説明

平行棒

【課題】容易に水平棒の高さを調節することができるとともに、高さを調節する機構が各種歩行訓練や高さ調節作業の妨げとならない平行棒を提供する。
【解決手段】水平方向に延在する一対の水平棒16と、該水平棒16の軸方向に間隔を空けて立設された支柱4とが備えられている平行棒において、それぞれの支柱4に水平棒16を昇降動可能とさせる複数のアクチュエータ12を備え、同一の水平棒16を昇降動させる複数のアクチュエータ12を同期させて昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行運動機能を回復させるための歩行訓練に使用される平行棒に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行運動機能が低下した患者が歩行運動のリハビリテーションを受ける際、平行棒を使用して歩行訓練する場合が多く、一般的な平行棒は間隔を空けて立設された支柱に水平方向に延在する水平棒が架設された構成からなっている。このような平行棒を使用して歩行訓練をする場合、訓練者は転倒しないように水平棒を掴み、自らの身体を支えつつ歩行訓練を行う。従って、水平棒の高さは、訓練者にとって掴みやすく身体を支え易い高さに配置されていることが好ましい。
【0003】
従来、水平棒の高さを調節するため、伸縮可能な支柱を有する平行棒が提供されている。伸縮可能な支柱は、例えば、フロアに立設された中空の管部材と、管部材の上端部内に嵌入されているとともに上端が水平棒に接合されている棒部材とから構成されており、棒部材を所定の高さにおいてピンやねじ等で管部材に固定することで、支柱をそれぞれ適当な高さに伸縮させることができ、水平棒の高さを調整することができる。ところが、このような平行棒において水平棒の高さを調整する際、水平棒を支える両端の支柱を1本ずつ伸縮させようとすると、棒部材が管部材内で傾斜するため、伸縮させている途中で棒部材の下端部が管部材の内周面に引っかかり、スムーズに伸縮させることができない。
【0004】
そこで、両端の支柱を同期させて伸縮させる同期機構を備える平行棒が提案されている。例えば、特許文献1に記載の平行棒には、水平棒に対して平行に配置されてその軸方向に移動可能である水平リンク部材と、水平棒及び水平リンク部材にそれぞれ回転可能に接合されているとともに支柱に回転可能にそれぞれ接合されている回転リンク部材とから構成される同期機構が備えられており、これによって水平リンク部材が軸方向に往復移動することで、水平棒が水平状態を保ったまま昇降する構成とされている。
【特許文献1】特開2005−245684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の前者の平行棒において高さ調整を行う際には、患者又は例えば療法士が一人で作業をする際には、両端の支柱をかわるがわる少しずつ高さを変えて目標となる高さに調整する必要があり煩雑であった。従って、二人がかりで作業をして両端の支柱を同時に伸縮させることになり、水平棒の高さ調節に手間がかかってしまっていた。
【0006】
また、上記の後者の従来の平行棒では、支柱間の水平棒の下方には、水平棒と平行になるように水平リンク部材が設けられているため、場合によってはこれが歩行訓練の妨げとなり、また患者をサポートするための療法士が、水平棒の下をくぐったり、患者により接近してサポートをすることができず、柔軟な介助ができないという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような課題を鑑みて、容易に水平棒の高さを調節することができるとともに、各種歩行訓練や高さ調節作業を円滑に行うことが可能な平行棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る平行棒は、水平方向に延在する一対の水平棒と、前記一対の水平棒の軸方向に間隔を空けて立設された支柱とが備えられている平行棒において、それぞれの前記支柱内に設けられ、前記水平棒を昇降動させるアクチュエータと、同一の水平棒を昇降動させる複数の前記アクチュエータを同期させる制御手段とが、備えられていることを特徴としている。
【0009】
それぞれの支柱に水平棒を昇降動させるアクチュエータが設けられ、同一の水平棒を昇降動させる複数のアクチュエータは、制御手段によって同期させられ常に高さを同じくして昇降動するため、水平棒は水平状態を保ったまま昇降する。さらに、各アクチュエータはそれぞれの支柱内に設けられており、支柱間には水平棒のみしか存在しないため、歩行訓練を行う患者や療法士の妨げになることはない。
【0010】
また、本発明に係る平行棒においては、選択的に又は同時に、一対の該水平棒を任意の高さに昇降動させることが可能な操作部が、いずれか一の前記支柱に設けられていることを特徴としている。
【0011】
これにより一対の水平棒のうち一方を選択して昇降動させることができるため、それぞれの水平棒を別々に任意の高さまで調節することができ、様々な訓練状況に対応させることが可能となる。その一方で、同時に両水平棒を昇降させることもできるため、迅速に高さ調整を行うことができる。また、両水平棒の高さ調整を行う操作部はいずれか一の支柱に設置されており、その支柱において全ての操作が可能なため、高さ調整を一層容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明の平行棒は、前記水平棒の高さを記憶するメモリ機能部を備えるとともに、前記制御手段が、前記操作部によって選択された前記水平棒を、前記メモリ機能部から読み出された高さに昇降動させることを特徴としている。
【0013】
一方の平行棒を任意の高さに設定してメモリ機能部にその高さを記憶させ、他方の平行棒を昇降させる際に、メモリ機能部から記憶させた高さを読み出して、その高さまで昇降させることによって、容易に両平行棒の高さを揃えることが可能となる。また、一度高さを記憶させれば、他の高さに水平棒を変えた後でも、記憶した高さを読み出して両平行棒の高さ調整をすることができるため、容易に高さ調整をすることができるとともに、前に行った訓練を容易に再現することが可能となる。
【0014】
また、本発明の平行棒には、前記操作部には、前記水平棒の設置床面からの高さを表示する表示部が設けられていることを特徴としている。これにより、現在の高さを容易に把握することができ、水平棒の高さ調整を容易にすることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る平行棒は、前記一対の水平棒の互いに対向する前記支柱を連結して支持するベースプレートが設けられ、前記操作部に接続される前記制御手段の配線が、前記支柱、前記水平棒及び前記ベースプレートに収納されていることを特徴としている。
【0016】
配線が平行棒の各構成部品内に収納されているため、患者や療法士が引っかかり転倒してしまうような事態に陥ることはなく、安全に歩行訓練及びそのサポートを行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の平行棒によれば、操作部を一ヶ所に集中し、アクチュエータにより水平棒は水平状態を保ったまま昇降し、かつ支柱間には水平棒のみしか存在しないため、片手で容易に水平棒の高さを調節することができるとともに、各種歩行訓練や高さ調節作業の妨げとなるものがないため、一層円滑に歩行訓練を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る平行棒の第1の実施の形態について、図1から図8を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態に係る平行棒の斜視図である。図1に示すように、平行棒1は、対向する一対の昇降型手摺2a、2bによって形成されており、該昇降型手摺2a、2bは、フロアSに配置された薄板上のベースプレート3と、ベースプレート3上に立設された支柱4とから概略構成されている。また、4つの支柱4のうち図1における手前左側の支柱4aには、昇降型手摺2a、2bの高さ調整を行う操作部6を備えた操作ユニット5が設けられている。以下、昇降型手摺2の長手方向を前後方向、両昇降型手摺2a、2bが対向する方向を左右方向とする。
【0019】
ベースプレート3は平面視にて略長方形の薄板状の形状を有しており、その長手方向が平行棒1の左右方向となるように、前後方向に間隔を空けて2枚が平行に並べられている。また、2枚のベースプレート3のうち、図1における手前側のベースプレート3a(図2においては右側)のフロアSに接している裏面には、図2に示すように側断面視にてコの字状の凹溝8が、このベースプレート3aの長手方向全域に延びるように設けられている。
【0020】
支柱4は、それぞれのベースプレート3上に左右方向に間隔を空けながら2本ずつ設けられており、該ベースプレート3の上面から垂直に上方に向かって延びる略多段四角柱状の形状を有し、固定支柱9、可動支柱11、アクチュエータ12及び支持部15の4つの部材で構成されている。固定支柱9は、断面略長方形の筒状の形状をしており、その下端においてベースプレート3にボルト接合されている。また、固定支柱9の内部には、支柱4が最も収縮した際に該固定支柱9内にその長手方向全長が収まるようにして、可動支柱11が収容されている。そして可動支柱11の内部には、上下に昇降動可能な電動式のアクチュエータ12が設けられており、該アクチュエータ12の昇降動によって、可動支柱11が一体となって上下方向に昇降動する構成とされている。なお、アクチュエータ12には後述するモータ13及びエンコーダ14が備えられており、さらに、該アクチュエータ12の上端部が可動支柱11に固定され、該可動支柱11の上端部に支持部15が備えられている。
【0021】
また、前後方向に隣り合う2つの支柱4の上部には、前後方向に延在する直線状の水平棒16が水平状態のまま支持部15を介して配置されている。この水平棒16の内部はくり貫かれて中空状となっており、ここに後述する伝送ケーブル18が敷設される構成とされている。また、各水平棒16a、16bは支柱4に対して水平面において回動可能となるように配置されている。
【0022】
また、4つの支柱4のうち、一の支柱4a(本実施形態においては、図1における手前左側の支柱)に設けられた操作ユニット5は、その外周がカバー19に覆われており、図2に示すように該カバー19の内部に各アクチュエータ12を制御する2つのモータコントローラ10a、10bを備えている。そして、モータコントローラ10aには、昇降型手摺2aの支柱4a、4bに備えられたアクチュエータ12a、12bと相互に信号の伝送を行うとともに、これらアクチュエータ12a、12bに電源を供給する伝送ケーブル18a、18bが接続されている。同様にして、モータコントローラ10bには、昇降型手摺2bの支柱4c、4dに備えられたアクチュエータ12a、12bと相互に信号の伝送を行うとともに、これらアクチュエータ12c、12dに電源を供給する伝送ケーブル18c、18dが接続されている。
【0023】
図2に示すように、モータコントローラ10a、10bに接続された伝送ケーブル18のうち、モータコントローラ10aに接続されている伝送ケーブル18aは、操作ユニット5のカバー19内を周回するようにして、支柱4aのアクチュエータ12aの側面に設けられた配線カバー17aにその下端部から入り込み、その上方においてアクチュエータ12a内に導かれ、このアクチュエータ12aのモータ13及びエンコーダ14と接続されている。
【0024】
また、4本の伝送ケーブル18のうち、モータコントローラ10aに接続された伝送ケーブル18bは、操作ユニット5のカバー19内を周回するようにして、配線カバー17aにその下端部から入り込んで上方に延び、支持部15を介して水平棒16a内に導入されている。そして、伝送ケーブル18bは支柱4aの前後方向に隣り合う支柱4bに至るまで水平棒16a内に敷設され、支柱4bの上部において支持部15を介して支柱4bのアクチュエータ12b内に入り込み、該アクチュエータ12bのモータ13及びエンコーダ14と接続されている。
【0025】
そして、4本の伝送ケーブル18のうち、モータコントローラ10bに接続された2本のケーブル18c、18dは、下部に位置するベースプレート3aに至り、図3に示すようにこのベースプレート3aにおいて上述の凹溝8内に収納されて、支柱4aの左右方向に対向する支柱4cまで導かれる。そして図4に示すように、該伝送ケーブル18c、18dは、支柱4cのカバー21内を周回して支柱4cの配線カバー17b内にその下端から入り込んで上方に延びている。この2つの伝送ケーブル18c、18dのうち、伝送ケーブル18cは、アクチュエータ12c内に導入されてモータ13及びエンコーダ14と接続されている。一方、伝送ケーブル18dは、伝送ケーブル18bと同じようにして、支持部15を介して水平棒16b内に導入され、支柱4dの上部において支持部15を介して支柱4dのアクチュエータ12d内に入り込み、該アクチュエータ12dのモータ13及びエンコーダ14と接続されている。
【0026】
また、伝送ケーブル18b、18dは各支柱4におけるそれぞれの支持部15においてコネクタ接続されることによって延設されており、この箇所で取付及び取外しが可能とされている。
【0027】
図5は第1の実施形態の操作部6及び制御手段20のブロック図である。操作部6には、上昇スイッチ22、下降スイッチ23、表示部24、メモリ設定部25、メモリ機能部26及び切換スイッチ27が設けられている。制御手段20としては、各昇降型手摺2a、2bに対応するように2つのモータコントローラ10a、10bが設けられており、各モータコントローラ10a、10bは操作部6と接続されているとともに、モータコントローラ10aは水平棒16a昇降させる二つの支柱4a、4bのアクチュエータ12a、12bを、コントローラ10bは水平棒16a昇降させる二つの支柱4a、4bのアクチュエータ12a、12bを制御している。さらに、該モータコントローラ10a、10bには、アクチュエータ12の位置情報、即ち水平棒16a、16bの高さ情報を記憶する図示しないメモリ部が設けられている。
【0028】
次に本実施形態に係る平行棒1の使用方法について説明する。まず、いずれか一方の水平棒16の高さを調節するために、切換スイッチ27で昇降させる昇降型手摺2a、2bを選択する。本実施形態では、図8に示す切換スイッチ27を左側に回せば、モータコントローラ10aに対して操作部6からの信号が送出されるようになり、昇降型手摺2aの高さ調整を行うことが可能となる。
【0029】
切換スイッチ27を左側に回した状態で、操作部6の上昇スイッチ22又は下降スイッチ23を押すと、これに基づく信号が切換スイッチ27によって選択されたモータコントローラ10aに送出される。これにより、モータコントローラ10aが支柱4aのアクチュエータ12aのモータ13と、支柱4bのアクチュエータ12bのモータ13とに駆動信号を送出し、それぞれのモータ13が回転してアクチュエータ12a、12bが昇降動する。
【0030】
また、それぞれのアクチュエータ12a、12bに備えられたエンコーダ14はアクチュエータ12a、12bの位置情報をモータコントローラ10aに送出する。モータコントローラ10aは2つのアクチュエータ12a、12bの位置情報から、これら2つのアクチュエータ12が同一の高さを保ちながら昇降動するように制御を行っている。例えば、2つのアクチュエータ12a、12bのエンコーダ14から送出される位置情報が互いに異なるときは、一方のアクチュエータのモータ14を停止させるとともに他方をアクチュエータのモータ14を駆動させて高さ位置が等しくなるように修正を行う。これにより、水平棒16aは常に水平状態を保ったまま昇降することができる。
【0031】
また、このときのアクチュエータ12a、12bの位置情報、即ち水平棒16aの高さ情報はモータコントローラ10aから操作部6に送出され、昇降型手摺2aの水平棒16aの高さが表示部24に表示されている。
【0032】
昇降型手摺2aの水平棒16aが所望の高さまで昇降した後は、上昇スイッチ22又は下降スイッチ23の操作を停止することで、水平棒16aの昇降動も停止される。また、もう一方の昇降型手摺2bの水平棒16bの高さ調整についても、昇降型手摺2aの水平棒16bの高さ調整と同様にして、切換スイッチ27を右側に回して、操作部6の上昇スイッチ22又は下降スイッチ23を押すことによって、所望の高さまで水平棒16bを昇降させることができる。また、このとき表示部24には昇降型手摺2bの水平棒16bの設置床面からの高さが表示される。
【0033】
なお、図2のように水平棒16aが最も低い位置にある場合から、支柱4a、4bが伸張して最も高い位置となった場合は、支柱4a、4bはそれぞれ図6、図7に示す状態となる。特に支柱4aにおいては、伸張した際に伝送ケーブル18a、18bも移動するが、これらはカバー19内に周回させて配置されることで弛みを有しているため、伝送ケーブル18a、18bが昇降動の妨げになることはない。同様に水平棒16bが図3の状態から最も高い位置まで伸張した場合も、支柱4c、4dはそれぞれ図8、図7に示すよう状態になる。支柱4cにおいても伝送ケーブル18c、18dがカバー21内に周回されて弛みを有しているため、これらが昇降動の妨げになることはない。
【0034】
また、平行棒1を使用して歩行訓練を行う際には、両水平棒16a、16bの高さを同一にして訓練を行うのが通常である。そこで、本実施形態に係る平行棒1においては、容易に両水平棒16a、16bの高さを同一にすることができるメモリ機能が設けられている。以下、このメモリ機能について説明する。
【0035】
まず、上述の場合と同様に、切換スイッチ27で昇降型手摺2aを選択し、上昇スイッチ22又は下降スイッチ23を用いて所望の高さまで水平棒16aを昇降させる。ここで、操作部6に設けられているメモリ設定部25には、例えば通し番号が付された複数のボタンが設けられており、切換スイッチ27によって一方の昇降型手摺2aが選択されている状態で、このボタンのいずれかを押すと、メモリ機能部26にはそのボタンの番号とともに、モータコントローラ10aから操作部6に送出されている水平棒16aの高さ情報が記憶される。
【0036】
この状態で切換スイッチ27を右に回して昇降型手摺2bを選択し、もう一度メモリ設定部25の同一のボタンを押すと、メモリ機能部26から記憶されている水平棒16aの高さ情報が読み出され、操作部6がモータコントローラ10bにこの高さ情報を送出する。これに基づいて該モータコントローラ10bは、昇降型手摺2bの支柱4c、4dのそれぞれのアクチュエータ12c、12dを駆動させて、昇降型手摺2aの水平棒16aと同一の高さまで水平棒16bを昇降させる。これによって、一方の水平棒16aの高さ調節をした際には、それと同じ高さまで他方の水平棒16bを昇降させることができるため、2つの水平棒16a、16bを容易に同一の高さに調節することができる。
【0037】
また、このメモリ機能は、上述の使用法のみならず、例えば頻繁に使用する水平棒16a、16bの高さ情報を、メモリ設定部25のボタンの番号とともにメモリ機能部26に記憶させておけば、メモリ設定部25のボタンを押すのみで容易にそのボタンに対応する高さまで水平棒16a、16bを昇降させることが可能となる。また、複数のボタンのそれぞれに異なる高さを対応させてメモリ機能部26に記憶させておけば、段階的な高さの中から一つの高さを選択して、その高さまで水平棒16a、16bを昇降動させることが可能となる。
【0038】
以上のような平行棒1においては、それぞれの支柱4に昇降動が可能なアクチュエータ12が設けられ、同一の水平棒16を昇降動させる2つのアクチュエータ12即ち、それぞれの水平棒16a、16bの両端の支柱におけるアクチュエータ12は、制御手段によって同期させられ常に高さを同じくして昇降動するため、水平棒16a、16bは水平状態を保ったまま昇降する。そして、これらアクチュエータ12はそれぞれの支柱4内に設けられており、支柱間には水平棒のみしか存在しないため、各種歩行訓練や高さ調節作業の妨げになることはない。
【0039】
また、メモリ機能部26を設けたことによって、容易に両水平棒16a、16bの高さを揃えることが可能となるとともに、一度高さを記憶させれば簡単な手順でその高さまで水平棒16の高さを設定することができるため、高さ調節が容易となる。
【0040】
また、操作部6に選択スイッチ27を設けたことによって各水平棒16a、16bはそれぞれの高さを別々に調整することができるため、歩行訓練のバリエーションを増やし、柔軟な訓練に対応することが可能となる。また、両水平棒16a、16bの高さ調整を行う操作部6は、いずれか一の支柱4に設置された操作ユニット5に設けられているため、一箇所で両水平棒16a、16bの高さを調整することができ、より一層高さ調節を容易に行うことが可能となる。
【0041】
また、表示部27により、選択スイッチ27によって選択されている昇降型手摺2a、2bの現在の高さを容易に把握することができ、水平棒の高さ調整を容易にすることができるとともに、伝送ケーブル18の配線が平行棒1のそれぞれの構成部品内に収納されているため、患者や療法士がこの伝送ケーブル18に引っかかるような事態に陥ることはなく、安全に歩行訓練及びそのサポートを行うことができる。
【0042】
さらに、水平棒16a、16bとそれぞれの支柱4とは、水平面において回動可能に接続されており、水平棒16a、16bと支柱4との接触部において伝送ケーブル18は捩れることができるため、支柱4に対して水平棒16a、16bは容易に回動することが可能となる。従って、ベースプレート3a、3bを互いに斜め平行となるように移動させ、それとともに両水平棒16a、16bを支柱4に対して水平方向に回動させることにより、平面視において水平棒16a、16bとベースプレート3a、3bとを辺として構成されている長方形が平行四辺形に変形されるようにして、両水平棒16a、16b間の距離が変化することになる。これによって両水平棒16a、16bの左右方向の幅を容易に変更することができ、様々な体格の患者に対応することができるとともに、歩行訓練のバリエーションを増やすことが可能となる。
【0043】
また、伝送ケーブル18b、18dは各支柱4におけるそれぞれの支持部15においてコネクタ接続されることによって延設されており、この箇所で取り付け及び取外しが可能とされているため、これら伝送ケーブル18b、18dが支柱4と水平棒16a、16bとを分離する際の妨げとなることはない。よって、容易に支柱4と水平棒16a、16bを分離させることでコンパクトにして輸送することが可能となる。
【0044】
以上、本発明である平行棒1の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。例えば、第1変形例として、上記のように2つのモータコントローラ10a、10bが備えられ、操作部6内にメモリ機能部26が備えられているのに代えて、図9に示すように、4つのアクチュエータ12を制御するとともにメモリ機能部26を備えた一つのモータコントローラ40が備えられているものであってもよい。上述のようにモータコントローラ10a、10bには、水平棒16a、16bの高さ情報を記憶する図示しないメモリ部が設けられているが、本第1変形例では、モータコントローラ40に設けられたメモリ機能部26が高さ情報の記憶も行うことができるため、2つ必要だったメモリを1つにまとめることができ、より簡易な構造とすることができる。
【0045】
また、第2変形例として、切換スイッチ27が、一方の昇降型手摺2a、2bを選択することができるのみならず、両方を選択して、両昇降型手摺2a、2bを同時に昇降させることが可能となる構成としてもよい。このように同時に昇降させることによって、高さ調節を迅速に
行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る平行棒の斜視図である。
【図2】本実施形態の平行棒の操作部が設けられた昇降型手摺の側断面図である。
【図3】本実施形態の平行棒の正面図である。
【図4】本実施形態の平行棒の操作部が設けられていない昇降型手摺の側断面図である。
【図5】本実施形態に係る平行棒の操作部及び制御手段のブロック図である。
【図6】操作部が設けられた支柱が伸張したときの側断面図である。
【図7】操作部が設けられた支柱に対向する支柱が伸張したときの側断面図である。
【図8】水平棒内に敷設された伝送ケーブルと接続されているアクチュエータを備えた支柱が伸張したときの側断面図である。
【図9】第1変形例の平行棒の操作部及び制御手段のブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1 平行棒
2a 昇降型手摺
2b 昇降型手摺
3 ベースプレート
4 支柱
6 操作部
12 アクチュエータ
16 水平棒
20 制御手段
26 メモリ機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延在する一対の水平棒と、該水平棒の軸方向に間隔を空けて立設された支柱とが備えられている平行棒において、
それぞれの前記支柱内に設けられ、前記水平棒を昇降動させるアクチュエータと、
同一の水平棒を昇降動させる複数の前記アクチュエータを同期させる制御手段とが、備えられていることを特徴とする平行棒。
【請求項2】
前記一対の水平棒を選択的に又は同時に、任意の高さに昇降動させることが可能な操作部が、いずれか一の前記支柱に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の平行棒。
【請求項3】
前記水平棒の高さを記憶するメモリ機能部を備えるとともに、前記操作部によって選択された前記水平棒を、前記制御手段により前記メモリ機能部から読み出された高さに昇降動させることを特徴とする請求項2に記載の平行棒。
【請求項4】
前記操作部には、設置床面からの前記水平棒の高さを表示する表示部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の平行棒。
【請求項5】
前記一対の水平棒をそれぞれ支持する前記支柱を連結するベースプレートが設けられ、
前記操作部に接続される前記制御手段の配線が、前記支柱、前記水平棒及び前記ベースプレートに収納されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の平行棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−289558(P2008−289558A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135795(P2007−135795)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)