説明

幼児用補助便座

【課題】大人用便座上に安定して載置可能で、かつ取り付けおよび取り外しを簡単に行うことのできる幼児用補助便座を提供する。
【解決手段】幼児用補助便座11は、洋式便器の大人用便座上に載置される幼児用の補助便座である。具体的には、中央に穴12aの形成された略楕円形状の着座部材12と、着座部材12の内縁部から下方に突出する内壁12bと、着座部材12の外縁部から下方に突出する外壁12cと、着座部材12の大人用便座に当接する面に配置され、下面が内壁12bおよび外壁12cの先端よりさらに下方に位置する摩擦板13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幼児用補助便座、特に、洋式トイレの便座上に載置して使用する幼児用補助便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の幼児用補助便座は、例えば、特開平10−165329号公報(特許文献1)に記載されている。図7を参照して、同公報に記載されている幼児用補助便座101は、中央に穴102aの形成された略楕円形状の着座部材102と、着座部材102の前方領域に幼児の手の支えとなるハンドル103と、着座部材102の下面側に大人用便座(図示せず)に対して幼児用補助便座101を固定する位置決め部材104(図7中に破線で示す)とを備え、洋式便器の大人用便座上に載置して使用する。
【0003】
位置決め部材104は、着座部材102の下面から突出する軸104aと、略長円形状の係合片104bとで構成される。また、係合片104bは、その中心を外れた位置で軸104aに回転自在に保持されている。そして、係合片104bを回転させて大人用便座の下面に係合させることにより、幼児用補助便座101を大人用便座に固定させると記載されている。
【特許文献1】特開平10−165329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の位置決め部材104は、あらゆる大人用便座に幼児用補助便座101を固定可能とするために汎用性を持たせて設計されている。そのため、大人用便座の形状によっては、大人用便座の下面と係合片104bとの間に隙間を生じる可能性がある。
【0005】
この隙間は、幼児用補助便座101が大人用便座上でガタつきを生じる原因となり得る。特に、このガタつきは、子供の幼児用補助便座101への乗降時や、幼児用補助便座101上で子供が体を前後左右に揺らしたりしたときに問題となる。
【0006】
また、位置決め部材104による幼児用補助便座101の取り付けおよび取り外しは、小さい子供にはできない場合がある。そのため、子供が幼児用補助便座101を使用する度に、大人の手を借りなければならない等の不都合が生じる。
【0007】
そこで、この発明の目的は、大人用便座上に安定して載置可能で、かつ取り付けおよび取り外しを簡単に行うことのできる幼児用補助便座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る幼児用補助便座は、洋式便器の大人用便座上に載置される幼児用の補助便座である。具体的には、中央に穴の形成された略楕円形状の着座部材と、着座部材の内縁部から下方に突出する内壁と、着座部材の外縁部から下方に突出する外壁と、着座部材の大人用便座に当接する面に配置され、下面が内壁および外壁の先端よりさらに下方に位置する摩擦板とを備える。
【0009】
上記構成の幼児用補助便座は、大人用便座と摩擦板との接触摩擦によって、幼児用補助便座を大人用便座上に安定して固定する。これにより、大人用便座の形状に依存せず、安定した状態で使用可能な幼児用補助便座を得ることができる。
【0010】
また、着座部材の内縁部および外縁部にそれぞれ下方に折れ曲がる壁面を設けることによって、着座部材に座る子供の体が傷つくのを防止することができる。その結果、安全性に優れた幼児用補助便座を得ることができる。
【0011】
さらに、上記構成の幼児用補助便座は、大人用便座上に載置するだけで使用可能となるので、従来の幼児用補助便座と比較して、取り付けおよび取り外しが簡単な構造となっている。
【0012】
好ましくは、摩擦板は、使用時に大人用便座の形状に沿って変形する。このように、弾性変形能の高い材料で摩擦板を形成することにより、摩擦板と大人用便座との接触面積が大きくなる。その結果、大人用便座上にさらに安定して保持可能な幼児用補助便座を得ることができる。
【0013】
さらに好ましくは、摩擦板は着座部材の前方領域にのみ配置される。通常、幼児用補助便座を使用する子供は、着座部材上に前屈みの状態で座っている。したがって、幼児用補助便座を安定させるためには、前方方向へのずれを防止するのが効果的である。そこで、摩擦板を着座部材の前方領域にのみ配置することにより、幼児用補助便座を効果的に安定させることができると共に、摩擦板の材料を節約することが可能となる。
【0014】
好ましくは、着座部材の上面と内壁との境界部分、および/または、着座部材の上面と外壁との境界部分は、所定の曲率を持って湾曲している。これにより、着座部材に座る子供の体が傷つくのをさらに有効に防止することができる。
【0015】
好ましくは、幼児用補助便座は、着座部材と摩擦板とに連通する位置決め孔と、位置決め孔に固定され、着座部材の上方に延びる把持部とをさらに備える。把持部を設けることにより、幼児用補助便座を使用する子供の姿勢が安定する。また、位置決め孔に把持部を固定することにより、摩擦板を着座部材の所定位置に位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図6を参照して、この発明の一実施形態に係る幼児用補助便座11を説明する。なお、図1は幼児用補助便座11の斜視図、図2は幼児用補助便座11の下面図、図3は摩擦板13を示す図、図4は図2のIV−IVにおける断面図、図5は図2のV−Vにおける断面図、図6は幼児用補助便座11の使用状態を示す図である。
【0017】
まず、図1〜図5を参照して、幼児用補助便座11は、大人用便座上に載置されると共に、子供が座る着座部材12と、着座部材12の下面、すなわち、大人用便座に当接する面に配置される摩擦板13と、着座部材12の前方領域で上方に延びる把持部14とを備える。
【0018】
図1を参照して、着座部材12は略楕円形状の部材であって、例えばプラスチック等を射出成型して形成されている。着座部材12の中央には、略楕円形状の穴12aが形成されており、内縁部および外縁部には、それぞれ下方に突出する内壁12bおよび外壁12cが設けられている。また、内縁部の前方領域には、尿の飛散を防止するために上方に突出する前ガード部12dが設けられている。また、着座部材12の上面には、その形状にそってシート部材12eが貼付されている。
【0019】
前ガード部12dのさらに前方には、中央に把持部14を保持する穴12fと、穴12fの両端に玩具等を保持する一対の穴12gとが形成されている。把持部14は、左右に延びる一対の把手14aを有している。
【0020】
次に、図2を参照して、着座部材12の下面には、下方に突出する複数の位置決め突起12hが設けられている。この位置決め突起12hは、大人用便座の内側に嵌り込んで、幼児用補助便座11を大人用便座に対して位置決めする。なお、この実施形態においては、前方領域に2箇所、後方領域に2箇所の計4箇所に位置決め突起12hを設けたが、位置決め突起12hの位置や個数は任意に選択できるものとする。また、さらに位置決め突起12hのさらに後方には、着座部材12の剛性を高めるための複数の強化壁12iが設けられている。
【0021】
次に、図3を参照して、摩擦板13は、着座部材12の下面の前方領域に嵌まり込むように、外形が略円弧形状に形成されている。また、この摩擦板13には、中央部に着座部材12の穴12fに対応する大径穴13aと、その両側に位置決め突起12hを受け入れる小径穴13bとが設けられている。
【0022】
次に、図4を参照して、着座部材12の穴12fと摩擦板13の大径穴13aとは、着座部材12と摩擦板13とに連通する位置決め孔15を構成する。この位置決め孔15は、把持部14を固定すると共に、摩擦板13の着座部材12に対する位置を固定する。
【0023】
次に、図4および図5を参照して、着座部材12の上面と内壁12bとの境界部分、および、着座部材12の上面と外壁12cとの境界部分は、それぞれ所定の曲率を持って湾曲している。
【0024】
内壁12bおよび外壁12cは、着座部材12の剛性を高めるため、および幼児用補助便座11への乗降時等に子供の体が着座部材12の内縁部および外縁部と接触して怪我をするのを防止するために、下方に屈曲している。したがって、子供への攻撃性を緩和して安全性を高める観点からは、内壁12bおよび外壁12cの屈曲部分の曲率は大きいほうが望ましい。
【0025】
なお、この実施形態においては、内壁12bおよび外壁12cの根元部分がそれぞれ所定の曲率を持って湾曲した例を示したが、これに限ることなく、どちらか一方にのみでもこの発明の効果を得ることはできる。この場合、外縁部のほうが子供の体と接触する機会が多いので、少なくとも外壁12cの根元部分を湾曲させるのが望ましい。
【0026】
また、図4および図5を参照して、摩擦板13は、着座部材12の下面に配置したときに、その下面が内壁12bおよび外壁12cの先端よりさらに下方に位置するように厚み寸法が設定されている。さらに、摩擦板13は、例えば、ポリウレタンや発泡スチロール等の弾性変形能が高く、摩擦係数の大きい材料で形成されている。
【0027】
次に、図6を参照して、幼児用補助便座11の使用状態を説明する。
【0028】
幼児用補助便座11は、洋式便器21の大人用便座22上に載置して使用する。このとき、摩擦板13が配置された幼児用補助便座11の前方領域を大人用便座22の先端に合わせると共に、着座部材12の下面に設けられた複数の位置決め突起12hが大人用便座22の中穴23に嵌まり込むように載置する。
【0029】
このように幼児用補助便座11を大人用便座22上に載置すると、摩擦板13が弾性変形して大人用便座の上面に沿う形状となる。これにより、摩擦板13と大人用便座との接触面積が増加し、それに伴って両者の間の接触摩擦も大きくなる。その結果、幼児用補助便座11のガタつきを抑えて、大人用便座22上に安定して固定することができる。
【0030】
また、摩擦板13を弾性変形能の高い材料で形成することにより、大人用便座22の形状に合わせて自由に変形することができる。その結果、この幼児用補助便座11は、あらゆる形状の大人用便座に載置して使用することができる。
【0031】
また、上記構成の幼児用補助便座11は、従来のように位置決め部材104を操作する等の特別の作業をしなくとも、大人用便座22上に載置するだけで使用可能となる。このように、取り付けおよび取り外しが簡単な構造とすることにより、子供が大人の手を借りることなく幼児用補助便座11を使用することができる。
【0032】
さらに、必要に応じて、一対の穴12gに玩具等を固定しておいてもよい。これにより、子供が幼児用補助便座11に興味を持って積極的に使用するようになるので、トイレトレーニングとして有効である。
【0033】
なお、上記の実施形態において、摩擦板13は着座部材12の前方領域にのみ配置した例を示したが、これに限ることなく、任意の位置に配置することができる。例えば、前後左右のあらゆる方向へのガタつきを有効に防止する観点からは、着座部材12の下面全域に摩擦板13を配置するのが望ましい。
【0034】
ただし、把持部14を持って着座部材12上に座っている子供は、前屈みになっていることが多い。そのため、特に幼児用補助便座11の前方へのずれを防止することが求められる。上記の観点からは、少なくとも着座部材12の前方領域に摩擦板13を設ければよい。また、このように摩擦部材13を最も効果の高い部分にのみ設けることにより、材料を節約して製品コストを低減することができる。
【0035】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、洋式便器の大人用便座に載置して使用する幼児用補助便座に有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施形態に係る幼児用補助便座の斜視図である。
【図2】図1の幼児用補助便座の下面図である。
【図3】図1の幼児用補助便座に使用される摩擦板を示す図である。
【図4】図2のIV−IVにおける断面図である。
【図5】図2のV−Vにおける断面図である。
【図6】図1の幼児用補助便座の使用状態を示す図である。
【図7】従来の幼児用補助便座を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
11 幼児用補助便座、12 着座部材、12a,12f,12g 穴、12b 内壁、12c 外壁、12d 前ガード部、12e シート部材、12h 位置決め突起、13 摩擦板、13a 大径穴、13b 小径穴、14 把持部、14a 把手、15 位置決め孔、21 洋式便器、22 大人用便座、23 中穴。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器の大人用便座上に載置される乳幼児用補助便座であって、
中央に穴の形成された略楕円形状の着座部材と、
前記着座部材の内縁部から下方に突出する内壁と、
前記着座部材の外縁部から下方に突出する外壁と、
前記着座部材の大人用便座に当接する面に配置され、下面が前記内壁および前記外壁の先端よりさらに下方に位置する摩擦板とを備える、幼児用補助便座。
【請求項2】
前記摩擦板は、使用時に大人用便座の形状に沿って変形する、請求項1に記載の幼児用補助便座。
【請求項3】
前記摩擦板は、前記着座部材の前方領域にのみ配置される、請求項1または2に記載の幼児用補助便座。
【請求項4】
前記着座部材の上面と前記内壁との境界部分、および/または、前記着座部材の上面と前記外壁との境界部分は、所定の曲率を持って湾曲している、請求項1〜3のいずれかに記載の幼児用補助便座。
【請求項5】
前記幼児用補助便座は、
前記着座部材と前記摩擦板とに連通する位置決め孔と、
前記位置決め孔に固定され、前記着座部材の上方に延びる把持部とをさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載の幼児用補助便座。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−61777(P2008−61777A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242102(P2006−242102)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】