説明

床パンの支持構造

【課題】床パンにかかる荷重による負荷を−部に集中させることなく、分散して高さ調整ボルトに伝えることができて、強度が強く、構成が簡単で安価な床パンの支持構造を提供すること。
【解決手段】床パン1に埋込ナット2をインサート成形するナット埋込部1bを設け、該ナット埋込部1bの左右に取付板固着部1c、1cを設けると共に、中央にボルト挿入孔3aを設けた取付板3を、平面視にて該ボルト挿入孔3aの内側に前記埋込ナット2の螺子孔2aが位置するように埋込ナット2と当接させ、該取付板3の両端部に設けた床パン固着部3c、3cを床パン1の取付板固着部1c、1cに固着させると共に、高さ調整ボルト4の上部を埋込ナット2の螺子孔2aに上下移動自在に螺合させ、高さ調整ボルト4に螺合したロックナット5を取付板下面3bに圧着させ、前記埋込ナット2と前記ロックナット5で取付板3を挟持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床パンを高さ調整ボルトで支持する床パンの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室ユニットの床パンを高さ調整ボルトで支える支持構造においては、図2のように、床パン1の底裏面に取付板固着部1c、1cを設け、取付板固着部1c、1cの下端に、下方に凸のハット型鋼材3´の両端部の床パン固着部3c、3cを固着させ、ハット型鋼材3´の中央下面に溶接固定したナット7に、高さ調整ボルト4を下方側から螺合させ、取付板固着部1c、1c間に形成されている凹み状の凹空間S内に前記高さ調整ボルト4を上下に螺進退させて床パン1の高さ調整を行うようになっている(特許文献1参照。)。
【0003】
このような床パンの支持構造においては、床パン1にかかる荷重を、ハット型鋼材3´の両端部の床パン固着部3c、3cのみで支持するため、固着させた取付板固着部1c、1cに負荷が集中して、固着部の両端部の床パン固着部3c、3cと取付板固着部1c、1cとが、外れたり、破損するという問題があった。また、ハット型鋼材3´にナット溶接が必要なため、溶接コストが掛かってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−264166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、床パンにかかる荷重による負荷を集中させることなく、分散して高さ調整ボルトに伝えることができて、強度が強く、構成が簡単で安価に提供できる床パンの支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の床パンの支持構造は、床パン1の底裏面1aに埋込ナット2をインサート成形するナット埋込部1bを設け、該ナット埋込部1bの左右の床パン1の底裏面1aに取付板固着部1c、1cを設けると共に、中央にボルト挿入孔3aを設けた取付板3を、平面視にて該ボルト挿入孔3aの内側に前記埋込ナット2の螺子孔2aが位置するように埋込ナット2と当接させ、該取付板3の、両端部に設けた床パン固着部3c、3cを床パン1の底裏面1aの左右の取付板固着部1c、1cに固着させると共に、高さ調整ボルト4の上部を前記取付板3のボルト挿入孔3aを通って埋込ナット2の螺子孔2aに上下移動自在に螺合させ、高さ調整ボルト4に螺合したロックナット5を取付板下面3bに圧着させ、前記埋込ナット2と前記ロックナット5で取付板3を挟持させたことを特徴とする。
【0007】
このように、ナット埋込部1bと埋込ナット2とがインサート成形により一体化され、その一体化された埋込ナット2に高さ調整ボルト4を螺合させた状態で、ロックナット5を取付板3に圧着するように螺合させることで、埋込ナット2とロックナット5で取付板3が狭持されて、ナット埋込部1bと埋込ナット2と取付板3とロックナット5と高さ調整ボルト4とが一体化し、相互に補強しあって強度の強いものとなる。
【0008】
また、床パン1にかかる荷重を、一体化されたナット埋込部1bと、取付板3の両端部の床パン固着部3c、3cとで分散して、高さ調整ボルト4に伝えることができるので、負荷が集中して、取付板固着部1c、1cと床パン固着部3c、3cとが外れたり、破損するという問題を防止することができる。
【0009】
また、ロックナット5を取付板3に圧着するように螺合させることによって、高さ調整ボルト4の共回り防止と、取付板3の位置固定とを同時に行うことができるので、共回り防止のためのナットと、取付板3の位置固定のためのナットとを別々に設ける必要がなく、構成が簡単で安価に床パンの支持構造を提供することができる。
【0010】
また、本発明の床パンの支持構造は、前記ナット埋込部1bを、床パン1の底裏面1aから下方に突出させ、該ナット埋込部1bの突出下部1dに埋込ナット2をインサート成形すると共に、該ナット埋込部1bの埋込ナット2の上方に、埋込ナット2の螺子孔2aと連通するボルト移動穴6を設け、前記取付板固着部1c、1cの下端を、埋込ナット下面2bより上方に位置するよう突出させ、前記取付板3として、ボルト挿入孔3aを設けた中央部3dが、左右の床パン固着部3c、3cより下方に位置するように形成されたハット型鋼材3´を用いることが好ましい。
【0011】
このように、ナット埋込部1bを下方に突出させて、突出下部1dに埋込ナット2をインサート成形することで、高さ調整ボルト4のボルト移動穴6をナット埋込部1b内に設けることができるので、高さ調整ボルト4の調整代は、埋込ナット下面2bから、ボルト移動穴6の上端までと、長く取ることができる。また、ボルト移動穴6を設けることで、埋込ナット2は上下長さが長いものではなく、通常のサイズのものを使用しても、調整代を十分に取ることができる。ここで、ハット型鋼材3´を用いることで、ナット埋込部1bを突設させるにも関わらず、左右の取付板固着部1c、1cの突出長さを抑えることができるので、取付板固着部1c、1cの強度が確保できて、取付板固着部1c、1cの突出形成に必要な材料費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ナット埋込部と埋込ナットと取付板とロックナットと高さ調整ボルトとを一体化させることで、相互に補強しあって強度の強いものとすることができるという効果がある。また、床パンにかかる荷重による負荷を集中させることなく、一体化されたナット埋込部と、取付板の両端部の床パン固着部とで、分散して高さ調整ボルトに伝えることができるという効果がある。また、ロックナットを取付板に圧着螺合させることで、高さ調整ボルトの共回り防止と、取付板の位置固定とを同時に行うことができるので、構成が簡単で安価に床パンの支持構造を提供することができるという効果がある。
【0013】
また、ボルト移動穴をナット埋込部の埋込ナット上部に設けることで、上下長さが長い埋込ナットを使用しなくても、高さ調整ボルトの調整代を十分に取ることができるという効果がある。また、取付板として、ハット型鋼材を用いることで、左右の取付板固着部の突出長さは抑えることができるので、取付板固着部の強度を確保できて、取付板固着部の突出形成に必要な材料費を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の一例の床パンの支持構造の概要側面図である。
【図2】従来の床パンの支持構造の概要側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図1に示す実施形態の床パンの支持構造に基づいて説明する。浴室ユニットに高さ調整自在に設ける床パン1の底裏面1aには、埋込ナット2を下面中央部にインサート成形する略円柱状のナット埋込部1bが複数、設けられている(図では、1つだけ記載。)。ここで、埋込ナット2は、埋込ナット下面2bが、ナット埋込部1bの下面よりも下方に位置するようにインサート成形されていて、後述する取付板3に埋込ナット下面2bが当接できるように形成されている。ちなみに、ナット埋込部1bの下面と埋込ナット下面2bは面一であっても良い。
【0016】
また、埋込ナット2は、後述する高さ調整ボルト4の調整代を大きく取り、インサート成形するナット埋込部1bとの接着面を大きく取るため、図1のように上下方向に長いナットを使用している。
【0017】
ナット埋込部1bの左右の床パン1の底裏面1aには、後述する取付板3を固着させる取付板固着部1c、1cが設けられている。中央に、後述する高さ調整ボルト4を挿入させるボルト挿入孔3aを設けた取付板3は、平面視にてボルト挿入孔3aの内側に埋込ナット2の螺子孔2aが位置するように埋込ナット2と当接させている。取付板3の両端部には床パン固着部3c、3cを設けており、床パン固着部3c、3cは床パン1の底裏面1aの左右の取付板固着部1c、1cにそれぞれ固着させている。ここでの固着方法は、図1のように螺子等によるものであっても良いし、確実に固着可能であれば接着剤によるものであっても良い。
【0018】
床パン1を支持して、高さを調整する高さ調整ボルト4の上部は、取付板3のボルト挿入孔3aを通って、埋込ナット2の螺子孔2aに上下移動自在に螺合させている。高さ調整ボルト4を螺子穴2aに螺合させている状態で、高さ調整ボルト4に螺合したロックナット5を取付板下面3bに圧着するように螺合させると、埋込ナット2とロックナット5で取付板3を挟持させた状態となる。
【0019】
このように、ナット埋込部1bと埋込ナット2とがインサート成形により一体化され、その一体化された埋込ナット2に高さ調整ボルト4を螺合させた状態で、ロックナット5を取付板3に圧着するように螺合させることで、埋込ナット2とロックナット5で取付板3が狭持されて、ナット埋込部1bと埋込ナット2と取付板3とロックナット5と高さ調整ボルト4とが一体化し、相互に補強しあって強度の強いものとなる。
【0020】
また、床パン1にかかる荷重を、一体化されたナット埋込部1bと、取付板3の両端部の床パン固着部3c、3cとで分散して、高さ調整ボルト4に伝えることができるので、負荷が集中して、取付板固着部1c、1cと床パン固着部3c、3cとが外れたり、破損するという問題を防止することができる。
【0021】
また、ロックナット5を取付板3に圧着するように螺合させることによって、高さ調整ボルト4の共回り防止と、取付板3の位置固定とを同時に行うことができるので、共回り防止のためのナットと、取付板3の位置固定のためのナットとを別々に設ける必要がなく、構成が簡単で安価に床パンの支持構造を提供することができる。ここで、埋込ナット2のインサート成形に関しても、床パン1の成形サイクル内で取付けることが可能なため、溶接するような特別なコストがかかるようなことはない。
【0022】
また、図1に示すように、本発明の実施形態の床パンの支持構造においては、ナット埋込部1bは、床パン1の底裏面1aから下方に突出させていて、埋込ナット2の下面が、ナット埋込部1bの下面よりも下方に位置するようにナット埋込部1bの突出下部1dに埋込ナット2をインサート成形させている。ここで、ナット埋込部1bの下面と埋込ナット2の下面は面一であっても良い。
【0023】
ナット埋込部1b内の埋込ナット2の上方には、埋込ナット2の螺子孔2aと連通するボルト移動穴6が設けられていて、このボルト移動穴6を高さ調整ボルト4の上端が上下に移動する。ここで、取付板3として、ボルト挿入孔3aを設けた中央部3dが、左右の床パン固着部3c、3cより下方に位置するように形成されたハット型鋼材3´を用いることで、取付板固着部1c、1cの下端は、埋込ナット下面2bより上方に位置するよう突出させることができる。
【0024】
このように、ナット埋込部1bを下方に突出させて、突出下部1dに埋込ナット2をインサート成形することで、高さ調整ボルト4のボルト移動穴6をナット埋込部1b内に設けることができる。よって、高さ調整ボルト4の調整代は、埋込ナット下面2bから、ボルト移動穴6の上端までと、長く取ることができる。また、ボルト移動穴6を設けることで、埋込ナット2は図1のように上下長さが長いものではなく、通常のサイズのものを使用しても、高さ調整ボルト4の調整代を十分に取ることができる。ただし、埋込ナット2は、負荷がかかっても、ナット埋込部1bから外れないものでなければならない。
【0025】
また、取付板3として、ハット型鋼材3´を用いることで、ナット埋込部1bを突設させるにも関わらず、左右の取付板固着部lc、1cの突出長さを抑えることができるので、取付板固着部1c、1cの強度を確保できて、取付板固着部1c、1cの突出形成に必要な材料費を抑えることができる。
【0026】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 床パン
1a 底裏面
1b ナット埋込部
1c 取付板固着部
1d 突出下部
2 埋込ナット
2a 螺子孔
2b 埋込ナット下面
3 取付板
3a ボルト挿入孔
3b 取付板下面
3c 床パン固着部
3´ ハット型鋼材
4 高さ調整ボルト
5 ロックナット
6 ボルト移動穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パンの底裏面に埋込ナットをインサート成形するナット埋込部を設け、該ナット埋込部の左右の床パンの底裏面に取付板固着部を設けると共に、中央にボルト挿入孔を設けた取付板を、平面視にて該ボルト挿入孔の内側に前記埋込ナットの螺子孔が位置するように埋込ナットと当接させ、該取付板の両端部に設けた床パン固着部を床パンの底裏面の左右の取付板固着部に固着させると共に、高さ調整ボルトの上部を前記取付板のボルト挿入孔を通って埋込ナットの螺子孔に上下移動自在に螺合させ、高さ調整ボルトに螺合したロックナットを取付板下面に圧着させ、前記埋込ナットと前記ロックナットで取付板を挟持させたことを特徴とする床パンの支持構造。
【請求項2】
前記ナット埋込部を、床パンの底裏面から下方に突出させ、該ナット埋込部の突出下部に埋込ナットをインサート成形すると共に、該ナット埋込部の埋込ナットの上方に、埋込ナットの螺子孔と連通するボルト移動穴を設け、前記取付板固着部の下端を、ナット埋込部の突出下端より上方に位置するよう突出させ、前記取付板として、ボルト挿入孔を設けた中央部が、左右の床パン固着部より下方に位置するハット型鋼材を用いたことを特徴とする請求項1記載の床パンの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−275714(P2010−275714A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127014(P2009−127014)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】