説明

床下構造物の断熱構造

【課題】断熱部材の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めながら、点検のために人が開口から床下に入る際の障害とならないようにした床下構造物の断熱構造を提供すること。
【解決手段】床下収納庫1の収納容器本体11の外周部を囲うように配設するようにした断熱部材2を、床構造部材Fに固定される支持部材Sに背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材2aと、この固定側断熱部材2aに端部を嵌合することにより、固定側断熱部材2aと収納容器本体11との間で不動に支持されるとともに、収納容器本体11を除去した状態で、床下収納庫の開口Hの中心側に向けて水平方向に移動させることにより、固定側断熱部材2aから離脱可能にした可動側断熱部材2bとで分割構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下収納庫や床下点検口(本明細書において、包括して「床下構造物」という。)の断熱構造に関し、特に、床下収納庫の収納容器本体の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにした床下収納庫や床下点検口の点検口の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにした床下点検口の断熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、床下収納庫においては、床下収納庫を介して、冷房や暖房の熱が失われることを防止するために、床下収納庫の蓋部に断熱材を配設するとともに、収納容器本体の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにした床下収納庫の断熱構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−293041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の床下収納庫の断熱構造において、収納容器本体の外周部を囲うように配設される断熱部材は、床構造部材である根太に直接取り付けるようにされているため、支持強度の関係から高さ方向の寸法を大きくすることができず、このため、断熱性能が低いという問題があった。
【0005】
この問題点に対処するため、例えば、図1に示すように、床構造部材Fである根太Jに固定される支持部材Sに背面を支持するように断熱部材2を取り付けることによって、断熱部材2の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めることが考えられるが、この場合、支持部材S及び断熱部材2からなる断熱構造によって、床下収納庫の開口の四周が基礎表面の近傍まで囲まれることとなる。
このため、点検のために人が床下収納庫の開口から床下に入ることができなくなり、床下収納庫を床下点検口に兼用できないという新たな問題が生じることとなった。
【0006】
また、床下収納庫のほか、同様の構造が採用される床下点検口の断熱構造においても、同じ問題が生じることが考えられる。
【0007】
本発明は、上記の床下収納庫や床下点検口の断熱構造の有する問題点に鑑み、断熱部材の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めながら、点検のために人が開口から床下に入る際の障害とならないようにした床下構造物の断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の床下構造物の断熱構造は、床下構造物の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにした床下構造物の断熱構造において、前記断熱部材を、床構造部材に固定される支持部材に背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材と、該固定側断熱部材に端部を嵌合することにより、固定側断熱部材と収納容器本体との間で不動に支持されるとともに、収納容器本体を除去した状態で、床下構造物の開口の中心側に向けて水平方向に移動させることにより、固定側断熱部材から離脱可能にした可動側断熱部材とで分割構成したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を下方及び外方側から支持する上面及び鉛直面を固定側断熱部材の端部に備えるようにすることができる。
【0010】
また、可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を、それぞれ段部を設けて構成するとともに、これに対応して固定側断熱部材の端部に備えた上面及び鉛直面を構成し、嵌合部に断熱部材の外周側と内周側とを一直線状に結ぶ当接面が生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床下構造物の断熱構造によれば、床下構造物の外周部を囲うように配設するようにした断熱部材を、床構造部材に固定される支持部材に背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材と、該固定側断熱部材に端部を嵌合することにより、固定側断熱部材と収納容器本体との間で不動に支持される可動側断熱部材とで構成することにより、断熱部材の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めることができる。
そして、収納容器本体を除去した状態で、分割構成した断熱部材の可動側断熱部材を、床下構造物の開口の中心側に向けて水平方向に移動し、固定側断熱部材から離脱させることによって、支持部材及び断熱部材からなる断熱構造がない箇所を形成し、点検のために人が開口から床下に入る際の障害とならないようにすることができる。
【0012】
また、可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を下方及び外方側から支持する上面及び鉛直面を固定側断熱部材の端部に備えるようにすることにより、可動側断熱部材を、固定側断熱部材と収納容器本体との間で確実に不動に支持することができる。
【0013】
また、可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を、それぞれ段部を設けて構成するとともに、これに対応して固定側断熱部材の端部に備えた上面及び鉛直面を構成し、嵌合部に断熱部材の外周側と内周側とを一直線状に結ぶ当接面が生じないようにすることにより、固定側断熱部材と可動側断熱部材との嵌合部における通気を確実に遮断し、断熱性能を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】床下収納庫の断熱構造を示す説明図である。
【図2】本発明の床下収納庫の断熱構造に用いる断熱部材の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は一部断面の右側面図、(c)は(a)のX−X断面図である。
【図3】同断熱部材の可動側断熱部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図(内周側から見た図)、(c)は背面図(外周側から見た図)、(d)は右側面図、(e)は(b)のY−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の床下構造物の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図2に、本発明の床下構造物の断熱構造に用いる断熱部材の一実施例を示す。
この断熱部材2は、床下構造物としての床下収納庫1の収納容器本体11の外周部を囲うように配設するようにした断熱部材2を、図1に示した床下収納庫の断熱構造と同様、床構造部材Fである根太Jに固定される支持部材Sに背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材2aと、この固定側断熱部材2aに端部を嵌合することにより、固定側断熱部材2aと収納容器本体11との間で不動に支持されるとともに、収納容器本体11を除去した状態で、床下収納庫1の開口Hの中心側に向けて水平方向(矢示A方向)に移動させることにより、固定側断熱部材2aから離脱可能にした可動側断熱部材2bとで分割構成するようにしている。
【0017】
そして、本実施例においては、可動側断熱部材2bの端部の嵌合部21を構成する下面2b、2b及び鉛直面2bを下方及び外方側から支持する上面2a、2a及び鉛直面2aを固定側断熱部材2aの端部に備えるようにしている。
これにより、可動側断熱部材2bを、固定側断熱部材2aと収納容器本体11との間で確実に不動に支持することができる。
【0018】
特に、可動側断熱部材2bの端部の嵌合部21を構成する下面2b、2b及び鉛直面2bを、それぞれ段部を設けて構成するとともに、これに対応して固定側断熱部材2aの端部に備えた上面2a、2a及び鉛直面2aを構成し、嵌合部21に断熱部材2の外周側と内周側とを一直線状に結ぶ当接面が生じないようにしている。
これにより、固定側断熱部材2aと可動側断熱部材2bとの嵌合部21における通気を確実に遮断し、断熱性能を一層高めることができる。
【0019】
そして、可動側断熱部材2bの内側(断熱部材2の内周側)の面には、可動側断熱部材2bを床下収納庫1の開口Hの中心側に向けて水平方向(矢示A方向)に移動させる際に可動側断熱部材2bを保持するための凹部24を形成するようにする。
【0020】
また、断熱部材2には、その下端に床下収納庫の開口Hの中心側に向けて突出する縁部23を形成するようにする。
この縁部23は、図1に示すように、床下収納庫の開口Hに収納容器本体11を装着したとき、収納容器本体11の外周面に接し、断熱材を配設した収納容器本体11の中蓋12と協働して、断熱空間を構成し、断熱性能を一層高めることができるようにしている。
ここで、縁部23には、収納容器本体11の外周面に縦方向に形成した補強リブ(図示省略)が嵌入する切欠23aを形成するようにしているが、補強リブのない収納容器本体11を用いる場合には、切欠23aは設けないようにする。
【0021】
また、本実施例において、断熱部材2の固定側断熱部材2aは、分割して形成し、例えば、施工現場で接着剤を用いて嵌合接着部22を嵌合接着することによって、一体化するようにした(嵌合接着部22における通気は、接着剤によって遮断されるようにしている。)が、固定側断熱部材2aを一体成形により形成することもできる。
【0022】
なお、断熱性能を向上するため、床面を構成する床下収納庫の蓋部13に断熱材を配設することもできる。
【0023】
この断熱部材2は、図1に示すように、床下収納庫1の収納容器本体11の外周部を囲うように配設するようにするが、断熱部材2を、床構造部材Fである根太Jに固定される支持部材Sに背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材2aと、この固定側断熱部材2aに端部を嵌合することにより、固定側断熱部材2aと収納容器本体11との間で不動に支持される可動側断熱部材2bとで構成することにより、断熱部材2の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めることができる。
そして、収納容器本体11を除去した状態で、分割構成した断熱部材2の可動側断熱部材2bを、床下収納庫の開口Hの中心側に向けて水平方向(図2(a)の矢示A方向)に移動し、固定側断熱部材2aから離脱させることによって、支持部材S及び断熱部材2からなる断熱構造がない箇所を形成し、点検のために人が床下収納庫の開口Hから床下に入る際の障害とならないようにして、床下収納庫1を床下点検口に兼用できるようにすることができる。
【0024】
なお、本実施例においては、断熱部材2を構成する可動側断熱部材2bを断熱部材2の1箇所に配設し、支持部材S及び断熱部材2からなる断熱構造がない箇所を床下収納庫1の開口Hの1辺に形成するようにしたが、例えば、可動側断熱部材2bを断熱部材2の2箇所に配設し、支持部材S及び断熱部材2からなる断熱構造がない箇所を床下収納庫1の開口Hの任意の2辺に形成することもできる。
【0025】
以上、本発明の床下構造物の断熱構造について、床下収納庫の例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、床下点検口の点検口の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにし、床構造部材の一部を構成する蓋部に配設した断熱部材と協働して断熱機能を持たせるようにした床下点検口の断熱構造にも適用できる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の床下構造物の断熱構造は、断熱部材の高さ方向の寸法を大きくし、断熱性能を高めながら、点検のために人が開口から床下に入る際の障害とならないようにすることができるという特性を有していることから、床下収納庫や床下点検口の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
F 床構造部材
H 床下収納庫(床下構造物)の開口
J 根太
S 支持部材
1 床下収納庫(床下構造物)
11 収納容器本体
12 中蓋
13 蓋部
2 断熱部材
2a 固定側断熱部材
2a、2a 上面
2a 鉛直面
2b 可動側断熱部材
2b、2b 下面
2b 鉛直面
21 嵌合部
22 嵌合接着部
23 縁部
24 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下構造物の外周部を囲うように断熱部材を配設するようにした床下構造物の断熱構造において、前記断熱部材を、床構造部材に固定される支持部材に背面を支持するように取り付けられる固定側断熱部材と、該固定側断熱部材に端部を嵌合することにより、固定側断熱部材と収納容器本体との間で不動に支持されるとともに、収納容器本体を除去した状態で、床下構造物の開口の中心側に向けて水平方向に移動させることにより、固定側断熱部材から離脱可能にした可動側断熱部材とで分割構成したことを特徴とする床下構造物の断熱構造。
【請求項2】
可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を下方及び外方側から支持する上面及び鉛直面を固定側断熱部材の端部に備えてなることを特徴とする請求項1記載の床下構造物の断熱構造。
【請求項3】
可動側断熱部材の端部の嵌合部を構成する下面及び鉛直面を、それぞれ段部を設けて構成するとともに、これに対応して固定側断熱部材の端部に備えた上面及び鉛直面を構成し、嵌合部に断熱部材の外周側と内周側とを一直線状に結ぶ当接面が生じないようにしたことを特徴とする請求項2記載の床下構造物の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122306(P2012−122306A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275766(P2010−275766)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)