説明

広く離間した電極を有する双極刺激/記録装置

【課題】筋肉内刺激の用途に適した双極刺激プローブ(bipolar stimulator probe)は、活性刺激電極(active stimulator electrode)及び基準電極を単一の器具の一部として提供する。
【解決手段】これらの電極間の間隔は、公知の双極刺激プローブ及び双極棒電極(bipolar bar electrode)構造の電極間隔よりも遥かに広い。プローブ器具は、電極の固定された相対位置を所定範囲内で調整することを可能にするように構成されうる。相対的に広い間隔を2つの電極の間に設けることにより、該器具を使用して個別の基準電極を用いる単極刺激による効果に近づけることができ、ここで電気刺激は、2つの電極が2〜4cmまたはそれ以下しか離れていない双極刺激に比べて、患者の疼痛をより軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、先行する同時係属中の2006年7月31日出願の米国仮特許出願第60/834,184号の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電気刺激装置または筋電図(EMG)装置に接続可能な双極刺激プローブ(bipolar stimulator probe)が、末梢神経の表面刺激用に市販されている。このような装置では、刺激電極及び基準電極の両方が単一の装置に設けられる。神経活動電位及び筋肉活動電位の表面記録のための双極棒電極(bipolar bar electrode)構造、及び個別の(個々の)電極のセットもまた存在し、これらは、電気筋肉刺激を施すように機能することもできる。
【0003】
これらのタイプの装置は、筋肉痛で見られる種類の筋肉の収縮を誘発するための表面刺激において、及び、本発明者が開発し本明細書において“筋肉内刺激を得る表面適用される電気収縮”(Surface Applied Electrical Twitch Obtaining Intramuscular Stimulation)(SA-ETOIMS(商標))として参照される不快感緩和法(discomfort relieving method)において使用することができる。この方法論は、2005年9月9日出願の「表面適用の集中された電気刺激を用いる筋肉内刺激治療(Intramuscular Stimulation Therapy Using Surface-Applied Localized Electrical Stimulation」と題する米国仮特許出願第60/715,137号(特許文献1)、及び対応する通常出願である2006年9月7日出願の米国特許出願第11/470,757号(特許文献2)に記載されている。この手法は、多くの筋肉中の多数の運動終板領域(収縮点)への短い電気刺激の供給を含む。刺激法が患者及び治療する臨床医の双方にとって「使い易い」ことが重要である。すなわち、刺激によって患者に対する更なる甚大な不快感が引き起こされてはならず、かつ方法が臨床医にとって適用し易い必要がある。
【0004】
市販の標準的双極刺激プローブは、活性電極と基準電極との間に2cmまたはそれ以下のプローブ間距離を有する。このタイプの双極刺激は大きな刺激疼痛を誘発するので、SA-ETOIMS(商標)治療における使用には望ましくない。更に、活性電極と基準電極とが極めて近接するため、このような装置によって誘発することができる収縮は小さくて弱く、したがって有意な疼痛緩和効果を提供することができない。同様に、上述のように、記録目的だけでなく刺激目的でも使用可能な表面電極を、棒電極対の形態で利用することができる。このような装置は約3〜4cmの電極間距離を有するので、これらの装置をSA-ETOIMS(商標)の実施に使用する場合には、刺激疼痛の誘導という同じ問題が生じる。刺激電極/記録電極は、個別の(個々の)電極として利用することもできる。しかしながら、活性電極及び基準電極の両方を両手を使う(bi-manual)様式で多数の刺激部位及び基準部位に移動させる必要があり、従ってこのためSA-ETOIMS(商標)手法が遅くなりかつ妨げられ、この手法が臨床医にとって一層困難になるので、個別の個々の電極はSA-ETOIMS(商標)手法での使用に理想的であるとは言い難い。これらの問題は、以下に説明するように、単極刺激器具(monopolar stimulation tool)を使用することによりある程度軽減される。
【0005】
本発明者は、単極刺激、すなわち先端に単一の電極が取り付けられたほぼペン型の器具を使用してSA-ETOIMS(商標)を行なったが、これは、個別の基準電極と組み合わせて使用される。刺激電極を硬いペン型の器具の形態で提供することにより、臨床医には、電極を異なる刺激部位に迅速かつ効率的な様式で容易に移動させるために器具を保持するための、安定した位置が提供される。疼痛または不快感を緩和する治療効果は、強力な収縮のある部位を刺激する場合にしか実質的に達成されない。SA-ETOIMSは時間ベースの様式で、すなわち10〜15分間のセッションから1時間のセッションまでの漸増治療セグメントで行なわれる。価値のある治療効果とするためには、患者にとって手頃でありかつ出来高払いとして支払われる定期的なセッションの範囲内で、多くの強力な収縮部位を探し出し、位置を特定し、治療することが必須である。強力な収縮部位を所定の時間枠内にできる限り多く探し出すことを可能にするためには、収縮が誘発されたら直ぐに、すなわちコンマ何秒以内に、電極を別の部位に移動させる必要がある。従って、刺激プローブ及び基準電極がSA-ETOIMS手法の迅速な実施を可能にすることが重要である。しかしながら、公知のタイプの接着貼付される(adhesively applied)使い捨て電極の形態で提供される刺激電極では、臨床医が効果的に保持するための安定箇所がなく、かつこれは、電極をコンマ何秒毎に配置し直すことが必要な治療法において効率的に使用するためにも実用的ではない。サイズ及び長さがペンに類似している単極刺激プローブは、SA-ETOIMS手法において非常に有用であり、刺激のために皮膚の表面に容易に適用して筋肉収縮を起こしかつ強力な収縮部位の探索を容易にすることができる。しかしながら単極刺激法では、通常は公知の接着貼付される使い捨て電極である、個別の遠く離れた表面基準電極を使用する必要がある。この治療は、2〜4cmまたはそれ以下の間隔をあけた電極による双極刺激を用いる場合よりも疼痛が小さい。しかしながら、単極刺激には欠点がある。
【0006】
単極刺激を用いる場合、刺激プローブを異なる刺激点に移動させる際に、使い捨ての個別の基準電極を別の身体部位へと何回も配置し直して、不必要な刺激の繰り返し及び基準部位での疼痛誘発を回避する必要がある。このタイプの表面基準電極は、迅速な、例えば1秒毎の移動の助けにはならない。従って実際には、電極を1分毎くらいの頻度で移動させる。皮膚表面に対する複数回の再配置および再貼付を行うと、使い捨ての基準電極はその接着性を失い、外れ、かつ/または剥がれ落ちることがあるため、この両手を使う操作により治療医は時間を消耗する。
【0007】
ただ一つの基準部位における繰り返し刺激に起因する皮膚炎症を回避するためおよび単一の個別の基準電極をあちこちに頻繁に移動させる必要性を回避するために、複数の基準電極を皮膚の異なる部位に配置することができる。別々の基準電極を順番に作動させることにより、別々の基準部位への刺激の分布がより良好に、かつより均一になる。これによって、全ての単一の基準電極に対して取り外しおよび再配置を行う回数が減る。しかしながら、治療に使用する単極プローブを一方の手で保持しているため、異なる部位に配置された基準電極を作動させるために、臨床医は片手でワニ口クリップを最初の基準電極から外し、それを次の基準電極に再接続しなければならない。片手だけで操作するとワニ口クリップをうまく接続できない可能性があるため、これは臨床医にとって不便である。両手を使う接続が必要な場合、これは治療の妨げとなる。以前に繰り返し刺激を受けた部位における不快感を回避するために、多数の電極を物理的に取り外し、他の皮膚部位への配置のために交換することが依然として必要であることはまた、面倒でもある。多数の異なる部位への基準電極の配置を必要とする長期治療では、電極は最終的にその接着性を失う可能性があり、それによりこれらは皮膚表面から剥がれ落ちる。更に、基準電極が皮膚に適切に貼り付けられていない場合、皮膚に対する基準電極の接触面積が小さくなることにより、治療により誘発される疼痛がより大きくなる。
【0008】
SA-ETOIMS(商標)による最適な疼痛緩和結果を達成するために、時間ベースの治療において、強力な収縮を起こし得るできる限り多くの筋肉運動点をできる限り迅速に探し出すことが望ましい。表面基準電極が刺激プローブから離れて配置される場合には、刺激を強くして、強力な収縮の発生を容易にすることができる。基準電極が刺激プローブの近傍に配置される場合、治療は疼痛を伴い、かつ収縮は小さい。基準電極の配置を刺激プローブから遠く、例えば2〜3フィート程度、離せば離すほど、求められる強力な収縮を深い位置の運動終板領域(収縮点)から誘発し易くなる。一例として、ふくらはぎの筋肉または腕の筋肉を刺激する際に基準電極を背中の中部または下部に配置することができるが、これは臨床医にとって、基準電極が容易に手の届く範囲ではない部位にある場合に問題となる。このとき臨床医は、自身で基準電極に手を伸ばすか、または近くまで移動して、遠く離れた基準電極を手の届く範囲の別の位置へと再配置する必要があるたびに、治療を一時的に中断しなければならない。
【0009】
単極刺激アプローチ(個別の基準電極を用いる)の別の欠点として、刺激電極及び基準電極の長い個別の配線がもつれ易く、臨床医が治療を中断して配線のもつれを解く必要があるという事実が挙げられる。更に、電気刺激、特に一つの部位に対する刺激の繰り返しに伴う電気刺激に対して皮膚がより敏感である腹側(前側)身体表面に、基準電極を配置するのに適した部位を探し出すことが困難である。また、臨床医が身体の前側または胸部の筋肉の治療の際に身体の背部から基準電極を取り外すことを失念した場合、経胸腔的な電流が誘導されて、心拍に悪い影響を与える可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/715,137号
【特許文献2】米国特許出願第11/470,757号
【発明の概要】
【0011】
これまでの記述を念頭において、本発明者は、単一の器具の一部として活性刺激電極及び基準電極を設け、かつこれらの電極の間隔を、公知の双極刺激プローブ及び双極棒電極構造の電極間隔よりも有意に長い所定の距離、例えば標準化された距離に固定することのできる双極刺激プローブが必要であることを確認した。一般原理として、強力な収縮を得るためおよび双極器具を用いて単極刺激環境を模擬するためには、活性電極と基準電極との間の距離をできる限り離す必要がある。理想的には、2つの電極をできる限り(可能であれば、2〜3フィート以上)離すことができるが、双極電極器具によってこの種の非常に広い間隔を設けることは臨床上、実用的であり得ない。そのような装置は極めて重く、嵩が大きく、かつ/または実用上の使用には扱いにくいであろう。また、介在する組織の輪郭がでこぼこしていることにより、基準電極を皮膚表面に接触させることが妨げられる可能性がある。実用性のために、15〜16cm(6インチ)の電極間隔を刺激電極と基準電極との間に設けることができる。しかしながら、2つの電極の間の間隔を広くするまたは狭くする選択肢があることは有利である。プローブ器具を、例えば滑動可能な(slideable)電極、または、ノギスのような滑動計(sliding gauge)に使用される原理に類似した別の方法で移動可能に取り付けられた電極により、電極の固定された相対位置を所定範囲内で調整することを可能にするように構成することができる。2つの電極の間に広い間隔を設けた双極プローブ器具は、個別の基準電極を用いる単極刺激の効果に近いと考えられ、ここで電気刺激は、2つの電極がわずか2〜4cmまたはそれ以下しか離れていない双極刺激に比べて、患者に与える疼痛がより少ない。電極間距離を短くする能力は、顔、手、及び足の小さな筋肉を治療するために必須である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による双極刺激プローブの概略図である。
【図1a】ハンドルが器具の一方の端部に移動した、図1の態様の変形の概略図である(ノギス式)。
【図2】更なる双極態様の刺激プローブ器具の概略図である。
【図3】本発明による更なる例示的プローブ器具の概略図である。
【図4】更に別の例示的プローブ器具態様の概略図である。
【図5】図1の概略図に対応する、本発明によるプロトタイププローブ器具を示す透視図である。
【図6】図3の概略図に対応する、本発明による別のプロトタイププローブ器具の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な態様の詳細な説明
次に、添付の図面を参照すると、図1は、本発明による双極刺激プローブ1の概略図である。ハンドル2は、約3〜6インチ程度の長さであることが好ましい。配線3は、プローブ器具の2つの離間(spaced)電極5、7に至り、Digitimer Limited(英国、ハートフォートシャー)から市販されている電気刺激ユニットであるModel DS 7のような適切な刺激/記録装置に連結される。図示のように、電極5を刺激電極とすることができ、電極7を基準電極とすることができる。図1に示すように、電極5、7は、刺激突起部9、11の間を該突起部に対して直角に延びることができる連結交差部材12によって互いに接続された、離間アームすなわち突起部9、11の端部に取り付けられる。突起部9、11は、約2.5インチ(50mm)の長さを有し、かつ互いに間隔をあけて電極5と7との間に距離「A」を設けることが好ましく、この距離は少なくとも6インチの中心間距離であり、かつ上限は24〜36インチであることが好ましい。電極5、7は公知のタイプとすることができる。刺激用途のために、電極を、湿らせた綿の塊または水に浸した羊毛の塊で覆うことができるが、9〜11%の高張生理食塩水を使用して電気伝導を容易にすることが好ましい。刺激電極は、SA-ETOIMS用に製造された使い捨てフェルトパッドの形態で提供することができる。これらを、9〜10%の高張生理食塩水に予め浸すかまたは浸漬させて予め包装しておくことにより、治療における使用を容易にすることができる。記録目的のために、記録表面を、ステンレス鋼または適切なタイプの別の公知の導電金属表面で製造することが好ましい。
【0014】
トリガーボタンをプローブ器具1に取り付けて、刺激用途のために臨床医がプローブを簡便に作動させることを可能にすることができる。スイッチは好ましくはタッチセンサー式(touch-sensitive)であり、臨床医によってオン/オフ制御を起動するために、刺激電極の患者接触面への圧力により作動するか、または、ハンドル上の、ハンドルの側部もしくは端部上のプッシュボタンによって作動する。プローブは、患者または別の人が起動できる個別のハンドボタンを介して作動させることもできる。
【0015】
刺激プローブは軽量、好ましくは約2〜4オンスまたはそれ以下の重量、例えば好ましくは、筆記用のペンに近い重量とする必要がある。しかしながら、連結交差部材12に使用される材料は、繰り返しの使用に供される際および、かつ激しい収縮に起因して、接続された突起部に沿った大きな衝撃力を受ける際の破損に耐えられる程十分に頑丈でなければならない。臨床医にとって把持が容易でありかつ快適であるために、プローブ1のハンドルまたは柄2の外周は、約4cm、または筆記用のペンの直径と同様であることが好ましい。ハンドル2は、手の動きによる皮膚の表面での電極の揺れを回避するために、3〜6インチの長さを有することが好ましい。あるいは、柄状のハンドルの代わりに、連結交差部材12が、スチームアイロンで一般に使用されているのと同じ様式のハンドルとしての使用を可能にする厚さを有してもよい(以下に論じる図2を参照)。また、ハンドルを、ノギスのハンドルと同様に、連結交差部材12の一方の端部に配置してもよい。これは図1aに示されており、器具は再配置されたハンドル2’を有する。このような設計では、使用中にハンドルが患者の皮膚及び筋肉組織に触れることを回避するように、ハンドルを連結交差部材12に対して鈍角で上方に傾斜させることができる(フライパンまたはソースパンの取っ手において一般に見られるように)。図1aにおいてこのようなハンドルを破線で示す(2”と表示)。ハンドルの周囲寸法は、長時間の把持に対して快適である必要がある。親指操作のために、電極間距離を変化させるための制御手段をハンドル上に適切に配置することができる。制御手段はホイールまたはボタンとすることができ、これにより、選択した電極間距離を固定することもできる。患者と接触する両電極表面は好ましくは、円形の形状であり、かつ直径1〜2cmであると考えられる。
【0016】
図2は、更なる態様であるプローブ器具13の概略図であり、ここで、離間電極取り付け構造が、例えば約6インチの間隔「A」で両端部に取り付けられた活性電極及び基準電極5、7を有する弓形/半月形のアーム14の形態で提供されている。この態様は第1の態様と同じくハンドル2し、該ハンドルはアーム14の中心部分に接続する。柄状のハンドル2は省略することができ、この場合には、弓形/半月形のアーム14を、スチームアイロンの取っ手と同じように、長時間の把握に対して快適な周囲寸法を持つハンドルとして使用することができる。
【0017】
でこぼこした身体領域上では、刺激電極及び基準電極が同時に皮膚表面に容易に到達して接触することができない可能性がある。これらの領域を治療する際に刺激電極の再配置を行うだけで、この困難を解決することができる。また、図2に示すように、活性電極と基準電極との間のコネクタ部品を弓形または半月形の形状になるように形成することは、コネクタ部材が筋肉の輪郭により適合することによって、この問題の助けとなるであろう。また、プローブ端部が皮膚表面に到達して接触することを可能にするように、プローブアームを移動可能または折り曲げ可能に製造することができる。この概念は、読書に適した光量を供給するための最適角度を提供するために曲げることができる読書スタンドの柔軟な柄の概念と同じである。プローブ装置のアーム及びハンドルは、プラスチックまたは他の絶縁材料で作製するかそれらで覆い、刺激電極及び基準電極を電気的に絶縁し、かつ電極のショートまたは臨床医への電気インパルスの伝導を防止する必要がある。
【0018】
図3は、更なる例示的な態様であるプローブ器具15の概略図であり、ここで離間電極取り付け構造が本質的に平坦な棒16の形態で提供されており、これに対して、活性電極及び基準電極5、7を直接取り付けてもよく、または、例えばアーム長0.5インチまたはそれ以下で電極間隔約6インチの、非常に短いアームまたは突起部に取り付けてもよい。この態様はまた、第1の態様と同じように、平坦な棒15の中心部分に接続するハンドル2も有する。このタイプの棒電極は、平坦で平らな表面の上での記録または刺激ためにより適している。プローブ器具15は、SA-ETOIMS治療を行なう際に強力な収縮部位の迅速な探索及び位置決めの必要がある場所における使用に対してそれほど良好に適合していない。これは棒電極の突起部の長さが短いことに起因し、それにより、筋肉の輪郭にわたって皮膚表面へ接触する両方の電極の配置が妨げられる。
【0019】
図4は、更に別の例示的な態様であるプローブ器具17の概略図であり、ここで、離間電極取り付け構造は、集束して鈍角を形成する一対のアーム19の形態で提供される。これまでの態様と同様に、活性電極及び基準電極5、7は、アームの端部に、例えば約6インチの電極間間隔で取り付けることができる。第1の態様と同じように、この態様もまた、この場合は傾斜(集束)アーム19により形成される構造の中心頂点部分に接続する、ハンドル2を有する。
【0020】
本発明による広く離間した双極プローブ器具を潜在的に実現可能であるSA-ETOIMS(商標)に関連した利点を、以下に記載する。
【0021】
治療処置の間に基準プローブを移動させるのに時間及び注意力が別途必要であることに加えて、刺激電極を移動させる必要がある単極刺激法と同様の両手を使う操作を臨床医が行う必要がないため、双極プローブ器具によって、SA-ETOIMS(商標)治療をより迅速に施すことができる。
【0022】
基準電極が活性刺激プローブと一緒に対で移動することは、基準電極が配置されている任意の部位を、長時間の過度な刺激及び患者にとって不必要な不快感から保護する。
【0023】
刺激電極と基準電極との間に固定または限定された調整可能な距離を設けることによって、治療する筋肉の同じ領域内に基準電極をおくことおよび刺激を一つの関心対象の筋肉に集中させることが可能となる。一つの筋肉に対するこの刺激の隔離(stimulus isolation)は、臀部及び下肢の大きな筋肉の治療において実行可能である。このような目的を果たすために刺激電極及び基準電極の両方を一緒に動かすことができるため、刺激を身体の一方の側へと隔離することもできる。これにより実質的に、体の前側の筋肉を治療する際に基準電極を偶発的に体の背中に配置する可能性、及びこれに付随して心拍を妨害し得る経胸腔的な電流が誘導される危険性が排除される。
【0024】
双極プローブ器具については、器具の柄に至る1本のケーブルしか必要ではなく、このことは、個別の基準電極及び刺激電極まで延びる2本の個別の配線の必要性が回避されることにより器具をユーザにとって更に使い易くする。これにより治療中の配線のもつれが回避され、治療時間のより有効な利用につながる。
【0025】
本発明者は、図5及び6に示すプローブと同様のプロトタイププローブを使用して、15〜16cmすなわち6インチの固定された電極間距離でSA-ETOIMS治療を行ない、強力な収縮の誘発を可能にするために該電極間隔で十分であることを見出した。このようなプローブを用いる治療は、定位の基準電極配置を用いる単極刺激と比べて、基準部位においてより迅速で、効率が高く、かつ明らかに疼痛が少ない。場合によっては、太り過ぎ患者の臀部などの特定の筋肉については、この間隔では強力な収縮を誘発するのに十分でないかもしれない。この状況は、活性電極と基準電極との間の距離を6インチ超に、およびおそらく最大で24〜36インチあるいはそれ以上まで広げるための滑動可能な機構または別の方法で移動可能な機構によって、解決することができる。そのような配置を使用して、活性刺激電極が関心対象の筋肉の上に位置し、かつ基準電極が別の筋肉の上に乗るように位置するように、双極プローブの位置決めを容易にすることができる。2つの電極間の間隔距離が広くなるために、このことは有利に、単極刺激環境を大いに模擬する。電極間隔を調整するための交差アーム20に沿った電極の滑動可能な移動の概要を図5の矢印B1及びB2で示す。電極の再配置/向き変えのための交差アーム20の湾曲を可能にする柔軟な継手の概要を、符号21で示す。また、既に記載されているように器具のトリガースイッチに関連づけることができる、ハンドルに取り付けられたユーザ作動式プッシュボタン23も図5に示す(図示した滑動可能な移動、柔軟な継手、及びプッシュボタンは、発明者が使用したプロトタイププローブにはない任意の特徴である)。
【0026】
本発明の双極プローブ装置は、SA-ETOIMS(商標)刺激目的のための有利な使用の範囲を超えた実用性も有する。このような装置は、基準電極及び活性電極の間隔を広くあけることが必要であるか望ましい可能性のある他の刺激手法のために使用することができ、または、神経及び/もしくは筋肉を刺激するための単極刺激条件を模擬することが望ましい状況において使用することもできる。
【0027】
この同じタイプのプローブは、筋電図(EMG)機器を使用して、神経伝導検査(NCS)記録を行なうための複合筋活動電位及び知覚神経活動電位(sensory nerve action potential)を記録するために使用することもできる。大きな筋肉からの記録を取りながら運動神経伝導検査を行う場合、活性電極は関心対象の筋肉の運動点の上に配置し、かつ基準電極は、記録済みの筋肉の腱の上に、または関心対象の腱が付着している骨などの電気的に不活性な領域内に配置する。同様に、知覚神経活動電位を記録する場合、活性電極及び基準電極は、知覚神経が分布している線上に配置する。
【0028】
記録手法に関してより良い電気的測定値を得るために、患者の皮膚に接触した状態で配置されるプローブ電極を、刺激目的で使用されることが好ましい使い捨て湿式フェルトパッドの代わりに、例えば、心電図(EKG)記録及び神経伝導検査(NCS)記録などに日常的に使用される、金属または他の使い捨て金属性導電材料で作製することが好ましい。器具の活性リード線及び基準リード線は、EMG機器のプリアンプの適切なレセプタクルに適合可能な互換性のあるタイプであることが好ましいであろう。本発明が提供する離間電極の組合せは、所定の筋肉の記録を取るのに最適な運動点の探索を容易にするために有用である。これは、記録電極と基準電極の再配置が容易であること、及び2つの電極の間で固定可能なまたは標準化された距離を使用することに起因する。活性電極と基準電極との間の間隔が一定に保持されない(固定されない)場合、記録電位の波形及び振幅はこれらの2つの電極の間の距離に関連して変化し;この変動性は知覚神経活動電位を記録する場合には特に顕著になる。図3に示す棒電極型プローブは、知覚活動電位及び筋肉活動電位を記録するのに適している。
【0029】
本発明を種々の態様及びその詳細と関連付けながら記載してきたが、前述の記載及び例は例示を意図したものであり、本発明の範囲の限定を意図したものではないことが理解されよう。数多くのその他の変更及び配置が、本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の器具の一部として活性刺激電極(active stimulator electrode)、基準電極、及びユーザハンドルを備える双極刺激プローブ(bipolar stimulator probe)であって、電極間間隔が中心間で少なくとも15cmとなるように電極の位置が互いに対して実質的に固定される、双極刺激プローブ。
【請求項2】
プローブ器具が、電極の固定された相対位置を所定範囲内で調整することを可能にするように構成される、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項3】
電極が、アームの間を交差して延びる連結部材によって互いに接続された離間(spaced)アームの端部に取り付けられる、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項4】
ハンドルが連結部材の一方の端部に配置される、請求項3記載の双極刺激プローブ。
【請求項5】
ハンドルが連結部材に対して鈍角で上方に傾斜している、請求項4記載の双極刺激プローブ。
【請求項6】
刺激用途のためにユーザがプローブを簡便に作動させることを可能にするためのトリガースイッチを更に含む、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項7】
トリガースイッチが、刺激電極の患者接触面に加えられた圧力によって作動するタッチセンサー式(touch-sensitive)スイッチである、請求項6記載の双極刺激プローブ。
【請求項8】
トリガースイッチが、ハンドルに設けられたプッシュボタンによって作動する、請求項6記載の双極刺激プローブ。
【請求項9】
両方の電極が、円形形状でありかつ1〜2cmの直径を有する患者との接触のための表面を有する、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項10】
両方の電極が、金属製の患者接触面を備える、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項11】
両方の電極が、患者接触面を提供するフェルトパッドを備える、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項12】
両端に活性電極及び基準電極が取り付けられた、弓形アームの形態で設けられる離間電極取り付け構造を更に備える、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項13】
活性電極及び基準電極が取り付けられた、ほぼ平らな棒の形態の離間電極取り付け構造を更に備える、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項14】
集束して鈍角を形成する一対のアームの形態の離間電極取り付け構造を更に備える、請求項1記載の双極刺激プローブ。
【請求項15】
単一の器具の一部として活性刺激電極、基準電極、及びユーザハンドルを備える双極刺激プローブであって、プローブ器具が、電極の位置を互いに対して固定すること、及び電極の固定された相対位置を所定範囲内で調整することを可能にするように構成される、双極刺激プローブ。
【請求項16】
電極の少なくとも一つが、その位置調整を可能にするように、滑動可能に(slideably)器具に取り付けられている、請求項15記載の双極刺激プローブ。
【請求項17】
平坦ではない皮膚表面に到達して接触するために、活性電極及び基準電極の相対位置の調整を可能にするように移動可能または折り曲げ可能である離間電極取り付け構造を更に備える、請求項15記載の双極刺激プローブ。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99605(P2013−99605A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−32066(P2013−32066)
【出願日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【分割の表示】特願2009−522841(P2009−522841)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(509031109)ジュス−ジャス エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】