平面型放電ランプ
【課題】 通電パッドとリードとの接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプを提供する。
【解決手段】 電極リード30a,30bは、櫛形電極20や透明電極28に接続された通電パッド22,27にそれらの先端や山形部が弾性的に押し付けられた状態で固着材32によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッド22,27と電極リード30a,30bとの電気的接続状態には何ら影響しないので、所期の接続状態に保たれる。また、このような電極リード30の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板14と背面板12との間に電極リード30を挿入した状態でフリットガラスで固定するだけでその電極リード30が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。
【解決手段】 電極リード30a,30bは、櫛形電極20や透明電極28に接続された通電パッド22,27にそれらの先端や山形部が弾性的に押し付けられた状態で固着材32によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッド22,27と電極リード30a,30bとの電気的接続状態には何ら影響しないので、所期の接続状態に保たれる。また、このような電極リード30の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板14と背面板12との間に電極リード30を挿入した状態でフリットガラスで固定するだけでその電極リード30が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型放電ランプの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板(以下、特に区別しないときは何れも基板という)と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面と、例えば、前面板の内面とに設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプが知られている(例えば特許文献1〜5等を参照)。このような平面型放電ランプは、透過型液晶パネルの背面から照射するためのバック・ライト、案内表示板や広告表示板等の内部からその両面または一面を照射するための照明ランプ、或いは、天井や壁等に直付けされる一般照明用の平面型蛍光灯等に用いられる。
【特許文献1】特開平3−110750号公報
【特許文献2】特開平7−21948号公報
【特許文献3】特許第348172号公報
【特許文献4】特開2001−110364号公報
【特許文献5】特開2003−92086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記放電電極は、これに接続されるリードを介して外部回路に接続されるが、放電電極とリードとを接続するに際しては、例えば、その放電電極の一端に設けられた通電パッドにワイヤー・ボンディングや半田付け等でリードを固着していた(例えば、上記特許文献2を参照)。なお、上記特許文献1,3〜5には、放電電極と外部回路との接続については何らの記載がない。
【0004】
しかしながら、ガラス等から構成される基板に設けられた放電電極は比較的脆いため、振動や衝撃が加えられると接着界面近傍で剥離し、或いは、放電電極のリードが固着された部分が基板から剥離する虞があった。これに対して、固着部分をシリコーン系等の樹脂で覆って固めて補強することが行われているが、工数が増大すると共に、基板の外周側にはみ出した樹脂が著しく大きな容積を占めるので、樹脂の突出部分と他の部品との干渉を避けるための空間の確保が必要となる不都合がある。また、リードの一端に設けたクリップ状に成形された金属部品で基板を挟み、その弾性的な押圧力を利用して通電パッドとの導通を確保することも行われているが、使用時の発熱で金属部品が熱膨張させられると押圧力が不足して導通が不十分になり或いは通電パッドから外れる不都合がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、通電パッドとリードとの接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面に設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプであって、(a)前記背面板の内面の外周縁部に設けられ且つ前記放電電極に接続された通電パッドと、(b)前記前面板および前記背面板の間にその外周端縁側から挿入された先端が前記通電パッドに弾性的に押し付けられ且つその背面板外周縁とその通電パッドとの間において無機接合材によってそれら前面板および背面板に固定された電極端子とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、電極端子は、その先端が放電電極に接続された通電パッドに弾性的に押し付けられた状態で無機接合材によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッドと電極端子との電気的接続状態には何ら影響しないので、長期に亘って(例えば半永久的に)所期の接続状態に保たれる。また、このような電極端子の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板と背面板との間に電極端子を挿入した状態で無機接合材で固定するだけでその電極端子が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。例えば、前面板および背面板を接合する際に同時に電極端子を固定することもできる。上記により、通電パッドとリードとの接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプが得られる。
【0008】
ここで、好適には、前記平面型放電ランプは、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置するものである。このようにすれば、気密封止のために前面板および背面板間に設けられる封着材とは異なる位置に、前記電極端子を固定するための前記無機接合材が設けられる。そのため、気密空間内に設けられた通電パッドに電極端子が押し付けられ且つ封着材で気密封止が成されると同時に電極端子が固定される固定態様に比較して、その封着材の流れが電極端子に妨げられることに起因する気密性低下が生じ得ないので、気密性の確保が容易になる。また、放電空間内に金属電極が露出することによる誤放電が好適に抑制される利点もある。因みに、封着部に電極端子が存在すると、その気密性が電極端子に対する封着材の濡れ性や流れ性等に依存することになるので、封止条件の僅かな変化に起因して微小なピンホールが生じ得る。この微小なピンホールは、例えば1〜4週間程度の長期に亘って気密空間内の放電ガスが徐々に漏れるスローリークを引き起こすのである。
【0009】
また、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置する態様において、一層好適には、前記平面型放電ランプは、前記電極端子の先端が前記前面板および前記背面板の間に形成された第2の気密空間内に位置するものである。このようにすれば、電極端子の先端と通電パッドとの接続部が第2の気密空間内に設けられることから、通電パッドの表面が酸化し延いては電極端子との接触面が経時的に変化することが抑制されるので、導通信頼性が高められる。なお、第2の気密空間内には、その封止時の雰囲気気体が封入されることとなるが、封止は高温で行われるため、常温になる封止後には低圧・低湿となるので、通電パッド表面の酸化が好適に抑制されるのである。しかも、封止過程において高温に保たれている間は、内部に閉じこめられた雰囲気ガスの圧力が高められることから、加熱されることによって流動性が高められた無機接合材が第2の気密空間内に広がることが、そのガス圧によって抑制される。そのため、無機接合材が通電パッド上に流れることに起因する接触不良も抑制される。
【0010】
また、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置する態様において、一層好適には、前記平面型放電ランプは、前記前面板の内面または外面に前記背面板内面の放電電極との間で放電させるための前面側放電電極を備えたものである。このような対向放電型の平面型放電ランプでは、前面板および背面板の相互間隔に応じて放電電極間隔が変化することとなるので、気密空間内において一様な放電を得るためには、要求される一様性に応じてそれらの相互間隔延いては放電電極間隔を制御する必要がある。すなわち、薄型で均一発光を得るためには対向放電構造とすることが好ましいが、そのためには、放電電極間隔を高精度に制御することが要求されるのである。前記のように電極端子を固定するための無機接合材が気密封止のための封着材とは別に設けられる構造では、その電極端子の存在に起因して封着材厚みがばらつき延いては前面板および背面板の相互間隔がばらつくことが好適に抑制される。したがって、輝度ばらつきの少ない平面型放電ランプが得られる。
【0011】
なお、本発明は、背面板の内面に放電電極を備えた平面型放電ランプであれば、種々の内部構造のものに適用でき、例えば、背面板上に対を成して備えられた放電電極間で放電させる面放電構造のものにも適用される。しかしながら、上記のような対向放電構造のものに適用した場合に特に高い効果が得られる。なお、前面板側の放電電極は、背面板内面の放電電極との間で対向放電させられるものであれば、その配設位置や形状は問わない。例えば、前面板の内面に設けられたものであっても、外面に設けられることによりその前面板自身を誘電体として利用するものであってもよい。また、電極形状は、帯状(櫛形を含む)、格子状、蜂巣状等の種々の形状とすることができる。
【0012】
また、前面板上の放電電極は、可及的に光の射出を妨げないものが好ましい。例えば、発生する光に対して不透明な材料から成るものである場合には、可及的に小さい線幅寸法で一様な分布で設けられることが好ましい。また、発生する光に対して透明な材料で構成することも一層好ましい。例えば、可視光に対してはITO(酸化インジウム錫)やSnO2(酸化錫)等が好適に用いられる。
【0013】
また、好適には、前記気密空間は略矩形を成し且つその一部が前記通電パッドが設けられた外周端縁側に拡大された平面形状を備え、発光領域から外れたその拡大部分にその気密空間から排気するために形成された排気孔を備えたものである。このようにすれば、排気孔が発光領域から外れた位置に設けられることから、発光の一様性が高められる。なお、この排気孔は、製造過程において気密空間内に放電ガスを封入した後に封止された状態にある。
【0014】
また、好適には、前記平面型放電ランプは、前記気密空間の高さ寸法を制御するためのスペーサをその気密空間内に備え、且つ前記電極端子はその厚さ寸法がそのスペーサの高さ寸法よりも小さく、且つその先端部が前記背面板側に折り曲げられることにより、非押圧状態においてその先端がそのスペーサの高さ寸法よりも所定値大きい値だけその折曲げ位置の下方に位置するものである。このようにすれば、前面板および背面板を互いに押圧した状態で封止すると、それらの相互間隔はスペーサ高さになることから、折り曲げられた先端部の高さ寸法(すなわち折曲げ位置から先端までの高さ寸法)がそのスペーサ高さよりも大きくされた折曲げ部分は、前面板および背面板の間で押圧されることによりその先端が弾性的に通電パッドに押し付けられる。そのため、この状態で前面板および背面板を封止すると、先端が弾性的に導通パッドに押し付けられた電極端子の固定状態が容易に得られる。
【0015】
なお、上記スペーサは、背面板または前面板に一体的に形成されたものであっても、それらのうち一方または両方に固着形成されたものであっても、別部材に形成されて背面板内面等に固着されるものであってもよい。
【0016】
上記電極端子の厚さ寸法および先端部の高さ寸法は、平面型放電ランプの各部の寸法に応じて適宜定められるが、例えば、スペーサ高さが250(μm)程度の場合には厚さ寸法が180(μm)程度、折曲げ高さ寸法が1(mm)程度である。すなわち、前記所定値は例えば750(μm)程度である。
【0017】
なお、本発明において、気密空間内で発生させられる光は可視光に限られず、紫外線や赤外線等の肉眼で捉え得ない光であってもよい。請求の範囲に言う「透光性を有する前面板」は、気密空間内で発生させられる光が透過し得るものであることを意味し、可視光が透過し得るものに限られない。
【0018】
また、前記気密空間は、平面型放電ランプを構成し得るような扁平なものであれば、前面板側および背面板側が平坦なものに限られない。例えば、背面板や前面板の内面に光の散乱等の目的で凹凸が設けられているものも、請求の範囲に言う「扁平な気密空間」に含まれる。
【0019】
また、好適には、前記無機接合材および前記封着材は、ガラス、好適にはフリットガラスから成るものである。
【0020】
また、前記電極端子は、前記通電パッドに弾性的に押圧され得る導体であって、無機接合材による固定時に十分な耐熱性を有するものであれば、適宜の材料を用い得る。但し、ガラスと熱膨張係数の近似する金属材料が好ましく、例えば、426合金等が好適である。
【0021】
また、前記通電パッドは、適宜の大きさで設けることができるが、その形成位置の近傍は発光領域として利用し得ないので、電極端子との確実な接触を確保できる範囲で可及的に小さくされることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、蛍光体層を備えると共に放電で発生した紫外線でその蛍光体層を励起して発光させる形式の平面型放電ランプに好適に適用されるが、蛍光体層を備えない水銀灯、ナトリウム放電灯、ネオン・ランプ等の他の形式の放電灯が応用された平面型放電ランプにも本発明は同様に適用される。
【0023】
また、気密空間を形成するための前面板および背面板は、例えばガラス材料で構成されるが、背面板側から光を射出させない場合には、背面板は透光性を有する必要が無いので、セラミックス、琺瑯等の不透明な材料で構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0025】
図1は、本発明の一実施例の平面型放電ランプ10の構成を説明するための平面図であり、図2は、そのA−A視断面図である。平面型放電ランプ10は、例えばキセノン・ガスが放電ガスとして用いられた冷陰極管に分類されるものであって、有害な水銀を含まず、且つ全温度においてmsecオーダで立ち上がる応答性を備えている。このような平面型放電ランプ10は、例えば、液晶テレビやカー・ナビゲーション・システム等の表示装置を構成する液晶パネルのバックライトとして用いられる。
【0026】
図1、図2において、平面型放電ランプ10は、背面板12および前面板14が僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置されることにより、全体が薄型平箱状を成している。これら背面板12および前面板14は、それぞれ例えば厚さ寸法が0.7〜1.1(mm)程度で150×200(mm)程度の大きさを備えたソーダライムガラス製のガラス平板から成るものである。これらはその周縁部に略沿って矩形に設けられたフリットガラス等から成る幅寸法が3(mm)程度の封着材16によって互いに気密に固着されており、それらの間に矩形の気密空間17が形成されている。この気密空間17内には、キセノン或いはキセノンを主成分とした混合ガス(例えば、キセノン90(%)、アルゴン10(%))が例えば40(kPa)(≒300(Torr))程度の圧力で封入されている。この封入ガスすなわち放電ガスのガス圧は、気密空間17内の全面で略一様な放電が発生するように定められたものである。
【0027】
上記背面板12の前面板14側の一面すなわち内面18には、上記封着材16の内周側に背面板12の長辺に沿って伸びる簾状に複数本の帯状電極20aが設けられている。これら複数本の帯状電極20aは、背面板12の短辺に沿って設けられた配線に一端において接続されることによって櫛形を成しており、背面板12上には一つの櫛形電極20が備えられている。櫛形電極20は、気密空間17外において内面18上に設けられた通電パッド22に接続されている。前記封着材16は、図1における左端位置においては背面板12の縁よりも例えば3〜5(mm)程度だけ右寄りの位置に設けられており、上記通電パッド22は、その封着材16の左方に設けられることによって気密空間17外に位置させられているのである。
【0028】
また、上記櫛形電極20および通電パッド22は、例えば厚膜銀等から成るものであって、例えば何れも15(μm)程度の厚さ寸法で設けられている。また、帯状電極20aは、例えば個々の幅寸法が2(mm)程度で、その中心間隔は5(mm)程度である。また、通電パッド22は、例えば3×3(mm)程度の矩形で設けられている。なお、櫛形電極20は、例えば100(μm)程度の厚さ寸法の誘電体層で覆われているが、図1、図2においてはこれを省略した。
【0029】
また、上記背面板12の内面18には、上記複数本の帯状電極20aと交差する複数本のリブスペーサ24と、その周囲に位置する矩形枠状のリブスペーサ26とが設けられている。これらリブスペーサ24,26は、封着材16よりも軟化点の高い低融点ガラスから成るものであって、例えばそれぞれ200(μm)程度の幅寸法と250(μm)程度の高さ寸法とを備え、4〜8(mm)程度の一定の中心間隔を以て互いに平行に配設されている。背面板12と前面板14との相互間隔は、上記リブスペーサ24,26の高さ寸法に一致し、例えば、H=250(μm)程度である。なお、この高さ寸法は、気密空間17内で可及的に一様な放電が得られるように、その面積やガス圧等に応じて定められている。
【0030】
また、前面板14の背面板12に対向する内面34には、例えばITO等の透明導電材料から成る透明電極28が設けられている。透明電極28は、例えば、内面34のうち櫛形電極20が設けられている範囲にベタに設けられている。本実施例においては、これら櫛形電極20および透明電極28が放電を発生させるための放電電極に相当する。なお、内面34には、透明電極28に接続された通電パッド27が平面視において前記通電パッド22と並ぶ位置に設けられている。また、透明電極28は、必要に応じて、櫛形電極20と同様に図示しない誘電体層で覆われる。
【0031】
また、前記の通電パッド22が設けられた背面板12の左端部には、電極リード30a,30b(特に区別しないときは電極リード30という)がその背面板12と前面板14との間に設けられた固着材32によって固定されている。電極リード30は、例えばガラスに熱膨張係数の近似した426合金(42%Ni、6%Cr、残部Fe)等から成り、例えば厚さ寸法が0.18(mm)程度、長さ寸法が30(mm)程度、幅寸法が2(mm)程度の帯状薄板である。また、固着材32は、封着材16と同様なフリットガラス等から成るものであって、封着材16と同様に3(mm)程度の幅寸法で設けられている。しかしながら、この固着材32は、図1に示す配設状態から明らかなように、気密空間17の形成には何ら寄与していない。本実施例においては、この固着材32が無機接合材に相当する。
【0032】
図3は、上記の電極リード30a,30bの取付状態を説明するための分解斜視図である。電極リード30aは、その先端が通電パッド22上に位置させられており、電極リード30bは、その先端が通電パッド22の近傍であって、通電パッド27の直下に位置させられている。
【0033】
そして、図4に拡大して示すように、電極リード30a,30bは、各々の先端部の2(mm)程度の長さ範囲が背面板12側に折り曲げられることにより、その高さ寸法がh=1(mm)程度となるように成形されている。この成型高さ寸法hは、前述した背面板12および前面板14の相互間隔H=250(μm)よりも大きい値となるように定められたものである。そのため、それら背面板12および前面板14の相互間に挟まれた電極リード30a,30bは、一点鎖線で示されるように弾性的に変形させられることによって、その高さ寸法hがその相互間隔Hに一致させられ、その先端が通電パッド22或いは背面板12に弾性的に押し付けられた固定状態になっている。すなわち、電極リード30aは、固着材32によって背面板12および前面板14に強固に固着されると共に、弾性的に押し付けられることにより通電パッド22との間の導通が確保されている。一方、電極リード30bは、同様に固着され且つその山形の頂部が前面板14上の通電パッド27に弾性的に押し付けられることにより、その通電パッド27との間の導通が確保されている。
【0034】
なお、前面板14側の通電パッド27に電気的に接続される電極リード30bは、図3に示すように電極リード30aと同様な向きで取り付けられても良いが、上下面が反対となる向きで取り付けることもできる。その場合には、電極リード30aの場合と同様に、先端が通電パッド27に弾性的に押し付けられることによって導通が確保されることになる。
【0035】
また、前面板14の内面34(正確に言えば透明電極28上)、背面板12の内面18、およびリブスペーサ24,26の側面、すなわち気密空間17内面の略全体には、例えば、紫外線励起により白色或いは昼光色に発光させられる蛍光体粉末が塗布されることにより、図示しない蛍光体層が設けられている。蛍光体層の厚さ寸法は、例えば、25〜50(μm)程度である。
【0036】
また、図1、図2において、36は、気密空間17から排気し且つ放電ガスを封入するための排気孔であるが、封止ガラス等で封止されている。
【0037】
以上のように構成された平面型放電ランプ10は、例えば、高周波インバータ回路等を用いて、櫛形電極20および透明電極28間に周期的にそれらの間の極性(正負)が反転させられる例えば1.5(kV)、20(kHz)程度の高周波正弦波またはパルスを印加して駆動される。なお、駆動電流の周波数や電圧、パルスの場合のパルス幅等は、平面型放電ランプ10の大きさや封入ガス圧等に応じて適宜設定される。正弦波またはパルスを印加することにより櫛形電極20と透明電極28との間で所謂電界放電型の放電が発生させられると、放電ガスが電離させられて例えば波長が172(nm)程度或いは147(nm)程度の紫外線を発生させる。そして、その紫外線で蛍光体層が励起されて発光し、その光が前面板14を通してその全面から射出される。
【0038】
ところで、上記の平面型放電ランプ10は、例えば、図5に工程の要部が示される製造工程に従って製造される。図5において、先ず、前面板14の処理工程における透明電極形成工程F1では、その内面34に透明電極28を蒸着や印刷等の適宜の方法で設ける。次いで、蛍光体層形成工程F2では、その透明電極28上に蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、蛍光体層を設ける。なお、透明電極28を覆う誘電体層を設ける場合には、透明電極28を形成した後、上記蛍光体層形成工程F2に先だって誘電体層が形成される。また、前記通電パッド27は、上記の透明電極28を形成する際に同時に同材料で形成され、或いは、その上に重なるように厚膜銀等を塗布することで形成される。
【0039】
一方、背面板12の処理工程においては、先ず、銀電極形成工程R1において、例えば厚膜スクリーン印刷法等を用いて内面18上に厚膜銀ペーストを塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、前記櫛形電極20を形成する。このとき、前記通電パッド22も同時に形成される。次いで、誘電体層形成工程R2においては、厚膜誘電体ペーストを内面18の全面に塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、櫛形電極28を覆う誘電体層を形成する。次いで、スペーサ形成工程R3では、例えば厚膜スクリーン印刷法を用いて厚膜誘電体ペーストを積層印刷することにより、例えば300(μm)程度の高さ寸法の印刷膜を形成し、乾燥および焼成処理を施すことにより、前記のリブスペーサ24,26を形成する。上記印刷高さ寸法は、乾燥および焼成処理による収縮を考慮して定めたものである。
【0040】
次いで、蛍光体層形成工程R4では、厚膜スクリーン印刷或いはディスペンサによる塗布等によって蛍光体ペーストを背面板内面18に塗布し、乾燥処理を施す。次いで、封着材層形成工程R5では、前記封着材16および固着材32を形成するためのフリットをディスペンサ等を用いて塗布し、乾燥処理を施す。
【0041】
次いで、重ね合わせ工程R6では、別途作製した電極リード30a,30bと、前記前面板14を上記の背面板12の上に重ね合わせる。このとき、電極リード30aの先端が通電パッド22上に位置し、且つ電極リード30bの山形部が通電パッド27の直下に位置するように位置合せする。なお、電極リード30a,30bは、以下のように製造される。すなわち、リードピン作製工程L1において、例えばエッチングや打抜き成形等によって帯状の金属薄板を作製し、次いで、酸化膜処理工程L2において、これに酸化膜を形成する。次いで、成形工程L3において、金型を用いて前記のように先端部が折れ曲がった形状にプレス成形を施す。
【0042】
封着工程R7においては、上記のように重ね合わせて耐熱クリップ等で挟んで固定し、焼成炉を通して封着する。このとき、耐熱クリップで挟まれることによって、背面板12および前面板14の相互間隔は、その背面板12上に形成されているリブスペーサ24,26の高さ寸法に一致させられる。そのため、リブスペーサ24,26の高さ寸法が一様となるように適当な精度を以て制御することにより、背面板12と前面板14との相互間隔が全面で略一様になり、延いては、それらにそれぞれ設けられている櫛形電極20と透明電極28との相互間隔が一様になる。この結果、全面における放電の一様性が高められ延いては輝度の一様性が高められる。そして、排気・封止工程R8において、前記排気孔36から排気し、放電ガスを封入して封止することにより、前記の平面型放電ランプ10が得られる。
【0043】
要するに、本実施例においては、電極リード30a,30bは、櫛形電極20や透明電極28に接続された通電パッド22,27にそれらの先端や山形部が弾性的に押し付けられた状態でフリットガラスから成る固着材32によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッド22,27と電極リード30a,30bとの電気的接続状態には何ら影響しないので、半永久的に所期の接続状態に保たれる。また、このような電極リード30の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板14と背面板12との間に電極リード30を挿入した状態でフリットガラスで固定するだけでその電極リード30が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。例えば、前面板14および背面板12を接合する際に同時に電極リード30を固定することもできる。上記により、通電パッド22,27と電極リード30との接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプ10が得られる。
【0044】
また、本実施例によれば、電極リード30の先端が気密空間17の外側に位置させられ、気密封止のために前面板14および背面板12間に設けられる封着材16とは異なる位置に、電極リード30を固定するための固着材32が設けられるため、気密空間17内に設けられた通電パッド22に電極リード30が押し付けられ且つ封着材16で気密封止が成されると同時に電極リード30が固定される固定態様に比較して、その封着材16の流れが電極リード30に妨げられることに起因する気密性低下が生じ得ないので、気密性の確保が容易になる。しかも、金属が露出した通電パッド22,27が気密空間17の外側に配置されることから、放電空間内に金属電極が露出することに起因する誤放電が抑制される利点もある。
【0045】
また、本実施例においては、前面板14の内面34に櫛形電極20との間で放電させるための透明電極28が備えられているが、電極リード30を固定するための固着材32が封着材16とは別に設けられることから、封着処理と同時に電極リード30を固着しても、その電極リード30の存在が放電電極間隔(すなわち櫛形電極20と透明電極28との間隔)に何ら影響しない。そのため、放電電極間隔のばらつきに起因する輝度ばらつきが好適に抑制される。
【0046】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図6に示す平面型放電ランプ40は、封着材16が左下隅部において左方に膨出形成されたものである。すなわち、その封着材16の内周側に形成される気密空間17には、左下隅部に拡大部分42が設けられている。背面板12上の気密空間の内周部には、櫛形電極20およびリブスペーサ24が平面型放電ランプ10と同様に形成されているが、これは図示を省略し、形成されている範囲すなわち有効発光領域44を一点鎖線で示した。上記の拡大部分42は、この有効発光領域44の外側に形成されており、その拡大部分42内に排気孔36が設けられている。
【0048】
排気孔36の近傍には蛍光体層を設けることができないが、本実施例によれば、その排気孔36が有効発光領域44内に位置しないので、これが有効発光領域内に位置する場合に比較して、輝度の一様性が一層高められる利点がある。本実施例の構成によれば、通電パッド22,27を設けるために必要な面積は、図6から明らかなようにその短辺の長手方向における一部分に過ぎない。そのため、上記のように、平面型放電ランプ10においては通電パッド22,27の形成領域として確保されていた部分にまで気密空間を拡大して、空間を有効に利用することができるのである。
【0049】
図7に示す平面型放電ランプ50は、平面型放電ランプ40と略同様に構成されているが、固着材32がその長手方向の両端部において封着材16と接続されている点で相違する。そのため、この実施例では、それら固着材32、封着材16、背面板12および前面板14とによって囲まれた第2の気密空間52が形成されている。本実施例においては、通電パッド22,27がこの第2の気密空間52内に位置する。
【0050】
そのため、この態様によれば、通電パッド22,27の表面が酸化し延いては電極リード30との接触面が経時的に変化することが抑制されるので、導通信頼性が高められる。しかも、封止過程において高温に保たれている間は、内部に閉じこめられた雰囲気ガスの圧力が高められることから、加熱されることによって流動性が高められたガラスフリットが第2の気密空間52内に広がることが、そのガス圧によって抑制される。そのため、固着材32が通電パッド22,27上に流れることに起因する接触不良が抑制される利点もある。
【0051】
図8に示される平面型放電ランプ60は、固着材32を別に設けず、封着材16でこれを兼ねたものである。放電電極間隔のばらつきの問題が特に無く、気密封止にも支障が無ければ、このような構成としても良いのである。例えば、背面板12上に対を成す放電電極62(例えば、後述する図9参照)が備えられた面放電構造の場合には、前面板14と背面板12との相互間隔の要求精度がそれほど高くないため、専ら電極リード30の固定を考慮して封着材16の幅や塗布高さ等を定めることができる。そのため、気密性や電極リード30の固定、導通等を確保することができるので、上記のような構造としても差し支えない。
【0052】
図9は、上述した面放電構造の一例である平面型放電ランプ80の構成を説明するための平面図である。図9において、背面板12の内面には、封着材16の内周側に背面板12の短辺に沿って伸びる複数本の帯状電極82が一様な相互間隔で設けられている。これら複数本の帯状電極82は、背面板12の一対の長辺に沿って設けられた一対の配線に交互に接続されることによって櫛形を成しており、背面板12上には一対の櫛形電極84a,84bが備えられている。本実施例においては、これら一対の櫛形電極84が放電を発生させるための放電電極に相当し、それぞれ気密空間17外において内面18上に設けられた通電パッド22a,22bに接続されている。また、この実施例では背面板12の長辺に沿って、長手状の複数本のスペーサ86が一様な相互間隔を以て設けられている。
【0053】
このように構成された平面型放電ランプ80においては、櫛形電極82a,82b間に、平面型放電ランプ10と同様に高周波インバータ回路等を用いて周期的にそれらの間の極性が反転させられる高周波正弦波またはパルスを印加して駆動することができる。そのため、前面板10側には何ら電極が設けられず、その内面34に蛍光体層のみが設けられることになる。このような構成によれば、気密空間17の外側に通電パッド22a,22bが設けられていることから、気密性が好適に確保されると共に、気密空間17内に放電電極が露出することに起因する誤放電が抑制される利点がある。本発明は、このような面放電構造の平面型放電ランプにも好適に適用される。なお、この図9では、前記図1に対応する構成例を示しているが、上記のような面放電構造は、前記図6、図7、図8に示される構成等にも適用できる。すなわち、封着材16とは別に固着材32を設けない構造にも適用され得る。
【0054】
図10は、電極リード30の固定構造の他の構成例を説明する図である。この実施例においては、固着材32が設けられる位置にリード押え用スペーサ70が備えられている。例えば、気密空間17の高さ寸法Hが500(μm)を超えるような構成では、背面板12と前面板14と間で電極リード30を挟圧して固定しようとすると、その成形高さ寸法hを例えば1(mm)以上に設定する必要がある。しかしながら、このように高い固着材32を安定して形成することは困難である。
【0055】
上記のようにリード押え用スペーサ70を備えた態様では、図示のように、前面板14に代わってこれが電極リード30を背面板12側に押圧する。そのため、気密空間17の高さ寸法Hが高い場合にも、電極リード30の成形高さ寸法hを高くする必要がないので、上述したような不都合が生じない利点がある。なお、リード押え用スペーサ70の高さ寸法は、成形高さ寸法hが平面型放電ランプ10等の場合と同様に1(mm)程度で足りるように適宜定めればよい。また、幅寸法は固着材32と同程度が好適であるが、それよりも小さくされても大きくされても差し支えない。
【0056】
図11は、更に他の平面型放電ランプ90の構成を説明するための図10に対応する断面図である。本実施例においては、前面板14の背面板12とは反対側の一面92に、例えばITO等の透明導電材料から成る透明電極94が設けられている。このように、前面板14側の放電電極がその外面92に設けられる場合にも、背面板12上の放電電極(すなわち櫛形電極20等)との相互間隔は、内面34に透明電極28を設ける場合と同様に、背面板12および前面板14の相互間隔の影響を受けると共に、気密性の問題等も同様に生ずるため、第1実施例等と同様に電極リード30を固着材32で固着する効果や、その内周側にリブスペーサ24,26を設ける効果が同様に得られる。
【0057】
なお、この実施例では、透明電極94に対して、前面板14が誘電体として機能するので、内面34に形成する場合のように誘電体層を設ける必要はない。
【0058】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図2】図1におけるA−A視断面において平面型放電ランプの構成を説明する図である。
【図3】図1の平面型放電ランプにおける電極リードの取付状態を説明するための分解斜視図である。
【図4】図1の平面型放電ランプに用いられている電極リードを拡大して示す図である。
【図5】図1の平面型放電ランプの製造方法の概略を説明するための工程図である。
【図6】本発明の他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図7】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための図2に対応する断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図10】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための電極リード取付部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための電極リード取付部近傍を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10:平面型放電ランプ、12:背面板、14:前面板、17:気密空間、20:櫛形電極、22:通電パッド、24:リブスペーサ、30:電極リード、32:固着材
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型放電ランプの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板(以下、特に区別しないときは何れも基板という)と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面と、例えば、前面板の内面とに設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプが知られている(例えば特許文献1〜5等を参照)。このような平面型放電ランプは、透過型液晶パネルの背面から照射するためのバック・ライト、案内表示板や広告表示板等の内部からその両面または一面を照射するための照明ランプ、或いは、天井や壁等に直付けされる一般照明用の平面型蛍光灯等に用いられる。
【特許文献1】特開平3−110750号公報
【特許文献2】特開平7−21948号公報
【特許文献3】特許第348172号公報
【特許文献4】特開2001−110364号公報
【特許文献5】特開2003−92086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記放電電極は、これに接続されるリードを介して外部回路に接続されるが、放電電極とリードとを接続するに際しては、例えば、その放電電極の一端に設けられた通電パッドにワイヤー・ボンディングや半田付け等でリードを固着していた(例えば、上記特許文献2を参照)。なお、上記特許文献1,3〜5には、放電電極と外部回路との接続については何らの記載がない。
【0004】
しかしながら、ガラス等から構成される基板に設けられた放電電極は比較的脆いため、振動や衝撃が加えられると接着界面近傍で剥離し、或いは、放電電極のリードが固着された部分が基板から剥離する虞があった。これに対して、固着部分をシリコーン系等の樹脂で覆って固めて補強することが行われているが、工数が増大すると共に、基板の外周側にはみ出した樹脂が著しく大きな容積を占めるので、樹脂の突出部分と他の部品との干渉を避けるための空間の確保が必要となる不都合がある。また、リードの一端に設けたクリップ状に成形された金属部品で基板を挟み、その弾性的な押圧力を利用して通電パッドとの導通を確保することも行われているが、使用時の発熱で金属部品が熱膨張させられると押圧力が不足して導通が不十分になり或いは通電パッドから外れる不都合がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、通電パッドとリードとの接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面に設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプであって、(a)前記背面板の内面の外周縁部に設けられ且つ前記放電電極に接続された通電パッドと、(b)前記前面板および前記背面板の間にその外周端縁側から挿入された先端が前記通電パッドに弾性的に押し付けられ且つその背面板外周縁とその通電パッドとの間において無機接合材によってそれら前面板および背面板に固定された電極端子とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、電極端子は、その先端が放電電極に接続された通電パッドに弾性的に押し付けられた状態で無機接合材によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッドと電極端子との電気的接続状態には何ら影響しないので、長期に亘って(例えば半永久的に)所期の接続状態に保たれる。また、このような電極端子の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板と背面板との間に電極端子を挿入した状態で無機接合材で固定するだけでその電極端子が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。例えば、前面板および背面板を接合する際に同時に電極端子を固定することもできる。上記により、通電パッドとリードとの接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプが得られる。
【0008】
ここで、好適には、前記平面型放電ランプは、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置するものである。このようにすれば、気密封止のために前面板および背面板間に設けられる封着材とは異なる位置に、前記電極端子を固定するための前記無機接合材が設けられる。そのため、気密空間内に設けられた通電パッドに電極端子が押し付けられ且つ封着材で気密封止が成されると同時に電極端子が固定される固定態様に比較して、その封着材の流れが電極端子に妨げられることに起因する気密性低下が生じ得ないので、気密性の確保が容易になる。また、放電空間内に金属電極が露出することによる誤放電が好適に抑制される利点もある。因みに、封着部に電極端子が存在すると、その気密性が電極端子に対する封着材の濡れ性や流れ性等に依存することになるので、封止条件の僅かな変化に起因して微小なピンホールが生じ得る。この微小なピンホールは、例えば1〜4週間程度の長期に亘って気密空間内の放電ガスが徐々に漏れるスローリークを引き起こすのである。
【0009】
また、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置する態様において、一層好適には、前記平面型放電ランプは、前記電極端子の先端が前記前面板および前記背面板の間に形成された第2の気密空間内に位置するものである。このようにすれば、電極端子の先端と通電パッドとの接続部が第2の気密空間内に設けられることから、通電パッドの表面が酸化し延いては電極端子との接触面が経時的に変化することが抑制されるので、導通信頼性が高められる。なお、第2の気密空間内には、その封止時の雰囲気気体が封入されることとなるが、封止は高温で行われるため、常温になる封止後には低圧・低湿となるので、通電パッド表面の酸化が好適に抑制されるのである。しかも、封止過程において高温に保たれている間は、内部に閉じこめられた雰囲気ガスの圧力が高められることから、加熱されることによって流動性が高められた無機接合材が第2の気密空間内に広がることが、そのガス圧によって抑制される。そのため、無機接合材が通電パッド上に流れることに起因する接触不良も抑制される。
【0010】
また、前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置する態様において、一層好適には、前記平面型放電ランプは、前記前面板の内面または外面に前記背面板内面の放電電極との間で放電させるための前面側放電電極を備えたものである。このような対向放電型の平面型放電ランプでは、前面板および背面板の相互間隔に応じて放電電極間隔が変化することとなるので、気密空間内において一様な放電を得るためには、要求される一様性に応じてそれらの相互間隔延いては放電電極間隔を制御する必要がある。すなわち、薄型で均一発光を得るためには対向放電構造とすることが好ましいが、そのためには、放電電極間隔を高精度に制御することが要求されるのである。前記のように電極端子を固定するための無機接合材が気密封止のための封着材とは別に設けられる構造では、その電極端子の存在に起因して封着材厚みがばらつき延いては前面板および背面板の相互間隔がばらつくことが好適に抑制される。したがって、輝度ばらつきの少ない平面型放電ランプが得られる。
【0011】
なお、本発明は、背面板の内面に放電電極を備えた平面型放電ランプであれば、種々の内部構造のものに適用でき、例えば、背面板上に対を成して備えられた放電電極間で放電させる面放電構造のものにも適用される。しかしながら、上記のような対向放電構造のものに適用した場合に特に高い効果が得られる。なお、前面板側の放電電極は、背面板内面の放電電極との間で対向放電させられるものであれば、その配設位置や形状は問わない。例えば、前面板の内面に設けられたものであっても、外面に設けられることによりその前面板自身を誘電体として利用するものであってもよい。また、電極形状は、帯状(櫛形を含む)、格子状、蜂巣状等の種々の形状とすることができる。
【0012】
また、前面板上の放電電極は、可及的に光の射出を妨げないものが好ましい。例えば、発生する光に対して不透明な材料から成るものである場合には、可及的に小さい線幅寸法で一様な分布で設けられることが好ましい。また、発生する光に対して透明な材料で構成することも一層好ましい。例えば、可視光に対してはITO(酸化インジウム錫)やSnO2(酸化錫)等が好適に用いられる。
【0013】
また、好適には、前記気密空間は略矩形を成し且つその一部が前記通電パッドが設けられた外周端縁側に拡大された平面形状を備え、発光領域から外れたその拡大部分にその気密空間から排気するために形成された排気孔を備えたものである。このようにすれば、排気孔が発光領域から外れた位置に設けられることから、発光の一様性が高められる。なお、この排気孔は、製造過程において気密空間内に放電ガスを封入した後に封止された状態にある。
【0014】
また、好適には、前記平面型放電ランプは、前記気密空間の高さ寸法を制御するためのスペーサをその気密空間内に備え、且つ前記電極端子はその厚さ寸法がそのスペーサの高さ寸法よりも小さく、且つその先端部が前記背面板側に折り曲げられることにより、非押圧状態においてその先端がそのスペーサの高さ寸法よりも所定値大きい値だけその折曲げ位置の下方に位置するものである。このようにすれば、前面板および背面板を互いに押圧した状態で封止すると、それらの相互間隔はスペーサ高さになることから、折り曲げられた先端部の高さ寸法(すなわち折曲げ位置から先端までの高さ寸法)がそのスペーサ高さよりも大きくされた折曲げ部分は、前面板および背面板の間で押圧されることによりその先端が弾性的に通電パッドに押し付けられる。そのため、この状態で前面板および背面板を封止すると、先端が弾性的に導通パッドに押し付けられた電極端子の固定状態が容易に得られる。
【0015】
なお、上記スペーサは、背面板または前面板に一体的に形成されたものであっても、それらのうち一方または両方に固着形成されたものであっても、別部材に形成されて背面板内面等に固着されるものであってもよい。
【0016】
上記電極端子の厚さ寸法および先端部の高さ寸法は、平面型放電ランプの各部の寸法に応じて適宜定められるが、例えば、スペーサ高さが250(μm)程度の場合には厚さ寸法が180(μm)程度、折曲げ高さ寸法が1(mm)程度である。すなわち、前記所定値は例えば750(μm)程度である。
【0017】
なお、本発明において、気密空間内で発生させられる光は可視光に限られず、紫外線や赤外線等の肉眼で捉え得ない光であってもよい。請求の範囲に言う「透光性を有する前面板」は、気密空間内で発生させられる光が透過し得るものであることを意味し、可視光が透過し得るものに限られない。
【0018】
また、前記気密空間は、平面型放電ランプを構成し得るような扁平なものであれば、前面板側および背面板側が平坦なものに限られない。例えば、背面板や前面板の内面に光の散乱等の目的で凹凸が設けられているものも、請求の範囲に言う「扁平な気密空間」に含まれる。
【0019】
また、好適には、前記無機接合材および前記封着材は、ガラス、好適にはフリットガラスから成るものである。
【0020】
また、前記電極端子は、前記通電パッドに弾性的に押圧され得る導体であって、無機接合材による固定時に十分な耐熱性を有するものであれば、適宜の材料を用い得る。但し、ガラスと熱膨張係数の近似する金属材料が好ましく、例えば、426合金等が好適である。
【0021】
また、前記通電パッドは、適宜の大きさで設けることができるが、その形成位置の近傍は発光領域として利用し得ないので、電極端子との確実な接触を確保できる範囲で可及的に小さくされることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、蛍光体層を備えると共に放電で発生した紫外線でその蛍光体層を励起して発光させる形式の平面型放電ランプに好適に適用されるが、蛍光体層を備えない水銀灯、ナトリウム放電灯、ネオン・ランプ等の他の形式の放電灯が応用された平面型放電ランプにも本発明は同様に適用される。
【0023】
また、気密空間を形成するための前面板および背面板は、例えばガラス材料で構成されるが、背面板側から光を射出させない場合には、背面板は透光性を有する必要が無いので、セラミックス、琺瑯等の不透明な材料で構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0025】
図1は、本発明の一実施例の平面型放電ランプ10の構成を説明するための平面図であり、図2は、そのA−A視断面図である。平面型放電ランプ10は、例えばキセノン・ガスが放電ガスとして用いられた冷陰極管に分類されるものであって、有害な水銀を含まず、且つ全温度においてmsecオーダで立ち上がる応答性を備えている。このような平面型放電ランプ10は、例えば、液晶テレビやカー・ナビゲーション・システム等の表示装置を構成する液晶パネルのバックライトとして用いられる。
【0026】
図1、図2において、平面型放電ランプ10は、背面板12および前面板14が僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置されることにより、全体が薄型平箱状を成している。これら背面板12および前面板14は、それぞれ例えば厚さ寸法が0.7〜1.1(mm)程度で150×200(mm)程度の大きさを備えたソーダライムガラス製のガラス平板から成るものである。これらはその周縁部に略沿って矩形に設けられたフリットガラス等から成る幅寸法が3(mm)程度の封着材16によって互いに気密に固着されており、それらの間に矩形の気密空間17が形成されている。この気密空間17内には、キセノン或いはキセノンを主成分とした混合ガス(例えば、キセノン90(%)、アルゴン10(%))が例えば40(kPa)(≒300(Torr))程度の圧力で封入されている。この封入ガスすなわち放電ガスのガス圧は、気密空間17内の全面で略一様な放電が発生するように定められたものである。
【0027】
上記背面板12の前面板14側の一面すなわち内面18には、上記封着材16の内周側に背面板12の長辺に沿って伸びる簾状に複数本の帯状電極20aが設けられている。これら複数本の帯状電極20aは、背面板12の短辺に沿って設けられた配線に一端において接続されることによって櫛形を成しており、背面板12上には一つの櫛形電極20が備えられている。櫛形電極20は、気密空間17外において内面18上に設けられた通電パッド22に接続されている。前記封着材16は、図1における左端位置においては背面板12の縁よりも例えば3〜5(mm)程度だけ右寄りの位置に設けられており、上記通電パッド22は、その封着材16の左方に設けられることによって気密空間17外に位置させられているのである。
【0028】
また、上記櫛形電極20および通電パッド22は、例えば厚膜銀等から成るものであって、例えば何れも15(μm)程度の厚さ寸法で設けられている。また、帯状電極20aは、例えば個々の幅寸法が2(mm)程度で、その中心間隔は5(mm)程度である。また、通電パッド22は、例えば3×3(mm)程度の矩形で設けられている。なお、櫛形電極20は、例えば100(μm)程度の厚さ寸法の誘電体層で覆われているが、図1、図2においてはこれを省略した。
【0029】
また、上記背面板12の内面18には、上記複数本の帯状電極20aと交差する複数本のリブスペーサ24と、その周囲に位置する矩形枠状のリブスペーサ26とが設けられている。これらリブスペーサ24,26は、封着材16よりも軟化点の高い低融点ガラスから成るものであって、例えばそれぞれ200(μm)程度の幅寸法と250(μm)程度の高さ寸法とを備え、4〜8(mm)程度の一定の中心間隔を以て互いに平行に配設されている。背面板12と前面板14との相互間隔は、上記リブスペーサ24,26の高さ寸法に一致し、例えば、H=250(μm)程度である。なお、この高さ寸法は、気密空間17内で可及的に一様な放電が得られるように、その面積やガス圧等に応じて定められている。
【0030】
また、前面板14の背面板12に対向する内面34には、例えばITO等の透明導電材料から成る透明電極28が設けられている。透明電極28は、例えば、内面34のうち櫛形電極20が設けられている範囲にベタに設けられている。本実施例においては、これら櫛形電極20および透明電極28が放電を発生させるための放電電極に相当する。なお、内面34には、透明電極28に接続された通電パッド27が平面視において前記通電パッド22と並ぶ位置に設けられている。また、透明電極28は、必要に応じて、櫛形電極20と同様に図示しない誘電体層で覆われる。
【0031】
また、前記の通電パッド22が設けられた背面板12の左端部には、電極リード30a,30b(特に区別しないときは電極リード30という)がその背面板12と前面板14との間に設けられた固着材32によって固定されている。電極リード30は、例えばガラスに熱膨張係数の近似した426合金(42%Ni、6%Cr、残部Fe)等から成り、例えば厚さ寸法が0.18(mm)程度、長さ寸法が30(mm)程度、幅寸法が2(mm)程度の帯状薄板である。また、固着材32は、封着材16と同様なフリットガラス等から成るものであって、封着材16と同様に3(mm)程度の幅寸法で設けられている。しかしながら、この固着材32は、図1に示す配設状態から明らかなように、気密空間17の形成には何ら寄与していない。本実施例においては、この固着材32が無機接合材に相当する。
【0032】
図3は、上記の電極リード30a,30bの取付状態を説明するための分解斜視図である。電極リード30aは、その先端が通電パッド22上に位置させられており、電極リード30bは、その先端が通電パッド22の近傍であって、通電パッド27の直下に位置させられている。
【0033】
そして、図4に拡大して示すように、電極リード30a,30bは、各々の先端部の2(mm)程度の長さ範囲が背面板12側に折り曲げられることにより、その高さ寸法がh=1(mm)程度となるように成形されている。この成型高さ寸法hは、前述した背面板12および前面板14の相互間隔H=250(μm)よりも大きい値となるように定められたものである。そのため、それら背面板12および前面板14の相互間に挟まれた電極リード30a,30bは、一点鎖線で示されるように弾性的に変形させられることによって、その高さ寸法hがその相互間隔Hに一致させられ、その先端が通電パッド22或いは背面板12に弾性的に押し付けられた固定状態になっている。すなわち、電極リード30aは、固着材32によって背面板12および前面板14に強固に固着されると共に、弾性的に押し付けられることにより通電パッド22との間の導通が確保されている。一方、電極リード30bは、同様に固着され且つその山形の頂部が前面板14上の通電パッド27に弾性的に押し付けられることにより、その通電パッド27との間の導通が確保されている。
【0034】
なお、前面板14側の通電パッド27に電気的に接続される電極リード30bは、図3に示すように電極リード30aと同様な向きで取り付けられても良いが、上下面が反対となる向きで取り付けることもできる。その場合には、電極リード30aの場合と同様に、先端が通電パッド27に弾性的に押し付けられることによって導通が確保されることになる。
【0035】
また、前面板14の内面34(正確に言えば透明電極28上)、背面板12の内面18、およびリブスペーサ24,26の側面、すなわち気密空間17内面の略全体には、例えば、紫外線励起により白色或いは昼光色に発光させられる蛍光体粉末が塗布されることにより、図示しない蛍光体層が設けられている。蛍光体層の厚さ寸法は、例えば、25〜50(μm)程度である。
【0036】
また、図1、図2において、36は、気密空間17から排気し且つ放電ガスを封入するための排気孔であるが、封止ガラス等で封止されている。
【0037】
以上のように構成された平面型放電ランプ10は、例えば、高周波インバータ回路等を用いて、櫛形電極20および透明電極28間に周期的にそれらの間の極性(正負)が反転させられる例えば1.5(kV)、20(kHz)程度の高周波正弦波またはパルスを印加して駆動される。なお、駆動電流の周波数や電圧、パルスの場合のパルス幅等は、平面型放電ランプ10の大きさや封入ガス圧等に応じて適宜設定される。正弦波またはパルスを印加することにより櫛形電極20と透明電極28との間で所謂電界放電型の放電が発生させられると、放電ガスが電離させられて例えば波長が172(nm)程度或いは147(nm)程度の紫外線を発生させる。そして、その紫外線で蛍光体層が励起されて発光し、その光が前面板14を通してその全面から射出される。
【0038】
ところで、上記の平面型放電ランプ10は、例えば、図5に工程の要部が示される製造工程に従って製造される。図5において、先ず、前面板14の処理工程における透明電極形成工程F1では、その内面34に透明電極28を蒸着や印刷等の適宜の方法で設ける。次いで、蛍光体層形成工程F2では、その透明電極28上に蛍光体ペーストを塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、蛍光体層を設ける。なお、透明電極28を覆う誘電体層を設ける場合には、透明電極28を形成した後、上記蛍光体層形成工程F2に先だって誘電体層が形成される。また、前記通電パッド27は、上記の透明電極28を形成する際に同時に同材料で形成され、或いは、その上に重なるように厚膜銀等を塗布することで形成される。
【0039】
一方、背面板12の処理工程においては、先ず、銀電極形成工程R1において、例えば厚膜スクリーン印刷法等を用いて内面18上に厚膜銀ペーストを塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、前記櫛形電極20を形成する。このとき、前記通電パッド22も同時に形成される。次いで、誘電体層形成工程R2においては、厚膜誘電体ペーストを内面18の全面に塗布し、乾燥および焼成処理を施すことにより、櫛形電極28を覆う誘電体層を形成する。次いで、スペーサ形成工程R3では、例えば厚膜スクリーン印刷法を用いて厚膜誘電体ペーストを積層印刷することにより、例えば300(μm)程度の高さ寸法の印刷膜を形成し、乾燥および焼成処理を施すことにより、前記のリブスペーサ24,26を形成する。上記印刷高さ寸法は、乾燥および焼成処理による収縮を考慮して定めたものである。
【0040】
次いで、蛍光体層形成工程R4では、厚膜スクリーン印刷或いはディスペンサによる塗布等によって蛍光体ペーストを背面板内面18に塗布し、乾燥処理を施す。次いで、封着材層形成工程R5では、前記封着材16および固着材32を形成するためのフリットをディスペンサ等を用いて塗布し、乾燥処理を施す。
【0041】
次いで、重ね合わせ工程R6では、別途作製した電極リード30a,30bと、前記前面板14を上記の背面板12の上に重ね合わせる。このとき、電極リード30aの先端が通電パッド22上に位置し、且つ電極リード30bの山形部が通電パッド27の直下に位置するように位置合せする。なお、電極リード30a,30bは、以下のように製造される。すなわち、リードピン作製工程L1において、例えばエッチングや打抜き成形等によって帯状の金属薄板を作製し、次いで、酸化膜処理工程L2において、これに酸化膜を形成する。次いで、成形工程L3において、金型を用いて前記のように先端部が折れ曲がった形状にプレス成形を施す。
【0042】
封着工程R7においては、上記のように重ね合わせて耐熱クリップ等で挟んで固定し、焼成炉を通して封着する。このとき、耐熱クリップで挟まれることによって、背面板12および前面板14の相互間隔は、その背面板12上に形成されているリブスペーサ24,26の高さ寸法に一致させられる。そのため、リブスペーサ24,26の高さ寸法が一様となるように適当な精度を以て制御することにより、背面板12と前面板14との相互間隔が全面で略一様になり、延いては、それらにそれぞれ設けられている櫛形電極20と透明電極28との相互間隔が一様になる。この結果、全面における放電の一様性が高められ延いては輝度の一様性が高められる。そして、排気・封止工程R8において、前記排気孔36から排気し、放電ガスを封入して封止することにより、前記の平面型放電ランプ10が得られる。
【0043】
要するに、本実施例においては、電極リード30a,30bは、櫛形電極20や透明電極28に接続された通電パッド22,27にそれらの先端や山形部が弾性的に押し付けられた状態でフリットガラスから成る固着材32によって固定されることから、振動や衝撃が加えられ或いは使用時の発熱等が生じても、通電パッド22,27と電極リード30a,30bとの電気的接続状態には何ら影響しないので、半永久的に所期の接続状態に保たれる。また、このような電極リード30の固定構造によれば、信頼性を高めるために樹脂で接合部分を覆う等の後処理が無用であることから接合部分の容積増大も小さく留められる。しかも、前面板14と背面板12との間に電極リード30を挿入した状態でフリットガラスで固定するだけでその電極リード30が取り付けられるため、工数が特に増大することもない。例えば、前面板14および背面板12を接合する際に同時に電極リード30を固定することもできる。上記により、通電パッド22,27と電極リード30との接続部の信頼性が高く、接続に伴う容積増大や工数増大の少ない平面型放電ランプ10が得られる。
【0044】
また、本実施例によれば、電極リード30の先端が気密空間17の外側に位置させられ、気密封止のために前面板14および背面板12間に設けられる封着材16とは異なる位置に、電極リード30を固定するための固着材32が設けられるため、気密空間17内に設けられた通電パッド22に電極リード30が押し付けられ且つ封着材16で気密封止が成されると同時に電極リード30が固定される固定態様に比較して、その封着材16の流れが電極リード30に妨げられることに起因する気密性低下が生じ得ないので、気密性の確保が容易になる。しかも、金属が露出した通電パッド22,27が気密空間17の外側に配置されることから、放電空間内に金属電極が露出することに起因する誤放電が抑制される利点もある。
【0045】
また、本実施例においては、前面板14の内面34に櫛形電極20との間で放電させるための透明電極28が備えられているが、電極リード30を固定するための固着材32が封着材16とは別に設けられることから、封着処理と同時に電極リード30を固着しても、その電極リード30の存在が放電電極間隔(すなわち櫛形電極20と透明電極28との間隔)に何ら影響しない。そのため、放電電極間隔のばらつきに起因する輝度ばらつきが好適に抑制される。
【0046】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前述した実施例と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図6に示す平面型放電ランプ40は、封着材16が左下隅部において左方に膨出形成されたものである。すなわち、その封着材16の内周側に形成される気密空間17には、左下隅部に拡大部分42が設けられている。背面板12上の気密空間の内周部には、櫛形電極20およびリブスペーサ24が平面型放電ランプ10と同様に形成されているが、これは図示を省略し、形成されている範囲すなわち有効発光領域44を一点鎖線で示した。上記の拡大部分42は、この有効発光領域44の外側に形成されており、その拡大部分42内に排気孔36が設けられている。
【0048】
排気孔36の近傍には蛍光体層を設けることができないが、本実施例によれば、その排気孔36が有効発光領域44内に位置しないので、これが有効発光領域内に位置する場合に比較して、輝度の一様性が一層高められる利点がある。本実施例の構成によれば、通電パッド22,27を設けるために必要な面積は、図6から明らかなようにその短辺の長手方向における一部分に過ぎない。そのため、上記のように、平面型放電ランプ10においては通電パッド22,27の形成領域として確保されていた部分にまで気密空間を拡大して、空間を有効に利用することができるのである。
【0049】
図7に示す平面型放電ランプ50は、平面型放電ランプ40と略同様に構成されているが、固着材32がその長手方向の両端部において封着材16と接続されている点で相違する。そのため、この実施例では、それら固着材32、封着材16、背面板12および前面板14とによって囲まれた第2の気密空間52が形成されている。本実施例においては、通電パッド22,27がこの第2の気密空間52内に位置する。
【0050】
そのため、この態様によれば、通電パッド22,27の表面が酸化し延いては電極リード30との接触面が経時的に変化することが抑制されるので、導通信頼性が高められる。しかも、封止過程において高温に保たれている間は、内部に閉じこめられた雰囲気ガスの圧力が高められることから、加熱されることによって流動性が高められたガラスフリットが第2の気密空間52内に広がることが、そのガス圧によって抑制される。そのため、固着材32が通電パッド22,27上に流れることに起因する接触不良が抑制される利点もある。
【0051】
図8に示される平面型放電ランプ60は、固着材32を別に設けず、封着材16でこれを兼ねたものである。放電電極間隔のばらつきの問題が特に無く、気密封止にも支障が無ければ、このような構成としても良いのである。例えば、背面板12上に対を成す放電電極62(例えば、後述する図9参照)が備えられた面放電構造の場合には、前面板14と背面板12との相互間隔の要求精度がそれほど高くないため、専ら電極リード30の固定を考慮して封着材16の幅や塗布高さ等を定めることができる。そのため、気密性や電極リード30の固定、導通等を確保することができるので、上記のような構造としても差し支えない。
【0052】
図9は、上述した面放電構造の一例である平面型放電ランプ80の構成を説明するための平面図である。図9において、背面板12の内面には、封着材16の内周側に背面板12の短辺に沿って伸びる複数本の帯状電極82が一様な相互間隔で設けられている。これら複数本の帯状電極82は、背面板12の一対の長辺に沿って設けられた一対の配線に交互に接続されることによって櫛形を成しており、背面板12上には一対の櫛形電極84a,84bが備えられている。本実施例においては、これら一対の櫛形電極84が放電を発生させるための放電電極に相当し、それぞれ気密空間17外において内面18上に設けられた通電パッド22a,22bに接続されている。また、この実施例では背面板12の長辺に沿って、長手状の複数本のスペーサ86が一様な相互間隔を以て設けられている。
【0053】
このように構成された平面型放電ランプ80においては、櫛形電極82a,82b間に、平面型放電ランプ10と同様に高周波インバータ回路等を用いて周期的にそれらの間の極性が反転させられる高周波正弦波またはパルスを印加して駆動することができる。そのため、前面板10側には何ら電極が設けられず、その内面34に蛍光体層のみが設けられることになる。このような構成によれば、気密空間17の外側に通電パッド22a,22bが設けられていることから、気密性が好適に確保されると共に、気密空間17内に放電電極が露出することに起因する誤放電が抑制される利点がある。本発明は、このような面放電構造の平面型放電ランプにも好適に適用される。なお、この図9では、前記図1に対応する構成例を示しているが、上記のような面放電構造は、前記図6、図7、図8に示される構成等にも適用できる。すなわち、封着材16とは別に固着材32を設けない構造にも適用され得る。
【0054】
図10は、電極リード30の固定構造の他の構成例を説明する図である。この実施例においては、固着材32が設けられる位置にリード押え用スペーサ70が備えられている。例えば、気密空間17の高さ寸法Hが500(μm)を超えるような構成では、背面板12と前面板14と間で電極リード30を挟圧して固定しようとすると、その成形高さ寸法hを例えば1(mm)以上に設定する必要がある。しかしながら、このように高い固着材32を安定して形成することは困難である。
【0055】
上記のようにリード押え用スペーサ70を備えた態様では、図示のように、前面板14に代わってこれが電極リード30を背面板12側に押圧する。そのため、気密空間17の高さ寸法Hが高い場合にも、電極リード30の成形高さ寸法hを高くする必要がないので、上述したような不都合が生じない利点がある。なお、リード押え用スペーサ70の高さ寸法は、成形高さ寸法hが平面型放電ランプ10等の場合と同様に1(mm)程度で足りるように適宜定めればよい。また、幅寸法は固着材32と同程度が好適であるが、それよりも小さくされても大きくされても差し支えない。
【0056】
図11は、更に他の平面型放電ランプ90の構成を説明するための図10に対応する断面図である。本実施例においては、前面板14の背面板12とは反対側の一面92に、例えばITO等の透明導電材料から成る透明電極94が設けられている。このように、前面板14側の放電電極がその外面92に設けられる場合にも、背面板12上の放電電極(すなわち櫛形電極20等)との相互間隔は、内面34に透明電極28を設ける場合と同様に、背面板12および前面板14の相互間隔の影響を受けると共に、気密性の問題等も同様に生ずるため、第1実施例等と同様に電極リード30を固着材32で固着する効果や、その内周側にリブスペーサ24,26を設ける効果が同様に得られる。
【0057】
なお、この実施例では、透明電極94に対して、前面板14が誘電体として機能するので、内面34に形成する場合のように誘電体層を設ける必要はない。
【0058】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図2】図1におけるA−A視断面において平面型放電ランプの構成を説明する図である。
【図3】図1の平面型放電ランプにおける電極リードの取付状態を説明するための分解斜視図である。
【図4】図1の平面型放電ランプに用いられている電極リードを拡大して示す図である。
【図5】図1の平面型放電ランプの製造方法の概略を説明するための工程図である。
【図6】本発明の他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図7】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための図2に対応する断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための平面図である。
【図10】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための電極リード取付部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の更に他の実施例の平面型放電ランプの構成を説明するための電極リード取付部近傍を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10:平面型放電ランプ、12:背面板、14:前面板、17:気密空間、20:櫛形電極、22:通電パッド、24:リブスペーサ、30:電極リード、32:固着材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面に設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプであって、
前記背面板の内面の外周縁部に設けられ且つ前記放電電極に接続された通電パッドと、
前記前面板および前記背面板の間にその外周端縁側から挿入された先端が前記通電パッドに弾性的に押し付けられ且つその背面板外周縁とその通電パッドとの間において無機接合材によってそれら前面板および背面板に固定された電極端子と
を、含むことを特徴とする平面型放電ランプ。
【請求項2】
前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置するものである請求項1の平面型放電ランプ。
【請求項3】
前記電極端子の先端が前記前面板および前記背面板の間に形成された第2の気密空間内に位置するものである請求項2の平面型放電ランプ。
【請求項4】
前記前面板の内面または外面に前記背面板内面の放電電極との間で放電させるための前面側放電電極を備えたものである請求項2の平面型放電ランプ。
【請求項5】
前記気密空間は略矩形を成し且つその一部が前記通電パッドが設けられた外周端縁側に拡大された平面形状を備え、発光領域から外れたその拡大部分にその気密空間から排気するために形成された排気孔を備えたものである請求項1の平面型放電ランプ。
【請求項6】
前記気密空間の高さ寸法を制御するためのスペーサをその気密空間内に備え、且つ前記電極端子はその厚さ寸法がそのスペーサの高さ寸法よりも小さく、且つその先端部が前記背面板側に折り曲げられることにより、非押圧状態においてその先端がそのスペーサの高さ寸法よりも所定値大きい値だけその折曲げ位置の下方に位置するものである請求項1の平面型放電ランプ。
【請求項1】
透光性を有する前面板と、その前面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板と、その気密空間内で放電を発生させるためにその背面板の気密空間側内面に設けられた放電電極とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記前面板を通して射出する形式の平面型放電ランプであって、
前記背面板の内面の外周縁部に設けられ且つ前記放電電極に接続された通電パッドと、
前記前面板および前記背面板の間にその外周端縁側から挿入された先端が前記通電パッドに弾性的に押し付けられ且つその背面板外周縁とその通電パッドとの間において無機接合材によってそれら前面板および背面板に固定された電極端子と
を、含むことを特徴とする平面型放電ランプ。
【請求項2】
前記電極端子の先端が前記気密空間の外側に位置するものである請求項1の平面型放電ランプ。
【請求項3】
前記電極端子の先端が前記前面板および前記背面板の間に形成された第2の気密空間内に位置するものである請求項2の平面型放電ランプ。
【請求項4】
前記前面板の内面または外面に前記背面板内面の放電電極との間で放電させるための前面側放電電極を備えたものである請求項2の平面型放電ランプ。
【請求項5】
前記気密空間は略矩形を成し且つその一部が前記通電パッドが設けられた外周端縁側に拡大された平面形状を備え、発光領域から外れたその拡大部分にその気密空間から排気するために形成された排気孔を備えたものである請求項1の平面型放電ランプ。
【請求項6】
前記気密空間の高さ寸法を制御するためのスペーサをその気密空間内に備え、且つ前記電極端子はその厚さ寸法がそのスペーサの高さ寸法よりも小さく、且つその先端部が前記背面板側に折り曲げられることにより、非押圧状態においてその先端がそのスペーサの高さ寸法よりも所定値大きい値だけその折曲げ位置の下方に位置するものである請求項1の平面型放電ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−164751(P2006−164751A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354492(P2004−354492)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】
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