説明

平面型蛍光灯

【課題】
雑音を発生することなく長寿命で、かつ一様な平面状発光を得ることを可能とする。
【解決手段】
ガラス板11,12の内面に透明電極24,平面状電極25がそれぞれ形成され、これら間がスペーサガラス13によって接続されて密封容器15が構成され、透明電極24の内面に蛍光体膜18が形成され、この透明電極24のガラススペーサ13より突出した周縁に周回補助導線31が形成されている。これと電極25との間に正弦波電源34が接続されて放電、発光される。電極25の内面にガラススペーサよりなる誘電体膜35が形成される。内部に封入ガスが封入される。放電ガスの分圧は10torr程度とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液晶ビデオカメラの液晶表示器などのバックライトとして用いられる平面型蛍光灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の平面型蛍光灯を図3,図4に示す。前面ガラス板11と背面ガラス板12とはその周辺部がガラススペーサ13を介して互いに融着され、内部が密封状態とされる。ガラススペーサ13の一部分に穴が開けられ、それに封止管14が挿入してつけられ、これにより内部を真空にしたり、放電用ガスを封入したりするために利用される。このようにして密封容器15が構成される。この密封容器15内の両端に互いに平行した断面U字状の電極16,17が配され、また、前面ガラス板11,背面ガラス板12の各内面にそれぞれ蛍光体膜18,19がそれぞれ形成されている。密封容器15内には封入ガス、つまり、水銀蒸気と放電ガスなどが封入されている。なお放電ガスというのはアルゴンガスやネオンガスなどの希ガス、またはそれら混合ガスのことである。また、封入ガスの圧力は通常放電ガスの分圧によって決定される。
【0003】
電極16,17間に放電を行わせると水銀蒸気が励起されることによって紫外線が発生し、その紫外線によって蛍光体膜18,19が励起されて発光する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の平面型蛍光灯においては、その全面に渡って放電発光するようにするためには放電ガスの分圧を低く4torr以下とする必要がある。さもなければ帯状の発光となり、一様な面状発光にならない。また帯状の発光とならないように電極間に印加する電圧をパルス電圧とする必要もあった。このようなパルス電圧蛍光灯においては封入ガスの圧力(つまり、放電ガスの分圧)が低いと放電による電極のスパッタを増大し、蛍光灯の寿命が著しく短くなることが知られており、また印加する電圧がパルス状であるため雑音の発生が多く、特に明るくするためには高い電圧のパルスを発生する必要があり、そばに電子機器が設けられる場合は、電磁雑音を多数発生するため好ましくない。
【0005】
実開平1−177860号では図5に示すように、電極16,17を誘電体膜21、22で覆って電極を隔絶し、これにより寿命を長くすることが提案されている。しかし、印加電圧による雑音の発生を少なくするため、印加電圧を正弦波状にすると図5に示すように、放電発光部分23が帯状となり、一様な全面発光が得られない。
【0006】
一方、実開平1−75958号では図6に示すように、前面ガラス板11,背面ガラス板12の内面全体にそれぞれ透明電極24,25を形成し、その内面に蛍光体膜18,19を形成したものが提案されている。しかし、この場合も放電ガスの分圧を高くすると放電発光部26が柱状となり、つまり放電が一部分に集中して発光もこの部分にしか生じないという問題があった。
【0007】
この発明の目的は放電ガスの分圧を比較的高く、例えば5乃至20torr程度にすることができ、しかも面状に一様に発光し、また、使用する電圧も正弦波とすることができる平面型蛍光灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、密封容器の少なくとも一面はガラス板とされ、そのガラス板の内面に透明電極が形成され、この透明電極の内面に蛍光体膜が形成され、蛍光体膜と対抗する密封容器の内面に平面状電極が形成され、平面状電極の内面と蛍光体膜との間に誘電体膜が形成される。
【0009】
請求項2の発明によれば、ガラス板内面に透明電極を形成することなく蛍光体膜を直接形成し、その蛍光体膜と平面状電極との間にメッシュ状電極が配される。そのメッシュ状電極と平面状電極との間に誘電体膜が設けられる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、誘電体膜により2つの放電電極間の電極を隔離し、しかも平面状に対抗させているため各部で一様な放電が得られ、一様な面状発光が得られる。しかも、雑音の発生しにくい正弦波を使用することができ、またアルゴンの分圧も5乃至20torrと比較的高くすることができ、寿命を著しく長くすることが可能となる。更に誘電体膜35の存在により、放電時に流れる電流を制限することができるため、蛍光灯に必要とするいわゆる電源安定化器、つまりコイルとかコンデンサを使用する必要がない。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、蛍光体膜を痛めずに発光が行えるため、蛍光体膜、強いては蛍光灯自体の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に請求項1の発明の実施例を示し、図3乃至図6と対応する部分に同一符号を付けてある。この実施例においては、密封容器15の少なくとも一面、つまり前面はガラス板11とされ、その内面に透明電極24が形成される。この透明電極24は、例えば酸化錫で構成され、前面ガラス板11の全面に渡って形成されている。また、背面ガラス板12は必ずしもガラス板ではなく、例えばセラミック板でもよく、気密性が保たれるものであればよい。この背面ガラス板12の内面に全面に渡って、平面状電極25が、例えばアルミニウム、ニッケルなど比較的電気伝導度のよい金属で形成される。
【0013】
この前面ガラス板11と背面ガラス板12とがガラススペーサ13を介してガラスフリットによって互いに融着される。この場合電極24,25をそれぞれ介して融着され、しかもこれらガラス板11,12の周縁部より内側において、即ちこれらガラス板11,12の周辺部全体がガラススペーサ13より外部に突出されている。そして、この例では透明電極24上の外部へ出た周辺部に周回補助導線31がその全周に渡って例えば銀ペーストにより接着される。また、電極24,25の外部にでている周辺部においてリード線32,33の各一端がそれぞれ銀ペーストにより接着され、これらリード線32,33間に電源34を接続することができるようにされる。蛍光体膜18はそのガラススペーサ13で囲まれたその周辺内において透明電極24の全面に形成されている。またこの実施例では、平面状電極25の内面にガラススペーサ13で囲まれた全面に渡って誘電体膜35が形成されている。この誘電体膜35としては例えばガラスペーストが使用される。この実施例の放電ガスの分圧は例えば10torr程度とされる。
【0014】
この構成によれば電極24,25間に電源34より正弦波電圧を印加しても誘電体膜35の存在によって誘電体を介して電子のやりとりが行われ、放電が発生して水銀蒸気が励起され紫外線が発生し、蛍光体膜18が励起され発光する。このように透明電極24と平面状電極25との間に誘電体膜35が存在するため、これら電極24,25間が隔絶されるため一様な平面状の放電が行われ、従って、一様な平面状の発光が得られる。
【0015】
さらに、通常の放電灯では、一旦放電が始まると放電灯自体の電気抵抗が0に近づき、電流が際限なく流れようとするため、それを防止するためにいわゆる電源安定化器、つまりコイルやコンデンサを設けて、流れる電流を制限している。しかし、この構成によれば、誘電体膜35がコンデンサの役割を果して流れる電流を制限しているため、別に電源安定器を設ける必要がない。
【0016】
図2に請求項2の発明の実施例を示し、図1と対応する部分には同一符号を付けてある。この実施例においては図1における透明電極24は省略され、従って蛍光体膜18が前面ガラス板11の内面に直接形成されている。また、この蛍光体膜18と誘電体膜35との間にメッシュ状電極37が配される。つまりメッシュ状電極37は誘電体膜35を介して平面状電極25と対抗している。メッシュ状電極37の材質としてはステンレスあるいはスパッタが発生しにくい鉄とニッケルの合金やチタンなどを使用することができる。
【0017】
請求項1の発明のように透明電極24の上から蛍光体膜18が形成されている場合、放電が蛍光体膜18を挟んで行われることになり、それによって蛍光体膜18が早く劣化してしまう。また、放電が蛍光体膜18を挟んで行われないように、電極24を蛍光体膜18と誘電体膜35の間に設ける場合は、放電の際に励起された紫外線が電極24によって遮られ、蛍光体膜18まで届かずうまく発光されない。
【0018】
そこで、蛍光体膜18と誘電体膜35の間に設けられる電極37をメッシュ状とすることで励起される紫外線をうまく通過させ、蛍光体膜18を傷めることなく一様な発光を得られるようにしたのが請求項2の発明である。なお、ここで言っている「メッシュ状」とは網目状のことだけではなく、例えばいくつもの透孔や隙間があいている形状も含まれる。つまり、紫外線が通過できるようになっていればよい。
【0019】
メッシュ状電極37とリード線33を介して電源34と接続すると、メッシュ状電極37と平面状電極25との間に電圧が印加されて、これら間に放電が発生し、これにより励起された紫外線はメッシュ状電極37の隙間を通過して、蛍光体膜18に入射され、これを発光する。この場合もリード線33の取り付けを容易にするため平面状電極25が形成された背面ガラス板12はガラススペーサ13よりも外部に突出している。また、誘電体膜35の存在により、電極25,37間が隔離されているため、これら各対抗部分の各部において一様に放電し、一様な面状発光が得られる。なお、図1の実施例もこの図2の実施例においても誘電体膜35は電極24と25の間、また電極37と25の間にあればよく、必ずしも平面状電極25上に形成しなくてもよい。
【0020】
また、図1に示した実施例のように透明電極を使用する場合において、その周辺に周回補助導線31を設ける場合は、透明電極24は比較的抵抗値が高いが、これにより導電性が良くなり、放電面全体に渡って電流がバランスよく流れるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Aは請求項1の発明の実施例の一部を破断した斜視図、BはAのA−A線断面図である。
【図2】請求項2の発明の実施例を示す断面図。
【図3】従来の平面型蛍光灯を示す図4のA−A線断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】従来の平面型蛍光灯とその問題点を示す図。
【図6】従来の他の平面型蛍光灯とその問題点を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面がガラス板で形成された平板状密封容器と、上記ガラス板の内面に形成された透明第1電極と、上記透明第1電極上に形成された蛍光体膜と、上記平板状密封容器の上記蛍光体膜と対抗する内面に形成された平面状第2電極と、上記第1電極と第2電極との間で、上記蛍光体膜よりも上記第2電極側に設けられた誘電体膜と、上記密封容器内に封入された放電用ガスとを具備する平面型蛍光灯。
【請求項2】
少なくとも一面がガラス板で形成された平板状密封容器と、上記ガラス板の内面に形成された蛍光体膜と、上記平板状密封容器の上記蛍光体膜と対抗する内面に形成された平面状第2電極と、上記蛍光体膜よりも上記第2電極側に設けられて第2電極と対抗したメッシュ状第1電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に位置して設けられた誘電体膜と、上記密封容器内に封入された放電用ガスと、を具備する平面型蛍光灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−12635(P2007−12635A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283744(P2006−283744)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【分割の表示】特願平10−113326の分割
【原出願日】平成10年4月23日(1998.4.23)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】