説明

干渉式太陽電池セル

【課題】光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を高めた光起電力デバイスを提供する。
【解決手段】干渉同調または干渉光起電力デバイス(iPV)は、干渉太陽電池セル2100の活性領域2101における光エネルギーの吸収を高め、それにより、デバイスの効率を向上させる。また、電界集中および活性領域2101内の吸収を高めるために、1つまたは複数の光空洞共振器2110および/または光共振層が光起電力デバイス2100に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、例えば、太陽電池セルなどの、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電子変換器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一世紀以上にわたり、石炭、石油、および天然ガスなどの化石燃料は、米国における主要なエネルギー源であり続けた。代替エネルギー源のニーズは増大の一途を辿っている。化石燃料は、急激に枯渇しつつある再生不能のエネルギー源である。インドおよび中国などの発展途上国の大規模工業化は、利用可能な化石燃料に対するかなりの負担となっている。それに加えて、地政学的な問題が、そのような燃料の供給にすぐさま影響を及ぼしうる。地球温暖化も、近年、大きな問題になっている。地球温暖化には多数の要因が絡んでいると考えられるが、化石燃料の広範な使用が地球温暖化の主要原因であると推定されている。そこで、経済的に継続可能で環境的にも安全な再生可能エネルギー源を見つけることが急務となっている。
【0003】
太陽エネルギーは、熱および電気などの他のエネルギー形態に変換できる環境的に安全な再生可能エネルギー源である。太陽電池(PV)セルは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するので、太陽エネルギーを電力に変換するために使用できる。太陽光電池セルは、非常に薄くすることができ、モジュールとして形成することができる。PVセルのサイズは、数ミリメートルから数十センチメートルまでの範囲とすることができる。1つのPVセルから得られる個別の電気出力は、数ミリワットから数ワットまでの範囲とすることができる。数個のPVセルを電気的に接続して、パッケージングすることで、十分な電気量を発生することができる。PVセルは、動力を衛星および他の宇宙船に供給すること、電気を住宅および商業施設に供給すること、および自動車のバッテリーを充電することなど、さまざまな用途に使用することができる。しかし、太陽エネルギーを経済的に競争力のある再生可能エネルギー源として利用するには、光エネルギーを電気に変換する効率が低いことが障害となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Light−Trapping in a−Si Solar Cells: A Summary of the Results from PV Optics」、B. L. Soporiら、National Center for Photovoltaics Program Review Meeting、Denver、Colorado、1988年9月8〜11日
【非特許文献2】Miro Zeman著「Thin Film Solar Cells, Fabrication, Characterization & Applications」、edited by J. Poortmans & V. Arkhipov、John Wiley and Sons、2006年、205頁
【非特許文献3】Krcら、「Optical and Electrical Modeling of Cu(In,Ga)Se2 Solar Cells」OPTICAL AND QUANTUM ELECTRONICS (2006年)38:1115〜1123頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要なのは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を高めた光起電力デバイスおよび方法である。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態は、層状PVデバイスの界面からの反射がコヒーレントに足し合わさって、光エネルギーが電気エネルギーに変換される太陽電池セルの活性領域内に高い電界を発生する、干渉同調太陽電池セルを備える。このような干渉同調または干渉光起電力デバイス(iPV)は、干渉太陽電池セルの活性領域における光エネルギーの吸収を高め、それにより、デバイスの効率を向上させるからである。さまざまな実施形態において、電界集中および活性領域内の吸収を高めるために、1つまたは複数の光空洞共振器および/または光共振層が光起電力デバイスに含まれる。光空洞共振器および/または層は、透明非導電性材料、透明導電性材料、エアーギャップ、およびこれらの組み合わせを含むことができる。他の実施形態も使用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。反射体層は、活性層を透過する光を反射するように配設され、光空洞共振器は、活性層と反射体層との間に配置される。光空洞共振器が存在することで、活性層によって吸収される光の量が増大しうる。いくつかの実施態様では、光空洞共振器は、誘電体を含みうる。いくつかの実施態様では、光空洞共振器は、エアーギャップを含みうる。いくつかの実施態様では、光空洞共振器は、複数の層を含みうる。
【0008】
他の実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成されたと少なくとも1つの活性層を備える。光起電力デバイスは、少なくとも1つの光共振層も備え、少なくとも1つの活性層は、太陽スペクトル中の波長に対しある吸収効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分された吸収効率は、少なくとも1つの光共振層の存在下で少なくとも約20%だけ増大する。
【0009】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。光起電力デバイスは、少なくとも1つの光共振層も備え、光起電力デバイスは、太陽スペクトル中の波長に対しある総合変換効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分される総合変換効率は、少なくとも1つの光共振層の存在により少なくとも約15%だけ増大する。
【0010】
他の実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。光起電力デバイスは、光共振層をさらに備え、この光共振層は光起電力デバイスが0.7より大きい太陽スペクトルにわたって積分される総合変換効率を有するような厚さを持つ。
【0011】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。光起電力デバイスは、活性層内の平均電界強度を高める少なくとも1つの光共振層をさらに備え、活性層は、光起電力デバイスが日光に曝露された場合にその層において太陽スペクトル中の波長について平均電界強度を有する。少なくとも1つの光共振層の存在によりもたらされる、活性層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加は、光起電力デバイス内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加に比べて大きい。
【0012】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。活性層は、光起電力デバイスが日光に曝露された場合にその層において太陽スペクトル中の波長について平均電界強度および吸収光パワーを有する。光起電力デバイスは、活性層内の平均電界強度および吸収光パワーを高める少なくとも1つの光共振層をさらに備え、少なくとも1つの光共振層の存在によりもたらされる、活性層について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加は、光起電力デバイス内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加に比べて大きい。
【0013】
一実施形態では、光起電力デバイスは、基材と、基材上に配設された光学積層体と、光学積層体上に配設された反射体層とを備える。光学積層体は、少なくとも1つの活性層と1つまたは複数の層とをさらに備え、少なくとも1つの活性層は、約400nmの光に対して0.7より大きな吸収効率を有する。
【0014】
一実施形態では、干渉原理を使用して光起電力デバイス内の活性層の中における光吸収を高める方法は、吸収光のための少なくとも1つの活性層を備え、吸収光を電気エネルギーに変換するステップと、少なくとも1つの光共振層を活性層に関して位置決めするステップとを含み、電磁放射線の干渉原理により、少なくとも1つの活性層内の太陽エネルギーの吸収が少なくとも5%だけ高められ、この吸収は太陽スペクトル中の波長について積分される。
【0015】
いくつかの実施形態では、光起電力デバイスは、電磁放射線を吸収して、その電磁放射線を電気エネルギーに変換するための少なくとも1つの活性層を備える。光起電力デバイスは、活性層に関して配設された少なくとも1つの光共振層をさらに備え、光学干渉の結果として、光共振層によって、少なくとも1つの活性層内の太陽エネルギーの吸収が少なくとも5%だけ高められ、この吸収は太陽スペクトルにわたって積分される。
【0016】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。反射体層は、活性層を透過する光を反射するように配設され、反射体層は光起電力デバイスがいくつかの波長について部分的に透過的であるように部分的光透過性を有する。光起電力デバイスは、活性層と反射体層との間に配設された少なくとも1つの光共振層をさらに備え、少なくとも1つの光共振層が存在することで活性層によって吸収される光の量が増大する。
【0017】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を備える。光起電力デバイスは、少なくとも1つの光共振層をさらに備え、少なくとも1つの光共振層が存在することで活性層によって吸収される光の量が増大し、少なくとも1つの光共振層の厚さは、厚さを制御するための制御信号を印加することで調節可能である。
【0018】
一実施形態では、太陽電池セルの吸収効率を最適化する方法は、層の積み重ねを含む太陽電池セルを形成するステップを含み、少なくとも1つの層は、少なくとも1つの活性層を含み、太陽電池セルを形成するステップは、複数の波長において太陽電池セル内の少なくとも1つの活性層の吸収効率を最適化するために干渉原理を使用するステップを含む。
【0019】
一実施形態では、太陽電池は、基材と、透明基材上に配設された光学積層体と、基材上に配設された反射体とを備える。光学積層体は、1つまたは複数の薄膜層と1つまたは複数の薄膜層の厚さに基づき選択された波長の光を吸収するように最適化された活性層とをさらに備え、活性層の吸収は、複数の界面からの反射のコヒーレントな足し合わせの分析を用いて最適化される。
【0020】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された第1および第2の活性層を備える。光起電力デバイスは、第1の活性層と第2の活性層との間に第1の光共振層をさらに備え、光共振層が存在することで第1の活性層および第2の活性層のうちの少なくとも一方によって吸収される光の量が増大する。
【0021】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光を吸収するための手段を備える。光吸収手段は、光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。光を反射するための手段は、少なくとも1つの光吸収手段を透過する光を反射するように配設される。光共振を発生するための手段は、光吸収手段と光反射手段との間に配設される。光共振発生手段は、少なくとも1つの光吸収手段によって吸収される光の量を増大させるように構成され、光共振発生手段は、電気的に絶縁するための手段を備える。
【0022】
他の実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、活性層を形成するステップを含み、この活性層は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。この方法は、活性層を透過する光を反射するように反射体層を配設するステップと、活性層と反射体層との間に光空洞共振器を配設するステップとを含む。一実施態様では、光空洞共振器は、誘電体を含む。他の実施態様では、光空洞共振器は、エアーギャップを含む。
【0023】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光を吸収するための手段を備える。光吸収手段は、光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。光起電力デバイスは、光吸収手段を透過する光を反射するように配設された光を反射するための手段と光吸収手段と光反射手段との間に光共振を発生するための手段とをさらに備える。光共振発生手段は、少なくとも1つの光吸収手段によって吸収される光の量を増大させるように構成され、光共振発生手段は、その中に通して光を伝搬させるための複数の手段を備える。
【0024】
他の実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、活性層を形成するステップを含み、この活性層は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。この方法は、少なくとも1つの活性層を透過する光を反射するように反射体層を配設するステップと、活性層と反射体層との間に光空洞共振器を形成するステップとをさらに含み、光空洞共振器は、複数の層を含む。
【0025】
代替実施形態では、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光を吸収するための手段を備え、光吸収手段は光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、少なくとも1つの光吸収手段を透過する光を反射するように配設された光を反射するための手段と、光吸収手段と光反射手段との間に配設された光共振を発生するための手段とをさらに備え、光吸収手段は、太陽スペクトル中の波長に対しある吸収効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分された吸収効率は、光共振発生手段の存在下で少なくとも約20%だけ増大する。
【0026】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、少なくとも1つの活性層を形成するステップを含み、この活性層は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成されている。この方法は、少なくとも1つの活性層を透過する光を反射するように反射体層を配設するステップと、活性層と反射体層との間に少なくとも1つの光共振層を配設するステップとをさらに含み、少なくとも1つの活性層は、太陽スペクトル中の波長に対しある吸収効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分された吸収効率は、少なくとも1つの光共振層の存在下で少なくとも約20%だけ増大する。
【0027】
一実施形態では、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光を吸収するための手段を備え、光吸収手段は光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、少なくとも1つの光吸収手段を透過する光を反射するように配設された光を反射するための手段と、光吸収手段と光反射手段との間に配設された光共振を発生するための手段とをさらに備える。光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、太陽スペクトル中の波長に対しある総合変換効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分される総合変換効率は、光共振発生手段の存在下で少なくとも約15%だけ増大する。
【0028】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、活性層を形成するステップを含み、この活性層は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。この方法は、少なくとも1つの活性層を透過する光を反射するように反射体層を配設するステップと、少なくとも1つの活性層と反射体層との間に少なくとも1つの光共振層を配設するステップとをさらに含む。光起電力デバイスは、太陽スペクトル中の波長に対する総合変換効率を有し、太陽スペクトル中の波長にわたって積分される総合変換効率は、少なくとも1つの光共振層の存在下で少なくとも約15%だけ増大する。
【0029】
一実施形態では、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光を吸収するための手段を備え、光吸収手段は光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光共振を発生するための手段をさらに備え、光共振発生手段は、光吸収手段における平均電界強度を増大する。光吸収手段は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段が日光に曝露された場合にその手段において太陽スペクトル中の波長について平均電界強度を有する。光共振発生手段の存在によりもたらされる、光吸収手段について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加に比べて大きい。
【0030】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、活性層を形成するステップを含み、この活性層は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成される。方法は、少なくとも1つの光共振層を形成するステップをさらに含み、光空洞共振器は、活性層内の平均電界強度を増大する。活性層は、光起電力デバイスが日光に曝露された場合にその層において太陽スペクトル中の波長について平均電界強度を有し、少なくとも1つの光共振層の存在によりもたらされる、活性層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加は、光起電力デバイス内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加に比べて大きい。
【0031】
他の実施形態では、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された光を吸収するための手段を備え、光吸収手段は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段が日光に曝露された場合に太陽スペクトル中の波長についてその手段において平均電界強度および吸収光パワーを有する。光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段は、光吸収手段における平均電界強度および吸収光パワーを増大する光共振を発生するための手段をさらに備え、光共振発生手段の存在によりもたらされる、光吸収手段について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加に比べて大きい。
【0032】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、活性層を形成するステップを含み、活性層は光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成され、活性層は、光起電力デバイスが日光に曝露された場合にその層において太陽スペクトル中の波長について平均電界強度および吸収光パワーを有する。方法は、少なくとも1つの光共振層を形成するステップをさらに含み、光空洞共振器は、活性層内の平均電界強度および吸収光パワーを増大し、少なくとも1つの光共振層の存在によりもたらされる、活性層について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加は、光起電力デバイス内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された吸収光パワーの増加に比べて大きい。
【0033】
一実施形態では、光起電力デバイスは、支持するための手段を備える。光起電力デバイスは、支持手段上に配設された光と相互作用するための手段をさらに備え、光相互作用手段は光を吸収するための少なくとも1つの手段と光を伝搬するための1つまたは複数の手段とを備える。光起電力デバイスは、光相互作用手段上に配設された光を反射するための手段も備え、少なくとも1つの光吸収手段は、約400nmの光に対して0.7より大きな吸収効率を有する。
【0034】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、基材を形成するステップを含む。方法は、少なくとも1つの活性層と1つまたは複数の層とを含む光学積層体を基材上に配設するステップと、光学積層体上に反射体層を配設するステップも含み、少なくとも1つの活性層は、約400nmの光に対して0.7より大きな吸収効率を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、光起電力デバイスは、光を吸収するための手段を備え、光吸収手段は光を吸収し、吸収された光を電気エネルギーに変換するように構成される。光起電力デバイスは、光共振を発生するための手段をさらに備え、電磁放射線の干渉原理により、光吸収手段内の太陽エネルギーの吸収が少なくとも5%だけ高められ、この吸収は太陽スペクトル中の波長について積分される。
【0036】
いくつかの実施形態では、光起電力デバイスは、光が光を吸収するための手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された光を吸収するための手段を備える。光起電力デバイスは、少なくとも1つの光吸収手段を透過する光を反射するように配設された光を反射するための手段と、光吸収手段と光反射手段との間に光共振を発生するための手段とをさらに備え、光共振発生手段が存在することで、光吸収手段によって吸収される光の量が増大し、反射手段は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するための手段がいくつかの波長について部分的に透過的であるように部分的光透過性を有する。
【0037】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された活性層を形成するステップと、少なくとも1つの活性層を透過する光を反射するように配設された反射体層を形成するステップと、活性層と反射体層との間に少なくとも1つの光共振層を形成するステップとを含み、少なくとも1つの光共振層が存在することで活性層によって吸収される光の量が増大し、反射体層は、光起電力デバイスがいくつかの波長について部分的に透過的であるように部分的光透過性を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、光起電力デバイスは、光が光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された光を吸収するための手段を備える。光起電力デバイスは、少なくとも1つの光吸収手段を透過する光を反射するように配設された光を反射するための手段と、光吸収手段と光反射手段との間に配設された光共振を発生するための手段とをさらに備え、光共振発生手段が存在することで、光吸収手段によって吸収される光の量が増大し、光共振発生手段の厚さは、厚さを制御するための制御信号を印加することで調節可能である。
【0039】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、光が活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された少なくとも1つの活性層を形成するステップを含む。この方法は、少なくとも1つの活性層を透過する光を反射するように配設された反射体層を形成するステップと、少なくとも1つの活性層と反射体層との間に少なくとも1つの光共振層を形成するステップとをさらに含み、少なくとも1つの光共振層が存在することで活性層によって吸収される光の量が増大し、少なくとも1つの光共振層の厚さは、厚さを制御するための制御信号を印加することで調節可能である。
【0040】
一実施形態では、光起電力デバイスは、光が第1および第2の光吸収手段によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された光を吸収するための第1および第2の手段を備える。光起電力デバイスは、光共振を発生するための第1の手段をさらに備える。第1の光共振発生手段が存在することで、第1および第2の光吸収手段によって吸収される光の量が増大する。
【0041】
一実施形態では、光起電力デバイスを製造する方法は、光が第1および第2の活性層によって吸収された結果として電気信号を発生するように構成された第1および第2の活性層を形成するステップと、第1の光共振層を形成するステップとを含み、第1の光共振層が存在することで、第1および第2の活性層によって吸収される光の量が増大する。
【0042】
本明細書で開示されている例示的な実施形態は、例示することのみを目的としている、添付の概略図面において示されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】光干渉空洞を示す略図である。
【図2】反射光を増大する光干渉空洞を示す略図である。
【図3】吸収体層を含む複数の層、光空洞共振器、および反射体を備える干渉変調器(「IMOD」)スタックのブロック図である。
【図4A】図3の「IMOD」に入射する光線によって発生する反射の一部を示す略図である。例示のため、反射の一部しか示されていない。ただし、与えられた層について、入射光線およびIMOD内のさまざまな界面から反射された光線が、コヒーレントに足し合わされ、その層内の電界強度を決定することができる。
【図4B】「開放」状態にあるIMODを示す図である。
【図4C】「閉鎖」状態にあるIMODを示す図である。
【図5A】法線入射および反射光に対する「開放」状態にある干渉光変調器の、結果として得られる分光感度特性、例えば、反射および吸収を示す図である。
【図5B】法線入射および反射光に対する「開放」状態にある干渉光変調器の、結果として得られる分光感度特性、例えば、反射および吸収を示す図である。
【図5C】法線入射および反射光に対する「開放」状態にある干渉光変調器の、結果として得られる分光感度特性、例えば、反射および吸収を示す図である。
【図5D】法線入射および反射光に対する「開放」状態にある干渉光変調器の、結果として得られる分光感度特性、例えば、反射および吸収を示す図である。
【図6A】法線入射および反射光に対する「閉鎖」状態にある干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図6B】法線入射および反射光に対する「閉鎖」状態にある干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図6C】法線入射および反射光に対する「閉鎖」状態にある干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図6D】法線入射および反射光に対する「閉鎖」状態にある干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図7A】入射角または視野角が約30度である場合に「開放」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図7B】入射角または視野角が約30度である場合に「開放」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図7C】入射角または視野角が約30度である場合に「開放」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図7D】入射角または視野角が約30度である場合に「開放」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図8A】入射角または視野角が約30度である場合に「閉鎖」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図8B】入射角または視野角が約30度である場合に「閉鎖」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図8C】入射角または視野角が約30度である場合に「閉鎖」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図8D】入射角または視野角が約30度である場合に「閉鎖」状態の干渉光変調器の分光感度特性を示す図である。
【図9】pn接合を備える太陽電池セルを示す略図である。
【図10】非晶質シリコンを含むpin接合を持つ光電セルの概略を示すブロック図である。
【図11A】他の従来のPVセルを示す略図である。
【図11B】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11C】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11D】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11E】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11F】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11G】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11H】干渉変調の原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大し、それにより効率を高めるPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11I】静電気で変化しうる厚さを有する光空洞共振器を有するPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図11J】静電気で変化しうる厚さを有する光空洞共振器を有するPVセルを備える実施形態を示す略図である。
【図12】PVセルのさまざまな層内の電界強度を計算する際に使用される用語を示す略図である。
【図13】IMODの原理を使用してPVセルの活性領域内の吸収を増大するPVセルを加工する方法を示す流れ図である。
【図14】PVセルのさまざまな設計に対するCu(In,Ga)Se(CIGS)活性層内のモデル化された吸収を示すグラフである。
【図15A】第1および第2のインジウムスズ酸化物(ITO)層およびアルミニウム(Al)反射体によって囲まれているα−Si−Hを含むpin接合を備える従来のPVセルの一実施例を示す図である。厚さ900nmの第1のITO層、厚さ330nmのα−Si活性層、および厚さ80nmの第2のITO層を有する図15Aに示されているようなPVセルに対する吸収および反射スペクトルが以下に示される。
【図15B】図15AのPVセルに対する全吸収対波長を示すグラフである。
【図15C】図15AのPVセルに対する全反射対波長を示すグラフである。
【図15D】図15AのPVセルに対する活性層内の吸収対波長を示すグラフである。
【図15E】図15AのPVセルに対する第1のITO層内の吸収対波長を示すグラフである。
【図15F】図15AのPVセルに対するITO層および反射体層における吸収対波長を示すグラフである。
【図15G】図15AのPVセルに対するITO層および反射体層における吸収対波長を示すグラフである。
【図16A】第1の電極および第2の電極の厚さの関数としての図15Aの光起電力デバイスの活性層内の積分された吸収を示す等高線図である。積分された吸収は、太陽スペクトルにわたって積分された吸収を含む。
【図16B】第1のITO層(厚さ54nm)、α−Si活性層(厚さ330nm)、および第2のITO層(厚さ91nm)を有する図15AのPVセルの最適化バージョンの活性層の吸収を示すグラフである。
【図16C】第1のITO層(厚さ54nm)、α−Si活性層(厚さ330nm)、および第2のITO層(厚さ91nm)を有する図15AのPVセルの最適化バージョンの全吸収を示すグラフである。
【図17】Cu(In,Ga)Se(「CIGS」)、p型層およびCdS、n型層を含む活性領域を含むKrcらによって開示されている光起電力デバイスを示す略図であるが、ただし、Cu(In,Ga)Se(「CIGS」)、p型層およびCdS、n型層は、吸収効率が最大になるように最適化されていない。
【図18A】CIGS、p型層およびCdS、n型層を含む図17の光起電力デバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフである。
【図18B】CIGS、p型層およびCdS、n型層を含む図17の光起電力デバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフである。
【図18C】CIGS、p型層およびCdS、n型層を含む図17の光起電力デバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフである。
【図19A】活性領域と反射体層との間に光空洞共振器を追加した後の図17に示されているような光起電力デバイスの図である。
【図19B】活性領域と反射体層との間に光空洞共振器を追加した後の図17に示されているような光起電力デバイスの図である。
【図20A】図17のデバイスと比べて活性領域内の吸収が高くなっていることを示すCIGS、p型層およびCdS、n型層を含む活性領域と光空洞共振器を備える図19Aに示されているデバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフを示す図である。
【図20B】図17のデバイスと比べて活性領域内の吸収が高くなっていることを示すCIGS、p型層およびCdS、n型層を含む活性領域と光空洞共振器を備える図19Aに示されているデバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフを示す図である。
【図20C】図17のデバイスと比べて活性領域内の吸収が高くなっていることを示すCIGS、p型層およびCdS、n型層を含む活性領域と光空洞共振器を備える図19Aに示されているデバイスに対するモデル化された吸光度対波長のグラフを示す図である。
【図21】導電層(ITO層と金属層)によって上下を囲まれた活性領域を有し、またその領域との電気的接続のためのビアを有する光起電力デバイスを示す略図であるが、ただし、このデバイスは、活性領域内で吸収を干渉で増大するように設計されている光空洞共振器をさらに備える。
【図22】光共振層と金属層とによって上下を囲まれた活性領域を有し、電気的接続のためのビアを有する光起電力デバイスを示す略図であるが、ただし、このデバイスは、活性領域内で吸収を干渉で増大するように設計されている光キャビティをさらに備える。
【図23】活性領域と金属層との間に配設された光空洞共振器を有し、電気的接続のためのビアを有するもう1つの光起電力デバイスを示す略図であるが、ただし、光起電力デバイスは、活性領域内で吸収を干渉で増大するように設計されている。
【図24】500nmから750nmまでの範囲の活性領域内で平均約90%の吸収を示す約400nmから約1100nmまでの波長帯上の図23の光起電力デバイスのCIGS、p型層のモデル化された吸収を示すグラフである。
【図25A】光電セルの一実施形態を示す略図であるが、ただし、光電セルの活性層は光空洞共振器と光共振層との間に配設されている。
【図25B】図25Aに示されている光電セルに類似の他の実施形態を示す略図であるが、ただし、活性層の上にある共振層は、誘電体を含み、活性層の下にある空洞共振器は、エアーギャップまたは誘電体を含み、ビアはエアーギャップまたは誘電体を通じて電気伝導をもたらす。
【図25C】ITO層が活性層と空洞共振器との間に配設されている他の実施形態を示す略図である。
【図26】光電セルの活性層と反射体との間に光空洞共振器を有する単純化された光電セルの他の実施形態を示す略図であるが、ただし、活性層上には層は示されていない。
【図27】従来の多接合光起電力デバイスを示す略図である。
【図28A】光共振層と活性領域内で吸収を干渉で増大するように設計されている光空洞共振器とをさらに備える図27に示されているような多接合光起電力デバイスの一実施形態を示す略図である。
【図28B】図28Aに示されている多接合光電セルに類似の他の実施形態を示す略図であるが、ただし、空洞共振器は、エアーギャップまたは誘電体を含み、ビアはエアーギャップまたは誘電体を通じて電気伝導をもたらす。
【図29A】複数の光共振層と活性領域内で吸収を干渉で増大するように設計されている光空洞共振器とをさらに備える図27に示されている多接合光起電力デバイスを示す略図である。
【図29B】図29Aに示されている多接合光電セルに類似の他の実施形態を示す略図であるが、ただし、空洞共振器は、エアーギャップまたは誘電体を含み、ビアはエアーギャップまたは誘電体を通じて電気伝導をもたらす。
【図30】従来の半透明PVセルを示す略図である。
【図31】厚さを減らして透明度を高めた反射体を備えるPVセルを示す略図である。
【図32A】光共振層を備えるが、光空洞共振器を備えない、半透明多接合PVセルを示す略図である。
【図32B】電気的接続をもたらすビアを備える図32Aに示されているのと似た半透明多接合PVセルを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の詳細な説明は、本発明のいくつかの特定の実施形態を対象とするものである。しかし、本発明は、数多くの異なる方法で具現化されうる。この説明では、全体を通して類似の部分は類似の番号を指定される図面が参照される。以下の説明から明らかなように、実施形態は、光起電材料を含むデバイスで実装されうる。本明細書において以下で説明されるような光起電力デバイスにMEMSデバイスを結合することができる。
【0045】
図1に示されているような光透過性誘電体薄膜または層は、光空洞共振器の一例である。誘電体薄膜または層は、ガラス、プラスチック、または他の透明材料などの誘電体材料を含みうる。そのような光空洞共振器の一例は、気泡を形成し、反射色のスペクトルを発生することができるせっけん薄膜である。図1に示されている光空洞共振器は、2つの表面101および102を有する。2つの表面101および102は、同じ層上の向かい合う表面としてよい。例えば、これら2つの表面101および102は、ガラスまたはプラスチックプレートもしくはシートまたは薄膜上の表面を含みうる。空気または他の媒質が、このシートまたは薄膜を囲みうる。
【0046】
光空洞共振器の表面101に入射した光線103は、光路104で示されるように部分的に反射され(例えば、フレネル反射によって)、光路105にそって表面101を部分的に透過する。透過光は、光路107にそって部分的に反射され(例えば、ここでもまたフレネル反射によって)、光路106にそって空洞共振器から部分的に透過して外へ出ることもある。透過する光と反射する光の量は、光空洞共振器を含む材料および周囲媒質の屈折率に依存しうる。
【0047】
本明細書で述べる説明のために、光空洞共振器から反射される光の全強度は、2つの反射光線104および107のコヒーレントな重ね合わせである。このようなコヒーレントな重ね合わせがある場合、2つの反射光線の振幅と位相は両方とも、総強度に関わる。このコヒーレントな重ね合わせは、干渉と称される。一般に、2つの反射光線104および107は、互いに関して位相差を持ちうる。いくつかの実施形態では、2つの波の間の位相差は、180度であり、互いに打ち消し合うことがある。2つの光線104および107の位相および振幅が、強度を低下させるように構成される場合、2つの光線は、破壊的に干渉すると称される。他方で、2つの光線104および107の位相および振幅が、強度を高めるように構成される場合、2つの光線は、建設的に干渉すると称される。位相差は、2つの経路の光路差に依存し、これは、光空洞共振器の厚さと屈折率の両方、したがって2つの表面101と102の間の材質に依存する。入射光線103において波長が異なれば、位相差も異なる。したがって、いくつかの実施形態では、光空洞共振器は、入射光103の特定の波長群を反射し、入射光103内のそれ以外の波長を透過することができる。そのため、建設的に干渉する波長もあれば、破壊的に干渉する波長もある。一般に、それゆえ、光空洞共振器によって反射され、透過される色と全強度は、光空洞共振器を含む厚さと材料に依存する。反射および透過波長は、角度にも依存し、角度が異なれば反射され、透過される波長も異なる。
【0048】
図2では、上部反射体層201は、光空洞共振器の上面101に堆積され、底部反射体層202は、光空洞共振器の底面102に堆積される。上部および底部の反射体層201、202の厚さは、互いに実質的に異なっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、上部反射体層201は、底部反射体層202より薄くてもよい。反射体層201、202は、金属を含むことができる。図2に示されているように、光空洞干渉器の上部反射体層201上に入射した光線203は、経路204および207のそれぞれにそって光空洞干渉器から部分的に反射される。観察者から見た照明場は、2つの反射光線204と207の重ね合わせを含む。底部反射体202を通して、デバイスに実質的に吸収されるか、または透過してデバイスから外に出る光の量は、反射体層201、202の厚さおよび/または組成を変えることによって有意に増減させることができる。図示されている実施形態において、底部反射体202の厚さが増すと、光空洞共振器101の反射が増大する。
【0049】
いくつかの実施形態では、上部反射体層201と底部反射体層202との間の誘電体(例えば、ガラス、プラスチックなど)は、エアーギャップによって置き換えられうる。光空洞干渉器は、入射光の1つまたは複数の特定色を反射しうる。光空洞干渉器によって反射される1つまたは複数の色は、エアーギャップの厚さに依存しうる。光空洞干渉器によって反射される1つまたは複数の色は、エアーギャップの厚さを変えることによって変えることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、上部反射体201と底部反射体202との間のギャップは、例えば、微小電気機械システム(MEMS)によって変化させることができる。MEMSは、微小機械要素、アクチュエータ、および電子回路を備える。微小機械要素は、蒸着、エッチング、および/または基材および/または蒸着材料層の一部を、エッチングで取り去るか、もしくは除去するか、または層を加えて電気および電気機械デバイスを形成する他のマイクロマシニングプロセスを使用して製作されうる。このようなMEMSデバイスとして、電気的に調節可能な光空洞共振器を有する干渉変調器(「IMOD」)が挙げられる。本明細書で使用されているように、干渉変調器または干渉光変調器という用語は、デバイスが調節可能であるかどうか、デバイス内の移動が可能かどうか(例えば、静的IMOD)に関係なく、光学干渉の原理を使用して光を選択的に吸収し、および/または反射するデバイスを指す。いくつかの実施形態では、干渉変調器は、一対の伝導性プレートを備えることができ、その対の一方は、部分的反射性と部分的透過性を有し、その対の他方は、部分的反射性または全反射性を有する。伝導性プレートは、適切な電気信号を印加すると相対運動を行うことができる。特定の一実施形態では、一方のプレートは、基材上に堆積された固定層を備え、他方のプレートは、エアーギャップにより固定層から分離された金属膜を備えうる。本明細書でさらに詳しく説明されるように、一方のプレートの他方のプレートに対する相対的な位置が、干渉変調器に入射する光の光学干渉を変化させうる。このようにして、干渉変調器によって出力される光の色を変化させることができる。
【0051】
この光空洞干渉器を使用することで、少なくとも2つの状態を生じさせることが可能である。例えば、一実施形態では、第1の状態では、特定の寸法の光空洞干渉器が備えられ、これによって、選択された色の光(空洞のサイズに基づく)が建設的に干渉し、反射して空洞から出てくる。第2の状態は、光の建設的干渉および/または破壊的干渉のいずれかによって発生する可視暗状態を含み、これにより、可視波長が実質的に吸収される。
【0052】
図3は、干渉変調器スタック300の図である。例示されているように、IMODスタック300は、ガラス基材301、電極層302、およびその上にある吸収体層303を備える。IMODスタック300は、光空洞共振器304が吸収体層303とAl反射体305との間に形成されるようにAl反射体305も備える。例えば、Al反射体305は、いくつかの実施形態では厚さを約300nmとすることができ、また光空洞共振器304は、エアーギャップを含むことができる。いくつかの実施形態では、光空洞は、1つまたは複数の部分的に透明な伝導体または部分的に透明な非伝導体を備えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、光空洞干渉器は、ITO層などの透明伝導層または例えばSiO層などの非伝導性材料または両方を含みうる。さまざまな実施形態において、光空洞共振器は、エアーギャップ、透明伝導性酸化物などの透明伝導性材料、透明非伝導性酸化物などの透明非伝導性材料、またはこれらの組み合わせを含みうる1つまたは複数の層を備える複合構造を有することができる。
【0053】
図3に示されている実施形態では、光は、最初にガラス基材301および電極層302を通過して吸収体層303に入ることによってIMODスタック300を通過する。吸収体層303内に吸収されない光は、光空洞干渉器304を通過し、そこで、光はAl反射体305によって反射されて光空洞共振器304を通り吸収体層303内に戻る。IMOD内では、エアーギャップの厚さは、与えられた波長もしくは波長帯に対し「明」状態を、または与えられた波長もしくは波長帯に対し「暗」状態を発生するように選択できる。いくつかの実施形態では、「明」状態において、光空洞共振器304の厚さは、光が吸収体層303において第1の干渉を示すような厚さである。「暗」状態では、光空洞共振器304の厚さは、光が吸収体層303において第2の干渉を示すような厚さである。いくつかの実施形態では、第2の干渉は、第1の干渉(例えば、可視波長について)に比べて建設的である。吸収層内の干渉が建設的であればあるほど、電界が強まり、吸収体層303内の吸収は大きくなる。
【0054】
IMODがどのように暗出力を発生できるかを示すために、図4Aには、図3に示されているIMODに入射した光線およびIMOD内の異なる界面からのその入射光線のさまざまな反射が示されている。これらの反射は、そのような入射光線から結果として生じる反射の一部しか含まない。例えば、さまざまな界面から反射される光線は、ここでもまた、他の界面から反射されることがあり、それにより多数の後方および前方反射が生じる。しかし、簡単のため、反射および反射光線の一部しか示されていない。
【0055】
例えば、図4Aでは、光線401は、IMOD構造上に入射した光線を含む。入射光線401は、強度Eおよび位相Φを有するものとしてよい。IMODの層301に当たった後、入射光線401は、光線402で示されているように部分的に反射され、光線403で示されているように部分的に透過しうる。反射光線402は、強度E1arおよび位相Φ1arを有するものとすることができる。透過光線403は、強度Eおよび位相Φを有するものとすることができる。透過光線403は、光線403aで示されるようにさらに部分的に反射され、層302の表面の光線404で示されるように部分的に透過しうる。反射光線403aは、強度E2arおよび位相Φ2arを有するものとすることができる。透過光線404は、強度Eおよび位相Φを有するものとすることができる。同様に、透過光線404は、光線404aで示されるようにさらに部分的に反射され、層303の上面に当たった後光線405で示されるように部分的に透過しうる。反射光線404aは、強度E3arおよび位相Φ3arを有するものとすることができる。透過光線405は、強度Eおよび位相Φを有するものとすることができる。透過光線405は、ここでもまた、光線405aで示されるようにさらに部分的に反射され、層304の表面からの光線406で示されるように部分的に透過しうる。反射光線405aは、強度E4arおよび位相Φ4arを有するものとすることができる。透過光線406は、強度Eおよび位相Φを有するものとすることができる。透過光線406は、光線406aで示されるようにさらに部分的に反射され、層305の表面の光線407で示されるように部分的に透過しうる。反射光線406aは、強度E5arおよび位相Φ5arを有するものとすることができる。透過光線407は、強度Eおよび位相Φを有するものとすることができる。反射体305の底面において、光線407によって示される透過光は、光線407aで示されるようにほとんど完全に反射される。光線407aの強度は、E6arであり、位相は、Φ6arであるものとすることができる。
【0056】
反射光線403a、404a、405a、406a、および407aは、IMODの層のそれぞれから外へ透過し、図4Aに示されているようにデバイスから最終的に透過して出てくる。これらの光線は、追加の界面を透過し、したがって追加のフレネル反射を受ける。例えば、反射光線403aは、光線403bで表されるように基材301を透過する。反射光線404aは、電極302および基材301を透過し(光線404bで示されているように)、光線404cとして存在する。同様に、反射光線405aは、吸収体303、電極302、および基材301を透過し(光線405b、405cで示されているように)、光線405dとして存在する。反射光線405aは、吸収体303、電極302、および基材301を透過し(光線405b、405cで示されているように)、光線405dとして存在する。反射光線406aは、光空洞共振器304、吸収体303、電極302、および基材301を透過し(光線406b、406c、406dで示されているように)、光線405eとして存在する。反射光線407aは、反射体305、光空洞共振器304、吸収体303、電極302、および基材301を透過し(光線406b、406c、406d、406eで示されているように)、光線405fとして存在する。
【0057】
図1を参照しつつ説明されているように、層301の上面の上で測定されたIMOD構造から反射された光の強度および波長は、反射光線のそれぞれの振幅および位相が両方とも考慮されるようにすべての反射光線402、403b、404c、405d、406e、407fのコヒーレントな重ね合わせを含む。図4Aに示されていない他の反射光線も、光線のコヒーレントな重ね合わせに含まれうる。同様に、IMOD構造内、例えば吸収体403内にある、任意の領域における光の全強度は、反射された波と透過された波の電界の強さに基づいて計算できる。したがって、与えられた層内の光の量または電界の強さが干渉原理を使用して増減されるようにそれぞれの層の厚さおよび材質を変えることによってIMODを設計することが可能である。層の厚さおよび材質を変えることによって異なる層内の強度および電界の強さレベルを制御する方法を使用することにより、吸収体内の光の量、したがって吸収体によって吸収される光の量を増大または最適化することができる。
【0058】
上記の説明は、光学的プロセスの近似である。より詳細な内容は、高次の分析に含めることができる。例えば、上述のように、1回の通過と発生した反射のみを上では説明した。もちろん、層のどれからでも反射された光は、再び、他の界面に向かって後方反射されうる。したがって、光は、光空洞共振器304を含む層のどれかの中で複数回伝搬する。これらの追加の反射の効果は、図4Aには示されていないが、これらの反射は、コヒーレントな光の重ね合わせにおいて考えられる。したがって、光学的プロセスのより詳細な分析を実施することができる。数学的なアプローチも使用できる。例えば、システムをモデル化するためのソフトウェアを使用することができる。このようなソフトウェアのいくつかの実施形態は、反射および吸収を計算し、多変数条件付き最適化を実行することができる。
【0059】
IMODスタック300は、静的なものであってもよい。静的IMODスタックでは、さまざまな層の厚さおよび材質は、製造プロセスによって固定されている。静的IMODスタックのいくつかの実施形態は、エアーギャップを含む。他の実施形態では、例えば、エアーギャップの代わりに、光空洞共振器が、誘電体またはITOを含むことができる。しかし、静的IMODスタック300によって出力される光は、視野角、そこに入射する光の波長、およびそこに入射するその特定の波長に対するIMODスタックの視野面における干渉状態に依存する。対照的に、動的IMODスタックでは、光空洞共振器304の厚さは、例えば、MEMSエンジンを使用してリアルタイムで変えることができ、これによって、IMODスタックの視野面における干渉状態を変える。静的IMODスタックと同様に、動的IMODスタックによって出力される光も、視野角、光の波長、およびIMODスタックの視野面における干渉状態に依存する。図4Bおよび4Cは、動的IMODを示している。図4Bは、「開放」状態にあるように構成されたIMODを示し、図4Cは、「閉鎖」または「折り畳み」状態にあるように構成されたIMODを示している。図4Bおよび4Cに示されているIMODは、基材301、薄膜層303、および反射膜305を備える。反射膜305は、金属を含むことができる。薄膜層303は、吸収体を含みうる。薄膜層303は、追加の電極層および/または誘電体層を含むことができ、したがって、薄膜層303は、いくつかの実施形態では多層として説明することができる。いくつかの実施形態では、薄膜層303は、基材301に付着させることができる。「開放」状態では、薄膜層303は、ギャップ304によって反射膜305から分離される。いくつかの実施形態では、例えば、図4Bに示されているように、ギャップ304は、エアーギャップとしてよい。「開放」状態では、ギャップ304の厚さは、例えば、いくつかの実施形態において120nmから400nmまでの間で変化しうる(例えば、約260nm)。いくつかの実施形態では、IMODは、薄膜スタック303と反射膜305との間に電位差を印加することによって「開放」状態から「閉鎖」状態に切り替えることができる。「閉鎖」状態では、薄膜スタック303と反射膜305との間のギャップは、「開放」状態のギャップの厚さより小さい。例えば、「閉鎖」状態のギャップは、いくつかの実施形態において30nmから90nmまでの間で変化しうる(例えば、約90nm)。一般的にエアーギャップの厚さは、約0nmから約2000nmまでの間、例えば、いくつかの実施形態において「開放」状態と「閉鎖」状態との間で変化しうる。他の厚さも、他の実施形態において使用できる。
【0060】
「開放」状態では、入射光の1つまたは複数の周波数は、図4Aを参照しつつ説明されているように基材301の表面の上で建設的に干渉する。したがって、入射光のいくつかの周波数は、IMOD内に実質的に吸収されず、代わりに、IMODから反射される。IMODから反射されて出てくる周波数は、IMODの外部で建設的に干渉する。基材301の表面を見ている観察者によって観察される表示色は、IMODから実質的に反射され、IMODのさまざまな層によって実質的に吸収されない周波数に対応する。建設的に干渉し、実質的に吸収されない周波数は、ギャップの厚さを変えることによって変えることができる。IMODの反射および吸収スペクトルならびに本明細書のいくつかの層の吸収スペクトルは、「開放」状態の場合にIMOD上に法線入射する光について図5A〜5Dに示されている。
【0061】
図5Aは、光が法線入射でIMOD上に向けられた場合に法線入射で見た波長の関数として「開放」状態のIMOD(例えば、図3のIMOD 300)の全反射のグラフを示している。全反射のグラフは、約550nmの反射ピークを示す(例えば、黄色)。IMODを見ている観察者からは、IMODは黄色に見える。前述のように、全反射曲線のピークの配置は、エアーギャップの厚さを変えるか、またはスタック内の1つまたは複数の他の層の材質および/または厚さを変えることによってシフトできる。例えば、全反射曲線は、エアーギャップの厚さを変えることによってシフトできる。図5Bは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの全吸収のグラフを示している。全吸光度曲線は、反射ピークに対応する約550nmのところに谷を示す。図5Cは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの吸収体層(例えば、図3の層303)の吸収のグラフを示している。図5Dは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの反射体層(例えば、図3の層305)の吸収を示している。反射体によって吸収されるエネルギーは低い。全吸収曲線は、他の層における吸収が無視できるくらい小さい場合のIMOD 400の吸収体部分における吸収曲線とIMODの反射体部分における吸収曲線の足し合わせによって得られる。IMODスタック内の透過は、低い反射体(例えば、図3の305)が実質的に厚いため、実質的に無視できるくらい小さいことに留意されたい。
【0062】
図4Cを参照すると、「閉鎖」状態では、IMODは薄膜スタック303内の入射可視光のほとんどすべての周波数を吸収する。ごくわずかの量の入射光しか反射されない。基材301の表面を見ている観察者から見える表示色は、一般的に、いくつかの実施形態において黒色、赤みを帯びた黒色、または紫色としてよい。薄膜スタック303内に吸収される周波数は、ギャップの厚さを変えることによって変えることができるか、または「同調させる」ことができる。
【0063】
IMODに対し法線方向で見た法線入射光に対する「閉鎖」状態のIMODのさまざまな層のスペクトル応答が、図6A〜6Dに示されている。図6Aは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの全反射対波長のグラフを示している。全反射は波長帯全域において一様に低いことが観察される。したがって、ごくわずかの光が、干渉変調器から反射されて出てくる。図6Bは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの全吸光度のグラフを示している。全吸光度曲線は、全反射のグラフに対応する波長帯全域にわたってほぼ一様な吸光度を示す。図6Cは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたる吸収体層の吸収のグラフを示している。図6Dは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの反射体層の吸収を示している。図6Aから、「閉鎖」状態では、IMODは図5Aの全反射に比べて比較的低い全反射を示すことに留意されたい。それに加えて、IMODは、「開放」状態(図5Bおよび図5C)と対照的に「閉鎖」状態(それぞれ図6Bおよび図6C)では吸収体層中で比較的高い全吸光度および吸光度を示す。反射体吸収は、IMODは「開放」状態(図5D)にあるか、または「閉鎖」状態(図6D)にある場合の両方において、IMOD内で比較的低い。したがって、電界の強さの大半は、光が吸収されている吸収体層内において生じる。
【0064】
一般に、IMODスタックは、設計段階で考慮されうる視野角依存性を持つ。より一般的には、IMODの分光感度特性は、入射角および視野角に依存しうる。図7A〜7Dは、入射角または視野角がスタックの法線方向に対して30度である場合に、「開放」状態のIMODに対するモデル化された吸光度および反射対波長を示す一連のグラフである。図7Aは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの全反射対IMODに対する波長のグラフを示している。全反射のグラフは、約400nmの反射ピークを示す。図7Aおよび図5Aを比較すると、入射角または視野角が法線入射から30度まで変化する場合に、全反射対波長のグラフが波長軸にそってシフトすることがわかる。図7Bは、IMODに対する約400nmから800nmまでの波長帯にわたる全吸光度のグラフを示している。全吸光度曲線は、反射ピークに対応する約400nmのところに谷を示す。図7Bおよび図5Bを比較すると、入射角または視野角が法線入射から30度まで変化する場合に、これもまた、吸収曲線の谷が波長軸にそってシフトすることがわかる。図7Cは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの吸収体(例えば、図3の303)の吸収のグラフを示している。図7Dは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの反射体(例えば、図3の305)の吸収を示している。
【0065】
図8A〜8Dは、入射角または視野角が30度である場合に、「閉鎖」状態の図4AのIMODに対するモデル化された吸光度および反射対波長を示す一連のグラフである。図8Aは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの全反射対IMODに対する波長のグラフを示している。全反射は波長帯全域において一様に低いことが観察される。したがって、ごくわずかの光が、干渉変調器から反射されて出てくる。図8Bは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたる全吸光度のグラフを示している。全吸光度曲線は、全反射のグラフに対応する波長帯全域にわたってほぼ一様な吸光度を示す。図8Cは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたる吸収体層の吸収のグラフを示している。図8Dは、約400nmから800nmまでの波長帯にわたるIMODの反射体層の吸収を示している。図6A〜6Dと図8A〜8Dを比較すると、「閉鎖」状態のIMODの分光感度特性は、法線入射について、また入射角または視野角が30度である場合に、ほぼ同じであることがわかる。したがって、「閉鎖」状態のIMODの分光感度特性は、入射角または視野角に対する強い依存性を示さないと推論できる。
【0066】
図9は、典型的な太陽電池セル900を示している。典型的な太陽電池セルは、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。PVセルは、カーボンフットプリントが小さく、また環境に対する影響度が低い再生可能なエネルギー源の一例である。PVセルを使用することで、エネルギー生成コストを低減し、可能な費用便益をもたらすことできる。
【0067】
PVセルは、例えば、郵便切手より小さいサイズから差し渡し数インチまでのさまざまなサイズおよび形状を有することができる。いくつかのPVセルを接続して、長さ数フィート、幅数フィートまでの大きさのPVセルモジュールを形成することができる。これらのモジュールは、電気的接続部、取り付け金具、電力調整装置、および日が照っていない場合に使用するため太陽エネルギーを貯蔵する電池を備えることができる。次いで、モジュールを組み合わせて接続することで、異なるサイズおよび出力を持つPVセルを形成することができる。1つのアレイのサイズは、特定の場所で利用可能な日光の量および消費者のニーズなど、複数の要因によって決まる。
【0068】
光電セルは、光電セルからの電力出力および太陽電池セルに入射する光パワーを測定し、その比を計算することによって決定されうる総合エネルギー変換効率(η、「エータ」)を有する。一慣例によれば、太陽電池セルの効率は、標準日射(「エアーマス1.5」と呼ばれる)に曝露される表面積1mを有する光電セルによって生成されるピーク電力量(ワット)の比で与えることができる。標準日射は、晴れの春分の日または秋分の日の正午の赤道における日射の量である。標準日射は、1000ワット/mの電力密度を有する。
【0069】
典型的なPVセルは、2つの電極間に配設された活性領域を有し、反射体を備えることができる。反射体は、いくつかの実施形態では、50%、60%、70%、80%、90%以上を超える反射率を有することができる。反射体は、他の実施形態では、それより低い反射率を有することができる。例えば、この反射率は、10%、20%、30%、40%以上としてよい。いくつかの実施形態では、PVセルは、それに加えて、基材も備える。基材は、活性層および電極を支持するために使用されうる。例えば、活性層および電極は、光起電力デバイスの加工時および/またはそれ以降に基材上に堆積され、基材によって支持される薄膜を備えることができる。PVセルの活性層は、シリコンなどの半導体材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、活性領域は、図9に示されているようにn型半導体材料903およびp型半導体材料904を接触させることによって形成されるpn接合を含むことができる。このようなpn接合は、ダイオードに似た特性を有し、したがって、フォトダイオード構造とも称される場合もある。
【0070】
層903および904は、電流路を形成する2つの電極の間にサンドイッチ状に挟まれる。背後電極905は、アルミニウムもしくはモリブデンまたは他の何らかの導電性材料から形成することができる。背後電極は、粗く、未研磨のものでよい。前面電極901は、接触抵抗を低くし、収集効率を高めるためにpn接合の前面の大部分を覆うように設計される。前面電極が、不透明材料で形成される実施形態では、前面電極は、pn接合の表面に照明光が当たるように穴またはギャップを有するように構成されうる。そのような実施形態では、前面電極は、グリッドであるか、または叉または指の形状に構成されうる。他のいくつかの実施形態では、電極は、透明導電体、例えば、酸化スズ(SnO)またはインジウムスズ酸化物(ITO)などの透明伝導性酸化物(TCO)から形成されうる。TCOは、良好な電気的接触および伝導性をもたらし、それと同時に、入光に対し光学的透過性を有することができる。いくつかの実施形態では、PVセルは、前面電極901上に配設された反射防止(AR)コーティング902の層を備えることができる。ARコーティング902の層は、図9に示されているn型層903の表面から反射される光の量を低減することができる。
【0071】
pn接合の表面に光が照射されると、光子がエネルギーを活性領域内の電子に伝達する。光子によって伝達されるエネルギーが半導体材料のバンドギャップより大きい場合、電子は、伝導帯に入る十分なエネルギーを有しているものとしてよい。pn接合の形成とともに、内部電界が発生する。内部電界は、励起された電子に作用して、それらの電子を移動し、それにより、外部回路907内に電流を発生させる。その結果生じる電流は、図9に示されているように電球906などの各種の電気デバイスに電力を供給するために使用できる。
【0072】
光パワーが電力に変換される効率は、上述のような総合効率に対応する。総合効率は、活性層によって光が吸収される効率に少なくとも一部は依存する。この効率、ここでは吸収効率と称される効率ηabsは、活性層中の屈折率n、消光係数k、および電界振幅の2乗|E(x)|に比例し、これは式
ηabs∝n×k×|E(x)|
で表される。
【0073】
値nは、複素屈折率の実数部である。吸収係数または消光係数kは、一般的に、複素屈折率の虚数部である。したがって、吸収効率ηabsは、層の材料特性および層(例えば、活性層)中の電界強度に基づいて計算できる。特定の層に対する電界強度は、本明細書では、平均電界強度と称することができ、これは特定の層の厚さにわたって電界強度を平均したものである。
【0074】
上述のように、活性層内に吸収された光は、自由キャリア、例えば、電子−正孔対を生成し、これを電力供給に使用できる。総合効率または総合変換効率は、活性材料中に発生する電子と正孔が電極によって収集される効率に少なくとも一部は依存する。この効率は、本明細書では収集効率ηcollectionと称される。したがって、総合変換効率は、吸収効率ηabsおよび収集効率ηcollectionの両方に依存する。
【0075】
PVセルの吸収効率ηabsおよび収集効率ηcollectionは、さまざまな要因に依存する。例えば、電極層901および905に使用される厚さおよび材質は、吸収効率ηabsおよび収集効率ηcollectionの両方に同時に影響を及ぼしうる。それに加えて、PV材料903および904で使用される厚さおよび材質は、吸収効率および収集効率に影響を及ぼしうる。
【0076】
総合効率は、プローブまたは伝導性リードを電極層901および905に付けることによって測定することができる。総合効率は、光起電力デバイスのモデルを使用して計算することもできる。
【0077】
本明細書で使用されているように、これらの効率は、標準日射−エアーマス1.5−に対するものである。また、電界、吸収効率などは、太陽スペクトルにわたって波長について積分できる。太陽スペクトルは、よく知られており、太陽によって放射される光の波長を含む。これらの波長は、可視波長、紫外線波長、および赤外線波長を含む。いくつかの実施形態では、電界、吸収効率、総合効率などは、太陽スペクトルの一部、例えば、可視域の波長、赤外線域の波長、または紫外線域の波長にわたって積分される。いくつかの実施形態では、電界、吸収効率、総合効率などは、それよりも小さい波長帯、例えば、10nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、または600nmなどの帯域幅を有する波長帯にわたって計算される。
【0078】
いくつかの実施形態では、図9に示されているpn接合は、真性半導体または非ドープ半導体層がp型半導体とn型半導体との間にサンドイッチ状に挟まれるpin接合で置き換えることができる。pin接合は、pn接合に比べて高い効率を持つことができる。いくつかの他の実施形態では、PVセルは、多接合部を備えることができる。
【0079】
活性領域は、結晶シリコン(c−シリコン)、非晶質シリコン(α−シリコン)、テルル化カドミウム(CdTe)、二セレン化銅インジウム(CIS)、二セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、光吸収色素およびポリマー、光吸収ナノ粒子が中に配設されているポリマー、GaAsなどのIII−V属半導体などのさまざまな光吸収材料から形成されうる。他の材料も使用することができる。光子が吸収され、光子がエネルギーを例えば電子に伝達する光吸収材料は、本明細書では、PVセルの活性層と称される。活性層用の材料は、PVセルの所望の性能および用途に応じて選択できる。
【0080】
いくつかの実施形態では、PVセルは、薄膜技術を使用することによって形成することができる。例えば、一実施形態では、PVセルは、基材上にTCOの第1の層を堆積することによって形成されうる。活性材料(または光吸収材料)の層が、第1のTCO層上に堆積される。第2のTCO層は、活性材料の層の上に堆積されうる。いくつかの実施形態では、ARコーティングの層を第2のTCO層の上に堆積して被せることができる。これらの層は、物理気相成長法、化学気相成長法、電気化学気相成長法などの成長法を使用して堆積することができる。薄膜PVセルは、薄膜多結晶シリコン、CIS、CdTe、またはCIGSなどの多結晶材料を含むことができる。薄膜PVセルのいくつかの利点として、とりわけ、デバイスフットプリントが小さいこと、および製造プロセスの拡張性のよいことが挙げられる。
【0081】
図10は、典型的な薄膜PVセル1000の概略を示すブロック図である。典型的なPVセル1000は、光が通過できるガラス基材1001を含む。ガラス基材1001上に配設されるのは、第1の透明電極層1002、非晶質シリコンを含むPV材料の層1003、第2の透明電極層1005、およびアルミニウムまたはMo、Ag、Auなどの何らかの他の金属を含む反射体1006である。第2の透明電極層1005は、ITOを含むものとしてよい。活性材料の一部をドープして、n型領域およびp型領域を形成し、活性材料の一部を非ドープとして、pin構造を形成することができる。一設計において、第1の透明電極層の厚さは、約900nmとすることができ、PV材料の厚さは、約330nmとすることができる。一設計において、第2の透明電極層1005は、厚さ約80nmを有し、反射体1006は、厚さ約300nmを有する。例示されているように、第1の透明電極層1003および第2の透明電極層1005は、その間に非晶質シリコン層1003をサンドイッチ状に挟む。反射体層1006は、第2の透明電極層1005上に配設される。PVセル内では、光子が、活性または吸収体層内に吸収され、吸収された光子の一部が、電子−正孔対を生成することができる。
【0082】
図10と図3を比較すると、IMODの構造と典型的PVデバイスに類似性のあることがわかる。例えば、図3に示されているIMODおよび図10に示されているPVセルは、それぞれ、複数の層を含む積層構造を備える。IMODとPVデバイスは両方とも、基材(例えば、図3の301および図10の1001)上に配設された光吸収層(例えば、図3の303および図10の1003)も備える。光吸収層は、IMODとPVセルの両方について類似の特性を有するように選択できる。図3のIMODと図10のPVセルは両方とも、反射体(例えば、図3の305および図10の1006)を備える。したがって、そのさまざまな層内に電界の所望の分布を形成し、その結果出力が得られるようにIMODを同調する機能をPVデバイスに付与することができると考えられる。例えば、光空洞共振器を、PVデバイスを同調するために活性層(例えば、図10の光吸収層1003)の下に入れて、活性または吸収層1003を除くすべての層内の吸収を減じ、活性または吸収層1003内の吸収を高めるようにすることができ、ある意味、IMODはPVセル内に組み込まれる、またはその逆に組み込まれると言える。
【0083】
図10に示されているような従来のPVセルでは、PV材料層1003内の吸収は、従来、層1005の導入によって増強されると考えられていた。したがって、第2の透明電極1005は、反射増強層と称されていた。また、活性層内の吸収は、第2の透明電極1005の厚さに比例して増大するというのが従来の考え方である(例えば、非特許文献1を参照)。一般に、層1005を含めると、反射体層1006の反射は増大しない。さらに、活性層内の吸収は、必ずしも、従来考えられていたように第2の透明電極層1005の厚さに比例して増大するわけではない。以下に示されるように、一般に第1の電極層1002と第2の電極層1005の厚さは、吸収が最大化される最適点を持つことができる。
【0084】
それに加えて、いくつかの従来の設計では、電極層1005および反射体層1006の厚さは、PVセルから反射された光の総量を最小にするように変えられる。光がPVセルから反射されない場合に、この光は吸収され、光起電力デバイスの総合効率は増大すると仮定する。この目的のために、反射体1006の表面を粗面化して拡散を増大し、反射体からの正反射を低減することができる。これらの方法を用いれば、黒色に見えるPVセルを生産できる可能性がある。しかし、PVデバイスからの反射を低減し、黒色に見えるPVセルを生産することを対象とする上述の方法は、吸収または活性層1003内の吸収を増大するのに不十分な場合があり、したがって、光起電力デバイスの効率を増大するのに不十分な場合がある。
【0085】
PVセルの効率を増大するためのこのような従来のアプローチの成功は、限定的であった。しかし、上述のように、干渉原理を使用することで、PVデバイス内の1つまたは複数の層を「同調」し、PVセルを最適化して、これにより、より多くの光が吸収層1003によって吸収されうるようにできる。例えば、IMODの設計で使用される干渉の原理は、PVセルの加工に応用することができる。活性層内に電界共振を発生する光空洞共振器は、PVセル内に含めることができ、これにより、活性層内の電界強度および吸収を増大させることができる。例えば、図示されているように、活性層(または光吸収層1003)内の吸収を増大するために、第2の透明電極層1005を、エアーギャップまたはSiOなどの透明非伝導性誘電体を含む光空洞共振器で置き換えるとよい。透明電極層1005を光空洞共振器で置き換えても、反射体の反射は必ずしも増強されないが、しかし、光空洞共振器は、活性層内の吸収を干渉で増大させることができる低吸収層を含む。
【0086】
太陽電池セルの効率を増大できる方法を明らかにするために、図11Aに示されている従来の太陽電池セルについて調べる。図11Aは、Cu(In,Ga)Se「CIGS/CdS」PVスタックを含むPVを示している。PVセルは、ITOまたはZnO伝導電極層1101、CdSを含むn型材料の層1102、CIGSを含むp型材料の層1103、Moを含む反射体層1104、およびガラス基材1105を備える。上で説明されているように、図11Aに示されているPVセルの効率は、IMOD構造およびIMODで利用されている干渉の原理をPVセルに組み込むことによって増大することができる。これは、図11B〜11Hに示されているように静的または動的光共振層を導入することによって実現されうる。さまざまな実施形態において、光共振層は活性層内に電気共振を引き起こし、これにより、その中において平均電界が高められる。以下の説明では、わかりやすくするため以下の命名規約が採用される。吸収層と反射体層との間にサンドイッチ状に挟まれている光共振層は、「光空洞共振器」と称されるが、スタック内の別のところに配設されている光共振層は、「光共振層」と称される。空洞または層を記述する「共振(resonant)」と「共振(resonance)」という用語は入れ換えて使用することができる。
【0087】
図11Bでは、ITOを含む光空洞共振器1106は、活性または吸収材料(層1102および1103)と反射体層1104との間にサンドイッチ状に挟まれる。図11Cに示されている実施形態では、光空洞共振器1106は、中空領域を備える。図11Cに示されているいくつかの実施形態では、中空領域は、空気または他の気体を含む。ITO層をエアーギャップで置き換えると、活性層を除くすべての層(例えば、光空洞共振器を含む)内の吸収を低減することができる。したがって、いくつかの実施形態について、光空洞共振器の材質の選択は、重要な事項である場合がある。例えば、光空洞共振器が図11Dに示されているような空気またはSiOを含む実施形態では、図11Bに示されているようなITOを含む光空洞共振器よりも、活性層中の吸収を高めることができる。図11B〜11Dに示されている実施形態は、光が伝搬する単一材料または媒質を含む光空洞共振器を備える。図11E〜11Hに示されているようなさまざまな実施形態では、干渉同調光起電力(iPV)セルは、2つまたはそれ以上の層を含む複合光空洞共振器を備えることができる。例えば、図11Eに示されている実施形態では、光空洞共振器は、ITO層1106aおよび空気層1106bを備える。図11Fに示されている実施形態は、ITO層1106aおよびSiO層1106bを含む複合光空洞共振器を備える。図11Gに示されている実施形態は、SiO層1106aおよびエアーギャップ1106bを含む複合光空洞共振器を備える。図11Hに示されている実施形態は、ITO層1106a、SiO層1106b、およびエアーギャップ1106cを含みうる。したがって、さまざまな実施形態では、光空洞共振器および他の光共振層は、伝導性または非伝導性酸化物もしくは窒化物層などの1つまたは複数の透明伝導性または非伝導性材料を含みうる。他の材料も使用することができる。これらの層は、部分的透明であってもよい。
【0088】
光空洞共振器(または層)は、いくつかの実施形態では動的なものとすることができる。図11Iに示されているように、例えば、反射体層1107は、支柱1107を持つ活性層から分離することができる。反射体層1104は、移動可能なものとしてよく、特に、活性層に向かう方向に移動するか、または活性層から離れる方向に移動することができ、これにより、光空洞共振器の厚さを変えることができる。反射体層1104の移動は、反射体層1104とITO層1101の間に電圧を印加して静電気力を発生させることによって引き起こすことができる。光空洞共振器は、動的に同調することができ、これにより、例えば、環境条件の変化とともに活性層の吸収特性を変えることができる。図11Jは、光空洞共振器が、SiOの層1106aおよびエアーギャップ1106bを含む複合空洞共振器である代替実施形態を示している。SiOを含む誘電体層1106aは、閉鎖状態で電極1101、1104を電気的に絶縁する際に使用できる。iPVセルの吸収効率を増大するプロセスについて、以下で説明する。
【0089】
一般に、光学積層体は、層と層との間のそれぞれの界面が入射光の一部を反射する複数の層を備えることができる。一般に、これらの界面では、入射光の一部を通す(最後の層である場合を除く)こともできる。図12は、未指定の数の層を有する一般化されたiPVデバイスのさまざまな層から反射される入射光を示している。iPVデバイスの層1201上に入射する電界Eによって特徴付けられる到来波は、図4Aを参照しつつ上で説明されているように一部が反射され、一部が透過される。透過波は、図面の右の方へ伝搬する電界E1,rによって特徴付けられる。電界E’j−1,rによって特徴付けられるこの波の一部は、層1202と1203の界面に入射する。このうちEj,rによって特徴付けられる部分が、透過して吸収体層1203内に入る。透過された電磁波の一部が、吸収体1203内に吸収される。電界E’j,rによって特徴付けられる波の吸入されていない部分が層1203と1204の境界に入射する。入射電界E’j,rのEj+1,rによって特徴付けられる部分が、光空洞共振器1204内に透過される。到来波Eの電界Eによって特徴付けられる小さな部分は、金属導体/反射体1205が部分的透過性を有する場合にiPVから透過して外へ出る。
【0090】
さまざまな層の界面において、入射電磁波の一部も同様に反射される。例えば、電界Ej+1,1は、層1204および1205の境界から反射され、したがって図面の左の方へ伝搬する電界Ej+1,rの部分を表す。同様に、電界Ej,1、Ei,1’、E’j−1,1、およびE1,1は、層1201の方に向かってiPVデバイス内を伝搬する波を表す。反射波Eは、iPVデバイスのさまざまな層から反射された波の重ね合わせによって与えられる。与えられた界面を出入りする電界は、行列法と値を用いて、さまざまな界面に対する反射係数および透過係数、またそれらの層を横断することで生じる位相について計算することができる。与えられた層、例えば、活性層内の電界が判明した後、その中の吸収を決定することができる。ポインティングベクトルの時間平均をとった大きさ、または吸収体層1203内に入り、例えばその吸収体層から出て来る時間平均をとったエネルギー束(単位法線面積当たりの時間平均パワー)を計算することができる。したがって、吸収体層1203によって吸収される総パワーは、吸収体層1203から出るパワーの量を吸収体層1203内に入る総パワーから差し引くことによって計算されうる。さまざまな実施形態において、吸収体層1203に入るポインティングベクトルの時間平均をとった大きさと吸収体層1203から出て来るポインティングベクトルの時間平均をとった大きさとの比を高めることで、iPVデバイスの効率を増大することができる。
【0091】
iPVセルの任意の層、例えば、吸収体層内に吸収されるパワーは、上述のようにiPVスタック全体に依存しうる。iPVセルの層内に吸収されるエネルギーの量は、層の屈折率n、層の消光係数k、層内の電界振幅の2乗|E(x)|、および層の厚さtに正比例する。iPVデバイス内のエネルギー吸収を増大または最適化するアプローチの1つは、吸収体層の周りを囲む層内に吸収されるエネルギーの量を減らし、吸収体層内に吸収されるエネルギーの量を増やすことである。吸収体層の周りを囲む層内に吸収されるエネルギーの量は、例えば、n×kの値が低い材料を選択し、周囲の層の厚さを減らすか、または周囲の層内の電界の強さを低減することによって、またはこれらのアプローチの任意の組み合わせによって減らすことができる。例えば、一最適化法では、以下の1つまたは複数を使用して、iPVセルの吸収体層内の電界を増大することができる。A)活性層に到達する反射電界および透過電界が建設的に干渉するようにiPVスタックのさまざまな層の材質および厚さを調節することができる。B)活性層以外のiPVデバイスの層内の電界の強さは、例えば、少なくとも一部は破壊的干渉からの結果として低減できる。C)例えば、適切な位相シフトおよび反射をもたらす望ましい、または最適な屈折率n、および低屈折率nおよび/または低消光係数定数kを有する光空洞共振器用の材料を、活性層のバンドギャップに対応する波長に対し光空洞共振器の吸収が低くなるように選択し、これにより光空洞共振器によって吸収される、活性層によって電気エネルギーに変換される光が少なくなる。いくつかの実施形態では、光空洞共振器の組成および厚さは、例えば、活性層のバンドギャップに相当するエネルギーを有する波長について、吸収体内の電界が増大するような組成および厚さとすることができる。D)より一般的には、例えば、活性層のバンドギャップに相当するエネルギーを有する波長に対して、屈折率nと消光係数kとの積が低い材料を、活性層以外の層に使用することができる。活性層以外のiPVデバイスの層内の電界の強さを低減し、および/またはそれらの層内で低い屈折率および/または消光係数kを持つ材料を使用して吸収を減らすことによって、iPVデバイスの活性または吸収体層を除くすべての層におけるエネルギー吸収を低減することができる。E)低いnおよび/またはk値を持ち、したがって吸収が低い材料も、特に、電界の強さが大きい活性層以外の層において使用することができる。
【0092】
活性または吸収体層内で吸収が大きくなるようにiPVデバイスを最適化するために、干渉効果を通じて、活性領域内の光の強度を高めるように光空洞共振器の厚さを選択することができる。いくつかの実施形態では、光空洞共振器内のギャップの厚さは、モデリングソフトウェアおよび数値解析ルーチンを使用してiPVセルの設計段階において選択または最適化される。光空洞共振器内のギャップの厚さは、図11B〜11FのIMOD組み込みPVセル構造内にMEMSエンジンまたはプラットフォームをさらに組み込むことによってリアルタイムで動的に変えることもできる。(例えば、図11Gおよび11Hを参照)。しかし、さまざまな実施態様において、ギャップは固定される。いくつかの実施形態では、活性層の厚さも、活性または吸収体層の吸収効率を高めるために光空洞共振器の厚さを変更または最適化することに加えて変更または最適化することができる。
【0093】
図13は、iPVデバイス1300を加工する方法の一実施形態を示す流れ図である。このプロセスは開始状態1302から始まり、次いで、状態1304に移動し、そこで、iPVデバイス設計者が一組の設計特性および/または加工制約条件を識別する。iPVデバイスは、複数の層を含む光学積層体を備える。一般に、層は、活性層と光共振層(例えば、光空洞共振器)とを備える。追加の層としては、例えば、電極、および電気的絶縁層を含みうる。いくつかの実施形態では、光共振層は、電極、電気的絶縁層、または活性層内の吸収を増大することに加えて他の機能を有する層を備える。これらの層のどれかのさまざまなパラメータ(例えば、厚さ、材質)は、1つまたは複数の理由から制約される必要がある場合がある。設計特性および/または加工制約条件としては、例えば、収集された電子が不活性層内において熱さらには吸収で散逸するのではなく電力に使用されるような1つまたは複数の電極層の面内抵抗が挙げられる。さらに、活性層内の吸収は、スタック内のすべての層の厚さ、ならびに使用される特定の材料の両方に依存するため、制約される(複数の)層のそのような材料および層の厚さは、いくつかの実施形態では慎重に選択される。
【0094】
次いで、この方法は、状態1306に移動し、そこで、活性層の効率(例えば、吸収効率)を増大するように、制約されていないパラメータが選択または最適化される。一実施形態では、効率を最適化するステップは、少なくとも1つの設計特性に基づいて効率の最大値を識別するステップを含む。いくつかの実施形態では、特定の波長または波長帯(例えば、太陽スペクトル、可視スペクトル、赤外線スペクトル、紫外線スペクトル)について、効率が最適化されうる。この範囲は、少なくとも幅100nm、幅200nm、幅300nm、幅400nm、幅500nm、幅600nmなどとすることができる。特定の波長または波長帯における特定の層内の吸収を増大または最適化するためのプロセスは、光学積層体内の層のすべてまたは大半に基づく計算を伴いうる。いくつかの実施形態では、それぞれ層状材料の正確な厚さを計算して、特定の波長または特定の波長帯に対する活性層内の吸収を増大または最適化することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、層は、薄膜層を含む。したがって、これらの層は、設計プロセスにおいて薄膜として処理される。「薄膜」は、入射光のコヒーレンス長未満の厚さ、または入射光のコヒーレンス長程度の厚さ、例えば、厚さ5000nm未満を有することができる。薄膜については、複数の反射の結果生じる強度レベルを決定するためにコヒーレントな重ね合わせと称されるものにおいて光の位相が考慮される。上述のように、活性層の吸収効率は、iPVデバイスの複数の界面からの反射のコヒーレントな足し合わせの分析を用いて最適化されうる。いくつかの実施形態では、そのようなコヒーレントな足し合わせを使用して、所定の層から入力および出力されるエネルギーを計算し、層内の、例えば活性層内の吸収を決定し、また同様に、その吸収効率を決定する。このプロセスではポインティングベクトルを使用できる。方法の他のステップは、従来の光起電力デバイス内の層の削除または置き換えを含むこともできる。
【0096】
いくつかの実施形態では、総合効率は、吸収効率ηabsを増大または最適化することによって増大または最適化することができる。しかし、上述のように、総合吸収効率ηoverallは、光が活性層内に吸収されて電子−正孔対を形成する効率ηabsおよび電子−正孔対が電極によって収集される効率ηcollectionの両方に依存する。
【0097】
干渉原理を使用すると、上で定義されているパラメータηabsおよびηcollectionの一方または両方を増大または最適化することによって総合変換効率ηoverallを増大または最適化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、吸収効率ηabsは、収集効率ηcollectionを考慮しなくても最適化または最大化できる。しかし、吸収効率ηabsを増大または最適化するように変更されたパラメータは、収集効率ηcollectionにも影響を及ぼしうる。例えば、電極の厚さまたは活性層の厚さは、活性層内の吸収を高めるように変更することができるが、ただし、この厚さ調節は、収集効率にも影響を及ぼすことがある。したがって、いくつかの実施形態では、収集効率ηcollectionおよび吸収効率ηabsが両方とも、総合効率ηoverallを増大または最適化するように考慮され、および/または最適化される。いくつかの他の実施形態では、吸収効率ηabsおよび収集効率ηcollectionは、総合効率ηoverallを最大化するように再帰的に最適化できる。他の因子も、最適化プロセスに含めることができる。いくつかの実施形態では、例えば、iPVデバイスの総合効率を最適化するステップは、1つまたは複数の不活性層内の熱放散または吸収に基づきうる。
【0098】
次いで、この方法は状態1308に進み、そこで、加工制約条件および最適化された要素に従って光起電力デバイスが加工される。設計者が状態1308を完了した後、この方法は、終了状態1310で終了する。光起電力デバイスを改善または最適化するために、他のステップを含めることができることは理解されるであろう。
【0099】
図14は、図11A〜11Cで説明されている実施形態のそれぞれについての約400nmから約1100nmまでの波長領域内のモデル化された吸収のグラフを示している。曲線1401は、図11Aに示されている実施形態に対する吸収体層1103における吸光度である。曲線1402は、図11Bに示されている実施形態に対する吸収体層1103における吸光度である。曲線1403は、図11Cに示されている実施形態に対する吸収体層1103における吸光度である。図14に示されているように、曲線1402によれば、約550nmに等しい波長において図11Bに示されている実施形態の吸収体層内のモデル化された吸収は、曲線1401に示されている図11Aの実施形態の吸収体層内の対応するモデル化された吸収値より約28%高い。さらに、曲線1403によれば、約550nmに等しい波長において図11Cに示されている実施形態の吸収体層内のモデル化された吸収は、曲線1401に示されている図11Aの実施形態の吸収体層内の対応するモデル化された吸収値より約35%高い。したがって、光空洞共振器を備える図11Bおよび11Cに示されている実施形態は、図11Aに示されている実施形態と比較して活性領域内で約10%〜35%の吸収の改善を示す。曲線1402および1403を比較すると、図11Bに示されている光空洞共振器においてITO層を備える実施形態と図11Cに示されている光空洞共振器において空気またはSiOを含む実施形態との間で、図11Cに示されている実施形態は、吸収体層1103において高い吸収を有することがわかる。この結果は、以下のように説明することができる。活性層または吸収体層における電界の強さは高い。吸収体層の外側の光空洞共振器層における電界は、急激に低下するが、ゼロにはならない。ITOの屈折率nと消光係数kとの積は、吸収体層のバンドギャップに相当するエネルギーを有する波長(例えば、300nmから800nmの間の波長)において低いが、吸収体層のバンドギャップに相当するエネルギーを有する波長における空気またはSiOの屈折率nと消光係数kとの積より低くない。したがって、光空洞共振器内のITO層は、空気(またはSiO)層に比べて著しく電磁波を吸収する。この結果、吸収体層の吸収が減少する。曲線1403において、最適化された場合に、図11Cに示されている実施形態の活性層内のモデル化された吸収は、500nmから700nmまでの波長帯において約90%であることがわかる。
【0100】
図15Aは、単一のpin接合非晶質シリコン太陽電池セル構造の線図を示している。このデバイスは、PVセルが複数のITO層(Miro Zemanによって開示されているTCO層およびZnO層を置き換える)を含むことを除き、非特許文献2の第5章で開示されているものに類似している。図15Aに示されている実施形態は、織り目加工されたガラス基材1501、厚さ約900nmの第1のITO層1502、厚さ約330nmのpin接合を備え、そこでは、領域1504は、α:Si、厚さ80nmの第2のITO層1506、および厚さ300nmのAgまたはAl層1507を備える。さまざまな層の厚さは、Miro Zemanによって開示されているスタック全体における全吸収が最大化されるように選択されたMiro Zemanによって開示されている厚さと一致する。この最大化は、PVセルが黒く見えるまでさまざまな層の厚さを変えることによって達成された。全吸収対波長の関係が図15Bに示されている。すべての波長が、PVスタック内で一様に吸収されることがわかる。PVデバイスからの全反射対波長の関係が図15Cに示されている。PVセルからの全反射は、低く、同様に、PVセルは黒く見える。図15Dは、PVセルの吸収体または活性層1504における吸収を示している。図15E〜Gは、第1のITO層1502、第2のITO層1506、およびAgもしくはAl層1507における吸収を示している。図15Dおよび15Eに示されているように、活性層1504内に吸収される電磁波の量は、第1のITO層1502内に吸収される電磁波の量にほぼ等しい。したがって、この設計は、さもなければ活性層1504によって電気エネルギーに変換されうるであろう光が代わりに第1のITO層1502内に吸収されるので次善の設計なのである。第2のITO層1506およびAgもしくはAl層1507における吸収の量は、無視できるくらい小さい。
【0101】
しかし、図15AのPVスタックは、上述のIMOD設計の干渉原理を応用することによって最適化されうる。いくつかの実施形態では、p、i、およびn層に対する屈折率nおよび消光係数kの値は、互いに実質的に類似している可能性があり、p、i、およびn層は、最適化プロセスにおける3つの異なる層の組み合わされた厚さを有する単一層として考えることができる。一実施形態では、最適化は、活性層1504の厚さを一定に保ちつつ第1のITO層1502および第2のITO層1506の厚さを変えることで実行できる。図16Aは、活性または吸収体層内に吸収された積分エネルギー対第1のITO層1502および第2のITO層1506の厚さの関係を示す等高線図1600を示している。図16A内のそれぞれの点は、第1のITO層1502および第2のITO層1506の厚さが対応するx(水平)軸とy(垂直)軸とによって与えられる場合の活性層内の積分吸収(波長領域にわたって積分された吸収)である。陰影が淡ければ淡いほど、活性層の全吸収は大きい。等高線図1600において、第1のITO層1502および第2のITO層1506の厚さが、それぞれ、約54nmおよび91nmである場合に最大の吸収1610が得られる。したがって、第1のITO層1502の厚さが、900nmから54nmまで著しく減少した場合に、増大された、または最適な吸収効率が生じる。図16Aのプロットは、従来の考え方とは反対に、活性層内の吸収が、ITO層の厚さの増大と比例して増大しないことを示している。その代わりに、吸収は、厚さの変化に対し非線形に変化し、活性層内の吸収を最大にするITOの厚さに対し最適な厚さがありうる。活性層1504内の吸収の増大は、もっぱら第1のITO層内に吸収される電磁波の量が著しく減ることによるものである。したがって、等高線図1600は、特定の活性層1504内の吸収効率を高めるためにスタック内の電極層の望ましい、または最適な厚さを決定するのに使用できる。
【0102】
図16Bは、最適化されたPVスタックの活性層内の吸収を示している。図16Aと図15Dとを比較すると、最適化されたPVスタックの活性層内の吸収が、最適化されていないPVスタックの活性層内の吸収の2倍ほど増大していることがわかる。図16Cは、最適化されたPVスタックにおける全吸収対波長の関係を示している。この吸収曲線は、赤色を中心とする波長領域の吸収が少ないことを示している。したがって、最適化されたPVスタックを見ている観察者は、PVセルが最適化されていないPVスタックの完全に黒く見えるのとは反対に赤みを帯びた黒色に見えることを観察する。この例は、いくつかの実施形態において、黒色に見えるPVセルが、活性層内において最高の吸収量を必ずしも持たないことを明らかにしている。いくつかの実施形態では、活性層内の吸収量が多い場合、同伴するデバイスは完全な黒色以外の何らかの色を持つ。有利には、いくつかの実施形態において、上述のように、PV吸収体のエネルギーの吸収が増大すると、その結果、PVセルの総合エネルギー変換効率が直線的に増大する。
【0103】
図17は、図11Aに示されているデバイスと類似の光起電力デバイス1700の線図を示している。図17の光起電力デバイス1700は、Cu(In,Ga)Se(「CIGS」)、p型層1706およびCdS、n型層1707を含む活性領域1701を含む薄膜層を備え、この活性領域1701は、活性領域内で吸収効率が最大になるように最適化されていない。図17に示されている光起電力デバイスは、非特許文献3(「Krcら」)において開示されているものに類似している。この実施形態は、ガラス基材1702、ITOまたはZnO電極層1703、多結晶Cu(In,Ga)Se(CIGS)、p型層2206、CdS、n型層1707、およびMoもしくはAl反射体層1708を含む。
【0104】
図18A〜18Cは、Krcらによって報告されているデバイスにおけるCIGS、p型層1706およびCdS、n型層1707のモデル化された吸光度対波長の一連のグラフである。図18Aは、約400nmから約800nmまでの波長帯にわたるGIGS、p型層1706では約60%の吸光度であることを示している。約500nmから約700nmまでほとんど70%の吸光度が得られた。図18Bは、約400nmから約800nmまでの波長帯にわたるCdS、n型層1707の吸光度のグラフを示しており、0%から20%の吸光度範囲が得られた。図18Cは、約400nmから約800nmまでの波長帯にわたる活性領域1701に対する全吸光度のグラフを示している。この範囲内で平均約70%の吸光度が得られた。図18Aのモデル化されたグラフの結果は、Krcで報告されているように図2に示されているCIGS層の測定された吸光度とほぼ同じである。後述のように、Krcで、また図18A〜18Cに示されている測定された吸光度とモデル化された吸光度は、光空洞共振器が図17の実施形態の活性領域1701と反射体層1708との間に入れられた場合に劇的に改善する。
【0105】
図19Aは、図17の活性領域1701と反射体層1708との間に光空洞共振器1910を追加した後の光起電力デバイス1900Aの線図である。特に、光起電力デバイス1700は、上述のIMOD設計の原理に従って最適化された。この実施形態では、光空洞共振器は、透明ITOまたはZnOを含む。CdS、n型層1907およびCIGS、p型層1906を含む活性層1901の厚さおよび光学特性(例えば、屈折率nおよび消光係数k)は変わらなかった。他の実施形態では、ガラス基材1902およびMoもしくはAl反射体層1908のパラメータ、例えば、厚さおよび屈折率は、最適化プロセスによって変わらなかった。ITOまたはZnO電極層1904および光空洞共振器1910の厚さは変わらず、活性領域1901内の吸収は、これにより増大した。ITOまたはZnO電極層1904の最適化された厚さは、約30nmであり、光空洞共振器1910の最適化された厚さは、約70nmであった。次いで、CIGS、p型層1906およびCdS、n型層1907の吸光度は、図20A〜20Cに示されているようにモデル化された。図19Bは、図19Aの代替実施形態を示しており、光空洞共振器1910は、エアーギャップを含む。
【0106】
図20A〜20Cは、図19Aの最適化された光起電力デバイス1900AにおけるCIGS、p型層1906およびCdS、n型層1907のモデル化された吸光度対波長の一連のグラフである。図20Aは、約60%から90%の吸光度を示す約400nmから約800nmまでの波長帯にわたるCIGS、p型層1906における吸光度のモデル化されたグラフを示している。図20Bは、0%から30%の吸光度を示す約400nmから約800nmまでの波長帯にわたるCdS、n型層1907における吸光度のモデル化されたグラフを示している。図20Cは、400nmから800nmの波長帯にわたる約90%のCIGS、p型層1906およびCdS、n型層1907の全吸収のモデル化されたグラフを示している。したがって、CIGS、p型層1906およびCdS、n型層1907の組み合わせの吸収効率は、図17の実施形態に上述の方法を適用することによって400nmから800nmの波長帯にわたって20%ほど高められた。
【0107】
図21は、上述の方法によって最適化されたiPVデバイス2100の一実施形態の線図である。光起電力デバイス2100は、活性領域2101を含む。光起電力デバイス2100は、活性領域2101の上に配設されたガラス基材2102およびITO層2104も備える。活性領域2101は、CIGS、p型層2106およびCdS、n型層2107を備える。2つの金属層2108Aおよび2108Bは、それぞれ、ガラス基材2102上に配設される(第1の金属層2108Aが第2の金属層2108Bの上に)。第1の金属層2108Aは、反射体であって同時に電極でもある。第2の金属層2108Bは電極でもある。誘電体材料2108cは、反射体2108aと電極2108bとの間に配設され、これにより、これらの電気経路を互いに電気的に絶縁することができる。金属層2108Aおよび2108Bは、それぞれ、MoまたはAlを含む。この実施形態では、エアーギャップを備える光空洞共振器2110が、第1の金属層2108Aと活性領域2101との間に形成される。空気は、他の物質に比べて吸収が少なく、kの値は低い。また、空気の屈折率は1.0である。エアーギャップが、吸収効率の目的に関しては効果的である場合があるけれども、空気は、電気の不導体である。したがって、光電池は、吸収された光から電流を供給する機能を持たない。この問題は、ビアを使って活性層から電荷を引き込むことで解決される。そのため、第1の金属層2108AをCIGS、p型層2106に電気的に接続するのは、第1のビア2111Aである。第2の金属層2108BをITO層2104に電気的に接続し、光空洞共振器2110、CIGS、p型層2106およびCdS、n型層2107に通すのは、第2のビア2111Bである。第2のビア2111Bは、絶縁層によって囲まれ、これにより、例えば、CIGS,p型層2106からビアを電気的に絶縁することができる。最適化されると、ITO層2104は、厚さ15nmを有し、CdS、n型層2107は、厚さ40nmを有し、CIGS、p型層2106は、厚さ360nmを有し、エアーギャップ光空洞共振器2110は、厚さ150nmを有する。エアーギャップ光空洞共振器2110は、二酸化ケイ素または二酸化マグネシウム、またはMgFもしくは当技術分野で知られている他の好適な材料など他の透明誘電体で置き換えることができる。さまざまな実施形態において、低いn×k値を持つ誘電体が使用される。そのような実施形態では、第1のビア2111Aは、有利には、底部電極をCIGS、p型吸収体層2106に接続することができる。本明細書で開示されているさまざまな他の実施形態、さらに非導電性材料を含む光共振層(例えば、光空洞共振器)を備える未だ考案されていない実施形態においても、ビアを使用してそのような不導体層を通じて電気的接続を行うことができる。
【0108】
図22は、ビア2111Bと金属電極層2108Bが取り除かれている図21に示されている実施形態の線図である。例えば、伝導性酸化物などの透明導電性材料を含みうる、上部光共振層2204を接触させることによって、電気的接触を行わせることができる。
【0109】
図23は、ITO層2104が取り除かれていることを除き、図21の実施形態に類似している光起電力デバイス2300の一実施形態の線図である。したがって、光起電力デバイス2300は、ガラス基材2302、およびガラス基材2302上に配設されている、第2の金属層2308B上に配設された第1の金属層2308Aを備える。エアーギャップ光空洞共振器2310は、第1の金属層2308AをCIGS、p型層2306およびCdS、n型層2307から分離する。上述のように、第1の金属層2308Aは、反射体であるとともに、第1のビア2311AによってCIGS、p型層2306の基部に電気的に接続されている電極でもある。同様に、第2の金属層2308Bは、第2のビア2311BによってCdS、n型層2307の上に電気的に接続されている電極を備える。最適化されると、CdS、n型層2307は、厚さ40nmを有し、CIGS、p型層2306は、厚さ360nmを有し、エアーギャップ光空洞共振器2310は、厚さ150nmを有する。上の説明と同様に、エアーギャップ光空洞共振器3010は、二酸化ケイ素または二酸化マグネシウムまたは他の誘電体で置き換えることができる。このような実施形態では、第1のビア2311Aは、有利には、電極2308AをCIGS、p型吸収体層2306に接続することができる。
【0110】
図24は、約400nmから約1100nmまでの波長帯にわたる図23の光起電力デバイス2300のCIGS、p型層内のモデル化された吸収のグラフである。このグラフから、CIGS、p型層が、約500nmから約750nmまでの波長帯で90%を超える吸収効率を示すことがわかる。
【0111】
一般に、層に関連するパラメータ、例えば、材質および寸法の適切な選択によって活性層内の吸収を増大する層をPVデバイスに組み込むことができる。これらの層のうちの1つの層の1つまたは複数のパラメータを、他の層のパラメータを一定に保ちつつ調節することができるか、またはいくつかの実施形態では、活性層内の吸収を増大するように1つまたは複数の層の1つまたは複数のパラメータを調節することができる。いくつかの実施形態では、活性層内の吸収を増大するように、すべての層の1つまたは複数のパラメータを調節することができる。さまざまな実施形態において、これらのパラメータは、例えば、吸収に対する異なるパラメータの影響を算出することによって、設計段階で調節することができる。最適化手順を使用することができる。各種の他の技術も、性能向上をもたらすパラメータに対する値を得るために使用することができる。
【0112】
例えば、図25Aは、光共振層2506および光空洞共振器2503を光起電力デバイス内にどのように組み込み、吸収を増大するためにどのように同調することができるかを示している。このデバイスは、図19Aおよび19Bに示されているデバイスをさらに一般化したデバイスである。厚さなどの、光共振層2506および光空洞共振器2503のパラメータは、デバイスを干渉により同調し、活性層内の吸収を増大するように変えることができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、光共振層2506および光空洞共振器2503は、電極層を備えることができる。しかし、さまざまな実施形態において、光共振層2506および光空洞共振器2503のいずれか、または両方とも、低い消光(または吸収)係数kおよび/または低い屈折率nを有し、低いn×k値をもたらす材料を含むことができる。光共振層2506および光空洞共振器2503の一方または両方が、例えば、低いn×k値を有することができる。例えば、上述のように、光空洞干渉器2503は、空気、またはSiOなどの誘電体材料、またはITOまたはZnOのようなTCOなどの導電性材料を含むことができる。低いkまたはほぼゼロのkを有する他の材料も、低いn×k値が得られるように使用することができる。さらに他の材料も可能である。同様に、光共振層2506は、空気、消光(または吸収)係数kが低い誘電体材料、またはITOもしくはZnOのようなTCOなどの導電性材料、またはn×k値の低い他の任意の材料を備えることができる。また、他の材料も、使用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ハイブリッドもしくは複合構造が、光空洞共振器および/または光共振層に使用される。例えば、光空洞共振器および/または光共振層は、空気/誘電体、導体/誘電体、空気/導体の組み合わせまたは混合物を備えることができる。
【0115】
図示されている実施形態において、PVセルの活性層は、n型CDS層2505およびp型CIGS層2504を含む。他の実施形態では、活性層は、他の材料を含むことができる。光学積層体は、薄膜加工技術を使用することによって基材2501上に堆積できる。基材2502は、ガラスまたは他の好適な材料を含みうる。いくつかの実施形態では、反射体2502は、基材と光共振層および光空洞共振器によって囲まれた活性層を含む光学積層体の残り部分との間に堆積されうる。反射体は、Al、Mo、または金属もしくは誘電体などの他の反射材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、反射体は、単一の材料または複合材料を含むことができる。
【0116】
図25Aの反射体2502も、いくつかのパラメータを最適化するように選択されうる。例えば、反射体層2502の材質および厚さは、いくつかの波長帯にわたって反射率を増大または最適化するように選択できる。他の実施形態では、反射体は、特定の波長帯(赤色など)を反射し、他の波長帯(青色など)を吸収するように選択できる。
【0117】
上述のように、光空洞共振器2503および光共振層2506は、ITOまたはSnOなどのTCOを含みうる。他の実施形態では、光空洞共振器および光共振層は、透明誘電体材料またはエアーギャップまたはこれらの組み合わせを含むことができる。光空洞共振器2503および光共振層2506に使用される材料は、同じである必要はない。図25Bは、iPVセルの一実施形態を示しており、そこでは、光空洞共振器2503は、エアーギャップまたはSiOなどの誘電体材料を含み、また光共振層2506は、SiOなどの非導電層も含む。活性層からの電子の伝導経路を形成するために、図25Bに示されているようにビア2507aおよび2507bが形成される。iPVセルは、図25Bに示されているように反射体2502bおよび電極2502aを備える。いくつかの実施形態では、電極2502aは、反射体2502bと同じ材料を含むことができる。反射体2502bおよび電極2502cは、導電性材料を含むことができる。ビア2507aは、反射体2502bで終端し、ビア2507bは、電極2502aで終端する。外部電気的接続を形成するために、2つの反射体に金属リードを設けることができる。誘電体材料2502cは、反射体2502bと電極2502aとの間に配設され、これにより、これらの電気経路を互いに電気的に絶縁することができる。反射体2502aおよび2502bは、こうして、ビアを使用して活性層から電力を抽出するための電気経路として使用されうる。光共振層2506が導電性材料を含む実施形態では、ビア2507bは、光共振層2506まで延在しうる。その代わりに、そのような実施形態では、ビア2507bは、すべて一緒に排除することもできる。
【0118】
図25Cは、活性層と光空洞共振器2503との間に配設されている伝導性ITO層2508を備えるiPVセルの他の実施形態を示している。活性層から来る電子用の伝導経路は、ビア2507aおよび2507bによって形成される。ビア2507aは、ITO層2508を反射体2502bに接続し、ビア2507bは、n型CdS層2505を電極2502aに接続する。ITO層2508および光空洞共振器2503は、図11E〜11Hで説明されているように複合光空洞共振器を形成することができ、したがって、ITOは、光空洞共振器の一部であると言える。
【0119】
上述のように、図25A〜25Cに示されているこれらのデバイス内の複数の層のうちの1つまたは複数の層の1つまたは複数のパラメータは、例えば、干渉原理を使用して、または干渉効果の結果として、活性層内の吸収を増大化するように調節することができる。
【0120】
図26は、図25A〜25Cに示されているデバイスより単純なデバイスを示している。このPVデバイスは、iPVの活性層と反射体2602との間に配設された光空洞共振器2603を備える。iPVの活性層は、n型CdS層2605およびp型CIGS層2604を含む。反射体層2602は、Al、Mo、または他の金属/誘電体反射材料を含みうる。上述のように、光空洞共振器は、空気、誘電体材料、または低いn×k値を持つ透明導電性材料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。他の材料も使用することができる。いくつかの実施態様では、反射体2602は、取り除いてもよい。上述のように、このデバイス内の複数の層のうちの1つまたは複数の層の1つまたは複数のパラメータは、例えば、干渉原理に基づいて活性層内の吸収を増大させるように調節することができる。いくつかの実施形態では、光空洞共振器2603を除外してもよく、それでも、活性層内の吸収が増大するように1つまたは複数の層の1つまたは複数のパラメータを調節することができる。
【0121】
異なる層のパラメータを、それらの層のスペクトル特性に基づいて選択することができる。例えば、金は、赤色を中心とする波長領域内で高い消光係数kを有し、また青色を中心とする波長領域内で比較的低い消光係数kを有する。しかし、金の屈折率nは、赤色を中心とする波長領域内では低く、青色を中心とする波長領域内では高い。その結果、金の場合、積n×kは、赤色を中心とする波長領域内では低く、青色を中心とする波長領域内では高い。したがって、金を含む反射体は、もっぱら、赤色を中心とする波長群を反射し、青色を中心とする波長群を吸収する。したがって、反射体は、活性層の有用な光吸収域に対応する波長帯(光が吸収され、電力に変換される)において低いn×k値を有し、活性層の有用な光吸収域内にない波長(例えば、光エネルギーが熱に変換され、そのため、デバイスの働きが低下する可能性がある)において高いn×kを有する反射体用の材料を選択することによって吸収を同調させるために使用されうる。例えば、青色光をiPVデバイス内に入らせないことが有利である場合、金の反射体1104を形成することが望ましいと思われる。いくつかの実施形態では、反射体材料は、赤外線波長を吸収するように選択できる。
【0122】
同様に、上述のように、特定のギャップ距離の選択により、特定の色、例えば、赤色、緑色、または黒色が反射体層(例えば、図11B〜Hの1104)によって反射されるかどうかが決まる。例えば、ギャップ距離は、反射体が活性層または吸収体層のバンドギャップに対応する波長領域内の入射光の実質的部分を反射し、その後活性層/吸収体によって吸収されるように選択することができ、したがって、IMODは黒く見える。しかし、太陽電池セルの効率を高めることを対象とする従来の方法とは反対に、活性層内の吸収を増大するようにiPVデバイスを最適化する上述の方法は、完全に黒色に見えるデバイスに常に関連付けられるわけではない。デバイスは、例えば、いくつかの実施形態では赤み帯びた黒色または他の色に見えることがある。
【0123】
図27は、従来の多接合光起電力デバイス2700の線図を示している。光起電力デバイス2700は、ガラス基材2702、透明電極2704Aおよび2704B、活性層2706A、2706B、2706C、および反射体層2708を備える。この実施形態では、基材2702はガラスを含み、第1および第2の透明電極2704Aおよび2704BはITOを含み、反射体層2708はAlを含む。第1の活性層2706Aは、青色光を吸収するように構成され、第2の活性層2706Bは、緑色光を吸収するように構成され、第3の活性層2706Cは、赤色および赤外光を吸収するように構成される。いくつかの実施形態では、活性層2706A、2706B、および2706Cは、赤色、緑色、または青色に対し異なるバンドギャップを有する類似の材料を含む。いくつかの実施形態では、活性層2706A、2706B、および2706Cは、シリコン、GaAs、または当技術分野で知られている他の材料の組み合わせなどの異なる材料系を含む。
【0124】
多接合光起電力デバイスでは、光起電力デバイスの接合部のそれぞれにおけるエネルギー吸収を最適化するアプローチが多数ある。例えば、1つのアプローチは、多接合活性層(例えば、2706A〜2706C)の組み合わされたスタックと反射体2708との間に光空洞共振器を配設するものとすることができる。他のアプローチは、多接合光起電力デバイスを形成するそれぞれの活性層の間に光共振層を配設し、また光起電力デバイスの最後の活性層と反射体との間に光空洞共振器を配設するものとすることができる。これらの2つのアプローチについて、以下で詳しく説明する。
【0125】
図28Aは、図27に示されている多接合光起電力デバイスの1つの最適化されたデバイスの線図を示している。この実施形態では、3つの吸収体/活性層2806A、2806B、および2806Cが、「青色」、「緑色」、および「赤色およびIR」の波長帯において光を吸収するように構成されている。これらの吸収体層は、第1の光共振層2804Aと第2の光空洞共振器2804Bとの間にサンドイッチ状に挟まれる。光共振層2804Aおよび光空洞共振器2804Bは、透明電極、ITO、エアーギャップ、SiO、または他の材料を備えることができる。光共振層または光空洞共振器が、非導電性材料を含む場合、図28Bに示されているようなビアを使用して、電気的接続を形成することができる。「赤色、緑色、および青色」というラベルは、ある範囲の波長を指すにすぎず、例えば、赤色の実際の波長帯を指すわけではない。活性層は、他の波長を吸収することができる。それに加えて、含める領域はそれより多くても少なくてもよい。他の変更形態も可能である。
【0126】
図29Aは、多接合光起電力デバイスの1つの最適化されたデバイスの線図を示しており、この場合、光共振層は、それぞれの活性層の間に配設されるだけでなく、上部活性層と基材との間にも配設され、光空洞共振器は、底部活性層と反射体との間に配設される。例えば、光共振層2904Aは、基材2902と接合部2906Aとの間に配設される。同様に、光共振層と活性層2906A、2906B、2906Cの交互に並ぶ積層を形成するために光共振層2904Bおよび2904Cが追加されている。光空洞共振器2905は、最後の活性層2906Cと反射体2908との間に配設される。それぞれの光共振層2904A〜2804Cおよび光空洞共振器2905は、例えば、ITO、エアーギャップ、SiO、または他の媒質を備えることができる。光共振層または光空洞共振器が、非導電性材料を含む場合、図29Bに示されているようなビアを使用して、電気的接続を形成することができる。したがって、光起電力デバイス2900の光学積層体は、ITOを含む光共振層2904A、青色光の範囲内の波長を吸収するように構成されている活性層2906A、光共振層2904B、緑色光の範囲内の波長を吸収するように構成されている活性層2906B、光共振層2904C、赤色および赤外光の範囲内の波長を吸収するように構成されている活性層2906C、光空洞共振器2905、および反射体層2908を備える。多接合フォトダイオードは、上で説明されている干渉原理に基づいて最適化できる。例えば、多接合光起電力デバイスのこのモデル化され最適化された線図において、それぞれの活性層の吸光度は、光学積層体内に存在する他の層の厚さまたは他の層内で使用される材料を変えることによって高めることができる。光起電力デバイスは、絶縁体2908Cおよび電極2908Aをさらに備えることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、多接合フォトダイオードは、図29Aに示されているものより少ない光共振層を備える。例えば、一実施形態では、光共振層2904Aは、基材2902と複数の活性層2906Aのうちの1つの活性層との間に配設され、他の光共振層2904Bおよび2904Cは除外されうる。他の実施形態では、光共振層2904Bは、活性層2906Aと2906Bとの間に配設され、他の光共振層2904Aおよび2904Cは除外されうる。他の実施形態では、光共振層2904Cは、活性層2906Bと2906Cとの間に配設され、他の光共振層2904Aおよび2904Bは除外されうる。他の実施形態では、光共振層2904A、2904B、2904Cのうちの複数の光共振層を含め、1つだけ除外することができる。光空洞共振器2905を含めるか、または複数の実施形態のうちのどれかから除外することができる。含める活性層を増やすか、または減らすことができる。これらの活性層は、光共振層以外の層によって分離することができる。使用する光共振層を増やすか、または減らすことができる。したがって、活性層、光共振層、および光空洞共振器の個数、配列構成、および種類は異なることがあり、これは設計および/または最適化プロセスに依存しうる。上述のように、「赤色、緑色、および青色」というラベルは、ある範囲の波長を指すにすぎず、例えば、赤色、緑色、および青色の光の実際の波長帯を指すわけではない。活性層は、他の波長を吸収することができる。他の変更形態も可能である。
【0128】
上述のように、光起電力デバイスの異なる実施形態におけるそれぞれの層の組成および/または厚さは、上述の方法を使用して活性層内の吸収を増大し、反射を減少させるように設計および加工段階で最適化されうる。例えば、iPVの実施形態は、上述のようにIMOD設計原理を使用して最適化できる。いくつかの実施形態では、iPVセルの動作中に動的にこれらの実施形態における光空洞共振器または層の厚さを変化させるためのMEMSエンジンまたはプラットフォームを備えることができる。したがって、上述のiPVの実施形態は、干渉効果の結果として改善されうる。PV吸収体/活性領域内のエネルギーの吸収が増大すると、結果として、iPVデバイスの総合効率が増大しうる。
【0129】
しかし、設計は、あらゆる点で真に最適であるわけではない。例えば、光空洞共振器内のTCO層を含む実施形態では、電気損失は無視できるくらい小さいものとしてよい。しかし、TCOは、ある種の光学的損失を生じる可能性がある。光空洞共振器内に空気またはSiOを含む実施形態は、ビアの存在による光吸収のわずかな減少を示しうる。いくつかの実施形態では、電気的接続のためビアが存在する結果、光開口の損失が生じうる。
【0130】
iPVデバイスのいくつかの実施形態では、活性層の吸収効率の増大または最適化は、iPVデバイスに関する入射光の配向に必ずしも依存しえない。例えば、入射光がiPVデバイスに対して実質的に法線方向の光である場合の吸収効率は、入射光が高いかすり入射角(例えば、iPVデバイスの法線から約89度)で入ってくる光である場合の吸収効率とほぼ同じであるものとしてよい。したがって、太陽電池セルの配向は、最適な吸収効率となるように完全に整列される必要はない。しかしながら、入射角は、活性層に到達する光の強度に影響を及ぼし、したがって、活性層によって吸収される有効なエネルギーに影響を及ぼし、太陽電池セルに到達する光が少なければ少ないほど、活性層によって吸収されるエネルギーの存在量は少ない。したがって、光起電力デバイスの与えられた面積について、能動的追跡(例えば、太陽の進路に合わせて太陽電池を移動する)が行わなければ、入射角θが増加するにつれ、cos(θ)だけ全吸収エネルギーが減少することに留意されたい。
【0131】
しかし、いくつかの実施形態では、吸収効率が入射角の関数として変化する場合に、iPVスタックは、IMOD原理および干渉効果を使用して特定の入射角に関して設計できる。例えば、非法線角度でデバイスに入射した光の所望の波長の吸収を増大させるように光キャビティの厚さを調節することができる。いくつかの実施形態では、光キャビティは、例えば、異なる時刻において太陽の異なる入射角となるように可変であるものとしてよい(固定されるのとは反対に)。
【0132】
本明細書で説明されている原理は、完全に反射的(例えば、不透明)でさらに透過性を有するPVデバイスに適用可能である。
【0133】
図30は、従来の半透明PVセルを示している。本明細書で使用されているように、「半透明」という用語は、部分的な光透過性を意味し、50%の透過に限定されるわけではない。図30に示されている半透明PVセルは、2つの透明伝導性酸化物(TCO)層3005と3002の間に光吸収層3004をサンドイッチ状に挟むことによって形成される。これらの積層は、基材3001の上に被さるように配設されうる。電気的接続を形成するように、金属リード3007をTCO層3005上に設けることができる。導電性材料を含む上部光共振層を有する本明細書で説明されているすべての実施形態において、3007に類似している金属リードを備えることができる。このような金属リードは、他の実施形態においても同様に使用できる。例えば、上層に非導電性材料が含まれる実施形態では、3007に類似している金属リードを上部非導電層上に備え、金属リードを、例えば、ビアを通して、電極層に電気的に接続することができる。
【0134】
光学干渉の原理およびIMOD設計原理を使用して図30の半透明PVセルを最適化するために、1つのアプローチでは、図31に示されているように光吸収層3104と反射体層3102との間に光空洞共振器3103を配設することができる。いくつかの実施形態では、上部電極層3105は、透明電極を含む光共振層とすることができる。上部電極層3105は、例えば、ITOまたはZnOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ARコーティングが、上部電極層3105上に配設されうる。活性層内の吸収を増大させる光空洞共振器3103、反射体層3102、活性層3304を含むPVセルを備えるさまざまな層に対し厚さおよび材料特性(例えば、屈折率nおよび消光係数k)を使用することができる。反射体の厚さは、透明度を制御することができる。例えば、非常に薄い反射体を持つiPVデバイスは、比較的厚い反射体層を持つ反射体と比較してより高い透明度を有することがある。反射体層の厚さを減らすことで、半透明のiPVデバイスを生産することができる。例えば、いくつかの実施形態では、半透明iPVデバイス内の反射体の厚さは、5nmから25nmまでの範囲の値とすることができる。いくつかの実施形態では、半透明iPVデバイス内の反射体の厚さは、1nmから500nmまでの範囲の値とすることができる。さまざまな実施形態において、この反射は、少なくとも10%、20%、30%、40%以上の反射率を有する。いくつかの実施形態では、反射体は、50%、60%、70%、80%、90%以上の反射率を有する。いくつかの実施形態では、半透明PVセルは、不透明のPVセルと比較して薄いPV材料を使用するように設計されうる。反射体層の厚さは、活性層内の吸収を増大するために、設計、例えば、最適化、計算に組み込むことができる。上述の方法に従って設計された半透明PVセルは、吸収効率が増大するため、図30に説明されている従来のPVセルに比べて効率的なものにできる。本明細書で説明されている他の実施形態ならびにまだ考案されていない実施形態において、PVセルは、少なくとも部分的に透明であるか、または光透過性を有するものとしてよい。
【0135】
例えば、図28A〜29Bに示されている多接合PVは、上述の方法によって部分的光透過性を持たせることができる。図32Aは、少なくとも部分的に光透過性を有しうる多接合PVセルの一実施形態も示している。図32Aに示されている実施形態は、3つの活性または吸収体層3204a、3204b、および3204cを含む多接合活性材料を含む。3つの吸収体層は、異なる周波数を有する光を吸収することができる。例えば、層3204aは、赤色およびIR領域内の周波数を有する光を吸収することができ、層3204bは、緑色領域内の周波数を有する光を実質的に吸収することができ、層3204cは、青色領域内の周波数を有する光を実質的に吸収することができる。活性層は、代替実施形態では他の波長を吸収することができる。反射体3202は、多接合活性材料の下に配設される。光共振層3205は、多接合活性材料の上に配設される。光共振層3205の厚さおよび材料組成は、活性材料内の吸収が増大または最大化されうるように上述の干渉原理を使用して選択または最適化されうる。図32Aに示されている実施形態では、光共振層は、TCOまたは透明導電性窒化物などの透明導電性材料を含むことができる。しかし、他の実施形態では、光共振層は、SiOまたはエアーギャップなどの透明非導電性誘電体を含むことができる。他の実施態様では、光共振層は、上述のような複合構造を備えることができる。他の材料および設計も使用することができる。光共振層が非導電性材料を含む実施形態では、ビア3206は、図32Bに示されているように電気的接続を形成するために使用されうる。光学積層体は、図32Aおよび図32Bに示されているように基材3201上に配設される。基材は、上述のように光透過性を有するか、または不透明であるものとしてよい。
【0136】
部分的透過性を有する反射体層は、本明細書で開示されている他の設計で使用されうる。例えば、部分的光透過性を有する反射体層は、単一の活性層を有するPVデバイスで使用できる。さらに他の構成も可能である。図32Aが示しているように、PVセルは、1つまたは複数の光共振層を含むことができるが、光空洞共振器を備えない。したがって、光空洞共振器は、本明細書で説明されているさまざまなPVセル内で除外されうる。
【0137】
本明細書で説明されているさまざまな実施形態において、上述のように、活性層内の吸収が最適化されているけれども、いくつかの実施形態では、総合効率は、収集効率などの他の因子の効果をさらに考慮することによって増大または最適化することができる。例えば、吸収効率と収集効率の両方を合わせた効果を高めるように、1つまたは複数のパラメータを調節することができる。例えば、そのような実施形態では、総合効率は、最適化プロセスで監視することができる。しかし、他の性能指数も使用することができ、最適化、設計、または製造プロセスに組み込むことができる。
【0138】
上述のように、このデバイスが組み込まれるデバイス群またはシステムをモデル化し、計算を実行して、そのデバイスまたはシステムの性能を評価することができる。いくつかの実施態様では、実際の性能を測定することができる。例えば、総合効率は、活性層を含む電極と電気的接続を行うことによって測定することができる。例えば、電気プローブ3110および3112が図31に示されており、これは、金属リード3107とこれもまた電極である反射体3102のうちの一方と電気的に接触する。電気プローブ3110および3112は、PVデバイスの電気出力を測定する電圧計3114に電気的に接続される。本明細書で開示されているさまざまな実施形態に対し、類似の配列構成を使用することができる。電気出力信号を測定するために、電極層などを介して、金属リードとの電気的接触を形成することができる。他の構成を使用することもできる。
【0139】
本明細書で説明されている方法および構造のさまざまなバリエーションも可能である。
【0140】
したがって、本明細書で説明されているさまざまな実施形態において、光起電力デバイスの性能は、干渉技術を用いることで改善されうる。いくつかの実施形態では、活性層と反射体との間に配設された光空洞共振器は、1つまたは複数の活性層内の吸収を増大させることができる。しかし、上述のように、別のところに配置されている光共振器層は、1つまたは複数の活性層内の吸収を増大し、またそれに対応して、効率を高めることもできる。したがって、上述のように、1つまたは複数の層の1つまたは複数のパラメータを、例えば、光パワーを電力に変換する際にデバイスの効率を高めるように調節することができる。これらの1つまたは複数の層は、従来の光起電力デバイス内で使用される層であるか、または改善された性能得るためにそのような構造に負荷された層でないものとしてよい。したがって、光共振層は、改善を得るために構造に負荷された層に制限されない。それに加えて、光共振層は、上述の層に限定されず、干渉原理を使用して活性層内の吸収を増大するように同調される他の層を含むことができる。光共振層または光空洞共振器は、電極として動作するような他の機能も有することができる。設計または最適化は、1つまたは複数の活性層内の吸収および効率を増大するように実装されうる。
【0141】
それに加えて、さまざまな技術が最適化を実現するものとして上で説明されているけれども、本明細書で説明されている方法および構造は、真の最適な解決法に限定されない。これらの技術は、例えば、活性層内の吸収またはデバイスの総合光学効率を増大するために使用できるが、ただし必ずしも最大にするわけではない。同様に、技術を使用することで、活性層以外の層内の吸収を減少させることができるが、必ずしも吸収を最小にするわけではない。同様に、その結果得られる構造は、必ずしも最適な結果ではなく、それにもかかわらず、改善された性能または特性を示しうる。
【0142】
しかし、本明細書で開示されている方法および構造は、いくつかの光起電力デバイスに対する性能上の利点を含む広範な利点をもたらす。例えば、PVセル内で光空洞共振器もしくは他の光共振層を使用することによって、光起電力デバイスの吸収効率を改善することができる。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数の活性層の吸収効率は、少なくとも1つの光空洞共振器または光共振層の存在下で少なくとも約20%だけ増大する。ここで、吸収値は、太陽スペクトル中の波長にわたって積分される。他のいくつかの光起電力デバイスにおいて、太陽スペクトル中の波長にわたって積分された吸収効率は、光空洞共振器または光共振層が存在するせいで少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の割合だけ増大しうる。他の実施形態では、この増大は、5%以上、10%以上、または20%以上とすることができる。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0143】
したがって、1つまたは複数の波長について活性層の効率を増大または最適化するために、干渉原理を適用することができる。例えば、これらの複数の活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、0.7より大きい吸収効率を有し、約400nmの波長の光を吸収するように構成されうる。これら複数の活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、0.7より大きい吸収効率を有し、400nmから450nmまで、または350nmから400nmまでの範囲の波長の光を吸収するように構成されうる。いくつかの実施形態では、これら1つまたは複数の活性層は、0.7より大きい吸収効率を有し、350nmから600nmまでの範囲の光を吸収するように構成されうる。他の実施形態では、吸収効率は、250nmから1500nmまでの範囲の単一波長に対して、あるいはその代わりに、250nmから500nmまでの波長帯内の少なくとも50nm、100nm、または500nmの帯域幅に対して増大または最適化することができる。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0144】
光起電力デバイスの総合効率も同様に増大しうる。例えば、いくつかの光起電力デバイスでは、太陽スペクトル中の波長にわたって積分された総合変換効率は、1つまたは複数の好適な光共振層の存在下で、少なくとも15%、20%、25%または30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の割合だけ増大しうる。いくつかの実施形態では、この増大は、5%以上または10%以上とすることができる。いくつかの実施形態では、光起電力デバイスの総合変換効率は、0.7、0.8、0.9、または0.95より大きい。他の実施形態では、総合変換効率はこれらより小さくてもよい。例えば、総合変換効率は、少なくとも0.3、0.4、0.5、0.6以上とすることができる。一実施形態では、総合変換効率は、0.1または0.2以上としてよい。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0145】
少なくとも5%、10%、20%、25%、30%以上の1つまたは複数の活性層における太陽エネルギーの吸収の増大は、光学干渉の結果として得られる。これらの吸収値は、太陽スペクトルにわたって積分を行うことによって決定できる。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光空洞共振器または光共振層が存在することで、光起電力デバイスが太陽スペクトルなどの電磁放射線に曝された場合に少なくとも20%、25%、または30%だけ1つまたは複数の活性層内の平均電界強度を高めることができる。他の実施形態では、平均電界強度の増加は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%以上である。いくつかの実施形態では、この増大は、5%以上、10%以上、または15%以上である。後述のように、平均電界強度は、注目する特定の層、例えば、活性層の厚さにわたって平均された電界に対応する。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光空洞共振器または光共振層の存在によりもたらされる、1つまたは複数の活性層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加は、光起電力デバイス内の他の層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加に比べて大きい。いくつかの実施形態では、光起電力デバイスの1つまたは複数の活性層内の平均電界強度は、光共振層がない場合のPVセルの1つまたは複数の活性層における平均電界強度の少なくとも1.1倍に増加しうる。いくつかの他の実施形態では、光起電力デバイスの1つまたは複数の活性層内の平均電界強度は、光共振層がない場合のPVセルの1つまたは複数の活性層における平均電界の少なくとも1.2倍または1.3倍とすることができる。他の実施形態では、この増加は、1つまたは複数の共振層のない場合のPVセルの活性層における平均電界の少なくとも1.4倍、1.5倍、1.6倍、または1.7倍である。いくつかの実施形態については、これらの値は、より小さな波長帯でも積分する場合に適用することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、平均電界強度の増加は、1つまたは複数の活性層以外の光起電力デバイスの他の層では大きい場合がある。しかし、そのような実施形態では、光起電力デバイスのこの他の層における吸収は、1つまたは複数の活性層内の吸収より小さい場合もある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の活性層内の平均電界は、他の層に比べて高いが、他の実施形態では、その活性層以外の層は、最高の平均電界強度を有する。そのような条件は、太陽スペクトル上の波長またはより小さな波長帯にわたって達成されうる。
【0149】
開示されているさまざまな実施形態において、1つまたは複数の活性層によって吸収される光パワーは増大する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の活性層によって吸収される光パワーの増大は、組み合わされた光起電力デバイスの他のすべての不活性の層によって吸収される光パワーに比べて大きい。1つまたは複数の活性層によって吸収される光パワーの増大は、PVデバイス内の他の層に対する吸収された光パワーの増大の1.1倍、1.2倍、または1.3倍を超えるものとしてよい。他の実施形態では、この増大は、PVセル内の他の層に対する吸収された光パワーの増大の1.4倍、1.5倍、1.6倍、または1.7倍を超える。
【0150】
上述のように、これらの値は、太陽スペクトルにわたって積分を行うことによって決定されうる。それに加えて、これらの値は、「エアーマス1.5」として知られている標準日射について決定されうる。
【0151】
上記のように、いくつかの実施形態では、これらの値は、太陽スペクトルより小さい波長帯にわたって適用される。これらの値は、例えば、可視波長スペクトル、紫外線波長スペクトル、または赤外線波長スペクトルに適用できる。これらの値は、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm以上の波長帯に適用することができる。これらの値は、より大きな、またはより小さな波長帯にも同様に適用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、これらの値は、パラメータ、例えば、吸収効率、総合効率、電界、光パワーなどが、太陽スペクトル全体と異なるより小さな波長帯にわたって積分される場合に適用される。
【0152】
それに加えて、これらの値は、1つまたは複数の活性層に対する値であるものとすることができる。例えば、PVセルは、1つまたは複数の活性層(p型層、真性半導体層、またはn型層など)における吸収をまとめて、または別々に増大するように設計されうる。したがって、これらの値は、これらの層のどれかに個別に、またはこれらの層の任意の組み合わせに適用することができる。
【0153】
同様に、1つまたは複数の光共振層は、本明細書で参照されている性能のレベルに寄与しうる。同様に、上記の性能値は、1つの光共振層の、または2つまたはそれ以上の光共振層の1つのグループの1つまたは複数の設計パラメータの存在に依存しうる。
【0154】
さまざまな代替構成が可能である。例えば、コンポーネント(例えば、層)は、追加、除去、または再配置が可能である。同様に、処理および方法ステップは、追加、除去、または順序変更が可能である。また、薄膜および層という用語が本明細書で使用されているけれども、本明細書で使用されているそのような用語は、積層膜および多層構造物を含む。そのような積層膜および多層構造物は、接着剤を使用して他の構造物に接着するか、または堆積を使用して、または他の方法で、他の構造物上に形成することができる。同様に、活性層という用語は、p型およびn型ドープ領域、および/または活性領域の真性部分を含める場合に使用されうる。同様に、他の種類の材料も、使用することができる。例えば、活性層は、半導体を含むことができるけれども、いくつかの実施形態では、有機材料などの他の材料も使用できる。
【0155】
本発明の開示のデバイスには、多くの用途が考えられる。光起電力デバイスは、例えば、家屋またはビルなどの建築構造物上で使用されるか、またはソーラーファームなどの単独の構造物内に使用されうる。太陽光発電デバイスは、自動車、飛行機、船舶、宇宙船などの乗り物に組み込むことができる。太陽電池セルは、限定はしないが、携帯電話、コンピュータ、携帯型商用デバイスを含む、電子機器デバイスに付けて使用することができる。太陽電池セルは、軍事用途、医療用途、民生用途、および科学用途に使用できる。本明細書で特に説明されている範囲を超える用途も可能である。
【0156】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を加えることができることも理解するであろう。このような修正形態および変更形態は、添付の請求項によって画定されているとおりに本発明の範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0157】
101および102 表面
103 光線
104 光路
105 光路
106 光路
107 光路
201 上部反射体層
202 底部反射体層
203 光線
204および207 経路
300 干渉変調器スタック
301 ガラス基材
302 電極層
303 吸収体層
304 光空洞共振器
305 Al反射体
400 IMOD
401 光線
402 光線
403 吸収体
403 光線
403a 光線
403b 光線
404 光線
404a 光線
404b 光線
404c 光線
405 透過光線
405a 光線
405b、405c 光線
405d 光線
405e 光線
405f 光線
406 光線
406a 反射光線
406b、406c、406d、406e 光線
407 光線
407a 光線
407f 反射光線
900 太陽電池セル
901 前面電極
901および905 電極層
902 反射防止(AR)コーティング
903 n型層
903および904 PV材料
906 電球
907 外部回路
1000 薄膜PVセル
1001 ガラス基材
1002 第1の透明電極層
1003 PV材料の層
1005 第2の透明電極層
1006 反射体
1101 ITOまたはZnO伝導電極層
1102 CdSを含むn型材料の層
1103 CIGSを含むp型材料の層
1104 Moを含む反射体層
1105 ガラス基材
1106 光空洞共振器
1106a ITO層
1106b SiO2層
1106c エアーギャップ
1107 支柱
1201、1202、1203、1204 層
1203 吸収体層
1204 光空洞共振器
1205 金属導体/反射体
1300 iPVデバイス
1302 開始状態
1304 状態
1306 状態
1308 状態
1310 終了状態
1401 曲線
1402 曲線
1403 曲線
1501 織り目加工されたガラス基材
1502 第1のITO層
1504 領域
1506 第2のITO層
1507 AgまたはAl層
1600 等高線図
1610 吸収
1700 光起電力デバイス
1701 活性領域
1702 ガラス基材
1703 ITOまたはZnO電極層
1706 Cu(In,Ga)Se2(「CIGS」)、p型層
1707 CdS、n型層
1708 MoもしくはAl反射体層
1900A 光起電力デバイス
1901 活性層
1902 ガラス基材
1904 ITOまたはZnO電極層
1906 CIGS、p型層
1907 CdS、n型層
1908 MoもしくはAl反射体層
1910 光空洞共振器
2100 iPVデバイス
2100B 金属電極層
2101 活性領域
2102 ガラス基材
2104 ITO層
2106 CIGS、p型層
2107 CdS、n型層
2108A 第1の金属層
2108a 反射体
2108B 第2の金属層
2108b 電極
2108c 誘電体材料
2110 光空洞共振器
2111A 第1のビア
2111B 第2のビア
2204 上部光共振層
2206 多結晶Cu(In,Ga)Se2(CIGS)、p型層
2300 光起電力デバイス
2302 ガラス基材
2306 CIGS、p型層
2307 CdS、n型層
2308A 第1の金属層
2308B 第2の金属層
2310 エアーギャップ光空洞共振器
2311A 第1のビア
2501 基材
2502 基材
2502 反射体
2502a 電極
2502b 反射体
2503 光空洞共振器
2504 p型CIGS層
2505 n型CDS層
2506 光共振層
2507aおよび2507b ビア
2508 伝導性ITO層
2602 反射体
2603 光空洞共振器
2604 p型CIGS層
2605 n型CdS層
2700 従来の多接合光起電力デバイス
2702 ガラス基材
2704Aおよび2704B 透明電極
2706A、2706B、2706C 活性層
2708 反射体層
2804A 第1の光吸収層
2804B 第2の光空洞共振器
2806A、2806B、および2806C 吸収体/活性層
2902 基材
2904A 光共振層
2904Bおよび2904C 光共振層
2905 光空洞共振器
2906A 接合部
2906A、2906B、2906C 活性層
2908 反射体
3001 基材
3004 光吸収層
3005と3002 透明伝導性酸化物(TCO)層
3007 金属リード
3010 エアーギャップ光空洞共振器
3102 反射体層
3103 空洞共振器
3104 光吸収層
3105 上部電極層
3107 金属リード
3110および3112 電気プローブ
3114 電圧計
3201 基材
3204a、3204b、および3204c 活性または吸収体層
3206 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力デバイスであって、
活性層であって、前記活性層によって光が吸収された結果として第1導電層と第2導電層との間に電気信号を発生するように構成されている活性層と、
前記活性層を透過した光を反射するように配設されている反射体層と、
前記活性層と前記反射体層との間にある光空洞共振器と、
前記活性層と前記第1導電層との間に電気的接続を設けるように構成されている少なくとも1つのビアと、
を備え、
前記光空洞共振器が、エアーギャップまたは誘電体材料を含み、
前記光空洞共振器が存在することで、前記活性層内の光の電界強度が増大し、
前記活性層が、前記光空洞共振器の第1側上に配設され、
前記第1導電層が、前記光空洞共振器の第2側上に配設される、光起電力デバイス。
【請求項2】
前記活性層が、半導体を含む請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項3】
前記活性層が、PN接合またはPIN接合を含む請求項2に記載の光起電力デバイス。
【請求項4】
前記反射体層が、80%より高い反射率を有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項5】
前記反射体層が、金属を含む請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項6】
前記反射体層が、アルミニウム、モリブデン、銀、及び金からなる群から選択された金属を含む請求項5に記載の光起電力デバイス。
【請求項7】
前記光起電力デバイスがいくつかの可視波長に対して部分的光透過性を有するような部分的反射性を前記反射体層が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項8】
前記光起電力デバイスがいくつかの赤外線または紫外線波長に対して部分的光透過性を有するような部分的反射性を前記反射体層が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項9】
前記光空洞共振器が、複数の層を備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項10】
前記光空洞共振器が、エアーギャップを備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項11】
前記光空洞共振器が、誘電体材料を備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項12】
前記光空洞共振器の厚さが、前記活性層内の光吸収を増大するように最適化された請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項13】
前記活性層の上に配設された反射防止層をさらに備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項14】
前記光空洞共振器が、約2000nm未満の厚さを有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項15】
前記活性層が、太陽スペクトル中の波長に対しある吸収効率を有し、前記太陽スペクトル中の前記波長にわたって積分された前記吸収効率が、前記光空洞共振器の存在下で少なくとも約5%だけ増大する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項16】
太陽スペクトル中の波長に対しある総合変換効率を有し、前記太陽スペクトル中の前記波長にわたって積分された前記総合変換効率が、前記光空洞共振器の存在下で少なくとも約15%だけ増大する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項17】
前記太陽スペクトル中の前記波長にわたって積分された前記総合変換効率が、前記光空洞共振器の存在下で少なくとも約20%だけ増大する請求項16に記載の光起電力デバイス。
【請求項18】
前記太陽スペクトル中の前記波長にわたって積分された前記総合変換効率が、前記光空洞共振器の存在下で少なくとも約25%だけ増大する請求項16に記載の光起電力デバイス。
【請求項19】
前記光空洞共振器が存在することで、前記光起電力デバイスが太陽スペクトルに曝された場合に前記活性層内の平均電界強度が少なくとも20%だけ増大する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項20】
前記光空洞共振器が存在することで、前記光起電力デバイスが太陽スペクトルに曝された場合に前記活性層内の平均電界強度が少なくとも25%だけ増大する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項21】
前記光空洞共振器が存在することで、前記光起電力デバイスが太陽スペクトルに曝された場合に前記活性層内の平均電界強度が少なくとも30%だけ増大する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項22】
前記光起電力デバイスが0.7より大きい太陽スペクトルにわたって積分された総合変換効率を有するような厚さを前記光空洞共振器が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項23】
前記光起電力デバイスが0.8より大きい太陽スペクトルにわたって積分された総合変換効率を有するような厚さを前記光空洞共振器が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項24】
前記光起電力デバイスが0.9より大きい太陽スペクトルにわたって積分された総合変換効率を有するような厚さを前記光空洞共振器が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項25】
前記光起電力デバイスが0.95より大きい太陽スペクトルにわたって積分された総合変換効率を有するような厚さを前記光空洞共振器が有する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の活性層と前記活性層を互いに分離する少なくとも1つの不活性層とをさらに備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項27】
前記少なくとも1つの不活性層が、少なくとも1つの光共振層を含む請求項26に記載の光起電力デバイス。
【請求項28】
少なくとも1つの追加の光共振層をさらに備える請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項29】
前記少なくとも1つの追加の光共振層が、前記活性層と前記反射体層との間に少なくとも1つの光空洞共振器を備える請求項28に記載の光起電力デバイス。
【請求項30】
前記光空洞共振器が存在することで、前記活性層の周りを囲む1つまたは複数の層内に吸収される光の量が減少する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項31】
前記光空洞共振器が存在することで、前記活性層内に電界共振が発生する請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項32】
前記光空洞共振器の存在によりもたらされる、前記活性層について太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加が、前記光起電力デバイス内の他の層について前記太陽スペクトルにわたって積分された平均電界強度の増加に比べて大きい請求項1に記載の光起電力デバイス。
【請求項33】
前記光空洞共振器が存在することで、前記反射体層の前方にあり、前記活性層の周りを囲む1つまたは複数の層内に吸収される光の量が減少する請求項1に記載の光起電力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図11J】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18A】
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【公開番号】特開2013−51426(P2013−51426A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−226768(P2012−226768)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2010−525980(P2010−525980)の分割
【原出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(508095337)クォルコム・メムズ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (133)
【Fターム(参考)】