説明

床材

【課題】 本発明は、基材表面に形成された凸部によって表面に模様が生じ、且つ使用者の見る位置によってその模様が見え隠れする床材を提供する。
【解決手段】 本発明の床材1は、基材表面に、複数の凸部3が設けられており、前記複数の凸部3が、平面視ドット状の第1突起部3a及び第2突起部3bを含み、前記第1突起部3a及び第2突起部3bの形状がそれぞれ異なっており、前記基材表面に対して所定角度で光を当てたときに、前記第1突起部3aによって生じる影の面積又は形状が、前記第2突起部3bによって生じる影の面積又は形状と異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の凸部が設けられた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床材は、住宅等の建造物の床面に敷設されている。該床材は、主として基材を有し、必要に応じて、化粧層、裏打ち層、その他の機能層などを有する。また、該基材の表面に、エンボス加工等を施すことによって複数の凸部を形成した床材も知られている。
一般的に、エンボス加工等によって形成される凸部は、基材に積層された化粧層等の模様に立体感を付与し、意匠性を向上させることができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の床材は、エンボス加工により凸部が形成された基材の表面に、カーペット模様の印刷層又は化粧層が積層されている。該床材は、植設パイルを模した模様印刷と凸部とが同調することで、カーペットに類似した外観を呈する。
また、該床材は、植設パイルの頂部に該当する部分を明部に、その周辺部を相対的に暗部にした陰影模様を印刷してなる透明シート等を積層することでより多彩な色彩、模様、質感を表すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−109818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の床材の模様は、凸部と陰影模様を印刷した透明シートとによって立体感を生じさせるが、その模様は床材をどの方向から見ても略変化せず一定の模様として見える。これは、床材の外観をより本物の素材に近づけるという点では好ましいが、意匠的には平凡な印象を与えかねない。また、模様はあくまで印刷層等によって印刷された色相によって表されているため、凸部のみでは床材に模様を呈することができず、単色での模様表現ができないという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、基材の表面に凸部が形成された床材であって、該凸部によって表面に模様が生じ、且つ使用者(歩行者など)の見る位置によってその模様が見え隠れする床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の床材は、基材表面に、複数の凸部が設けられており、前記複数の凸部が、平面視ドット状の第1突起部及び第2突起部を含み、前記第1突起部及び第2突起部の形状がそれぞれ異なっており、前記基材表面に対して所定角度で光を当てたときに、前記第1突起部によって生じる影の面積又は形状が、前記第2突起部によって生じる影の面積又は形状と異なっている。
【0008】
本発明の好ましい床材は、前記凸部が、基材表面の全体に設けられている。
【0009】
本発明の好ましい床材は、前記第1突起部又は第2突起部の何れか一方の上面が、平坦部を有し、他方の上面が、弧面部を有する。
【0010】
本発明の他の好ましい床材は、前記第1突起部又は前記第2突起部の何れか一方の上面の面積が、他方の上面の面積よりも広い。
【0011】
本発明の他の好ましい床材は、前記第1突起部又は第2突起部の何れか一方の基材表面からの突出高が、他方の基材表面からの突出高よりも高い。
【0012】
本発明の他の好ましい床材は、前記基材表面において、前記第1突起部及び第2突起部の少なくとも何れか一方の複数が近接するように配設された密集領域が、基材表面上に複数箇所設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床材は、凸部によって基材表面に模様が生じ、且つ使用者の見る位置によってその模様が見え隠れする。
よって、本発明によれば、使用者の見る位置によって模様が変化し、意外性に富んだ床材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】1つの実施形態に係る床材の平面図。
【図2】図1のII−II線における縦断面図。ただし、中央部を省略している。
【図3】様々な形態の突起部を示す縦断面図。
【図4】様々な形態の密集領域を示す平面図。
【図5】実施例の床材の観察方法を示す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の床材は、基材表面に、複数の凸部が設けられている。該複数の凸部は、平面視ドット状の突起部を含む。該突起部は、第1突起部及び第2突起部を含み、該第1突起部及び第2突起部の形状がそれぞれ異なっている。基材表面に対して所定角度(例えば、基材表面に対して45度の方向)で光を当てたときに、該第1突起部によって基材表面に生じる影の面積又は形状が、該第2突起部によって基材表面に生じる影の面積又は形状と異なっている。
【0016】
本明細書において「第1」及び「第2」とは、形状等の異なる構成部分を区別するために便宜上用いるものであり、それらの優劣や順序を意味するわけではない。
本明細書において、「平面視ドット状の突起部(第1突起部及び第2突起部など)」とは、基材表面に対して鉛直方向から見た際に、点状に見える凸部を意味する。また、この点状は、特に限定されず、例えば、平面視円形状、平面視楕円形状、平面視正方形状、平面視長方形状、平面視六角形状、平面視星形状等が挙げられる。
【0017】
図1は、床材の一部省略平面図を示し、図2は、その一部断面図を示す。なお、実際の床材及び凸部の寸法は、各図に示した寸法と異なっていることに留意されたい。
図1及び図2において、床材1は、基材2と、該基材2の表面2aに複数突設された凸部3と、該基材2の裏面に設けられた裏打ち層4と、を有する。ただし、本発明の床材1の層構成は、これに限られず、さらに他の層が設けられた複層構造であってもよいし、或いは、単層構造であってもよい。
床材1は、図1に示すように、平面視正方形状(又は長方形状)に裁断された、定形タイプのタイルでもよいし、所定幅で長尺状のシートタイプであってもよい。シートタイプの床材は、通常、ロール状に巻き取られて保管・流通に供される。
【0018】
基材2は、特に限定されず、従来の床材に使用されているものを用いることができる。例えば、基材2は、合成樹脂、エラストマー、ゴム、木などをシート状に加工したものを用いることができる。凸部3を容易に形成できることから、基材2は、合成樹脂、エラストマー又はゴムを用いることが好ましい。
合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂等が挙げられ、好ましくはポリ塩化ビニルである。エラストマーとしては、エチレン−αオレフィンなどのオレフィン系エラストマー等が挙げられ、ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
裏打ち層4は、必要に応じて設けられる。裏打ち層4としては、織布、不織布、ゴム層などが挙げられる。
【0019】
複数の凸部3は、基材2の幅方向及び縦方向(縦方向とは、基材2の表面において、前記幅方向に直交する方向)に間隔をあけて並設されている。
上記凸部3は、基材2の表面から突出した部分である。凸部3の形成方法は、メカニカルエンボス加工又はケミカルエンボス加工などが挙げられる。
【0020】
上記凸部3は、平面視ドット状の突起部を含み、該突起部は、形状の異なる平面視ドット状の第1突起部3a及び第2突起部3bを含んでいる。
平面視ドット状の突起部(凸部3)は、基材表面の略全体に設けられている。かかる凸部3が基材表面の全体に形成された床材1は、足裏が滑り難いので好ましい。
第1突起部3a及び第2突起部3bの点状は、特に限定されず、例えば、平面視円形状、平面視楕円形状などの平面視略円形状;平面視正方形状、平面視長方形状、平面視菱形状などの平面視四角形状;平面視六角形状などの平面視多角形状;平面視三角形状;平面視星形状等が挙げられる。平面視略円形状としては、例えば、直径0.5mm〜20mm、好ましくは直径1mm〜10mm程度の円形状が挙げられる。平面視四角形状としては、例えば、縦横0.5mm〜20mm、好ましくは縦横1mm〜10mm程度の四角形状が挙げられる。
【0021】
第1突起部3a及び第2突起部3bの平面視形状は、同じでもよいし、或いは、異なっていてもよい。
平面視形状が同じで、且つ形状の異なる第1突起部3a及び第2突起部3bとしては、両突起部3a,3bの平面視形状が同じ(例えば、平面視略円形状)であるが、その上面の面積が異なっている場合(相似形)、その突出高が異なっている場合、その上面の形状が異なっている場合などが挙げられる。
また、平面視形状の異なる両突起部3a,3bとしては、例えば、第1突起部3aが平面視略円形状に形成され、第2突起部3bが平面視四角形状に形成されている場合などが挙げられる。
【0022】
1つの実施形態では、第1突起部3aと第2突起部3bとは、その横断面形状又は縦断面形状の少なくとも何れか一方の形状が異なっている。両突起部3a,3bの横断面形状が異なるとは、例えば、両者の平面視形状が異なる場合などが該当する。また、両突起部3a,3bの縦断面形状が異なるとは、例えば、両者の突出高が異なる場合や両者の上面形状が異なる場合などが該当する。
【0023】
両突起部3a,3bは、横断面形状又は縦断面形状の少なくとも何れか一方が異なるため、基材表面に対して所定角度(基材表面に対して鋭角)で光を当てたときに、両突起部3a,3bに対応して、面積又は形状が異なる2種類以上の影が、基材表面に生じる。さらに、突起部3a,3bの側面(立ち上がり周壁面)のうち、光が当たっていない部分が暗く見える。この側面の暗い部分は、前記影と一体的に暗く見えるので、以下、側面の暗い部分と突起部に起因する影を区別せずに総称する場合には、「陰影」という。例えば、上面の面積が広い及び/又は突出高の高い突起部に起因する陰影は大きく、上面の面積が狭い及び/又は突出高の低い突起部に起因する陰影は、前記突起部に起因する陰影よりも、小さくなる。このため、上面の面積が広い及び/又は突出高の高い突起部が密集して設けられた領域は、相対的に暗く見える。
また、上面の形状が異なる両突起部3a,3b間にコントラストが生じ、相対的に明るい部分と暗い部分が生じる。
【0024】
かかる陰影とコントラストによって、基材表面上に模様が見え、かかる陰影とコントラストは、使用者の見る位置によって変化するため、使用者が床材表面を見る位置によって、その模様が見え隠れするという効果を奏する。
ところで、基材表面の一部の領域に複数の凸部を形成した場合には、該一部の領域の凸部に起因する陰影と基材表面の光沢との明暗差によって模様が見え、又、見る位置によってその模様が見えなくなる。しかしながら、このような床材は、使用者に意外性を与えず(一部の領域に凸部が設けられ且つその周りに平坦状の基材表面が広がっていると、それを見た使用者は、凸部に起因して模様が見えることを予測する)、さらに、凸部が設けられていない領域で足が滑るおそれがある。
本発明の床材1は、基材表面の略全体に凸部3を設けて歩行時の滑りを防止しつつ、全体的に凸部3が設けられていながらも模様が見え隠れするという意外性を使用者に与えることができる。
以下、突起部の形状、その配設パターンなどについて詳述する。
【0025】
(突起部の形状)
凸部3は、2種以上の異なる形状の突起部(第1突起部3a及び第2突起部3bなど)を含んでいれば特に限定されず、任意の形状とすることができる。
例えば、上述のように、両突起部3a,3bの平面視形状が異なっていたり、第1突起部3aの上面の形状と第2突起部3bの上面の形状が異なっていたり、両突起部3a,3bの上面の面積が異なっていたり、両突起部3a,3bの突出高が異なっている場合などが挙げられる。
【0026】
1つの実施形態では、第1突起部3a又は第2突起部3bの何れか一方の上面が、平坦部を有し、他方の上面が、弧面部を有する。
このように第1突起部3aと第2突起部3bの上面の形状が異なることにより、両突起部3a,3b間に高いコントラストが生じ得る。具体的には、例えば、第1突起部3aの上面が平坦状に形成されている場合、この平坦状の上面に当たった光は一定方向に反射され、所定位置から使用者が見た場合に、この上面が明るく見える。他方、第2突起部3bの上面が弧面状に形成されている場合、この弧面状の上面に当たった光は弧に沿って様々な方向に反射されるので、前記所定位置から使用者が見た場合に、この上面が相対的に暗く見える。
よって、両突起部3a,3b間に高いコントラストが生じ得る。
【0027】
使用者が見る位置(見る角度)を変えるに従い、第1突起部3aの上面からの反射光が目に入らなくなっていく一方で、第2突起部3bの上面からの反射光は目に入っているので、コントラストが低下していく。
このように使用者の見る位置によってコントラストが変化するため、このコントラストと上記陰影が相乗して、模様が見え隠れする。
なお、第2突起部3bの上面が平坦部を有し、且つ、第1突起部3aの上面が弧面部を有していてもよい。
【0028】
上面が平坦部を有する突起部は、図3(a)に示すように、上面全体が平坦状に形成されていてもよく、図3(b)及び(c)に示すように、上面の中央部分が平坦状に形成されていてもよい。上面の中央部分が平坦状に形成されている場合、突起部の突出外周縁(上面の外縁)が、図3(c)に示すように、弧状に角取りされていることが好ましい。このように角取りされていると、床材の使用によって粉塵などが付着したときに、これを除去し易くなる。従って、簡易に清掃でき、それによって突起部の黒ずみ防止して、突起部間のコントラストを高く維持できる。
上面が平坦部を有する突起部は、その上面全体が平坦状に形成されていることが好ましい。上面全体が平坦状に形成されていれば、光を一定方向に反射する面積が広くなり、突起部3a,3b間のコントラストを高めることができる。
【0029】
また、上面が弧面部を有する突起部は、図3(d)に示すように、上面全体が外側(上側)へ膨らんだ弧面状に形成されていてもよく、図3(e)に示すように、上面全体が内側(下側)へ陥入する弧面状に形成されていてもよく、図3(f)に示すように、上面の中央部分が内側へ陥入する弧面状に形成されていてもよい。
上面が弧面部を有する突起部は、上面全体が外側へ膨らんだ弧面状に形成されていることが好ましい。上面全体が弧面状に形成されていれば、光を様々な方向に反射し易く、且つ、床材の使用によって、粉塵などが溜まり難い。
【0030】
さらに、上面が平坦部を有する突起部は、図3(g)又は(h)に示すように、その基部(基材表面から立ち上がる、突起部と基材の境界部)が、断面曲線状又は断面傾斜状に形成されていることが好ましい。同様に、上面が弧面部を有する突起部は、その基部が、曲線状又は傾斜状に形成されていることが好ましい(図示せず)。このように突起部の基部が断面曲線状又は断面傾斜状に形成されていると、床材の使用によって粉塵などが付着したときに、これを除去し易くなる。従って、簡易に清掃でき、それによって突起部の黒ずみ防止して、突起部間のコントラストを高く維持できる。
【0031】
両突起部3a,3bの上面の面積は、特に限定されず、任意に設定することができる。
面積を異ならせて陰影の違いを出す場合には、好ましくは、第1突起部3a又は第2突起部3bの何れか一方の上面の面積が、他方の上面の面積よりも広く形成され、より好ましくは、何れか一方の上面の面積が他方の上面の面積よりも1.1倍〜10倍広く形成され、特に好ましくは、1.2倍〜5倍広く形成される。例えば、第1突起部3aの上面の面積が、第2突起部3bの上面の面積よりも広く形成される。上面の面積が広い突起部は、上面の面積がそれより狭い突起部に比して、横断面形状が大きくなる。このため、上面の面積が広い突起部に起因する陰影が大きくなる。このため、上面の面積が広い突起部が密集して設けられた領域は、相対的に暗く見える。
【0032】
ここで、突起部の上面の面積とは、基材表面に対して鉛直方向から突起部を見たときの、突起部の上面の外周縁によって形取られる形状の面積をいう。
このように両突起部3a,3bの上面の面積が異なることにより、突起部3a,3bの上面によって生じるコントラストが高くなる上、第1突起部3aによって生じる陰影の面積又は形状と第2突起部3bによって生じる陰影の面積又は形状とが、大きく異なるようになる。よって、基材表面に、より鮮明な模様が見える上、使用者の見る位置によって、模様が見え隠れし易くなる。
【0033】
なお、両突起部3a,3bの上面の面積の具体例としては、好ましくは0.2mm〜300mmであり、より好ましくは0.8mm〜80mmである。
両突起部3a,3bの上面の具体的な面積が前記範囲を超える場合、1つの突起部の占める割合が大きくなり過ぎて、複数の突起部の集合による模様が良好に見えないおそれがある。一方、両突起部3a,3bの上面の具体的な面積が前記範囲を下回る場合、1つの突起部が小さ過ぎて、突起部3a,3bに起因する陰影が生じ難くなり、陰影に起因した模様自体が見え難くなる。
【0034】
両突起部3a,3bの基材表面からの突出高は、特に限定されず、任意に設定することができる。
突出高を異ならせて陰影の違いを出す場合には、第1突起部3a又は第2突起部3bの何れか一方の突出高が、他方の突起部の突出高よりも高く形成される必要がある。好ましくは、一方の突起部の突出高が、他方の突起部の突出高よりも1.1倍〜3倍の範囲で高く形成され、より好ましくは、1.2倍〜1.5倍高く形成される。両突起部の突出高の差が、余りに小さすぎると、陰影の違いが出にくくなり、一方、余りに大きいと、床材の使用中に、高い突起部が基材表面から脱落するおそれがある。
このように両突起部3a,3bの突出高が異なることにより、第1突起部3aによって生じる影の面積又は形状と第2突起部3bによって生じる影の面積又は形状とが大きく異なるようになる。このため、突出高の高い突起部に起因する陰影が大きくなるため、突出高の高い突起部が密集して設けられた領域は、相対的に暗く見える。
よって、基材表面に、より鮮明な模様が見える上、使用者の見る位置によって、模様が見え隠れし易くなる。
【0035】
なお、両突起部3a,3bの基材表面からの突出高の具体例としては、好ましくは0.1〜5.0mmであり、より好ましくは0.3〜2.0mmである。
両突起部3a,3bの具体的な突出高が前記範囲を超える場合、各突起部3a,3b間に粉塵等が溜まり易くなる。そのため、突起部3a,3bに起因する陰影と粉塵付着に起因する黒ずみとの違いが見分け難くなり、見る位置によって陰影が見えなくなっても、使用者が黒ずみを陰影と混同してしまい、模様の見え隠れ効果が生じ難くなる。一方、両突起部3a,3bの具体的な突出高が前記範囲を下回る場合、突起部3a,3bに起因する陰影が生じ難くなり、陰影に起因した模様自体が見え難くなる。
【0036】
(突起部の配設パターン)
上記両突起部3a,3bは、その複数が基材表面上に所定位置に配設されている。
基材表面には、第1突起部3a又は第2突起部3bの少なくとも一方が複数近接するように配設された密集領域が2箇所以上形成されている。
前記密集領域が基材上の所定箇所に形成されることによって、基材表面に、所望の模様が見える。
【0037】
上記密集領域は、第1突起部3a又は第2突起部3bの少なくとも何れか一方の突起部が複数近接して配設された、基材表面上の1つの領域である。
1つの密集領域には、第1突起部3a又は第2突起部3bの何れか一方の突起部が複数含まれていてもよいし、第1突起部3a及び第2突起部3bの双方の突起部の複数が混在して含まれていてもよい。
好ましくは、ある密集領域は、複数の第1突起部3aが近接するように配設されており、他の密集領域は、複数の第2突起部3bが近接するように配設されている。
【0038】
具体的には、図1に示すように、各突起部は、基材2の幅方向及び縦方向に間隔をあけて並設されている。
以下、基材2の幅方向にあけられた間隔を「幅間隔」といい、同縦方向にあけられた間隔を「縦間隔」という。
なお、本明細書において、前記幅間隔及び縦間隔は、隣り合う突起部の基部外縁間のうち、最も短い部分の距離を意味する。
【0039】
前記幅間隔及び縦間隔は、特に限定されないが、好ましくは1mm〜20mmであり、より好ましくは2mm〜7mmである。
前記幅間隔及び縦間隔が余りに長いと、密集領域において、突起部の総面積が基材表面上に占める面積割合が低くなり(突起部の密集度合いが低くなり)、模様が見え難くなる。一方、前記幅間隔及び縦間隔が余りに短いと、1つの突起部に起因した影が隣接する突起部上に重なり、陰影とコントラストによる模様が見え難くなる。この点、突起部の幅間隔及び縦間隔が前記範囲内であれば、良好な陰影とコントラストを生じさせることができる。
【0040】
上記密集領域において、突起部の総面積が基材表面上に占める面積割合は、特に限定されず、適宜設定できる。この面積割合が高いほど、陰影の面積が大きくなるが、余りに高いと、上述のように、突起部の間隔が密になり過ぎて、陰影とコントラストによる模様が見え難くなる。
これらを考慮すると、密集領域における突起部の面積割合は、10%〜90%であり、好ましくは30%〜70%である。
なお、面積割合(%)={密集領域における突起部の総面積/(密集領域における突起部の総面積+密集領域において露出した基材表面の総面積)}×100、で求められる。
なお、突起部の総面積とは、各突起部の上面の面積の和であり、突起部の上面の面積とは、基材表面に対して鉛直方向から突起部を見たときの、突起部の上面の外周縁によって形取られる形状の面積をいう。
【0041】
基材表面には、上記密集領域が複数箇所形成されているが、各密集領域の配設パターンは、特に限定されない。
例えば、図4(a)に示すように、基材表面に、第1突起部3aが密集して配設された密集領域(以下、第1密集領域5aという)と、第2突起部3bが密集して配設された密集領域(以下、第2密集領域5bという)とが、交互に帯状に形成されていてもよい。
この第1突起部3aが、第2突起部3bに比して、その面積が広い及び/又は突出高が高い場合には、使用者の見る位置によって、第1密集領域5aが第2密集領域5bに比して相対的に暗く見え、床材の表面にストライプ状の模様が見える。他方、使用者の見る位置を、基材表面に対して鉛直方向に近づけていくと、第1密集領域5aと第2密集領域5bの明暗差が消失して、床材の表面から模様が見えなくなる。
【0042】
なお、第1突起部3a及び第2突起部3bの何れか一方の上面が平坦部を有し、且つ、他方が弧面部を有している場合、模様がより一層明確に見える。例えば、第1突起部3aの上面が弧面部を有し、且つ、第2突起部3bの上面が平坦部を有している場合、第1突起部3aの上面は相対的に暗く見えるので、第2突起部3bとの明暗差がより大きくなる。このため、コントラストが高く、模様がより一層明確に見える。
さらに、第1突起部3a及び第2突起部3bの何れか一方の突起部の上面が平坦部を有し且つこの一方の突起部の突出高及び/又は面積が小さく形成され、何れか他方の突起部の上面が弧面部を有し且つこの他方の突起部の突出高及び/又は面積が大きく形成されている場合には、前記一方の突起部が密集した領域は、より明るく見え、前記他方の突起部が密集した領域は、相対的に、より暗く見える。このため、模様が更に鮮明に見える。
【0043】
また、図4(b)に示すように、矩形状の第1密集領域5aが第2密集領域5bで囲繞されるように、両密集領域5a,5bが基材表面上に形成されていてもよい。この場合、使用者の見る位置によって、第1密集領域5aが相対的に暗く見え、床材の表面に四角形状の模様が見える。また、見る位置を変えると、前記模様が見えなくなる。
さらに、図4(c)に示すように、第1密集領域5aが基材表面上に平面視ドーナツ状に形成され、該第1密集領域5aの内外領域に第2密集領域5bが形成されていてもよい。この場合、使用者の見る位置によって、第1密集領域5aが相対的に暗く見え、床材の表面にドーナツ状の模様が見える。
なお、密集領域は、上記のように第1密集領域5a及び第2密集領域5bの2種類からなる場合に限られず、例えば、図4(d)に表すように、第1密集領域5aと、第2密集領域5bと、第1突起部3a及び第2突起部3bとは異なる突起部が密集して配設された第3の密集領域5cとが、所定パターン(例えば、順に帯状)に形成されていてもよい。
なお、図4において、第1密集領域を網掛けで表し、第2密集領域を薄墨塗りで表し、第3の密集領域を白地で表している。
その他、密集領域をポイント的に配置しても使用者に強い印象を与えることができる。
【0044】
上記第1密集領域5a及び第2密集領域5bにおいて、第1突起部3a及び第2突起部3bの面積割合は、上記範囲から適宜設定される。
第1突起部3a及び第2突起部3bの面積割合は、ほぼ同じでもよいし、何れか一方が大きくてもよい。なお、この面積割合は、上記式に基づいて求められる。
好ましくは、第1密集領域5aにおける第1突起部3aの面積割合が、第2密集領域5bにおける第2突起部3bの面積割合よりも、1.1倍以上大きく形成され、より好ましくは1.5倍以上大きく形成される。一方、その上限は特に規定できないが、一般的には、10倍以下である。
両密集領域5a,5bの突起部の面積割合が前記範囲であれば、両密集領域5a,5b間の明暗差が大きくなり、より鮮明な模様が見え得る。
【0045】
なお、上記実施形態では、凸部3は、形状の異なる第1突起部3a及び第2突起部3bを有するが、本発明の床材は、これら2種類の突起部を有する場合に限られず、これとは異なる他の突起部が形成されていてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の床材の実施例を説明する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0047】
厚み4.5mmのポリ塩化ビニルシートを、加熱したエンボスロール間に通し、該シートの表面にエンボス加工を施すことにより、床材を作製した。
なお、この塩化ビニルシートは、上から順に、エンボス加工が施される表面層(厚み0.5mm、ポリ塩化ビニル製)と、補強用織布と、中間層(厚み2.5mm、ポリ塩化ビニル製)と、裏打ち層(厚み1.5mm、ポリ塩化ビニル製)と、が積層された積層シートからなる。
【0048】
上記エンボス加工により、このシートの表面に、大別して下記2種類の凸部(第1突起部及び第2突起部)を、下記のパターンで形成した。
第1突起部…直径約3mm、約2.5mm、約2mmの平面視真円形状に形成されている(第1突起部は、直径が3種類のものがランダムに形成されている)。この第1突起部の各上面は、その全体が平坦状に形成されている。各突出高は、約0.5mmである。
第2突起部…直径約1mmの平面視真円形状に形成されている。その上面は、その全体が外側へ膨らんだ弧面状に形成されている。突出高は、約0.5mmである。
【0049】
上記第1突起部の複数を、平面視ドーナツ状の第1密集領域内(図4(c)の符号5aに示す領域)に、近接して形成した。この際、隣接する第1突起部の幅間隔を約1.5mmとし、縦間隔を約5.0mmとした。
なお、ドーナツ状の第1密集領域は、その幅(図4(c)の符号Wで示す)を約15mm、直径(図4(c)の符号Xで示す)を約100mmとした。
また、上記第2突起部の複数を、上記第1密集領域以外のシート表面領域に、近接して形成した。隣接する第2突起部の幅間隔を約2.5mmとし、縦間隔を約5.5mmとした。
従って、第2密集領域によって、ドーナツ状の第1密集領域が囲われている。
【0050】
該床材を、平らな面上に置き、図5に示すように、床材表面の観察位置に対して45°及び90°(90°=鉛直方向)の位置から蛍光灯により光を照射し、床材に模様が呈する位置を検証した。
具体的には、床材表面の観察位置に対して45°の位置から光を照射し、観察者が観察位置を見る視線と床材表面の成す角(以下、「俯角」という)が約0°〜90°の範囲内において、観察者の視点を移動させつつ観察した。同様に、床材表面の観察位置に対して90°の位置から光を照射し、俯角約0°〜90°の範囲内において、観察者の視点を移動させつつ観察した。
【0051】
床材表面の観察位置に対して45°で光を照射し、俯角約0°〜30°の範囲で視点を変化させながら表面を観察したときには、表面に模様は表れなかった。
一方、視点を俯角約30°〜60°の範囲で変化させながら表面を観察したときには、床材表面にドーナツ状の模様が見えた。このとき、上記第2密集領域が第1密集領域よりも相対的に明るく見えた。
また、第2密集領域と第1密集領域とのコントラストが最も高かったのは、俯角約45°から床材を観察した場合であり、ドーナツ状の模様が最も鮮明に見えた。
更に、視点を俯角約60°〜90°の範囲で変化させながら表面を観察したときには、前記ドーナツ状の模様が消失した。
【0052】
次に、床材表面の観察位置に対して90°の位置から光を照射し、俯角約0°〜90°の範囲で視点を移動させつつ観察した場合、上記45°で光を照射した場合と同様に、俯角約30°〜60°の範囲で観察したときに、ドーナツ状の模様が見えた。
もっとも、該ドーナツ状の模様は、上記45°で光を照射した場合に比して、やや不鮮明であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の床材は、住宅、オフィスビル、マンション、共同廊下、ベランダなどの床面に敷設できる。特に、本発明の床材は、見る位置によって模様が変化するため、多くの人が出入りする公共施設、ショッピングセンター、オフィスビルなどの床材として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…床材
2…基材
3…凸部
3a…第1突起部
3b…第2突起部
5a…第1密集領域
5b…第2密集領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、複数の凸部が設けられた床材であって、
前記複数の凸部が、平面視ドット状の第1突起部及び第2突起部を含み、
前記第1突起部及び第2突起部の形状がそれぞれ異なっており、
前記基材表面に対して所定角度で光を当てたときに、前記第1突起部によって生じる影の面積又は形状が、前記第2突起部によって生じる影の面積又は形状と異なる、ことを特徴とする床材。
【請求項2】
前記凸部が、基材表面の全体に設けられている、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記第1突起部又は第2突起部の何れか一方の上面が、平坦部を有し、他方の上面が、弧面部を有する、請求項1又は2に記載の床材。
【請求項4】
前記第1突起部又は第2突起部の何れか一方の上面の面積が、他方の上面の面積よりも広い、請求項1〜3の何れかに記載の床材。
【請求項5】
前記第1突起部又は第2突起部の何れか一方の基材表面からの突出高が、他方の基材表面からの突出高よりも高い、請求項1〜4の何れかに記載の床材。
【請求項6】
前記基材表面において、前記第1突起部及び第2突起部の少なくとも何れか一方の複数が近接するように配設された密集領域が、基材表面上に複数箇所設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−174490(P2010−174490A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17473(P2009−17473)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】