説明

床構造及びこれを用いた建築物

【課題】遮音性に優れた床構造を提供する。
【解決手段】互いに間隔を空けて略平行に配設された複数の床根太31と、前記複数の床根太31上に配設された床面材33と、複数の床根太31の下側において当該床根太31と直交するように間隔を空けて略平行に配設された複数の下弦材35と、床面材33と下弦材35との間において床根太31と直交する方向に直線状をなすように互いに隣り合う床根太31間毎に配設された複数の補剛金物41と、複数の床根太31間において床根太31に対して略平行に配設され、補剛金物41に形成された開口部45を貫通する天井根太51とを備え、補剛金物41は、その上下左右の周端部47が互いに隣り合う床根太31と床面材33と下弦材35とに連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールハウスや木造枠組み壁工法、在来木造工法の建築物の床として用いられる床構造及びこれを用いた建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の工法として、スチールハウスや木造枠組み壁工法等があり、戸建住宅や共同住宅等に適用されている。近年、共同住宅への適用が増えており、上下階に別世帯が入居することから、床構造には床衝撃音に対する遮音性の向上が求められている。
【0003】
床衝撃音は、建築物の床に衝撃が加わった際に生じる振動に起因して発生する。一般に、床衝撃音は、人間の通常の歩行時やスプーン等の小重量物の落下時に生じる軽量床衝撃音と、人が飛び跳ねたり重量物の落下時に生じる重量床衝撃音とに分類できる。このうち、軽量床衝撃音は、床面材上にカーペットや二重床といった仕上げ材を設置する等して低減することができ、比較的容易に改善することが可能である。しかし、重量床衝撃音は、このような対策では十分に低減できず、床構造の改良を含めた対策が必要になる。
【0004】
従来においては、重量床衝撃音を改善するための一つの手段として、床面材の板厚を増大させるといった手段が講じられていた。しかし、建築物全体の重量軽減を図るうえでこのような手段を用いることは設計の自由度を低めるものであることから、他の手段の提案が望まれていた。
【0005】
このような重量床衝撃音を改善するための手段として、例えば、従来においては、特許文献1〜特許文献3に記載のような開示技術が提案されている。特許文献1においては、両端部が床面材に対して固定された支持部材により、リップ溝形鋼からなる床根太の下端側を支持するようにした振動防止構造が開示されている。これにより、床根太の下端側の水平方向の振動を防止して、床構造の遮音性の向上が図られている。
【0006】
また、特許文献2においては、間隔を空けて略平行に配設された床根太に対して直交するように二条で一組をなすテンション構造体を配設し、これらのテンション構造体を床根太間で交差させてブレース状をなすようにしたうえで、テンション構造体に張力を導入するようにした床の構造が開示されている。これにより、隣り合う複数の床根太を一体化させて、これら全体の剛性が向上するようにして、これをもって床構造の遮音性の向上が図られている。
【0007】
また、特許文献3においては、床根太と直交する方向に直線状をなすように隣り合う床根太間ごとに防振部材が配設された床構造が開示されている。これにより、床構造全体の振動を防止するとともに、床面材のたわみを防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−310974号公報
【特許文献2】特開2002−364110号公報
【特許文献3】特開2008−127879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の開示技術では、設置後の年数の経過によりテンション構造体に導入していた張力が弱くなり、床構造全体の剛性が経年的に劣化してしまうので、テンション構造体に対して張力導入するためのメンテナンスを定期的に行なう必要が生じていた。このため、メンテナンスが不要となるよう、張力を導入することなく床構造全体の剛性の向上を図ることのできる床構造の提案が望まれていた。
【0010】
また、特許文献1〜特許文献3の開示技術では、隣り合う床根太の下端側が他の床根太と他部材を介して連結されていないため、床根太と直交する方向の床構造全体の曲げ剛性があまり優れたものとなっておらず、その分、床構造全体の遮音性について更なる改善の余地があるものとなっていた。
【0011】
また、床根太と床面材とにより構成される床構造の下階側に天井面材を配設する場合、床構造により天井面材を支持する構造としては、床根太により天井面材を支持する吊り天井構造と、床根太間にその床根太と平行に配設された天井根太により天井面材を支持する独立天井構造とが知られている。独立天井構造を用いた場合は、天井根太により床面材を支持しない構造となるので、床面材と天井面材とを音響的に独立させることが可能となり、床構造の遮音性の更なる向上を図ることが可能となる。ここで、特許文献2、3に開示の床構造は、独立天井構造にすることを前提とした構造となっておらず、遮音性の向上を図りつつ独立天井構造とすることができるような床構造の提案が望まれていた。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、従来よりも遮音性に更に優れた床構造及びこれを用いた建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の床構造及びこれを用いた建築物を発明した。
【0014】
第1発明に係る床構造は、互いに間隔を空けて略平行に配設された複数の床根太と、前記複数の床根太上に配設された床面材と、前記複数の床根太の下側において当該床根太と直交するように間隔を空けて略平行に配設された複数の下弦材と、前記床根太と直交する方向に直線状をなすように互いに隣り合う前記床根太間毎に配設された複数の補剛金物とを備え、前記補剛金物は、その上下左右の周端部が互いに隣り合う前記床根太と前記床面材と前記下面材とに連結されていることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る床構造は、第1発明において、前記複数の床根太間において当該床根太に対して略平行に配設され、前記補剛金物に形成された開口部を貫通する天井根太を更に備えること特徴とする。
【0016】
第3発明に係る床構造は、第1発明又は第2発明において、前記天井根太は、前記補剛金物及び前記下弦材に接触しないように配設されていることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る床構造は、第1発明〜第3発明の何れか一つの発明において、前記開口部の形成された補剛金物は、当該開口部が前記床根太に対して直交する上下左右方向に開口されていない中空閉断面状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る床構造は、第1発明〜第4発明の何れか一つの発明において、隣り合う前記床根太の互いに対向する側面に連結されるとともに、前記補剛金物の左右の端部に連結される一対の連結金物を更に備え、前記一対の連結金物は、上下方向に凸状又は凹状に延びたガイド部が形成され、前記補剛金物は、前記一対の連結金物のガイド部に沿って上下方向に摺動可能にその左右の端部が嵌合されていることを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る床構造は、第1発明〜第5発明の何れか一つの発明において、隣り合う前記床根太の互いに対向する側面に固定具により連結されるとともに、前記補剛金物の左右の端部に連結される一対の連結金物を更に備え、前記床根太の両側面に連結された二つの連結金物は、一方の連結金物を前記床根太に連結する固定具の位置と他方の連結金物の床根太に対する当接位置とが重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0020】
第7発明に係る床構造は、第1発明〜第6発明の何れか一つの発明において、前記補剛金物は、内側を互いに向かい合わせて略平行に配置された一対の横向きリップ溝形鋼と、前記一対の横向きリップ溝形鋼の両側部内側にウエブ部両側のフランジ部を挿入して配置された一対の縦向き溝形鋼とを有し、前記一対の横向きリップ溝形鋼のウエブ部内側に前記一対の縦向き溝形鋼のフランジ部外側が当接されて構成されていることを特徴とする。
【0021】
第8発明に係る建築物は、第1発明〜第7発明の何れか一つの発明に係る床構造が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1発明によれば、床根太の延長方向であるX方向とこれと直交する方向であるY方向との両方向の曲げ剛性に優れた構造となっており、これにより、床構造全体の遮音性を向上させることが可能となっている。特に、Y方向の曲げ荷重が下弦材に対して引張荷重、圧縮荷重として作用し、この引張荷重、圧縮荷重に対してその下弦材が抵抗することで、そのY方向の曲げ剛性の向上に大きく寄与できる構造となっている。また、補剛金物の周端部がこの補剛金物を囲んでいる隣り合う床根太、床面材及び天井面材に対して連結されているので、床面材に負荷される衝撃荷重に対して補剛金物、床根太及び下弦材により一体となって抵抗することができ、その分、床構造全体の遮音性を有効に向上させることが可能となっている。また、これにより、床面材の板厚方向の振動や床根太のY方向の振動を抑えることができ、これによっても、床構造全体の遮音性を向上させることが可能となっている。また、天井面材を天井根太により吊り支持して独立天井構造とすることができるので、上述のようなX方向とY方向との両方向の曲げ剛性の向上を図りつつ、上階側の床面材で発生した振動の下階側の天井面材への伝達が有効に抑制され、更なる遮音性の向上を図ることが可能となっている。
【0023】
第4発明によれば、床構造に曲げ荷重が負荷されて、補剛金物にせん断荷重が生じる場合に、開口部が形成されているにも拘わらず、補剛金物の設置範囲全体で床面材、補剛金物及び下弦材が一体となってこのせん断荷重に対して抵抗することができ、上述のようなY方向の曲げ剛性を大きく向上させて遮音性を向上させることが可能となる。
【0024】
第5発明によれば、補剛金物の連結金物に対する取り付け作業を容易にすることが可能となる。また、補剛金物が連結金物に対して強固に固定されることになり、その分、上述したようなY方向の曲げ剛性を更に向上させることが可能となる。
【0025】
第6発明によれば、床根太の両側面での連結金物の板材の重なりを回避することができて、固定具としてドリルネジ等を用いた場合の穿孔作業が容易となる。また、床根太の両側面に連結すべき二つの連結金物を個別に連結させることが可能となり、その分、作業性を向上させることが可能となる。
【0026】
第7発明によれば、補剛金物を固定具で他部材に連結する際の作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】スチールハウスの構造の一例について説明するための斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る床構造の構成を示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係る床構造を図2におけるX方向から見た側面断面図である
【図4】第1実施形態に係る床構造を図2におけるY方向から見た側面断面図である。
【図5】図2の一部を拡大した拡大平面断面図である。
【図6】図3の一部を拡大した拡大側面断面図である。
【図7】図4の一部を拡大した拡大側面断面図である。
【図8】第1実施形態に係る床構造の床根太の端部や天井根太の端部の構成を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態における補剛金物の構成を示す斜視図である。
【図10】天井面材の天井根太による吊り支持の構造について説明するための下階側から見た斜視図である。
【図11】第2実施形態に係る床構造をX方向から見た拡大側面断面図である。
【図12】第2実施形態に係る床構造をY方向から見た拡大側面断面図である。
【図13】(a)は第2実施形態に係る床構造で用いられる補剛金物の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図14】(a)は第2実施形態に係る床構造で用いられる他の補剛金物の構成を示す正面図であり、(b)はその一部切欠平面図であり、(c)はその側面断面図である。
【図15】(a)は図11におけるA−A線断面図であり、(b)は図11におけるB−B線断面図であり、(c)は(b)から補剛金物を除いた状態を示す側面断面図である。
【図16】(a)は図11におけるC−C線断面図であり、(b)は(a)から補剛金物を除いた状態を示す側面断面図である。
【図17】補剛金物を取り付ける状態を示す拡大側面断面図である。
【図18】補剛金物の他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した床構造を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る床構造は、例えば、スチールハウスや木造枠組み壁工法、在来木造工法等の建築物の床として用いられるものである。以下においては、本発明に係る床構造をスチールハウスに用いた場合を例にとって説明する。
【0030】
図1は、スチールハウス3の構造の一例について説明するための斜視図である。
【0031】
スチールハウス3は、薄板軽量形鋼製の枠材を建物全体の主架構要素として、この枠材に対して図示しない構造用面材を組み合わせて構成されるものである。枠材として用いられる薄板軽量形鋼は、板厚2.3mm未満の薄鋼板をロールフォーミング等により折り曲げ加工することによって成形されるものであり、その種類としては、溝形鋼、リップ溝形鋼、ボックス形鋼等が挙げられる。
【0032】
スチールハウス3は、例えば、略水平に配設される下枠材11と、この下枠材11から間隔を空けて立設される複数の縦枠材13と、これら複数の縦枠材13の上端部に亘って架設される上枠材15とを有して構成される壁枠10に対して、図示しない外壁パネルや内壁パネル等の構造用面材を取り付けて構成される。本発明に係る床構造1は、このように構成されるスチールハウス3の上枠材15上に配置されるものであり、これにより壁枠10や構造用面材により支持されることになる。
【0033】
次に、本発明に係る床構造1の第1実施形態について説明する。図2は、第1実施形態に係る床構造1の構成を示す平面図であり、図3は、第1実施形態に係る床構造1を図2におけるX方向から見た側面断面図であり、図4は、第1実施形態に係る床構造1を図2におけるY方向から見た側面断面図である。図5は、図2の一部を拡大した拡大平面断面図であり、図6は、図3の一部を拡大した拡大側面断面図であり、図7は、図4の一部を拡大した拡大側面断面図である。また、図8は、第1実施形態に係る床構造1の床根太31の端部32や天井根太51の端部52の構成を示す斜視図である。
【0034】
第1実施形態における床構造1は、図2等に示すように、第1の水平方向(以下、方向Xという。)の両側に配設された端根太21と、方向Xと直交する第2の水平方向(以下、方向Yという。)の両側に配設された側根太23とを矩形状に組んで構成される床枠20を備えている。第1実施形態においては、これら端根太21及び側根太23が溝形鋼から構成されている。
【0035】
本発明における床構造1は、このように構成される床枠20内において方向Yに互いに間隔を空けて略平行に配設された複数の床根太31と、複数の床根太31上に配設された床面材33とを備えている。また、第1実施形態における床構造1は、複数の床根太31間においてこれらの床根太31に対して略平行に配設された複数の天井根太51を更に備えている。なお、方向Xは、床根太31や天井根太51の延長方向と対応した同じ方向となっている。
【0036】
床根太31は、図3、図6等に示すように、薄板軽量形鋼等の長尺の部材からなるものであり、第1実施形態においては二つのリップ溝形鋼を逆向きに配置したうえで、互いのウエブ部31aを当接させてこれらをビス、ドリルネジ等の固定具61により連結したものから構成されている。床根太31は、その上に配設される床面材33を支持するものとして機能している。なお、固定具61は、前記の他、ねじ、ボルト、ワンサイドリベット等、いわゆるファスナーとして公知のものであれば何でもよい。
【0037】
床根太31は、図8に示すように、その両側の端部32が端根太21に対して連結されている。具体的には、第1実施形態においては、床根太31のフランジ部31bと端根太21のフランジ部21bとが図示しない固定具61により直接連結され、更に、次に説明するような補強金物63を介して床根太31の端部32が端根太21に対して連結されている。
【0038】
この補強金物63は、薄板軽量形鋼等の短尺の部材からなるものであり、第1実施形態においてはリップ溝形鋼から構成されている。補強金物63は、その長手方向が鉛直となるように床根太31を構成するリップ溝形鋼内に嵌合されて配置されている。この補強金物63は、そのフランジ部63bが端根太21のウエブ部21aに当接されたうえで図示しない固定具61により連結され、更に、そのウエブ部63aが床根太31のウエブ部31aに当接されたうえで図示しない固定具61により連結されており、これによって、補強金物63を介して床根太31の端部32が端根太21に対して連結されている。
【0039】
床面材33は、平面視において矩形状を呈する板材からなるものであり、床根太31や端根太21の上面に略水平に配設されたうえで、固定具61により連結されている。床面材33は、一枚又は複数枚配設されるものであり、第1実施形態においては、硬質木片セメント板からなる床下地材33aの上にフローリングからなる床仕上材33bを配設して構成されている。床面材33を構成する床下地材33aとしては、この他に、例えば、構造用合板、石膏ボード、軽量気泡コンクリート板等が挙げられ、床仕上材33bとしては、この他に、例えば、建材畳等が挙げられる。
【0040】
天井根太51は、薄板軽量形鋼等の長尺の部材からなるものであり、第1実施形態においては単一のリップ溝形鋼から構成されている。天井根太51は、後述するような天井面材53を支持するものとして機能している。天井根太51は、図2等に示すように、第1実施形態において、隣り合う床根太31間に対して方向Yに一つおきに間を空けて配設されている。
【0041】
天井根太51は、図8に示すように、その両側の端部52が端根太21に対して連結されている。天井根太51の端部52は、床根太31の端部32を端根太21に対して連結するのと同じように、直接又は補強金物63を介して端根太21に対して連結されている。
【0042】
なお、床根太31の端部32や天井根太51の端部52を床枠20を構成する端根太21に対して連結するための構造についてはこれに限定するものではなく、公知の連結構造を適宜用いることとしてもよい。
【0043】
本発明に係る床構造1は、図2〜図7等に示すように、複数の床根太31の下側において床根太31と直交するように方向Xに間隔を空けて略平行に配設された複数の下弦材35と、床面材33と下弦材35との間において床根太31と直交する方向である方向Yに直線状をなすように互いに隣り合う床根太31間毎に配設された複数の補剛金物41とを更に備えている。
【0044】
下弦材35は、薄板軽量形鋼等の長尺の部材からなるものであり、第1実施形態においては下側に開口された単一のリップ溝形鋼から構成されている。下弦材35は、後述するように補剛金物41に連結されるものであり、少なくとも補剛金物41に対して連結可能であれば、その断面形状や開口の向きについては特に限定するものではなく、リップ溝形鋼、溝形鋼、ボックス形鋼等から構成されていてもよい。下弦材35は、第1実施形態においては、床根太31や側根太23に対して固定具61により連結されておらず、補剛金物41によって吊り支持されるように配設されている。なお、下弦材35は、床根太31や側根太23に対して固定具61により連結されるように構成されていてもよい。
【0045】
補剛金物41は、互いに隣り合う床根太31間に配設されるものであるが、その互いに隣り合う床根太31間において天井根太51が配設されている場合と天井根太51が配設されていない場合とでその構成に相違点がある。以下においては、互いに隣り合う床根太31間に天井根太51とともに配設される補剛金物41を補剛金物41Aとし、互いに隣り合う床根太31間に天井根太51とともに配設されない補剛金物41を補剛金物41Bとし、これら補剛金物41A及び補剛金物41Bの両方を指すものを補剛金物41として説明する。
【0046】
図9は、第1実施形態に係る補剛金物41Aの構成を示す斜視図である。
【0047】
補剛金物41Aは、第1実施形態においては、その下側に開口部45が形成されたウエブ部42aと、ウエブ部42aの上端からそのウエブ部42aと直交して設けられた上フランジ部42bと、ウエブ部42aの下端からそのウエブ部42aと直交して設けられた下フランジ部42cとを備えている。開口部45は、下フランジ部42c側に開口された略U字状を呈するように形成されており、その略U字状を呈している輪郭は一部が曲線状をなすように形成されている。下フランジ部42cは、開口部45の輪郭を構成しないウエブ部42aの下端のみならず、開口部45の輪郭を構成するウエブ部42aの下端からもそのウエブ部42aと直交するように設けられている。これにより、補剛金物41Aは、Y方向の曲げ剛性に優れたものとして構成される。このような補剛金物41Aは、例えば、薄鋼板を絞り成形等することによって一体的に成形されて得られるものとなっている。
【0048】
補剛金物41Aは、そのウエブ部42aが方向Yと略平行となるように配設されている。この補剛金物41Aと交差するように配設されることになる天井根太51は、図6等に示すように、補剛金物41Aの開口部45を貫通したうえで、その周囲の補剛金物41や下弦材35に接触しないように配設されている。これにより、床面材33や床根太31の振動が天井根太51に伝達されるのを有効に防止することが可能となっている。
【0049】
補剛金物41Bは、薄板軽量形鋼等の短尺の部材から構成されるものであり、第1実施形態においてはウエブ部43aとそのウエブ部43aの上下両側の上フランジ部43b及び下フランジ部43cとを有する溝形鋼から構成されている。補剛金物41Bは、そのウエブ部43aが方向Yと略平行となるように配設されている。
【0050】
補剛金物41は、図2等に示すように、その下側に配設されている下弦材35と平面視において重なり合うように、方向Yに直線状をなすように複数配設されている。これらの方向Yに直線状をなすように配設されている複数の補剛金物41や下弦材35は、その直線状に配設された複数の補剛金物41や下弦材35を一単位列として、方向Xに間隔を空けて列状に複数列に亘って配設されている。これによって、複数の床根太31と、列状に複数列に亘って配設された複数の補剛金物41や下弦材35とは、平面視において略格子状を呈するように配設されることになる。
【0051】
補剛金物41は、図5〜図7に示すように、互いに隣り合う床根太31、床面材33及び下弦材35によりその上下左右を囲まれており、これら互いに隣り合う床根太31、床面材33及び下弦材35に対して、その上下左右に位置する4辺の周端部47が連結されている。具体的には、その周端部47である上フランジ部42b、43bが床面材33の下面に対して当接されたうえでこれらが固定具61により連結され、その周端部47である下フランジ部42c、43cが下弦材35の上面に対して当接されたうえでこれらが固定具61により連結されている。また、その周端部47である左右の端部42d、43dは、L形鋼等からなる連結金物49の第1当接面49aが当接されたうえでこれらが固定具61により連結され、この連結金物49の第1当接面49aと直交する第2当接面49bが床根太31の側面であるウエブ部31aの側面に対して当接されたうえでこれらが固定具61により連結され、連結金物49を介して床根太31に連結されている。
【0052】
因みに、方向Yに直線状に配設された複数の補剛金物41のうち、方向Yの両端側に配設される二つの補剛金物41は、図2に示すように、側根太23のウエブ部に対して連結金物49を介して連結されている。
【0053】
また、第1実施形態に係る床構造1は、図3〜図7に示すように、下弦材35の下側において天井根太51により吊り支持された天井面材53を更に備えている。この天井面材53は、平面視において矩形状を呈する板材からなるものであり、一枚又は複数枚が天井根太51により吊り支持されるものである。天井面材53は、例えば、下地材としての石膏ボードに対して、仕上材としてのロックウール吸音板を重ね合わせて構成される。
【0054】
図9は、天井面材53の天井根太51による吊り支持の構造について説明するための下階側から見た斜視図である。天井根太51には、X方向に間隔を空けて複数の吊りボルト54の上端部が取り付けられており、吊りボルト54の下端部にはハンガー55を介して薄板軽量形鋼等からなる野縁受け56が取り付けられている。野縁受け56には、Y方向に間隔を空けて複数のクリップ57が取り付けられており、そのクリップ57を介して薄板軽量形鋼等からなる野縁58が取り付けられている。野縁58及び野縁受け56は、平面視において格子状を呈するように配設されている。天井面材53は、この野縁58の下面に対して当接されたうえで固定具61により連結されており、これによって、野縁58、野縁受け56を介して天井根太51により吊り支持されることになる
【0055】
なお、天井面材53を天井根太51により吊り支持するための構成は、これに限定するものではなく、公知の構成を適宜用いるようにしてもよい。
【0056】
次に、本発明に係る床構造1の作用効果について説明する。
【0057】
床面材33上を人が歩行したり、床面材33上に物が落下したりして、床面材33に対して比較的大きな衝撃荷重が負荷されると、床面材33や床根太31が振動することに起因して重量床衝撃音が発生する。ここで、本発明に係る床構造1によれば、X方向の曲げ荷重に対しては床根太31で抵抗でき、Y方向の曲げ荷重に対しては補剛金物41や下弦材35によって抵抗することが可能となっている。即ち、本発明に係る床構造1は、X方向とY方向との両方向の曲げ剛性に優れた構造となっており、これにより、床構造1全体の遮音性を向上させることが可能となっている。特に、本発明に係る床構造1においては、Y方向の曲げ荷重が下弦材35に対して引張荷重、圧縮荷重として作用し、この引張荷重、圧縮荷重に対して下弦材35が抵抗することで、Y方向の曲げ剛性を向上できる構造となっている。
【0058】
また、本発明に係る床構造1においては、補剛金物41の周端部47がこの補剛金物41を囲んでいる隣り合う床根太31、床面材33及び下弦材35に対して連結されているので、例えば、床面材33に対して局所的に衝撃荷重が負荷された場合でも、補剛金物41、床根太31及び下弦材35により一体となってこの衝撃荷重に対して抵抗することができ、その分、床構造1全体の遮音性を有効に向上させることが可能となっている。また、このように構成されることにより、床面材33の板厚方向の振動や床根太31のY方向の振動を抑えることができ、これによっても、床構造1全体の遮音性を向上させることが可能となっている。
【0059】
また、本発明に係る床構造1においては、上階側の床面材33が床根太31上に配設され、下階側の天井面材53が天井根太51により吊り支持されており、上階側の床面材33から下階側の天井面材53に対して振動が直接伝達されにくい独立天井構造とされている。このため、上述のようなX方向とY方向との両方向の曲げ剛性の向上を図りつつ、上階側の床面材33で発生した振動の下階側の天井面材53への伝達が有効に抑制され、更なる遮音性の向上を図ることが可能となっている。特に、本発明に係る床構造1においては、このような効果を、天井根太51が貫通する開口部45を有する補剛金物41Aを用いることによってはじめて達成することが可能となっている。
【0060】
次に、本発明に係る床構造1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0061】
図11は、第2実施形態に係る床構造1をX方向から見た拡大側面断面図であり、図12は、第2実施形態に係る床構造1をY方向から見た拡大側面断面図である。
【0062】
第2実施形態に係る床構造1は、第1実施形態に係る床構造1と比較して、まず第一に、補剛金物41A及び補剛金物41Bの構成が相違しており、第二に、連結金物49の構成が相違している。連結金物49は、隣り合う床根太31の互いに対向する側面に連結されるとともに、補剛金物41の左右の端部42d、43dに連結されるものであり、二つ一組のものとして構成されるものである。第2実施形態に係る床構造1においては、その二つ一組の一対の連結金物49が、補剛金物41Aに連結されている場合と補剛金物41Bに連結されている場合とでその構成に相違点がある。以下においては、補剛金物41Aに連結されている連結金物49を連結金物49Aとし、補剛金物41Bに連結されている連結金物49を連結金物49Bとし、これら連結金物49A及び連結金物49Bの両方を指すものを連結金物49として説明する。
【0063】
図13は、(a)が第2実施形態に係る床構造1で用いられる補剛金物41Aの構成を示す正面図であり、(b)がその側面断面図である。図14は、(a)が第2実施形態に係る床構造1で用いられる補剛金物41Bの構成を示す正面図であり、(b)がその一部切欠平面図であり、(c)がその側面断面図である。図15は、(a)が図11におけるA−A線断面図であり、(b)が図11におけるB−B線断面図であり、(c)が(b)から補剛金物49Aを除いた状態を示す側面断面図である。図16は、(a)が図11におけるC−C線断面図であり、(b)が(a)から補剛金物49Bを除いた状態を示す側面断面図である。
【0064】
補剛金物41Aは、第2実施形態において、互いに略平行に設けられた一対のウエブ部42aと、一対のウエブ部42aの上端から内側に曲げられて設けられ、これら一対のウエブ部42aを接続する上フランジ部42bと、一対のウエブ部42bの下端から内側に曲げられて設けられた二つの下フランジ部42cと、二つの下フランジ部42cの内側端から内側に曲げられて設けられた二つのリップ部42gとを一体的に備えている。補剛金物41Aは、リップ部42gがあることにより下フランジ部42cの座屈を有効に防止できるようになっている。補剛金物41Aは、下側に開口するように一対のウエブ部42a等が切り欠かれて開口部45が形成されており、その開口部45を貫通するように天井根太51が配設されている。
【0065】
補剛金物41Aは、その上部内側に上側に開口されたリップ溝形鋼からなる端部補強金物71が挿入されて配置されており、端部補強金物71は、補剛金物41Aに対して固定具61により連結されている。この端部補強金物71は、補剛金物41Aに対して開口部45が形成されることにより幅狭となった補剛金物41Aの端部、第2実施形態においては補剛金物41Aの上端部を補強するために配置されており、リップ溝形鋼の他に、ボックス形鋼、溝形鋼等、特にその断面形状について限定するものではない。
【0066】
補剛金物41Aは、その周端部47である上フランジ部42bが床面材33に対して固定具61により連結され、その周端部47である下フランジ部42cが下弦材35に対して固定具61により連結されている。また、その周端部47である左右の端部42dは、後述するように連結金物49Aを介して床根太31に連結されている。
【0067】
補剛金物41Bは、第2実施形態において、内側を互いに向かい合わせて略平行に配置された一対の横向きリップ溝形鋼73と、一対の横向きリップ溝形鋼73の両側部74内側に挿入して配置された一対の縦向きリップ溝形鋼75とを備えており、全体として箱状に構成されている。一対の縦向きリップ溝形鋼75は、そのウエブ部75a両側のフランジ部75bを一対の横向きリップ溝形鋼73の両側部74内側に挿入して配置されている。
【0068】
縦向きリップ溝形鋼75は、そのフランジ部75b外側が横向きリップ溝形鋼73のフランジ部73b内側に当接されており、縦向きリップ溝形鋼75や横向きリップ溝形鋼73が互いにX方向に位置ずれしにくくなっている。また、縦向きリップ溝形鋼75は、横向きリップ溝形鋼73のリップ部73dにそのウエブ部75aが当接しており、縦向きリップ溝形鋼75や横向きリップ溝形鋼73が互いにY方向に位置ずれしにくくなっている。また、縦向きリップ溝形鋼75は、第2実施形態において、そのウエブ部75aの上下方向長さが横向きリップ溝形鋼73のウエブ部73aの上下方向長さと略同一とされており、縦向きリップ溝形鋼73や横向きリップ溝形鋼75が互いに上下方向に位置ずれしにくくなっている。
【0069】
このように構成される補剛金物41Bは、補剛金物41Bを固定具61で連結金物49等の他部材に連結する際の作業が容易となっている。また、複数の溝形鋼を組み合わせて構成されているので、Y方向の曲げ剛性に非常に優れたものとなっている。特に、第2実施形態のように、リップ部73d、75dを有する溝形鋼のみによって構成されている場合は、箱状の補剛金物41Bの上下の両側面やX方向の両側面の座屈を防止するようにリップ部73d、75dが位置することになり、Y方向の曲げ剛性を更に優れたものとすることができる。なお、縦向きリップ溝形鋼75は、リップ部75dのない溝形鋼から構成されていてもよい。
【0070】
補剛金物41Bは、その周端部47である横向きリップ溝形鋼73の上フランジ部73bが床面材33に対して固定具61により連結され、その周端部47である横向きリップ溝形鋼73の下フランジ部73bが下弦材35に対して固定具61により連結されている。また、その周端部47である左右の端部43dは、後述するように連結金物49Bを介して床根太31に連結されている。
【0071】
連結金物49Aは、ウエブ部81aと、ウエブ部81aの両側端から内側に曲げられて設けられた二つのフランジ部81bと、フランジ部81bの外側端から外側に曲げられて設けられた二つの当接部81cとを一体的に備えている。連結金物49Aは、図12、図15(c)に示すように、その二つの当接部81cが床根太31の側面であるウエブ部31aの側面に対して当接されたうえでこれらが固定具61により連結されている。
【0072】
連結金物49Aは、ウエブ部81aと二つのフランジ部81bとによりコ字状に形成されている。連結金物49Aは、床根太31に連結されることにより、このコ字状の部位により上下方向に凸状に延びたガイド部82が形成されることになる。補剛金物41Aの左右の端部42dは、隣り合う床根太31の互いに対向する側面に連結されている一対の連結金物49Aの凸状のガイド部82が、その内側に位置するようにほぼ密着して嵌合されている。この補剛金物41Aの左右の端部42dは、一対の連結金物49Aの凸状のガイド部82に沿って上下方向に摺動可能に嵌合されているとともに、そのガイド部82に対して固定具61により連結されている。
【0073】
連結金物49Bは、ウエブ部83aと、ウエブ部83aの両側端から内側に曲げられて設けられた二つのフランジ部83bとを備えている。連結金物49Bは、図12、図16(b)に示すように、そのウエブ部83aが床根太31の側面であるウエブ部31aの側面に対して当接されたうえでこれらが固定具61により連結されている。連結金物49Bは、床根太31に連結されることにより、二つのフランジ部83bにより上下方向に延びた凹状に延びたガイド部84が形成されることになる。補剛金物41Bの左右の端部43dは、隣り合う床根太31の互いに対向する側面に連結されている一対の連結金物49Bの凹状のガイド部84が、その外側に位置するようにほぼ密着して嵌合されている。この補剛金物49Bの左右の端部43dは、一対の連結金物49Bの凹状のガイド部84に沿って上下方向に摺動可能に嵌合されているとともに、そのガイド部84に対して固定具61により連結されている。
【0074】
このように補剛金物49の左右の端部42d、43dが一対の連結金物49A、49Bのガイド部82、84に嵌合されることによる効果について説明する。図17は、床根太31に連結されている一対の連結金物49に対して補剛金物41を取り付ける状態を示す拡大側面断面図である。
【0075】
第2実施形態において補剛金物41を取り付けるうえでは、床枠20内に床根太31や天井根太51を予め配設しておき、更に、複数の補剛金物41を配設すべき位置に予め連結金物49を連結させておく。ここで、上述のように補剛金物41や連結金物49が構成されていることにより、補剛金物41の左右の端部42d、43dを一対の連結金物49のガイド部82、84に上側から嵌め込むのみで補剛金物41を所定位置に配置させることができる。なお、補剛金物41Aには、図13に示すように、その左右端部42dの下側が切り欠かれて挿入口42hが形成されており、連結金物49Aのガイド部82に上側から嵌め込む際にこの挿入口42hを通してその内側にガイド部82を嵌め込むことが可能となっている。
【0076】
このようなガイド部82、84が形成されることにより、補剛金物41の連結金物49に対する取り付け作業を容易にすることが可能となる。また、ガイド部82、84に対して補剛金物41の左右の端部42d、43dが嵌合されることになるので、補剛金物41が連結金物49に対して強固に固定されることになり、その分、Y方向の曲げ剛性を更に向上させることが可能となる。
【0077】
なお、連結金物49は、凸状又は凹状のガイド部82、84が形成されれば、その断面形状について特に限定するものではないし、補剛金物41の左右の端部42d、43dの形状も、ガイド部82、84に沿って上下方向に摺動可能であれば特にその断面形状について限定するものではない。
【0078】
第2実施形態に係る床構造1は、図12、図15、図16等に示すように、床根太31の両側面に連結された二つの連結金物49が、一方の連結金物49を床根太31に連結する固定具61の位置と他方の連結金物49の床根太31に対する当接位置とが重ならないように配置されている。第2実施形態において具体的には、連結金物49Aは、その当接部81cと床根太31とを貫通する固定具61により連結されているが、その当接部81cと反対側の床根太31の側面には、貫通した固定具61の位置と重ならないように連結金物49Bが床根太31に対して当接されている。また、連結金物49Bは、そのウエブ部83aと床根太31とを貫通する固定具61により連結されているが、そのウエブ部83aと反対側の床根太31の側面には、貫通した固定具61の位置と重ならないように連結金物49Aが床根太31に対して当接されている。
【0079】
これにより、床根太49の両側面での連結金物49の板材の重なりを回避することができて、固定具61としてドリルネジ等を用いた場合でも貫通させるべき部位の板厚が薄くなるので穿孔作業が容易となる。また、床根太31の両側面に連結すべき連結金物49を個別に連結させることが可能となり、その分、作業性を向上させることが可能となる。
【0080】
また、第2実施形態においては、一対の連結金物49A及び補剛金物41Aと一対の連結金物49B及び補剛金物41Bとが方向Yに交互に設けられた例について説明したが、何れか一方の組み合わせのみが方向Yに連続して設けられるようにしてもよい。この場合、必要に応じて、天井根太51に対応した位置にその天井根太51を貫通させるための開口部45を形成させるようにしてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0082】
例えば、補剛金物41Aは、図18(a)に示すように、開口部45の形状について特に限定するものではない。図18(a)においては、開口部45が、略台形状を呈するように形成されており、その略台形状を呈している輪郭の大半が直線状をなすように形成されている。このように、直線状をなすように形成された開口部45を有する補剛金物41Aを用いた場合、絞り成形を容易に行うことができるというメリットがある。また補剛金物41Aは、本発明の要件を満たすものであれば、単一の薄板軽量形鋼等の部材を加工したものでの良いし、それらを複数組み合わせたものでもよい。
【0083】
また、補剛金物41Aは、図18(b)に示すように、ウエブ部42aの板厚方向である方向Xに直交する上下左右方向に開口されていない開口部45が形成されたウエブ部42aと、ウエブ部42aの上下両側の上フランジ部42b及び下フランジ部42cを有し、ウエブ部42aが中空閉断面状に形成されたものとして構成されていてもよい。このような補剛金物41Aを用いた場合、床構造1に曲げ荷重が負荷されて、補剛金物41Aにせん断荷重が生じる場合に、補剛金物41Aの設置範囲全体で床面材33と下弦材35との間にその補剛金物41Aを介してせん断荷重を伝達させることができる。これにより、開口部45が形成されているにも拘わらず、補剛金物41Aの設置範囲全体で床面材33、補剛金物41A及び下弦材35が一体となってこのせん断荷重に対して抵抗することができ、Y方向の曲げ剛性を大きく向上させて遮音性を向上させることができるというメリットがある。
【0084】
このような補剛金物41Aは、天井根太51を配設した後にこの補剛金物41Aの取り付け作業を容易にする観点から、複数の分割部材48を組み合わせて構成されるものを用いてもよい。
【0085】
この分割部材48は、例えば、上下一組で構成されるもので、上側の分割部材48は、下側に開口された開口部45の形成されたウエブ部42eと、そのウエブ部42eの上側に設けられた上フランジ部42bとを有し、下側の分割部材48は、上側に開口された開口部45の形成されたウエブ部42fと、そのウエブ部42fの下側に設けられた下フランジ部42cとを有している。補剛金物41Aは、上側の分割部材48のウエブ部42eと下側の分割部材48のウエブ部42fとを互いに当接させたうえでこれらをビス等の固定具61で連結することによって構成される。
【0086】
また、補剛金物41の周端部47を隣り合う床根太31、床面材33及び下弦材35に連結するに際しては、その連結する部位や構造について上述の形態のものに限定するものではなく、例えば、床根太31のウエブ部31aではなくリップ部31cに連結金物49を介して連結するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明における床構造1は天井根太51を必須の構成要件とするものではなく、天井根太51のない床構造1として用いる場合は開口部45の形成されている補剛金物41Aを用いずに補剛金物41Bのみを用いるようにしてもよい。
【0088】
また、上述の実施形態においては、下弦材35が複数の床根太31の下側である下面に対して当接して配設されるものとして説明したが、下弦材35は、複数の床根太31の下側である下部を貫通してそれら床根太31と直交するように配設されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 床構造
3 スチールハウス
10 壁枠
11 下枠材
13 縦枠材
15 上枠材
20 床枠
21 端根太
23 側根太
31 床根太
33 床面材
35 下弦材
41 補剛金物
45 開口部
47 周端部
49 連結金物
51 天井根太
53 天井面材
54 吊りボルト
55 ハンガー
56 野縁受け
57 クリップ
58 野縁
61 固定具
63 補強金物
71 端部補強金物
73 横向きリップ溝形鋼
75 縦向きリップ溝形鋼
82 ガイド部
84 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を空けて略平行に配設された複数の床根太と、
前記複数の床根太上に配設された床面材と、
前記複数の床根太の下側において当該床根太と直交するように間隔を空けて略平行に配設された複数の下弦材と、
前記床面材と前記下弦材との間において前記床根太と直交する方向に直線状をなすように互いに隣り合う前記床根太間毎に配設された複数の補剛金物とを備え、
前記補剛金物は、その上下左右の周端部が互いに隣り合う前記床根太と前記床面材と前記下弦材とに連結されていること
を特徴とする床構造。
【請求項2】
前記複数の床根太間において当該床根太に対して略平行に配設され、前記補剛金物に形成された開口部を貫通する天井根太を更に備えること
を特徴とする請求項1記載の床構造。
【請求項3】
前記天井根太は、前記補剛金物及び前記下弦材に接触しないように配設されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の床構造。
【請求項4】
前記開口部の形成された補剛金物は、当該開口部が前記床根太に対して直交する上下左右方向に開口されていない中空閉断面状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の床構造。
【請求項5】
隣り合う前記床根太の互いに対向する側面に連結されるとともに、前記補剛金物の左右の端部に連結される一対の連結金物を更に備え、
前記一対の連結金物は、上下方向に凸状又は凹状に延びたガイド部が形成され、
前記補剛金物は、前記一対の連結金物のガイド部に沿って上下方向に摺動可能にその左右の端部が嵌合されていること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の床構造。
【請求項6】
隣り合う前記床根太の互いに対向する側面に固定具により連結されるとともに、前記補剛金物の左右の端部に連結される一対の連結金物を更に備え、
前記床根太の両側面に連結された二つの連結金物は、一方の連結金物を前記床根太に連結する固定具の位置と他方の連結金物の床根太に対する当接位置とが重ならないように配置されていること
を特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の床構造。
【請求項7】
前記補剛金物は、内側を互いに向かい合わせて略平行に配置された一対の横向きリップ溝形鋼と、前記一対の横向きリップ溝形鋼の両側部内側にウエブ部両側のフランジ部を挿入して配置された一対の縦向き溝形鋼とを有し、前記一対の横向きリップ溝形鋼のウェブ部内側に前記一対の縦向き溝形鋼のフランジ部外側が当接されて構成されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の床構造。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の床構造が用いられていること
を特徴とする建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−144534(P2011−144534A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4959(P2010−4959)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)