説明

平版印刷版の製版方法

【目的】 自動現像機を用い、現像補充液を補充して繰り返し使用する珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液で、光重合性層を有する感光性平版印刷版を現像しても、長期間にわたり現像液中に光重合性層の析出物や寒天状のゲルが析出しない。
【構成】 光重合性層を有する感光性平版印刷版を、珪酸アルカリを含む現像液で現像し、現像液の繰り返し使用による現像性の劣化を珪酸アルカリを含む現像補充液を補充することにより補償し、該現像液及び/又は該現像補充液に両性界面活性剤を含有させて平版印刷版を製版する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光重合性層を有する感光性平版印刷版を自動現像機を用い、珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液で現像する平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、印刷版を現像するために様々な方法が提案され、利用されている。例えば、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の有機溶剤を用いて印刷版の非画像部を除去する方法、あるいは燐酸三ナトリウム、アルカリ金属塩などの無機アルカリ化合物を用いて、同様に非画像部を溶解除去する方法などが知られていた。しかしながら、前者は有機溶剤が比較的高価であり、また現像中に画像部の一部が溶解除去されてしまい、非画像部−画像部間の十分なコントラストを確保し得ないという問題を有している。一方、後者の方法に於いても、燐酸三ナトリウムでは感光層を設けた支持体が侵食されるおそれがあり、特にこの種の支持体がアルミニウム製であることを考慮すれば、重大な問題となってくる。
【0003】一方、感光性平版印刷版は高感度化が望まれ、従来最も一般的であったo−キノンジアジド化合物からなるポジ型感光性平版印刷版やジアゾ化合物を感光成分とするネガ型感光性平版印刷版のほかに、光遊離基発生剤とエチレン性不飽和化合物との組合せによる遊離基反応で潜像形成をするタイプの光重合性感光性平版印刷版が検討されている。
【0004】この方法においては、珪酸アルカリ水溶液を用いて、画像露光済みの光重合性層を有する感光性平版印刷版を現像した場合、高感度の優れた平版印刷版を得ることができる。しかしながら、自動現像機を用いて現像補充液を補充して繰り返し使用する方法で、多数の平版印刷版の現像処理を繰り返した場合、自動現像機の現像液中で溶出した光重合性層が析出することがわかった。
【0005】また、上記遊離基反応で潜像形成するタイプの感光性平版印刷版は、一般的に優れた感度を有するものの酸素によって遊離基反応が阻害されるという欠点を有しているために、何等かの酸素遮断層を感光層上に設けることが有効であり、このような酸素遮断層としてポリビニルアルコールを主成分とするものが有効であることが知られている。しかしながら、ポリビニルアルコールを主成分とする酸素遮断層を感光層上に設けた感光性平版印刷版を自動現像機を用いて現像補充液を補充して繰り返し使用する方法で同様の処理を繰り返した場合、自動現像機の現像液中で寒天状のゲルが析出することもわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】したがって、本発明の目的は、自動現像機を用い、現像補充液を補充して繰り返し使用する珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液で、光重合性層を有する感光性平版印刷版を現像する方法で、長期間にわたり現像液中に光重合性層の析出物や寒天状のゲルが析出しない感光性平版印刷版の現像処理方法を提供することである。
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、種々検討した結果、本発明に至った。即ち本発明は、光重合性層を有する感光性平版印刷版を、珪酸アルカリを含む現像液で現像し、現像液の繰り返し使用による現像性の劣化を珪酸アルカリを含む現像補充液を補充することにより補償する方法であって、該現像液及び該現像補充液の少なくともいずれか一方が両性界面活性剤を含有することを特徴とする平版印刷版の製版方法である。
【0008】本発明に用いる珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液及びその補充液に含まれる両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、アラニン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤のいずれを用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。ベタイン型両性界面活性剤は一般的に下記式(1)で示される構造を分子中に有している。
【0009】
【化1】


【0010】具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0011】
【化2】


【0012】グリシン型両性界面活性剤は一般的に下記式(2)で示される構造を分子中に有している。
−NH-CH2-COOH (2)
具体的には、例えば下記のような一般的にTEGOと呼ばれる1群の両性石鹸が挙げられる。
【0013】
【化3】


【0014】アラニン型両性界面活性剤は一般的に下記式(3)で示される構造を分子中に有しており、アルキルアミンとアクリル酸エステルの付加反応物を加水分解して生成したアルキルアラニンもしくはその塩が一般的である。
−NH−CH2-CH2-COOH (3)
【0015】これらの両性界面活性剤の中で最も好ましく用いられるのはアラニン型両性界面活性剤の1群であり、具体例としては、N−オクトデシル−β−アラニン(ナトリウム塩)、N−ミスチリル−β−アラニン(ナトリウム塩)、ラウリルアミノプロピオン酸(ナトリウム塩)、リポミンLA(ライオン(株)製)が挙げられる。また、現像液又は現像補充液における両性界面活性剤の添加量は、好ましくは0.05〜10重量%、更に好ましくは0.03〜5重量%である。
【0016】本発明に用いる珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液及びその補充液に含まれるアルカリ剤としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリの他に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸カリウム、第二燐酸カリウム、第三燐酸アンモニウム、第二燐酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機アルカリ剤、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン等の有機アミン化合物を用いることができる。
【0017】本発明に用いる珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液及びその補充液は、有機溶剤を含まないことが好ましいが、必要ならば以下の溶剤を5重量%以下含有してもよい。例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、レブリン酸ブチルのようなカルボン酸エステル;エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール、のようなアルコール類;キシレンのようなアルキル置換芳香族炭化水素類;メチレンジクロライド、エチレンジクロライドのようなハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これら有機溶剤は1種以上用いてもよい。
【0018】本発明に用いる珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液及びその補充液は、必要に応じてノニオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤を併用することができる。
【0019】このようなノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、アルキルアルカノールアミド類等が挙げられる。
【0020】アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類(例えば、混合脂肪酸ソーダ石鹸、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石鹸、ステアリン酸ソーダ石鹸、半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ひまし油カリ石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩類(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等)、アルキルベンゼンスルフォン酸塩類(例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム等)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩類(例えば、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム等)、アルキルスルホコハク酸塩類(例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩類(例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等)、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル(アルキルアリール)硫酸エステル塩類、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の含有量は一般的には10%未満であるが、好ましくは、5%未満、さらに好ましくは1%未満である。
【0021】本発明に用いる珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液及びその補充液は、必要に応じて消泡剤を含有することができる。この消泡剤は、現像及びそれ以降の処理に於て用いられる処理液の泡立ちを抑制する目的によって選択されるので、処理液の性状によって種々の物を選ぶことができるが、シリコーン消泡剤が特に優れている。ここで好ましく用いられるシリコーン消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル(粘度10〜300,000cSt)、アルキル変性シリコーンオイル、シリコーンポリエーテル共重合体等を挙げることができるが、これらは通常オイル、溶液、エマルジョン、オイルコンパウンドとして市販されており、容易に入手することができる。これらの中で1種もしくは2種以上を併用することができる。消泡剤の含有量としては、10%未満が好ましいが、さらに好ましくは、1%未満である。抑泡効果の持続を目的として、一般的には現像液よりもその補充液の方により高濃度の消泡剤を含有させるが、単に液製造時及び輸送時の消泡・抑泡を目的とする場合は、もちろんその限りではない。
【0022】本発明に用いる自動現像機は、好ましくは現像浴に自動的に補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知をもとに版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知および/または処理面積の推定をもとに補充しようとする補充液および/または水の補充量および/または補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpHおよび/または電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpHおよび/または電導度をもとに補充しようとする補充液および/または水の補充量および/または補充タイミングを制御する機構が付与されている。
【0023】本発明に用いる自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25℃〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されている。またこの前処理液としては、水などが用いられる。
【0024】本発明の現像方法が対象とする光重合性層を有する感光性平版印刷版は、基本的には支持体としての陽極酸化被膜を有するアルミ板上に、少なくとも重合可能な不飽和基を有する重合可能な化合物および光重合開始剤を含有する感光層を有するものである。好適なアルミニウム板には、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が含まれ、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムも含まれる。このようなアルミニウム板の表面には陽極酸化処理して酸化アルミニウム被膜が設けられるが、その前に砂目立て処理を施してもよく、また特公昭47−5125号公報に記載されている様にアルミニウム板を陽極酸化した後に、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、ほう酸等の無機酸、もしくは、蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはこれらの塩の水溶液または該水溶液の単独または二種以上を組み合わせた電界液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。更には米国特許第4,087,341号明細書、特公昭46−27481号公報、特開昭52−30503号公報に開示されているような電界グレインを施した支持体を上記のように陽極酸化処理したものも有用である。更に、米国特許第3,834,998号明細書にしるされているような砂目立てした後に化学的にエッチングし、しかるのちに陽極酸化処理したアルミニウム板も好ましい。これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光性組成物との有害な反応を防ぐため、更には感光層との密着性を向上させるためなどの種々の目的をもって施されるものである。
【0025】更にこれらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばほう酸亜鉛)、もしくは黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。また上記の陽極酸化処理を施したアルミニウム板上に、アリル基及びアルコキシ基を含有する付加反応性官能基を結合した支持体も有用である。
【0026】該基板上に、設けられる感光層は少なくとも重合性不飽和結合を有する重合可能な化合物と光重合開始剤とからなり、少なくとも重合性不飽和結合を有する重合可能な化合物としては末端エチレン性不飽和結合を少なくとも一個、好ましくは二個以上有する化合物から選ばれる。例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマーまたはそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものである。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0027】脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0028】メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0029】イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトラメタクリレート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物もあげることができる。
【0030】また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスーアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加した1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等があげられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R′)OH (A)
(ただし、RおよびR′はHあるいはCH3を示す。)
【0031】また、特開昭51−37193号に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらの成分(i)の使用量は、光重合性組成物の全成分に対して5〜90重量%(以下%と略称する。)、好ましくは10〜70%、より好ましくは15〜50%である。
【0032】光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、トリハロメチルトリアジン化合物、ケトオキシムエステルなど、また、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばロ−ズベンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは、染料と開始剤との組合せによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号など)、へキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤および染料の系(特公昭45−37377号など)、へキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号など)、染料と有機過酸化物の系(特公昭62−1641号、特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、米国特許第4,766,055号、特開昭62−174203号など)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭54−15102号、特開昭58−15503号、特開昭63−178105号、特開昭63−258903号、特開平2−63054号など)、染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開昭64−72150号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号、特開平2−179643号、特開平2−244050号など)などが挙げられる。
【0033】感光層の成分としてはこの他、バインダーとしての線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体などがある。また側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体もあげられる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなども有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度をあげるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0034】これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量で混和させることができる。しかし90%を越える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは10〜90%、より好ましくは30〜80である。また光重合可能なエチレン性不飽和化合物と線状有機高分子重合体は、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は3/7〜5/5である。
【0035】本発明の現像方法が対象とする光重合性層を有する感光性平版印刷版は、感光層上に活性光線に透明な酸素遮断性の層としてポリビニルアルコールが好適に用いられる。該酸素遮断性層の厚みは、0.1μm以上100μm以下が適当であるが。好ましくは0.5μm以上10μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下である。また該酸素遮断層は、現像処理に先立ってはぎ取るか、処理液に溶解させて除去することもできるが、現像処理と同時に現像液中に溶解させ除去することもできる。
【0036】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する。
【0037】実施例1厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの懸濁液とを用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄し、ついで水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μ(Ra表示)であった。引き続いて30%の硝酸水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%硝酸水溶液中、電流密度2A/dm2において陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように2分間陽極酸化処理した。
【0038】このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の感光性組成物を乾燥塗布重量が1.4g/m2となるように塗布し、80℃2分間乾燥させ感光層を形成させた。
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.5g アリルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体(8:2)
(共重合モル比) 2.0g 下記化合物(A) 0.53g 下記化合物(B) 0.12g 下記化合物(C) 0.22g フッ素系ノニオン界面活性剤 0.03g メチルエチルケトン 20g プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20g
【0039】
【化4】


【0040】この感光層上にポリビニルアルコール(鹸化度86.5〜89モル%、重合度1000)の3重量%の水溶液を乾燥塗布重量が2g/m2となるように塗布し、100℃/2分間乾燥させた。このようにして作成した感光性平版印刷版を画像上に露光し、表1の組成の現像液を富士写真フイルム社製自動現像機「PS850PXB」の第一浴に仕込み、第二浴を水洗浴とし、1m2当たり表1の組成の補充液を100cc補充しながら現像処理したところ、1000m2処理しても良好な画像の刷版が得られ、現像液に沈殿が発生することもなかった。
【0041】比較例1実施例1に於いて、現像液として表1の組成の液を用い、補充液として表1の組成の液を用い1000m2処理したところ現像液に沈殿が発生しフィルタの目詰まりで現像液が循環しなくなった。
【0042】実施例2実施例1で作成した光重合性層を塗設した板上にポリビニルアルコールを塗設する代わりに、PETフィルム(厚さ6ミクロン)を張り合わせた感光性印刷版を作成した。この感光性印刷版を実施例1と同様に露光及び現像したところ、1000m2処理しても現像液に沈殿が発生することがなかった。
【0043】比較例2実施例2で作成した感光性印刷版を比較例1と同様に露光及び現像したところ、1000m2処理した時点で、現像浴底に沈殿が堆積しゲル化していた。
【0044】
【表1】


【0045】
【発明の効果】本発明によれば、光重合性層を有する感光性平版印刷版を、自動現像機を用い、現像補充液を補充して繰り返し使用する珪酸アルカリを含むアルカリ性現像液で現像しても、長期間にわたり現像液中に光重合性層や寒天状のゲルが析出せず、良好な画像の刷版が安定して得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光重合性層を有する感光性平版印刷版を、珪酸アルカリを含む現像液で現像し、現像液の繰り返し使用による現像性の劣化を珪酸アルカリを含む現像補充液を補充することにより補償する方法であって、該現像液及び該現像補充液の少なくともいずれか一方が両性界面活性剤を含有することを特徴とする平版印刷版の製版方法。