説明

平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法

【課題】平面型ヒートパイプの支持力を強化し、歩留まりを向上させる平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法を提供する。
【解決手段】管体11、薄片体12および少なくとも一つの凸柱13を含む。管体11は、断面扁平状で、第1の側部1111および第2の側部1112を有する収納空間111を設けている。収納空間111は、両方の端部にそれぞれ第1の閉鎖端112および第2の閉鎖端113を連接し、内部に作動液体2を有する。薄片体12は、第1の延伸部12aおよび第2の延伸部12bを有し、管体11の収納空間111内に配置されている。第1の延伸部12aおよび第2の延伸部12bは、相互に交錯しながら連接し、複数のマス目121を画定している。凸柱13は、焼結粉末体で、薄片体12上で選択されたマス目121内に固設されるか、全てのマス目121内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法に関し、特に、平面型ヒートパイプの支持力を強化し、歩留まりを向上させる平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業の発展にとって、冷却または放熱は常に大きな問題である。性能、統合性および機能に対する要求が高くなるにつれ、放熱性能の向上の要請も大きくなった。そのため、熱交換効率に関する研究開発が重要な課題となったのである。
【0003】
放熱器(Heat Sink)は、電子デバイスまたはシステムの発生した熱量を空気中に放出するのに用いられる。熱抵抗が小さい場合、放熱器の放熱効率が高い。熱抵抗は、放熱器内部の熱伝導性、および放熱器表面と空気との間に発生する対流抵抗からなる。熱伝導性は、銅、アルミニウムなど熱伝導性が高い材料から製造された放熱器により下げることが可能であるが、対流抵抗は、放熱器の特性を低下させるため、次世代の電子デバイスの放熱要求を満たすことができなかった。
【0004】
現在、市場において、平面型ヒートパイプ(Heat pipe)、 ベーパーチャンバ(Vapor chamber)という放熱効率がさらに高い放熱器が注目され、他の放熱器と組み合わせて用いることにより、当面の放熱問題を解決している。
【0005】
従来の平面型ヒートパイプ構造は、平面型ヒートパイプ内の中空部に金属粉末を充填し、焼結により平面型ヒートパイプの内壁に毛細管構造を形成している。また、中空部に金属メッシュを配置して毛細管構造を形成することもできる。次に、平面型ヒートパイプ内部を真空にし、作動液体を充填して密閉する。従来の平面型ヒートパイプ構造は、支持構造を持たなかったため、凹んだり熱膨張したりすることがあった。平面型ヒートパイプ構造に圧力が加えられると、内部の毛細管構造(焼結した金属粉末)が破壊され、内壁から剥がれてしまうことがあった。そのため、平面型ヒートパイプ構造の熱伝導率が大幅に低下してしまった。また、平面型ヒートパイプは、チャンバ内壁に毛細管構造および中空部の金属メッシュしかなかったため、作動液体が気体から液体に凝縮される際に、重力および壁面の毛細管還流により気液循環を行い、気液循環効率がはなはだ不良であった。
【0006】
特許文献1は、ベーパーチャンバーおよび支持構造を開示している。ベーパーチャンバーは、カバー、およびカバー内部に収納された毛細管構造と支持構造を有する。支持構造は、間隔をあけて配列された複数の溝を有する板体を備える。各溝内には、波片がそれぞれ形成されている。波片の上下両端は、毛細管構造をそれぞれ押し付け、毛細管構造とカバーの内壁とを相互に接触させる。波片がベーパーチャンバの中空部に配置されることにより、焼結粉末が圧迫されて凹むのを防いだり、気相変化量を増加させて熱伝導速度を加速させたりすることはできたが、作動液体の還流を補助したり、毛細管効果を向上させることはできなかった。
【0007】
以上のように、従来のベーパーチャンバおよび支持構造には3つの欠点があった。1、歩留まりが悪かった。2、気液循環が不良だった。3、支持構造が弱かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−180437号公報
【特許文献2】特開2004−53186号公報
【特許文献3】台湾特許第M336673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の目的は、熱伝導速度の加速、支持力の強化、および毛細管効果の向上を実現させる平面型ヒートパイプ構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、歩留まりを向上させ、コストを低下させる平面型ヒートパイプ構造の製造方法を提供することにある。
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明は、平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法を提供する。本発明の平面型ヒートパイプ構造は、管体、薄片体および少なくとも一つの凸柱を具える。管体は、断面扁平状で、第1の側部および第2の側部を有する収納空間を設けている。収納空間は、両方の端部にそれぞれ第1の閉鎖端および第2の閉鎖端を連接し、内部に作動液体を有する。薄片体は、第1の延伸部および第2の延伸部を有し、管体の収納空間内に配置されている。第1の延伸部および第2の延伸部は、相互に交錯しながら連接し、複数のマス目を画定している。凸柱は、焼結粉末体からなりで、薄片体上で選択されたマス目内に固設されるか、全てのマス目内に配置されている。凸柱の両方に端部は、第1の側部および第2の側部にそれぞれ連接している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の平面型ヒートパイプ構造およびその製造方法は、凸柱を設けることにより、平面型ヒートパイプ構造の支持強度を大幅に増加させるだけでなく、内部の気液循環効率をさらに向上させ、作動液体を凸柱から還流させ、熱伝導効率を向上させることができる。また、拡散接合を用いて凸柱と管体との結合を強化させることにより、熱抵抗現象を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示すもう一つの分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の薄片体を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示すフロー図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示すフロー図である。
【図12】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜3を参照する。図1は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す分解斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示すもう一つの分解斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図1〜3に示すように、本発明の平面型ヒートパイプ構造1は、管体11、薄片体12および少なくとも一つの凸柱13を具える。
【0015】
管体11は、断面扁平状で、第1の側部1111および第2の側部1112の間に収納空間111を設けている。収納空間111は、両端部にそれぞれ第1の閉鎖端112および第2の閉鎖端113を設け、内部に作動液体2を充填する。
【0016】
薄片体12は、第1の延伸部12aおよび第2の延伸部12bを有し、管体11の収納空間111内に配置されている。第1の延伸部12aおよび第2の延伸部12bは、相互に交錯しながら接続し、複数のマス目121を画定している。
【0017】
凸柱13は、焼結粉末体で、薄片体12の選択されたマス目121内に固設されるか、全てのマス目121内(図2参照)に配置されている。凸柱13の両方の端部は、第1の側部1111および第2の側部1112にそれぞれ接続している。
【0018】
凸柱13は、必要に応じて態様を変更可能であり、増加または減少させたり、薄片体12の一部分に密集させることもできる。
【0019】
図4を参照する。図4は、本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図4に示すように、第2の実施形態は、第1の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。凸柱13は、外縁に少なくとも一つの溝131をさらに有する。
【0020】
図5を参照する。図5は、本発明の第3の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図5に示すように、第3の実施形態は、第1の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。凸柱13は、銅柱である。
【0021】
図6を参照する。図6は、本発明の第4の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図6に示すように、第4の実施形態は、第3の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。凸柱13は、外縁に少なくとも一つの溝132をさらに有する。
【0022】
図7を参照する。図7は、本発明の第5の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図7に示すように、第5の実施形態は、第3の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。凸柱13は、外縁に焼結粉末環体133を有する。
【0023】
図8を参照する。図8は、本発明の第6の実施形態による平面型ヒートパイプ構造を示す断面図である。図8に示すように、第6の実施形態は、第5の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。焼結粉末環体133は、少なくとも一つの溝1331を有する。
【0024】
図9を参照する。図9は、本発明の第7の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の薄片体を示す斜視図である。図9に示すように、第7の実施形態は、第1の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。第1の延伸部12aは、内縁に通路12cを有する弧状の突起である。
【0025】
上記した各実施形態は、凸柱13を設けることにより、平面型ヒートパイプ構造1の支持強度を大幅に増加させているばかりか、内部の気液循環効率をさらに増加させ、作動液体2を凸柱13から還流させ、熱伝導効率を加速させることができる。
【0026】
図10、図12および図13を参照する。図10は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示すフロー図である。
図12は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。図13は、本発明の第1の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。図10、図12および図13に示すように、平面型ヒートパイプ構造1の製造方法は、第1の工程S1および第2の工程S2からなる。
【0027】
第1の工程S1において、断面扁平状の管体と、複数のマス目および凸柱と、を有する薄片体を準備する。準備された断面扁平状の管体(管体11)と、複数のマス目(マス目121)および凸柱(凸柱13)と、を有する薄片体(薄片体12)で、管体は、銅およびアルミ材料か、両者のうちの熱伝導効率が高いいずれかで、本実施形態では銅材料を用いているが、これに限定されるものではない。凸柱13は、焼結粉末体で、機械加工であるプレス法でプレス用金型31およびパンチ32を用いて薄片体12のマス目121内にプレスされ、薄片体12に結合させられる。
【0028】
第2の工程S2において、断面扁平状の管体内に薄片体を配置し、薄片体を密閉する。要するに、薄片体(薄片体12)および凸柱(凸柱13)が管体(管体11)内に配置され、薄片体(薄片体12)が密閉される。
【0029】
図10、図14および図15を参照する。図14は、本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。図15は、本発明の第2の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示す断面図である。図10、図14および図15に示すように、平面型ヒートパイプ構造1の製造方法は、第1の工程S1および第2の工程S2からなる。
【0030】
第1の工程S1において、断面扁平状の管体、および複数のマス目、凸柱を有する薄片体を準備する。準備された断面扁平状の管体(管体11)、および複数のマス目(マス目121)、凸柱(凸柱13)を有する薄片体(薄片体12)で、管体は、銅およびアルミ材料か、両者のうちの熱伝導効率が高いいずれかで、本実施形態では銅材料を用いているが、これに限定されるものではない。凸柱13は、焼結粉末体である。焼結により金属粉末4と薄片体12とを結合させる。焼結工程では、凸柱13に焼結成型したい部分に金属粉末4を充填し、金属粉末4をプレスして焼結を行なうと、凸柱13が形成されて薄片体12と結合する(図13および14参照)。
【0031】
第2の実施形態の第2の工程S2は、第1の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0032】
第1の実施形態および第2の実施形態中の薄片体12もマス目121は、プレス加工により成型される。
【0033】
図1、図2および図11を参照する。図11は、本発明の第3の実施形態による平面型ヒートパイプ構造の製造方法を示すフロー図である。図1、図2および図11に示すように、平面型ヒートパイプ構造1の製造方法は、第1の工程S1および第2の工程S2からなる。
【0034】
第3の実施形態の第1の工程S1および第2の工程S2は、第1の実施形態とほとんど同様であるため、異なる部分のみを説明する。第2の工程S2の後、第3の工程S3を加えた。第3の工程S3において、凸柱および断面扁平状の管体に拡散接合工程を行なう。
【0035】
拡散接合を用いて凸柱13と管体11とを緊密に結合させることにより、凸柱13と管体11との結合を強化し、熱伝導抵抗を低減する。
【0036】
本発明では好適な実施形態を前述の通りに開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者は誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0037】
1 平面型ヒートパイプ構造
2 作動液体
4 金属粉末
11 管体
12 薄片体
12a 第1の延伸部
12b 第2の延伸部
12c 通路
13 凸柱
31 プレス用金型
32 パンチ
111 収納空間
112 第1の閉鎖端
113 第2の閉鎖端
121 マス目
131 溝
132 溝
133 焼結粉末環体
1111 第1の側部
1112 第2の側部
1331 溝
S1 工程1
S2 工程2
S3 工程3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な第1の側部および第2の側部間に収納空間を形成し、該収納空間両端部にそれぞれ第1の閉鎖端および第2の閉鎖端を結合して密閉し、内部に作動液体を充填した断面扁平状の管体と
延長して相互に交錯して接続されることにより、複数のマス目を画定する第1の延伸部および第2の延伸部からなり、上記管体内に配置された薄片体と、
上記薄片体の前記マス目内に固設され、その両端部が前記第1の側部および前記第2の側部にそれぞれ接合している少なくとも一つの凸柱と、
からなることを特徴とする平面型ヒートパイプ構造。
【請求項2】
前記凸柱は、銅柱であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項3】
前記凸柱は、外縁に少なくとも一つの溝をさらに有する銅柱であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項4】
前記凸柱は、焼結粉末体であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項5】
前記凸柱は、外縁に焼結粉末環体を有する銅柱であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項6】
前記凸柱は、外縁に少なくても一つの溝を有する焼結粉末体であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項7】
前記凸柱は、各マス目に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項8】
前記第1の延伸部は、内縁に通路を有する弧状の突起であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ヒートパイプ構造。
【請求項9】
断面扁平状の管体と、複数のマス目および凸柱と、を有する薄片体を準備する工程1と、
断面扁平状の前記管体内に前記薄片体を配置し、前記薄片体を密閉する工程2と、からなることを特徴とする平面型ヒートパイプ構造の製造方法。
【請求項10】
前記凸柱は、プレス法により前記薄片体に結合させられることを特徴とする請求項9に記載の平面型ヒートパイプ構造の製造方法。
【請求項11】
前記凸柱は、粉末焼結により前記薄片体上に成型されることを特徴とする請求項9に記載の平面型ヒートパイプ構造の製造方法。
【請求項12】
前記薄片体は、複数のマス目がプレスにより成型されることを特徴とする請求項9に記載の平面型ヒートパイプ構造の製造方法。
【請求項13】
断面扁平状の前記管体内に前記薄片体を配置し、前記薄片体を密閉する前記工程2は、拡散接合により凸柱と断面扁平状の管体との結合度を増加させる工程3をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の平面型ヒートパイプ構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−184875(P2012−184875A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47551(P2011−47551)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(504115301)奇▲こう▼科技股▲ふん▼有限公司 (82)