。このループまたはコイルの特徴的サイズは30cm以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。このループまたはコイルの特徴的サイズは1m以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。
【0020】
上記装置はさらに、上記共振物体(構造)のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを含む。このフィードバック・メカニズムは、固定駆動周波数を有する発振器を具え、上記共振物体(構造)のうち1つ以上の共振周波数を、この固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されている。
【0021】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含む。このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、結合係数kを有する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数4】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数5】
として定義される。上記装置は、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、装置のエネルギー伝達の効率を、干渉がない場合の装置の効率に比べて増加させるように構成され、強干渉係数は次式のように定義される:
【数6】
【0022】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.05及びQ2/Q2,rad≧0.05を有する。上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.5及びQ2/Q2,rad≧0.5を有する。上記装置は、0.01より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.05より大きい。上記装置は、0.01より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.5より大きい。上記装置はさらに、上記第2共振構造を含む。
【0023】
動作中には、電力発生器が、上記第1及び第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、ここでUgは、電力発生器が第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、電力発生器が第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義される。この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、ここで、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義される。
【0024】
D1はUVにおよそ等しく、D2はUVにおよそ等しい。Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率を最大にするように選定する。Ugは
におよそ等しい。fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さい。fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さい。上記装置はさらに、電力発生器を含む。
【0025】
動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、ここでUlは、電力負荷が第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、電力負荷が第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義される。Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定する。駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVに等しく、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVに等しく、Ulは
におよそ等しい。
【0026】
第1及び第2共振構造の少なくとも一方は、容量負荷付きループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つである。このループまたはコイルの特徴的サイズは30cm以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。このループまたはコイルの特徴的サイズは1m以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。上記装置は、共振物体の1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを含む。このフィードバック・メカニズムは、固定駆動周波数を有する発振器を具え、1つ以上の共振物体(構造)の共振周波数を、この固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されている。このフィードバック・メカニズムは、エネルギー伝達の効率を監視し、上記1つ以上の共振物体(構造)の共振周波数を調整して効率を最大にするように構成されている。これらの共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択する。
【0027】
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、結合係数kを有し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数7】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数8】
として定義され、この方法はさらに、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、第1及び第2共振構造からの放射の総量を、干渉がない場合の第1及び第2共振構造からの放射の量に比べて低減するステップを含み、強干渉係数は次式のように定義される:
【数9】
【0028】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記方法は、Q1/Q1,rad≧0.01及びQ2/Q2,rad≧0.01を有する。動作中には、電力発生器を、上記第1及び第2共振構造の一方に結合し、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近い。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷を結合し、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されている。
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数10】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数11】
として定義され、この方法はさらに、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、上記第1共振構造と上記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率を、干渉がない場合の、上記第1共振構造と上記第2共振構造との間のエネルギー伝達効率に比べて増加させるステップを含み、強干渉係数は次式のように定義される:
【数12】
【0029】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記方法は、Q1/Q1,rad≧0.05及びQ2/Q2,rad≧0.05を有する。動作中には、電力発生器を、上記第1及び第2共振構造の一方に結合し、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近い。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷を結合し、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されている。これらの共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択する。
【0030】
種々の例は、上記特徴のいずれをも、単独または組合せで含むことができる。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】無線エネルギー伝達方式の例の概略図である。
【図2】図2(a)、(b)は、それぞれ(a)U=1及び(b)U=3についての、電力伝送の効率ηPを、周波数離調D0の関数として、負荷速度U0の異なる値について示す図であり、図2(c)は、エネルギー伝達の最適な(インピーダンス整合の条件下での離調0に対する)エネルギー伝達の効率ηE*及び電力伝送の効率ηPを、結合対損失の性能指数Uの関数として示す図である。
【図3】自己共振導線コイルの例を示す図である。
【図4】2つの自己共振導線コイルを特徴とする無線エネルギー伝達方式の例を示す図である。
【図5】無線エネルギー伝達を実証する実験システムの概略図である。
【図6】図5に概略的に示すシステムの結合速度についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図7】図5に概略的に示すシステムの強結合係数についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図8】図5に概略的に示すシステムの電力伝送効率についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図9】容量負荷付き導線コイルの例を示し、その周辺磁界を例示する図である。
【図10】2つの容量負荷付き導線コイルを特徴とする無線エネルギー伝達方式を示し、その周辺磁界を例示する図である。
【図11】無線エネルギー伝達用の回路モデルを例示する図である。
【図12】電源側及び装置側のループ寸法、wp及びNsの特定の選定、及びNd=1, 2, 3, 4, 5, 6, 10(それぞれ赤色、緑色、青色、マゼンタ色、黄色、シアン色、黒色)の異なる選定に対する、効率、(負荷付き)装置全体のQ値、及び電源及び装置の電流、電圧、及び放射電力(負荷への出力電力の1Wに正規化)を、共振周波数の関数として示す図である。
【図13】電源側及び装置側のループ寸法、及びターン数Ns及びNdの特定の選定に対する、効率、(負荷付き)装置全体のQ値、及び電源及び装置の電流電圧、及び放射電力(負荷への出力電力の1Wに正規化)を、共振周波数の関数として示す図である。
【図14】誘導負荷付き導線コイルの例を示す図である。
【図15】(a)は、共振誘導体円板の例を示し、周辺磁界を例示する図であり、(b)は、2枚の共振誘電体円板を特徴とするエネルギー伝達方式を示し、周辺磁界を例示する図である。
【図16】図16(a)、(b)は、それぞれ(a)U=1,V=0.5、(b)U=3,V=0.5についての電力伝送の効率ηPを周波数離調D0の関数として、負荷速度U0の異なる値について示す図であり(比較のため、点線は、図2(a)、(b)に示す、干渉の存在しない際の結果を示す)、図16(c)、(d)は、エネルギー伝達((c)のみ)及び電力伝送の最適な(インピーダンス整合条件下での最適な離調に対する)効率を、強結合係数U及び強干渉係数Vの関数として示す。
【図17】(a)結合係数k、及び(b)強結合係数Uについての結合モード理論の(CMT)結果を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループ間の相対距離D/rの関数として、3つの異なるループ寸法について示す図である。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。
【図18】干渉係数Vradについてのアンテナ理論(AT:Antenna Theory)の結果を、2つの容量負荷付き導体ループ間の距離D(波長λに正規化した)の関数として示す図である。
【図19】強結合係数UについてのCMT結果、及び干渉係数Vrad及び強干渉係数VについてのAT結果を、r=30cm、a=2cm、及び相互間の相対距離D/r=5を有する2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。
【図20】電力伝送効率を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。2つの異なるループ寸法について、及びこれらの同一ループ間の2つの相対距離についての結果を示す。各ループ寸法及び距離について、次の4つの異なる場合を調べた:遠距離場干渉なし(点線)、遠距離場干渉はあるが駆動周波数の離調なし(破線)、及び効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするように駆動周波数を離調。
【図21】遠距離場干渉の存在下で、効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするために必要な駆動周波数の離調を、図20の2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。
【図22】図22(a)は、強結合係数U及び電力伝送効率ηがピーク(最高値)になる固有共振周波数fU及びfηを、r=30cm及びa=2cmを有する2つの同一ループ間の距離D/rの関数として示す図であり、図22(b)は、強結合係数U及び強干渉係数Vを、2つのループ間の相対距離D/rをパラメータとして、U−V面内の曲線として例示する図であり、干渉あり、固有周波数fηの場合(実線)、干渉あり、固有周波数fUの場合(破線)、及び干渉なし、固有周波数fUの場合(点線)について示し、図22(c)は、図22(b)の破線及び点線に対する、図22(b)の実線の効率増大の比率を示す図である。
【図23】放射効率を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。2つの異なるループ寸法についての結果を、これらの同一ループ間の2つの相対距離について示す。各ループ寸法及び距離について、次の4つの異なる場合を調べた:遠距離場干渉なし(点線)、遠距離場干渉はあるが駆動周波数の離調なし(破線)、及び効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするように駆動周波数を離調。
【図24】(a)結合係数k、及び(b)強結合係数UについてのCMT結果を、距離D/r=5をおいた(m=2については、一対のより大きい距離についても)2枚の同じ誘電体円板の共振モードの3つの異なるmの値について示す図であり、これらの円板のεは250≧ε≧35の範囲内で変化させた。なお、円板材料の損失正接(損失角のタンジェント)tanδ=6・10-6から2・10-4を用いた。(c)は、CMTと(b)についての数値計算値FEFDとの間の、Uの相対誤差を示す図である。
【図25】図24(c)と全く同じパラメータについて、(a)正規化した干渉項2Λ/ルート(ω1ω2)及び(b)強干渉係数|V|の大きさについてのAT結果を周波数の関数として示す図である。(c)は、ATと(b)についての数値計算値FEFDとの間の、Vの相対誤差を示す図である。
【図26】図24及び25における共振モード及び距離と同じ集合について、全体的な電力伝送の結果を周波数の関数として示す図であり、干渉(実線)を含む予測(実線)、及び干渉なしでUのみからの予測(点線)に基づく。
【図27】図27(a)は、それぞれ強結合係数U及び電力伝送効率ηを最大にした際の周波数fU及びfηを、図15のm=2なる円板間の伝達距離の関数として示す図である。図27(b)は、(a)の周波数で達成される効率を示す図であり、fηに対する(定義による)最適な効率対fUで達成可能な効率で表される増大比を差し込み図に示す。図27(c)は、(a)の周波数選定に対する伝送効率の経路を、Dをパラメータとして、U−V効率マップ上に示す図である。
【図28】動作周波数を離調させた際(実線)、離調させない際(破線)、及び干渉が全く存在しない際(点線)の放射効率の結果を、共振周波数fUにおける伝達距離の関数として示す図である。差し込み図は、対応する放射抑制係数を示す。
【図29】図29(a)〜(b)は、周波数制御メカニズムの概略図である。
【図30A】図30Aは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【図30B】図30Bは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【図30C】図30Cは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.「強結合」共振による効率的なエネルギー伝達
図1に、本発明の一例を概略的に記載する概略図を示す。図1を参照すれば、特徴的サイズr1を有する共振性の電源側(ソース)物体と、特徴的サイズr2の共振性の装置側物体との間で、エネルギーが伝達される。両物体は共振物体である。無線による無放射のエネルギー伝達は、2つの共振物体の系の場(例えば電磁界または音場)を用いて実行される。
【0033】
ある物体の特徴的サイズは、この物体全体をちょうど囲む最小の球の半径に等しいものとして考えることができる。ある物体の特徴的な厚さは、任意の構成中の平面上に置いた際の、この平面上にある当該物体の最高点の最小可能な高さとして考えることができる。ある物体の特徴的な幅は、この物体が直線上を進む間に通る円の最小可能な半径として考えることができる。例えば、円柱形の物体の特徴的な幅は、この円柱の半径である。
【0034】
図1の例、及び以下の例の多くは、2つの共振物体を示しているが、他の例は3つ以上の共振物体を扱うことができることは明らかである。例えば、いくつかの例では、単一の電源側物体が複数の装置側物体にエネルギーを伝達することができる。いくつかの例では、エネルギーを第1共振物体から第2共振物体に伝達し、そして第2共振物体から第3共振物体に伝達し、等のようにすることができる。
【0035】
最初に、無照射の無線エネルギー伝達を理解するための理論的枠組みを提示する。しかし、本発明の範囲は理論によって束縛されないことは明らかである。
【0036】
用途に応じて、2つの共振物体間でエネルギーを伝達するための異なる時間的スキーム(仕組み)を用いることができる。ここでは、特に単純であるが重要な2つのスキーム:即ち、1回だけの有限量エネルギー伝達スキーム及び連続的な有限速度のエネルギー伝達(電力)スキームを考える。
【0037】
1.1 有限伝達量のエネルギー伝達効率
エネルギー交換用に用いる電源側物体及び装置側物体をそれぞれ1、2とし、これらの固有共振モードは、角周波数ω1,2、固有(吸収、放射、等)損失による周波数幅Γ1,2、及び(一般に)単位エネルギーで正規化したベクトル場
を有するものとする。一旦、これら2つの共振物体どうしを近接させると、これらは相互作用することができ、これらの共振相互作用をモデル化するための適切な分析の枠組みは、周知の結合モード理論(CMT:Coupling Mode Theory)の枠組みである。この図では、2つの共振物体1、2の系の場はおよそ
【数13】
とすることができ、ここに、a1,2(t)は場の振幅であり、|a1,2(t)|2は、それぞれの物体1、2の内部に蓄積されたエネルギーに等しい。そして、e-ωtの時間依存性を用いれば、場の振幅は、最低次数で、次式を満足するように示すことができる:
【数14】
ここに、κ11,22は、他の物体の存在による各物体の周波数のシフト(偏移)であり、これらのシフトは二次補正であり、ω1,2→ω1,2+κ11,22と設定することによって固有周波数中に吸収することができ、κ12,21は結合係数であり、系の相反性の要求から、κ21=κ12≡κを満足しなければならない。
【0038】
結合系のノーマルモードは、
【数15】
を代入することによって、次式の複素周波数を有することが見出される:
【数16】
その分裂(2つに分かれる度合い)を次式のように表す:
【数17】
なお、厳密な共振ω1=ω2では、Γ1=Γ2に対してδE=2κが得られる。
【0039】
ここで、時刻t=0で、電源側物体1が有限のエネルギー|a1(0)|2を有するのに対し、装置側物体2は|a2(0)|2=0を有するものと仮定する。これらの物体は結合されているので、エネルギーは1から2に伝達される。これらの初期条件で式(1)を解いて、装置側の場の振幅の変化を次式のように予測することができる:
【数18】
エネルギー伝達効率はηE=|a2(t)|2/|a1(0)|2となる。なお、厳密な共振ω1=ω2では、特別な場合Γ1=Γ2≡Γ0に、式(3)は次式のように書くことができ:
【数19】
ここに、T≡Γ0tかつU=κ/Γ0である。
【0040】
いくつかの例では、システム設計者が結合の継続時間tを任意に調整することができる。いくつかの例では、継続時間tを、装置側のエネルギー(従って効率ηE)を最大にするように調整することができる。従って、特別な場合Γ1=Γ2≡Γ0には、式(4)より、ηEは
【数20】
に対して最大になることを推論することができ、最適なエネルギー伝達効率は次式:
【数21】
のようになり、この式は、結合対損失比U=κ/Γ0のみの関数であり、図2(c)に示すように、U≫1である際に1に近づく。一般に、またΓ1≠Γ2については、結合速度がすべての損失速度よりずっと速い(κ/Γ1,2≫1)際に、エネルギー伝達はほぼ完全になる。
【0041】
現実の無線エネルギー伝達システムでは、電源側物体は電力発生器(図1には図示せず)に接続することができ、装置側物体は電力消費負荷(例えば抵抗器、電池、実際の装置、図1には図示せず)に接続することができる。電力発生器はエネルギーを電源側物体に供給し、このエネルギーは無線で、かつ無放射で、電源側物体から装置側物体に伝達され、負荷は装置側物体からのエネルギーを消費する。こうした供給及び消費のメカニズムをこの時間的スキームに取り入れるために、いくつかの例では、時刻t=0に、電力発生器を電源側物体に、非常に短時間であるが非常に強く結合して、ほぼ瞬時にエネルギーを供給し、同様に、最適な時刻t=t*に、負荷を装置側物体に、非常に短時間であるが非常に強く結合して、このエネルギーをほぼ瞬時に排出することができる。連続給電メカニズムについては、時刻t=t*にも、電力発生器を再び電源側物体に結合して、新たな量のエネルギーを供給することができ、この過程は周期t*で周期的に反復することができる。
【0042】
1.2 有限伝達率のエネルギー伝達(電力伝送)効率
電力発生器が電源側物体1にエネルギーを、速度κ1で連続的に供給し、負荷が装置側物体2からエネルギーを、速度κ2で連続的に排出しているものとする。従って、場の振幅S±1,2(t)が定義され、これにより、|S±1,2(t)|2は、物体1に入る電力(+符号の方)、または物体2から出る電力(−符号の方)に等しく、CMTの式は次式のように変形される:
【数22】
ここでも、ω1,2→ω1,2+κ11,22かつκ21=κ12≡κと設定することができる。
【0043】
ここで、励振は固定周波数であり、即ち、S+1(t)=S+1(t)e-iωtの形式を有するものと仮定する。従って、線形系の応答は同じ周波数になり、即ちa1,2(t)=A1,2e-iωt及びs-1,2(t)=S-1,2e-iωtとなる。これらを式(7)に代入し、δ1,2≡ω−ω1,2を用いて、この系を解くことによって、負荷に伝送される場の振幅(S21:散乱行列の要素)は次式のように見出され:
【数23】
電力発生器に向けて反射される場の振幅(S11:散乱行列の要素)は次式のように見出され:
【数24】
ここに、D1,2≡δ1,2/Γ1,2、U1,2≡κ1,2/Γ1,2、及び
【数25】
である。同様に、散乱行列の要素S12、S22は、式(8)、(9)において1と2を交換することによって与えられ、相反性から想定されるようにS21=S12である。電力伝送(効率)、反射、及び損失の係数はそれぞれ、ηP≡|S21|2=|S-2|2/|S+1|2、|S11|2=|S-1|2/|S+1|2、及び1−|S21|2−|S11|2=(2Γ1|A1|2+2Γ2|A2|2)/|S+1|2となる。
【0044】
実際に、いくつかの実現では、パラメータD1,2、U1,2は設計することができる、というのは、共振周波数ω1,2を(所望の動作周波数と比較して)調整することができ、電力発生器/負荷の供給/排出速度を調整することができるからである。これらの選定は、関係するいくつかのシステム性能−特性の最適化を目標とすることができる。
【0045】
いくつかの例では、系の電力伝送(効率)ηP≡|S21|2を最大にすることを目標とすることができ、従って、
【数26】
であることを必要とする。
【0046】
(式(8)より)S21は、1と2の交換について対称であるので、(式(10)によって決まる)D1,2に対する最適値どうしは等しく、即ちD1=D2≡D0であり、同様にU1=U2≡U0である。従って、
【数27】
となり、条件:
【数28】
より、次のことを得る:
U及びU0の固定値については、次式の対称な離調の値:
【数29】
に対して、効率を最大にすることができ、この式(12)は、U>1+U0の場合は、効率がピーク(最高値)になる2つの周波数に対して、次式のように書き変えることができ:
【数30】
その分裂を次式のように表す:
【数31】
なお、厳密な共振ω1=ω2では、Γ1=Γ2≡Γ0及びκ1=κ2≡κ0に対して
【数32】
が得られ、即ち、伝達ピークの分裂はノーマルモードの分裂より小さい。従って、(12)式からのD0をηPに代入することによって、条件:
【数33】
より、次のことが得られる:
Uの固定値について、次式:
【数34】
に対して、効率を最大にすることができ、この式は「臨界結合」条件として知られているのに対し、U0<U0*については、系を「結合不足」と称し、U0>U0*については、系を「過結合」と称する。(「臨界結合」条件を含む)U0の異なる値についての、効率の周波数離調D0への依存性を図2(a)、(b)に示す。式(14)を用いた最適な全体電力効率は次式のようになり:
【数35】
ここでも、この式は、結合対損失比
【数36】
のみの関数であり、図2(c)に示すように、U≫1である際に1に近づく。
【0047】
いくつかの例では、電力発生器及び負荷の側における電力反射|S11|2及び|S22|2を最小にすることを目標とすることができ、従って、次式であることを必要とする:
【数37】
【0048】
以上の式は「インピーダンス整合」条件を提示する。ここでも、これらの条件の集合は、1と2の交換について対称であり、従って、D1=D2≡D0及びU1=U2≡U0を式(16)に代入することによって、次式が得られ:
【数38】
この式より、すべての反射を相殺するD0及びU0の値はここでも、厳密に式(14)中のそれらの値であることが容易に見出される。
【0049】
この特定の問題について、上記2つの目標及びそれに関連する条件の集合(式(10)及び式(16))は、電源内及び装置内のパラメータD1,2、U1,2の同じ最適値を生じさせることがわかる。なお、無損失系については、このことは電力保存(上記散乱行列のエルミート性)の直接の結果であるが、有損失系については、このことは明らかでない。
【0050】
従って、あらゆるエネルギー伝達の時間的スキームについて、一旦、電源側または装置側のみに特有のパラメータ(例えばそれぞれ、これらの共振周波数、及びこれらの励振または負荷速度)を最適に設計すると、効率は、電源−装置の結合速度の、これらの損失速度に対する比率と共に単調増加する。共振のQ値Q=ω/2Γの定義を用い、そして類推によって結合係数
【数39】
を定義し、従って、無線エネルギー伝達についての考察の下で、あらゆる系の性能指数として設定されているものはまさに、次式:
【数40】
の比率であり、これに加えて、この比率を達成することのできる距離である(明らかに、Uは距離の減少関数である)。所望の最適なレジーム(型)U>1を「強結合」レジームと称し、効率的なエネルギー伝達のための必要十分条件である。特に、U>1について、式(15)より、ηP*>17%が得られ、この値は実用化にとって十分大きい値である。性能指数Uを強結合係数と称する。大きな強結合係数を有するシステムを設計する方法をさらに示す。
【0051】
大きな強結合係数Uを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用が、低い(即ち遅い)固有損失速度Γに対応する高いQ値の共振モードを用いることが好ましい。この条件は、すべての損失メカニズム、一般に放射及び吸収が十分に抑制されるように共振モードを設計することによって満たすことができる。
【0052】
このことは、むしろ抑制すべき有損失の放射遠距離場ではなく、エバネセント(無損失)の定常近接場を用いて、結合を実現することを示唆している。エネルギー伝達スキームを実現するために、通常、より適切なものは、有限物体、即ちあらゆる箇所を空気によってトポロジー的に包囲されている物体であり、これらの箇所まで近接場が延在して、結合を達成する。有限の大きさの物体は一般に、空中の全方向において、物体から離れるにつれて指数関数的に減衰する電磁的状態をサポートしない、というのは、自由空間内のマックスウェルの方程式は:
【数41】
であることを暗に意味し、ここに、
は波動ベクトルであり、ωは角周波数であり、cは光速であり、このことにより、こうした有限物体は、無限大のQ値の状態をサポートすることができず、むしろ、いくらかの量の放射が常に存在する。しかし、非常に長寿命(いわゆる「高いQ値」)の状態は見出すことができ、そのテール(尾部)は、振動性(放射)に切り換わるに前の十分長い距離にわたって、共振物体から離れるにつれて、必要とされる指数関数的または指数関数状の減衰を表す。こうした場の挙動の変化が生じる限界面は「放射面(radiation caustic)」と称され、無線エネルギー伝達スキームが遠距離/放射場ではなく近接場に基づくために、結合物体間の距離は、他の物体の放射面内にある距離でなければならない。高い放射のQ値を達成する他の代表的な方法は、サブ波長の共振物体を設計することである。物体のサイズが、自由空間内で放射の波長よりずっと小さい際に、その電磁界は非常に弱くしか放射に結び付かない。有限サイズの共振物体を包囲する領域内に及ぶ近接場の度合いは、一般に波長によって設定されるので、いくつかの例では、サブ波長サイズの共振物体が、大幅に長いエバネセント場のテールを有する。換言すれば、放射面は、物体から遠く離れた所に押しやられ、従って、電磁モードは小振幅でしか放射レジームに入らない。
【0053】
さらに、大部分の現実材料はナノゼロ量程度の吸収作用を示し、この吸収作用は周波数依存性であり、このため無限大のQ値をサポートすることはできず、従って、常にある程度の量の吸収が存在する。しかし、電磁形態のエネルギーが弱くしか消散しない所では、非常に長寿命(「高いQ値」)の状態を見出すことができる。高い吸収のQ値(Qabs)を達成するいくつかの代表的な方法は、共振周波数で非常に小さい吸収作用を示す材料を使用すること、及び/または、場を整形して損失最小の材料のより内部に局在させることである
【0054】
さらに、大きい強結合係数Uを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用が、物体の特徴的サイズより大きい距離において、強い(即ち速い)結合速度κに相当する高い結合係数kを達成する系を用いることが好ましい。
【0055】
以上で説明し、後の例に見られるように、有限サイズのサブ波長共振物体は高いQ値を伴うことが多いので、こうした物体は一般に、移動し得る共振装置−物体用の適切な選定である。これらの場合には、電磁界は、いくつかの例では準静的な性質のものであり、当該距離までは十分な結合を達成することのできる距離は、この準静的な場の減衰則によって決まる。
【0056】
しかし、いくつかの例では、共振する電源−物体は不動であり、従って、その許容される幾何学的形状及びサイズの制約がより少ない。従って、この幾何学的形状及びサイズは、近接場の範囲が波長によって制限されない程度に十分大きく選定することができ、従って無限大に近い放射のQ値を有することができる。誘電体導波管のような無限大に近い広がりのいくつかの物体は、導波モードをサポートすることができ、そのエバネセントテールは、物体から離れる向きに指数関数的に減衰し、カットオフ近くに調整されている場合は低速で減衰し、従って、電源側物体及び/または装置側物体の特徴的サイズより大きい距離をおいた良好な結合を非常に多数回達成することもできる。
【0057】
2.現実システムについての中距離における「強結合」共振
以下では、上述した種類のエネルギー伝達に適したシステムのいくつかの例を説明する。上述したCMTパラメータω1,2、Q1,2及びκを計算する方法、及びこれらのパラメータを特定例用に選定して、所望距離Dにおいて所望の性能指数
【数42】
を生成する方法を例示する。いくつかの例では、ω1,2を特定の角周波数ωUの近くに調整すると、この性能指数が最大になる。
【0058】
2.1 自己共振導体コイル
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が自己共振導線ループである。図3を参照すれば、長さl、断面半径aの導線が、空気に囲まれた半径r及び高さhの(即ち、巻数
【数43】
を有する)螺旋コイルの形に巻かれている。以下に説明するように、この導線は分布インダクタンス及び分布容量(キャパシタンス)を有し、従って、角周波数ωの共振モードをサポートする。共振の性質は、コイルの容量全体にわたる電荷分布
、自由空間内の磁界、及び導線中の電流分布
による、コイルの容量内の電界からのエネルギーの周期的交換にある。特に、電荷保存方程式:
【数44】
は、次のことを暗に意味する:(i) この周期的交換は、電流プロファイルと電荷密度プロファイルとの間のπ/2の位相シフトによって達成され、即ち、コイルに含まれるエネルギーWは、特定時点では完全に電流により、他の時点では完全に電荷による;(ii) ρl(x)及びI(x)がそれぞれ、導線中の直線的な電荷密度及び電流密度であり、xが導線に沿って変化する値であれば、
【数45】
は、コイルの一方の側に蓄積される正電荷の最大量であり(等量の負電荷も他方の側に常に蓄積されて、系を中性にする)、I0=max{|I(x)|}が、直線的な電流分布の正の最大値であり、従ってI0=ωq0である。従って、コイルの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cは、その共振モード中の次式のエネルギーの量W:
【数46】
によって定義することができ、ここにμ0及びε0はそれぞれ、自由空間の透磁率及び誘電率である。
【0059】
これらの定義により、共振角周波数及び実効インピーダンスはそれぞれ、次式:
【数47】
及び
【数48】
によって与えられる。
【0060】
この共振系における損失は、導線内部の抵抗損(材料吸収損失)、及び自由空間内の放射損失である。ここでも、次式のように、配線内部で吸収された電力の量から全吸収抵抗Rabsを定義し、電気双極子放射及び磁気双極子放射により放射される電力の量から全放射抵抗Rradを定義することができる:
【数49】
ここに、
【数50】
及び
【数51】
はそれぞれ、自由空間内の光速及び光インピーダンスであり、インピーダンスζcは
【数52】
であり、σは導体の導電率であり、δは、周波数ωにおける表皮厚さであり、
【数53】
はコイルの電気双極子モーメントであり、
【数54】
はコイルの磁気双極子モーメントである。放射抵抗の式(22)については、準静的レジーム(h、r≪λ=2πc/ω)における動作の仮定を用いており、この仮定は、サブ波長共振の望ましいレジームである。これらの定義により、共振の吸収及び放射のQ値はそれぞれ、Qabs=Z/Rabs及びQrad=Z/Rradで与えられる。
【0061】
式(19)〜(22)より、単に共振コイル内の電流分布
を知るために必要な共振パラメータを決定することになる。マックスウェルの方程式を解いて、導線コイルの共振の電磁的固有モードにおける電流分布を厳密に見出すことは、例えば標準的なLC回路の共振の電磁的固有モードにおける電流分布を厳密に見出すことより複雑であり、有限長のコイルについての文献では厳密な解を見出すことができておらず、厳密な解を困難にしている。原理的には、伝送線的なモデルを書き出し、このモデルを「馬力で」解くことはできる。代わりに、(以下に説明する)実験と十分一致する(〜5%)モデルを提示する。電流が導線を出ることはできないので、各コイルを形成する導体の有限の長さが、コイルの端では電流が0でなければならないという境界条件を課すことに鑑み、各コイルの共振モードは、導線の全長に沿った正弦波電流によって十分近似されるものと仮定する。最低(次)のモードに関心を払い、従って、導線に沿った座標をxで表せば、xは-1/2から+1/2まで変化し、電流振幅プロファイルはI(x)=I0cos(πx/l)の形式を有し、ここで、有効な仮定であるa≪rとすれば、特定のxに対して、電流は導線の外周に沿って大幅に変化しないものと仮定している。電荷についての連続方程式より直ちに、直線的な電荷密度プロファイルはρl(x)=ρ0sin(πx/l)の形式であるべきことになり、従って、次式のようになる:
【数55】
これらの正弦波プロファイルを用いて、式(19)及び(20)の積分を数値的に計算することによって、コイルのいわゆる「自己インダクタンス」Ls及び「自己容量」Csを見出し、関連する周波数及び実効インピーダンスはそれぞれ、ω及びZsである。「自己抵抗」Rsは、式(21)及び(22)によって、次式:
【数56】
及び
【数57】
を用いて解析的に与えられ、従って、関連するQ値を計算することができる。
【0062】
λ/r≧70なる(即ち、近接場結合に特に適し、準静的の限界内に十分入る)サブ波長モードを有する共振コイルの2例についての結果を、表1に示す。波長及び吸収、放射及び損失速度についての数値計算結果を、サブ波長コイル共振モードの2つの異なる場合について示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。マイクロ波周波数において想定されるQ値はQs,abs≧1000及びQs,rad≧5000である。
【0063】
【表1】
【0064】
図4を参照すれば、いくつかの例では、2つの自己共振導線コイル間でエネルギーを伝達する。電界及び磁界を用いて、異なる共振導線コイルどうしを、それらの中心間に距離Dをおいて結合する。通常、h≫2rを有するコイルを考えれば、系内では電気結合が磁気結合よりずっと支配的であり、逆に、h≪2rを有するコイルについては、磁気結合が電気結合よりずっと支配的である。2つのコイル1、2の、電荷分布及び電流分布をそれぞれ
及び
と定義し、全電荷及びピーク電流をそれぞれq1,2及びI1,2と定義し、容量及びインダクタンスをそれぞれC1,2及びL1,2と定義すれば、これらの定義は、単一コイルの場合の
q0,I0,C及びLの類似であり、従って明確に定義され、これらのコイルの相互容量及び相互インダクタンスは、全エネルギーWによって次式のように定義することができ:
【数58】
ここに、
【数59】
であり、積分中の遅延係数
【数60】
は、各コイルが他のコイルの近接場内にある関心事の準静的レジームD≪λでは無視することができる。この定義により、結合係数は次式によって与えられる:
【数61】
【0065】
従って、2つの自己共振コイル間の結合速度を計算するために、ここでも電流プロファイルを必要とし、仮定した正弦波電流プロファイルを再び用いることによって、式(23)から、当該コイルの中心間に距離Dをおいた2つの自己共振コイル間の相互容量MC,s及び相互インダクタンスML,sを数値的に計算し、従ってk=1/Qκも決定される。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に、同一の自己共振コイルの対を特徴とする好適例についての関係パラメータを示す。2つのノーマルモードの平均波長及び損失速度(個別の値は示さず)についての数値計算結果を提示し、また、表1に提示するモードの2つの場合について、結合速度及び性能指数も結合距離Dの関数として示す。中程度の距離D/r=10から3について想定される結合対損失比はU〜2から70であることがわかる。
【0068】
2.1.1 実験結果
上述した無線エネルギー伝達システムの例の実験的実現は、上述した種類の2つの自己共振コイルから成り、図5に概略的に示すように、その1つ(電源側コイル)は発振回路に誘導結合され、第2のもの(装置側コイル)は抵抗負荷に誘導結合されている。図5を参照すれば、Aは半径25cmの単一銅線ループであり、駆動回路の一部をなし、周波数9.9MHzの正弦波を出力する。Bは、負荷(「電球(ライトバルブ)」)に取り付けた導線のループである。種々のκは物体間の直接結合を表す。コイルdとループAとの間の角度は、これらのコイルの直接的結合が0になるように調整されているのに対し、コイルsとdは同軸に整列している。BとAの間、及びBとsの間の直接的結合は無視できる。
【0069】
電力伝達方式の実験検証用に構成した2つの同一の螺旋コイルのパラメータは、h=20cm、a=3cm、r=30cm、及びN=5.25である。両コイルは銅製である。構成上の不完全さにより、螺旋ループ間の間隔は均一でなく、10%(2cm)の不確定性をhに起因させることによって、これらのループの均一性についての不確定性を要約した。これらの寸法を与えて想定される共振周波数はf0=10.56±0.3MHzであり、この周波数は、約9.90MHz付近で測定された共振から約5%外れている。
【0070】
これらのループについての理論的Q値は、(完全な銅の抵抗率ρ=1/σ=1.7×10-8Ωmを仮定すれば)〜2500であるものと推定されるが、その測定値は950±50である。この相違の大部分は、銅線の表面上にある導電性の低い酸化銅の層の影響によるものと確信し、この周波数では、浅い表皮厚さ(〜20μm)によって電流がこの層に限定される。従って、その後のすべての計算では、実験的に観測したQ値(及びこれから導出したΓ1=Γ2=Γ=ω/(2Q))を用いた。
【0071】
結合係数κは、(隔離した際に、hを少し調整することによって同じ共振周波数に微調整した)2つの自己共振コイルを距離Dだけ離して配置し、伝送スペクトル中の2つの共振モード周波数の分裂(伝送スペクトル中で2つの共振モードの周波数が分かれる度合い)を測定することによって見出すことができる。結合モード理論によって導出した式(13)によれば、この伝送スペクトル中の分裂は、AとBを比較的大きい距離に保つことによってκA,Bが非常に小さく保たれている際に
【数62】
となるはずである。これら2つのコイルを同軸に整列させた際の、実験結果と理論的結果との比較を距離の関数として図6に示す。
【0072】
図7に、強結合係数U=κ/Γの実験値と理論値の比較を、2つのコイル間の間隔の関数として示す。理論値は、理論的に得られたκと実験的に測定したΓとを用いることによって得られる。陰影を付けた領域は、Qの〜5%の不確定性による理論的なUの開きを表す。上述したように、理論的な最大効率は、パラメータUのみに依存し、距離の関数として図7にプロットする。Uは、D=2.4m(コイルの半径の8倍)に対しても1より大きく、従って、系は、調べた距離の全範囲にわたって強結合レジームである。
【0073】
電力発生回路は、半径25cmの銅線の単ループを用いて電源側コイルに誘導結合された標準的なコルピッツ発振器である(図5参照)。負荷は、事前に較正した電球から成り、それ自体の絶縁配線のループに取り付け、このループは装置側コイルに近接して配置し、装置側コイルに誘導結合されている。従って、電球と装置側コイルとの間の距離を変化させることによって、パラメータUB=κB/Γを、理論的に
【数63】
で与えられるその最適値に一致するように調整した。当該ループの誘導性の性質により、電球に接続したループは小さいリアクタンス成分をκBに加え、このリアクタンス成分は、コイルを少し再調整することによって補償した。抽出される動作電力は、負荷側の電球がその最大公称光度(輝度)になるまで、コルピッツ発振器内に入る電力を調整することによって測定した。
【0074】
特に電源側コイルと負荷との間で行われる伝達の効率を分離するために、各自己共振コイルの中点における電流を電流プローブ(コイルのQ値を著しく低下させないことが判明している)で測定した。これにより、以上で定義した電流パラメータI1及びI2の測定値が与えられた。各コイルにおいて消散される電力をP1,2=ΓL|I1,2|2から計算し、効率はη=Pw/(P1+P2+Pw)から直接得た。実験の設定が2物体結合モード理論モデルによって適切に記述されることを保証するために、装置側コイルを、コルピッツ発振器に取り付けた銅線ループへの(この装置側コイルの)直接的結合が0になるように配置した。実験結果を、式(15)によって与えられる最大効率の理論的予測値と共に図8に示す。
【0075】
この例を用いれば、この設定を用いて大量の電力を電源側コイルから装置側コイルに伝達することができ、例えば2m以上離れた距離から60Wの電球を十分に点灯させることができた。追加的試験として、駆動回路に入る全電力も測定した。しかし、無線伝達自体の効率は、この方法では推定することは困難である、というのは、コルピッツ発振器自体の効率は100%には程遠いと想定されるが、この効率を正確に知れないからである。それにもかかわらず、このことは旧来のより低い効率の限界に上乗せを与える。例えば、2mの距離越しに60Wを負荷に伝達する際は、駆動回路に流入する電力は400Wであった。これにより、壁面から負荷への〜15%の全体効率が生じ、この距離における無線電力伝達の効率を〜40%と想定し、駆動回路の効率が低いものとすれば、この効率は妥当である。
【0076】
以上の理論的取り扱いより、一般的な例では、電力伝送が実用的であるためには、コイルが共振していることが重要であることがわかる。一方のコイルが共振から離調すると共に、負荷に伝送される電力が急峻に低下することを実験的に見出した。負荷のQ値の逆数の2、3倍のわずかな離調Δf/f0に対しては、装置側コイル内の誘導電流はノイズ(雑音)と区別がつかない。
【0077】
人間、及び金属製及び木製家具のような種々の日常的物体、並びに大型及び小型の電子装置を2つのコイル間に配置しても、さらに、これらが電源側と装置側との間の見通しを大きく遮っても、電力伝送は目に見えて影響されないことが判明している。外部物体は、この物体がいずれかのコイルから10cmより近くにある際にしか影響しないことが判明している。(アルミニウム箔、発泡スチレン及び人間のような)一部の材料の大部分は共振周波数を少しシフトさせたが、このシフトは原理的に、上述した種類のフィードバック回路で容易に補正することができ、他のもの(段ボール、木材、及びPVC(ポリ塩化ビニル))は、コイルから2、3cmより近くに配置した際にQを低下させ、これにより伝達の効率を低下させた。
【0078】
こうした電力伝送の方法は、人間にとって安全なはずであるものと確信する。60W(ラップトップ・コンピュータに給電するには十分過ぎる)を2m越しに伝送する際に、発生する磁界の大きさは、コイルの導線から約1cm未満を除いたすべての距離について、地球の磁界よりもずっと小さいものと推定した。これらのパラメータに対して、放射される電力は〜5Wであり、この値はおよそ、携帯電話(の電力)より高い大きさのオーダーであるが、以下に説明するように大幅に低減することができる。
【0079】
2つのコイルは現在、同一寸法であるが、装置側コイルは、効率を低下させることなしに携帯装置内に収まるように十分小さくすることができる。例えば、電源側コイルと装置側コイルとの特徴的サイズの積を一定に維持することができる。
【0080】
これらの実験は、中距離範囲越しの電力伝送用のシステムを実験的に実証し、独立して互いに矛盾しない複数回の試験において、実験結果が理論と良く一致することを見出した。
【0081】
この方式の効率及びカバーした距離は、コイルを銀メッキすることによって(このことはコイルのQ値を増加させるはずである)、あるいは共振物体のより巧妙な幾何学的形状を用いることによって相当改善されるものと確信する。それにもかかわらず、本明細書に提示したシステムの性能特性は既に、実際の応用において有用であり得るレベルにある。
【0082】
2.2 容量負荷付き導体ループまたはコイル
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が容量負荷付きの導線コイルである。図9を参照すれば、上述したように、Nターンの導線を有する螺旋コイルが、面積Aの一対の平行導体板に接続され、これらの導体板は、相対誘電率εの誘電体を介して距離dだけ間隔をおき、すべてのものが空気に囲まれている(図に示すようにN=1かつh=0である)。これらの平板は容量Cp=ε0εA/dを有し、この容量がコイルの分布容量に加わり、従ってその共振を変化させる。しかし、負荷容量の存在が、導線内部の電流分布を大幅に変化させ、従って、コイルの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cはそれぞれ、Ls及びCsとは異なり、これらの値は、同じ幾何学的形状の自己共振コイルについては、正弦波電流プロファイルを用いて計算される。いくらかの電荷が、外部負荷コンデンサのプレート(極板)に蓄積されるので、導線内部の電荷分布ρが低減され、従ってC<Csとなり、従って、電荷保存方程式より電流分布
が平坦化され、従ってL>Lsとなる。この系についての共振周波数は
【数64】
であり、Cp→0になると共に、
【数65】
となる。
【0083】
一般に、この系については、望ましいCMTパラメータを見出すことができるが、ここでも、マックスウェルの方程式の非常に複雑な解を必要とする。その代わりに、電流分布についての適度な推量を行うことのできる特別な場合のみを解析する。Cp≫Cs>Cである際は、
【数66】
かつ
【数67】
であり、この間にすべての電荷が負荷コンデンサのプレート上にあり、従って電流分布は導線に沿って一定である。このことは、ここで式(19)からLを数値的に計算することを可能にする。h=0でありNが整数である場合は、式(19)中の積分は実際に解析的に計算することができ、式L=μ0r[ln(8r/a)−2]N2を与える。ここでも、Irms=I0、
【数68】
及び
【数69】
である(即ち、磁気双極子の項のみが放射に寄与する)ので、Rについては、式(21)及び(22)から明示的な解析式が得られ、従って、Qabs=ωL/Rabs及びQrad=ωL/Rradも決定することができる。この計算の終わりに、定電流プロファイルの仮定の有効性を、条件:
【数70】
を実際に満足していることをチェックすることによって確認する。しかし、この条件を満足するために、大きな外部容量を用いることができ、このことは通常、動作周波数を、簡単に決定される最適周波数より下にシフトさせ、その代わりに、一般的な例では、考慮中の種類のコイルについては、非常に小さい自己容量Csから始めることを選ぶことが多く、このため、N=1である際は、自己容量は単一ターン上の電荷分布から生じ、この自己容量はほとんど常に非常に小さく、あるいはN>1かつh≫2Naである際は、支配的な自己容量は隣接するターン上の電荷分布から生じ、この自己容量は、隣接するターン間の間隔が大きければ小さい。
【0084】
外部負荷容量Cpは、(例えばAまたはdを調整することによって)共振周波数を調整する自由度を与える。従って、特別で単純な場合h=0については、解析式があり、全体のQ値Q=ωL/(Rabs+Rrad)は、次式の最適周波数で最大になり:
【数71】
次式の値に達する:
【数72】
【0085】
より低い周波数では、この値は抵抗損によって支配され、最高周波数では放射によって支配される。しかし、これらの式はωQ≪ωsである限り正確であり、そして以上で説明したように、このことはN=1である際はほとんど常に成り立ち、N>1である際はより不正確になる、というのは、h=0は通常、大きな自己容量を暗に意味するからである。自己容量を外部容量に比べて低減する必要がある場合は、大きなhを有するコイルを用いることができるが、ここでもL及びωQ、Qmaxについての式がより不正確になる。同様の定性的挙動が想定されるが、この場合に定量的予測を行うためには、より複雑な理論モデルを必要とする。
【0086】
N=1かつh=0なるコイルの、式(24)の最適周波数における、λ/r≧70なるサブ波長モード(即ち、近接場結合に非常に適し、かつ十分、準静的の限界内である)の2つの例について、上記解析の結果を表3に提示する。定電流の仮定、及び結果的な解析式の有効性を確認するために、他の完全に独立した方法を用いたモード解法計算も実行し:即ち、コンピュータ計算による3D周波数領域有限要素(FEFD:finite-element frequency-Domain)シミュレーション(空間離散化とは切り離して、周波数領域でマクスウェルの方程式を厳密に解く)を行い、このシミュレーションでは、導線の境界を、複素インピーダンス
【数73】
の境界条件を用いてモデル化し、この条件は、ζc/ζ0≪1である限り(銅については、マイクロ波において<10-5)有効である。表3は、数値的(カッコ内は解析的)FEFDの結果を、波長及び吸収、放射及び全損失速度に対して、サブ波長共振モード2つの異なる場合について示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。(表中では、図4のプロットの特定パラメータを太字で強調している。)これら2つの方法(解析的及び計算)は非常に良く一致し、いくつかの例では、最適周波数は小さいMHz数のマイクロ波の波長範囲であり、想定されるQ値はQabs≧1000及びQrad≧10000であることを示している。
【0087】
【表3】
【0088】
図10を参照すれば、いくつかの例では、2つの容量負荷付きコイル間でエネルギーを伝達する。当該コイルの中心間に距離Dをおいた2つの容量負荷付きコイル1、2間のエネルギー伝達速度については、ω≪ωsの場合の一定の電流分布を用いることによって、式(23)から相互インダクタンスMLを数値的に評価することができる。h=0である場合は、結合は磁気結合のみであり、ここでも解析式があり、この解析式は、準静的限界内r≪D≪λ、かつ図10に示す相対配向については、
【数74】
となり、このことは、
【数75】
が周波数ω及びターン数N1、N2とは独立であることを意味する。従って、結果的な関心事の結合の性能指数は次式のようになる:
【数76】
ここでもN1=N2=1については、より正確になる。
【0089】
式(26)より、性能指標を値Umaxに最大化する最適周波数ωUは、Q1Q2が最大になる周波数
に近いことがわかる、というのは、kは(少なくとも、準静的近似がまだ有効である関心事の距離D≪λについては)周波数には大きく依存しないからである。従って、最適周波数
【数77】
は、2つのコイル間の距離Dとはほとんど独立であり、単一コイルのQ1及びQ2がピークになる2つの周波数間にある。同じコイルについては、最適周波数は(24)式によって与えられ、従って、式(26)からの強結合係数は次式のようになる:
【数78】
【0090】
いくつかの例では、容量負荷付き導体ループまたはコイルを、これらの固有角周波数がΓU内でωUに近くなるように調整することができ、ΓUは、U>Umax/2となる角周波数幅の半分である。
【0091】
表4に、以上に基づく数値的FEFD、及びカッコ内は解析的結果を、各々が表3に記載の整合した一対の負荷付きコイルから成る2つの系について示す。平均波長及び損失速度を、結合速度、及び結合対損失比の性能指数U=κ/Γと共に、結合距離Dの関数として、これら2つの場合について示す。なお、表に示す平均の数値的Γradは、表3の単ループとは少し異なり、Γradの解析的結果は表に示していないが、単ループの値を用いている。(表中では、図10のプロットに対応する特定パラメータを太字で強調している。)ここでも、定電流の仮定を有効なものとするためにN=1を選定し、MLは式(23)より数値的に計算した。実際に、正確さは、コンピュータ計算によるFEFDモード解法シミュレーションとの一致によって確認することができ、このシミュレーションは、結合系の2つのノーマルモードの周波数分裂(周波数の分かれる度合い)によってκを与える(式(4)からのδE=2κ)。その結果は、中程度の距離D/r=10から3については、想定される結合対損失比がκ/Γ〜0.5から50の範囲内にあることを示す。
【0092】
【表4】
【0093】
2.2.1 最適な電力伝達効率の導出
図11を参照すれば、特定の共振物体、例えば容量負荷付き導体ループからより直接的にアクセス可能なパラメータに関して、式(15)を再導出して表現するために、次の系の回路モデルを考えることができ、即ち、インダクタンスLs、Ldがそれぞれ電源側及び装置側のループを表し、Rs、Rdがそれぞれの損失を表し、そしてCs、Cdは、周波数ωで両者の共振を達成するために必要な対応する容量を表す。電圧発生器Vgを発生器に接続し、負荷抵抗Rlを装置側に接続することを考える。相互インダクタンスをMで表す。
【0094】
そして、共振状態の(ωLs=1/ωCs)電源側回路より、次式のようになり:
【数79】
共振状態の(ωLd=1/ωCd)装置側回路より、次式のようになる:
【数80】
【0095】
従って、式(29)を式(28)に代入することによって、次式を得る:
【数81】
ここで、電力発生器が伝達する電力をPg=Re{Vg*Is/2}、電源内で失われる電力をPs=|Is|2Rs/2、装置内で失われる電力をPd=|Id|2Rd/2、及び負荷に伝達される電力をPl=|Id|2Rl/2と識別した。従って、電力伝送効率は次式のようになる:
【数82】
【0096】
ここで、
【数83】
によって効率を最適化するように負荷インピーダンスRlを選定すれば、次式の負荷インピーダンス
【数84】
及び次式の最大可能な効率を得る:
【数85】
【0097】
ここで、CMTモデルとの対応をチェックする。なお、κl=Rl/2Ld、Γd=Rd/2Ld、Γs=Rs/2Ls、及び
【数86】
であり、従って、Ul=κl/Γd=Rl/Rd、及び
【数87】
である。従って、条件式(32)は条件式(14)と同一であり、最適効率の式(33)は一般式(15)と同一である。実際に、CMT分析が予測するように、大きい効率を得るためには、大きい強結合係数Uを有するシステムを設計する必要がある。
【0098】
2.2.2 Uの最適化
上記の結果を用いて、容量負荷付きコイルを用いるエネルギー伝達システムの性能を向上または最適化することができる。例えば、異なるシステムパラメータによる式(27)のスケーリング(拡大縮小)より、システムの性能指数Uを最適化するために、いくつかの例では、次のようにすることができることがわかる:
導電材料の抵抗率を減少させる。このことは例えば、(銅または銀のような)良導体を用いることによって、及び/または温度を低下させることによって達成することができる。非常に低温では、超電導材料を用いて極めて良好な性能を達成することができる。
導線の半径aを増加させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。この行為の目的は主に、電流の流れる断面積を増加させることによって、導線における抵抗損を低減することにあり、従って、代案として、円形導線の代わりにリッツ線またはリボンを用いることができる。
エネルギー伝達の所望固定距離に対して、ループの半径rを増加させる。一般的な例では、この行為は、特に主として装置の物理的サイズの考慮によって制限され得る。
所望固定距離対ループサイズの比率D/rに対して、ループの半径rを減少させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
ターン数を増加させる。(式(27)は、N>1に対してはより正確でなくなるものと想定されるが、それでも定性的には、Nの増加による結合対損失比の改善が期待されることの良い指標を与える。)一般的な例では、この行為は、物理的サイズ及び可能な電圧の考慮によって制限され、これについては以下の段落で説明する。
2つのコイル間の整列及び配向を調整する。両方の円柱形コイルが同じ円柱の対称軸を有する(即ち、これらのコイルが互いに「対面」する)際に、性能指数が最適化される。いくつかの例では、(2つのコイルの軸どうしが直交し、2つのコイルの中心がこれら2つの軸の一方の上にあるような)0の相互インダクタンスに至るコイル相互間の特定の角度及び配向を回避すべきである。
最後に、コイルの高さhも、他の利用可能な設計パラメータであり、コイルの半径rと同様に性能に影響を与えることができ、従って、これらの設計ルールは同様にすることができる。
【0099】
以上の解析技法を用いて、所望のパラメータを有するシステムを設計することができる。例えば、以上で説明した技法を用いて、材料が銅(σ=5.998・107S/m)である際に、以下に列挙するように、所定半径を有する2つの同じ単一ターンのループを系として設計する際に用いるべき導線の断面半径aを決定して、これらのループ間の所定のD/rにおけるU=κ/Γに関する特定性能を達成することができる:
【数88】
【0100】
2つの非類似のループについても、同様の解析を行うことができる。例えば、いくつかの例では、考慮中の装置が非常に特殊であり(例えば、ラップトップ・コンピュータまたは携帯電話)、従って、装置側物体の寸法(rd,hd,ad,Nd)が非常に制約される。しかし、いくつかのこうした例では、電源側物体に対する成約はずっと小さい、というのは、電源は例えば、床下または天井に配置することができるからである。こうした場合には、上記所望距離は、用途に基づいて明確に定められることが多い(例えば、テーブル上のラップトップ・コンピュータを床から無線で充電するためのDは〜1mである)。以下に列挙するものは、ここでも材料が銅(σ=5.998・107S/m)である際に、電源側物体の寸法を変化させて
【数89】
に関する所望性能を達成することのできる方法の(Ns=Nd=1かつhs=hd=0に簡略化した場合の)例である:
【数90】
【0101】
2.2.3 κの最適化
上述したように、いくつかの例では、共振物体のQ値Qは外部摂動により制限され、従って、コイルのパラメータを変化させることがQの改善に至らない。こうした場合には、結合係数kを増加させることによって強結合係数Uを増加させることを選ぶことができる。この結合は、周波数、及びターン数には依存しない。従って、いくつかの例では、次のようにすることができる:
導線の半径a1及びa2を増加させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
所望固定距離対コイルサイズの比率
に対し、インダクタンスの弱い(対数的な)依存性しか残らない。このことは、コイルの半径r1及びr2を減少させるべきことを示唆する。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
2つのコイル間の整列及び配向を調整する。一般的な例では、両方の円柱形コイルが同じ円柱の対称軸を有する(即ち、これらのコイルが互いに「対面」する)際に、結合が最適化される。(2つのコイルの軸どうしが直交し、2つのコイルの中心がこれら2つの軸の一方の上にあるような)0の相互インダクタンスに至るコイル相互間の特定の角度及び配向は、明らかに回避すべきである。
最後に、コイルの高さh1及びh2も、他の利用可能な設計パラメータであり、コイルの半径r1及びr2と同様に結合に影響を与えることができ、従って、これらの設計ルールは同様にすることができる。
【0102】
さらに、効率とは別の実際的考慮、例えば物理的サイズの制限を、以下に詳細に説明する。
【0103】
2.2.4 系全体の性能の最適化
多くの場合に、共振物体の寸法は、目前の特定用途によって設定される。例えば、この用途がラップトップ・コンピュータまたは携帯電話に給電することである際は、装置側共振物体は、ラップトップ・コンピュータまたは携帯電話のそれぞれの寸法より大きい寸法を有することはできない。特に、ループ半径rs,d及び導線半径as,dという指定寸法の2ループの系については、系の最適化のために調整すべく残された独立パラメータは:ターン数Ns,d、周波数f、電力負荷消費速度κl=Rl/2Ld、及び電力発生器の給電速度κg=Rg/2Lsであり、ここにRgは電力発生器の内部(特性)インピーダンスである。
【0104】
一般に、種々の例では、増加または最適化させたい主要な従属変数は全体効率ηである。しかし、システム設計時に、他の重要な変数を考慮に入れる必要がある。例えば、容量負荷付きコイルを特徴とする例では、設計は例えば、導線内部を流れる電流Is,d、及びコンデンサの端子間電圧Vs,dによって制約され得る。これらの制限は重要であり得る、というのは、〜Wの電力の応用については、これらのパラメータの値が、導線またはコンデンサのそれぞれが担うには大き過ぎることがあるからである。さらに、(負荷による)装置側の全負荷のQ値Qd[l]=ω/2(Γd+Γl)=ωLd/(Rd+Rl)、及び(電源による)電源側の全負荷のQ値Qs[g]=ω/2(Γs+Γg)=ωLs/(Rs+Rg)は、なるべく小さくあるべき量である、というのは、電源側及び装置側のQ値が非常に高い際に、電源側及び装置側の共振周波数をこれらのQ値内で一致させることは、実験的には挑戦的であり得るし、小さな変動に対してより敏感であり得る。最後に、放射電力Ps,rad及びPd,radは概して、こうした電力が一般に既に小さい磁気による無放射方式でも、遠距離場の干渉及び安全性を考えて最小化すべきである。以下では、各独立変数の従属変数に対する影響を調べる。
【0105】
Uのいくつかの特定値について、電力負荷消費速度を
【数91】
によって表現するために、新たな変数wpを定義する。従って、いくつかの例では、この速度の選定に影響を与える値は、次の通りである:
電源側に蓄積される必要なエネルギー(従ってIs及びVs)を最小化するためには、
【数92】
効率を増加させるためには、前述したように、
【数93】
あるいは、装置側に蓄積されるエネルギー(従って、Id及びVd)を減少させ、かつQd[l]を減少させるか最小化するためには、
【数94】
電力発生器の給電速度Ug=κg/Γsの選定の影響も同様であり、電源側/装置側及び電力発生器/負荷の役を逆にする。
【0106】
いくつかの例では、Ns及びNdを増加させることによりQs及びQdが増加し、従って、前述したように、U及び効率が大幅に増加する。また、ループのインダクタンスが増加するので、電流Is及びIdが減少し、従って、所定の出力電力Plのために必要なエネルギーWs,d=Ls,d|Is,d|2を、より小さい電流で達成することができる。しかし、いくつかの例では、Nd、従ってQdを増加させることによって、Qd[l]、Pd,rad、及び装置側の容量の端子間電圧Vdを増加させることができる。Nsを増加させることの、Qs,[g]、Ps,rad及びVsに対する影響も同様である。結論として、いくつかの例では、ターン数Ns及びNdは(高い効率のために)十分大きく選定すべきであるが、適度な電圧、負荷のQ値、及び/または放射される電力を可能にするように選定すべきである。
【0107】
周波数に関しても、効率のために最適な周波数が存在する。この最適な周波数の近くでは、Qd[l]及び/またはQs[g]は最大に近くすることができる。いくつかの例では、より低い周波数に対して、電流は一般により大きくなるが、電圧及び放射電力はより小さくなる。いくつかの例では、効率を最大にする周波数またはそれより幾分低い周波数のいずれかを採る。
【0108】
システムの動作レジームを決定する1つの方法は、図式解法に基づく。rs=25cm、rd=15cm、hs=hd=0、as=ad=3mm、及びループ間の距離D=2mの2つのループを考える。図12に、上記従属変数のいくつか(電流、電圧、及び出力電力の1Wに正規化した放射電力)を、wp及びNsをいくつか選定して、周波数及びNdに対してプロットする。図12は、以上で説明したシステム性能の傾向を示す。図13に、従属変数の等高線図を、周波数及びwpの関数として示すが、Ns及びNdは共に固定である。例えば、上記寸法を有する2ループの系用のパラメータの適度な選定は次の通りである:Ns=2、Nd=6、f=10MHz、及びwp=10;これらの値は次の性能特性を与える:η=20.6%、Qd[l]=1264、Is=7.2A、Id=1.4A、Vs=2.55kV、Vd=2.30kV、Pd,rad=0.006W。なお、図12及び13の結果、及びすぐ前に記した性能特性の計算は、以上に挙げた解析式を用いて行ったものであり、従って、これらはNs、Ndの大きな値に対してはより正確でなくなるものと想定されるが、それでもスケーリング及び大きさのオーダーの良好な推定値を与える。
【0109】
最後に、これに加えて、電源側の寸法を最適化することができる、というのは、前に説明したように、通常は装置側の寸法のみが制限されるからである。即ち、rs及びasを独立変数の集合に加えて、問題の従属変数のすべてについて、これらの独立変数に対しても最適化することができる(効率のみのためにこのことを行う方法は、以前に説明した)。こうした最適化は、改善された結果をもたらす。
【0110】
この説明では、中程度の距離における強結合レジームでの動作を保証するならば、中程度の距離において少なくとも中程度の電力伝送(〜W)が高い効率で可能であることを提起する。
【0111】
2.3 誘導負荷付き導体ロッド
長さ2h及び断面半径aの直線導体ロッドは分布容量及び分布インダクタンスを有し、従って、角周波数ωの共振モードをサポートする。自己共振コイルの場合と同じ手順を用いて、式(19)及び式(20)によって、このロッドの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cを定義することができる。これらの定義により、共振の角周波数及び実効インピーダンスはここでも、それぞれ
【数95】
及び
【数96】
で与えられる。最低モードが関心事である際は、導体に沿った座標をxで表せば、xは−hから+hまで変化し、電流振幅プロファイルはI(x)=I0cos(πx/2h)の形式を有する、というのは、電流振幅プロファイルはロッドの開放端において0でなければならないからである。これは周知の半波長電気双極子の共振モードである。
【0112】
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が誘導負荷付きの導体ロッドである。図14を参照すれば、長さ2h及び断面半径aの直線導体ロッドが、前の段落のように、長さhの2つの等しい断片に切り分けられ、これらの断片は、相対透磁率μの磁性材料の周りに巻かれたコイルを介して接続され、これらのすべてが空気に囲まれている。このコイルはインダクタンスLcを有し、このインダクタンスがロッドの分布インダクタンスに加わり、従ってその共振を変化させる。しかし、中央に装填したインダクタの存在が導線内部の電流分布を大幅に変化させ、従って、ロッドの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cはそれぞれ、前の段落のように、同じ全長の自己共振ロッドについて正弦波電流プロファイルを用いて計算したLs及びCsとは異なる。外部負荷インダクタであるコイルの内部にいくらかの電流が流れているので、ロッド内部の電流分布
が低減され、従ってL<Lsとなり、従って、電荷保存方程式より、直線的な電荷分布ρlが中央に向かって平坦化し(ロッドの一方の側では正になり、他方の側では負になり、インダクタを通して急激に変化し)、従ってC>Csとなる。この系の共振周波数は
【数97】
であり、Lc→0になると共に
【数98】
となる。
【0113】
一般に、この系について所望のCMTパラメータを見出すことはできるが、ここでも、マックスウェルの方程式の非常に複雑な解を一般に必要とする。特別な場合には、電流分布についての適度な推定を行うことができる。Lc≫Ls>Lである際は、
【数99】
及び
【数100】
であると共に、電流分布はロッドに沿って三角形状であり(中央に装填したインダクタの所で最大値を有し、端部では0であり)、従って、ロッドを半分にした一方の側では電荷分布は正の定数であり、ロッドの他方の側では負の定数である。このことは、式(20)からCを数値的に計算することを可能にする。この場合は、式(20)中の積分は解析的に計算することができ、公式1/C=1/(πε0h)[In(h/a)−1]を与える。ここでも、式(21)及び(22)より、Rについての明示的な解析公式が利用可能である、というのは、
【数101】
及び
【数102】
であるからであり(即ち電気双極子の項のみが放射に寄与する)、従って、Qabs=1/ωCRabs及びQrad=1/ωCRradを定めることができる。計算の終わりに、条件:
【数103】
が実際に満たされていることをチェックすることによって、上記三角形プロファイルの仮定の有効性を確認することができる。この条件は比較的容易に満たすことができる、というのは、導体ロッドは一般に、非常に小さい自己インダクタンスから始まるからである。
【0114】
この場合の他の重要な損失要因は、外部負荷インダクタLcのコイル内部の抵抗損であり、これはインダクタの特定設計に依存する。いくつかの例では、このインダクタはブルックス(Brooks)コイルで作製され、これは、固定の導線長に対して最高のインダクタンスを示し、従って最高のQ値を示すコイルの幾何学的形状である。ブルックスコイルの幾何学的形状は、円柱状の対称なコイル巻型の周りに巻いた断面半径aBcのNBcターンの導線を有して、一辺rBcの正方形断面コイルを形成し、この正方形の内側も半径rBcであり(従って、この正方形の外側は半径2rBcであり)、従って
【数104】
である。従って、このコイルのインダクタンスは
【数105】
であり、その抵抗は
【数106】
であり、導線の全長は
【数107】
であり、表皮厚さは周波数と共に変化するので、周波数DCからAC限界までの抵抗の遷移について近似的な平方根則を用いた。
【0115】
外部負荷インダクタンスLcは、共振周波数を調整する自由度を与える。例えば、固定サイズrBcを有するブルックスコイルについては、導線の断面半径aBcを減少させることによりターン数NBcを増加させることによって、共振周波数を低下させることができる。従って、所望の共振角周波数
【数108】
は、
【数109】
に対して達成することができ、結果的なコイルのQ値は次式のようになる:
【数110】
従って、解析公式のある特定の単純な場合Lc≫Lsについては、全Q値Q=1/ωC(Rc+Rabs+Rrad)は、ある最適な周波数ωQで最高値になり、値Qmaxに達し、両方の値は負荷インダクタの特別な設計によって決まる。例えば、上述したブルックスコイルの手順については、最適周波数において次式のようになる:
【数111】
より低い周波数では、このQ値は、インダクタコイル内部の抵抗損によって支配され、より高い周波数では、放射によって支配される。なお、上記の公式はωQ≪ωsである限り正確であり、そして以上で説明したように、大きいインダクタンスを用いることによって、このように設計することは容易である。
【0116】
ブルックスコイルを用いた、最適周波数ωQにおけるλ/h≧200なる(即ち、近接場結合に非常に適し、準静的の限界内に十分入る)サブ波長モードの2つの例について、上記の結果を表5に提示する。
【0117】
表5は、(以前の表と同様に)波長及び吸収、放射及び全損失速度についての解析結果をカッコ内に、サブ波長ループ共振モードの2つの異なる場合に付いて示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。この結果は、いくつかの例では、最適周波数は小さいMHz数のマイクロ波の波長範囲であり、想定されるQ値はQabs≧1000及びQabs≧100000である。
【0118】
【表5】
【0119】
いくつかの例では、2つの誘導負荷付きロッド間でエネルギーを伝達する。当該ロッドの中心間に距離Dをおいた2つの誘導負荷付きロッド間のエネルギー伝達の速度については、ω≪ωsの場合は三角形状の電流分布を用いることによって、式(23)から相互容量Mcを数値的に評価することができる。この場合は、結合は電気結合のみであり、ここでも解析公式があり、準静的の限界h≪D≪λにおいて、及び2つのロッドが同じ軸上に整列する配向については、この解析公式は
【数112】
であり、この解析公式は、
【数113】
が周波数とは独立であることを意味する。従って、結果的な強結合係数Uを得ることができる。
【0120】
性能指数が最大値Umaxになる最適周波数ωUは、Q1Q2が最大になる周波数
に近いことがわかる、というのは、kは(少なくとも、準静的の近似がまだ有効である関心事の距離D≪λについては)周波数には大きく依存しないからである。従って、最適周波数
【数114】
は、2つのロッド間の距離Dとはほぼ独立であり、単一ロッドのQ1及びQ2がそれぞれピークになる2つの周波数
と
との間にある。いくつかの一般的な例では、誘導負荷付き導体ロッドを、これらのロッドの固有角周波数がΓU内でωUに近くなるように調整することができ、ΓUはU>Umax/2となる角周波数幅の半分である。
【0121】
表6を参照すれば、各々が、表5に記載のロッドを整合させて装填した一対のロッドから成る2つの系についての、上記に基づく解析結果を(以前の表と同様に)カッコ内に示す。2つの場合について、平均波長及び損失速度を、結合速度及び結合対損失比の性能指数U=κ/Γと共に、結合距離Dの関数として示す。なお、Γradについては、単一ロッドの値を用いている。ここでも、Lc≫Lsを選定して、三角形状電流(分布)の仮定を有効にし、Mcは式(23)から数値計算した。その結果は、中程度の距離D/h=10から3については、想定される結合対損失比はU〜0.5から100であることを示している。
【0122】
【表6】
【0123】
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が円板のような誘電物体である。図15(a)に示す、半径r及び相対誘電率εの二次元誘電体円板物体を考え、この円板物体は空気に囲まれ、高いQ値の「ウィスパリング・ギャラリー」共振モードをサポートする。こうした共振系内に蓄積されたエネルギーの損失メカニズムは、自由空間内への放射及び円板材料内への吸収である。高いQ値Qrad及びテールの長いサブ波長共振は、誘電率εが大きく、方位的な場の変化が遅い(即ち、小さい主数mである)際に達成することができる。材料吸収は、材料損失(角の)タンジェント:Qabs〜Re{ε}/Im{ε}に関係する。この種の円板共振についてのモード解法計算を、次の2つの独立した方法を用いて実行し、即ち:数値的な2D(二次元)有限差分周波数領域(FDFD:finite-difference frequency-domain)シミュレーション(空間離散化とは切り離して、周波数領域でマクスウェルの方程式を厳密に解く)を30ポイント(点)/rの分解能で行い、そして極座標における標準的な変数分離(SV:separation of variable)を用いて解析的に解いた。
【0124】
【表7】
【0125】
2枚のTE分極誘電体円板についての、λ/r≧10のサブ波長モードの結果を表7に示す。表7は、波長及び吸収、放射及び全損失速度についての、数値的FDFD(カッコ内は解析的SV)の結果を、サブ波長円板の共振モードの2つの異なる場合について示す。なお、円板材料の損失タンジェントIm{ε}/Re{ε}=10-4を用いた。(表中では、図15(a)のプロットに対応する特定パラメータを強調している。)これら2つの方法は結果が非常に良く合い、適切に設計された低損失共振物体については、Qrad≧2000及びQabs〜10000が達成されることを暗に意味する。なお、3Dの場合については、演算の複雑性が莫大に増加するが、物理学的なことは、さほど難しくない。例えば、ε=147.7の球形物体は、m=2、Qrad=13962、及びλ/r=17なるウィスパリング・ギャラリーモードを有する。
【0126】
表7に示す、要求されるεの値は、最初は非現実的に大きく見えるかもしれない。しかし、(およそメートルレンジ(範囲)の結合用途に適した)マイクロ波レジームでは、適度に十分高い誘電定数及び低損失を有する材料(例えばチタニア、テトラチタン酸バリウム、タンタライトリチウム、等)が存在するだけでなく、金属材料またはプラズモン(金属状、負のεの)材料、あるいは金属誘電体光(フォトニック)結晶またはプラズモン誘電体光結晶の表面上の表面モードのような他の既知のサブ波長表面波系の実効屈折率(実効インデックス)の代わりに、εも重要であり得る。
【0127】
ここで、2枚の円板1と2の間で達成可能なエネルギー伝達速度を計算するために、図15(b)に示すように、これらの円板を、それらの中心間に距離Dをおいて配置する。数値的には、FDFDモード解法シミュレーションが、結合系のノーマルモードの周波数分裂(式(4)よりδE=2κ)によってκを与え、これらのモードは、初期の単一円板モードの偶数個または奇数個の重ね合わせであり、解析的には、変数分離法の固有場
の表現を用いて、CMTはκを次式によって与え:
【数115】
ここに、εj(r)及びε(r)はそれぞれ、円板jのみ(背景の定数ε0を引く)、及び全空間を記述する誘電関数である。従って、中距離D/r=10から3について、及び無放射結合については、D<2rcとなり、ここにrc=mλ/2πは、放射コースティックの半径であり、2つの方法(の結果)は非常に良く一致し、最終的に、表8に示すように、U〜1から50の範囲内の強結合係数を見出す。従って、解析した具体例については、以下に説明するように、達成された性能指数値は、一般的な応用にとって有用であるための十分大きい値である。
【0128】
【表8】
【0129】
なお、以上では、共振電磁結合を無線エネルギー伝達に用いる系の例、自己共振導体コイル、容量負荷付き共振導体コイル、誘導負荷付き共振導体ロッド、及び共振誘電体円板の例として、特定例を提示して解析したが、当該系の電磁エネルギーが当該系のサイズよりずっと遠くに広がる電磁モードをサポートするあらゆる系をエネルギー伝達に用いることができる。例えば、所望種類の共振をサポートする、分布容量及び分布インダクタンスを伴う多数の理論的幾何学的形状が存在し得る。いくつかの例では、共振構造を誘電体の球とすることができる。これらの幾何学的形状の任意のものにおいて、特定パラメータを選定してUを増加及び/または最適化するか、あるいは、Q値が外部要因によって制限される場合は、kを増加及び/または最適化することができ、あるいは、システム性能パラメータが重要である場合は、それらのシステムパラメータを最適化することができる。
【0130】
3.遠距離場放射干渉についての結合モード理論
エネルギー伝達システム内の2つの物体が放射を発生し、この放射は時として、固有損失の重要な部分となり得るし、遠距離場内で干渉し得る。前節では、干渉現象の効果がない系を解析した。この説明では、干渉効果を含めて解析を繰り返し、干渉効果を用いて、電力伝送効率及び/または放射電力をさらに増大させることのできる方法を示す。
【0131】
式(1)の結合モード方程式は、こうした現象を予測していない。実際に、干渉現象を予測できないことは往々にして、結合モード理論(CMT)に特有のものであると考えられてきた。しかし、このモデルに単なる拡張を加えれば、このモデルがこうした干渉を実際に非常に良好に予測することができることを、ここに示す。問題の根源は、結合係数が暗黙のうちに実数であることに由来する。通常は、エルミート(無損失)演算子の真の(実数の)固有モードを扱う際にそうなる。しかし、例えば、非エルミート(有損失)演算子の一般に真でない(漏洩、放射のある)固有モードを扱う現在説明中の場合のように損失が導入されると、この仮定は成り立たない。この場合は、結合行列要素は一般に複素数であり、その虚部が遠距離場の放射干渉に直接関係することを(以下に)示す。
【0132】
多数の共振器が互いに近接している系を想像する。これらの共振器が、それらの結合速度に比べて、互いに十分近い周波数を有する際に、CMTの仮定は、系全体の場Ψnは、これらの共振のみによって近似的に、重ね(累積、累畳)Ψ(t)=Σnan(t)Ψnとして定まり、ここにΨnは、1のエネルギーに正規化した共振nの固有場であり、anはこの固有場内の場の振幅であり、正規化により、|an|2の蓄積エネルギーに対応する。従って、CMTの基本結合モード方程式(CME:Coupled-Mode Equation)は、ベクトル
【数116】
の進化の方程式であり、次式のようになり:
【数117】
ここに、周波数行列
及び結合行列
は通常、摂動理論(PT:Perturbation Theory)を用いて見出される。
【0133】
ここで、電磁(EM:ElectroMagnetic)共振器の系におけるCMTの多数の摂動公式化の1つを再記述し:μ=μ0及びε=ε0+Σnεnをそれぞれ、系全体を記述する空間の透磁率関数及び誘電率関数とし、ここにεnは、体積Vnの誘電、相反、かつ一般に異方性の物体nのみの誘電率であり、背景空間の定数μ0、ε0を上回る値である。各共振器nは、背景空間内に単独である際は、複素周波数Ωn=ωn−iΓnの固有共振モード、及び1のエネルギーに正規化した
【数118】
をサポートし、等式:
【数119】
及び
【数120】
及び物体nの潜在的な金属表面Sn上の境界条件:
【数121】
を満足する。系全体の場:
【数122】
は、等式
【数123】
及びS=ΣnSn上の境界条件:
【数124】
を満足する。従って、
【数125】
を拡張して空間全体を積分することから始めて、CMTの重ね(累積、累畳)の仮定を適用し、最後に、共振器間の結合速度がそれらの周波数に比べて小さい際は、この小さい摂動中の最低次の項のみを総計中に保持すればよいというPTの論拠を用いる。その結果は式(34)のCMEであり、
【数126】
であり、ここに
【数127】
であり、そして
【数128】
であり、ここで
【数129】
は、時間逆転方程式(Ωn→−Ωn)を満足する。解析において
【数130】
ではなく、これらの場を選定することは、(吸収及び/または反射により)有損失であるが相反性の系を扱うことも可能にする(従って、
は複素対称であるが、非エルミート性である)。しかし、弱い損失(高いQ値の共振)の限界では、これら2つの場の集合はおよそ等しい。従って、ここでも最低次までは、1のエネルギーへの正規化により、
【数131】
であり、従って、
【数132】
であり、
について、非対角項は
【数133】
となり、ここに
は、Vm中の体積分極電流
【数134】
及びSm上の表面電流
【数135】
を共に含むのに対し、対角項Κnnは高次で小さく、特異的な結合誘発性の周波数シフトをしばしばもたらす。式(37)の項は一般に、複素数Κnm=κnm+iΛnmであり得る。その実部の物理的解釈は、共振器間の結合を記述するものとして十分理解されるが、虚部:
【数136】
についてはそうではなく、ここで、項∇φn及び連続方程式:
【数137】
に対し部分積分を用い、ρは体積電荷密度である。
【0134】
この項の理解に向けて、2つの共振器1、2を考え、式(34)より、系からの全電力損失を次式のように評価する:
【数138】
【0135】
明らかに、2つの物体間の相互作用を含む項は材料吸収に関係すべきでない、というのは、材料吸収は各物体内の非常に局所的なプロセスであるからである。従って、この損失電力を次の方法で吸収及び放射に分ける:
【数139】
従って、Λ12は2つの物体系からの放射に関連する。しかし、この放射電力を分離して計算するツール:即ちアンテナ理論(AT)がある。
【0136】
【数140】
及び
【数141】
をそれぞれ背景インピーダンス及び光速とし、
【数142】
を、電磁共振器の電流分布4−ベクトル
【数143】
のモーメントとし、ここでも、
【数144】
について、1のエネルギーの正規化を仮定し、これは連続方程式及び部分積分を用いて示すことができる。一方のEM共振器から放射される電力は次式の通りであり:
【数145】
ここに、
【数146】
である。その中心間にベクトル距離
をおいた2つの共振器1及び2の「アレイ」から放射される電力は、次式で与えられ:
【数147】
ここに、
【数148】
である。従って、式(41)と(42)とを比較し、式(42)を用いることによって
【数149】
となり、即ち、Λ12はまさに、ATにおける干渉項である。4−ベクトル電流モーメントを代入し、変数の変更
【数150】
を行うことによって、次式のようになり:
【数151】
ここで、
のすべての角度にわたる積分を
で評価した。
【0137】
なお、電流
を実数とすることができれば、式(38)と(45)とは同一になる。このことはまさに、次の固有モードの場合である:(電流が流れている領域のような)背景領域内の場の解が常に(放射である、固有モードの漏洩の部分とは対照的に)定常解であり、十分高いQ値について、この解が有界領域内でおよそ実数であるように、この解を選定することができる。従って、式(38)または(45)のいずれかより、次式のように書くことができる:
【数152】
そして、式(44)より、式(42)を用いて、干渉係数を次式のように定義することができる:
【数153】
【0138】
高いQ値の限界では、PT及びAtが共に、結合係数の虚部Λnmの同じ表現式を与え、従って、遠距離場放射干渉の効果をCMTの範囲内で物理的に記述することを示してきた。ここでも、この現象は今のところ、CMTから予測可能であるとは考えられない。
【0139】
4.遠距離場の相殺的干渉による効率増大及び放射抑制
物理的には、遠距離場放射干渉は原理的に、相殺的になるように設計することができ、2物体の系についての全体損失を低減し、従って系の効率を増大させる。本節では、実際に、遠距離場干渉の存在下で、エネルギー伝達をより効率的にし、前のモデルが予測するよりも少ない放射電力を伴うことを示す。
【0140】
直接の比較を行うことができるように、前と同じ(有限量かつ有限速度)時間的エネルギー伝達スキームを再度扱う。
【0141】
4.1 有限量のエネルギー伝達効率
再び、電源側及び装置側物体1、2が干渉効果を含むことを考えれば、式(1)と同じCMT方程式を用いることができるが、代入κnm→Κnm+iΛnm;n、m=1,2を伴う。実部κ11,22は、前のように、他方の物体の存在による各物体の共振周波数のシフトを記述することができ;虚部Λ11,22は、他方の物体の存在による(この物体内への吸収、あるいはこの物体からの散乱、後者の場合は、損失が増加も減少もし得る)各物体における損失の変化を記述することができ;これらの両者は二次の効果であり、数学的解析の目的で、ここでも、ω1,2→ω1,2+κ11,22及びΓ1,2→Γ1,2−Λ11,22と設定することによって、複素固有周波数内に取り込むことができる。実部κ12,21は、前のように結合係数を表すことができ、虚部Λ12,21は、第3節で示したように遠距離場干渉を記述することができ、ここでも、相反性より、Κ12=Κ21≡Κ≡κ+iΛとなる。(なお、追加的要求
【数154】
が、Κが実数であることを課し、損失がなければ放射干渉は存在し得ないので、このことは理にかなう。
【0142】
κ→κ+iΛを式(2)に代入すれば、系のノーマルモードが干渉効果を含むことを見出すことができる。なお、2つの物体が厳密な共振状態、即ちω1=ω2≡ω0かつΓ1=Γ2≡Γ0である際は、ノーマルモードは次式のように見出される:
Ω+=(ω0+κ)−i(Γ0−Λ) かつ Ω-=(ω0−κ)−i(Γ0+Λ) (48)
この式はまさに、2つの物体が結合した系のそれぞれ奇数次ノーマルモード及び偶数次(イーブン)ノーマルモードの一般的な場合であり、偶数次モードについては、2つの物体の場の振幅どうしが同じ符号を有し、従って、周波数が低下し、放射遠距離場どうしが相殺的に干渉して損失が増加するのに対し、奇数次モードについては、状況が逆である。このことは、係数Λが、検討中の遠距離場干渉を記述することができることの他の確証である。
【0143】
ここで、物体1から物体2へのエネルギー伝達を、但し放射干渉の存在下で再び扱うために、ここで、κ→κ+iΛを式(3)に代入する。なお、ω1=ω2である厳密な共振では、そしてΓ1=Γ2≡Γ0である特別な場合には、単にU→U+iVを式(4)に代入し、ここにU≡κ/Γ0及びV≡Λ/Γ0であり、そしてT≡Γ0tにより、装置側の場の振幅の進化は次式のようになる:
【数155】
【0144】
ここで、正規化した時間T*に対して、効率ηE≡|a2(t)|2/|a1(0)|2を最適化することができ、T*は次の超越方程式の解である:
Re{(U+iV)・cot[(U+iV)T*]}=1 (50)
そして、結果的な最適エネルギー伝達効率はU及びVのみに依存し、図16(c)に示し、固定のUに対して明らかにVと共に増加している。
【0145】
4.2 有限伝達率のエネルギー伝達効率
同様に、放射干渉の存在下での物体1による物体2への連続給電を扱うためには、単に1.2節の式にU→U+iVを代入し、ここに
【数156】
であり、強干渉係数を想起して、系に生じる遠距離場干渉の度合いを損失と比べて定量化する。実際には、共振周波数ω1,2を(所望の動作周波数ωと比べて)調整し、電力発生器/負荷の給電/排出速度κ1,2を調整することができるので、パラメータD1,2、U1,2を設計することができる。これらのパラメータの選定は、関心事である系の性能−特性の最適化を目標とすることができる。
【0146】
いくつかの例では、目標を、系の電力伝送(効率)ηP≡|S21|2を最大にすることとすることができる。その際に、1と2を交換しても対称性は保たれ、式(11)を用いれば、場の振幅の伝達係数は次式のようになり:
【数157】
そして
【数158】
より、固定のU、V及びU0に対して、次式の対称的な離調に対して効率を最大にすることができる、ということが得られる:
【数159】
ここに、α≡[U2−V2−(1+U0)2]/3、β≡UV(1+U0)、
【数160】
及び
【数161】
である。なお、(式(52)の)最初の場合には、伝送曲線の2つのピークは、V>0については等しくないが、より高い周波数(ν=0→正の離調)において系の奇数次ノーマルモードに対応するピークは、より高いことが想定されるはずである、というのは、奇数次モードはより少なく放射するモードであるからである。最後に、D0をηPに代入することによって、式(52)より、そして
【数162】
より、効率は次式に対して最大にすることができる:
【数163】
【0147】
効率のD0への依存性を、(新たな「臨界結合」条件を含めた)異なるU0について図16(a)、(b)に示す。式(53)を用いた最適な全体電力効率は次式の通りであり:
【数164】
この効率はU、|V|のみに依存し、この効率を図16(c)、(d)に示し、この効率は固定のUに対して増加し、実際に、すべてのUについて|V|→1と共にηP→1となる。
【0148】
いくつかの例では、目標を、電源側における電力反射|S11|2及び負荷側における電力反射|S22|2を最小にすることとすることができる。ここでも、1と2を交換しても対称性は保たれ、式(17)を用いれば、次式の「インピーダンス整合」条件:
【数165】
を必要とし、この条件より、ここでも、すべての反射を相殺するD0及びU0の値はまさに式(53)中の値であることが容易に見出される。
【0149】
いくつかの例では、良好な効率を維持したままで、系からの電力放射を最小にすることを関心事とすることができる、というのは、例えば、この電力放射は他の通信システムに対する妨害の原因となり得るからである。いくつかの例では、上記2つの物体を同一にすることができ、そして式(41)を用いて次式を見出す:
【数166】
【0150】
従って、上記目標を達成するために、ηP/ηradを最大にし、このことは次式に対して達成することができることを見出し:
【数167】
かつD0**=UVrad、ここで式(47)に定義するように
【数168】
であり、干渉係数を想起して、系に生じる遠距離場干渉の度合いを放射損失に比べて定量化し、従って次式のようになり:
【数169】
すべての損失が放射である際はV=Vradとなり、この場合に、式(57)は式(53)に変形される。
【0151】
この説明では、あらゆる時間的エネルギー伝達スキームについて、そしてある結合対損失比が達成されるものとすれば、動作周波数を、各物体の固有周波数での厳密な共振から離して、相殺的な遠距離場干渉による放射の問題がより少ない奇数次ノーマルモードにより近くにシフトさせることによって、効率を増大させることができ、かつ放射を抑制することができることを提言する。次式のパラメータ:
【数170】
及び
【数171】
は、大きなU、|V|を達成することのできる距離と共に、エネルギー伝達用に考慮中のあらゆる系の性能指数である。明らかに、|V|も距離の減少関数とすることができる、というのは、2、3波長分以上離れた2つの放射源はほとんど干渉しないからである。また留意すべきこととして、Vの振幅は、物体の損失において放射が支配的である度合いにも依存する、というのは、Vrad≧Vで表されるように、これらの放射損失のみが干渉に寄与し得るからである。
【0152】
大きい強干渉係数Vを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用がサブ波長共振を用いることが好ましい、というのは、当然、波長よりずっと短い距離をおいて結合された2つの物体の奇数次モードは全く放射しないので、所定の電源−装置(間の)距離に対して、周波数が減少すると共にVradは増加するからである、
【0153】
大きい強結合係数Vを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用がQ/Qradの高い共振モードを用いることが好ましい。この条件は、支配的な損失メカニズムが放射である共振モードを設計することによって満足することができる。前に説明したように、周波数が減少すると共に放射損失は常に減少し、系は一般に吸収損失によって制限され、従ってQ/Qradが減少し、従ってある時点では、干渉の利点が、吸収のQ値の劣化に比べて重要でなくなり得る。
【0154】
従って、電源−装置の距離に応じて、ある周波数ωvで|V|を最大にすることができ、この最適周波数は一般にωU、即ちUに対する最適周波数とは異なる。以上でわかるように、エネルギー伝達効率を最大にする問題は、干渉の存在下では扱いを修正する必要がある。Uを最大値として、電源側物体及び装置側物体の固有周波数をωUに選定することは、もはや良好な選定ではなく、Vも考慮する必要がある。従って、効率の最適化は、ωUとωVとの間の周波数ωηで生じ、結合問題であり、電磁系の2、3例について以下に例証する。
【0155】
さらに、電源側物体と装置側物体との間のある固定距離では、ある一組のシステムパラメータに対して量U、Vを最適化することができず、この場合に、これらのパラメータは、式(54)の効率を最大にするように選定することができる。
【0156】
以下の節では、現実の系について、2つの物体間の中程度の距離における効率改善及び放射低減の大きさを、周波数離調を用いることによって、及びU、Vの同時最適化を行うことによって計算する。
【0157】
5.現実の系についての中距離における遠距離場干渉
同じ固有周波数ω1=ω2≡ω0の放射電磁共振モードをサポートし、任意に選定したこれらの中心間に距離Dをおいて配置され、これにより近接場では結合し遠距離場では干渉する2つの物体1、2の場合に、干渉係数Vradは、アンテナ理論(AT)より、式(47)の干渉係数であるものと予測される。
【0158】
また、いくつかの構造例について、共振のQ値Q及びQradを計算する方法は以上で示しており、従って、係数Q/Qradを計算することができる。
【0159】
干渉による効率の増大及び放射の抑制を、容量負荷付き導体ループ及び誘電体円板の2つの例について例証する。改善の度合いは、系の性質に依存するように示される。
【0160】
5.1 容量負荷付き導体ループ
図10に示すような、距離Dをおいた、半径aの円形断面を有する導線のNターンから成る半径rの2つのループ1、2を考える。こうした系について、Q値、結合係数、及び強結合係数を計算する方法は、2.2節に示されている。
【0161】
図17(a)に、これらの(ループの)結合係数を、相対距離D/rの関数として、3つの異なる寸法の単一ターン(N=1)のループについて示す。図17(b)に、これらのループの固有周波数
における強結合係数を示す。式(26)及び(27)によって示す近似スケーリング
【数172】
は明らかである。
【0162】
距離Dをおいて結合した2つのループ間の干渉パラメータを、式(47)のAT解析を用いて計算する。
【0163】
図10に示すような、距離Dをおいた、半径aの円形断面を有する導線のNターンから成る半径rの2つのループ1、2を考える。こうした系について、Q値、結合係数、及び強結合係数を計算する方法は、2.2節に示されている。図17(a)に、これらの(ループの)結合係数を、相対距離D/rの関数として、3つの異なる寸法の単一ターン(N=1)のループについて示す。図17(b)に、これらのループの固有周波数
における強結合係数を示す。式(26)及び(27)によって示す近似スケーリング
【数173】
は明らかである。距離Dをおいて結合した2つのループ間の干渉パラメータを、式(47)のAT解析を用いて計算し、一方のループが他方のループ上に重なる最適な結合については、次式のようになる:
【数174】
図18に、これらの干渉係数を、正規化した距離D/rの関数として示しこの図では、放射レジームに達した際のみにこの係数が0になることがわかる。これらの共振ループは、中程度の距離(D/r≦10)では完全にサブ波長であり(多くの例ではλ/r≧50)であるので、D/λ≦0.2を想定し、従って、干渉係数は非常に大きい(Vrad≧0.8)。
【0164】
いくつかの例では、固定の共振周波数において、ループの半径rを増加させることによって係数Q/Qradを増加させることができる。いくつかの例では、ループのターン数を増加させることによって、係数Q/Qradを増加させることができる。いくつかの例では、ループの導線の半径aを増加させることによって、あるいはリッツ線またはリボンを用いて吸収損失を低減し、従って放射をより支配的な損失メカニズムにすることによって、係数Q/Qradを増加させることができる。
【0165】
また図19に、r=30cm及びd=2cmの例について、強結合係数U、干渉係数Vrad、及び強干渉係数Vを、固定距離D=5rをおいた(2つの)ループの固有共振周波数の関数としてプロットする。実際に、この例については、Vradは、サブ波長レジームでは周波数と共に単調減少し、常に0.8より大きいが、Vは最大値を示す、というのは、周波数と共に損失がより大きくなり、放射がより支配的になるので、項Q/Qradは周波数と共に1に向かって増加するからである。U及びVがそれぞれ最大になる固有共振周波数fUとfVとは異なることがわかる。このことは、以前の知識に基づく仮定であるように、Uが最大になる固有周波数fUにおいて効率は必ずしもピークにならず、fUとfVとの間の異なる固有周波数fηでピークになることを暗に意味する。このことを以下に示す。
【0166】
図20に、効率ηPを(2つの)ループの固有共振周波数の関数として、ループ寸法r=30cm、a=2cm及びr=1m、a=2cmなる2つの例について、2つの異なるループ距離D=5r及びD=10rにおいて、そして次の2つの場合についてプロットする:
(i)(実線)干渉効果を含め、式(53)より、駆動周波数を共振周波数からD0=UVだけ離調させて電力伝送効率を最大にし、同様に、式(53)からのU0を用い、従って、式(54)における最適効率を暗に意味する。
(ii)(一点鎖線)干渉効果を含め、式(57)より、駆動周波数を共振周波数からD0=UVradだけ離調させて、放射電力に対する伝送電力を最大にし、同様に、式(57)からのU0を用いる。
(iii)(破線)干渉効果を含めるが、駆動周波数は共振周波数から離調させず、干渉がない場合に効率を最大にするために行うように式(14)からのU0を用いる。
(iv)(点線)真に、緩衝効果がなく、従って、駆動周波数を共振周波数から離調させずに効率を最大にし、式(14)からのU0を用い、従って、式(15)における効率を暗に意味する。
【0167】
図21に、効率を最大にする(図20の場合(i)(実線):D0=UV)か、あるいは放射電力に対する伝送電力の比率を最大にする(図20の場合(ii)(一点鎖線):D0=UVrad)かのいずれかのために、干渉の存在下で用いた駆動周波数の離調の量を示す。明らかに、この駆動周波数の離調は少なからぬ量である。
【0168】
図20より、すべての周波数について、場合(i)(実線)の効率が場合(iii)(破線)の効率より大きく、場合(iii)の効率は場合(iv)(点線)の効率より大きいことがわかる。従って、この説明では、遠距離場干渉を用いることが、電力伝送効率を改善し((iv)(点線)から(iii)(破線)への改善)、さらに、駆動周波数を低放射損失の奇数次ノーマルモードに向けて離調させることによって相殺的な遠距離場干渉を用いることが、電力伝送効率をさらに改善する((iii)(破線)から(i)(実線)への改善)ことを提言する。
【0169】
fηが、場合(i)の効率が最適化される固有周波数である場合に、いくつかの例では、固有共振周波数はfηより大きいように、即ち、放射がより支配的である系のレジームに設計することができる。この説明では、こうした固有周波数において、相殺的な遠距離場干渉を利用し、系を奇数次ノーマルモードに近い周波数で駆動することによって、効率の大幅な改善が可能であることを提言する。このことは図20より、実線を対応する破線及び点線と比較することによってわかる。
【0170】
一般に、強結合係数Uが最大になる周波数fUで共振する系を設計しがちである。しかし、以上で提言したように、干渉の存在下では、図20は、ηPの最大値は、fUとは異なる固有周波数fηの所にあることを示している。いくつかの例では、fη>fUである。このことは、より高い固有周波数では、損失は吸収よりも放射によって決まり、従って、全損失を低減するに当たり、相殺的な放射干渉がより重要な役割を果たすことができ、従ってfV>fUであり、効率はfη>fUで増加する、ということによる。いくつかの例では、固有共振周波数を、異なるfUではなく効率を最適化する周波数fηに近いように設計することができることを、この説明で提言する。特に、図22(a)に、これら2つの周波数fη(実線)及びfU(破線)を2つのr=30cmループの相対距離D/rの関数としてプロットする。図22(b)には、式(54)からの最適効率の階調プロットをU−V面内に示す。そして、場合(i)(実線)のU−V曲線を、Dをパラメータとして、最適周波数fηで共振する2つのr=30cmループについて、距離D毎に重ね書きする。この曲線の階調プロット上への経路より、場合(i)(実線)について、距離の関数としての効率を抽出することができる。また、図22(b)には、場合(iii)(破線)のU−V曲線を、Dをパラメータとして、fUで共振する2つのr=30cmループについて重ね書きし、そして場合(iv)(点線)のUの範囲を、Dをパラメータとして、fUで共振する2つのr=30cmループについて重ね書きする(なお、この最後の場合には、干渉は存在せず、従ってV=0である)。そして図22(c)に、図22(b)の実線によって達成される効率増大係数(倍率)を、距離D/rの関数として、駆動周波数離調なしで達成される最良のものと比較して(破線)、及び全く干渉なしで達成される最良のものと比較して(点線)示す。干渉を用いることによる改善は、ループ間の大きな分離において、増大係数2に達し得る。
【0171】
図23に、式(39)を用いた放射効率をループの固有周波数の関数として、2つの異なるループ寸法、2つの異なる距離、及び図20で調べた4つの異なる場合についてプロットする。図23より、すべての周波数について、場合(ii)(一点鎖線)のηradが場合(i)(実線)のηradより小さく、場合(i)のηradは場合(iii)(破線)のηradより小さく、場合(iii)のηradは場合(iv)(点線)のηradより小さいことがわかる。従って、この説明では、遠距離場干渉を用いることは、放射を抑制し((iv(点線)から(iii)(破線)への改善))、さらに、駆動周波数を低放射損失の奇数次ノーマルモードに向けて離調させることによって相殺的な遠距離場干渉を用いることは、放射効率をさらに抑制し((iii)(破線)から(i)(実線)及び(ii)(一点鎖線)への改善)、従って、場合(ii)ではなおさら、この目的向けに特に最適化されていることを提言する。
【0172】
いくつかの例では、固有共振周波数をfηより大きく設計することができ、即ち、放射がより支配的である系のレジームに設計することができる。この説明では、こうした固有周波数では、相殺的な遠距離場干渉効果を利用し、奇数次ノーマルモードに近い周波数で系を駆動することによって大幅な放射の抑制が存在し得ることを提言する。場合(ii)(一点鎖線)は、最大の放射抑制を達成し、そして図20からわかるように、この構成が達成することのできる効率が、構成(i)の可能な最大値に比べて少ししか劣らない(fVに近い)固有周波数の範囲が存在する。
【0173】
一例では、r=30cm及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは30MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、電力伝送効率は59%であり、放射効率は38%である。干渉の存在下で、駆動周波数を30MHzから離調させなければ、電力伝送効率は62%であり、放射効率は32%である。干渉の存在下で、駆動周波数を30MHzから31.3MHzに離調させて効率を最大にすれば、電力伝送効率は75%に増加し、放射効率は18%に抑制される。
【0174】
他の例では、r=30cm及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは10MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、あるいは干渉の存在下で駆動周波数を10MHzから離調させなければ、電力伝送効率は約81%であり、放射効率は約4%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから10.22MHzに離調させて放射を上回る伝送を最大にすれば、電力伝送効率は42%であり、2分の1まで低下していないのに対し、放射効率は0.4%であり、1桁分抑制されている。
【0175】
他の例では、r=1m及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは10MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、電力伝送効率は48%であり、放射効率は47%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから離調させなければ、電力伝送効率は54%であり、放射効率は37%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから14.8MHzに離調させて効率を最大にすれば、電力伝送効率は66%に増加し、放射効率は24%に抑制される。
【0176】
他の例では、r=1m及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは4MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、あるいは干渉の存在下で駆動周波数を4MHzから離調させなければ、電力伝送効率は約71%であり、放射効率は約8%である。干渉の存在下で、駆動周波数を4MHzから5.06MHzに離調させて放射を上回る伝送を最大にすれば、電力伝送効率は40%であり、2分の1まで低下していないのに対し、放射効率は約1%であり、ほぼ1桁分抑制されている。
【0177】
5.2 誘電体円板
図15(b)に示すように、中心間の距離Dを置いて配置された、半径r及び誘電率εの2枚の誘電体円板を考える。これらの円板の結合は、距離Dの関数として、解析的方法及び周波数領域有限要素(FEFD)法を用いて2.4節で計算しており、図24に示す。
【0178】
距離Dをおいて結合した2枚の円板間の干渉係数を計算するために、ここでも、次の2つの独立した方法を用いて、本発明の結果の有効性を確認した:数値的なFEFDの計算はここでも、2つのノーマルモードの損失速度を分裂させる(二分する)ことによって、Λ(従ってV)を与える;解析的な、式(47)のAT予測の計算は、次式を与える:
【数175】
【0179】
同じ2枚の円板についての結果を、図24における結合を計算したのと全く同じパラメータについて、固定距離における(εを変動させることによる)周波数の関数として図25に提示する。ここでも、強干渉係数Vが0の値を有し得ることがわかり、このことは、系が放射結合レジームに入る前にも発生し、即ち、同じ距離におけるUの周波数より小さい周波数でも発生する。上記の効果の両方が、大部分の距離について、U(図24(b)より)及びV(図25(b)より)を、周波数の異なる値(それぞれfU及びfV)において最小にすることができ、従って、式(54)の最終的なエネルギー伝達効率のための最適周波数fηも異なり得る。このことを同じパラメータの組について図26に示す。このプロットより、干渉は、式(15)によって結合の性能指数Uの計算値から予測される効率に比べて、効率を大幅に改善することができることがわかる。
【0180】
さらに、所定のエネルギー伝達システムが、干渉を無視した予測によって予測されるよりも良好に機能するだけでなく、本発明の最適化設計は一般に、干渉の存在下で異なる最適なパラメータの組をもたらす。例えば、特定距離D/r=5については、図26より、利用可能なεの範囲内では、m=1の共振モードがm=2のモードよりも良好な効率を達成することができることがわかり、このことは、図24に見られるより弱いUの影響を打ち消す強干渉を利用することによって行い、図24からは逆の機能を結論付けたであろう。さらに、同じmの分枝(ブランチ)内でも、Uが最大である周波数fUで動作するように系を単純に設計するであろう。しかし、干渉の存在下では、全体効率ηがピークになる異なる周波数fηで動作するように系を設計すべきであるので、最適設計は変化する。図27(a)では、まず、図24のm=2における円板の選定に対して、距離Dが変化すると共に強結合係数U及び(干渉を含む)効率ηがピークになる所で、これらの異なる周波数を計算し、そして、これらの周波数の差が有意であることを観測する。そして、図27(b)に、種々の周波数の選定に対するピーク効率を示す。効率が小さくブースト(昇圧)を用いるような大きい距離については、改善係数(倍率)は、検討中の特定の系については有意な2に達する。同じ結果を図27(c)に、距離の変化に伴う効率の経路のプロットとして、U−Vマップ上に重ねて示す。同様の結果が、異なる次数mのモードについても導出される。物理的には、より高い周波数に移動することは、放射損失の役割を吸収に比べて増加させ、従って、干渉がより大きな影響を有し得る。最適周波数fηでは、干渉を含む放射電力はfUにおける放射電力に近いが、吸収電力はずっと小さく、従って効率は改善されている。
【0181】
いくつかの例では、効率を改善する代わりに、放射を最小にすることにより重きをおくことができる。この場合は、周波数fUにおいて、式(57)の条件下で最適化した際に放射される電力の量を、単に共振して(D0=0)動作する際に放射される電力と比較して、干渉がある場合及びない場合について計算する(後者の場合は、2枚の円板が類似しないことにより、あるいはデコヒーレンスにより、等で、これらの円板が干渉しない場合を記述することができる)。図28では、動作周波数を奇数次(オッド)副放射モードに向けて離調させることによって、放射が1.6分の1に抑制されることが見出される。
【0182】
6.外部物体に対する系の感度
一般に、共振ベースの無線エネルギー伝達の例の全体性能は、共振物体の共振のロバストネス(頑健性)に強く依存する。従って、ランダムな非共振外部物体が近くに存在することに対する共振物体の感度を解析することが望ましい。1つの適切な解析モデルは、「摂動理論」(PT:perturbation theory)の解析モデルであり、外部物体pの存在下では、共振物体1の内部の場の振幅a1(t)が、一次までは次式を満足することを示唆する:
【数176】
ここでも、ω1は周波数であり、Γ1は固有(吸収、放射、等)損失速度であり、δκ11(p)は、pの存在により(物体)1に生じる周波数シフトであり、δΓ1(p)は、外部のp(p内部の吸収、pからの散乱、等)による損失速度である。δΓ1(p)は、δΓ1(p)≡Γ1(p)−Γ1として定義され、ここにΓ1(p)はpの存在下での全摂動損失速度である。一次PTモデルは、小さい摂動のみに対して有効である。それにもかかわらず、a1を厳密な摂動モードの振幅とすれば、パラメータδκ11(p)、δΓ1(p)は上記レジーム外でも明確に定義される。また、初期の共振物体のモードの放射場と外部物体から散乱する場との間の干渉効果は、強い散乱(例えば金属物体からの散乱)については、初期損失速度Γ1,radより小さい全損失速度Γ1,rad(o)を生じさせる(即ち、δΓ1(p)は負である)。
【0183】
電源側物体の共振周波数、装置側物体の共振周波数、及び駆動周波数の間には、特定の関係が望まれる。いくつかの例では、すべての共振物体が同じ固有周波数を有さなければならず、そしてこの固有周波数は、駆動周波数に等しくなければならない。いくつかの例では、遠距離場干渉を用いて効率を最適化するか放射を抑制しようとする際に、すべての共振物体が同じ固有周波数を有さなければならず、そして駆動周波数をこれらの固有周波数から特定量だけ離調させなければならない。いくつかの実現では、1つ以上の共振物体及び駆動電力発生器に、これらの周波数を修正するフィードバック・メカニズムを適用することによって、この周波数シフトを「固定」することができる。いくつかの例では、電力発生器からの駆動周波数を固定し、物体の共振周波数のみを、この駆動周波数に対して調整することができる。
【0184】
ある物体の共振周波数は、例えば、この物体の幾何学的特性(例えば、自己共振コイルの高さ、容量負荷付きループまたはコイルのコンデンサ極板の間隔、誘導負荷付きロッドのインダクタの寸法、誘電体円板の形状、等)を調整するか、あるいは、この共振物体の付近にある非共振物体の位置を変化させることによって調整することができる。
【0185】
いくつかの例では、図29Aを参照すれば、各共振物体(構造)に固定周波数の発振器、及びこの物体の固有周波数を測定する監視装置を設ける。これらの発振器及び監視装置の少なくとも一方は周波数調整器に結合され、この周波数調整器は、共振物体の周波数を調整することができる。この周波数調整器は、上記固定の駆動周波数と物体周波数との差を測定し、上述したように、この物体周波数を上記固定周波数との要求される関係にもっていくように機能する。この技法は、外部物体の存在下でも、すべての共振物体が同じ固定周波数で動作することを保証する。
【0186】
いくつかの例では、図29Bを参照すれば、電源側物体から装置側物体へのエネルギー伝達中に、装置側物体がエネルギーまたは電力を負荷に供給し、効率監視装置がこのエネルギー伝達または電力伝送の効率を測定する。負荷に結合された周波数調整器、及び効率監視装置は、この効率を最大にするように物体の周波数を調整すべく機能する。
【0187】
他の例では、周波数調整スキームが、共振物体間の情報交換に頼る。例えば、電源側物体の周波数を監視して装置側物体に送信し、装置側物体は上述したように周波数調整器を用いて、この周波数に同期する。他の実施例では、単一クロックの周波数を複数の装置に送信し、そして各装置は、上述したように周波数調整器を用いて、この周波数に同期する。
【0188】
周波数シフトとは異なり、外部摂動物体の存在による外部摂動損失は、改善することが困難であるので、エネルギー伝達スキームの機能に悪影響を及ぼし得る。従って、全摂動のQ値Q(p)(及び対応する摂動の強結合係数U(p)及び摂動の干渉係数V(p))を定量化すべきである。
【0189】
いくつかの例では、無線エネルギー伝達用の系が主に磁気共鳴(磁気共振)を用い、共振器を包囲する空気領域内の近接場内に蓄積されたエネルギーの大部分は磁気エネルギーであるのに対し、電気エネルギーは主に共振器内部に蓄積される。こうした共振は、本明細書で検討中の動作の準静的レジーム(r≪λ)内に存在することができ:例えば、h≪2rなるコイルについては、電界は大部分、コイルの自己容量内または外部負荷のコンデンサ内に局在し、ε≫1なる誘電体円板については、電界は大部分、この円板内に局在する。いくつかの例では、外部物体の磁気共鳴に対する影響はほとんどない。その理由は、共振器を包囲する空気領域内の磁界と相互作用し、共振に対する摂動として作用し得る外部非導電物体は、有意な磁気特性(透磁率Re{μ}>1または磁気損失Im{μ}>0)を有する物体である、ということによる。ほとんどすべての日常的な非導電物質は非磁性であるが単なる誘電体であるので、これらの物質は自由空間と同様に磁界に応答し、従って、共振器の共振を妨げない。しかし、外部の導電物質は、(その導電率に応じて)その内部またはその表面上に誘導される渦電流によりいくらかの外部損失をもたらす。しかし、こうした導電物質についても、それらが共振物体に非常に近接しない限り、共振に悪影響を与えない。
【0190】
外部物体と共振物体との間の相互作用は相反的であり、即ち、外部物体が共振物体に影響を与えなければ、共振物体も外部物体に影響を与えない。このことは、人間のとっての安全性の配慮を踏まえて見ることができる。人間も非磁性であり、リスクを被ることなしに強磁界に耐えることができる。磁界B〜1Tを人間に対して安全に用いる代表的な例は、医療検査用の磁気共鳴画像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)技術である。これとは対照的に、2,3ワットの電力を装置に供給するための一般的な具体例において必要な磁気近接場はB〜10-4Tに過ぎず、この値は実際に、地球の磁界の大きさと同程度である。以上で説明したように、強い電気近接場も存在せず、この無放射スキームから生成される放射は最小であるので、本明細書で説明するエネルギー伝達装置、方法、及びシステムは、生体組織にとって安全であるものと確信する。
【0191】
6.1 容量負荷付き導体ループまたはコイル
いくつかの例では、容量負荷付き導線コイルの共振系が大部分の磁気エネルギーを、この共振系を包囲する空間内に蓄積する度合いを推定することができる。コンデンサからのフリンジ電界を無視すれば、コイルを包囲する空間内の電気及び磁気エネルギー密度は、遠距離場内ではなく導線中の電流によって生成される電界及び磁界に由来し、これら2つのエネルギー密度は、放射電磁界では常にそうであるように、等しくなければならない。h=0なるサブ波長(r≪λ)電流ループ(磁気双極子)によって生成される場の結果を用いることによって、電気エネルギー密度対磁気エネルギー密度の比率を、ループの中心からの距離Dp(限界r≪Dp内)及びループ軸に対する角度θの関数として、次式のように計算することができる:
【数177】
この式の2行目は、電気及び磁気エネルギー密度を半径Dpの球の表面全体にわたって積分することによる、すべての角度にわたる平均値どうしの比率である。式(62)より、実際に、近接場内(x≪1)では、すべての角度について、磁気エネルギー密度が支配的であるのに対し、遠距離場内(x≫1)では、電気及び磁気エネルギー密度は等しく、そうあるべきである。また、ループの好適な配置は、共振で相互作用することのできる物体どうしがその軸(θ=0)の近くにあるようにし、そこに電界は存在しない。例えば、表4に記載した系を用いて、式(62)より、距離Dp=10r=3mにあるr=30cmのループについては、平均電気エネルギー密度対平均磁気エネルギー密度の比率は〜12%であり、Dp=3r=90cmでは〜1%であり、Dp=10r=1mにあるr=10cmのループについては、この比率は〜33%であり、そしてDp=3r=30cmについては、〜2.5%である。より近い距離では、この比率はさらに小さくなり、従って、近接場では、エネルギーは磁気が支配的であるのに対し、これらのエネルギーが必然的に同じオーダー(比率→1)である放射遠距離場では、両エネルギーが非常に小さい、というのは、容量負荷付きコイル系はごくわずかしか放射しないように設計されているので、場が大幅に減衰するからである。従って、これが、この共振系のクラスを磁気共鳴系として認める基準である。
【0192】
コンデンサのフリンジ電界を含む容量負荷付きループの共振に対する外部物体の影響の推定値を提供するために、前述した摂動理論の公式:
【数178】
を、図10のプロットに示すような例の場についてのFEFDの計算結果、及び寸法30cm×30cm×1.5m及び(人間の筋肉に合わせた)誘電率ε=49+16iを有し、ループ間に存在し、一方のコンデンサ上に(〜3cm離れて)ほぼ直立する矩形物体と共に用い、δQabs(human)〜105を見出し、〜10cm離れた場合については、δQabs(human)〜5・105を見出した。従って、通常の距離(〜1m)及び配置(コンデンサの直上ではない)については、あるいは、損失角のずっと小さい大部分の通常の外部物体については、実際にδQabs(human)→∞と言って差し支えないものと結論付ける。これらの共振に影響するものと想定される唯一の摂動は、大型金属構造の非常な接近である。
【0193】
自己共振コイルは容量負荷付きコイルより敏感であり得る、というのは、前者については、電界が空間内の、後者(コンデンサ内部のみ)よりもずっと大きい領域(コイル全体)に広がるからである。他方では、自己共振コイルは作製を単純にすることができ、そして大部分の集中型コンデンサよりずっと高い電圧に耐えることができる。誘導負荷付き導体ロッドも、容量負荷付きコイルよりずっと敏感であり得る、というのは、これらは電界に頼って結合を達成するからである。
【0194】
6.2 誘電体円板
誘電体円板については、小型、低屈折率(低インデックス)、低材料損失、あるいは遠く離れた漂遊物体が、小さい散乱及び吸収を誘発する。こうした小さい摂動の場合には、これらの外部損失メカニズムは、それぞれの解析的な一次摂動理論式:
【数179】
を用いて定量化することができ、ここに
【数180】
は非摂動モードの全共振電磁エネルギーである。上式からわかるように、これらの損失は両方とも、外部物体の所の共振電界テール
の二乗に依存する。これとは対照的に、物体1から他の共振物体2への結合係数は、前述したように、次式のようになり:
【数181】
物体2の内部における、物体1の電界テール
に線形依存する。こうしたスケーリングの差は、次ことの確信を与える:例えば、指数関数的に小さくなる電界テールについては、少なくとも小さい摂動については、他の共振物体への結合(速度)が、すべての外部損失速度(κ12≫δΓ1,2(p))よりずっと速いはずであり、従って、本発明のエネルギー伝達スキームは、このクラスの共振誘電体円板については頑健であるものと想定される。
【0195】
しかし、外部物体が、上記の一次摂動理論の方法を用いて解析するには強過ぎる摂動を生じさせる、というあり得る特定の状況も検討したい。例えば、誘電体円板を、図30Aに示すように、(人間hのような)大きなRe{ε}、Im{ε}かつ同じサイズであるが異なる形状の他の共振外物体、及び図30Bに示すように(壁面wのような)大きく広がる粗くした表面であるが小さいRe{ε}、Im{ε}の他の共振外物体の近くに配置する。円板の中心と「人間の」中心または「壁面」との間の距離Dh/w/r=10から3についての、図30A及び30Bに提示する数値的FDFDシミュレーションの結果は、円板の共振が相当頑健であるように見えることを示唆する、というのは、円板の共振は、非常に近接した高損失の物体は例外として、外部物体の存在によって有害なほど乱されないからである。エネルギー伝達システム全体に対する大きな摂動の影響を検討するために、「人間」及び「壁面」が共に近くに存在する状況下での2つの共振円板を考える。表8を図30C中の表と比較すれば、数値的FDFDシミュレーションは、システム性能がU〜1から50から、U(hw)〜0.5から10に、即ち許容可能な少量しか劣化していないことを示している。
【0196】
一般に、共振系の異なる例は外部摂動に対する異なる感度を有し、共振系の選定は、目前の特定用途、及び感度または安全性の問題がこの用途にとってどれほど重要でありかに依存する。例えば、(無線給電人工心臓のような)医療用埋め込み装置については、電界の広がりを、可能な最高度までに最小化して、装置を包囲する組織を保護しなければならない。外部物体に対する感度または安全性が重要である場合には、周囲空間内の所望点の大部分において、電気エネルギー密度対磁気エネルギー密度の比率we/wmを低減または最小化するように共振系を設計しなければならない。
【0197】
7.応用
以上で説明した非放射無線エネルギー伝達技術は、他の外部の共振外物体内へのエネルギーの伝達または消散を少量しか生じさせずに、共振物体間の効率的な無線エネルギー交換を可能にする。この技術は汎用的であり、実際に種々の共振系に適用することができる。本節では、無線電力伝送の効果が得られるか、あるいは無線電力伝送を利用するように設計することのできる種々の用途を識別する。
【0198】
遠隔装置は、無線給電される電力またはエネルギーを用いて直接給電して、これらの装置を動作させるか運転することができ、あるいは、これらの装置は、バッテリまたはエネルギー蓄積装置によって、バッテリまたはエネルギー蓄積装置を通して、またはバッテリまたはエネルギー蓄積装置に加えて給電することができ、このバッテリは時々無線で充電又は再充電することができる。これらの装置は、蓄電コンデンサ等を統合したバッテリのようなハイブリッド(混成)型バッテリ/エネルギー蓄積装置によって給電することができる。さらに、無線電力伝送システムによって可能になる動作の改善を利用して、新規のバッテリ及びエネルギー蓄積装置を設計することができる。
【0199】
装置をオフ状態にして、無線給電される電力またはエネルギーを用いて、バッテリまたはエネルギー蓄積装置を充電または再充電することができる。このバッテリまたはエネルギー蓄積装置の充電または再充電速度は、高くすることも低くすることもできる。このバッテリまたはエネルギー蓄積装置は、トリクル(細流)充電またはフロート充電することができる。装置に給電及び/または充電するための種々の方法が存在し、これらの種々の方法は以下の用途のリストに適用することができることは、通常の当業者にとって明らかである。
【0200】
種々の可能な用途を有し得るいくつかの無線エネルギー伝達の例は、例えば、電源(例えば、優先電力網に接続された電源)を部屋の天井に配置しつつ、ロボット、車両、コンピュータ、PDA、または類似のもののような装置を室内に配置するか、あるいは室内を自由に移動させることを含む。他の用途は、電気エンジンのバス及び/またはハイブリッドカー、及び医療用埋め込み装置に給電または再充電することを含む。追加的な用途の例は、自立型の電子装置(例えばラップトップ・コンピュータ、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、家庭用ロボット、GPSナビゲーションシステム、ディスプレイ、等)、センサ、工業及び製造装置、医療装置及び監視装置、家庭電化製品(たとえば照明、扇風機、ヒーター、ディスプレイ、テレビジョン、調理家電製品、等)、軍用装置、加熱または照明衣服、通信及びナビゲーション装置に給電または再充電する能力を含み、これらの装置は、車両、衣服、及びヘルメットのような保護装具、防弾チョッキ及びベスト、等に組み込まれた装置を含み、そして、埋め込み型医療装置に、隠れた、埋め込まれた、差し込まれた、あるいは組み込まれたセンサまたはタグに、屋根上の太陽電池パネルとの間で、屋内の分散型パネルとの間で、等のような物理的に隔離された装置に電力を伝送する能力を含む。
【0201】
いくつかの例では、システム設計者が遠距離場干渉を利用して、全放射損失を抑制し、及び/または、システム効率を増加させることができる。いくつかの例では、放射レジームに最適な近さで動作するシステムが、遠距離場干渉の存在をより利用し、このことは、結合された物体のサブ放射ノーマルモードにおける損失の低減をもたらし、この利点は大幅であり得る。
【0202】
本発明の多数の例を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変更を加えることができることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
合衆国法典第119条(e)により、本願は、米国特許仮出願第61/127661号、2008年5月14日出願に基づいて優先権を主張する。
本願は、同じ権利者が保有する次の出願の主題にも関連する:米国特許出願第12/055963号、2008年3月26日出願;米国特許出願第11/481077号、2006年7月5日出願;米国特許仮出願第60/698422号、2005年7月12日出願;米国特許仮出願第60/908383号、2007年3月27日出願;米国特許仮出願第60/908666号、2007年3月28日出願;及び国際特許出願第PCT/US2007/070892号、2007年6月11日。
これら従来の特許出願の内容は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
本発明は、無線エネルギー伝達に関するものである。無線エネルギー伝達は例えば、自立型電気装置または電子装置に電力を供給するような用途において有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
(情報伝達用に非常に良好に動作する)全方向アンテナの放射モードは、エネルギーの大部分が自由空間内で浪費されるので、こうしたエネルギー伝達には適していない。レーザーまたは高指向性アンテナを用いた指向性のある放射モードは、長距離(伝達距離LTRANS≫LDEV、ここにLDEVは装置及び/またはエネルギー源の特徴的サイズ)用のエネルギー伝達用にも効率的に用いることができるが、途切れのない見通し線の存在、及び移動体の場合は複雑な追跡(トラッキング)システムを必要とする。一部の伝達方式は誘導に頼るが、一般に非常に近距離(LTRANS≪LDEV)または低電力(〜mW)エネルギーの伝達に限定される。
【0004】
近年の自立型電子機器(例えばラップトップ・コンピュータ、携帯電話、家庭用ロボット、これらのすべてが一般に化学エネルギー蓄電に頼る)の急速な発達は、無線エネルギー伝達の必要性の増加をもたらしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/127661号
【特許文献2】米国特許出願第12/055963号
【特許文献3】米国特許出願第11/481077号
【特許文献4】米国特許仮出願第60/698422号
【特許文献5】米国特許仮出願第60/908383号
【特許文献6】米国特許仮出願第60/908666号
【特許文献7】国際特許出願第PCT/US2007/070892号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2つの共振物体間の効率的な無線エネルギー伝達は、これらの共振物体が「強結合」レジーム(型)で動作するならば、中距離で達成することができる。共振結合された物体の放射遠距離場間の相殺的な干渉を利用することによって、エネルギー伝達の効率を増加させる方法、あるいは有害であり得るか他の通信システムに対する妨害を生じさせ得る放射電力を抑制する方法の実現について説明する。「強結合」は、遠距離場干渉がなければ、効率的なエネルギー伝達にとって必要な条件である。現実システム:即ち(複数の)自己共振導体コイル、誘導負荷付き導体コイル、誘導負荷付き導体ロッド、及び誘電体円板の場合は、「強結合」を示すことができ、これらのすべてが高いQ値の電磁共振モードを有する。また、無線エネルギー伝達システムについての、遠距離場干渉を考慮に入れた解析モデルを開発することもできる。この解析モデルを用いて、干渉の存在下での効率増大及び干渉抑制を実証することができる。実現の例では、2つの現実システム、即ち容量負荷付き導体コイル及び誘電体円板の場合に、上記の原理に基づく改善された性能を説明し、これらは共に、高いQ値の電磁共振モード及び遠距離場干渉を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この装置は電源も含み、この電源は第1共振構造に結合され、第1共振構造または第2共振構造を、これらの角周波数から離れて、これらの共振構造の奇数次(オッド)ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、これらの共振構造からの放射を相殺的な遠距離場干渉によって低減する。
【0008】
いくつかの例では、上記電源は、第1共振構造または第2共振構造を、上記角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、これらの共振構造からの放射を相殺的遠距離場干渉によって大幅に抑制する。
【0009】
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用い、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この方法は、第1共振構造または第2共振構造を、これらの角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、これらの共振構造からの放射を相殺的遠距離場干渉によって低減するステップを含む。
【0010】
いくつかの例では、上記第1共振構造または第2共振構造を、上記角周波数から離れて、これらの共振構造にとっての奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、これらの共振構造からの放射を相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制する。
【0011】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きい。このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。距離Dの所望範囲について、これらの共振構造の共振角周波数に起因する放射干渉によって伝送効率Tを増加させ、この増加は、放射干渉を考慮せずに計算した伝送効率Tに対する増加である。
【0012】
いくつかの例では、これらの共振構造の共振角周波数を、これらの共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tを最適化するように選択する。
【0013】
1つの態様では、方法が無線エネルギー伝達装置を設計するステップを含み、この装置は、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含み、距離Dは、第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、このエネルギー伝達は、速度κを有し、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい。この方法は、これらの共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に起因するこれらの共振構造間の放射干渉によって伝送効率がほぼ最適化されるように選択するステップを含む。
【0014】
いくつかの例では、これらの共振構造の共振角周波数を、これらの共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tが最適化されるように選択する。
【0015】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含む。このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数1】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数2】
として定義される。上記装置は、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、装置からの放射の総量を、干渉がない場合の装置からの放射の量に比べて低減するように構成され、強干渉係数は次式のように定義される:
【数3】
【0016】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.01及びQ2/Q2,rad≧0.01を有する。上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.1及びQ2/Q2,rad≧0.1を有する。上記装置は、0.001より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.01より大きい。上記装置は、0.001より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.1より大きい。上記装置は上記第2共振構造を含む。
【0017】
動作中には、電力発生器が、上記第1及び第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、ここで、Ugは、電力発生器が第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、電力発生器が第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義される。この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義される。
【0018】
D1はUVradにおよそ等しく、D2はUVradにおよそ等しい。Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率に対する比率を最大にするように選定する。Ugは
におよそ等しい。fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さい。fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さい。上記装置はさらに電力発生器を含む。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に、電力負荷が結合速度κlで結合され、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、Ulは、電力負荷が第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、電力負荷が第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義される。Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定する。駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数と異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVradに等しく、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVradに等しく、Ulは
におよそ等しい。
【0019】
第1及び第2共振構造の少なくとも一方は、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つである。このループまたはコイルの特徴的サイズは30cm以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。このループまたはコイルの特徴的サイズは1m以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。
【0020】
上記装置はさらに、上記共振物体(構造)のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを含む。このフィードバック・メカニズムは、固定駆動周波数を有する発振器を具え、上記共振物体(構造)のうち1つ以上の共振周波数を、この固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されている。
【0021】
1つの態様では、無線エネルギー伝達用の装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を含む。このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、結合係数kを有する。第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有する。これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数4】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数5】
として定義される。上記装置は、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、装置のエネルギー伝達の効率を、干渉がない場合の装置の効率に比べて増加させるように構成され、強干渉係数は次式のように定義される:
【数6】
【0022】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.05及びQ2/Q2,rad≧0.05を有する。上記装置は、Q1/Q1,rad≧0.5及びQ2/Q2,rad≧0.5を有する。上記装置は、0.01より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.05より大きい。上記装置は、0.01より大きいD/λ0を有し、強干渉係数Vは0.5より大きい。上記装置はさらに、上記第2共振構造を含む。
【0023】
動作中には、電力発生器が、上記第1及び第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、ここでUgは、電力発生器が第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、電力発生器が第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義される。この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、ここで、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義される。
【0024】
D1はUVにおよそ等しく、D2はUVにおよそ等しい。Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率を最大にするように選定する。Ugは
におよそ等しい。fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さい。fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さい。上記装置はさらに、電力発生器を含む。
【0025】
動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、ここでUlは、電力負荷が第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、電力負荷が第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義される。Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定する。駆動周波数は、第1及び第2共振構造の共振周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、第1共振構造の駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVに等しく、第2共振構造の駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVに等しく、Ulは
におよそ等しい。
【0026】
第1及び第2共振構造の少なくとも一方は、容量負荷付きループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つである。このループまたはコイルの特徴的サイズは30cm以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。このループまたはコイルの特徴的サイズは1m以下であり、この導線またはリッツ線またはリボンの幅は2cm以下である。上記装置は、共振物体の1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを含む。このフィードバック・メカニズムは、固定駆動周波数を有する発振器を具え、1つ以上の共振物体(構造)の共振周波数を、この固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されている。このフィードバック・メカニズムは、エネルギー伝達の効率を監視し、上記1つ以上の共振物体(構造)の共振周波数を調整して効率を最大にするように構成されている。これらの共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択する。
【0027】
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、結合係数kを有し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数7】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数8】
として定義され、この方法はさらに、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、第1及び第2共振構造からの放射の総量を、干渉がない場合の第1及び第2共振構造からの放射の量に比べて低減するステップを含み、強干渉係数は次式のように定義される:
【数9】
【0028】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記方法は、Q1/Q1,rad≧0.01及びQ2/Q2,rad≧0.01を有する。動作中には、電力発生器を、上記第1及び第2共振構造の一方に結合し、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近い。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷を結合し、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されている。
1つの態様では、無線エネルギー伝達の方法が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、このエネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、これらの角周波数ω1とω2との差の絶対値は、これらの共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数10】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数11】
として定義され、この方法はさらに、上記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と上記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、上記第1共振構造と上記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率を、干渉がない場合の、上記第1共振構造と上記第2共振構造との間のエネルギー伝達効率に比べて増加させるステップを含み、強干渉係数は次式のように定義される:
【数12】
【0029】
以下は、この態様の範囲内の例である。
上記方法は、Q1/Q1,rad≧0.05及びQ2/Q2,rad≧0.05を有する。動作中には、電力発生器を、上記第1及び第2共振構造の一方に結合し、この電力発生器は、当該電力発生器に結合された共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、この駆動周波数は、第1及び第2共振構造の周波数とは異なり、これら2つの共振構造の系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近い。動作中には、この電力発生器が結合されていない方の共振構造に電力負荷を結合し、この電力負荷は、当該電力負荷が結合された共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されている。これらの共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択する。
【0030】
種々の例は、上記特徴のいずれをも、単独または組合せで含むことができる。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】無線エネルギー伝達方式の例の概略図である。
【図2】図2(a)、(b)は、それぞれ(a)U=1及び(b)U=3についての、電力伝送の効率ηPを、周波数離調D0の関数として、負荷速度U0の異なる値について示す図であり、図2(c)は、エネルギー伝達の最適な(インピーダンス整合の条件下での離調0に対する)エネルギー伝達の効率ηE*及び電力伝送の効率ηPを、結合対損失の性能指数Uの関数として示す図である。
【図3】自己共振導線コイルの例を示す図である。
【図4】2つの自己共振導線コイルを特徴とする無線エネルギー伝達方式の例を示す図である。
【図5】無線エネルギー伝達を実証する実験システムの概略図である。
【図6】図5に概略的に示すシステムの結合速度についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図7】図5に概略的に示すシステムの強結合係数についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図8】図5に概略的に示すシステムの電力伝送効率についての、実験結果と理論的結果との比較を示す図である。
【図9】容量負荷付き導線コイルの例を示し、その周辺磁界を例示する図である。
【図10】2つの容量負荷付き導線コイルを特徴とする無線エネルギー伝達方式を示し、その周辺磁界を例示する図である。
【図11】無線エネルギー伝達用の回路モデルを例示する図である。
【図12】電源側及び装置側のループ寸法、wp及びNsの特定の選定、及びNd=1, 2, 3, 4, 5, 6, 10(それぞれ赤色、緑色、青色、マゼンタ色、黄色、シアン色、黒色)の異なる選定に対する、効率、(負荷付き)装置全体のQ値、及び電源及び装置の電流、電圧、及び放射電力(負荷への出力電力の1Wに正規化)を、共振周波数の関数として示す図である。
【図13】電源側及び装置側のループ寸法、及びターン数Ns及びNdの特定の選定に対する、効率、(負荷付き)装置全体のQ値、及び電源及び装置の電流電圧、及び放射電力(負荷への出力電力の1Wに正規化)を、共振周波数の関数として示す図である。
【図14】誘導負荷付き導線コイルの例を示す図である。
【図15】(a)は、共振誘導体円板の例を示し、周辺磁界を例示する図であり、(b)は、2枚の共振誘電体円板を特徴とするエネルギー伝達方式を示し、周辺磁界を例示する図である。
【図16】図16(a)、(b)は、それぞれ(a)U=1,V=0.5、(b)U=3,V=0.5についての電力伝送の効率ηPを周波数離調D0の関数として、負荷速度U0の異なる値について示す図であり(比較のため、点線は、図2(a)、(b)に示す、干渉の存在しない際の結果を示す)、図16(c)、(d)は、エネルギー伝達((c)のみ)及び電力伝送の最適な(インピーダンス整合条件下での最適な離調に対する)効率を、強結合係数U及び強干渉係数Vの関数として示す。
【図17】(a)結合係数k、及び(b)強結合係数Uについての結合モード理論の(CMT)結果を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループ間の相対距離D/rの関数として、3つの異なるループ寸法について示す図である。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。
【図18】干渉係数Vradについてのアンテナ理論(AT:Antenna Theory)の結果を、2つの容量負荷付き導体ループ間の距離D(波長λに正規化した)の関数として示す図である。
【図19】強結合係数UについてのCMT結果、及び干渉係数Vrad及び強干渉係数VについてのAT結果を、r=30cm、a=2cm、及び相互間の相対距離D/r=5を有する2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。
【図20】電力伝送効率を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。2つの異なるループ寸法について、及びこれらの同一ループ間の2つの相対距離についての結果を示す。各ループ寸法及び距離について、次の4つの異なる場合を調べた:遠距離場干渉なし(点線)、遠距離場干渉はあるが駆動周波数の離調なし(破線)、及び効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするように駆動周波数を離調。
【図21】遠距離場干渉の存在下で、効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするために必要な駆動周波数の離調を、図20の2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。
【図22】図22(a)は、強結合係数U及び電力伝送効率ηがピーク(最高値)になる固有共振周波数fU及びfηを、r=30cm及びa=2cmを有する2つの同一ループ間の距離D/rの関数として示す図であり、図22(b)は、強結合係数U及び強干渉係数Vを、2つのループ間の相対距離D/rをパラメータとして、U−V面内の曲線として例示する図であり、干渉あり、固有周波数fηの場合(実線)、干渉あり、固有周波数fUの場合(破線)、及び干渉なし、固有周波数fUの場合(点線)について示し、図22(c)は、図22(b)の破線及び点線に対する、図22(b)の実線の効率増大の比率を示す図である。
【図23】放射効率を、2つの同一の容量負荷付き単一ターン導体ループの固有共振周波数の関数として示す図である。2つの異なるループ寸法についての結果を、これらの同一ループ間の2つの相対距離について示す。各ループ寸法及び距離について、次の4つの異なる場合を調べた:遠距離場干渉なし(点線)、遠距離場干渉はあるが駆動周波数の離調なし(破線)、及び効率(実線)または放射に対する効率の比率(一点鎖線)のいずれかを最大にするように駆動周波数を離調。
【図24】(a)結合係数k、及び(b)強結合係数UについてのCMT結果を、距離D/r=5をおいた(m=2については、一対のより大きい距離についても)2枚の同じ誘電体円板の共振モードの3つの異なるmの値について示す図であり、これらの円板のεは250≧ε≧35の範囲内で変化させた。なお、円板材料の損失正接(損失角のタンジェント)tanδ=6・10-6から2・10-4を用いた。(c)は、CMTと(b)についての数値計算値FEFDとの間の、Uの相対誤差を示す図である。
【図25】図24(c)と全く同じパラメータについて、(a)正規化した干渉項2Λ/ルート(ω1ω2)及び(b)強干渉係数|V|の大きさについてのAT結果を周波数の関数として示す図である。(c)は、ATと(b)についての数値計算値FEFDとの間の、Vの相対誤差を示す図である。
【図26】図24及び25における共振モード及び距離と同じ集合について、全体的な電力伝送の結果を周波数の関数として示す図であり、干渉(実線)を含む予測(実線)、及び干渉なしでUのみからの予測(点線)に基づく。
【図27】図27(a)は、それぞれ強結合係数U及び電力伝送効率ηを最大にした際の周波数fU及びfηを、図15のm=2なる円板間の伝達距離の関数として示す図である。図27(b)は、(a)の周波数で達成される効率を示す図であり、fηに対する(定義による)最適な効率対fUで達成可能な効率で表される増大比を差し込み図に示す。図27(c)は、(a)の周波数選定に対する伝送効率の経路を、Dをパラメータとして、U−V効率マップ上に示す図である。
【図28】動作周波数を離調させた際(実線)、離調させない際(破線)、及び干渉が全く存在しない際(点線)の放射効率の結果を、共振周波数fUにおける伝達距離の関数として示す図である。差し込み図は、対応する放射抑制係数を示す。
【図29】図29(a)〜(b)は、周波数制御メカニズムの概略図である。
【図30A】図30Aは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【図30B】図30Bは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【図30C】図30Cは、種々の外部物体の存在下での無線エネルギー伝達方式を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.「強結合」共振による効率的なエネルギー伝達
図1に、本発明の一例を概略的に記載する概略図を示す。図1を参照すれば、特徴的サイズr1を有する共振性の電源側(ソース)物体と、特徴的サイズr2の共振性の装置側物体との間で、エネルギーが伝達される。両物体は共振物体である。無線による無放射のエネルギー伝達は、2つの共振物体の系の場(例えば電磁界または音場)を用いて実行される。
【0033】
ある物体の特徴的サイズは、この物体全体をちょうど囲む最小の球の半径に等しいものとして考えることができる。ある物体の特徴的な厚さは、任意の構成中の平面上に置いた際の、この平面上にある当該物体の最高点の最小可能な高さとして考えることができる。ある物体の特徴的な幅は、この物体が直線上を進む間に通る円の最小可能な半径として考えることができる。例えば、円柱形の物体の特徴的な幅は、この円柱の半径である。
【0034】
図1の例、及び以下の例の多くは、2つの共振物体を示しているが、他の例は3つ以上の共振物体を扱うことができることは明らかである。例えば、いくつかの例では、単一の電源側物体が複数の装置側物体にエネルギーを伝達することができる。いくつかの例では、エネルギーを第1共振物体から第2共振物体に伝達し、そして第2共振物体から第3共振物体に伝達し、等のようにすることができる。
【0035】
最初に、無照射の無線エネルギー伝達を理解するための理論的枠組みを提示する。しかし、本発明の範囲は理論によって束縛されないことは明らかである。
【0036】
用途に応じて、2つの共振物体間でエネルギーを伝達するための異なる時間的スキーム(仕組み)を用いることができる。ここでは、特に単純であるが重要な2つのスキーム:即ち、1回だけの有限量エネルギー伝達スキーム及び連続的な有限速度のエネルギー伝達(電力)スキームを考える。
【0037】
1.1 有限伝達量のエネルギー伝達効率
エネルギー交換用に用いる電源側物体及び装置側物体をそれぞれ1、2とし、これらの固有共振モードは、角周波数ω1,2、固有(吸収、放射、等)損失による周波数幅Γ1,2、及び(一般に)単位エネルギーで正規化したベクトル場
を有するものとする。一旦、これら2つの共振物体どうしを近接させると、これらは相互作用することができ、これらの共振相互作用をモデル化するための適切な分析の枠組みは、周知の結合モード理論(CMT:Coupling Mode Theory)の枠組みである。この図では、2つの共振物体1、2の系の場はおよそ
【数13】
とすることができ、ここに、a1,2(t)は場の振幅であり、|a1,2(t)|2は、それぞれの物体1、2の内部に蓄積されたエネルギーに等しい。そして、e-ωtの時間依存性を用いれば、場の振幅は、最低次数で、次式を満足するように示すことができる:
【数14】
ここに、κ11,22は、他の物体の存在による各物体の周波数のシフト(偏移)であり、これらのシフトは二次補正であり、ω1,2→ω1,2+κ11,22と設定することによって固有周波数中に吸収することができ、κ12,21は結合係数であり、系の相反性の要求から、κ21=κ12≡κを満足しなければならない。
【0038】
結合系のノーマルモードは、
【数15】
を代入することによって、次式の複素周波数を有することが見出される:
【数16】
その分裂(2つに分かれる度合い)を次式のように表す:
【数17】
なお、厳密な共振ω1=ω2では、Γ1=Γ2に対してδE=2κが得られる。
【0039】
ここで、時刻t=0で、電源側物体1が有限のエネルギー|a1(0)|2を有するのに対し、装置側物体2は|a2(0)|2=0を有するものと仮定する。これらの物体は結合されているので、エネルギーは1から2に伝達される。これらの初期条件で式(1)を解いて、装置側の場の振幅の変化を次式のように予測することができる:
【数18】
エネルギー伝達効率はηE=|a2(t)|2/|a1(0)|2となる。なお、厳密な共振ω1=ω2では、特別な場合Γ1=Γ2≡Γ0に、式(3)は次式のように書くことができ:
【数19】
ここに、T≡Γ0tかつU=κ/Γ0である。
【0040】
いくつかの例では、システム設計者が結合の継続時間tを任意に調整することができる。いくつかの例では、継続時間tを、装置側のエネルギー(従って効率ηE)を最大にするように調整することができる。従って、特別な場合Γ1=Γ2≡Γ0には、式(4)より、ηEは
【数20】
に対して最大になることを推論することができ、最適なエネルギー伝達効率は次式:
【数21】
のようになり、この式は、結合対損失比U=κ/Γ0のみの関数であり、図2(c)に示すように、U≫1である際に1に近づく。一般に、またΓ1≠Γ2については、結合速度がすべての損失速度よりずっと速い(κ/Γ1,2≫1)際に、エネルギー伝達はほぼ完全になる。
【0041】
現実の無線エネルギー伝達システムでは、電源側物体は電力発生器(図1には図示せず)に接続することができ、装置側物体は電力消費負荷(例えば抵抗器、電池、実際の装置、図1には図示せず)に接続することができる。電力発生器はエネルギーを電源側物体に供給し、このエネルギーは無線で、かつ無放射で、電源側物体から装置側物体に伝達され、負荷は装置側物体からのエネルギーを消費する。こうした供給及び消費のメカニズムをこの時間的スキームに取り入れるために、いくつかの例では、時刻t=0に、電力発生器を電源側物体に、非常に短時間であるが非常に強く結合して、ほぼ瞬時にエネルギーを供給し、同様に、最適な時刻t=t*に、負荷を装置側物体に、非常に短時間であるが非常に強く結合して、このエネルギーをほぼ瞬時に排出することができる。連続給電メカニズムについては、時刻t=t*にも、電力発生器を再び電源側物体に結合して、新たな量のエネルギーを供給することができ、この過程は周期t*で周期的に反復することができる。
【0042】
1.2 有限伝達率のエネルギー伝達(電力伝送)効率
電力発生器が電源側物体1にエネルギーを、速度κ1で連続的に供給し、負荷が装置側物体2からエネルギーを、速度κ2で連続的に排出しているものとする。従って、場の振幅S±1,2(t)が定義され、これにより、|S±1,2(t)|2は、物体1に入る電力(+符号の方)、または物体2から出る電力(−符号の方)に等しく、CMTの式は次式のように変形される:
【数22】
ここでも、ω1,2→ω1,2+κ11,22かつκ21=κ12≡κと設定することができる。
【0043】
ここで、励振は固定周波数であり、即ち、S+1(t)=S+1(t)e-iωtの形式を有するものと仮定する。従って、線形系の応答は同じ周波数になり、即ちa1,2(t)=A1,2e-iωt及びs-1,2(t)=S-1,2e-iωtとなる。これらを式(7)に代入し、δ1,2≡ω−ω1,2を用いて、この系を解くことによって、負荷に伝送される場の振幅(S21:散乱行列の要素)は次式のように見出され:
【数23】
電力発生器に向けて反射される場の振幅(S11:散乱行列の要素)は次式のように見出され:
【数24】
ここに、D1,2≡δ1,2/Γ1,2、U1,2≡κ1,2/Γ1,2、及び
【数25】
である。同様に、散乱行列の要素S12、S22は、式(8)、(9)において1と2を交換することによって与えられ、相反性から想定されるようにS21=S12である。電力伝送(効率)、反射、及び損失の係数はそれぞれ、ηP≡|S21|2=|S-2|2/|S+1|2、|S11|2=|S-1|2/|S+1|2、及び1−|S21|2−|S11|2=(2Γ1|A1|2+2Γ2|A2|2)/|S+1|2となる。
【0044】
実際に、いくつかの実現では、パラメータD1,2、U1,2は設計することができる、というのは、共振周波数ω1,2を(所望の動作周波数と比較して)調整することができ、電力発生器/負荷の供給/排出速度を調整することができるからである。これらの選定は、関係するいくつかのシステム性能−特性の最適化を目標とすることができる。
【0045】
いくつかの例では、系の電力伝送(効率)ηP≡|S21|2を最大にすることを目標とすることができ、従って、
【数26】
であることを必要とする。
【0046】
(式(8)より)S21は、1と2の交換について対称であるので、(式(10)によって決まる)D1,2に対する最適値どうしは等しく、即ちD1=D2≡D0であり、同様にU1=U2≡U0である。従って、
【数27】
となり、条件:
【数28】
より、次のことを得る:
U及びU0の固定値については、次式の対称な離調の値:
【数29】
に対して、効率を最大にすることができ、この式(12)は、U>1+U0の場合は、効率がピーク(最高値)になる2つの周波数に対して、次式のように書き変えることができ:
【数30】
その分裂を次式のように表す:
【数31】
なお、厳密な共振ω1=ω2では、Γ1=Γ2≡Γ0及びκ1=κ2≡κ0に対して
【数32】
が得られ、即ち、伝達ピークの分裂はノーマルモードの分裂より小さい。従って、(12)式からのD0をηPに代入することによって、条件:
【数33】
より、次のことが得られる:
Uの固定値について、次式:
【数34】
に対して、効率を最大にすることができ、この式は「臨界結合」条件として知られているのに対し、U0<U0*については、系を「結合不足」と称し、U0>U0*については、系を「過結合」と称する。(「臨界結合」条件を含む)U0の異なる値についての、効率の周波数離調D0への依存性を図2(a)、(b)に示す。式(14)を用いた最適な全体電力効率は次式のようになり:
【数35】
ここでも、この式は、結合対損失比
【数36】
のみの関数であり、図2(c)に示すように、U≫1である際に1に近づく。
【0047】
いくつかの例では、電力発生器及び負荷の側における電力反射|S11|2及び|S22|2を最小にすることを目標とすることができ、従って、次式であることを必要とする:
【数37】
【0048】
以上の式は「インピーダンス整合」条件を提示する。ここでも、これらの条件の集合は、1と2の交換について対称であり、従って、D1=D2≡D0及びU1=U2≡U0を式(16)に代入することによって、次式が得られ:
【数38】
この式より、すべての反射を相殺するD0及びU0の値はここでも、厳密に式(14)中のそれらの値であることが容易に見出される。
【0049】
この特定の問題について、上記2つの目標及びそれに関連する条件の集合(式(10)及び式(16))は、電源内及び装置内のパラメータD1,2、U1,2の同じ最適値を生じさせることがわかる。なお、無損失系については、このことは電力保存(上記散乱行列のエルミート性)の直接の結果であるが、有損失系については、このことは明らかでない。
【0050】
従って、あらゆるエネルギー伝達の時間的スキームについて、一旦、電源側または装置側のみに特有のパラメータ(例えばそれぞれ、これらの共振周波数、及びこれらの励振または負荷速度)を最適に設計すると、効率は、電源−装置の結合速度の、これらの損失速度に対する比率と共に単調増加する。共振のQ値Q=ω/2Γの定義を用い、そして類推によって結合係数
【数39】
を定義し、従って、無線エネルギー伝達についての考察の下で、あらゆる系の性能指数として設定されているものはまさに、次式:
【数40】
の比率であり、これに加えて、この比率を達成することのできる距離である(明らかに、Uは距離の減少関数である)。所望の最適なレジーム(型)U>1を「強結合」レジームと称し、効率的なエネルギー伝達のための必要十分条件である。特に、U>1について、式(15)より、ηP*>17%が得られ、この値は実用化にとって十分大きい値である。性能指数Uを強結合係数と称する。大きな強結合係数を有するシステムを設計する方法をさらに示す。
【0051】
大きな強結合係数Uを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用が、低い(即ち遅い)固有損失速度Γに対応する高いQ値の共振モードを用いることが好ましい。この条件は、すべての損失メカニズム、一般に放射及び吸収が十分に抑制されるように共振モードを設計することによって満たすことができる。
【0052】
このことは、むしろ抑制すべき有損失の放射遠距離場ではなく、エバネセント(無損失)の定常近接場を用いて、結合を実現することを示唆している。エネルギー伝達スキームを実現するために、通常、より適切なものは、有限物体、即ちあらゆる箇所を空気によってトポロジー的に包囲されている物体であり、これらの箇所まで近接場が延在して、結合を達成する。有限の大きさの物体は一般に、空中の全方向において、物体から離れるにつれて指数関数的に減衰する電磁的状態をサポートしない、というのは、自由空間内のマックスウェルの方程式は:
【数41】
であることを暗に意味し、ここに、
は波動ベクトルであり、ωは角周波数であり、cは光速であり、このことにより、こうした有限物体は、無限大のQ値の状態をサポートすることができず、むしろ、いくらかの量の放射が常に存在する。しかし、非常に長寿命(いわゆる「高いQ値」)の状態は見出すことができ、そのテール(尾部)は、振動性(放射)に切り換わるに前の十分長い距離にわたって、共振物体から離れるにつれて、必要とされる指数関数的または指数関数状の減衰を表す。こうした場の挙動の変化が生じる限界面は「放射面(radiation caustic)」と称され、無線エネルギー伝達スキームが遠距離/放射場ではなく近接場に基づくために、結合物体間の距離は、他の物体の放射面内にある距離でなければならない。高い放射のQ値を達成する他の代表的な方法は、サブ波長の共振物体を設計することである。物体のサイズが、自由空間内で放射の波長よりずっと小さい際に、その電磁界は非常に弱くしか放射に結び付かない。有限サイズの共振物体を包囲する領域内に及ぶ近接場の度合いは、一般に波長によって設定されるので、いくつかの例では、サブ波長サイズの共振物体が、大幅に長いエバネセント場のテールを有する。換言すれば、放射面は、物体から遠く離れた所に押しやられ、従って、電磁モードは小振幅でしか放射レジームに入らない。
【0053】
さらに、大部分の現実材料はナノゼロ量程度の吸収作用を示し、この吸収作用は周波数依存性であり、このため無限大のQ値をサポートすることはできず、従って、常にある程度の量の吸収が存在する。しかし、電磁形態のエネルギーが弱くしか消散しない所では、非常に長寿命(「高いQ値」)の状態を見出すことができる。高い吸収のQ値(Qabs)を達成するいくつかの代表的な方法は、共振周波数で非常に小さい吸収作用を示す材料を使用すること、及び/または、場を整形して損失最小の材料のより内部に局在させることである
【0054】
さらに、大きい強結合係数Uを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用が、物体の特徴的サイズより大きい距離において、強い(即ち速い)結合速度κに相当する高い結合係数kを達成する系を用いることが好ましい。
【0055】
以上で説明し、後の例に見られるように、有限サイズのサブ波長共振物体は高いQ値を伴うことが多いので、こうした物体は一般に、移動し得る共振装置−物体用の適切な選定である。これらの場合には、電磁界は、いくつかの例では準静的な性質のものであり、当該距離までは十分な結合を達成することのできる距離は、この準静的な場の減衰則によって決まる。
【0056】
しかし、いくつかの例では、共振する電源−物体は不動であり、従って、その許容される幾何学的形状及びサイズの制約がより少ない。従って、この幾何学的形状及びサイズは、近接場の範囲が波長によって制限されない程度に十分大きく選定することができ、従って無限大に近い放射のQ値を有することができる。誘電体導波管のような無限大に近い広がりのいくつかの物体は、導波モードをサポートすることができ、そのエバネセントテールは、物体から離れる向きに指数関数的に減衰し、カットオフ近くに調整されている場合は低速で減衰し、従って、電源側物体及び/または装置側物体の特徴的サイズより大きい距離をおいた良好な結合を非常に多数回達成することもできる。
【0057】
2.現実システムについての中距離における「強結合」共振
以下では、上述した種類のエネルギー伝達に適したシステムのいくつかの例を説明する。上述したCMTパラメータω1,2、Q1,2及びκを計算する方法、及びこれらのパラメータを特定例用に選定して、所望距離Dにおいて所望の性能指数
【数42】
を生成する方法を例示する。いくつかの例では、ω1,2を特定の角周波数ωUの近くに調整すると、この性能指数が最大になる。
【0058】
2.1 自己共振導体コイル
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が自己共振導線ループである。図3を参照すれば、長さl、断面半径aの導線が、空気に囲まれた半径r及び高さhの(即ち、巻数
【数43】
を有する)螺旋コイルの形に巻かれている。以下に説明するように、この導線は分布インダクタンス及び分布容量(キャパシタンス)を有し、従って、角周波数ωの共振モードをサポートする。共振の性質は、コイルの容量全体にわたる電荷分布
、自由空間内の磁界、及び導線中の電流分布
による、コイルの容量内の電界からのエネルギーの周期的交換にある。特に、電荷保存方程式:
【数44】
は、次のことを暗に意味する:(i) この周期的交換は、電流プロファイルと電荷密度プロファイルとの間のπ/2の位相シフトによって達成され、即ち、コイルに含まれるエネルギーWは、特定時点では完全に電流により、他の時点では完全に電荷による;(ii) ρl(x)及びI(x)がそれぞれ、導線中の直線的な電荷密度及び電流密度であり、xが導線に沿って変化する値であれば、
【数45】
は、コイルの一方の側に蓄積される正電荷の最大量であり(等量の負電荷も他方の側に常に蓄積されて、系を中性にする)、I0=max{|I(x)|}が、直線的な電流分布の正の最大値であり、従ってI0=ωq0である。従って、コイルの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cは、その共振モード中の次式のエネルギーの量W:
【数46】
によって定義することができ、ここにμ0及びε0はそれぞれ、自由空間の透磁率及び誘電率である。
【0059】
これらの定義により、共振角周波数及び実効インピーダンスはそれぞれ、次式:
【数47】
及び
【数48】
によって与えられる。
【0060】
この共振系における損失は、導線内部の抵抗損(材料吸収損失)、及び自由空間内の放射損失である。ここでも、次式のように、配線内部で吸収された電力の量から全吸収抵抗Rabsを定義し、電気双極子放射及び磁気双極子放射により放射される電力の量から全放射抵抗Rradを定義することができる:
【数49】
ここに、
【数50】
及び
【数51】
はそれぞれ、自由空間内の光速及び光インピーダンスであり、インピーダンスζcは
【数52】
であり、σは導体の導電率であり、δは、周波数ωにおける表皮厚さであり、
【数53】
はコイルの電気双極子モーメントであり、
【数54】
はコイルの磁気双極子モーメントである。放射抵抗の式(22)については、準静的レジーム(h、r≪λ=2πc/ω)における動作の仮定を用いており、この仮定は、サブ波長共振の望ましいレジームである。これらの定義により、共振の吸収及び放射のQ値はそれぞれ、Qabs=Z/Rabs及びQrad=Z/Rradで与えられる。
【0061】
式(19)〜(22)より、単に共振コイル内の電流分布
を知るために必要な共振パラメータを決定することになる。マックスウェルの方程式を解いて、導線コイルの共振の電磁的固有モードにおける電流分布を厳密に見出すことは、例えば標準的なLC回路の共振の電磁的固有モードにおける電流分布を厳密に見出すことより複雑であり、有限長のコイルについての文献では厳密な解を見出すことができておらず、厳密な解を困難にしている。原理的には、伝送線的なモデルを書き出し、このモデルを「馬力で」解くことはできる。代わりに、(以下に説明する)実験と十分一致する(〜5%)モデルを提示する。電流が導線を出ることはできないので、各コイルを形成する導体の有限の長さが、コイルの端では電流が0でなければならないという境界条件を課すことに鑑み、各コイルの共振モードは、導線の全長に沿った正弦波電流によって十分近似されるものと仮定する。最低(次)のモードに関心を払い、従って、導線に沿った座標をxで表せば、xは-1/2から+1/2まで変化し、電流振幅プロファイルはI(x)=I0cos(πx/l)の形式を有し、ここで、有効な仮定であるa≪rとすれば、特定のxに対して、電流は導線の外周に沿って大幅に変化しないものと仮定している。電荷についての連続方程式より直ちに、直線的な電荷密度プロファイルはρl(x)=ρ0sin(πx/l)の形式であるべきことになり、従って、次式のようになる:
【数55】
これらの正弦波プロファイルを用いて、式(19)及び(20)の積分を数値的に計算することによって、コイルのいわゆる「自己インダクタンス」Ls及び「自己容量」Csを見出し、関連する周波数及び実効インピーダンスはそれぞれ、ω及びZsである。「自己抵抗」Rsは、式(21)及び(22)によって、次式:
【数56】
及び
【数57】
を用いて解析的に与えられ、従って、関連するQ値を計算することができる。
【0062】
λ/r≧70なる(即ち、近接場結合に特に適し、準静的の限界内に十分入る)サブ波長モードを有する共振コイルの2例についての結果を、表1に示す。波長及び吸収、放射及び損失速度についての数値計算結果を、サブ波長コイル共振モードの2つの異なる場合について示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。マイクロ波周波数において想定されるQ値はQs,abs≧1000及びQs,rad≧5000である。
【0063】
【表1】
【0064】
図4を参照すれば、いくつかの例では、2つの自己共振導線コイル間でエネルギーを伝達する。電界及び磁界を用いて、異なる共振導線コイルどうしを、それらの中心間に距離Dをおいて結合する。通常、h≫2rを有するコイルを考えれば、系内では電気結合が磁気結合よりずっと支配的であり、逆に、h≪2rを有するコイルについては、磁気結合が電気結合よりずっと支配的である。2つのコイル1、2の、電荷分布及び電流分布をそれぞれ
及び
と定義し、全電荷及びピーク電流をそれぞれq1,2及びI1,2と定義し、容量及びインダクタンスをそれぞれC1,2及びL1,2と定義すれば、これらの定義は、単一コイルの場合の
q0,I0,C及びLの類似であり、従って明確に定義され、これらのコイルの相互容量及び相互インダクタンスは、全エネルギーWによって次式のように定義することができ:
【数58】
ここに、
【数59】
であり、積分中の遅延係数
【数60】
は、各コイルが他のコイルの近接場内にある関心事の準静的レジームD≪λでは無視することができる。この定義により、結合係数は次式によって与えられる:
【数61】
【0065】
従って、2つの自己共振コイル間の結合速度を計算するために、ここでも電流プロファイルを必要とし、仮定した正弦波電流プロファイルを再び用いることによって、式(23)から、当該コイルの中心間に距離Dをおいた2つの自己共振コイル間の相互容量MC,s及び相互インダクタンスML,sを数値的に計算し、従ってk=1/Qκも決定される。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に、同一の自己共振コイルの対を特徴とする好適例についての関係パラメータを示す。2つのノーマルモードの平均波長及び損失速度(個別の値は示さず)についての数値計算結果を提示し、また、表1に提示するモードの2つの場合について、結合速度及び性能指数も結合距離Dの関数として示す。中程度の距離D/r=10から3について想定される結合対損失比はU〜2から70であることがわかる。
【0068】
2.1.1 実験結果
上述した無線エネルギー伝達システムの例の実験的実現は、上述した種類の2つの自己共振コイルから成り、図5に概略的に示すように、その1つ(電源側コイル)は発振回路に誘導結合され、第2のもの(装置側コイル)は抵抗負荷に誘導結合されている。図5を参照すれば、Aは半径25cmの単一銅線ループであり、駆動回路の一部をなし、周波数9.9MHzの正弦波を出力する。Bは、負荷(「電球(ライトバルブ)」)に取り付けた導線のループである。種々のκは物体間の直接結合を表す。コイルdとループAとの間の角度は、これらのコイルの直接的結合が0になるように調整されているのに対し、コイルsとdは同軸に整列している。BとAの間、及びBとsの間の直接的結合は無視できる。
【0069】
電力伝達方式の実験検証用に構成した2つの同一の螺旋コイルのパラメータは、h=20cm、a=3cm、r=30cm、及びN=5.25である。両コイルは銅製である。構成上の不完全さにより、螺旋ループ間の間隔は均一でなく、10%(2cm)の不確定性をhに起因させることによって、これらのループの均一性についての不確定性を要約した。これらの寸法を与えて想定される共振周波数はf0=10.56±0.3MHzであり、この周波数は、約9.90MHz付近で測定された共振から約5%外れている。
【0070】
これらのループについての理論的Q値は、(完全な銅の抵抗率ρ=1/σ=1.7×10-8Ωmを仮定すれば)〜2500であるものと推定されるが、その測定値は950±50である。この相違の大部分は、銅線の表面上にある導電性の低い酸化銅の層の影響によるものと確信し、この周波数では、浅い表皮厚さ(〜20μm)によって電流がこの層に限定される。従って、その後のすべての計算では、実験的に観測したQ値(及びこれから導出したΓ1=Γ2=Γ=ω/(2Q))を用いた。
【0071】
結合係数κは、(隔離した際に、hを少し調整することによって同じ共振周波数に微調整した)2つの自己共振コイルを距離Dだけ離して配置し、伝送スペクトル中の2つの共振モード周波数の分裂(伝送スペクトル中で2つの共振モードの周波数が分かれる度合い)を測定することによって見出すことができる。結合モード理論によって導出した式(13)によれば、この伝送スペクトル中の分裂は、AとBを比較的大きい距離に保つことによってκA,Bが非常に小さく保たれている際に
【数62】
となるはずである。これら2つのコイルを同軸に整列させた際の、実験結果と理論的結果との比較を距離の関数として図6に示す。
【0072】
図7に、強結合係数U=κ/Γの実験値と理論値の比較を、2つのコイル間の間隔の関数として示す。理論値は、理論的に得られたκと実験的に測定したΓとを用いることによって得られる。陰影を付けた領域は、Qの〜5%の不確定性による理論的なUの開きを表す。上述したように、理論的な最大効率は、パラメータUのみに依存し、距離の関数として図7にプロットする。Uは、D=2.4m(コイルの半径の8倍)に対しても1より大きく、従って、系は、調べた距離の全範囲にわたって強結合レジームである。
【0073】
電力発生回路は、半径25cmの銅線の単ループを用いて電源側コイルに誘導結合された標準的なコルピッツ発振器である(図5参照)。負荷は、事前に較正した電球から成り、それ自体の絶縁配線のループに取り付け、このループは装置側コイルに近接して配置し、装置側コイルに誘導結合されている。従って、電球と装置側コイルとの間の距離を変化させることによって、パラメータUB=κB/Γを、理論的に
【数63】
で与えられるその最適値に一致するように調整した。当該ループの誘導性の性質により、電球に接続したループは小さいリアクタンス成分をκBに加え、このリアクタンス成分は、コイルを少し再調整することによって補償した。抽出される動作電力は、負荷側の電球がその最大公称光度(輝度)になるまで、コルピッツ発振器内に入る電力を調整することによって測定した。
【0074】
特に電源側コイルと負荷との間で行われる伝達の効率を分離するために、各自己共振コイルの中点における電流を電流プローブ(コイルのQ値を著しく低下させないことが判明している)で測定した。これにより、以上で定義した電流パラメータI1及びI2の測定値が与えられた。各コイルにおいて消散される電力をP1,2=ΓL|I1,2|2から計算し、効率はη=Pw/(P1+P2+Pw)から直接得た。実験の設定が2物体結合モード理論モデルによって適切に記述されることを保証するために、装置側コイルを、コルピッツ発振器に取り付けた銅線ループへの(この装置側コイルの)直接的結合が0になるように配置した。実験結果を、式(15)によって与えられる最大効率の理論的予測値と共に図8に示す。
【0075】
この例を用いれば、この設定を用いて大量の電力を電源側コイルから装置側コイルに伝達することができ、例えば2m以上離れた距離から60Wの電球を十分に点灯させることができた。追加的試験として、駆動回路に入る全電力も測定した。しかし、無線伝達自体の効率は、この方法では推定することは困難である、というのは、コルピッツ発振器自体の効率は100%には程遠いと想定されるが、この効率を正確に知れないからである。それにもかかわらず、このことは旧来のより低い効率の限界に上乗せを与える。例えば、2mの距離越しに60Wを負荷に伝達する際は、駆動回路に流入する電力は400Wであった。これにより、壁面から負荷への〜15%の全体効率が生じ、この距離における無線電力伝達の効率を〜40%と想定し、駆動回路の効率が低いものとすれば、この効率は妥当である。
【0076】
以上の理論的取り扱いより、一般的な例では、電力伝送が実用的であるためには、コイルが共振していることが重要であることがわかる。一方のコイルが共振から離調すると共に、負荷に伝送される電力が急峻に低下することを実験的に見出した。負荷のQ値の逆数の2、3倍のわずかな離調Δf/f0に対しては、装置側コイル内の誘導電流はノイズ(雑音)と区別がつかない。
【0077】
人間、及び金属製及び木製家具のような種々の日常的物体、並びに大型及び小型の電子装置を2つのコイル間に配置しても、さらに、これらが電源側と装置側との間の見通しを大きく遮っても、電力伝送は目に見えて影響されないことが判明している。外部物体は、この物体がいずれかのコイルから10cmより近くにある際にしか影響しないことが判明している。(アルミニウム箔、発泡スチレン及び人間のような)一部の材料の大部分は共振周波数を少しシフトさせたが、このシフトは原理的に、上述した種類のフィードバック回路で容易に補正することができ、他のもの(段ボール、木材、及びPVC(ポリ塩化ビニル))は、コイルから2、3cmより近くに配置した際にQを低下させ、これにより伝達の効率を低下させた。
【0078】
こうした電力伝送の方法は、人間にとって安全なはずであるものと確信する。60W(ラップトップ・コンピュータに給電するには十分過ぎる)を2m越しに伝送する際に、発生する磁界の大きさは、コイルの導線から約1cm未満を除いたすべての距離について、地球の磁界よりもずっと小さいものと推定した。これらのパラメータに対して、放射される電力は〜5Wであり、この値はおよそ、携帯電話(の電力)より高い大きさのオーダーであるが、以下に説明するように大幅に低減することができる。
【0079】
2つのコイルは現在、同一寸法であるが、装置側コイルは、効率を低下させることなしに携帯装置内に収まるように十分小さくすることができる。例えば、電源側コイルと装置側コイルとの特徴的サイズの積を一定に維持することができる。
【0080】
これらの実験は、中距離範囲越しの電力伝送用のシステムを実験的に実証し、独立して互いに矛盾しない複数回の試験において、実験結果が理論と良く一致することを見出した。
【0081】
この方式の効率及びカバーした距離は、コイルを銀メッキすることによって(このことはコイルのQ値を増加させるはずである)、あるいは共振物体のより巧妙な幾何学的形状を用いることによって相当改善されるものと確信する。それにもかかわらず、本明細書に提示したシステムの性能特性は既に、実際の応用において有用であり得るレベルにある。
【0082】
2.2 容量負荷付き導体ループまたはコイル
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が容量負荷付きの導線コイルである。図9を参照すれば、上述したように、Nターンの導線を有する螺旋コイルが、面積Aの一対の平行導体板に接続され、これらの導体板は、相対誘電率εの誘電体を介して距離dだけ間隔をおき、すべてのものが空気に囲まれている(図に示すようにN=1かつh=0である)。これらの平板は容量Cp=ε0εA/dを有し、この容量がコイルの分布容量に加わり、従ってその共振を変化させる。しかし、負荷容量の存在が、導線内部の電流分布を大幅に変化させ、従って、コイルの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cはそれぞれ、Ls及びCsとは異なり、これらの値は、同じ幾何学的形状の自己共振コイルについては、正弦波電流プロファイルを用いて計算される。いくらかの電荷が、外部負荷コンデンサのプレート(極板)に蓄積されるので、導線内部の電荷分布ρが低減され、従ってC<Csとなり、従って、電荷保存方程式より電流分布
が平坦化され、従ってL>Lsとなる。この系についての共振周波数は
【数64】
であり、Cp→0になると共に、
【数65】
となる。
【0083】
一般に、この系については、望ましいCMTパラメータを見出すことができるが、ここでも、マックスウェルの方程式の非常に複雑な解を必要とする。その代わりに、電流分布についての適度な推量を行うことのできる特別な場合のみを解析する。Cp≫Cs>Cである際は、
【数66】
かつ
【数67】
であり、この間にすべての電荷が負荷コンデンサのプレート上にあり、従って電流分布は導線に沿って一定である。このことは、ここで式(19)からLを数値的に計算することを可能にする。h=0でありNが整数である場合は、式(19)中の積分は実際に解析的に計算することができ、式L=μ0r[ln(8r/a)−2]N2を与える。ここでも、Irms=I0、
【数68】
及び
【数69】
である(即ち、磁気双極子の項のみが放射に寄与する)ので、Rについては、式(21)及び(22)から明示的な解析式が得られ、従って、Qabs=ωL/Rabs及びQrad=ωL/Rradも決定することができる。この計算の終わりに、定電流プロファイルの仮定の有効性を、条件:
【数70】
を実際に満足していることをチェックすることによって確認する。しかし、この条件を満足するために、大きな外部容量を用いることができ、このことは通常、動作周波数を、簡単に決定される最適周波数より下にシフトさせ、その代わりに、一般的な例では、考慮中の種類のコイルについては、非常に小さい自己容量Csから始めることを選ぶことが多く、このため、N=1である際は、自己容量は単一ターン上の電荷分布から生じ、この自己容量はほとんど常に非常に小さく、あるいはN>1かつh≫2Naである際は、支配的な自己容量は隣接するターン上の電荷分布から生じ、この自己容量は、隣接するターン間の間隔が大きければ小さい。
【0084】
外部負荷容量Cpは、(例えばAまたはdを調整することによって)共振周波数を調整する自由度を与える。従って、特別で単純な場合h=0については、解析式があり、全体のQ値Q=ωL/(Rabs+Rrad)は、次式の最適周波数で最大になり:
【数71】
次式の値に達する:
【数72】
【0085】
より低い周波数では、この値は抵抗損によって支配され、最高周波数では放射によって支配される。しかし、これらの式はωQ≪ωsである限り正確であり、そして以上で説明したように、このことはN=1である際はほとんど常に成り立ち、N>1である際はより不正確になる、というのは、h=0は通常、大きな自己容量を暗に意味するからである。自己容量を外部容量に比べて低減する必要がある場合は、大きなhを有するコイルを用いることができるが、ここでもL及びωQ、Qmaxについての式がより不正確になる。同様の定性的挙動が想定されるが、この場合に定量的予測を行うためには、より複雑な理論モデルを必要とする。
【0086】
N=1かつh=0なるコイルの、式(24)の最適周波数における、λ/r≧70なるサブ波長モード(即ち、近接場結合に非常に適し、かつ十分、準静的の限界内である)の2つの例について、上記解析の結果を表3に提示する。定電流の仮定、及び結果的な解析式の有効性を確認するために、他の完全に独立した方法を用いたモード解法計算も実行し:即ち、コンピュータ計算による3D周波数領域有限要素(FEFD:finite-element frequency-Domain)シミュレーション(空間離散化とは切り離して、周波数領域でマクスウェルの方程式を厳密に解く)を行い、このシミュレーションでは、導線の境界を、複素インピーダンス
【数73】
の境界条件を用いてモデル化し、この条件は、ζc/ζ0≪1である限り(銅については、マイクロ波において<10-5)有効である。表3は、数値的(カッコ内は解析的)FEFDの結果を、波長及び吸収、放射及び全損失速度に対して、サブ波長共振モード2つの異なる場合について示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。(表中では、図4のプロットの特定パラメータを太字で強調している。)これら2つの方法(解析的及び計算)は非常に良く一致し、いくつかの例では、最適周波数は小さいMHz数のマイクロ波の波長範囲であり、想定されるQ値はQabs≧1000及びQrad≧10000であることを示している。
【0087】
【表3】
【0088】
図10を参照すれば、いくつかの例では、2つの容量負荷付きコイル間でエネルギーを伝達する。当該コイルの中心間に距離Dをおいた2つの容量負荷付きコイル1、2間のエネルギー伝達速度については、ω≪ωsの場合の一定の電流分布を用いることによって、式(23)から相互インダクタンスMLを数値的に評価することができる。h=0である場合は、結合は磁気結合のみであり、ここでも解析式があり、この解析式は、準静的限界内r≪D≪λ、かつ図10に示す相対配向については、
【数74】
となり、このことは、
【数75】
が周波数ω及びターン数N1、N2とは独立であることを意味する。従って、結果的な関心事の結合の性能指数は次式のようになる:
【数76】
ここでもN1=N2=1については、より正確になる。
【0089】
式(26)より、性能指標を値Umaxに最大化する最適周波数ωUは、Q1Q2が最大になる周波数
に近いことがわかる、というのは、kは(少なくとも、準静的近似がまだ有効である関心事の距離D≪λについては)周波数には大きく依存しないからである。従って、最適周波数
【数77】
は、2つのコイル間の距離Dとはほとんど独立であり、単一コイルのQ1及びQ2がピークになる2つの周波数間にある。同じコイルについては、最適周波数は(24)式によって与えられ、従って、式(26)からの強結合係数は次式のようになる:
【数78】
【0090】
いくつかの例では、容量負荷付き導体ループまたはコイルを、これらの固有角周波数がΓU内でωUに近くなるように調整することができ、ΓUは、U>Umax/2となる角周波数幅の半分である。
【0091】
表4に、以上に基づく数値的FEFD、及びカッコ内は解析的結果を、各々が表3に記載の整合した一対の負荷付きコイルから成る2つの系について示す。平均波長及び損失速度を、結合速度、及び結合対損失比の性能指数U=κ/Γと共に、結合距離Dの関数として、これら2つの場合について示す。なお、表に示す平均の数値的Γradは、表3の単ループとは少し異なり、Γradの解析的結果は表に示していないが、単ループの値を用いている。(表中では、図10のプロットに対応する特定パラメータを太字で強調している。)ここでも、定電流の仮定を有効なものとするためにN=1を選定し、MLは式(23)より数値的に計算した。実際に、正確さは、コンピュータ計算によるFEFDモード解法シミュレーションとの一致によって確認することができ、このシミュレーションは、結合系の2つのノーマルモードの周波数分裂(周波数の分かれる度合い)によってκを与える(式(4)からのδE=2κ)。その結果は、中程度の距離D/r=10から3については、想定される結合対損失比がκ/Γ〜0.5から50の範囲内にあることを示す。
【0092】
【表4】
【0093】
2.2.1 最適な電力伝達効率の導出
図11を参照すれば、特定の共振物体、例えば容量負荷付き導体ループからより直接的にアクセス可能なパラメータに関して、式(15)を再導出して表現するために、次の系の回路モデルを考えることができ、即ち、インダクタンスLs、Ldがそれぞれ電源側及び装置側のループを表し、Rs、Rdがそれぞれの損失を表し、そしてCs、Cdは、周波数ωで両者の共振を達成するために必要な対応する容量を表す。電圧発生器Vgを発生器に接続し、負荷抵抗Rlを装置側に接続することを考える。相互インダクタンスをMで表す。
【0094】
そして、共振状態の(ωLs=1/ωCs)電源側回路より、次式のようになり:
【数79】
共振状態の(ωLd=1/ωCd)装置側回路より、次式のようになる:
【数80】
【0095】
従って、式(29)を式(28)に代入することによって、次式を得る:
【数81】
ここで、電力発生器が伝達する電力をPg=Re{Vg*Is/2}、電源内で失われる電力をPs=|Is|2Rs/2、装置内で失われる電力をPd=|Id|2Rd/2、及び負荷に伝達される電力をPl=|Id|2Rl/2と識別した。従って、電力伝送効率は次式のようになる:
【数82】
【0096】
ここで、
【数83】
によって効率を最適化するように負荷インピーダンスRlを選定すれば、次式の負荷インピーダンス
【数84】
及び次式の最大可能な効率を得る:
【数85】
【0097】
ここで、CMTモデルとの対応をチェックする。なお、κl=Rl/2Ld、Γd=Rd/2Ld、Γs=Rs/2Ls、及び
【数86】
であり、従って、Ul=κl/Γd=Rl/Rd、及び
【数87】
である。従って、条件式(32)は条件式(14)と同一であり、最適効率の式(33)は一般式(15)と同一である。実際に、CMT分析が予測するように、大きい効率を得るためには、大きい強結合係数Uを有するシステムを設計する必要がある。
【0098】
2.2.2 Uの最適化
上記の結果を用いて、容量負荷付きコイルを用いるエネルギー伝達システムの性能を向上または最適化することができる。例えば、異なるシステムパラメータによる式(27)のスケーリング(拡大縮小)より、システムの性能指数Uを最適化するために、いくつかの例では、次のようにすることができることがわかる:
導電材料の抵抗率を減少させる。このことは例えば、(銅または銀のような)良導体を用いることによって、及び/または温度を低下させることによって達成することができる。非常に低温では、超電導材料を用いて極めて良好な性能を達成することができる。
導線の半径aを増加させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。この行為の目的は主に、電流の流れる断面積を増加させることによって、導線における抵抗損を低減することにあり、従って、代案として、円形導線の代わりにリッツ線またはリボンを用いることができる。
エネルギー伝達の所望固定距離に対して、ループの半径rを増加させる。一般的な例では、この行為は、特に主として装置の物理的サイズの考慮によって制限され得る。
所望固定距離対ループサイズの比率D/rに対して、ループの半径rを減少させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
ターン数を増加させる。(式(27)は、N>1に対してはより正確でなくなるものと想定されるが、それでも定性的には、Nの増加による結合対損失比の改善が期待されることの良い指標を与える。)一般的な例では、この行為は、物理的サイズ及び可能な電圧の考慮によって制限され、これについては以下の段落で説明する。
2つのコイル間の整列及び配向を調整する。両方の円柱形コイルが同じ円柱の対称軸を有する(即ち、これらのコイルが互いに「対面」する)際に、性能指数が最適化される。いくつかの例では、(2つのコイルの軸どうしが直交し、2つのコイルの中心がこれら2つの軸の一方の上にあるような)0の相互インダクタンスに至るコイル相互間の特定の角度及び配向を回避すべきである。
最後に、コイルの高さhも、他の利用可能な設計パラメータであり、コイルの半径rと同様に性能に影響を与えることができ、従って、これらの設計ルールは同様にすることができる。
【0099】
以上の解析技法を用いて、所望のパラメータを有するシステムを設計することができる。例えば、以上で説明した技法を用いて、材料が銅(σ=5.998・107S/m)である際に、以下に列挙するように、所定半径を有する2つの同じ単一ターンのループを系として設計する際に用いるべき導線の断面半径aを決定して、これらのループ間の所定のD/rにおけるU=κ/Γに関する特定性能を達成することができる:
【数88】
【0100】
2つの非類似のループについても、同様の解析を行うことができる。例えば、いくつかの例では、考慮中の装置が非常に特殊であり(例えば、ラップトップ・コンピュータまたは携帯電話)、従って、装置側物体の寸法(rd,hd,ad,Nd)が非常に制約される。しかし、いくつかのこうした例では、電源側物体に対する成約はずっと小さい、というのは、電源は例えば、床下または天井に配置することができるからである。こうした場合には、上記所望距離は、用途に基づいて明確に定められることが多い(例えば、テーブル上のラップトップ・コンピュータを床から無線で充電するためのDは〜1mである)。以下に列挙するものは、ここでも材料が銅(σ=5.998・107S/m)である際に、電源側物体の寸法を変化させて
【数89】
に関する所望性能を達成することのできる方法の(Ns=Nd=1かつhs=hd=0に簡略化した場合の)例である:
【数90】
【0101】
2.2.3 κの最適化
上述したように、いくつかの例では、共振物体のQ値Qは外部摂動により制限され、従って、コイルのパラメータを変化させることがQの改善に至らない。こうした場合には、結合係数kを増加させることによって強結合係数Uを増加させることを選ぶことができる。この結合は、周波数、及びターン数には依存しない。従って、いくつかの例では、次のようにすることができる:
導線の半径a1及びa2を増加させる。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
所望固定距離対コイルサイズの比率
に対し、インダクタンスの弱い(対数的な)依存性しか残らない。このことは、コイルの半径r1及びr2を減少させるべきことを示唆する。一般的な例では、この行為は物理的サイズの考慮によって制限され得る。
2つのコイル間の整列及び配向を調整する。一般的な例では、両方の円柱形コイルが同じ円柱の対称軸を有する(即ち、これらのコイルが互いに「対面」する)際に、結合が最適化される。(2つのコイルの軸どうしが直交し、2つのコイルの中心がこれら2つの軸の一方の上にあるような)0の相互インダクタンスに至るコイル相互間の特定の角度及び配向は、明らかに回避すべきである。
最後に、コイルの高さh1及びh2も、他の利用可能な設計パラメータであり、コイルの半径r1及びr2と同様に結合に影響を与えることができ、従って、これらの設計ルールは同様にすることができる。
【0102】
さらに、効率とは別の実際的考慮、例えば物理的サイズの制限を、以下に詳細に説明する。
【0103】
2.2.4 系全体の性能の最適化
多くの場合に、共振物体の寸法は、目前の特定用途によって設定される。例えば、この用途がラップトップ・コンピュータまたは携帯電話に給電することである際は、装置側共振物体は、ラップトップ・コンピュータまたは携帯電話のそれぞれの寸法より大きい寸法を有することはできない。特に、ループ半径rs,d及び導線半径as,dという指定寸法の2ループの系については、系の最適化のために調整すべく残された独立パラメータは:ターン数Ns,d、周波数f、電力負荷消費速度κl=Rl/2Ld、及び電力発生器の給電速度κg=Rg/2Lsであり、ここにRgは電力発生器の内部(特性)インピーダンスである。
【0104】
一般に、種々の例では、増加または最適化させたい主要な従属変数は全体効率ηである。しかし、システム設計時に、他の重要な変数を考慮に入れる必要がある。例えば、容量負荷付きコイルを特徴とする例では、設計は例えば、導線内部を流れる電流Is,d、及びコンデンサの端子間電圧Vs,dによって制約され得る。これらの制限は重要であり得る、というのは、〜Wの電力の応用については、これらのパラメータの値が、導線またはコンデンサのそれぞれが担うには大き過ぎることがあるからである。さらに、(負荷による)装置側の全負荷のQ値Qd[l]=ω/2(Γd+Γl)=ωLd/(Rd+Rl)、及び(電源による)電源側の全負荷のQ値Qs[g]=ω/2(Γs+Γg)=ωLs/(Rs+Rg)は、なるべく小さくあるべき量である、というのは、電源側及び装置側のQ値が非常に高い際に、電源側及び装置側の共振周波数をこれらのQ値内で一致させることは、実験的には挑戦的であり得るし、小さな変動に対してより敏感であり得る。最後に、放射電力Ps,rad及びPd,radは概して、こうした電力が一般に既に小さい磁気による無放射方式でも、遠距離場の干渉及び安全性を考えて最小化すべきである。以下では、各独立変数の従属変数に対する影響を調べる。
【0105】
Uのいくつかの特定値について、電力負荷消費速度を
【数91】
によって表現するために、新たな変数wpを定義する。従って、いくつかの例では、この速度の選定に影響を与える値は、次の通りである:
電源側に蓄積される必要なエネルギー(従ってIs及びVs)を最小化するためには、
【数92】
効率を増加させるためには、前述したように、
【数93】
あるいは、装置側に蓄積されるエネルギー(従って、Id及びVd)を減少させ、かつQd[l]を減少させるか最小化するためには、
【数94】
電力発生器の給電速度Ug=κg/Γsの選定の影響も同様であり、電源側/装置側及び電力発生器/負荷の役を逆にする。
【0106】
いくつかの例では、Ns及びNdを増加させることによりQs及びQdが増加し、従って、前述したように、U及び効率が大幅に増加する。また、ループのインダクタンスが増加するので、電流Is及びIdが減少し、従って、所定の出力電力Plのために必要なエネルギーWs,d=Ls,d|Is,d|2を、より小さい電流で達成することができる。しかし、いくつかの例では、Nd、従ってQdを増加させることによって、Qd[l]、Pd,rad、及び装置側の容量の端子間電圧Vdを増加させることができる。Nsを増加させることの、Qs,[g]、Ps,rad及びVsに対する影響も同様である。結論として、いくつかの例では、ターン数Ns及びNdは(高い効率のために)十分大きく選定すべきであるが、適度な電圧、負荷のQ値、及び/または放射される電力を可能にするように選定すべきである。
【0107】
周波数に関しても、効率のために最適な周波数が存在する。この最適な周波数の近くでは、Qd[l]及び/またはQs[g]は最大に近くすることができる。いくつかの例では、より低い周波数に対して、電流は一般により大きくなるが、電圧及び放射電力はより小さくなる。いくつかの例では、効率を最大にする周波数またはそれより幾分低い周波数のいずれかを採る。
【0108】
システムの動作レジームを決定する1つの方法は、図式解法に基づく。rs=25cm、rd=15cm、hs=hd=0、as=ad=3mm、及びループ間の距離D=2mの2つのループを考える。図12に、上記従属変数のいくつか(電流、電圧、及び出力電力の1Wに正規化した放射電力)を、wp及びNsをいくつか選定して、周波数及びNdに対してプロットする。図12は、以上で説明したシステム性能の傾向を示す。図13に、従属変数の等高線図を、周波数及びwpの関数として示すが、Ns及びNdは共に固定である。例えば、上記寸法を有する2ループの系用のパラメータの適度な選定は次の通りである:Ns=2、Nd=6、f=10MHz、及びwp=10;これらの値は次の性能特性を与える:η=20.6%、Qd[l]=1264、Is=7.2A、Id=1.4A、Vs=2.55kV、Vd=2.30kV、Pd,rad=0.006W。なお、図12及び13の結果、及びすぐ前に記した性能特性の計算は、以上に挙げた解析式を用いて行ったものであり、従って、これらはNs、Ndの大きな値に対してはより正確でなくなるものと想定されるが、それでもスケーリング及び大きさのオーダーの良好な推定値を与える。
【0109】
最後に、これに加えて、電源側の寸法を最適化することができる、というのは、前に説明したように、通常は装置側の寸法のみが制限されるからである。即ち、rs及びasを独立変数の集合に加えて、問題の従属変数のすべてについて、これらの独立変数に対しても最適化することができる(効率のみのためにこのことを行う方法は、以前に説明した)。こうした最適化は、改善された結果をもたらす。
【0110】
この説明では、中程度の距離における強結合レジームでの動作を保証するならば、中程度の距離において少なくとも中程度の電力伝送(〜W)が高い効率で可能であることを提起する。
【0111】
2.3 誘導負荷付き導体ロッド
長さ2h及び断面半径aの直線導体ロッドは分布容量及び分布インダクタンスを有し、従って、角周波数ωの共振モードをサポートする。自己共振コイルの場合と同じ手順を用いて、式(19)及び式(20)によって、このロッドの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cを定義することができる。これらの定義により、共振の角周波数及び実効インピーダンスはここでも、それぞれ
【数95】
及び
【数96】
で与えられる。最低モードが関心事である際は、導体に沿った座標をxで表せば、xは−hから+hまで変化し、電流振幅プロファイルはI(x)=I0cos(πx/2h)の形式を有する、というのは、電流振幅プロファイルはロッドの開放端において0でなければならないからである。これは周知の半波長電気双極子の共振モードである。
【0112】
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が誘導負荷付きの導体ロッドである。図14を参照すれば、長さ2h及び断面半径aの直線導体ロッドが、前の段落のように、長さhの2つの等しい断片に切り分けられ、これらの断片は、相対透磁率μの磁性材料の周りに巻かれたコイルを介して接続され、これらのすべてが空気に囲まれている。このコイルはインダクタンスLcを有し、このインダクタンスがロッドの分布インダクタンスに加わり、従ってその共振を変化させる。しかし、中央に装填したインダクタの存在が導線内部の電流分布を大幅に変化させ、従って、ロッドの全実効インダクタンスL及び全実効容量Cはそれぞれ、前の段落のように、同じ全長の自己共振ロッドについて正弦波電流プロファイルを用いて計算したLs及びCsとは異なる。外部負荷インダクタであるコイルの内部にいくらかの電流が流れているので、ロッド内部の電流分布
が低減され、従ってL<Lsとなり、従って、電荷保存方程式より、直線的な電荷分布ρlが中央に向かって平坦化し(ロッドの一方の側では正になり、他方の側では負になり、インダクタを通して急激に変化し)、従ってC>Csとなる。この系の共振周波数は
【数97】
であり、Lc→0になると共に
【数98】
となる。
【0113】
一般に、この系について所望のCMTパラメータを見出すことはできるが、ここでも、マックスウェルの方程式の非常に複雑な解を一般に必要とする。特別な場合には、電流分布についての適度な推定を行うことができる。Lc≫Ls>Lである際は、
【数99】
及び
【数100】
であると共に、電流分布はロッドに沿って三角形状であり(中央に装填したインダクタの所で最大値を有し、端部では0であり)、従って、ロッドを半分にした一方の側では電荷分布は正の定数であり、ロッドの他方の側では負の定数である。このことは、式(20)からCを数値的に計算することを可能にする。この場合は、式(20)中の積分は解析的に計算することができ、公式1/C=1/(πε0h)[In(h/a)−1]を与える。ここでも、式(21)及び(22)より、Rについての明示的な解析公式が利用可能である、というのは、
【数101】
及び
【数102】
であるからであり(即ち電気双極子の項のみが放射に寄与する)、従って、Qabs=1/ωCRabs及びQrad=1/ωCRradを定めることができる。計算の終わりに、条件:
【数103】
が実際に満たされていることをチェックすることによって、上記三角形プロファイルの仮定の有効性を確認することができる。この条件は比較的容易に満たすことができる、というのは、導体ロッドは一般に、非常に小さい自己インダクタンスから始まるからである。
【0114】
この場合の他の重要な損失要因は、外部負荷インダクタLcのコイル内部の抵抗損であり、これはインダクタの特定設計に依存する。いくつかの例では、このインダクタはブルックス(Brooks)コイルで作製され、これは、固定の導線長に対して最高のインダクタンスを示し、従って最高のQ値を示すコイルの幾何学的形状である。ブルックスコイルの幾何学的形状は、円柱状の対称なコイル巻型の周りに巻いた断面半径aBcのNBcターンの導線を有して、一辺rBcの正方形断面コイルを形成し、この正方形の内側も半径rBcであり(従って、この正方形の外側は半径2rBcであり)、従って
【数104】
である。従って、このコイルのインダクタンスは
【数105】
であり、その抵抗は
【数106】
であり、導線の全長は
【数107】
であり、表皮厚さは周波数と共に変化するので、周波数DCからAC限界までの抵抗の遷移について近似的な平方根則を用いた。
【0115】
外部負荷インダクタンスLcは、共振周波数を調整する自由度を与える。例えば、固定サイズrBcを有するブルックスコイルについては、導線の断面半径aBcを減少させることによりターン数NBcを増加させることによって、共振周波数を低下させることができる。従って、所望の共振角周波数
【数108】
は、
【数109】
に対して達成することができ、結果的なコイルのQ値は次式のようになる:
【数110】
従って、解析公式のある特定の単純な場合Lc≫Lsについては、全Q値Q=1/ωC(Rc+Rabs+Rrad)は、ある最適な周波数ωQで最高値になり、値Qmaxに達し、両方の値は負荷インダクタの特別な設計によって決まる。例えば、上述したブルックスコイルの手順については、最適周波数において次式のようになる:
【数111】
より低い周波数では、このQ値は、インダクタコイル内部の抵抗損によって支配され、より高い周波数では、放射によって支配される。なお、上記の公式はωQ≪ωsである限り正確であり、そして以上で説明したように、大きいインダクタンスを用いることによって、このように設計することは容易である。
【0116】
ブルックスコイルを用いた、最適周波数ωQにおけるλ/h≧200なる(即ち、近接場結合に非常に適し、準静的の限界内に十分入る)サブ波長モードの2つの例について、上記の結果を表5に提示する。
【0117】
表5は、(以前の表と同様に)波長及び吸収、放射及び全損失速度についての解析結果をカッコ内に、サブ波長ループ共振モードの2つの異なる場合に付いて示す。なお、導電材料には銅(σ=5.998・107S/m)を用いた。この結果は、いくつかの例では、最適周波数は小さいMHz数のマイクロ波の波長範囲であり、想定されるQ値はQabs≧1000及びQabs≧100000である。
【0118】
【表5】
【0119】
いくつかの例では、2つの誘導負荷付きロッド間でエネルギーを伝達する。当該ロッドの中心間に距離Dをおいた2つの誘導負荷付きロッド間のエネルギー伝達の速度については、ω≪ωsの場合は三角形状の電流分布を用いることによって、式(23)から相互容量Mcを数値的に評価することができる。この場合は、結合は電気結合のみであり、ここでも解析公式があり、準静的の限界h≪D≪λにおいて、及び2つのロッドが同じ軸上に整列する配向については、この解析公式は
【数112】
であり、この解析公式は、
【数113】
が周波数とは独立であることを意味する。従って、結果的な強結合係数Uを得ることができる。
【0120】
性能指数が最大値Umaxになる最適周波数ωUは、Q1Q2が最大になる周波数
に近いことがわかる、というのは、kは(少なくとも、準静的の近似がまだ有効である関心事の距離D≪λについては)周波数には大きく依存しないからである。従って、最適周波数
【数114】
は、2つのロッド間の距離Dとはほぼ独立であり、単一ロッドのQ1及びQ2がそれぞれピークになる2つの周波数
と
との間にある。いくつかの一般的な例では、誘導負荷付き導体ロッドを、これらのロッドの固有角周波数がΓU内でωUに近くなるように調整することができ、ΓUはU>Umax/2となる角周波数幅の半分である。
【0121】
表6を参照すれば、各々が、表5に記載のロッドを整合させて装填した一対のロッドから成る2つの系についての、上記に基づく解析結果を(以前の表と同様に)カッコ内に示す。2つの場合について、平均波長及び損失速度を、結合速度及び結合対損失比の性能指数U=κ/Γと共に、結合距離Dの関数として示す。なお、Γradについては、単一ロッドの値を用いている。ここでも、Lc≫Lsを選定して、三角形状電流(分布)の仮定を有効にし、Mcは式(23)から数値計算した。その結果は、中程度の距離D/h=10から3については、想定される結合対損失比はU〜0.5から100であることを示している。
【0122】
【表6】
【0123】
いくつかの例では、共振物体の1つ以上が円板のような誘電物体である。図15(a)に示す、半径r及び相対誘電率εの二次元誘電体円板物体を考え、この円板物体は空気に囲まれ、高いQ値の「ウィスパリング・ギャラリー」共振モードをサポートする。こうした共振系内に蓄積されたエネルギーの損失メカニズムは、自由空間内への放射及び円板材料内への吸収である。高いQ値Qrad及びテールの長いサブ波長共振は、誘電率εが大きく、方位的な場の変化が遅い(即ち、小さい主数mである)際に達成することができる。材料吸収は、材料損失(角の)タンジェント:Qabs〜Re{ε}/Im{ε}に関係する。この種の円板共振についてのモード解法計算を、次の2つの独立した方法を用いて実行し、即ち:数値的な2D(二次元)有限差分周波数領域(FDFD:finite-difference frequency-domain)シミュレーション(空間離散化とは切り離して、周波数領域でマクスウェルの方程式を厳密に解く)を30ポイント(点)/rの分解能で行い、そして極座標における標準的な変数分離(SV:separation of variable)を用いて解析的に解いた。
【0124】
【表7】
【0125】
2枚のTE分極誘電体円板についての、λ/r≧10のサブ波長モードの結果を表7に示す。表7は、波長及び吸収、放射及び全損失速度についての、数値的FDFD(カッコ内は解析的SV)の結果を、サブ波長円板の共振モードの2つの異なる場合について示す。なお、円板材料の損失タンジェントIm{ε}/Re{ε}=10-4を用いた。(表中では、図15(a)のプロットに対応する特定パラメータを強調している。)これら2つの方法は結果が非常に良く合い、適切に設計された低損失共振物体については、Qrad≧2000及びQabs〜10000が達成されることを暗に意味する。なお、3Dの場合については、演算の複雑性が莫大に増加するが、物理学的なことは、さほど難しくない。例えば、ε=147.7の球形物体は、m=2、Qrad=13962、及びλ/r=17なるウィスパリング・ギャラリーモードを有する。
【0126】
表7に示す、要求されるεの値は、最初は非現実的に大きく見えるかもしれない。しかし、(およそメートルレンジ(範囲)の結合用途に適した)マイクロ波レジームでは、適度に十分高い誘電定数及び低損失を有する材料(例えばチタニア、テトラチタン酸バリウム、タンタライトリチウム、等)が存在するだけでなく、金属材料またはプラズモン(金属状、負のεの)材料、あるいは金属誘電体光(フォトニック)結晶またはプラズモン誘電体光結晶の表面上の表面モードのような他の既知のサブ波長表面波系の実効屈折率(実効インデックス)の代わりに、εも重要であり得る。
【0127】
ここで、2枚の円板1と2の間で達成可能なエネルギー伝達速度を計算するために、図15(b)に示すように、これらの円板を、それらの中心間に距離Dをおいて配置する。数値的には、FDFDモード解法シミュレーションが、結合系のノーマルモードの周波数分裂(式(4)よりδE=2κ)によってκを与え、これらのモードは、初期の単一円板モードの偶数個または奇数個の重ね合わせであり、解析的には、変数分離法の固有場
の表現を用いて、CMTはκを次式によって与え:
【数115】
ここに、εj(r)及びε(r)はそれぞれ、円板jのみ(背景の定数ε0を引く)、及び全空間を記述する誘電関数である。従って、中距離D/r=10から3について、及び無放射結合については、D<2rcとなり、ここにrc=mλ/2πは、放射コースティックの半径であり、2つの方法(の結果)は非常に良く一致し、最終的に、表8に示すように、U〜1から50の範囲内の強結合係数を見出す。従って、解析した具体例については、以下に説明するように、達成された性能指数値は、一般的な応用にとって有用であるための十分大きい値である。
【0128】
【表8】
【0129】
なお、以上では、共振電磁結合を無線エネルギー伝達に用いる系の例、自己共振導体コイル、容量負荷付き共振導体コイル、誘導負荷付き共振導体ロッド、及び共振誘電体円板の例として、特定例を提示して解析したが、当該系の電磁エネルギーが当該系のサイズよりずっと遠くに広がる電磁モードをサポートするあらゆる系をエネルギー伝達に用いることができる。例えば、所望種類の共振をサポートする、分布容量及び分布インダクタンスを伴う多数の理論的幾何学的形状が存在し得る。いくつかの例では、共振構造を誘電体の球とすることができる。これらの幾何学的形状の任意のものにおいて、特定パラメータを選定してUを増加及び/または最適化するか、あるいは、Q値が外部要因によって制限される場合は、kを増加及び/または最適化することができ、あるいは、システム性能パラメータが重要である場合は、それらのシステムパラメータを最適化することができる。
【0130】
3.遠距離場放射干渉についての結合モード理論
エネルギー伝達システム内の2つの物体が放射を発生し、この放射は時として、固有損失の重要な部分となり得るし、遠距離場内で干渉し得る。前節では、干渉現象の効果がない系を解析した。この説明では、干渉効果を含めて解析を繰り返し、干渉効果を用いて、電力伝送効率及び/または放射電力をさらに増大させることのできる方法を示す。
【0131】
式(1)の結合モード方程式は、こうした現象を予測していない。実際に、干渉現象を予測できないことは往々にして、結合モード理論(CMT)に特有のものであると考えられてきた。しかし、このモデルに単なる拡張を加えれば、このモデルがこうした干渉を実際に非常に良好に予測することができることを、ここに示す。問題の根源は、結合係数が暗黙のうちに実数であることに由来する。通常は、エルミート(無損失)演算子の真の(実数の)固有モードを扱う際にそうなる。しかし、例えば、非エルミート(有損失)演算子の一般に真でない(漏洩、放射のある)固有モードを扱う現在説明中の場合のように損失が導入されると、この仮定は成り立たない。この場合は、結合行列要素は一般に複素数であり、その虚部が遠距離場の放射干渉に直接関係することを(以下に)示す。
【0132】
多数の共振器が互いに近接している系を想像する。これらの共振器が、それらの結合速度に比べて、互いに十分近い周波数を有する際に、CMTの仮定は、系全体の場Ψnは、これらの共振のみによって近似的に、重ね(累積、累畳)Ψ(t)=Σnan(t)Ψnとして定まり、ここにΨnは、1のエネルギーに正規化した共振nの固有場であり、anはこの固有場内の場の振幅であり、正規化により、|an|2の蓄積エネルギーに対応する。従って、CMTの基本結合モード方程式(CME:Coupled-Mode Equation)は、ベクトル
【数116】
の進化の方程式であり、次式のようになり:
【数117】
ここに、周波数行列
及び結合行列
は通常、摂動理論(PT:Perturbation Theory)を用いて見出される。
【0133】
ここで、電磁(EM:ElectroMagnetic)共振器の系におけるCMTの多数の摂動公式化の1つを再記述し:μ=μ0及びε=ε0+Σnεnをそれぞれ、系全体を記述する空間の透磁率関数及び誘電率関数とし、ここにεnは、体積Vnの誘電、相反、かつ一般に異方性の物体nのみの誘電率であり、背景空間の定数μ0、ε0を上回る値である。各共振器nは、背景空間内に単独である際は、複素周波数Ωn=ωn−iΓnの固有共振モード、及び1のエネルギーに正規化した
【数118】
をサポートし、等式:
【数119】
及び
【数120】
及び物体nの潜在的な金属表面Sn上の境界条件:
【数121】
を満足する。系全体の場:
【数122】
は、等式
【数123】
及びS=ΣnSn上の境界条件:
【数124】
を満足する。従って、
【数125】
を拡張して空間全体を積分することから始めて、CMTの重ね(累積、累畳)の仮定を適用し、最後に、共振器間の結合速度がそれらの周波数に比べて小さい際は、この小さい摂動中の最低次の項のみを総計中に保持すればよいというPTの論拠を用いる。その結果は式(34)のCMEであり、
【数126】
であり、ここに
【数127】
であり、そして
【数128】
であり、ここで
【数129】
は、時間逆転方程式(Ωn→−Ωn)を満足する。解析において
【数130】
ではなく、これらの場を選定することは、(吸収及び/または反射により)有損失であるが相反性の系を扱うことも可能にする(従って、
は複素対称であるが、非エルミート性である)。しかし、弱い損失(高いQ値の共振)の限界では、これら2つの場の集合はおよそ等しい。従って、ここでも最低次までは、1のエネルギーへの正規化により、
【数131】
であり、従って、
【数132】
であり、
について、非対角項は
【数133】
となり、ここに
は、Vm中の体積分極電流
【数134】
及びSm上の表面電流
【数135】
を共に含むのに対し、対角項Κnnは高次で小さく、特異的な結合誘発性の周波数シフトをしばしばもたらす。式(37)の項は一般に、複素数Κnm=κnm+iΛnmであり得る。その実部の物理的解釈は、共振器間の結合を記述するものとして十分理解されるが、虚部:
【数136】
についてはそうではなく、ここで、項∇φn及び連続方程式:
【数137】
に対し部分積分を用い、ρは体積電荷密度である。
【0134】
この項の理解に向けて、2つの共振器1、2を考え、式(34)より、系からの全電力損失を次式のように評価する:
【数138】
【0135】
明らかに、2つの物体間の相互作用を含む項は材料吸収に関係すべきでない、というのは、材料吸収は各物体内の非常に局所的なプロセスであるからである。従って、この損失電力を次の方法で吸収及び放射に分ける:
【数139】
従って、Λ12は2つの物体系からの放射に関連する。しかし、この放射電力を分離して計算するツール:即ちアンテナ理論(AT)がある。
【0136】
【数140】
及び
【数141】
をそれぞれ背景インピーダンス及び光速とし、
【数142】
を、電磁共振器の電流分布4−ベクトル
【数143】
のモーメントとし、ここでも、
【数144】
について、1のエネルギーの正規化を仮定し、これは連続方程式及び部分積分を用いて示すことができる。一方のEM共振器から放射される電力は次式の通りであり:
【数145】
ここに、
【数146】
である。その中心間にベクトル距離
をおいた2つの共振器1及び2の「アレイ」から放射される電力は、次式で与えられ:
【数147】
ここに、
【数148】
である。従って、式(41)と(42)とを比較し、式(42)を用いることによって
【数149】
となり、即ち、Λ12はまさに、ATにおける干渉項である。4−ベクトル電流モーメントを代入し、変数の変更
【数150】
を行うことによって、次式のようになり:
【数151】
ここで、
のすべての角度にわたる積分を
で評価した。
【0137】
なお、電流
を実数とすることができれば、式(38)と(45)とは同一になる。このことはまさに、次の固有モードの場合である:(電流が流れている領域のような)背景領域内の場の解が常に(放射である、固有モードの漏洩の部分とは対照的に)定常解であり、十分高いQ値について、この解が有界領域内でおよそ実数であるように、この解を選定することができる。従って、式(38)または(45)のいずれかより、次式のように書くことができる:
【数152】
そして、式(44)より、式(42)を用いて、干渉係数を次式のように定義することができる:
【数153】
【0138】
高いQ値の限界では、PT及びAtが共に、結合係数の虚部Λnmの同じ表現式を与え、従って、遠距離場放射干渉の効果をCMTの範囲内で物理的に記述することを示してきた。ここでも、この現象は今のところ、CMTから予測可能であるとは考えられない。
【0139】
4.遠距離場の相殺的干渉による効率増大及び放射抑制
物理的には、遠距離場放射干渉は原理的に、相殺的になるように設計することができ、2物体の系についての全体損失を低減し、従って系の効率を増大させる。本節では、実際に、遠距離場干渉の存在下で、エネルギー伝達をより効率的にし、前のモデルが予測するよりも少ない放射電力を伴うことを示す。
【0140】
直接の比較を行うことができるように、前と同じ(有限量かつ有限速度)時間的エネルギー伝達スキームを再度扱う。
【0141】
4.1 有限量のエネルギー伝達効率
再び、電源側及び装置側物体1、2が干渉効果を含むことを考えれば、式(1)と同じCMT方程式を用いることができるが、代入κnm→Κnm+iΛnm;n、m=1,2を伴う。実部κ11,22は、前のように、他方の物体の存在による各物体の共振周波数のシフトを記述することができ;虚部Λ11,22は、他方の物体の存在による(この物体内への吸収、あるいはこの物体からの散乱、後者の場合は、損失が増加も減少もし得る)各物体における損失の変化を記述することができ;これらの両者は二次の効果であり、数学的解析の目的で、ここでも、ω1,2→ω1,2+κ11,22及びΓ1,2→Γ1,2−Λ11,22と設定することによって、複素固有周波数内に取り込むことができる。実部κ12,21は、前のように結合係数を表すことができ、虚部Λ12,21は、第3節で示したように遠距離場干渉を記述することができ、ここでも、相反性より、Κ12=Κ21≡Κ≡κ+iΛとなる。(なお、追加的要求
【数154】
が、Κが実数であることを課し、損失がなければ放射干渉は存在し得ないので、このことは理にかなう。
【0142】
κ→κ+iΛを式(2)に代入すれば、系のノーマルモードが干渉効果を含むことを見出すことができる。なお、2つの物体が厳密な共振状態、即ちω1=ω2≡ω0かつΓ1=Γ2≡Γ0である際は、ノーマルモードは次式のように見出される:
Ω+=(ω0+κ)−i(Γ0−Λ) かつ Ω-=(ω0−κ)−i(Γ0+Λ) (48)
この式はまさに、2つの物体が結合した系のそれぞれ奇数次ノーマルモード及び偶数次(イーブン)ノーマルモードの一般的な場合であり、偶数次モードについては、2つの物体の場の振幅どうしが同じ符号を有し、従って、周波数が低下し、放射遠距離場どうしが相殺的に干渉して損失が増加するのに対し、奇数次モードについては、状況が逆である。このことは、係数Λが、検討中の遠距離場干渉を記述することができることの他の確証である。
【0143】
ここで、物体1から物体2へのエネルギー伝達を、但し放射干渉の存在下で再び扱うために、ここで、κ→κ+iΛを式(3)に代入する。なお、ω1=ω2である厳密な共振では、そしてΓ1=Γ2≡Γ0である特別な場合には、単にU→U+iVを式(4)に代入し、ここにU≡κ/Γ0及びV≡Λ/Γ0であり、そしてT≡Γ0tにより、装置側の場の振幅の進化は次式のようになる:
【数155】
【0144】
ここで、正規化した時間T*に対して、効率ηE≡|a2(t)|2/|a1(0)|2を最適化することができ、T*は次の超越方程式の解である:
Re{(U+iV)・cot[(U+iV)T*]}=1 (50)
そして、結果的な最適エネルギー伝達効率はU及びVのみに依存し、図16(c)に示し、固定のUに対して明らかにVと共に増加している。
【0145】
4.2 有限伝達率のエネルギー伝達効率
同様に、放射干渉の存在下での物体1による物体2への連続給電を扱うためには、単に1.2節の式にU→U+iVを代入し、ここに
【数156】
であり、強干渉係数を想起して、系に生じる遠距離場干渉の度合いを損失と比べて定量化する。実際には、共振周波数ω1,2を(所望の動作周波数ωと比べて)調整し、電力発生器/負荷の給電/排出速度κ1,2を調整することができるので、パラメータD1,2、U1,2を設計することができる。これらのパラメータの選定は、関心事である系の性能−特性の最適化を目標とすることができる。
【0146】
いくつかの例では、目標を、系の電力伝送(効率)ηP≡|S21|2を最大にすることとすることができる。その際に、1と2を交換しても対称性は保たれ、式(11)を用いれば、場の振幅の伝達係数は次式のようになり:
【数157】
そして
【数158】
より、固定のU、V及びU0に対して、次式の対称的な離調に対して効率を最大にすることができる、ということが得られる:
【数159】
ここに、α≡[U2−V2−(1+U0)2]/3、β≡UV(1+U0)、
【数160】
及び
【数161】
である。なお、(式(52)の)最初の場合には、伝送曲線の2つのピークは、V>0については等しくないが、より高い周波数(ν=0→正の離調)において系の奇数次ノーマルモードに対応するピークは、より高いことが想定されるはずである、というのは、奇数次モードはより少なく放射するモードであるからである。最後に、D0をηPに代入することによって、式(52)より、そして
【数162】
より、効率は次式に対して最大にすることができる:
【数163】
【0147】
効率のD0への依存性を、(新たな「臨界結合」条件を含めた)異なるU0について図16(a)、(b)に示す。式(53)を用いた最適な全体電力効率は次式の通りであり:
【数164】
この効率はU、|V|のみに依存し、この効率を図16(c)、(d)に示し、この効率は固定のUに対して増加し、実際に、すべてのUについて|V|→1と共にηP→1となる。
【0148】
いくつかの例では、目標を、電源側における電力反射|S11|2及び負荷側における電力反射|S22|2を最小にすることとすることができる。ここでも、1と2を交換しても対称性は保たれ、式(17)を用いれば、次式の「インピーダンス整合」条件:
【数165】
を必要とし、この条件より、ここでも、すべての反射を相殺するD0及びU0の値はまさに式(53)中の値であることが容易に見出される。
【0149】
いくつかの例では、良好な効率を維持したままで、系からの電力放射を最小にすることを関心事とすることができる、というのは、例えば、この電力放射は他の通信システムに対する妨害の原因となり得るからである。いくつかの例では、上記2つの物体を同一にすることができ、そして式(41)を用いて次式を見出す:
【数166】
【0150】
従って、上記目標を達成するために、ηP/ηradを最大にし、このことは次式に対して達成することができることを見出し:
【数167】
かつD0**=UVrad、ここで式(47)に定義するように
【数168】
であり、干渉係数を想起して、系に生じる遠距離場干渉の度合いを放射損失に比べて定量化し、従って次式のようになり:
【数169】
すべての損失が放射である際はV=Vradとなり、この場合に、式(57)は式(53)に変形される。
【0151】
この説明では、あらゆる時間的エネルギー伝達スキームについて、そしてある結合対損失比が達成されるものとすれば、動作周波数を、各物体の固有周波数での厳密な共振から離して、相殺的な遠距離場干渉による放射の問題がより少ない奇数次ノーマルモードにより近くにシフトさせることによって、効率を増大させることができ、かつ放射を抑制することができることを提言する。次式のパラメータ:
【数170】
及び
【数171】
は、大きなU、|V|を達成することのできる距離と共に、エネルギー伝達用に考慮中のあらゆる系の性能指数である。明らかに、|V|も距離の減少関数とすることができる、というのは、2、3波長分以上離れた2つの放射源はほとんど干渉しないからである。また留意すべきこととして、Vの振幅は、物体の損失において放射が支配的である度合いにも依存する、というのは、Vrad≧Vで表されるように、これらの放射損失のみが干渉に寄与し得るからである。
【0152】
大きい強干渉係数Vを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用がサブ波長共振を用いることが好ましい、というのは、当然、波長よりずっと短い距離をおいて結合された2つの物体の奇数次モードは全く放射しないので、所定の電源−装置(間の)距離に対して、周波数が減少すると共にVradは増加するからである、
【0153】
大きい強結合係数Vを達成するために、いくつかの例では、エネルギー伝達の応用がQ/Qradの高い共振モードを用いることが好ましい。この条件は、支配的な損失メカニズムが放射である共振モードを設計することによって満足することができる。前に説明したように、周波数が減少すると共に放射損失は常に減少し、系は一般に吸収損失によって制限され、従ってQ/Qradが減少し、従ってある時点では、干渉の利点が、吸収のQ値の劣化に比べて重要でなくなり得る。
【0154】
従って、電源−装置の距離に応じて、ある周波数ωvで|V|を最大にすることができ、この最適周波数は一般にωU、即ちUに対する最適周波数とは異なる。以上でわかるように、エネルギー伝達効率を最大にする問題は、干渉の存在下では扱いを修正する必要がある。Uを最大値として、電源側物体及び装置側物体の固有周波数をωUに選定することは、もはや良好な選定ではなく、Vも考慮する必要がある。従って、効率の最適化は、ωUとωVとの間の周波数ωηで生じ、結合問題であり、電磁系の2、3例について以下に例証する。
【0155】
さらに、電源側物体と装置側物体との間のある固定距離では、ある一組のシステムパラメータに対して量U、Vを最適化することができず、この場合に、これらのパラメータは、式(54)の効率を最大にするように選定することができる。
【0156】
以下の節では、現実の系について、2つの物体間の中程度の距離における効率改善及び放射低減の大きさを、周波数離調を用いることによって、及びU、Vの同時最適化を行うことによって計算する。
【0157】
5.現実の系についての中距離における遠距離場干渉
同じ固有周波数ω1=ω2≡ω0の放射電磁共振モードをサポートし、任意に選定したこれらの中心間に距離Dをおいて配置され、これにより近接場では結合し遠距離場では干渉する2つの物体1、2の場合に、干渉係数Vradは、アンテナ理論(AT)より、式(47)の干渉係数であるものと予測される。
【0158】
また、いくつかの構造例について、共振のQ値Q及びQradを計算する方法は以上で示しており、従って、係数Q/Qradを計算することができる。
【0159】
干渉による効率の増大及び放射の抑制を、容量負荷付き導体ループ及び誘電体円板の2つの例について例証する。改善の度合いは、系の性質に依存するように示される。
【0160】
5.1 容量負荷付き導体ループ
図10に示すような、距離Dをおいた、半径aの円形断面を有する導線のNターンから成る半径rの2つのループ1、2を考える。こうした系について、Q値、結合係数、及び強結合係数を計算する方法は、2.2節に示されている。
【0161】
図17(a)に、これらの(ループの)結合係数を、相対距離D/rの関数として、3つの異なる寸法の単一ターン(N=1)のループについて示す。図17(b)に、これらのループの固有周波数
における強結合係数を示す。式(26)及び(27)によって示す近似スケーリング
【数172】
は明らかである。
【0162】
距離Dをおいて結合した2つのループ間の干渉パラメータを、式(47)のAT解析を用いて計算する。
【0163】
図10に示すような、距離Dをおいた、半径aの円形断面を有する導線のNターンから成る半径rの2つのループ1、2を考える。こうした系について、Q値、結合係数、及び強結合係数を計算する方法は、2.2節に示されている。図17(a)に、これらの(ループの)結合係数を、相対距離D/rの関数として、3つの異なる寸法の単一ターン(N=1)のループについて示す。図17(b)に、これらのループの固有周波数
における強結合係数を示す。式(26)及び(27)によって示す近似スケーリング
【数173】
は明らかである。距離Dをおいて結合した2つのループ間の干渉パラメータを、式(47)のAT解析を用いて計算し、一方のループが他方のループ上に重なる最適な結合については、次式のようになる:
【数174】
図18に、これらの干渉係数を、正規化した距離D/rの関数として示しこの図では、放射レジームに達した際のみにこの係数が0になることがわかる。これらの共振ループは、中程度の距離(D/r≦10)では完全にサブ波長であり(多くの例ではλ/r≧50)であるので、D/λ≦0.2を想定し、従って、干渉係数は非常に大きい(Vrad≧0.8)。
【0164】
いくつかの例では、固定の共振周波数において、ループの半径rを増加させることによって係数Q/Qradを増加させることができる。いくつかの例では、ループのターン数を増加させることによって、係数Q/Qradを増加させることができる。いくつかの例では、ループの導線の半径aを増加させることによって、あるいはリッツ線またはリボンを用いて吸収損失を低減し、従って放射をより支配的な損失メカニズムにすることによって、係数Q/Qradを増加させることができる。
【0165】
また図19に、r=30cm及びd=2cmの例について、強結合係数U、干渉係数Vrad、及び強干渉係数Vを、固定距離D=5rをおいた(2つの)ループの固有共振周波数の関数としてプロットする。実際に、この例については、Vradは、サブ波長レジームでは周波数と共に単調減少し、常に0.8より大きいが、Vは最大値を示す、というのは、周波数と共に損失がより大きくなり、放射がより支配的になるので、項Q/Qradは周波数と共に1に向かって増加するからである。U及びVがそれぞれ最大になる固有共振周波数fUとfVとは異なることがわかる。このことは、以前の知識に基づく仮定であるように、Uが最大になる固有周波数fUにおいて効率は必ずしもピークにならず、fUとfVとの間の異なる固有周波数fηでピークになることを暗に意味する。このことを以下に示す。
【0166】
図20に、効率ηPを(2つの)ループの固有共振周波数の関数として、ループ寸法r=30cm、a=2cm及びr=1m、a=2cmなる2つの例について、2つの異なるループ距離D=5r及びD=10rにおいて、そして次の2つの場合についてプロットする:
(i)(実線)干渉効果を含め、式(53)より、駆動周波数を共振周波数からD0=UVだけ離調させて電力伝送効率を最大にし、同様に、式(53)からのU0を用い、従って、式(54)における最適効率を暗に意味する。
(ii)(一点鎖線)干渉効果を含め、式(57)より、駆動周波数を共振周波数からD0=UVradだけ離調させて、放射電力に対する伝送電力を最大にし、同様に、式(57)からのU0を用いる。
(iii)(破線)干渉効果を含めるが、駆動周波数は共振周波数から離調させず、干渉がない場合に効率を最大にするために行うように式(14)からのU0を用いる。
(iv)(点線)真に、緩衝効果がなく、従って、駆動周波数を共振周波数から離調させずに効率を最大にし、式(14)からのU0を用い、従って、式(15)における効率を暗に意味する。
【0167】
図21に、効率を最大にする(図20の場合(i)(実線):D0=UV)か、あるいは放射電力に対する伝送電力の比率を最大にする(図20の場合(ii)(一点鎖線):D0=UVrad)かのいずれかのために、干渉の存在下で用いた駆動周波数の離調の量を示す。明らかに、この駆動周波数の離調は少なからぬ量である。
【0168】
図20より、すべての周波数について、場合(i)(実線)の効率が場合(iii)(破線)の効率より大きく、場合(iii)の効率は場合(iv)(点線)の効率より大きいことがわかる。従って、この説明では、遠距離場干渉を用いることが、電力伝送効率を改善し((iv)(点線)から(iii)(破線)への改善)、さらに、駆動周波数を低放射損失の奇数次ノーマルモードに向けて離調させることによって相殺的な遠距離場干渉を用いることが、電力伝送効率をさらに改善する((iii)(破線)から(i)(実線)への改善)ことを提言する。
【0169】
fηが、場合(i)の効率が最適化される固有周波数である場合に、いくつかの例では、固有共振周波数はfηより大きいように、即ち、放射がより支配的である系のレジームに設計することができる。この説明では、こうした固有周波数において、相殺的な遠距離場干渉を利用し、系を奇数次ノーマルモードに近い周波数で駆動することによって、効率の大幅な改善が可能であることを提言する。このことは図20より、実線を対応する破線及び点線と比較することによってわかる。
【0170】
一般に、強結合係数Uが最大になる周波数fUで共振する系を設計しがちである。しかし、以上で提言したように、干渉の存在下では、図20は、ηPの最大値は、fUとは異なる固有周波数fηの所にあることを示している。いくつかの例では、fη>fUである。このことは、より高い固有周波数では、損失は吸収よりも放射によって決まり、従って、全損失を低減するに当たり、相殺的な放射干渉がより重要な役割を果たすことができ、従ってfV>fUであり、効率はfη>fUで増加する、ということによる。いくつかの例では、固有共振周波数を、異なるfUではなく効率を最適化する周波数fηに近いように設計することができることを、この説明で提言する。特に、図22(a)に、これら2つの周波数fη(実線)及びfU(破線)を2つのr=30cmループの相対距離D/rの関数としてプロットする。図22(b)には、式(54)からの最適効率の階調プロットをU−V面内に示す。そして、場合(i)(実線)のU−V曲線を、Dをパラメータとして、最適周波数fηで共振する2つのr=30cmループについて、距離D毎に重ね書きする。この曲線の階調プロット上への経路より、場合(i)(実線)について、距離の関数としての効率を抽出することができる。また、図22(b)には、場合(iii)(破線)のU−V曲線を、Dをパラメータとして、fUで共振する2つのr=30cmループについて重ね書きし、そして場合(iv)(点線)のUの範囲を、Dをパラメータとして、fUで共振する2つのr=30cmループについて重ね書きする(なお、この最後の場合には、干渉は存在せず、従ってV=0である)。そして図22(c)に、図22(b)の実線によって達成される効率増大係数(倍率)を、距離D/rの関数として、駆動周波数離調なしで達成される最良のものと比較して(破線)、及び全く干渉なしで達成される最良のものと比較して(点線)示す。干渉を用いることによる改善は、ループ間の大きな分離において、増大係数2に達し得る。
【0171】
図23に、式(39)を用いた放射効率をループの固有周波数の関数として、2つの異なるループ寸法、2つの異なる距離、及び図20で調べた4つの異なる場合についてプロットする。図23より、すべての周波数について、場合(ii)(一点鎖線)のηradが場合(i)(実線)のηradより小さく、場合(i)のηradは場合(iii)(破線)のηradより小さく、場合(iii)のηradは場合(iv)(点線)のηradより小さいことがわかる。従って、この説明では、遠距離場干渉を用いることは、放射を抑制し((iv(点線)から(iii)(破線)への改善))、さらに、駆動周波数を低放射損失の奇数次ノーマルモードに向けて離調させることによって相殺的な遠距離場干渉を用いることは、放射効率をさらに抑制し((iii)(破線)から(i)(実線)及び(ii)(一点鎖線)への改善)、従って、場合(ii)ではなおさら、この目的向けに特に最適化されていることを提言する。
【0172】
いくつかの例では、固有共振周波数をfηより大きく設計することができ、即ち、放射がより支配的である系のレジームに設計することができる。この説明では、こうした固有周波数では、相殺的な遠距離場干渉効果を利用し、奇数次ノーマルモードに近い周波数で系を駆動することによって大幅な放射の抑制が存在し得ることを提言する。場合(ii)(一点鎖線)は、最大の放射抑制を達成し、そして図20からわかるように、この構成が達成することのできる効率が、構成(i)の可能な最大値に比べて少ししか劣らない(fVに近い)固有周波数の範囲が存在する。
【0173】
一例では、r=30cm及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは30MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、電力伝送効率は59%であり、放射効率は38%である。干渉の存在下で、駆動周波数を30MHzから離調させなければ、電力伝送効率は62%であり、放射効率は32%である。干渉の存在下で、駆動周波数を30MHzから31.3MHzに離調させて効率を最大にすれば、電力伝送効率は75%に増加し、放射効率は18%に抑制される。
【0174】
他の例では、r=30cm及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは10MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、あるいは干渉の存在下で駆動周波数を10MHzから離調させなければ、電力伝送効率は約81%であり、放射効率は約4%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから10.22MHzに離調させて放射を上回る伝送を最大にすれば、電力伝送効率は42%であり、2分の1まで低下していないのに対し、放射効率は0.4%であり、1桁分抑制されている。
【0175】
他の例では、r=1m及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは10MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、電力伝送効率は48%であり、放射効率は47%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから離調させなければ、電力伝送効率は54%であり、放射効率は37%である。干渉の存在下で、駆動周波数を10MHzから14.8MHzに離調させて効率を最大にすれば、電力伝送効率は66%に増加し、放射効率は24%に抑制される。
【0176】
他の例では、r=1m及びa=2cmの単一ターンの2つのループが、距離D/r=5をおいて図10に示すように配向され、これらのループは4MHzで共振するように設計されている。干渉がなければ、あるいは干渉の存在下で駆動周波数を4MHzから離調させなければ、電力伝送効率は約71%であり、放射効率は約8%である。干渉の存在下で、駆動周波数を4MHzから5.06MHzに離調させて放射を上回る伝送を最大にすれば、電力伝送効率は40%であり、2分の1まで低下していないのに対し、放射効率は約1%であり、ほぼ1桁分抑制されている。
【0177】
5.2 誘電体円板
図15(b)に示すように、中心間の距離Dを置いて配置された、半径r及び誘電率εの2枚の誘電体円板を考える。これらの円板の結合は、距離Dの関数として、解析的方法及び周波数領域有限要素(FEFD)法を用いて2.4節で計算しており、図24に示す。
【0178】
距離Dをおいて結合した2枚の円板間の干渉係数を計算するために、ここでも、次の2つの独立した方法を用いて、本発明の結果の有効性を確認した:数値的なFEFDの計算はここでも、2つのノーマルモードの損失速度を分裂させる(二分する)ことによって、Λ(従ってV)を与える;解析的な、式(47)のAT予測の計算は、次式を与える:
【数175】
【0179】
同じ2枚の円板についての結果を、図24における結合を計算したのと全く同じパラメータについて、固定距離における(εを変動させることによる)周波数の関数として図25に提示する。ここでも、強干渉係数Vが0の値を有し得ることがわかり、このことは、系が放射結合レジームに入る前にも発生し、即ち、同じ距離におけるUの周波数より小さい周波数でも発生する。上記の効果の両方が、大部分の距離について、U(図24(b)より)及びV(図25(b)より)を、周波数の異なる値(それぞれfU及びfV)において最小にすることができ、従って、式(54)の最終的なエネルギー伝達効率のための最適周波数fηも異なり得る。このことを同じパラメータの組について図26に示す。このプロットより、干渉は、式(15)によって結合の性能指数Uの計算値から予測される効率に比べて、効率を大幅に改善することができることがわかる。
【0180】
さらに、所定のエネルギー伝達システムが、干渉を無視した予測によって予測されるよりも良好に機能するだけでなく、本発明の最適化設計は一般に、干渉の存在下で異なる最適なパラメータの組をもたらす。例えば、特定距離D/r=5については、図26より、利用可能なεの範囲内では、m=1の共振モードがm=2のモードよりも良好な効率を達成することができることがわかり、このことは、図24に見られるより弱いUの影響を打ち消す強干渉を利用することによって行い、図24からは逆の機能を結論付けたであろう。さらに、同じmの分枝(ブランチ)内でも、Uが最大である周波数fUで動作するように系を単純に設計するであろう。しかし、干渉の存在下では、全体効率ηがピークになる異なる周波数fηで動作するように系を設計すべきであるので、最適設計は変化する。図27(a)では、まず、図24のm=2における円板の選定に対して、距離Dが変化すると共に強結合係数U及び(干渉を含む)効率ηがピークになる所で、これらの異なる周波数を計算し、そして、これらの周波数の差が有意であることを観測する。そして、図27(b)に、種々の周波数の選定に対するピーク効率を示す。効率が小さくブースト(昇圧)を用いるような大きい距離については、改善係数(倍率)は、検討中の特定の系については有意な2に達する。同じ結果を図27(c)に、距離の変化に伴う効率の経路のプロットとして、U−Vマップ上に重ねて示す。同様の結果が、異なる次数mのモードについても導出される。物理的には、より高い周波数に移動することは、放射損失の役割を吸収に比べて増加させ、従って、干渉がより大きな影響を有し得る。最適周波数fηでは、干渉を含む放射電力はfUにおける放射電力に近いが、吸収電力はずっと小さく、従って効率は改善されている。
【0181】
いくつかの例では、効率を改善する代わりに、放射を最小にすることにより重きをおくことができる。この場合は、周波数fUにおいて、式(57)の条件下で最適化した際に放射される電力の量を、単に共振して(D0=0)動作する際に放射される電力と比較して、干渉がある場合及びない場合について計算する(後者の場合は、2枚の円板が類似しないことにより、あるいはデコヒーレンスにより、等で、これらの円板が干渉しない場合を記述することができる)。図28では、動作周波数を奇数次(オッド)副放射モードに向けて離調させることによって、放射が1.6分の1に抑制されることが見出される。
【0182】
6.外部物体に対する系の感度
一般に、共振ベースの無線エネルギー伝達の例の全体性能は、共振物体の共振のロバストネス(頑健性)に強く依存する。従って、ランダムな非共振外部物体が近くに存在することに対する共振物体の感度を解析することが望ましい。1つの適切な解析モデルは、「摂動理論」(PT:perturbation theory)の解析モデルであり、外部物体pの存在下では、共振物体1の内部の場の振幅a1(t)が、一次までは次式を満足することを示唆する:
【数176】
ここでも、ω1は周波数であり、Γ1は固有(吸収、放射、等)損失速度であり、δκ11(p)は、pの存在により(物体)1に生じる周波数シフトであり、δΓ1(p)は、外部のp(p内部の吸収、pからの散乱、等)による損失速度である。δΓ1(p)は、δΓ1(p)≡Γ1(p)−Γ1として定義され、ここにΓ1(p)はpの存在下での全摂動損失速度である。一次PTモデルは、小さい摂動のみに対して有効である。それにもかかわらず、a1を厳密な摂動モードの振幅とすれば、パラメータδκ11(p)、δΓ1(p)は上記レジーム外でも明確に定義される。また、初期の共振物体のモードの放射場と外部物体から散乱する場との間の干渉効果は、強い散乱(例えば金属物体からの散乱)については、初期損失速度Γ1,radより小さい全損失速度Γ1,rad(o)を生じさせる(即ち、δΓ1(p)は負である)。
【0183】
電源側物体の共振周波数、装置側物体の共振周波数、及び駆動周波数の間には、特定の関係が望まれる。いくつかの例では、すべての共振物体が同じ固有周波数を有さなければならず、そしてこの固有周波数は、駆動周波数に等しくなければならない。いくつかの例では、遠距離場干渉を用いて効率を最適化するか放射を抑制しようとする際に、すべての共振物体が同じ固有周波数を有さなければならず、そして駆動周波数をこれらの固有周波数から特定量だけ離調させなければならない。いくつかの実現では、1つ以上の共振物体及び駆動電力発生器に、これらの周波数を修正するフィードバック・メカニズムを適用することによって、この周波数シフトを「固定」することができる。いくつかの例では、電力発生器からの駆動周波数を固定し、物体の共振周波数のみを、この駆動周波数に対して調整することができる。
【0184】
ある物体の共振周波数は、例えば、この物体の幾何学的特性(例えば、自己共振コイルの高さ、容量負荷付きループまたはコイルのコンデンサ極板の間隔、誘導負荷付きロッドのインダクタの寸法、誘電体円板の形状、等)を調整するか、あるいは、この共振物体の付近にある非共振物体の位置を変化させることによって調整することができる。
【0185】
いくつかの例では、図29Aを参照すれば、各共振物体(構造)に固定周波数の発振器、及びこの物体の固有周波数を測定する監視装置を設ける。これらの発振器及び監視装置の少なくとも一方は周波数調整器に結合され、この周波数調整器は、共振物体の周波数を調整することができる。この周波数調整器は、上記固定の駆動周波数と物体周波数との差を測定し、上述したように、この物体周波数を上記固定周波数との要求される関係にもっていくように機能する。この技法は、外部物体の存在下でも、すべての共振物体が同じ固定周波数で動作することを保証する。
【0186】
いくつかの例では、図29Bを参照すれば、電源側物体から装置側物体へのエネルギー伝達中に、装置側物体がエネルギーまたは電力を負荷に供給し、効率監視装置がこのエネルギー伝達または電力伝送の効率を測定する。負荷に結合された周波数調整器、及び効率監視装置は、この効率を最大にするように物体の周波数を調整すべく機能する。
【0187】
他の例では、周波数調整スキームが、共振物体間の情報交換に頼る。例えば、電源側物体の周波数を監視して装置側物体に送信し、装置側物体は上述したように周波数調整器を用いて、この周波数に同期する。他の実施例では、単一クロックの周波数を複数の装置に送信し、そして各装置は、上述したように周波数調整器を用いて、この周波数に同期する。
【0188】
周波数シフトとは異なり、外部摂動物体の存在による外部摂動損失は、改善することが困難であるので、エネルギー伝達スキームの機能に悪影響を及ぼし得る。従って、全摂動のQ値Q(p)(及び対応する摂動の強結合係数U(p)及び摂動の干渉係数V(p))を定量化すべきである。
【0189】
いくつかの例では、無線エネルギー伝達用の系が主に磁気共鳴(磁気共振)を用い、共振器を包囲する空気領域内の近接場内に蓄積されたエネルギーの大部分は磁気エネルギーであるのに対し、電気エネルギーは主に共振器内部に蓄積される。こうした共振は、本明細書で検討中の動作の準静的レジーム(r≪λ)内に存在することができ:例えば、h≪2rなるコイルについては、電界は大部分、コイルの自己容量内または外部負荷のコンデンサ内に局在し、ε≫1なる誘電体円板については、電界は大部分、この円板内に局在する。いくつかの例では、外部物体の磁気共鳴に対する影響はほとんどない。その理由は、共振器を包囲する空気領域内の磁界と相互作用し、共振に対する摂動として作用し得る外部非導電物体は、有意な磁気特性(透磁率Re{μ}>1または磁気損失Im{μ}>0)を有する物体である、ということによる。ほとんどすべての日常的な非導電物質は非磁性であるが単なる誘電体であるので、これらの物質は自由空間と同様に磁界に応答し、従って、共振器の共振を妨げない。しかし、外部の導電物質は、(その導電率に応じて)その内部またはその表面上に誘導される渦電流によりいくらかの外部損失をもたらす。しかし、こうした導電物質についても、それらが共振物体に非常に近接しない限り、共振に悪影響を与えない。
【0190】
外部物体と共振物体との間の相互作用は相反的であり、即ち、外部物体が共振物体に影響を与えなければ、共振物体も外部物体に影響を与えない。このことは、人間のとっての安全性の配慮を踏まえて見ることができる。人間も非磁性であり、リスクを被ることなしに強磁界に耐えることができる。磁界B〜1Tを人間に対して安全に用いる代表的な例は、医療検査用の磁気共鳴画像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)技術である。これとは対照的に、2,3ワットの電力を装置に供給するための一般的な具体例において必要な磁気近接場はB〜10-4Tに過ぎず、この値は実際に、地球の磁界の大きさと同程度である。以上で説明したように、強い電気近接場も存在せず、この無放射スキームから生成される放射は最小であるので、本明細書で説明するエネルギー伝達装置、方法、及びシステムは、生体組織にとって安全であるものと確信する。
【0191】
6.1 容量負荷付き導体ループまたはコイル
いくつかの例では、容量負荷付き導線コイルの共振系が大部分の磁気エネルギーを、この共振系を包囲する空間内に蓄積する度合いを推定することができる。コンデンサからのフリンジ電界を無視すれば、コイルを包囲する空間内の電気及び磁気エネルギー密度は、遠距離場内ではなく導線中の電流によって生成される電界及び磁界に由来し、これら2つのエネルギー密度は、放射電磁界では常にそうであるように、等しくなければならない。h=0なるサブ波長(r≪λ)電流ループ(磁気双極子)によって生成される場の結果を用いることによって、電気エネルギー密度対磁気エネルギー密度の比率を、ループの中心からの距離Dp(限界r≪Dp内)及びループ軸に対する角度θの関数として、次式のように計算することができる:
【数177】
この式の2行目は、電気及び磁気エネルギー密度を半径Dpの球の表面全体にわたって積分することによる、すべての角度にわたる平均値どうしの比率である。式(62)より、実際に、近接場内(x≪1)では、すべての角度について、磁気エネルギー密度が支配的であるのに対し、遠距離場内(x≫1)では、電気及び磁気エネルギー密度は等しく、そうあるべきである。また、ループの好適な配置は、共振で相互作用することのできる物体どうしがその軸(θ=0)の近くにあるようにし、そこに電界は存在しない。例えば、表4に記載した系を用いて、式(62)より、距離Dp=10r=3mにあるr=30cmのループについては、平均電気エネルギー密度対平均磁気エネルギー密度の比率は〜12%であり、Dp=3r=90cmでは〜1%であり、Dp=10r=1mにあるr=10cmのループについては、この比率は〜33%であり、そしてDp=3r=30cmについては、〜2.5%である。より近い距離では、この比率はさらに小さくなり、従って、近接場では、エネルギーは磁気が支配的であるのに対し、これらのエネルギーが必然的に同じオーダー(比率→1)である放射遠距離場では、両エネルギーが非常に小さい、というのは、容量負荷付きコイル系はごくわずかしか放射しないように設計されているので、場が大幅に減衰するからである。従って、これが、この共振系のクラスを磁気共鳴系として認める基準である。
【0192】
コンデンサのフリンジ電界を含む容量負荷付きループの共振に対する外部物体の影響の推定値を提供するために、前述した摂動理論の公式:
【数178】
を、図10のプロットに示すような例の場についてのFEFDの計算結果、及び寸法30cm×30cm×1.5m及び(人間の筋肉に合わせた)誘電率ε=49+16iを有し、ループ間に存在し、一方のコンデンサ上に(〜3cm離れて)ほぼ直立する矩形物体と共に用い、δQabs(human)〜105を見出し、〜10cm離れた場合については、δQabs(human)〜5・105を見出した。従って、通常の距離(〜1m)及び配置(コンデンサの直上ではない)については、あるいは、損失角のずっと小さい大部分の通常の外部物体については、実際にδQabs(human)→∞と言って差し支えないものと結論付ける。これらの共振に影響するものと想定される唯一の摂動は、大型金属構造の非常な接近である。
【0193】
自己共振コイルは容量負荷付きコイルより敏感であり得る、というのは、前者については、電界が空間内の、後者(コンデンサ内部のみ)よりもずっと大きい領域(コイル全体)に広がるからである。他方では、自己共振コイルは作製を単純にすることができ、そして大部分の集中型コンデンサよりずっと高い電圧に耐えることができる。誘導負荷付き導体ロッドも、容量負荷付きコイルよりずっと敏感であり得る、というのは、これらは電界に頼って結合を達成するからである。
【0194】
6.2 誘電体円板
誘電体円板については、小型、低屈折率(低インデックス)、低材料損失、あるいは遠く離れた漂遊物体が、小さい散乱及び吸収を誘発する。こうした小さい摂動の場合には、これらの外部損失メカニズムは、それぞれの解析的な一次摂動理論式:
【数179】
を用いて定量化することができ、ここに
【数180】
は非摂動モードの全共振電磁エネルギーである。上式からわかるように、これらの損失は両方とも、外部物体の所の共振電界テール
の二乗に依存する。これとは対照的に、物体1から他の共振物体2への結合係数は、前述したように、次式のようになり:
【数181】
物体2の内部における、物体1の電界テール
に線形依存する。こうしたスケーリングの差は、次ことの確信を与える:例えば、指数関数的に小さくなる電界テールについては、少なくとも小さい摂動については、他の共振物体への結合(速度)が、すべての外部損失速度(κ12≫δΓ1,2(p))よりずっと速いはずであり、従って、本発明のエネルギー伝達スキームは、このクラスの共振誘電体円板については頑健であるものと想定される。
【0195】
しかし、外部物体が、上記の一次摂動理論の方法を用いて解析するには強過ぎる摂動を生じさせる、というあり得る特定の状況も検討したい。例えば、誘電体円板を、図30Aに示すように、(人間hのような)大きなRe{ε}、Im{ε}かつ同じサイズであるが異なる形状の他の共振外物体、及び図30Bに示すように(壁面wのような)大きく広がる粗くした表面であるが小さいRe{ε}、Im{ε}の他の共振外物体の近くに配置する。円板の中心と「人間の」中心または「壁面」との間の距離Dh/w/r=10から3についての、図30A及び30Bに提示する数値的FDFDシミュレーションの結果は、円板の共振が相当頑健であるように見えることを示唆する、というのは、円板の共振は、非常に近接した高損失の物体は例外として、外部物体の存在によって有害なほど乱されないからである。エネルギー伝達システム全体に対する大きな摂動の影響を検討するために、「人間」及び「壁面」が共に近くに存在する状況下での2つの共振円板を考える。表8を図30C中の表と比較すれば、数値的FDFDシミュレーションは、システム性能がU〜1から50から、U(hw)〜0.5から10に、即ち許容可能な少量しか劣化していないことを示している。
【0196】
一般に、共振系の異なる例は外部摂動に対する異なる感度を有し、共振系の選定は、目前の特定用途、及び感度または安全性の問題がこの用途にとってどれほど重要でありかに依存する。例えば、(無線給電人工心臓のような)医療用埋め込み装置については、電界の広がりを、可能な最高度までに最小化して、装置を包囲する組織を保護しなければならない。外部物体に対する感度または安全性が重要である場合には、周囲空間内の所望点の大部分において、電気エネルギー密度対磁気エネルギー密度の比率we/wmを低減または最小化するように共振系を設計しなければならない。
【0197】
7.応用
以上で説明した非放射無線エネルギー伝達技術は、他の外部の共振外物体内へのエネルギーの伝達または消散を少量しか生じさせずに、共振物体間の効率的な無線エネルギー交換を可能にする。この技術は汎用的であり、実際に種々の共振系に適用することができる。本節では、無線電力伝送の効果が得られるか、あるいは無線電力伝送を利用するように設計することのできる種々の用途を識別する。
【0198】
遠隔装置は、無線給電される電力またはエネルギーを用いて直接給電して、これらの装置を動作させるか運転することができ、あるいは、これらの装置は、バッテリまたはエネルギー蓄積装置によって、バッテリまたはエネルギー蓄積装置を通して、またはバッテリまたはエネルギー蓄積装置に加えて給電することができ、このバッテリは時々無線で充電又は再充電することができる。これらの装置は、蓄電コンデンサ等を統合したバッテリのようなハイブリッド(混成)型バッテリ/エネルギー蓄積装置によって給電することができる。さらに、無線電力伝送システムによって可能になる動作の改善を利用して、新規のバッテリ及びエネルギー蓄積装置を設計することができる。
【0199】
装置をオフ状態にして、無線給電される電力またはエネルギーを用いて、バッテリまたはエネルギー蓄積装置を充電または再充電することができる。このバッテリまたはエネルギー蓄積装置の充電または再充電速度は、高くすることも低くすることもできる。このバッテリまたはエネルギー蓄積装置は、トリクル(細流)充電またはフロート充電することができる。装置に給電及び/または充電するための種々の方法が存在し、これらの種々の方法は以下の用途のリストに適用することができることは、通常の当業者にとって明らかである。
【0200】
種々の可能な用途を有し得るいくつかの無線エネルギー伝達の例は、例えば、電源(例えば、優先電力網に接続された電源)を部屋の天井に配置しつつ、ロボット、車両、コンピュータ、PDA、または類似のもののような装置を室内に配置するか、あるいは室内を自由に移動させることを含む。他の用途は、電気エンジンのバス及び/またはハイブリッドカー、及び医療用埋め込み装置に給電または再充電することを含む。追加的な用途の例は、自立型の電子装置(例えばラップトップ・コンピュータ、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、家庭用ロボット、GPSナビゲーションシステム、ディスプレイ、等)、センサ、工業及び製造装置、医療装置及び監視装置、家庭電化製品(たとえば照明、扇風機、ヒーター、ディスプレイ、テレビジョン、調理家電製品、等)、軍用装置、加熱または照明衣服、通信及びナビゲーション装置に給電または再充電する能力を含み、これらの装置は、車両、衣服、及びヘルメットのような保護装具、防弾チョッキ及びベスト、等に組み込まれた装置を含み、そして、埋め込み型医療装置に、隠れた、埋め込まれた、差し込まれた、あるいは組み込まれたセンサまたはタグに、屋根上の太陽電池パネルとの間で、屋内の分散型パネルとの間で、等のような物理的に隔離された装置に電力を伝送する能力を含む。
【0201】
いくつかの例では、システム設計者が遠距離場干渉を利用して、全放射損失を抑制し、及び/または、システム効率を増加させることができる。いくつかの例では、放射レジームに最適な近さで動作するシステムが、遠距離場干渉の存在をより利用し、このことは、結合された物体のサブ放射ノーマルモードにおける損失の低減をもたらし、この利点は大幅であり得る。
【0202】
本発明の多数の例を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変更を加えることができることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きく、
前記装置がさらに電源を具え、この電源は前記第1共振構造に結合され、前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって低減することを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項2】
前記電源が、前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用いた無線エネルギー伝達の方法であって、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい方法において、
前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって低減するステップを含むことを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項4】
前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きく、
前記距離Dの所望範囲について、前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数に起因する放射干渉によって伝送効率Tが増加し、この増加は、前記放射干渉を考慮せずに計算した伝送効率Tに対する増加であることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項6】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって前記伝送効率Tが最適化されるように選択されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
無線エネルギー伝達装置を設計する方法であって、前記無線エネルギー伝達装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい方法において、
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に起因する前記第1共振構造と前記第2共振構造間との間の放射干渉によって伝送効率がほぼ最適化されるように選択するステップを含む
ことを特徴とする無線エネルギー伝達装置の設計方法。
【請求項8】
前記第1共振構造共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tが最適化されるように選択することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、
前記エネルギー伝達は、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数1】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数2】
として定義され
前記装置は、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記装置からの放射の総量を、前記干渉がない場合の前記装置からの放射の量に比べて低減するように構成され、強干渉係数は、
【数3】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項10】
Q1/Q1,rad≧0.01かつQ2/Q2,rad≧0.01であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
Q1/Q1,rad≧0.1かつQ2/Q2,rad≧0.1であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
D/λ0が0.001より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.01より大きいことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
D/λ0が0.001より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.1より大きいことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
さらに、前記第2共振構造を具えていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項15】
動作中に、電力発生器が、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
Ugは、前記電力発生器が前記第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、前記電力発生器が前記第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
D1はUVradにおよそ等しく、D2はUVradにおよそ等しいことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率に対する比率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
Ugは
におよそ等しいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項20】
fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項21】
fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記装置がさらに、前記電力発生器を具えていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項23】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、
Ulは、前記電力負荷が前記第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、前記電力負荷が前記第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項24】
Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVradに等しく、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVradに等しく、
Ulは
におよそ等しいことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1共振構造及び前記第2共振構造の少なくとも一方が、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項27】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが30cm以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが1m以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
さらに、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを具えていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項30】
前記フィードバック・メカニズムが、固定駆動周波数を有する発振器を具え、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を、前記固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、
前記エネルギー伝達は、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数4】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数5】
として定義され、
前記装置は、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記装置のエネルギー伝達の効率を、前記干渉がない場合の前記装置のエネルギー伝達の効率に比べて増加させるように構成され、強干渉係数は、
【数6】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項32】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
Q1/Q1,rad≧0.5及びQ2/Q2,rad≧0.5であることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項34】
D/λ0が0.01より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.05より大きいことを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項35】
D/λ0が0.01より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.5より大きいことを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項36】
さらに、前記第2共振構造を具えていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項37】
動作中に、電力発生器が、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
Ugは、前記電力発生器が前記第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、前記電力発生器が前記第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義されることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義されることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
D1はUVにおよそ等しく、D2はUVにおよそ等しいことを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
Ugは、エネルギー伝達効率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項41】
Ugは
におよそ等しいことを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項42】
fが少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さいことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項43】
fが少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さいことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項44】
さらに、前記電力発生器を具えていることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項45】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、
Ulは、前記電力負荷が前記第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、前記電力負荷が前記第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義されることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項46】
Ulは、エネルギー伝達効率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVに等しく、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVに等しく、
Ulは
におよそ等しいことを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記第1共振構造及び前記第2共振構造の少なくとも一方が、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項49】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが30cm以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが1m以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項51】
さらに、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを具えていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項52】
前記フィードバック・メカニズムが、固定駆動周波数を有する発振器を具え、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を、前記固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されていることを特徴とする請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記フィードバック・メカニズムは、前記エネルギー伝達の効率を監視し、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を調整して、前記効率を最大にするように構成されていることを特徴とする請求項51に記載の装置。
【請求項54】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択されていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項55】
無線エネルギー伝達の方法において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、
前記エネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数7】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数8】
として定義され、
この方法がさらに、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射の総量を、干渉がない場合の前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射の量に比べて低減するステップを含み、強干渉係数は
【数9】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項56】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
動作中に、電力発生器を、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合し、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近いことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷を結合し、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されていることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
無線エネルギー伝達の方法において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、
前記エネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数10】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数11】
として定義され、
この方法がさらに、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記第1共振構造と前記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率を、前記干渉がない場合の前記第1共振構造と前記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率に比べて増加させるステップを含み、強干渉係数は
【数12】
のように定義される
ことを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項60】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
動作中に、電力発生器を、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合し、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近いことを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項62】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷を結合し、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択することを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項1】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きく、
前記装置がさらに電源を具え、この電源は前記第1共振構造に結合され、前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって低減することを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項2】
前記電源が、前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動するように構成されて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用いた無線エネルギー伝達の方法であって、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい方法において、
前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって低減するステップを含むことを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項4】
前記第1共振構造または前記第2共振構造を、前記共振角周波数ω1及び前記共振角周波数ω2から離れて前記第1共振構造及び前記第2共振構造の奇数次ノーマルモードに相当する周波数に向けてシフトした角周波数で駆動して、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射を、相殺的な遠距離場干渉によって大幅に抑制することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きく、
前記距離Dの所望範囲について、前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数に起因する放射干渉によって伝送効率Tが増加し、この増加は、前記放射干渉を考慮せずに計算した伝送効率Tに対する増加であることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項6】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって前記伝送効率Tが最適化されるように選択されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
無線エネルギー伝達装置を設計する方法であって、前記無線エネルギー伝達装置が、距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、前記距離Dは、前記第1共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記エネルギー伝達は、速度κを有し、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び少なくとも300より大きい共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、量
は少なくとも20より大きい方法において、
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に起因する前記第1共振構造と前記第2共振構造間との間の放射干渉によって伝送効率がほぼ最適化されるように選択するステップを含む
ことを特徴とする無線エネルギー伝達装置の設計方法。
【請求項8】
前記第1共振構造共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に共に起因する共振のQ値U及び干渉係数Vによって伝送効率Tが最適化されるように選択することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、
前記エネルギー伝達は、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数1】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数2】
として定義され
前記装置は、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記装置からの放射の総量を、前記干渉がない場合の前記装置からの放射の量に比べて低減するように構成され、強干渉係数は、
【数3】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項10】
Q1/Q1,rad≧0.01かつQ2/Q2,rad≧0.01であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
Q1/Q1,rad≧0.1かつQ2/Q2,rad≧0.1であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
D/λ0が0.001より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.01より大きいことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
D/λ0が0.001より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.1より大きいことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
さらに、前記第2共振構造を具えていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項15】
動作中に、電力発生器が、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
Ugは、前記電力発生器が前記第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、前記電力発生器が前記第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
D1はUVradにおよそ等しく、D2はUVradにおよそ等しいことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
Ugは、エネルギー伝達効率の放射効率に対する比率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
Ugは
におよそ等しいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項20】
fは少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項21】
fは少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さいことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記装置がさらに、前記電力発生器を具えていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項23】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、
Ulは、前記電力負荷が前記第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、前記電力負荷が前記第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項24】
Ulは、エネルギー伝達効率対放射効率の比率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVradに等しく、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVradに等しく、
Ulは
におよそ等しいことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1共振構造及び前記第2共振構造の少なくとも一方が、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項27】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが30cm以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが1m以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
さらに、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを具えていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項30】
前記フィードバック・メカニズムが、固定駆動周波数を有する発振器を具え、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を、前記固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されていることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
無線エネルギー伝達用の装置において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を具え、
前記エネルギー伝達は、前記第1共振構造の共鳴場と前記第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数4】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数5】
として定義され、
前記装置は、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場における放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記装置のエネルギー伝達の効率を、前記干渉がない場合の前記装置のエネルギー伝達の効率に比べて増加させるように構成され、強干渉係数は、
【数6】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。
【請求項32】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
Q1/Q1,rad≧0.5及びQ2/Q2,rad≧0.5であることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項34】
D/λ0が0.01より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.05より大きいことを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項35】
D/λ0が0.01より大きく、かつ前記強干渉係数Vが0.5より大きいことを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項36】
さらに、前記第2共振構造を具えていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項37】
動作中に、電力発生器が、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合係数κgで結合され、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
Ugは、前記電力発生器が前記第1共振構造に結合されている場合はκg/Γ1として定義され、前記電力発生器が前記第2共振構造に結合されている場合はκg/Γ2として定義されることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義されることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
D1はUVにおよそ等しく、D2はUVにおよそ等しいことを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
Ugは、エネルギー伝達効率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項41】
Ugは
におよそ等しいことを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項42】
fが少なくとも100kHzより大きく、かつ500MHzより小さいことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項43】
fが少なくとも1MHzより大きく、かつ50MHzより小さいことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項44】
さらに、前記電力発生器を具えていることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項45】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷が結合速度κlで結合され、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成され、
Ulは、前記電力負荷が前記第1共振構造に結合されている場合はκl/Γ1として定義され、前記電力負荷が前記第2共振構造に結合されている場合はκl/Γ2として定義されることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項46】
Ulは、エネルギー伝達効率を最大にするように選定されていることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近く、
前記第1共振構造の前記駆動周波数からの離調はD1=(ω−ω1)/Γ1として定義され、およそUVに等しく、前記第2共振構造の前記駆動周波数からの離調はD2=(ω−ω2)/Γ2として定義され、およそUVに等しく、
Ulは
におよそ等しいことを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記第1共振構造及び前記第2共振構造の少なくとも一方が、容量負荷付きのループまたはコイルを具え、このループまたはコイルは、導線、導電性リッツ線、及び導電性リボンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項49】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが30cm以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記ループまたはコイルの特徴的サイズが1m以下であり、前記導線またはリッツ線またはリボンの幅が2cm以下であることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項51】
さらに、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を維持するためのフィードバック・メカニズムを具えていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項52】
前記フィードバック・メカニズムが、固定駆動周波数を有する発振器を具え、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を、前記固定周波数に対して固定量だけ離調するように調整すべく構成されていることを特徴とする請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記フィードバック・メカニズムは、前記エネルギー伝達の効率を監視し、前記第1共振構造及び前記第2共振構造のうち1つ以上の共振周波数を調整して、前記効率を最大にするように構成されていることを特徴とする請求項51に記載の装置。
【請求項54】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数は、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択されていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項55】
無線エネルギー伝達の方法において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、
前記エネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数7】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数8】
として定義され、
この方法がさらに、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射の総量を、干渉がない場合の前記第1共振構造及び前記第2共振構造からの放射の量に比べて低減するステップを含み、強干渉係数は
【数9】
のように定義されることを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項56】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
動作中に、電力発生器を、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合し、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近いことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷を結合し、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されていることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
無線エネルギー伝達の方法において、
距離Dをおいた第2共振構造との間のエネルギー伝達用に構成された第1共振構造を用意するステップを含み、
前記エネルギー伝達は、第1共振構造の共鳴場と第2共振構造の共鳴場とのエバネセントテール結合が介在し、このエバネセントテール結合は結合係数kを有し、
前記第1共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω1、共振周波数幅Γ1、及び共振のQ値Q1=ω1/2Γ1を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q1,rad≧Q1を有し、
前記第2共振構造の共鳴場は、共振角周波数ω2、共振周波数幅Γ2、及び共振のQ値Q2=ω2/2Γ2を有し、遠距離場中の放射を伴い、関連する放射のQ値Q2,rad≧Q2を有し、
前記共振角周波数ω1と前記共振角周波数ω2との差の絶対値は、前記共振周波数幅Γ1及びΓ2のうち大きい方より小さく、平均共振角周波数は
【数10】
として定義され、平均共振波長λ0=2πc/ω0に相当し、ここにcは自由空間内の光速であり、強結合係数は
【数11】
として定義され、
この方法がさらに、前記第1共振構造の共鳴場における放射遠距離場と前記第2共振構造の共鳴場による放射遠距離場との間の、干渉係数Vradを有する干渉を用いて、前記第1共振構造と前記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率を、前記干渉がない場合の前記第1共振構造と前記第2共振構造との間のエネルギー伝達の効率に比べて増加させるステップを含み、強干渉係数は
【数12】
のように定義される
ことを特徴とする無線エネルギー伝達方法。
【請求項60】
Q1/Q1,rad≧0.05かつQ2/Q2,rad≧0.05であることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
動作中に、電力発生器を、前記第1共振構造及び前記第2共振構造の一方に結合し、前記電力発生器は、当該電力発生器に結合された前記共振構造を、駆動角周波数ω=2πfに相当する駆動周波数fで駆動するように構成され、
前記駆動周波数は、前記第1共振構造の共振周波数及び前記第2共振構造の共振周波数と異なり、前記第1共振構造及び前記第2共振構造から成る系の奇数次ノーマルモードに相当する周波数により近いことを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項62】
動作中に、前記電力発生器が結合されていない方の前記共振構造に電力負荷を結合し、前記電力負荷は、当該電力負荷が結合された前記共振構造から使用可能な電力を受けるように構成されていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1共振構造の共振角周波数及び前記第2共振構造の共振角周波数を、当該共振角周波数に共に起因する強結合係数U及び強干渉係数Vによってエネルギー伝達効率が最適化されるように選択することを特徴とする請求項59に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【公表番号】特表2011−523844(P2011−523844A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509705(P2011−509705)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/043970
【国際公開番号】WO2009/140506
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/043970
【国際公開番号】WO2009/140506
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
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