説明

平版印刷版の製造方法

【課題】 検版性に優れた刷版を得る。
【解決手段】 基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版を製版する際に、染色することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な感光性平版印刷版の実用特性の改良、特に検版性に優れる平版印刷版の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本発明は基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた新規な感光性平版印刷版を用いた平版印刷版の製造方法に関するものである。
【0003】この新規な感光性平版印刷版は通常、露光・現像して印刷版を形成するが、この印刷版はインキ着肉部である画線部とインキ反撥部である非画線部の画像が判別しにくく、オリジナル画像が再現されているか確認することが困難である、現像の終点を確認することが困難である、修正作業が困難である、いわゆる検版性が悪いという問題があった。さらに刷版画像面積読取り計を使用して印刷の際の適正なインクの供給量を調べることが困難であるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版を製版する際に、検版性を付与することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、以下の構成を有する。
【0006】(1) 基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製造する方法において、版を染色する工程を有することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【0007】(2) 該感光性平版印刷版原版の露光後に非画線部を染色することを特徴とする(1) 記載の平版印刷版の製造方法。
【0008】(3) 該感光性平版印刷版原版の露光後に画線部を染色することを特徴とする(1) 記載の平版印刷版の製造方法。
【0009】(4) 少なくともλmax(水)が500〜700nmの吸収波長を有する染料を用いて染色することを特徴とする(1) 記載の平版印刷版の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版について説明する。
【0011】かかる親水性膨潤層について説明する。
【0012】本発明に言う親水性とは、水に対して実質的に不溶でかつ水膨潤性を示す性質を意味し、公知の親水性ポリマを基板上に塗布または転写などにより積層し、公知の方法を用いて架橋または疑似架橋し、水に不溶化せしめて水膨潤性とした親水性膨潤層が好ましく用いられる。
【0013】ここで言う親水性ポリマとは、公知の水溶性ポリマ(水に完全溶解するものを意味する)、疑似水溶性ポリマ(両親媒性を意味し、マクロには水に溶解するがミクロには非溶解部分を含むものを意味する)、水膨潤性ポリマ(水に膨潤するが溶解しないものを意味する)を意味する。すなわち、通常の使用条件下で水を吸着または吸収するポリマを意味し、水に溶けるか或いは水に膨潤するポリマを意味する。
【0014】本発明において親水性ポリマとしては公知のものを使用することができ、動物系ポリマ、植物系ポリマ、合成系ポリマがある。例えば「FunctionalMonomers」(Y.Nyquist著、Dekker)、「水溶性高分子」(中村著、化学工業社)、「水溶性高分子 水分散型樹脂の最新加工・改質技術と用途開発 総合技術資料集」(経営開発センター出版部)、 「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(シーエムシー)などに記載の親水性ポリマが挙げられる。
【0015】本発明の効果を有効に発現する親水性ポリマとしては、カルボン酸塩系共重合体が挙げられる。
【0016】本発明に好ましく用いられるカルボン酸塩系共重合体としては、吸水性および耐久性の観点から、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸イミド、カルボン酸無水物などのカルボキシル基またはカルボキシル基に誘導しうる基を分子中に1個または2個有するα、β−不飽和化合物をモノマ成分として含有するカルボン酸系共重合体のケン化反応物が挙げられる。
【0017】α、β−不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸などが挙げられ、本発明に必要な親水性を示す範囲で共重合可能な他のモノマ成分と組合わせることが可能である。
【0018】共重合可能な他のモノマ成分の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブチレン、ジイソブチレン、メチルビニルエーテル、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのα−オレフィン、ビニル化合物、ビニリデン化合物などが挙げられる。
【0019】他のモノマと組合わせる場合、カルボキシル基もしくはこれに転化しうる基を含有するα、β−不飽和化合物は、通常全モノマ成分中10モル%以上で、40モル%以上であることがより好ましい。
【0020】カルボキシル基またはこれに転化しうる基を含有するα、β−不飽和化合物をモノマとして含有する重合体は、通常ラジカル重合により調整される。重合度は特に限定されるものではない。
【0021】このように調整される該重合体の中でも特に、アクリル酸、メタクリル酸との重合体または共重合体、α−オレフィン、ビニル化合物と無水マレイン酸との共重合体が好ましい。
【0022】これらの重合体または共重合体は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩などの化合物、アンモニア、アミンなどを用いてケン化反応させることによる親水性付与が好ましく行なわれる。これらの反応は、該重合体または該共重合体を各種の有機溶媒または水に溶解または分散させ、そこに前記したアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニア、アミンなどを撹拌下に添加することによって実施される。
【0023】このようなカルボン酸塩系共重合体の中でも、特にビニルエステル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、親水性膨潤層が適度な水膨潤性を示し、かつ印刷耐久性およびインキ反撥性の両者を満足させる点で好ましい。
【0024】また、本発明の効果を有効に発現する親水性ポリマとして、N−ビニルカルボン酸アミド系共重合体が挙げられる。
【0025】N−ビニルカルボン酸アミド系共重合体とは、下記一般式(I)で示されるN−ビニルカルボン酸アミド(以下、NVAと略す)を必須の繰り返し単位とする共重合体(以下、NVA系共重合体と略する)を意味する。
【0026】
【化1】


(ここで、R1 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R2 は水素原子またはメチル基、フェニル基、R3 は水素原子または炭素数1〜8の直鎖または分岐アルキル基を表す。)
NVAの具体例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルプロピオン酸アミド、N−ビニル安息香酸アミド、N−メチル−N−ビニル安息香酸アミド、N−フェニル−N−ビニルアセトアミド、N−フェニル−N−ビニル安息香酸アミドなどが挙げられるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0027】本発明に好ましく用いられるNVA共重合体は、吸水性および耐久性の観点から、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸イミド、カルボン酸無水物などのカルボキシル基またはカルボキシル基に誘導しうる基を分子中に1個または2個有するα、β−不飽和化合物を共重合単位として含有することが好ましい。
【0028】α、β−不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸などが挙げられ、本発明に必要な親水性を示す範囲で共重合可能な他のモノマ成分と組合わせることが可能である。
【0029】共重合可能な他のモノマ成分の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブチレン、ジイソブチレン、メチルビニルエーテル、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのα−オレフィン、ビニル化合物、ビニリデン化合物などが挙げられる。
【0030】他のモノマと組合わせる場合、NVA単位は、通常全モノマ成分中10モル%以上で、40モル%以上であることがより好ましい。
【0031】NVAを含有する重合体は、通常ラジカル重合により調製される。重合度は特に限定されるものではない。
【0032】このように調製される該重合体の中でも特に、NVAとアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などカルボン酸塩系の共重合体は、親水性膨潤層が適度な水膨潤性を示し、かつ印刷耐久性およびインキ反発性の両者を満足させる点から好ましい。
【0033】本発明の親水性膨潤層には発明の効果を損わない範囲で公知の親水性ポリマを加えることが可能である。公知の親水性ポリマとしては、以下の例を挙げることができる。
【0034】(A)天然高分子類デンプン−アクリロニトリル系グラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸系グラフト重合体、デンプン−スチレンスルフォン酸系グラフト重合体、デンプン−ビニルスルフォン酸系グラフト重合体、デンプン−アクリルアミド系グラフト重合体、カルボキシル化メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサントゲン酸セルロース、セルロース−アクリロニトリル系グラフト重合体、セルロース−スチレンスルフォン酸系グラフト重合体、カルボキシメチルセルロース系架橋体、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン、ミルクカゼイン、酸カゼイン、レンネットカゼイン、アンモニアカゼイン、カリ化カゼイン、ホウ砂カゼイン、グルー、ゼラチン、グルテン、大豆蛋白、アルギン酸塩、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウムアラビヤガム、トラガカントガム、カラヤガム、グアールガム、ロカストビーンガム、アイリッシュモス、大豆レシチン、ペクチン酸、澱粉、カルボキシル化澱粉、寒天、デキストリン、マンナンなど。
【0035】(B)合成高分子類ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリ(エチレンオキサイド-co-プロピレンオキサイド)、水性ウレタン樹脂、水溶性ポリエステル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、アクリル系コポリマ、アクリルエマルジョンコポリマ、ポリビニルアルコール系架橋重合体、ポリアクリル酸ナトリウム系架橋体、ポリアクリロニトリリル系重合体ケン化物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート系ポリマ(以下の説明で(メタ)□□□□とあるのは、□□□□またはメタ□□□□を略したものである。)、ポリ(ビニルメチルエーテル-co-無水マレイン酸)、無水マレイン酸系共重合体、ビニルピロリドン系共重合体、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート系架橋重合体、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート系架橋重合体など。
【0036】なお、上記の親水性化合物には発明の効果が変化しない範囲で、柔軟性を付与したり、親水性を制御する目的から置換基が異なるモノマや共重合成分を含むことが可能である。
【0037】次に親水性ポリマの架橋方法について説明する。
【0038】親水性膨潤層は上記の親水性ポリマの少なくとも1種以上を必要に応じて架橋または疑似架橋し、水に不溶化せしめることによって基板上に積層形成される。通常、架橋反応は、親水性ポリマの有する反応性官能基を利用して三次元架橋反応することにより行なわれる。
【0039】架橋反応は、共有結合性の架橋であっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0040】架橋反応に用いられる化合物としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリ(メタ)アクリル化合物、ポリメルカプト化合物、ポリアルコキシシリル化合物、多価金属塩化合物、ポリアミン化合物、アルデヒド化合物、ポリビニル化合物などが挙げられ、該架橋反応は公知の触媒を添加し、反応を促進することが行なわれる。
【0041】これらの親水性ポリマは、該親水性膨潤層の形態保持や水膨潤性の調整などの目的から単体または2種以上の混合物として用いることが可能であり、非親水性ポリマをブレンドすることも可能である。
【0042】また、下層との接着性向上などの目的から、公知のシランカップリング剤やイソシアネート化合物、触媒などを添加したり中間層として設けることも可能である。
【0043】本発明の親水性膨潤層は、疎水性ポリマを含むことができる。
【0044】本発明に用いられる疎水性ポリマは、水性エマルジョンから主として構成されたものが好ましく用いられる。
【0045】本発明にいう水性エマルジョンとは、微細なポリマ粒子と必要に応じて該粒子を包囲する保護層からなる粒子を水中に分散させた疎水性ポリマ懸濁水溶液を意味する。
【0046】すなわち、基本的に分散質としてのポリマ粒子と必要に応じて形成される保護層からなるエマルジョン粒子と分散媒としての希釈水溶液から構成される自己乳化または強制乳化水溶液を意味する。本発明に用いられる水性エマルジョンの具体例としては、ビニルポリマ系ラテックス、共役ジエンポリマ系ラテックスおよび水性または水分散ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0047】本発明の親水性膨潤層は、上記の親水性ポリマと疎水性ポリマを混合し、必要に応じて架橋または類似架橋し、水に不溶化せしめることによって基板上に積層形成される。
【0048】架橋には親水性ポリマおよび疎水性ポリマが有する反応性官能基を用いて架橋反応することが好ましい。
【0049】架橋反応は、共有結合性の架橋であっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0050】本発明の親水性膨潤層の親水性ポリマと疎水性ポリマを混合する方法としては、3本ロールなどのロールミキサ、ニーダーなど混合機を用いて混練りする方法、ホモジナイザー、ボールミルなどのディスパーサーを用いて湿式混合分散する方法など、塗料やパテを製造する際に用いられる公知の方法で好ましく混合される。
【0051】また本発明の親水性膨潤層を形成する方法としては、疎水性ポリマとして水性のエマルジョンを好ましく用いることから、水溶液系で各成分(親水性ポリマ、疎水性ポリマなど)を混合し、必要に応じて架橋剤が添加される方法が、均質な相分離構造を実現しインキ反撥性を向上させる点から好ましい。
【0052】従って、用いられる架橋剤としては、水溶性の多官能性化合物を用いることが特に好ましい。すなわち、水溶性のポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物などを用いることが好ましい。
【0053】本発明に用いられる親水性膨潤層には上記した親水性ポリマ、疎水性ポリマおよび必要に応じて加えられる架橋剤の他にも、ゴム組成物において通常添加される公知の老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、可塑剤などを添加することが可能である。
【0054】また下層との接着性向上などの目的から、公知のシランカップリング剤やイソシアネート化合物、触媒などを添加したり基板との間に中間層として設けることも可能である。
【0055】また、本発明に用いられる親水性膨潤層には、染料や顔料、pH指示薬、ロイコ染料、界面活性剤、有機酸などの各種添加剤を微量添加することも可能である。
【0056】本発明において親水性膨潤層は相分離構造を有することが好ましい。
【0057】次に本発明に言う親水性膨潤層における相分離構造について説明する。
【0058】親水性ポリマを主成分とする相と疎水性ポリマを主成分とする相から構成された相分離構造とすることにより、インキ反撥性と印刷耐久性の両者を広い組成範囲において実現することが可能となる。
【0059】該相分離構造を構成する親水性ポリマ相と疎水性ポリマ相の組成比は自由であり、(1)いずれか一方が連続相で、他方が分散相である形態、(2)親水性および疎水性ポリマ相がそれぞれ連続相および分散相を有する形態(3)親水性および疎水性ポリマ相がいずれも連続相となる形態の中から自由に選択することができる。
【0060】該親水性膨潤層はゴム弾性を有することが好ましい。すなわち、以下の方法により測定した親水性膨潤層の初期弾性率が特定の範囲内にあることが好ましい。
[親水性膨潤層の初期弾性率の測定方法]測定しようとする平版印刷版の親水性膨潤層の組成と同一組成の溶液をテフロンシャーレ上に展開し、60℃×24時間乾燥硬化させる。得られた乾燥硬化膜は剃刀刃などを用いて、長さ40mm、幅1.95mm、厚み約0.2mmの短冊状のテストピースに裁断する。溶液塗布後、刷版とするまでに非画線部に処理を施す場合には、テストピースにも同様の処理を施す。
【0061】得られたテストピースは、測定前に25℃50%RHの環境にて24時間以上放置し調湿したのち、厚みをマイクロゲージにて測定し、下記の引張り条件で初期弾性率を測定した。データ処理はJIS K6301に準じて行なった。
【0062】引張り速度 200mm/分チャック間距離 20mm繰り返し数 4回測定機 (株)オリエンテック製「RTM−100」
本発明に用いられる親水性膨潤層の初期弾性率は、0.01〜10kgf/mm2 の範囲にあることがインキ反撥性および形態保持性の観点から好ましい。好ましくは、0.01〜5kgf/mm2 の範囲であり、0.01〜2kgf/mm2 の範囲が更に好ましい。
【0063】すなわち初期弾性率が、0.01kgf/mm2 未満になると親水性膨潤層の形態保持性が極端に低下し、印刷時の耐久性が極端に低下する傾向にあり、該初期弾性率が10kgf/mm2 より大きくなるとゴム弾性が不足し、インキ反撥性が極端に低下する傾向にある。
【0064】一方、画像形成後の画線部(インキ着肉部分)の初期弾性率は非画線部の親水性膨潤層の初期弾性率より大きいことが必要で、有利に画像形成を行なうためには2倍以上、好ましくは3倍以上である。
【0065】本発明の親水性膨潤層の水に対する膨潤率は、以下の定義に従って測定することができる。
【0066】
【数1】


ただし、吸水量とは、以下の定義に従って測定した値を意味する。
【0067】
吸水量(g/m2 )=WWET −WDRY (I)
DRY :乾燥状態における重量(g/m2
WET :水中に25℃×10分間浸漬した後の重量(g/m2
[吸水量の測定方法]測定しようとする平版印刷版の非画線部および画線部のみから形成された部分をそれぞれ所定面積に裁断し、25℃の精製水に浸漬する。10分間浸漬した後、該平版印刷版の表面および裏面に付着した余分の水分を「ハイゼガーゼ」(コットン布:旭化成工業(株)製)にて素速く拭き取り、該平版印刷版の膨潤重量WWET を秤量する。その後、該平版印刷版を60℃のオーブンにて約30分間乾燥し、乾燥重量WDRY を秤量する。
【0068】親水性膨潤層厚さとは、基板上に塗設された乾燥させた平版印刷版の非画線部に相当する部分の親水性膨潤層の塗布層を剥離し、重量法によって測定した値を意味する。親水性膨潤層の厚さは下記式に従って測定した。
【0069】
親水性膨潤層厚さ(g/m2 )=(W−W0 )/αW:平版印刷版の非画線部のみから形成された部分を裁断したものの乾燥重量(g)
0 :上記Wから親水性膨潤層を剥離脱落した後の乾燥重量(g)
α:平版印刷版の測定面積(m2
[親水性膨潤層厚さの測定方法]測定しようとする平版印刷版の非画線部のみから形成された部分を所定面積αに裁断した後、60℃のオーブンにて約30分間乾燥し、乾燥重量Wを秤量する。その後、平版印刷版を精製水に浸漬し、親水性膨潤層を膨潤させ、スクレーパーなどを用いて該膨潤層を剥離脱落させる。
【0070】親水性膨潤層を剥離脱落させた平版印刷版を再度60℃のオーブンにて約30分間乾燥し、乾燥重量W0 を秤量する。
【0071】本発明に用いられる親水性膨潤層厚さとしては、0.1〜100g/m2 で用いることが可能であるが、インキ反撥性および形態保持性の観点から、好ましくは0.3〜10g/m2 である。該厚みが0.3g/m2 未満になると、インキ反撥性が極端に低下する傾向にあり、また塗工時にピンホ−ルなどの欠陥が生じ易くなる。また、10g/m2 以上は水膨潤時の形態保持性が劣化する傾向にあり経済的にも不利である。
【0072】本発明の親水性膨潤層の水に対する膨潤率は、10〜1000%であることが好ましい。インキ反撥性および形態保持性の観点から50〜500%がさらに好ましい。水に対する膨潤率が10%未満になると、インキ反撥性が低下し、また塗工時にピンホールなどの欠点が生じやすくなる。一方、水に対する膨潤率が1000%よりも大きくなると、形態保持性が大きく低下する。
【0073】次に本発明の感光性平版印刷版原版を用いた画像形成方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】本発明の平版印刷版の画像は、例えば、基板上に親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版の版表面に活性光線を照射することにより形成することができる。すなわち、画線部および非画線部の差を活性光線の照射により生じさせる。
【0075】好ましくは、本発明の平版印刷版はネガティブワーキングの画像形成により作製される。すなわち、親水性膨潤層の活性光線が照射されなかった部分(以下未露光部と称する)と比較して活性光線が照射された部分(以下露光部と称する)の初期弾性率が上昇する等してインキ着肉性の画線部となり、未露光部はインキ反撥性の非画線部となる。
【0076】このような画像形成には公知の感光性化合物が用いられる。
【0077】すなわち、原版の親水性膨潤層に公知の光架橋または光硬化性の感光性化合物を含有させ、露光部を選択的に架橋および/または硬化し、初期弾性率を上昇させることによって画像形成が達成される。
【0078】公知の光架橋または光硬化性の感光性化合物としては下記の(1)〜(6)の具体例が挙げられる。
【0079】(1)光重合性モノマまたはオリゴマ(2)光二量化型の感光性樹脂組成物(3)エポキシ基を有するモノマ、オリゴマまたはポリマと公知の光酸発生剤との組合わせから成る組成物(4)アリル基および/またはビニル基を有するモノマ、オリゴマまたはポリマとメルカプト基を有するモノマ、オリゴマまたはポリマとの組成物(5)ジアゾニウム塩化合物と水酸基含有化合物との組成物(6)ビスアジド化合物と環化したポリイソプレンゴムやポリブタジエンゴム、またはクレゾールノボラック樹脂を主成分とする感光性組成物など。
【0080】これらの感光性化合物は基板上に親水性膨潤層を形成する際に組成物に添加し該層内に存在させる方法、または親水性膨潤層を形成した後、感光性組成物を該層上に塗布し該層内に含浸させる方法などを用いて添加される。
【0081】比較的高分子量のポリマ、オリゴマなどを用いた感光性組成物の場合には、前者の親水性膨潤層形成時に同時添加する方法が有利に行なわれ、比較的低分子量のモノマ、オリゴマなどを用いた感光性組成物の場合には、後者の含浸方法が有利である。
【0082】また原版の親水性膨潤層にはこれらの感光性化合物を増感させる目的から公知の光増感剤を添加することが可能である。公知の光増感剤としては、公知の光増感剤が自由に選択できるが、各種の置換ベンゾフェノン系化合物、置換チオキサントン系化合物、置換アクリドン系化合物などが好ましく用いられる。また、米国特許236766に記載されているビシナールポリケタルドニル化合物、米国特許2367661 米国特許2367670 に開示されているα−カルボニル化合物、米国特許2722512 に開示されているα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許3046127 、米国特許2951758 に開示されている多核キノン化合物、米国特許3549367 に開示されているトリアリールイミダゾールダイマ/p−アミノフェニルケトンの組合わせ、米国特許3870524 に開示されているベンゾチアゾール系化合物、米国特許4239850 に開示されているベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチル−s−トリアジン系化合物および米国特許3751259 に開示されているアクリジンおよびフェナジン化合物、米国特許4212970 に開示されているオキサジアゾール化合物、米国特許3954475 、米国特許4189323 などに開示されている発色団基を有するトリハロメチル−s−トリアジン系化合物、特開昭59−197401号公報、特開昭60−76503号公報に開示されているベンゾフェノン基含有ペルオキシエステル化合物などが具体例として挙げられる。
【0083】本発明に用いられる平版印刷版の基板としては、通常の平版印刷機に取り付けられるたわみ性と印刷時に加わる荷重に耐えうるものである必要がある以外には一切制限を受けない。
【0084】代表的なものとしては、アルミ、銅、鉄、などの金属板、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはコート紙、ゴムシートなどが挙げられる。また、該基板は上記の素材が複合されたものであってもよい。
【0085】また、該基板表面は検版性向上や接着性向上の目的から、電気化学的処理や酸塩基処理、コロナ放電処理など各種に表面処理を施すことも可能である。
【0086】またこれらの基板上には接着性向上やハレーション防止の目的からコーティングなどを施してプライマー層を形成し、基板とすることも可能である。
【0087】次に保護層について説明する。
【0088】本発明の感光性平版印刷版原版の感光性の親水性膨潤層の表面には該親水性膨潤層を保護する目的で除去可能な、保護層をコーティングにより該親水性膨潤層上に形成したり、保護フィルムをラミネートすることが好ましく行なわれる。
【0089】保護フィルムの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどが挙げられる。また、これらの保護フィルムは画像露光時における真空密着性を改良するために、凹凸加工を施したり、表面をマット処理したり、シリカ粒子などを含むプラスチック層を上記保護フィルムの表面に塗布積層することも好ましく行なわれる。
【0090】次に本発明の感光性平版印刷版原版の露光方法について説明する。
【0091】本発明の感光性平版印刷版は、好ましくはネガティブワーキング用の製版工程を経て刷版となる。すなわち、ネガ原画フィルムを通じて、通常の露光光源によって画像露光される。
【0092】この露光工程で用いられる光源としては、例えば高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯などが挙げられる。
【0093】次に本発明の感光性平版印刷版を用いた平版印刷版の製造方法について説明する。
【0094】製版工程では、保護層が上記の例に挙げたラミネートされたフィルムの場合、剥離除去はフィルム剥離装置などの機械的手段や手で剥離する人的手段で容易に行なわれる。この現像工程では、水または現像液でリンスすると、未露光部の親水性膨潤層内に存在する感光性化合物が溶解除去または不感光化され、インキ反撥するのに適した分散構造および水膨潤性を有する非画線部となり、露光部は感光性化合物が光架橋硬化し未露光部と比較して、水膨潤性の低下した画線部となる。
【0095】本発明の染色は、感光性平版印刷版を画像露光した後、現像と同時に、あるいは現像の後に行なわれる。染色は通常染色液を用いて行われるが、この染色液は、画線部もしくは非画線部の一方を選択的に染色し、他方をほとんど染色しないことが必要である。また、自動現像染色機を用いて、あるいはパッド等に染色液を含ませて手現像・染色処理して、感光性平版印刷版を多量に処理した場合においても、該感光性平版印刷版を汚染するようなヘドロを発生せず、泡立ちの少ない、染色濃度低下の少ない、さらに染色した後の刷版の染料移動等の色の滲みの少ない染色液であることが必要である。このような染色液としては、以下に示すような組成を有するものが挙げられる。
【0096】1)染料2)水本発明に用いられる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、分散染料および反応性染料等の中から1種または2種以上のものを使用することができるが、特に水溶性の塩基性染料および酸性染料が有利に用いられる。
【0097】酸性染料としては具体的には以下のものが挙げられる。
【0098】ニトロ染料、例えばナフトール・イエロー(C.I.アッシド・イエロー1)、モノアゾ染料、例えばファースト・レッドA(C.I.アッシド・レッド88)、ジスアゾ染料、例えばナフトール・ブルーブラック(C.I.アシッド・ブラック1)、ニトロソ染料、例えばナフトール・グリーンB(C.I.アシッド・グリーン1)、トリフェニルメタン染料、例えばパテント・ブルー(C.I.アシッド・ブルー3)、ブリリアント・ミリング・グリーンB(C.I.アシッド・グリーン9)、キサンテン染料、例えばスルホ・ローダミナB((C.I.アシッド・レッド52)、アントラキノン染料、例えばアリザリン・ディレクト・ブルーA2G(C.I.アシッド・ブルー40)、アジン染料、例えばウール・ファースト・ブルーGL(C.I.アシッド・ブルー102)、キノリン染料、例えばキノリン・イエロー(C.I.アシッド・イエロー3)。
【0099】塩基性染料としては具体的には以下のものが挙げられる。
【0100】ジフェニルメタン染料、例えばオーラミンO(C.I.ベーシック・イエロー2)、トリフェニルメタン染料、例えばマゼンタ(C.I.ベーシック・バイオレット14)、メチル・バイオレット(C.I.ベーシック・バイオレット1)、マラカイト・グリーン(C.I.ベーシック・グリーン4)、チアゾール染料、例えばチオフラビンT(C.I.ベーシック・イエロー1)、キサンテン染料、例えばローダミンB(C.I.ベーシック・バイオレット10)、オキサジン染料、例えばニール・ブルー(C.I.ベーシック・ブルー12)、チアジン染料、例えばメチレン・ブルーB(C.I.ベーシック・ブルー9)、アジン染料、例えばサフラニンT(C.I.ベーシック・レッド2)、アゾ染料、例えばビスマーク・ブラウンG(C.I.ベーシック・ブラウン1)、インドシアニン染料、例えばアストラフラキシンFF(C.I.ベーシック・レッド12)。
【0101】また、刷版画像面積読取り計の適合を考慮するとλmax(水)が500〜700nmの吸収波長を有する染料を好ましく用いることができる。具体的には以下のものが挙げられる。
【0102】酸性染料としては、C.I.アシッド・レッド51(λmax=526nm)、C.I.アシッド・ブラック2(λmax=580nm)、C.I.アシッド・レッド92(λmax=586、497nm)、C.I.アシッド・ブルー74(λmax=611.5nm)、C.I.アシッド・ブルー9(λmax=631nm)。
【0103】塩基性染料としては、C.I.ベーシック・レッド13(λmax=523nm)、C.I.ベーシック・レッド1(λmax=525、491nm)、C.I.ベーシック・バイオレット7(λmax=538nm)、C.I.ベーシック・バイオレット10(λmax=555、517nm)、C.I.ベーシック・バイオレット1(λmax=585nm)、C.I.ベーシック・バイオレット3(λmax=592nm)、C.I.ベーシック・ブルー5(λmax=612nm)、C.I.ベーシック・ブルー26(λmax=615nm)、C.I.ベーシック・ブルー7(λmax=617nm)、C.I.ベーシック・グリーン1(λmax=627nm)、C.I.ベーシック・ブルー3(λmax=655nm)、C.I.ベーシック・ブルー9(λmax=668nm)。
【0104】これらの染料の含有量は、染色液中0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜5重量%である。
【0105】以上の他に更に、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類の溶媒を加えることができ、更にまた、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、染色助剤、消泡剤、カルボン酸類およびアミン類も加えることができる。
【0106】染色液温度は任意でよいが、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜40℃で使用される。
【0107】また、染色処理後に版を水洗し、熱風乾燥してもよい。熱風の温度は50〜150℃が最適である。
【0108】このように処理された刷版を積み重ねて保管する場合には、版面を保護するために版面に保護液を塗布したり、紙、フィルムを挿入し挟んでおいてもよい。
【0109】次に本発明の感光性平版印刷版原版から得られる平版印刷版を用いた印刷方法について説明する。
【0110】本発明の平版印刷には公知の平版印刷機が用いられる。すなわち、オフセットおよび直刷り方式の枚葉および輪転印刷機などが用いられる。
【0111】本発明の平版印刷版を画像形成したのち、これらの平版印刷機の版胴に装着し、該版面には接触するインキ着けローラーからインキが供給される。
【0112】該版面上の親水性膨潤層を有する非画線部分は湿し水供給装置から供給される湿し水によって膨潤し、インキを反撥する。一方、画線部分はインキを受容し、オフセットブランケット胴表面または被印刷体表面にインキを供給して印刷画像を形成する。
【0113】本発明の平版印刷版を印刷する際に使用される湿し水は、水ありPS版で使用されるエッチ液を用いることはもちろん可能であるが、添加物を一切含有しない純水を使用することができる。
【0114】本発明の感光性平版印刷版原版から得られる平版印刷版を用いて印刷する際には添加物を一切有さない純水を使用することが好ましい。
【0115】以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0116】
【実施例】
実施例 1厚さ0.3mmのアルミ板(住友軽金属(株)製)上に、親水性ポリマとしてアクリル酸ナトリウム−n−ブチルメタクリレート共重合体(組成比40/60モル%)を用い、以下のような組成物を塗布し、150℃×60分間熱処理して2g/m2 の厚みを有する親水性膨潤層を塗設した。
【0117】
(1)親水性ポリマ 28重量部 (2)テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル 5重量部 (3)水性ラテックス「JSR0596」(カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合ラテックス:大日本インキ化学工業(株)製) 65重量部 (4)2−アミノプロピルトリメトキシシラン 2重量部 (5)精製水 900重量部上記の様にして塗設した親水性膨潤層上に、下記組成の感光性組成物を塗布し、100℃×3分間熱処理して感光性組成物0.5g/m2 を親水性膨潤層中に含浸させた。
【0118】その後厚さ12ミクロンの片面マット化二軸延伸ポリプロピレンフィルムをマット化されていない面が該親水性膨潤層と接するようにしてカレンダーローラーを用いてラミネートし、ネガ型の平版印刷用原版を得た。
【0119】得られた平版印刷版は、高圧水銀灯「ジェットライト3303kW :オーク製作所(株)製」を用い、PCW(PLATE CONTOROL WEDGE:KALLE社製)を貼込んだネガフィルムを通して90秒間密着露光(3.6mW/cm2 )したのち、ラミネートフィルムを剥離した。次いで、版全面を水道水でリンスし、未露光部の感光性組成物を洗浄して現像工程を終了した。
【0120】
(1)CH2 =CHCOO−(CH2 9 −OCOCH=CH2 20重量部(2)ミヒラー氏ケトン 2重量部(3)2,4−ジエチルチオキサントン 2重量部(4)「アイソパーE」(イソパラフィン系炭化水素:エッソ化学(株)製)
76重量部現像工程を終えた版は検版性が悪く、画線部、非画線部の濃度差が明確でなかった。そこで版を下記染色液で染色処理した。該染色処理方法は25℃の染色液の入ったバットに版を10秒浸漬したのち、水洗し乾燥した。染色濃度をマクベス反射濃度計RD514で測定した結果、画線部、非画線部の濃度差が1.1であり、検版性に優れた刷版を得られ、原画ネガフィルムを確実に再現していることが確認できた。
【0121】
<実施例1染色液組成>クリスタルバイオレット(C.I.ベーシック・バイオレット3、保土ケ谷化学工業(株)製、λmax=592nm) 0.1重量部純水 99.9重量部実施例 2実施例1の染色液を下記染色液に変更した以外は実施例1と同様にして製版した。その結果、画線部、非画線部の濃度差が1.0であり、検版性に優れた刷版が得られ、原画フィルムを確実に再現していることが確認された。
【0122】
<実施例2染色液組成>Aizen Victoria pure Blue BOH(C.I.ベーシック・ブルー7、保土ケ谷化学工業(株)製、λmax=617nm) 0.1重量部ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.2重量部KS−502(信越化学工業(株)製、消泡剤) 0.01重量部純水 99.69重量部実施例 3実施例1の染色液を下記染色液に変更した以外は実施例1と同様にして製版した。その結果、画線部、非画線部の濃度差が1.15であり、検版性に優れた刷版が得られ、原画フィルムを確実に再現していることが確認された。
【0123】
<実施例3染色液組成>Aizen Methyl Violet pure special(C.I.ベーシック・バイオレット1、保土ケ谷化学工業(株)製、λmax=585nm) 0.1重量部2エチルヘキシル硫酸エステルナトリウム 0.2重量部ブチルカルビトール 5重量部KS−502(信越化学工業(株)製、消泡剤) 0.01重量部純水 99.7重量部実施例4実施例1の染色液を下記染色液に変更した以外は実施例1と同様にして製版した。その結果、染色処理により検版性が向上し、原画フィルムを確実に再現していることが確認された。
【0124】
<実施例4染色液組成>Aizen Victoria pure Blue BOH(C.I.ベーシック・ブルー7、保土ケ谷化学工業(株)製、λmax=617nm) 0.1重量部ノイゲンEA112(第一工業製薬(株)製、ノニオン性界面活性剤)
1.0重量部ブチルカルビトール 5重量部KS−502(信越化学工業(株)製、消泡剤) 0.01重量部純水 93.89重量部実施例5実施例1の平版印刷版原版を、高圧水銀灯「ジェットライト3303kW :オーク製作所(株)製」を用い、PCW(PLATE CONTOROL WEDGE:KALLE社製)を貼込んだネガフィルムを通して90秒間密着露光(3.6mW/cm2 )した。次いで、版全面を実施例1の染色液(25℃、10秒)に浸漬し、現像と染色処理を同時に行なった。染色濃度をマクベス反射濃度計RD514で測定した結果、画線部、非画線部の濃度差が1.1であり、検版性に優れた刷版を得られ、原画ネガフィルムを確実に再現していることが確認できた。
【0125】
【発明の効果】本発明の新規な感光性平版印刷版は、染色工程を得ることで検版性に優れた刷版を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製造する方法において、版を染色する工程を有することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【請求項2】 該感光性平版印刷版原版の露光後に非画線部を染色することを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製造方法。
【請求項3】 該感光性平版印刷版原版の露光後に画線部を染色することを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製造方法。
【請求項4】 少なくともλmax(水)が500〜700nmの吸収波長を有する染料を用いて染色することを特徴とする請求項1記載の平版印刷版の製造方法。