説明

床材

【課題】表面の耐傷性やゴミの付着の問題がなく、安価かつ施工が容易な、優れた接触温熱感を有する床材を提供すること。
【解決手段】
基材上に発泡樹脂層と化粧シートと少なくともこの順に積層してなる床材において、前記発泡樹脂層が、「JIS K6767」で測定した見掛け密度が50〜170kg/mであり、「ASTM D2856」で測定した独立気泡率が90%以上であること、また前記発泡樹脂層が発泡倍率5〜13倍で発泡させたポリオレフィン系樹脂からなるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の床面に敷設して用いられる床材に関し、特には素足で歩いても足の裏が冷たく感じることの無い接触温熱感を有する床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内床面には木質フローリング材が用いられるようになってきた。フローリング材としては木材表面に塗工を施したものや、木質樹脂系基材の表面に化粧シートを貼り合せたものなどが知られている。
【0003】
しかしながら、冬場など気温が低い時期に素足で歩くと、足の裏が冷たく不快感を覚えるという問題点がある。
【0004】
そのため、床下に電気ヒーターや温水配管を設ける床暖房がしられているが、既存の床に対しては別途工事が必要となり、床下に熱が逃げるためエネルギー効率も悪い。
【0005】
あるいは、床材の表面をコルクにしたり、微細な凹凸を設けたりする方法もあるが、表面の耐傷性やゴミの付着などの問題点あった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−324401
【特許文献2】特開2007−092485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、表面の耐傷性やゴミの付着の問題がなく、安価かつ施工が容易な、優れた接触温熱感を有する床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、基材上に発泡樹脂層と化粧シートと少なくともこの順に積層してなる床材において、前記発泡樹脂層が、「JIS K6767」で測定した見掛け密度が50〜170kg/mであり、「ASTM D2856」で測定した独立気泡率が90%以上であることを特徴とする床材である。
【0009】
またその請求項2記載の発明は、前記発泡樹脂層が発泡倍率5〜13倍で発泡させたポリオレフィン系樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1記載の床材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明はその請求項1記載発明により、基材と化粧シートの層間に所定の見掛け強度と独立気泡率の発泡樹脂層を設けることで、適宜耐傷性を付与した表面が平滑な化粧シートであっても、優れた接触温熱感を有する床材を得ることができるという効果を奏する。
【0011】
またその請求項2記載の発明により、請求項1記載の所定の見掛け強度と独立気泡率の発泡樹脂層を容易に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の床材の一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【図2】接触温熱感試験の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床材の一実施例の断面の形状を示す。基材1上に発泡樹脂層3と化粧シート5とを、適宜の接着剤層2、4で貼り合わせてなる。
【0014】
本発明における基材1としては、後述する発泡樹脂層3や化粧シート5を積層して床材とするための基材としての剛性を有するものであればよく、特に限定するものではないが、加工適性や接着性などを考慮して、ポリオレフィン系樹脂に木粉とタルクを配合したポリオレフィン系木質樹脂系基材が好適に用いられる。具体的には、厚み3〜9mmでポリオレフィン樹脂100重量部に木粉10〜30重量部とタルク5〜15重量部とを配合し溶融押出成形した木質樹脂系基材からなるものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などがあげられる。また、発泡剤を添加して1〜2倍程度の発泡を行っても良い。さらにはマイカ、熱安定剤、これらの相溶化剤などを適宜添加しても良い。
【0015】
接着剤層2としては、前記基材1と後述する発泡樹脂層3を接着可能なものであれば良く、特に限定しない。具体的には前記のポリオレフィン系木質樹脂系基材と後述するポリオレフィン系発泡樹脂層であれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0016】
本発明における発泡樹脂層3としては、JIS規格による発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法「JIS K6767」で測定した見掛け密度が50〜170kg/mのものを用いる。見掛け密度50kg/m3未満であれば歩行時に床材同士の連結部において沈み込みが大きくサネ鳴りや嵌合外れが発生してしまう。逆に見掛け密度170kg/m3超であると所望する接触温熱感が得られない。また、米国材料試験協会の独立気泡率の規格「ASTM D2856」で測定した独立気泡率が90%以上のものを用いる。
独立気泡率90%未満であるような連続気泡を有するものであると、十分な断熱性が得られない。本発明者らはこの条件設定を見出すために試行錯誤したが、条件設定が決まっていれば、あとは従来公知の材料や製造技術により所望のものを調整して得ることは可能である。具体的には、前記発泡樹脂層が発泡倍率5〜13倍で発泡させたポリオレフィン系樹脂からなるものが好適である。独立気泡率を達成するためには、分散の度合いや製造方法にもよるが、重曹系の発泡剤は連続気泡になりやすいので、カプセル型発泡剤を用いることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては前記基材1で用いたものと同様のものが使用可能である。
【0017】
接着剤層4としては、前記発泡樹脂層3と後述する化粧シート5を接着可能なものであれば良く、特に限定しない。具体的には前記の発泡ポリオレフィン系樹脂層と後述するポリオレフィン系樹脂シートを基材とする化粧シートであれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0018】
本発明における化粧シート5としては、基材シートに意匠性を付与する絵柄模様層、表面の耐傷性や各種物性を付与する表面保護層などからなり、床材表面に用いるのに適した公知のものであれば適宜使用可能であり、特に限定しない。具体的には前記発泡樹脂層3が発泡ポリオレフィン系樹脂層であれば、ポリオレフィン系樹脂シートを基材シートとするものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては前記基材1で用いたものと同様のものが使用可能である。
【実施例1】
【0019】
<化粧シートの作成>
着色ポリプロピレン樹脂シート「RIVEST TPO」(厚み0.070mm、リケンテクノス(株)製)を用い、これに2液ウレタン樹脂系バインダーのグラビアインキにて木目柄をグラビア印刷にて設け、その上に透明ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートし、更にその上に、乾燥後の塗布量1.3g/mの2液ウレタン樹脂のリコート層を設け、最後に紫外線硬化型塗料を10g/m塗布、硬化させて化粧シートを作製した。
【0020】
<発泡樹脂層の作成>
低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、メルトインデックス:3.6g/10分)100重量部に発泡剤としてアゾジカルボンアミド15重量部をヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで3分間回転させ、さらに1000rpmで3分間回転させ、た。それを160℃のT台から押出し、架橋させた後、230℃の縦型熱風発泡機に連続的に導入し発泡倍率10倍、厚み3mmの発泡樹脂層を得た。見掛け密度を測定した結果、100kg/mであった。独立気泡率は95%であった。
【0021】
<基材の作成>
ホモポリプロピレン樹脂90重量部、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂10重量部に木質系添加剤40重量部を2軸押し出し混錬機によって混合、ペレット化して木分混合樹脂ペレットを作製した。この木粉混合樹脂ペレットを異形押し出し成形法にて断面が5mm×150mmサイズで相欠き嵌合部分をもつ木質樹脂系の基材を得た。
【0022】
<床材の作成>
ロールコーターを用いて湿気硬化型一液ホットメルト接着剤を木質樹脂系基材の表面側に30μm塗布し、前記発泡樹脂層を貼り合わせプレスし24時間養生した。前記化粧シート裏面に湿気硬化型一液ホットメルト接着剤を50μm塗工し、ラッピング法にて前記発砲樹脂層と貼り合わせ、本発明の床材を得た。これらを床に敷き詰めて嵌め合わせ、その上を歩行してみたが、沈み込みや床鳴りは発生しなかった。
【0023】
<比較例1>
発泡剤の添加量を20重量部、発泡倍率を15倍とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。これらを床に敷き詰めて嵌め合わせ、その上を歩行してみたところ、サネ部分に圧力が加わった際に沈み込みが大きく、サネ部分のみが擦れ合い床鳴りが発生した。
【0024】
<比較例2>
発泡剤の添加量を5重量部、発泡倍率を3倍とした以外は実施例1と同様にして床材を得た。これらを床に敷き詰めて嵌め合わせ、その上を歩行してみたが、沈み込みや床鳴りは発生しなかった。ただし、足の裏が冷たく感じた。
【0025】
<接触温熱感試験>
足裏と近似したやわらかさおよび足裏の温度に近い35℃に温めた発泡ゴム(ショアA硬度10、厚さ10mm、熱伝導率0.025Kcal/m・h・℃)を鋼製重錘(2kg)の裏面2ヵ所に設置し、発泡ゴム表面に取り付けた熱電対により床に載せてから5sec後の温度変化量△tを求めた。図2に概略を示す。詳細は社団法人 日本建築学会材料施工委員会内外装工事運営委員会床工事WG 「床の性能評価方法の概要と性能の推奨値(案)」A−3足ざわり内、温冷感試験方法に順ずる。試験結果を以下に示す。
【0026】
実施例1 −6.35℃
比較例1 −6.31℃
比較例2 −8.25℃
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の床材は、特に足で歩いても足の裏が冷たく感じることの無い、屋内の床面のフローリング材として利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…基材
2…接着剤層
3…発泡樹脂層
4…接着剤層
5…化粧シート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に発泡樹脂層と化粧シートと少なくともこの順に積層してなる床材において、前記発泡樹脂層が、「JIS K6767」で測定した見掛け密度が50〜170kg/mであり、「ASTM D2856」で測定した独立気泡率が90%以上であることを特徴とする床材。
【請求項2】
前記発泡樹脂層が発泡倍率5〜13倍で発泡させたポリオレフィン系樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1記載の床材。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−26204(P2012−26204A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167403(P2010−167403)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】