説明

平面型表示装置の駆動方法

【課題】走査線間において表示の状態に差異が生じ難い、平面型表示装置の線順次駆動方式に基づく駆動方法を提供する。
【解決手段】(A)N1本の第1配線から成る第1の第1配線群1131、及び、N2本の第1配線から成る第2の第1配線群1132から構成された第1配線群、(B)第1の第1配線群1131と重複するM本の第2配線から成る第1の第2配線群1111、及び、第2の第1配線群1132と重複するM本の第2配線から成る第2の第2配線群1112から構成された第2配線群、並びに、(C)画像表示部EAを備えた平面型表示装置の線順次駆動方式の駆動方法にあっては、第1の第1配線群1131において少なくとも第N1番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群1111に信号電圧が印加されるとき、第2の第2配線群1112に所定の電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型表示装置の駆動方法、より具体的には、平面型表示装置の線順次駆動方式に基づく駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、平面型(フラットパネル形式)の表示装置が種々検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)を例示することができる。また、電子放出素子を組み込んだ平面型表示装置の開発も進められている。ここで、電子放出素子として、冷陰極電界電子放出素子、金属/絶縁膜/金属型素子(MIM素子とも呼ばれる)、表面伝導型電子放出素子を挙げることができる。
【0003】
これらの平面型表示装置における駆動方法の1つとして、線順次駆動方式を挙げることができる。即ち、このような駆動方式の平面型表示装置は、一般に、第1の方向に延びるN本の第1配線(走査線)、第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の第2配線(信号線)、並びに、第1配線(走査線)と第2配線(信号線)との重複領域に形成された画像表示部を備えている。そして、第1番目の第1配線から第N番目の第1配線までが、順次選択される。ここで、例えば、第n番目(nは、1,2・・・Nのいずれか)の第1配線が選択されたとき、M本の第2配線のそれぞれには、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加される。こうして、各画像表示部において、所望の階調を有する像を表示することができる。
【0004】
ところで、近年、平面型表示装置の多画素化(高解像度化)が、益々、進行している。そして、これに伴い、第2配線(信号線)の長さが長くなり、第2配線における静電容量が増加する傾向にある。また、フレームレートも増加する傾向にある。そして、このような第2配線における静電容量の増加、高フレームレート化に起因して、第2配線(信号線)を伝播する信号の波形の鈍りが大きくなり(図1の(C)の模式図を参照)、平面型表示装置における表示画像品質の低下の1原因となっている。尚、図1の(C)の模式図については後述する。
【0005】
このような問題を解決するための方策として、第2配線(信号線)を二分割、あるいは、それ以上の多分割とすることが、例えば、特開2000−020005、特開2000−029432、あるいは、特開2003−036047から周知である。
【0006】
ここで、第2配線(信号線)を二分割したと想定する。この場合にあっては、平面型表示装置は、図1の(A)に概念図を示すように、
(A)第1の方向に延びるN本の第1配線から構成された第1配線群1131,1132
(B)第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の仮想第2配線が第1の方向に沿って二分割されて成る、(2×M)本の第2配線から構成された第2配線群1111,1112、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部EA、
を備えている。
【0007】
更には、この場合、第1配線群は、N1本の第1配線から成る第1の第1配線群1131、及び、N2本(但し、N=N1+N2)の第1配線から成る第2の第1配線群1132から構成されており、第2配線群は、第1の第1配線群1131と重複するM本の第2配線から成る第1の第2配線群1111、及び、第2の第1配線群1132と重複するM本の第2配線から成る第2の第2配線群1112から構成されている。
【0008】
そして、このような構成の平面型表示装置における線順次駆動方式にあっては、例えば、第1の第1配線群1131における第1番目の第1配線から第N1番目の第1配線まで、次いで、第2の第1配線群1132における第1番目の第1配線から第N2番目の第1配線までが、順次選択される。尚、第2の第1配線群1132における第1番目の第1配線は、第1の第1配線群1131における第N1番目の第1配線に隣接している。
【0009】
ここで、以下の説明において、第1の第1配線群1131における第n1番目(但し、n1=1,2・・・N1)の第1配線を第(1,n1)番目の第1配線と呼び、第2の第1配線群1132における第n2番目(但し、n2=1,2・・・N2)の第1配線を第(2,n2)番目の第1配線と呼ぶ。また、第1の第1配線群1131において第n1番目の第1配線が選択された第n1番目の水平走査期間を第(1,n1)番目の水平走査期間と呼び、第2の第1配線群1132において第n2番目の第1配線が選択された第(N1+n2)番目の水平走査期間を第(2,n2)番目の水平走査期間と呼ぶ。更には、第(1,n1)番目の水平走査期間において、第1の第2配線群1111のM本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるとき、これらの電圧を、信号電圧Vm(1,n1)と呼び、第(2,n2)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群1112のM本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるとき、これらの電圧を、信号電圧Vm(2,n2)と呼ぶ。尚、添字の「m」は、第m番目(但し、m=1,2・・・M)の第2配線を意味する。
【0010】
【特許文献1】特開2000−020005
【特許文献2】特開2000−029432
【特許文献3】特開2003−036047
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した線順次駆動方式にあっては、平面型表示装置の更なる高解像度化が進みつつあり、第2配線における静電容量の一層の増加、一層の高フレームレート化に起因して、以下に説明する問題が顕在化しつつある。即ち、第(1,N1)番目の水平走査期間の終了後、次の水平走査期間である第(2,1)番目の水平走査期間においては、第2の第1配線群1132において第(2,1)番目の第1配線が選択される。同時に、第2の第2配線群1112において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧である信号電圧Vm(2,1)が印加される。
【0012】
ここで、信号電圧Vm(2,1)がM本の第2配線のそれぞれに印加される直前の第(1,N1)番目の水平走査期間においては、第1の第2配線群1111には信号電圧Vm(1,N1)が印加されている一方、第2の第2配線群1112は電圧が印加されていない状態にある。従って、第(2,1)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群1112におけるM本の第2配線のそれぞれに信号電圧Vm(2,1)を印加したとき、信号電圧Vm(2,1)によって第2配線が充電されるが故に、第2配線(信号線)を伝播する信号電圧Vm(2,1)の波形の鈍りが大きくなる。
【0013】
その結果、第(1,N1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第(2,1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間に、大きな差異が生じてしまい、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じる。特に、第(1,N1)番目の第1配線や第(2,1)番目の第1配線は、通常、平面型表示装置の画像表示領域の中央部に位置しているので、係る差異は目立ち易い。
【0014】
また、第2配線群を2つに分割しない場合にあっても、最終の水平走査期間が完了し、次の新たな表示フレームにおける第1番目の水平走査期間が開始したとき、M本の第2配線のそれぞれに信号電圧が印加されるが、このときのM本の第2配線の充電状態は、第2番目の水平走査期間以降のM本の第2配線の充電状態と相違しているので、第1番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第2番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間に、大きな差異が生じ、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じてしまう。
【0015】
従って、本発明の目的は、走査線間において表示の状態に差異が生じ難い、平面型表示装置の線順次駆動方式に基づく駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る平面型表示装置の駆動方法は、
(A)第1の方向に延びるN本の第1配線から構成された第1配線群、
(B)第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の仮想第2配線が第1の方向に沿って二分割されて成る、(2×M)本の第2配線から構成された第2配線群、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部、
を備えており、
第1配線群は、N1本の第1配線から成る第1の第1配線群、及び、N2本(但し、N=N1+N2)の第1配線から成る第2の第1配線群から構成されており、
第2配線群は、第1の第1配線群と重複するM本の第2配線から成る第1の第2配線群、及び、第2の第1配線群と重複するM本の第2配線から成る第2の第2配線群から構成されており、
第1の第1配線群における第1番目の第1配線から第N1番目の第1配線まで、次いで、第2の第1配線群における第1番目の第1配線から第N2番目の第1配線までが、順次選択される線順次駆動方式の平面型表示装置の駆動方法であって、
第1の第1配線群において、少なくとも第N1番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるとき、第2の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加されることを特徴とする。
【0017】
尚、第(2,1)番目の第1配線は、第(1,N1)番目の第1配線に隣接している。また、少なくとも第(1,N1)番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに信号電圧Vm(1,N1)が印加されるとき、第2の第2配線群においてM本の第2配線のそれぞれに所定の電圧が印加されるが、第2の第2配線群においてM本の第2配線のそれぞれに所定の電圧が印加される状態として、より具体的には、第(1,N1)番目の第1配線が選択されるとき[即ち、第(1,N1)番目の水平走査期間]だけでなく、第(1,N1−1)番目の第1配線が選択されるとき[即ち、第(1,N1−1)番目の水平走査期間]、第(1,N1−2)番目の第1配線が選択されるとき[即ち、第(1,N1−2)番目の水平走査期間]、第(1,N1−3)番目の第1配線が選択されるとき[即ち、第(1,N1−3)番目の水平走査期間]等を挙げることができる。
【0018】
本発明の第1の態様に係る平面型表示装置の駆動方法において、前記所定の電圧は、
(1)第1の第1配線群において第N1番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧[Vm(1,N1)]に等しい電圧である構成とすることができるし、あるいは又、
(2)第2の第1配線群において第1番目の第1配線が選択され、且つ、第2の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧[Vm(2,1)]に等しい電圧である構成とすることができるし、あるいは又、
(3)予め設定されたダミー電圧VDummy(例えば、最高輝度を与えるための信号電圧)である構成とすることができる。
【0019】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る平面型表示装置の駆動方法は、
(A)第1の方向に延びるN本の第1配線、
(B)第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の第2配線、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部、
を備えており、
第1番目の第1配線から第N番目の第1配線までが、順次選択される線順次駆動方式の平面型表示装置の駆動方法であって、
第N番目の第1配線が選択された後、第1番目の第1配線が選択されるまでの期間の間に、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加されることを特徴とする。
【0020】
尚、第N番目の第1配線が選択され、次いで、第1番目の第1配線が選択される。
【0021】
本発明の第2の態様に係る平面型表示装置の駆動方法において、前記所定の電圧は、
(1)第N番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されたときの該電圧Vm(N)に等しい電圧である構成とすることができるし、あるいは又、
(2)第1番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧Vm(1)に等しい電圧である構成とすることができるし、あるいは又、
(3)予め設定されたダミー電圧VDummy(例えば、最高輝度を与えるための信号電圧)である構成とすることができる。尚、添字の「m」は、第m番目(但し、m=1,2・・・M)の第2配線を意味し、括弧内の数字は、第何番目の第1配線が選択されたか、あるいは又、第何番目の水平走査期間であるかを意味する。
【0022】
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る平面型表示装置の駆動方法(以下、これらを総称して、単に、本発明の駆動方法と呼ぶ)において、平面型表示装置として、具体的には、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)、電子放出素子を組み込んだ平面型表示装置を挙げることができる。ここで、電子放出素子として、スピント型、扁平型、エッジ型、平面型等の冷陰極電界電子放出素子、MIM素子、表面伝導型電子放出素子を例示することができる。
【0023】
本発明の駆動方法において、(M,N)の値の組合せとして、具体的には、(1920,1080)、(1920,1035)、(1024,768)、(800,600)、(640,480)、(720,480)、(1280,960)、(1280,1024)等、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。尚、カラー表示の場合には、上記のNを3倍すればよい。また、N1,N2の値として、N1を(N/2)の商としてもよいし、あるいは又、N2を(N/2)の商としてもよいが、これらに限定するものでもない。第1の方向と第2の方向とは直交することが、平面型表示装置の構造の簡素化といった観点から好ましい。
【0024】
平面型表示装置を、冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置とする場合、冷陰極電界電子放出表示装置は、カソードパネルとアノードパネルとがそれらの周縁部で接合されて成り、
カソードパネルは、
(a)支持体、
(b)支持体上に形成された複数の帯状のカソード電極、
(c)支持体及びカソード電極上に形成された絶縁層、
(d)絶縁層上に形成された複数の帯状のゲート電極、及び、
(e)ゲート電極とカソード電極との重複領域に位置する電子放出領域、
から構成されており、
アノードパネルは、基板、並びに、該基板上に形成された、各電子放出領域に対応して設けられた蛍光体領域及びアノード電極から構成されており、
電子放出領域には、1又は複数の冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と略称する場合がある)が配置されている構成とすることができる。
【0025】
ここで、電界放出素子の型式は特に限定されず、スピント型電界放出素子(円錐形の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた電界放出素子)や、扁平型電界放出素子(略平面の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた電界放出素子)を挙げることができる。
【0026】
冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、カソード電極及びゲート電極に印加された電圧によって生じた強電界が電子放出部に加わる結果、量子トンネル効果により電子放出部から電子が放出される。そして、この電子は、アノードパネルに設けられたアノード電極によってアノードパネルへと引き付けられ、蛍光体領域に衝突する。そして、蛍光体領域への電子の衝突の結果、蛍光体領域が発光し、画像として認識することができる。
【0027】
冷陰極電界電子放出表示装置において、カソード電極はカソード電極制御回路に接続され、ゲート電極はゲート電極制御回路に接続され、アノード電極はアノード電極制御回路に接続されている。尚、これらの制御回路は周知の回路から構成することができる。実動作時、アノード電極制御回路からアノード電極に印加される電圧(アノード電圧)VAは、通常、一定であり、例えば、5キロボルト〜15キロボルトとすることができる。あるいは又、アノードパネルとカソードパネルとの間の距離をd0(但し、0.5mm≦d0≦10mm)としたとき、VA/d0(単位:キロボルト/mm)の値は、0.5以上20以下、好ましくは1以上10以下、一層好ましくは4以上8以下を満足することが望ましい。
【0028】
電界放出素子は、一般に、以下の方法で製造することができる。
(1)支持体上にカソード電極を形成する工程、
(2)全面(支持体及びカソード電極上)に絶縁層を形成する工程、
(3)絶縁層上にゲート電極を形成する工程、
(4)カソード電極とゲート電極との重複領域におけるゲート電極及び絶縁層の部分に開口部を形成し、開口部の底部にカソード電極を露出させる工程、
(5)開口部の底部に位置するカソード電極上に電子放出部を形成する工程。
【0029】
あるいは又、電界放出素子は、以下の方法で製造することもできる。
(1)支持体上にカソード電極を形成する工程、
(2)カソード電極上に電子放出部を形成する工程、
(3)全面(支持体及び電子放出部上、あるいは、支持体、カソード電極及び電子放出部上)に絶縁層を形成する工程、
(4)絶縁層上にゲート電極を形成する工程、
(5)カソード電極とゲート電極との重複領域におけるゲート電極及び絶縁層の部分に開口部を形成し、開口部の底部に電子放出部を露出させる工程。
【0030】
スピント型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム、クロム合金、及び、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。スピント型電界放出素子の電子放出部は、スパッタリング法や真空蒸着法といった各種物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)によって形成することができる。
【0031】
扁平型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。あるいは又、電子放出部を構成する材料として、係る材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。扁平型電界放出素子にあっては、特に好ましい電子放出部の構成材料として、炭素、より具体的にはアモルファスダイヤモンドやグラファイト、カーボン・ナノチューブ構造体(カーボン・ナノチューブ及び/又はグラファイト・ナノファイバー)、ZnOウィスカー、MgOウィスカー、SnO2ウィスカー、MnOウィスカー、Y23ウィスカー、NiOウィスカー、ITOウィスカー、In23ウィスカー、Al23ウィスカーを挙げることができる。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
【0032】
カソード電極、ゲート電極、後述する収束電極の構成材料として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)等の金属;これらの金属元素を含む合金(例えばMoW)あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(酸化インジウム−錫)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。また、これらの電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル−ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、例えば帯状のカソード電極やゲート電極を形成することが可能である。
【0033】
絶縁層や後述する層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層や層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。
【0034】
第1開口部(ゲート電極に形成された開口部)あるいは第2開口部(絶縁層に形成された開口部)の平面形状(支持体表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。第1開口部の形成は、例えば、異方性エッチング、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができ、あるいは又、ゲート電極の形成方法に依っては、第1開口部を、直接、形成することもできる。第2開口部の形成も、例えば、異方性エッチング、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。
【0035】
電界放出素子においては、電界放出素子の構造に依存するが、1つの開口部内に1つの電子放出部が存在してもよいし、1つの開口部内に複数の電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、係る第1開口部と連通する1つの第2開口部を絶縁層に設け、絶縁層に設けられた1つの第2開口部内に1又は複数の電子放出部が存在してもよい。
【0036】
電界放出素子において、カソード電極と電子放出部との間に抵抗体膜を設けてもよい。抵抗体膜を設けることによって、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体膜を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物を例示することができる。抵抗体膜の形成方法として、スパッタリング法や、CVD法、各種印刷法を例示することができる。1つの電子放出部当たりの電気抵抗値は、概ね1×106〜1×1011Ω、好ましくは数ギガΩとすればよい。
【0037】
カソードパネルを構成する支持体として、あるいは又、アノードパネルを構成する基板として、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができるが、製造コスト低減の観点からは、ガラス基板、あるいは、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板として、高歪点ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)を例示することができる。
【0038】
平面型表示装置において、アノード電極と蛍光体領域の構成例として、(1)基板上に、アノード電極を形成し、アノード電極の上に蛍光体領域を形成する構成、(2)基板上に、蛍光体領域を形成し、蛍光体領域上にアノード電極を形成する構成、を挙げることができる。尚、(1)の構成において、蛍光体領域の上に、アノード電極と導通した所謂メタルバック膜を形成してもよい。また、(2)の構成において、アノード電極の上にメタルバック膜を形成してもよい。メタルバック自体にアノード電極機能を持たせても良い。
【0039】
アノード電極は、全体として1つのアノード電極から構成されていてもよいし、複数のアノード電極ユニットから構成されていてもよい。後者の場合、アノード電極ユニットとアノード電極ユニットとはアノード電極抵抗体層によって電気的に接続されていることが望ましい。アノード電極抵抗体層を構成する材料として、カーボン、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料;SiN系材料;酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物;アモルファスシリコン等の半導体材料;ITOを挙げることができる。また、SiC抵抗膜上に抵抗値の低いカーボン薄膜を積層するといった複数の膜の組み合わせにより、安定した所望のシート抵抗値を実現することも可能である。アノード電極抵抗体層のシート抵抗値として、1×10-1Ω/□乃至1×1010Ω/□、好ましくは1×103Ω/□乃至1×108Ω/□を例示することができる。アノード電極ユニットの数(Q)は2以上であればよく、例えば、直線状に配列された蛍光体領域の列の総数をq列としたとき、Q=qとし、あるいは、q=k・Q(kは2以上の整数であり、好ましくは10≦k≦100、一層好ましくは20≦k≦50)としてもよいし、一定の間隔をもって配置されたスペーサ群の数に1を加えた数とすることができるし、ピクセルの数あるいはサブピクセルの数と一致した数、あるいは、ピクセルの数あるいはサブピクセルの数の整数分の一とすることもできる。また、各アノード電極ユニットの大きさは、アノード電極ユニットの位置に拘わらず同じとしてもよいし、アノード電極ユニットの位置に依存して異ならせてもよい。全体として1つのアノード電極の上にアノード電極抵抗体層を形成してもよい。
【0040】
アノード電極(アノード電極ユニットを包含する)は、導電材料層を用いて形成すればよい。導電材料層の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法といった各種PVD法;各種CVD法;各種印刷法;メタルマスク印刷法;リフトオフ法;ゾル−ゲル法等を挙げることができる。即ち、導電材料から成る導電材料層を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、この導電材料層をパターニングしてアノード電極を形成することができる。あるいは又、アノード電極のパターンを有するマスクやスクリーンを介して導電材料をPVD法や各種印刷法に基づき形成することによって、アノード電極を得ることもできる。尚、アノード電極抵抗体層も同様の方法で形成することができる。即ち、抵抗体材料からアノード電極抵抗体層を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術に基づきこのアノード電極抵抗体層をパターニングしてもよいし、あるいは、アノード電極抵抗体層のパターンを有するマスクやスクリーンを介して抵抗体材料のPVD法や各種印刷法に基づく形成により、アノード電極抵抗体層を得ることができる。基板上(あるいは基板上方)におけるアノード電極の平均厚さ(後述するように隔壁を設ける場合、隔壁の頂面上におけるアノード電極の平均厚さ)として、3×10-8m(30nm)乃至7×10-7m(0.7μm)、好ましくは1×10-7m(100nm)乃至4×10-7m(0.4μm)を例示することができる。
【0041】
アノード電極の構成材料として、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)等の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(酸化インジウム−錫)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。尚、アノード電極抵抗体層を形成する場合、アノード電極抵抗体層の電気抵抗値を変化させない導電材料からアノード電極を構成することが好ましく、例えば、アノード電極抵抗体層をシリコンカーバイド(SiC)から構成した場合、アノード電極をモリブデン(Mo)やアルミニウム(Al)から構成することが好ましい。
【0042】
蛍光体領域は、単色の蛍光体粒子から構成されていても、3原色の蛍光体粒子から構成されていてもよい。蛍光体領域の配列様式は、例えば、ドット状である。具体的には、平面型表示装置がカラー表示の場合、蛍光体領域の配置、配列として、デルタ配列、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、レクタングル配列を挙げることができる。即ち、直線状に配列された蛍光体領域の1列は、全てが赤色発光蛍光体領域で占められた列、緑色発光蛍光体領域で占められた列、及び、青色発光蛍光体領域で占められた列から構成されていてもよいし、赤色発光蛍光体領域、緑色発光蛍光体領域、及び、青色発光蛍光体領域が順に配置された列から構成されていてもよい。ここで、蛍光体領域とは、平面型表示装置において1つの輝点を生成する蛍光体領域であると定義する。また、1画素(1ピクセル)は、1つの赤色発光蛍光体領域、1つの緑色発光蛍光体領域、及び、1つの青色発光蛍光体領域の集合から構成され、1サブピクセルは、1つの蛍光体領域(1つの赤色発光蛍光体領域、あるいは、1つの緑色発光蛍光体領域、あるいは、1つの青色発光蛍光体領域)から構成される。尚、隣り合う蛍光体領域の間の隙間がコントラスト向上を目的とした光吸収層(ブラックマトリックス)で埋め込まれていてもよい。
【0043】
蛍光体領域は、発光性結晶粒子から調製された発光性結晶粒子組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の発光性結晶粒子組成物(赤色発光蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、赤色発光蛍光体領域を形成し、次いで、緑色の感光性の発光性結晶粒子組成物(緑色発光蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、緑色発光蛍光体領域を形成し、更に、青色の感光性の発光性結晶粒子組成物(青色発光蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、青色発光蛍光体領域を形成する方法にて形成することができる。あるいは又、赤色発光蛍光体スラリー、緑色発光蛍光体スラリー、青色発光蛍光体スラリーを順次塗布した後、各蛍光体スラリーを順次露光、現像して、各蛍光体領域を形成してもよいし、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、フロート塗布法、沈降塗布法、蛍光体フィルム転写法等により各蛍光体領域を形成してもよい。基板上における蛍光体領域の平均厚さは、限定するものではないが、3μm乃至20μm、好ましくは5μm乃至10μmであることが望ましい。発光性結晶粒子を構成する蛍光体材料としては、従来公知の蛍光体材料の中から適宜選択して用いることができる。カラー表示の場合、色純度がNTSCで規定される3原色に近く、3原色を混合した際の白バランスがとれ、残光時間が短く、3原色の残光時間がほぼ等しくなる蛍光体材料を組み合わせることが好ましい。
【0044】
蛍光体領域からの光を吸収する光吸収層が、隣り合う蛍光体領域の間、あるいは、隔壁と基板との間に形成されていることが、表示画像のコントラスト向上といった観点から好ましい。ここで、光吸収層は、所謂ブラックマトリックスとして機能する。光吸収層を構成する材料として、蛍光体領域からの光を90%以上吸収する材料を選択することが好ましい。このような材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト、黒色顔料や銀等の導電性粒子を含有するガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。尚、酸化クロム/クロム積層膜においては、クロム膜が基板と接する。光吸収層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せ、各種印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。
【0045】
蛍光体領域から反跳した電子、あるいは、蛍光体領域から放出された2次電子が他の蛍光体領域に入射し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止するために、あるいは又、蛍光体領域から反跳した電子、あるいは、蛍光体領域から放出された2次電子が他の蛍光体領域と衝突することを防止するために、隔壁を設けることが好ましい。
【0046】
隔壁の形成方法として、スクリーン印刷法、ドライフィルム法、感光法、キャスティング法、サンドブラスト形成法を例示することができる。ここで、スクリーン印刷法とは、隔壁を形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口が形成されており、スクリーン上の隔壁形成用材料をスキージを用いて開口を通過させ、基板上に隔壁形成用材料層を形成した後、係る隔壁形成用材料層を焼成する方法である。ドライフィルム法とは、基板上に感光性フィルムをラミネートし、露光及び現像によって隔壁形成予定部位の感光性フィルムを除去し、除去によって生じた開口に隔壁形成用材料を埋め込み、焼成する方法である。感光性フィルムは焼成によって燃焼、除去され、開口に埋め込まれた隔壁形成用材料が残り、隔壁となる。感光法とは、基板上に感光性を有する隔壁形成用材料層を形成し、露光及び現像によってこの隔壁形成用材料層をパターニングした後、焼成(硬化)を行う方法である。キャスティング法(型押し成形法)とは、ペースト状とした有機材料あるいは無機材料から成る隔壁形成用材料層を型(キャスト)から基板上に押し出すことで隔壁形成用材料層を形成した後、係る隔壁形成用材料層を焼成する方法である。サンドブラスト形成法とは、例えば、スクリーン印刷やメタルマスク印刷法、ロールコーター、ドクターブレード、ノズル吐出式コーター等を用いて隔壁形成用材料層を基板上に形成し、乾燥させた後、隔壁を形成すべき隔壁形成用材料層の部分をマスク層で被覆し、次いで、露出した隔壁形成用材料層の部分をサンドブラスト法によって除去する方法である。隔壁を形成した後、隔壁を研磨し、隔壁頂面の平坦化を図ってもよい。
【0047】
隔壁における蛍光体領域を取り囲む部分の平面形状(隔壁側面の射影像の内側輪郭線に相当し、一種の開口領域である)として、矩形形状、円形形状、楕円形状、長円形状、三角形形状、五角形以上の多角形形状、丸みを帯びた三角形形状、丸みを帯びた矩形形状、丸みを帯びた多角形等を例示することができる。これらの平面形状(開口領域の平面形状)が2次元マトリックス状に配列されることにより、格子状の隔壁が形成される。この2次元マトリックス状の配列は、例えば井桁様に配列されるものでもよいし、千鳥様に配列されるものでもよい。
【0048】
隔壁形成用材料として、例えば、感光性ポリイミド樹脂や、酸化コバルト等の金属酸化物により黒色に着色した鉛ガラス、SiO2、低融点ガラスペーストを例示することができる。隔壁の表面(頂面及び側面)には、隔壁に電子ビームが衝突して隔壁からガスが放出されることを防止するための保護層(例えば、SiO2、SiON、あるいは、AlNから成る)を形成してもよい。
【0049】
電界放出素子には収束電極が備えられていてもよい。即ち、例えばゲート電極及び絶縁層上には更に層間絶縁層が設けられ、層間絶縁層上に収束電極が設けられている電界放出素子、あるいは又、ゲート電極の上方に収束電極が設けられている電界放出素子とすることもできる。ここで、収束電極とは、開口部から放出され、アノード電極へ向かう放出電子の軌道を収束させ、以て、輝度の向上や隣接画素間の光学的クロストークの防止を可能とするための電極である。アノード電極とカソード電極との間の電位差が数キロボルト以上のオーダーであって、アノード電極とカソード電極との間の距離が比較的長い、所謂高電圧タイプの冷陰極電界電子放出表示装置において、収束電極は特に有効である。収束電極には、収束電極制御回路から相対的な負電圧(例えば、0ボルト)が印加される。収束電極は、必ずしも、カソード電極とゲート電極とが重複する重複領域に設けられた電子放出部あるいは電子放出領域のそれぞれを取り囲むように個別に形成されている必要はなく、例えば、電子放出部あるいは電子放出領域の所定の配列方向に沿って延在させてもよいし、電子放出部あるいは電子放出領域の全てを1つの収束電極で取り囲む構成としてもよく(即ち、収束電極を、冷陰極電界電子放出表示装置としての実用上の機能を果たす中央部の表示領域である有効領域の全体を覆う薄い1枚のシート状の構造としてもよく)、これによって、複数の電子放出部あるいは電子放出領域に共通の収束効果を及ぼすことができる。
【0050】
冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、アノードパネルとカソードパネルとによって挟まれた空間が真空状態となっているが故に、アノードパネルとカソードパネルとの間にスペーサを配しておかないと、大気圧によって冷陰極電界電子放出表示装置が損傷を受けてしまう。スペーサを構成する剛性材料として、セラミックやガラスを例示することができる。セラミック材料として、ムライト等のケイ酸アルミニウム化合物やアルミナ等の酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミック材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができるし、例えば、特表2003−524280号公報等に記載されている材料を用いることもできる。ガラス材料として、高歪点ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)を例示することができる。尚、スペーサの端部に対して面取りを行い、突起部等を除去することが好ましい。スペーサは、例えば、アノードパネルに設けられた後述する隔壁と隔壁との間に挟み込んで固定すればよく、あるいは又、例えば、アノードパネル及び/又はカソードパネルにスペーサ保持部を形成し、スペーサ保持部によって固定すればよい。
【0051】
スペーサの表面に、帯電防止膜や抵抗体膜等が設けられていてもよい。帯電防止膜を構成する2次電子放出係数が1に近い材料として、グラファイト等の半金属、酸化物、ホウ化物、炭化物、硫化物、及び、窒化物等を用いることができる。例えば、グラファイト等の半金属及びMoSex等の半金属元素を含む化合物、CrOx、NdOx、LaxBa2-xCuO4、LaxBa2-xCuO4、Lax1-xCrO3等の酸化物、AlBx、TiBx等のホウ化物、SiC等の炭化物、MoSx、WSx等の硫化物、及び、BN、TiN、AlN等の窒化物等を挙げることができるし、例えば、特表2004−500688号公報等に記載されている材料等を用いることもできる。また、抵抗体膜を構成する材料として、例えば、酸化ルテニウム(RuOx)やサーメットを例示することができる。帯電防止膜等のスペーサの表面に設けられる膜は、単一の種類の材料から成るものであってもよいし、複数の種類の材料から成るものであってもよい。例えば、膜は一層構造であって、複数の種類の材料からその層が構成されていてもよいし、膜は複数層が積層して成り、それぞれの層が異なる材料から成るものであってもよい。これらの膜は、スパッタ法、蒸着法、CVD法、スクリーン印刷法等、周知の方法により形成することができる。また、これらの膜の膜厚は、必要に応じて任意に設定すればよい。
【0052】
カソードパネルとアノードパネルとを接合部材によって接合する場合、接合部材全体をフリットガラス等の接合材料から構成することもできるし、あるいは又、接合部材を、棒状あるいはフレーム状(枠状)であってガラスやセラミック等の剛性材料から成る枠体と、枠体のカソードパネル側の面上に設けられた接合材料層と、枠体のアノードパネル側の面上に設けられた接合材料層とから構成することもできる。枠体の高さを適宜選択することにより、接合部材全体を接合材料から構成する場合に比べ、カソードパネルとアノードパネルとの間の対向距離をより長く設定することが可能である。接合材料あるいは接合材料層を構成する材料として、B23−PbO系フリットガラスやSiO2−B23−PbO系フリットガラスといったフリットガラスが一般的であるが、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。係る低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu5(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300〜314゜C)、Sn2Pb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
【0053】
カソードパネルとアノードパネルと接合部材の三者を接合する場合、三者を同時に接合してもよいし、あるいは、第1段階でカソードパネル又はアノードパネルのいずれか一方と接合部材とを接合し、第2段階でカソードパネル又はアノードパネルの他方と接合部材とを接合してもよい。三者同時接合や第2段階における接合を高真空雰囲気中で行えば、カソードパネルとアノードパネルと接合部材とにより囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、三者の接合終了後、カソードパネルとアノードパネルと接合部材とによって囲まれた空間を排気し、真空とすることもできる。接合後に排気を行う場合、接合時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
【0054】
排気を行う場合、排気は、カソードパネル及び/又はアノードパネルに予め接続されたチップ管とも呼ばれる排気管を通じて行うことができる。排気管は、典型的にはガラス管、あるいは、低熱膨張率を有する金属や合金[例えば、ニッケル(Ni)を42重量%含有した鉄(Fe)合金や、ニッケル(Ni)を42重量%、クロム(Cr)を6重量%含有した鉄(Fe)合金]から成る中空管から構成され、カソードパネル及び/又はアノードパネルの無効領域(平面型表示装置としての実用上の機能を果たす中央部の表示領域である有効領域を額縁状に包囲する領域)に設けられた貫通部の周囲に、上述のフリットガラス又は低融点金属材料を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られ、あるいは又、圧着することにより封じられる。尚、封じる前に、平面型表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので好適である。
【発明の効果】
【0055】
本発明の第1の態様に係る平面型表示装置の駆動方法にあっては、少なくとも第(1,N1)番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに信号電圧Vm(1,N1)が印加されるとき、第2の第2配線群においてM本の第2配線のそれぞれに所定の電圧が印加される。即ち、信号電圧Vm(2,1)がM本の第2配線のそれぞれに印加される直前の第(1,N1)番目の水平走査期間においては、第1の第2配線群には信号電圧Vm(1,N1)が印加されている一方、第2の第2配線群にも所定の電圧が印加されている状態となる。従って、第(2,1)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群におけるM本の第2配線のそれぞれに信号電圧Vm(2,1)を印加したとき、第2配線は予め充電された状態となっているが故に、第2配線(信号線)を伝播する信号電圧Vm(2,1)の波形の鈍りは、信号電圧Vm(1,N1)の波形の鈍りと同程度となる。その結果、第(1,N1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第(2,1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間には、差異が生じ難く、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じることを抑制することができる。
【0056】
また、本発明の第2の態様に係る平面型表示装置の駆動方法にあっては、第N番目の第1配線が選択された後、第1番目の第1配線が選択されるまでの期間の間に、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加される。従って、最終の水平走査期間が完了し、次の新たな表示フレームにおける第1番目の水平走査期間が開始したとき、M本の第2配線のそれぞれに信号電圧が印加されるが、このとき、M本の第2配線は予め充電された状態にある。その結果、第2番目の水平走査期間以降のM本の第2配線の充電状態と同程度となるので、第1番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第2番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間に、差異が生じ難く、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0058】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る平面型表示装置の駆動方法に関する。実施例1、あるいは、後述する実施例2における平面型表示装置として、電子放出素子を組み込んだ平面型表示装置、具体的には、冷陰極電界電子放出素子を組み込んだ平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置(以下、表示装置と略称する)を採用した。
【0059】
実施例1、あるいは、後述する実施例2における表示装置は、図1の(A)に概念図を示すように、
(A)第1の方向(具体的には、例えば、水平方向)に延びるN本の第1配線(具体的には、後述するゲート電極13)から構成された第1配線群113、
(B)第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、例えば、垂直方向)に延びるM本の仮想第2配線が第1の方向に沿って二分割されて成る、(2×M)本の第2配線(具体的には、後述するカソード電極11)から構成された第2配線群1111,1112、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部(具体的には、後述する電子放出領域EA)、
を備えている。
【0060】
尚、図1の(A)において、第2配線群1111,1112を明示するために、第2配線群1111,1112に斜線を付した。また、図1の(A)において、仮想第2配線が第1の方向に沿って二分割された領域を、「A」で示す。即ち、領域「A」において、仮想第2配線は2つの部分に切断されている。また,図面において、第1の方向を「X」方向で示し、第2の方向を「Y」方向で示す場合がある。
【0061】
そして、第1配線群113は、N1本の第1配線(ゲート電極13)から成る第1の第1配線群1131、及び、N2本(但し、N=N1+N2)の第1配線(ゲート電極13)から成る第2の第1配線群1132から構成されている。一方、第2配線群111は、第1の第1配線群1131と重複するM本の第2配線(カソード電極11)から成る第1の第2配線群1111、及び、第2の第1配線群1132と重複するM本の第2配線(カソード電極11)から成る第2の第2配線群1112から構成されている。実施例1、あるいは、後述する実施例2にあっては、N1=480本、N2=480本、M =3840本とした。
【0062】
円錐形の電子放出部が開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子)であるスピント型電界放出素子を有する表示装置の概念的な一部端面図を図2に示し、カソードパネルCP及びアノードパネルAPを分解したときのカソードパネルCPとアノードパネルAPの一部分の模式的な分解斜視図を図3に示す。この表示装置を構成するカソードパネルCPは、第1の方向(図2〜図3においてX方向)に延びる帯状のN本のゲート電極(第1配線)13、及び、第1の方向とは異なる第2の方向(図2〜図3においてY方向)に延びる帯状のM本のカソード電極(第2配線)11を備える。そして、ゲート電極13とカソード電極11との重複領域には1サブピクセルを構成する電子放出領域(画像表示部)EAが形成されている。この表示装置を構成するスピント型電界放出素子は、支持体10上に形成されたカソード電極11と、支持体10及びカソード電極11上に形成された絶縁層12と、絶縁層12上に形成されたゲート電極13と、ゲート電極13及び絶縁層12に設けられた開口部14(ゲート電極13に設けられた第1開口部14Aと、絶縁層12に設けられた第2開口部14B)と、開口部14の底部に位置するカソード電極11上に形成された円錐形の電子放出部15から構成されている。尚、電界放出素子の型式はスピント型電界放出素子に限定されず、扁平型電界放出素子(略平面の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた電界放出素子)とすることもできる。
【0063】
一般に、カソード電極11とゲート電極13とは、これらの両電極11,13の射影像が互いに直交する方向に形成されている。尚、便宜のため、図2においては、各電子放出領域EAにそれぞれ1つ電子放出部15を図示した。そして、係る電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域(表示装置の表示領域に対応する領域)内に、通常、2次元マトリックス状に配列されている。
【0064】
一方、アノードパネルAPは、基板20上に所定のパターンを有する蛍光体領域22(具体的には、赤色発光蛍光体領域22R、緑色発光蛍光体領域22G、及び、青色発光蛍光体領域22B)が形成され、蛍光体領域22がアノード電極24で覆われた構造を有する。尚、これらの蛍光体領域22の間は、カーボン等の光吸収性材料から成る光吸収層(ブラックマトリックス)23で埋め込まれており、表示画像の色濁り、光学的クロストークの発生を防止している。図中、参照番号21は隔壁を表し、参照番号40は例えば板状のスペーサを表し、参照番号25はスペーサ保持部を表し、参照番号26は接合部材を表す。尚、図3においては、隔壁やスペーサ、スペーサ保持部の図示を省略した。
【0065】
アノード電極24は、蛍光体領域22からの発光を反射させる反射膜としての機能の他、蛍光体領域22の帯電防止といった機能を有する。また、隔壁21は、蛍光体領域22から反跳した電子、あるいは、蛍光体領域22から放出された2次電子(以下、これらの電子を総称して、後方散乱電子と呼ぶ)が他の蛍光体領域22に衝突し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止する機能を有する。
【0066】
1サブピクセルは、カソードパネル側の電子放出領域EAと、これらの電界放出素子の一群に対面したアノードパネル側の蛍光体領域22とによって構成されている。カラー表示の表示装置の場合には、1画素(1ピクセル)は、1つの赤色発光蛍光体領域、1つの緑色発光蛍光体領域、及び、1つの青色発光蛍光体領域の集合から構成されている。有効領域には、係る画素が、M×(N/3)個、配列されている。
【0067】
そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPとを、電子放出領域EAと蛍光体領域22とが対向するように配置し、周縁部において接合部材26を介して接合した後、排気し、封止することによって、表示装置を作製することができる。アノードパネルAPとカソードパネルCPと接合部材26とによって囲まれた空間は高真空(例えば、1×10-3Pa以下)となっている。
【0068】
このような表示装置においては、アノードパネルAPとカソードパネルCPと接合部材26とによって囲まれた空間が高真空となっているが故に、アノードパネルAPとカソードパネルCPとの間に例えば板状のスペーサ40を配しておかないと、大気圧によって表示装置が損傷を受けてしまう。スペーサ40は、セラミック等の剛性材料から成る。
【0069】
カソード電極11には相対的に負電圧がカソード電極制御回路31から印加され、ゲート電極13には相対的に正電圧がゲート電極制御回路32から印加され、アノード電極24にはゲート電極13よりも更に高い正電圧がアノード電極制御回路33から印加される。係る表示装置において線順次駆動方式により画像の表示を行う場合、カソード電極(第2配線)11にカソード電極制御回路31からビデオ信号を入力し、ゲート電極(第1配線)13にゲート電極制御回路32から走査信号を入力する。カソード電極11とゲート電極13との間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネル効果に基づき電子放出部15から電子が放出され、この電子がアノード電極24に引き付けられ、アノード電極24を通過して蛍光体領域22に衝突する。その結果、蛍光体領域22が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。つまり、この冷陰極電界電子放出表示装置の動作は、基本的に、ゲート電極13に印加される電圧、及び、カソード電極11に印加される電圧によって制御される。カソード電極11はカソード電極駆動ドライバによって駆動され、ゲート電極13はゲート電極駆動ドライバによって駆動される。カソード電極制御回路31、ゲート電極制御回路32、アノード電極制御回路33や駆動ドライバは周知の回路から構成することができる。
【0070】
実施例1にあっては、第(1,1)番目の第1配線から第(1,N1)番目の第1配線まで、次いで、第(2,1)番目の第1配線から第(2,N2)番目の第1配線までが、順次選択される線順次駆動方式によって表示装置は駆動される。尚、第(2,1)番目の第1配線は、第(1,N1)番目の第1配線に隣接している。そして、少なくとも第(1,N1)番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群1111において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する信号電圧Vm(1,N1)が印加されるとき、第2の第2配線群1112において、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加される。具体的には、第(1,N1)番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに信号電圧Vm(1,N1)が印加されるとき[即ち、第(1,N1)番目の水平走査期間]、第2の第2配線群1112において、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加される。ここで、所定の電圧を、実施例1にあっては、信号電圧[Vm(1,N1)]に等しい電圧とした。
【0071】
そして、実施例1にあっては、第(1,N1)番目の第1配線(ゲート電極13)が選択され、且つ、M本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれに信号電圧Vm(1,N1)が印加されるとき,即ち、第(1,N1)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群1112のM本の第2配線のそれぞれに所定の電圧が印加される。従って、第(2,1)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群1112におけるM本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれに信号電圧Vm(2,1)を印加したとき、第2配線は予め充電された状態となっているが故に、第2配線(信号線)を伝播する信号電圧Vm(2,1)の波形の鈍りは、信号電圧Vm(1,N1)の波形の鈍りと同程度となる。以上の結果として、第(1,N1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第(2,1)番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間には、差異が生じ難く、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じることを抑制することができる。図1の(B)に波形の鈍りの状態を模式的に示す。尚、波形の上の括弧に、第何番目の水平走査期間であるかを示す。図1の(C)の模式図に示した従来の技術にあっては、先に説明したように、信号電圧Vm(2,1)の波形の鈍りが大きい。図1の(C)に示した従来技術における信号電圧Vm(2,1)の波形と、図1の(B)に示した実施例1における信号電圧Vm(2,1)の波形を重ねたときに認められる相違の部分を、明示のために、黒く塗りつぶした。
【0072】
所定の電圧の印加は、カソード電極制御回路31及びゲート電極制御回路32における動作の制御によって行うことができる。即ち、ゲート電極制御回路32の動作によって、第(1,N1)番目の第1配線(ゲート電極13)に電圧を印加し、同時に、カソード電極制御回路31の動作によって、第1の第2配線群1111のM本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれ、及び、第2の第2配線群1112のM本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれに、信号電圧Vm(1,N1)を印加すればよい。第(1,N1)番目の第1配線(ゲート電極13)と第1の第2配線群1111のM本の第2配線(カソード電極11)の重複領域における電子放出領域(画像表示部)EAから、信号電圧Vm(1,N1)の間に依存して、電子が放出される。一方、第(2,1)番目の第1配線(ゲート電極13)には電圧が印加されていないので、第(2,1)番目の第1配線(ゲート電極13)と第2の第2配線群1112のM本の第2配線(カソード電極11)の重複領域における電子放出領域(画像表示部)EAから、は、電子は放出されない。
【0073】
尚、信号電圧によって階調の制御が行われるが、より具体的には、階調制御方式として、電圧変調方式(ゲート電極を選択、走査する時、カソード電極への印加電圧を階調に応じて変化させる方式)、パルス幅変調方式[PWM(Pulse Width Modulation)方式:カソード電極への印加電圧を一定とし、印加電圧パルス幅を可変とし、時間的に階調制御を行う方式]、パルス数変調方式[PNM(Pulse Numbers Modulation)方式:カソード電極への印加電圧を一定とし、印加電圧パルス幅も一定とし、印加電圧パルス数で階調制御を行う方式]といった周知の階調制御方式を採用することができる。
【0074】
尚、例えば、第(1,N1−1)番目〜第(1,N1)番目の水平走査期間において、あるいは又、第(1,N1−2)番目〜第(1,N1)番目の水平走査期間において、あるいは又、第(1,N1−3)番目〜第(1,N1)番目の水平走査期間において、第2の第2配線群1112のM本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧を印加してもよい。また、所定の電圧として、信号電圧[Vm(2,1)]に等しい電圧としてもよいし、予め設定されたダミー電圧VDummyとしてもよい。
【実施例2】
【0075】
実施例2は、本発明の第2の態様に係る平面型表示装置の駆動方法に関する。実施例2における平面型表示装置は、実施例1における平面型表示装置と同じ構成、構造を有する。
【0076】
実施例2にあっては、第1番目の第1配線(ゲート電極13)から第N番目の第1配線(ゲート電極13)までが、順次選択される線順次駆動方式によって駆動される。尚、第N番目の第1配線が選択され、次いで、第1番目の第1配線が選択される。そして、第N番目の第1配線(ゲート電極13)が選択された後、第1番目の第1配線(ゲート電極13)が選択されるまでの期間の間に、M本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれに、所定の電圧が印加される。即ち、或るフレームにおける第(1,N1)番目の水平走査期間が完了した後、次の或るフレームにおける第1番目の水平走査期間が開始する前に、云い換えれば、所謂垂直帰線期間に相当する期間において、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加される。ここで、実施例2にあっては、所定の電圧を、信号電圧[Vm(N)]に等しい電圧とした。
【0077】
このように,実施例2にあっては、最終の水平走査期間が完了し、次の新たな表示フレームにおける第1番目の水平走査期間が開始したとき、M本の第2配線(カソード電極11)のそれぞれに信号電圧が印加されるが、このとき、M本の第2配線は、信号電圧[Vm(N)]と等しい電圧によって予め充電された状態にある。その結果、第1番目の水平走査期間にあっても、第2番目の水平走査期間以降のM本の第2配線の充電状態と同程度となるので、第1番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態と、第2番目の水平走査期間における画像表示部での表示の状態との間に、差異が生じ難く、平面型表示装置における表示画像品質の低下が生じることを抑制することができる。尚、所定の電圧として、信号電圧[Vm(1)]に等しい電圧としてもよいし、予め設定されたダミー電圧VDummyとしてもよい。
【0078】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した平面型表示装置、カソードパネルやアノードパネル、電界放出素子の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。平面型表示装置においては、専らカラー表示を例にとり説明したが、単色表示とすることもできる。実施例においては、カソード電極を第2配線とし、ゲート電極を第1配線としたが、代替的に、カソード電極を第1配線とし、ゲート電極を第2配線としてもよい。
【0079】
電界放出素子においては、専ら1つの開口部に1つの電子放出部が対応する形態を説明したが、電界放出素子の構造に依っては、1つの開口部に複数の電子放出部が対応した形態、あるいは、複数の開口部に1つの電子放出部が対応する形態とすることもできる。あるいは又、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、絶縁層に係る複数の第1開口部に連通した第2開口部を設け、1又は複数の電子放出部を設ける形態とすることもできる。
【0080】
表面伝導型電子放出素子と通称される電子放出素子から電子放出領域を構成することもできる。この表面伝導型電子放出素子は、例えばガラスから成る支持体上に酸化錫(SnO2)、金(Au)、酸化インジウム(In23)/酸化錫(SnO2)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の導電材料から成り、微小面積を有し、所定の間隔(ギャップ)を開けて配された一対の電極がマトリックス状に形成されて成る。それぞれの電極の上には炭素薄膜が形成されている。そして、一対の電極の内の一方の電極に行方向配線が接続され、一対の電極の内の他方の電極に列方向配線が接続された構成を有する。一対の電極に電圧を印加することによって、ギャップを挟んで向かい合った炭素薄膜に電界が加わり、炭素薄膜から電子が放出される。係る電子をアノードパネル上の蛍光体領域に衝突させることによって、蛍光体領域が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。一対の電極を、ゲート電極とカソード電極とから成る構成とすればよい。あるいは又、金属/絶縁膜/金属型素子から電子放出領域を構成することもできる。
【0081】
更には、平面型表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)を挙げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1の(A)は、実施例1における平面型表示装置の概念図であり、図1の(B)は、実施例1において、第2配線(信号線)を伝播する信号の波形の鈍りの状態を模式的に示す図であり、図1の(C)は、従来技術において、第2配線(信号線)を伝播する信号の波形の鈍りの状態を模式的に示す図である。
【図2】図2は、スピント型電界放出素子を有する平面型表示装置の概念的な一部端面図である。
【図3】図3は、カソードパネルCP及びアノードパネルAPを分解したときのカソードパネルCPとアノードパネルAPの一部分の模式的な分解斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
111,1111,1112・・・第2配線群、113,1131,1132・・・第1配線群、10・・・支持体、11・・・カソード電極、12・・・絶縁層、13・・・ゲート電極、14・・・開口部、14A・・・第1開口部、14B・・・第2開口部、15・・・電子放出部、20・・・基板、21・・・隔壁、22,22R,22G,22B・・・蛍光体領域、23・・・光吸収層(ブラックマトリックス)、24・・・アノード電極、25・・・スペーサ保持部、26・・・接合部材、27・・・給電電極、31・・・カソード電極制御回路、32・・・ゲート電極制御回路、33・・・アノード電極制御回路、40・・・スペーサ、CP・・・カソードパネル、AP・・・アノードパネル、EA・・・電子放出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の方向に延びるN本の第1配線から構成された第1配線群、
(B)第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の仮想第2配線が第1の方向に沿って二分割されて成る、(2×M)本の第2配線から構成された第2配線群、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部、
を備えており、
第1配線群は、N1本の第1配線から成る第1の第1配線群、及び、N2本(但し、N=N1+N2)の第1配線から成る第2の第1配線群から構成されており、
第2配線群は、第1の第1配線群と重複するM本の第2配線から成る第1の第2配線群、及び、第2の第1配線群と重複するM本の第2配線から成る第2の第2配線群から構成されており、
第1の第1配線群における第1番目の第1配線から第N1番目の第1配線まで、次いで、第2の第1配線群における第1番目の第1配線から第N2番目の第1配線までが、順次選択される線順次駆動方式の平面型表示装置の駆動方法であって、
第1の第1配線群において、少なくとも第N1番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるとき、第2の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加されることを特徴とする平面型表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記所定の電圧は、第1の第1配線群において第N1番目の第1配線が選択され、且つ、第1の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧に等しい電圧であることを特徴とする請求項1に記載の平面型表示装置の駆動方法。
【請求項3】
前記所定の電圧は、第2の第1配線群において第1番目の第1配線が選択され、且つ、第2の第2配線群において、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧に等しい電圧であることを特徴とする請求項1に記載の平面型表示装置の駆動方法。
【請求項4】
前記所定の電圧は、予め設定されたダミー電圧であることを特徴とする請求項1に記載の平面型表示装置の駆動方法。
【請求項5】
(A)第1の方向に延びるN本の第1配線、
(B)第1の方向とは異なる第2の方向に延びるM本の第2配線、並びに、
(C)第1配線と第2配線との重複領域に形成された画像表示部、
を備えており、
第1番目の第1配線から第N番目の第1配線までが、順次選択される線順次駆動方式の平面型表示装置の駆動方法であって、
第N番目の第1配線が選択された後、第1番目の第1配線が選択されるまでの期間の間に、M本の第2配線のそれぞれに、所定の電圧が印加されることを特徴とする平面型表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記所定の電圧は、第N番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されたときの該電圧に等しい電圧であることを特徴とする請求項5に記載の平面型表示装置の駆動方法。
【請求項7】
前記所定の電圧は、第1番目の第1配線が選択され、且つ、M本の第2配線のそれぞれに、画像表示部における輝度を規定する電圧が印加されるときの該電圧に等しい電圧であることを特徴とする請求項5に記載の平面型表示装置の駆動方法。
【請求項8】
前記所定の電圧は、予め設定されたダミー電圧であることを特徴とする請求項5に記載の平面型表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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