説明

床材剥離機

【課題】
Pタイルと称される主に塩化ビニル系の正方形のタイルを剥離する場合は、堅く固着してしまっており、タイル自体が硬質であるため、剥がす部分が割れて少しずつだけが剥離されるという状態の剥離作業となり、着脱式のハンドルを外して手持ちハンドル部を持って腰をかがめた状態で剥離作業を行うことは非常に作業者に負担がかかるという課題を有していた。
【解決手段】
床材剥離機本体後方下部に移動用の車輪が設けられ、上記車輪の上方においてグリップ兼用ステップを設け、床材剥離作業中に作業者が上記グリップ兼用ステップに足を乗せて荷重をかけることにより、上記刃物の刃先へ荷重をかけながら床材の剥離作業を行える床材剥離機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材剥離機に関するものである。さらに詳しくは、階段等の狭い場所に貼り付けされたPタイルと称される主に塩化ビニル系の正方形のタイルを効率良く剥がすことができる小型の床材剥離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、床材剥離機については特許文献1に示すような自走式のタイプや、特許文献2に示すような作業者が手押ししながら作業を行う床材剥離機が知られている。また、階段周りなどの狭い場所の床材剥離が実施できる機械として非特許文献1に示すようなハンドルが着脱できるような小型床材剥離装置(商品名「コンパクトペッカー」)も知られている。上記の非特許文献1の小型床材剥離装置は着脱式のハンドルを取り付けた状態では、全長812mm、全高881mm、全幅380mmで重量が19Kg、ハンドルを外した状態であれば、全長453mm、全高302mm、全幅166mmで重量が16Kgであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2608829号公報
【特許文献2】特開2004−2251886号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】極東産機株式会社 コンパクトペッカー インターネットURL:http://www.kyokuto-sanki.co.jp/products/pro-202.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように自走するタイプの床材剥離機では、階段や狭い場所の床材剥離作業は行えない。そのため、非特許文献1に示したような小型の床材剥離機で床材を剥離するのであるが、剥がす床材が、Pタイルと称される主に塩化ビニル系の正方形のタイルである場合は、堅く固着してしまっており、タイル自体が硬質であるため、剥がす部分が割れて少しずつだけが剥離されるという状態の剥離となり、着脱式のハンドルを外して手持ちハンドル部を持って腰をかがめた状態で剥離作業を行うことは非常に作業者に負担がかかる作業となっていた。
【0006】
また、店舗や学校、あるいは劇場や映画館や集会場のような施設等では踊り場を設けることも法令で定められており、そのような踊り場に特許文献1の自走式の重量のある床材剥離機を運搬するのは手間であった。そのため、小型の床材剥離機で床材の剥離を行うのであるが、着脱式ハンドルを持って刃物の刃先に荷重をかけながら、床材剥離機を進めると腕や手にかなりの負担がかかっていた。そのために小型の床材剥離機でも効率良く床材を剥離できるようにしたいという要望があった。そのため、小型の床材剥離機でも、効率良く剥がすことができ、また、階段以外のフロア等の床の床材剥離にもある程度の剥がし能力を有している床材剥離機の提供が望まれてもいた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1は、着脱式ハンドルを有する床材剥離機であって、床材を剥離する刃物の幅寸法が21cm以下に設定され、床材剥離機本体後方下部に移動用の車輪が設けられ、上記車輪の上方においてグリップ兼用ステップを設け、床材剥離作業中に作業者が上記グリップ兼用ステップに足を乗せて荷重をかけることにより、上記刃物の刃先へ荷重をかけながら床材の剥離作業を行えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2は、グリップ兼用ステップのグリップ部は、床材剥離機が床材を剥離しながら進行する方向または床材を剥離しながら進行する方向に直交する方向に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3は、上記グリップ兼用ステップを床材剥離機後方から見た状態で、上記グリップ部の前方または後方、あるいは左方向、あるいは右方向のいずれか1つの方向に作業者が足を乗せるステップが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
グリップ兼用ステップを配置しているため、作業者が足を乗せて刃先に荷重をかけやすい構成となり、無理な体勢を取ることなく、また腕だけに負担をかけることなく床材の剥離作業が行うことができる。さらに、刃物5に荷重をかけながら床材剥離機1を前進させることができ、床材の剥離作業が効率的に行えるため、小型の床材剥離機であっても階段や踊り場を効率的に床材の剥離を行える。また、着脱ハンドルを外した場合にはグリップ部を持って従来と同様の壁近くや手摺り近くの床材の剥離作業も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の小型床材剥離機の斜視図である。
【図2】着脱式ハンドルを外した状態の床材剥離機の説明図である。
【図3】階段の床材剥離作業を説明する図である。
【図4】グリップ兼用のステップを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の床材剥離機1について図を用いて説明する。図1は着脱用ハンドル2が本体1上部に設けられた4箇所のねじ穴1a(図2参照)を用いて着脱自在に取付される。また、床材剥離機1の本体の前方には床材を剥離するための刃物5が刃物ブラケット4に着脱自在に設けられている。図示はしていないがネジにて刃物5は刃物ブラケット4に固定されている。
【0013】
刃物5が前後に移動する構成については、特に図示して開示をしないが特許第2608829号公報や特開2004−225331号公報に開示されているようにモータで駆動される偏芯回転軸にコネクティイング・ロッドが連結され、コネクティング・ロッドのもう片側端部に刃物ブラケット4を連結して、刃物ブラケット4が水平方向に前後移動するようにしている。
【0014】
そして、床材剥離機1の本体前部には着脱ハンドル2を外した状態で使用する場合に作業者が持つ取手3が設けられている。また、図1及び図2に示すように本体後方下部には移動するための車輪6,6が設けられている。
【0015】
そして、図2に示すように床材剥離機1の後部にはグリップ兼用ステップ7が設けられており、着脱用ハンドル2を外した状態では、グリップ兼用ステップ7の上部のグリップ部7aと取手3を持って床材の剥離作業を行う。着脱用ハンドル2を取り付けた状態であれば、図3に示すように、グリップ兼用ステップ7のグリップ部7aの下部に設けているステップ7bへ足を乗せ、刃物5の刃先に体重をかけた状態で効率良く剥離作業をすることができる。
【0016】
上記のグリップ兼用ステップ7に足を乗せた場合において、床材剥離機1の側面視において車輪6,6の上方で、グリップ兼用ステップ7は、本体後部から刃先に向かうにつれてグリップ兼用ステップ7の位置が高くなる傾斜で設けているために、車輪6,6よりも刃先側に荷重がかけられる構成となって、刃先に体重をかけながら効率的に床材の剥離作業ができる。そのために、階段の床材剥離作業や、階段途中に設けられている踊り場においても、グリップ兼用ステップ7を使用することによって効率的に床材の剥離作業が行えるのである。また、グリップ兼用ステップ7で壁面や巾木、あるいは階段の手摺りの下部の近くの床材を剥離する場合に、刃物5でそれらを傷めてしまうような恐れがある場合は従来と同様に着脱ハンドル2を外して取手3とグリップ兼用ステップ7のグリップ部7aを持って傷めないように作業し、上記した部分等を傷める心配の無い部分の床材を剥離する場合には、図3に示したようにグリップ兼用ステップ7に足を乗せて、効率的に床材の剥離作業を行うのである。本発明の小型の床材剥離機においては、階段部分の床材の剥離作業を効率的に行うために、本体と刃物5の幅はほぼ同じになるように設計しており、刃幅は16.4cmに設定されている。これは、本体重量と、使用するモータの出力とで振動の少ない状態を実験結果から得たものである。
【0017】
法令においては、小学校の児童用、中学校、高等学校、劇場・映画館・公会堂・集会場等の客用、物販店舗(物品加工業修理業を含む)で床面積の合計が1500平方メートルを越える客用では階段の踏面は26cm以上と規定され、直階段の居室の床面積の合計が200平方メートルを越える地上階のもの、居室の床面積の合計が100平方メートルを越える地階、地下工作物内のものでは24cm以上と規定され、上記以外及び住宅以外の階段は21cm以上と規定されており、塩化ビニル系の正方形のタイルの施工場所を考慮して刃物5の幅は21cm以内としておくことが良い。しかし、幅が狭すぎると広い面積の床材剥離作業には時間がかかってしまうため、15〜21cmとしておくことが望ましい。
【0018】
図4は、さらに種々の形状のグリップ兼用ステップを例示している。図4(a)に示すグリップ兼用ステップ7は、グリップ部7aは握り易いように円形とし、グリップ部7aは床材を剥離しながら床材剥離機1が進む方向、すなわち縦方向に設けられ、グリップ部7aの円周面の頂上がステップ7bの上面と同一の高さに構成されている。
【0019】
そして、図4(a)に図示したグリップ兼用ステップ7は、床材剥離機1への固定として、第1固定部7cと第二固定部7dを有しており、上記固定部を適宜螺合や溶接等で床材剥離機1へ取付される。
【0020】
図においては、グリップ部7aに対して、ステップ7bは広い間隔を有した状態で図示しているが、実際には、作業者がグリップ部7aを握って作業する場合に手がステップ7bにあたらない程度の間隔としておく。図4(a)に図示したステップ7bでは、グリップ部7aの上下、左右にステップ7bが設けられており、作業者が確実に足を乗せて荷重をかけながら床材剥離機1を前進させることができ、床材の剥離作業を効率的に行うことができる。
【0021】
次に図4(b)に図示したグリップ兼用ステップ7について説明する。図4(b)に図示したグリップ兼用ステップ7は、グリップ部7aをステップ7bと同じ平面となるように設けた構成としている。そして、グリップ部7aの下面側を半円柱状として、作業者が握りやすい形状としている。下面側の半円柱状とステップ面との境界線については、丸く角のない状態の処理を行ってグリップ部7aを握って作業している際に手を痛めないようにしておく。また、グリップ7aの左右のステップ7bの下面側も半円柱状とし、どの部分を作業者が握ってもよいというグリップ兼用ステップ7としても良い。
図4(b)に図示したグリップ兼用ステップ7においては図4(a)に開示している第二固定部7dは設けずに第一固定部7cのみとしているが、使用する素材の強度を十分持たせておけば良く、また、図4(a)同様に第二固定部を設けても良いのである。
【0022】
図4(c)に図示したグリップ兼用ステップ7は、図4(b)の縦方向のグリップ部7aを床材の剥離方向とは直交する方向、すなわち横方向に配置を変更し、グリップ部7aの下面側を半円柱状としているのは同様である。図4(c)においても、下面側の半円柱状とステップ面との境界線については、丸く角のない状態の処理を行ってグリップ部7aを握って作業している際に手を痛めないようにしておく。また、グリップ7aの左右のステップ7bの下面側に半円柱状とし、どの部分を作業者が握ってもよいというグリップ兼用ステップ7としても良い。
【0023】
以上、図4に種々示したグリップ兼用ステップにおいては、グリップ部7aの頂上部がステップと同一面上となるようにグリップ部7aを配置しているため、作業者が足を乗せて刃先に荷重をかけやすい構成となり、無理な体勢を取ることなく床材の剥離作業が行うことができ、さらに、刃物5に荷重をかけながら床材剥離機1を前進させることができ、床材の剥離作業が効率的に行えるため、小型の床材剥離機であっても階段や踊り場を効率的に床材の剥離を行える。
【0024】
上記に種々説明したグリップ兼用ステップ7のステップには、ゴム板等の滑り止めを貼り付けても良い。また、ステップ7bの上面に滑り止めの凹凸や模様等を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 床材剥離機
2 着脱用ハンドル
3 取手
4 刃物ブラケット
5 刃物
6 車輪
7 グリップ兼用ステップ
7a グリップ部
7b ステップ
7c 第一固定部
7d 第二固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱式ハンドルを有する床材剥離機であって、床材を剥離する刃物の幅寸法が21cm以下に設定され、
床材剥離機本体後方下部に移動用の車輪が設けられ、
上記車輪の上方においてグリップ兼用ステップを設け、
床材剥離作業中に作業者が上記グリップ兼用ステップに足を乗せて荷重をかけることにより、上記刃物の刃先へ荷重をかけながら床材の剥離作業を行えることを特徴とする床材剥離機。
【請求項2】
グリップ兼用ステップのグリップ部は、床材剥離機が床材を剥離しながら進行する方向または床材を剥離しながら進行する方向に直交する方向に配置されていることを特徴とする請求項1記載の床材剥離機。
【請求項3】
上記グリップ兼用ステップを床材剥離機後方から見た状態で、上記グリップ部の前方または後方、あるいは左方向、あるいは右方向のいずれか1つの方向に作業者が足を乗せるステップが配置されていることを特徴とする請求項2記載の床材剥離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270476(P2010−270476A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121982(P2009−121982)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【Fターム(参考)】