説明

平板屋根材

【課題】容易に重ね葺き施工することができると共に水の浸入も防ぎやすくすることのできる平板屋根材を提供する。
【解決手段】屋根30の傾斜方向で重ね葺きされ、曝露部6と非曝露部7とを有する。前記傾斜方向で隣接する平板屋根材1のうち、前記傾斜方向で下側に位置する平板屋根材1の非曝露部7の上に、前記傾斜方向で上側に位置する平板屋根材1の曝露部6が重ねられる。前記非曝露部7には固定具3を打入するための固定用穴4と、前記固定用穴4よりもさらに上側の位置に前記固定具3を打入するための逃げ穴10とが、それぞれ少なくとも一個以上形成される。前記逃げ穴10の開口面積は前記固定用穴4の開口面積以上に形成される。前記傾斜方向で上側に位置する平板屋根材1の非曝露部7の固定用穴4と、傾斜方向で下側に位置する平板屋根材1の非曝露部7の逃げ穴10とが互いに重なって位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等の屋根上に葺かれる平板屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等の建物の屋根30を形成するために使用される平板屋根材1は、図3に示すように、野地板(図示は省略)の軒側(傾斜方向下側)から棟側(傾斜方向上側)に向かって、順次ラップするように重ね葺きされて施工される。この場合、平板屋根材1を野地板に連結させるために、釘やビス等の固定具3を釘穴40に打入させている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように平板屋根材1を重ね葺き施工した場合、傾斜方向と直交する方向(平板屋根材1の左右方向)では、隣り合う平板屋根材1どうしの側端面が突き合わされて、図3(a)に示すように、突き合せ部35が形成されている(図では中段の平板屋根材1b、1bとの境界部)。この突き合せ部35には、毛管現象により雨水等の水が浸入してしまうことがあり、浸入した水は突き合せ部35を棟側方向につたって進行し、平板屋根材1の下側の野地板に水が到達してしまうことがあった(図3(b)の矢印)。あるいは、上下の平板屋根材1b、1cの重なり面の隙間から水が浸入することもあり、この場合、水が釘穴40まで到達し、その釘穴40から野地板へ流れ出てしまうこともあった。このように水が平板屋根材1の下方に配設されている野地板に浸入してしまうと、野地板を損傷させたり、雨漏りの原因となってしまったりすることがあった。
【0005】
突き合せ部35に浸入した水を平板屋根材1下側の野地板等への到達するのを防ぐには、例えば、平板屋根材1の厚みが5mmである場合、通常、上段の平板屋根材1cと、下段の平板屋根材1aとの軒棟方向の重なり長さ(図3(a)のLで表示)が50mm程度あれば充分である。しかし、強風地域などでは耐風性を高めるために、平板屋根材1を5mmを超える厚みのものにする必要があり、この場合では、重なり長さLが50mm程度では、傾斜角度によっては水が野地板に到達するのを防ぐことはできないこともあった。
【0006】
上記重なり長さLを長くするために、例えば、平板屋根材1を軒棟方向に長くしたものを使用することが考えられる。しかし、平板屋根材1を棟側に長くすると、平板屋根材1(1b)の釘穴40に打入された固定具3は、傾斜方向で下側の平板屋根材1(1a)も貫通することになるので、この場合、厚い平板屋根材1では固定具3を打入しにくくなったり、平板屋根材1が損傷したりすることがあった。逆に、平板屋根材1を軒側に長くすると、強風地域等では平板屋根材1が強風によりめくり上がってしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、容易に重ね葺き施工することができると共に水の浸入も防ぎやすくすることのできる平板屋根材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る平板屋根材は、屋根の傾斜方向で重ね葺きされる平板屋根材において、前記平板屋根材は曝露部と非曝露部とを有し、屋根の傾斜方向で隣接する平板屋根材のうち、前記傾斜方向で下側に位置する平板屋根材の非曝露部の上に、前記傾斜方向で上側に位置する平板屋根材の曝露部が重ねられるようにして施工される平板屋根材であり、前記非曝露部には固定具を打入するための固定用穴と、前記固定用穴よりもさらに上側の位置に前記固定具を打入するための逃げ穴とが、それぞれ少なくとも一個以上形成されており、前記逃げ穴の開口面積は前記固定用穴の開口面積以上に形成されており、重ね葺き施工したときに傾斜方向で上側に位置する平板屋根材の前記固定用穴と、前記傾斜方向で下側に位置する平板屋根材の前記逃げ穴とが互いに重なって位置するように前記逃げ穴が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記逃げ穴は長穴状に形成されると共に前記傾斜方向の上側端面で開口していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の平板屋根材は、容易に重ね葺き施工することができると共に水の浸入も防ぎやすくすることのできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の平板屋根材の実施の形態の一例を示し、(a)はその平面図、(b)はその施工状態を示す平面図、(c)はその施工状態を示す側面視断面図である。
【図2】本発明の平板屋根材の他の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図3】従来例の平板屋根材の施工状態を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
本発明の平板屋根材1は、図1(a)に示すように、平面視略矩形状で幅広の平板状に形成されるものであり、平板屋根材1の上片は棟側端部2a、下片は軒側端部2bとして形成されている。尚、平板屋根材1の形状は平面視略矩形状に限らず、その他の形状であっても良い。
【0014】
そして、平板屋根材1は屋根30の傾斜方向に沿って重ね葺きされるものであり、具体的には、図1(b)に示すように、傾斜方向の下側である軒側から、傾斜方向の上側である棟側に向かって上下に隣接させながら重ね葺きされて施工され、屋根30が形成される。この場合、平板屋根材1において棟側端部2aが傾斜方向の上側(棟側)、軒側端部2bが傾斜方向の下側(軒側)に位置するものとなる。尚、通常、平板屋根材1は野地板等の表面に重ね葺きされていくものであるが、図では省略している。
【0015】
そして、傾斜方向と直交する方向(平板屋根材1の左右方向)では、左右に隣り合う平板屋根材1、1の側端面どうしが突き合わされて突き合せ部35が形成されながら、左右方向に敷き詰められている。
【0016】
また、平板屋根材1は、曝露部6と、非曝露部7とを有するものである。曝露部6は、平板屋根材1が重ね葺きされたときに外部に露出している部分であり、非曝露部7は、平板屋根材1が重ね葺きされたときに重ね合わされて下側に位置し、外部には露出しない部分である。平板屋根材1において、曝露部6は、非曝露部7よりも下側(軒側)に位置している。
【0017】
屋根30の傾斜方向(以下、軒棟方向という)で隣接する平板屋根材1、1に着目すると、この場合、軒側に配置されている平板屋根材1の非曝露部7に、棟側に配置されている平板屋根材1が重ねられている。そして、その棟側に配置されている平板屋根材1の曝露部6は、軒側に配置されている平板屋根材1の非曝露部7の上面に位置するものとなっている。
【0018】
平板屋根材1の非曝露部7には、図1(a)のように少なくとも一個以上の固定用穴4が形成されており、これら固定用穴4は、平板屋根材1を野地板等に固定するための固定具3を打入することができるようになっている。固定具3は、例えば、釘、ビス、ねじ、通しボルト等を使用することができる。
【0019】
さらに、平板屋根材1の非曝露部7には、少なくとも一個以上の逃げ穴10が、固定用穴4よりもさらに棟側の位置に形成されており、固定用穴4と同様に固定具3を打入することができるようになっている。尚、固定用穴4及び逃げ穴10はいずれも貫通であっても、半貫通であっても良い。
【0020】
本発明の平板屋根材1では、逃げ穴10の開口面積は、固定用穴4の開口面積以上の大きさで形成されているものである。従って、逃げ穴10及び固定用穴4の開口面が円形状の場合は、逃げ穴10の直径は、固定用穴4の直径以上の長さに形成されている。
【0021】
固定用穴4及び逃げ穴10は、上記のように、平板屋根材1にそれぞれ一個以上設けられるものである。固定用穴4及び逃げ穴10の個数の上限については特に限定されるものではないが、それぞれ4個以下であることが好ましく、この範囲であれば施工に手間がかかってしまうようなことはない。固定用穴4及び逃げ穴10が複数個形成されている場合は、平板屋根材1の水平方向に略同一直線上に形成されていることが好ましく、この場合、平板屋根材1の施工状態をより安定させることができる。
【0022】
そして、平板屋根材1を重ね葺きしたときに軒棟方向で隣接する平板屋根材1、1のうち、軒側(下方)に配置されている平板屋根材1の逃げ穴10が、棟側(上方)に配置されている平板屋根材1の固定用穴4と、上下方向に重なって位置するように、逃げ穴10は形成されている。
【0023】
従って、図1(c)に示すように、平板屋根材1の重ね葺き施工においては、棟側(上方)に配置されている平板屋根材1(1b)の固定用穴4に固定具3を打入させて貫通させると、この固定具3はさらに、下方の平板屋根材1(1a)の逃げ穴10を貫通し、野地板に挿入されることになる(図1(b)では固定具3を省略して示している)。
【0024】
上記のように、本発明の平板屋根材1では、重ね葺き施工したときに、上方の平板屋根材1の固定用穴4が下方の平板屋根材の逃げ穴10と上下に重なるように形成されているので、重なり長さLを長くすることが可能となる。ここで、重なり長さLとは、三段葺き施工された平板屋根材1のうちの上段の平板屋根材1cの軒側端部2bと下段の平板屋根材1aの棟側端部2aとの軒棟方向に重なり合う距離のことを示す。
【0025】
従来、重なり長さLを長くしてしまうと、固定具3を中段の平板屋根材1bに打入したときに、その下側の平板屋根材1aも貫通しなければならなかった。しかし、従来の平板屋根材1では、それに対応する逃げ穴10が形成されていなかったので、新たに貫通する穴を形成させながら固定具3を打入しなければならず、施工性に問題があるものであった。一方、本発明の平板屋根材1では、上方の平板屋根材1の固定用穴4と下方の平板屋根材の逃げ穴10とが上下に重なるように形成されているものである。そのため、固定具3を中段の平板屋根材1bに打入したときに、逃げ穴10により、その下側の平板屋根材1aも容易に貫通することができる。しかも、固定具3の打入において下側の平板屋根材1aに新たに貫通穴が形成されてしまうこともないので、たとえ厚みの大きい平板屋根材1であっても、その損傷を抑制することもできる。
【0026】
従って、平板屋根材1を棟側方向に長くすることが可能となり、図1(c)に示すように、下段の平板屋根材1aの棟側端部2aを上方の固定具3よりも棟側に延伸させることが可能となる。具体的には、従来、重なり長さLは50mm程度が限界であったが、本発明の平板屋根材1の場合では、上記のような構成にしたことで、重なり長さLを50mm以上、例えば、60mmまで大きくすることができるものである。そして、このように平板屋根材1を棟側方向に長くしたとしても、固定用穴4の形成位置は変える必要はない。
【0027】
上記のように、本発明の平板屋根材1では、重なり長さLを大きくすることができるので、突き合せ部35や、上下の平板屋根材1、1の重ね合わせ部分から雨水等の水が浸入したとしても、平板屋根材1の下側の野地板への到達を防止しやすくなる。すなわち、突き合せ部35等に水が浸入しても、重なり長さLが大きい分、水が平板屋根材1の下側の野地板に到達せず、途中で水の進行が止まるのである。例えば、平板屋根材1の厚みが、6mmである場合、屋根勾配が2.5寸では重なり長さLが60mm以上であることが好ましく、この場合、野地板への水の到達を防止することがより効果的になる。ここで、屋根勾配と1寸とは、建物の水平方向の1尺(約303mm)に対し、高さ(建物の垂直方向)1寸(約30.3mm)が張る角度のことを示す。
【0028】
また、本発明の平板屋根材1を重ね葺き施工する場合、図1(c)に示すように、中段の平板屋根材1bの固定用穴4に固定具3を打入すると、その固定具3は、必ず下段の平板屋根材1bの逃げ穴10を貫通するようになっている。このように、平板屋根材1に固定具3を貫通しても、その平板屋根材1の下側には必ず他の平板屋根材1があるので、重ね葺き施工時に、固定具3が打入された平板屋根材1を打ち抜いてしまうことを防止することもできる。従って、平板屋根材1を必要以上に損傷させることなく、平板屋根材1を重ね葺き施することが可能となるものである。
【0029】
さらに、上方の平板屋根材1の固定用穴4が下方の平板屋根材1の逃げ穴10と上下に重なるように形成されているので、固定用穴4に固定具3を打入した場合に、固定具3を平板屋根材1に対して略垂直に真っ直ぐ打入しやすくなる。
【0030】
特に、上述のように逃げ穴10の開口面積は、固定用穴4の開口面積以上の大きさで形成されているので、例えば、中段の平板屋根材1bの配設位置が、正確な位置から多少ずれてしまったとしても、逃げ穴10の一部と固定用穴4とは上下に重なった状態になり得る。そのため、固定用穴4に固定具3を打入すれば、下方の平板屋根材の逃げ穴10を貫通することができるので、上下の平板屋根材1、1はおのずと位置調整されることになる。従って、平板屋根材1を重ね葺きする際に、厳密に正確な位置に配設する必要性も小さくなるので、施工がより容易になり、施工時間短縮も可能となる。
【0031】
平板屋根材1において、逃げ穴10は、図2に示すように、傾斜方向に長くなるような長穴状に形成されると共に平板屋根材1の傾斜方向の上側端面(棟側端部2a)で開口するように形成されていても良い。具体的には、平板屋根材1の棟側端部2aから切り込み溝が形成されて、その切り込み溝が逃げ穴10と連結して、切り込み11を形成するものである。
【0032】
上記のように逃げ穴10を切り込み11として形成した場合、下段の平板屋根材1の配設位置が軒側方向に多少ずれた状態であっても良く、この場合、固定具3を打入してから、平板屋根材1の位置を微調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 平板屋根材
3 固定具
4 固定用穴
6 曝露部
7 非曝露部
10 逃げ穴
11 切り込み
30 屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の傾斜方向で重ね葺きされる平板屋根材において、前記平板屋根材は曝露部と非曝露部とを有し、屋根の傾斜方向で隣接する平板屋根材のうち、前記傾斜方向で下側に位置する平板屋根材の非曝露部の上に、前記傾斜方向で上側に位置する平板屋根材の曝露部が重ねられるようにして施工される平板屋根材であり、
前記非曝露部には固定具を打入するための固定用穴と、前記固定用穴よりもさらに上側の位置に前記固定具を打入するための逃げ穴とが、それぞれ少なくとも一個以上形成されており、前記逃げ穴の開口面積は前記固定用穴の開口面積以上に形成されており、
重ね葺き施工したときに傾斜方向で上側に位置する平板屋根材の前記固定用穴と、前記傾斜方向で下側に位置する平板屋根材の前記逃げ穴とが互いに重なって位置するように前記逃げ穴が形成されていることを特徴とする平板屋根材。
【請求項2】
前記逃げ穴は長穴状に形成されると共に前記傾斜方向の上側端面で開口していることを特徴とする請求項1に記載の平板屋根材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246708(P2012−246708A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120610(P2011−120610)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)