説明

床用ゴムシート材の製造方法

【課題】床用ゴムシート材の製造方法において、予定された形状等の模様を床用ゴムシート材に容易に表出させることを課題としている。
【解決手段】未加硫ゴムシートが用いられてなる裏面シート材の上に、表裏に貫通する孔部を有する未加硫ゴムシートが用いられてなる表面シート材が積層され、該表面シート材の孔部に前記表面シート材と異なる風合いを呈するように形成された未加硫のゴムシート片が嵌合されている積層体を形成させ、該積層体を加圧して加硫を実施することにより前記表面シート材、前記裏面シート材、及び前記ゴムシート片を一体化させて床用ゴムシート材を製造することを特徴とする床用ゴムシート材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用ゴムシート材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や実験設備等の床仕上げ材や、電車等の車両の床仕上げ材としてポリ塩化ビニル(PVC)製の床用シート材が広く用いられている。
近年、床材の難燃要求の高まり等から、PVC製のものに代えてゴム製の床材たる床用ゴムシート材が採用されるようになってきている。
【0003】
ところで、この種の床用シート材は、種々の模様が付与されて使用されることも多いものであるが、ゴムシート材は、塗膜や化粧フィルムによって表面に模様を形成させても、この塗膜や化粧フィルムがゴムシート材の弾性変形に十分追従せず剥離しやすいという問題を有している。
これに対し、例えば、異なる色合いのゴム材料を用いるなどしてゴムシート自体に模様を付与することも検討されており、異なる色に着色された未加硫ゴムペレットを型に充填させて押し固めつつ加硫一体化させる方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、斯かる方法では、ゴムが加硫の際に流動することから、例えば、文字やマークなどといった予定された形状を表出させることが実質上困難である。
【0004】
【特許文献1】特公平7−15214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記問題点等に鑑み、本発明は、床用ゴムシート材の製造方法において、予定された形状等の模様を床用ゴムシート材に容易に表出させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、未加硫ゴムシートが用いられてなる裏面シート材の上に、表裏に貫通する孔部を有する未加硫ゴムシートが用いられてなる表面シート材が積層され、該表面シート材の孔部に前記表面シート材と異なる風合いを呈するように形成された未加硫のゴムシート片が嵌合されている積層体を形成させ、該積層体を加圧して加硫を実施することにより前記表面シート材、前記裏面シート材、及び前記ゴムシート片を一体化させて床用ゴムシート材を製造することを特徴とする床用ゴムシート材の製造方法を提供する。
【0007】
なお、本発明の床用ゴムシート材の製造方法においては、板状の抜刃が打ち抜き形状に沿って配置され、且つ前記抜刃が内側にのみ刃面を有する片刃である刃型を用いて未加硫ゴムシートに打ち抜き孔を穿設して前記孔部が形成された表面シート材を作製するとともに外側にのみ刃面を有する片刃の抜刃が前記ゴムシート片の形状に沿って配置された刃型を用いて未加硫ゴムシートから前記ゴムシート片を切り出し、該ゴムシート片を前記表面シート材の孔部に嵌合させて前記積層体を形成させることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面シート材の孔部に前記表面シート材とは風合いの異なるゴムシート片が嵌合されている積層体が一体化されて床用ゴムシート材が形成されることから、前記孔部ならびに前記ゴムシート片を所望の形状に加工することで当該形状を床用ゴムシート材の模様として表出させることができる。
しかも、表面シート材の裏面側に裏面シート材が設けられた積層体が一体化されることから、加硫時においては、ゴムシート片は、表面シート材によって側面側が拘束されるばかりでなく、裏面シート材によって背面側が拘束された状態となる。
また、表面シート材も裏面シート材によって背面側が拘束された状態で加硫される。
したがって、加硫時におけるゴムの流動が規制されることから、ゴムシート片や表面シート材の未加硫時の形状を保持させて床用ゴムシート材を製造させうる。
すなわち、予定された形状を床用ゴムシート材に容易に表出させることができる。
【0009】
また、表面シート材及びゴムシート片の外形加工においては、刃型を用いた打ち抜き加工を実施することが効率的であり、且つ安定した形状の確保が容易となる。
しかし、未加硫ゴムシートに板状の刃を侵入させて切断を行った場合には、刃面が形成されている側で切断された未加硫ゴムシートの切断部の端縁が丸みを帯びた状態に形成されてしまいやすく、積層体に隙間を形成させやすくなる。
【0010】
この点について、未加硫ゴムシートを片刃の切断刃で切断する様子を側面から見た図である図9を参照しつつ詳しく説明すると、例えば、片刃の切断刃100においては、一面側100aが面一で、他面側に刃先に向けて薄肉となるよう傾斜面100b(刃面100b)が形成されており、この切断刃100の刃先100cを未加硫ゴムシート200の表面に当接させるとその表面がわずかに変形する(図9a)。
その後、刃先100cを押し進めると、未加硫ゴムシート200は、加硫されたゴムシートと異なりわずかな応力で塑性変形を生じることから、傾斜面100bと未加硫ゴムシート200の表面との接触による摩擦力により大きな変形を生じることとなる。
そのため、刃面100bが形成されている側で切断される端縁部にダレが生じることとなる(図9b)。
そして、未加硫ゴムシート200は、加硫されたゴムシートと異なり、変形に対する復元力が乏しいことから、切断が完了した後も刃面100bを有する側で切断されたエッジ部200e1が丸みを帯びた状態となる(図9c)。
一方で、面一に形成されている側100aで切断された側は、切断時において切断刃100の表面が未加硫ゴムシート200の表面に対して直角に移動することから殆どダレを生じることなく、そのエッジ部200e2の断面がほぼ直角に形成されることとなる。
【0011】
したがって、前記のような好適な態様によれば、表面シート材の孔部が片刃で穿設され、しかも、刃面が形成されていない側で孔部の外周縁が形成されることからエッジ部に丸みが生じることを抑制させることができる。
また、ゴムシート片についても同様である。
したがって、孔部にゴムシート片を嵌合させた際にゴムシート片と表面シート材のエッジ同士が離間することによって生じる隙間の形成を防止することができる。
すなわち、この隙間を充足させるべく、加硫時においてゴムシート片と表面シート材との界面にゴムの流動が生じるおそれを低減させることができ、予定された形状を床用ゴムシート材によりいっそう容易に表出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図1、図2を参照しつつ床用ゴムシート材について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の床用ゴムシート材の一態様を示す平面図であり、図2は、図1のA−A’線矢視断面図である。
この図1、図2にも示されているように、本実施形態の床用ゴムシート材1は、上面視矩形で板状に形成されており、表面中央部に矢印マークが描かれている。
この床用ゴムシート材1は、表面側と裏面側との2層の積層構造を有している。
この表面側を構成する表面層は、表面の風合いが異なる2つの領域に区分けられており前記矢印マークの周囲部を構成する第一の領域(以下「第一表面層2」ともいう)と、矢印マークを構成する第二の領域(以下「第二表面層4」ともいう)とを有している。
一方で、裏面側を構成する裏面層3には、このような区分けは施されていない。
【0014】
本実施形態の床用ゴムシート材1は、前記第一表面層2を構成すべく第二表面層4に相当する箇所に表裏に貫通する孔部が形成された未加硫のゴムシートである表面シート材が、前記裏面層3を構成するための未加硫のゴムシートである裏面シート材の上に積層され、前記第二表面層4を形成させるための未加硫のゴムシート片が前記表面シート材の孔部に嵌合されて形成された積層体が加圧状態で加硫されることにより一体化されて形成されたものである。
【0015】
この表面シート材、裏面シート材、及びゴムシート片を形成する未加硫ゴムシートは、一般的な床用ゴムシート材の形成に用いられるゴム組成物と同様のゴム組成物により形成されうる。
【0016】
前記ゴム組成物中のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ハイスチレンゴム、イソブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の少なくとも1種以上が用いられる。
これらの中でも、難燃性能(低発煙性、低燃焼性、燃焼ガスの低排出性等)を考慮すると、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)の少なくとも何れか一方を用いたものが好ましい。
特に、スチレンブタジエンゴムを主成分とし、その他に天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、イソブチレンゴムの1種以上を副成分として含むものが好ましい。
【0017】
前記ゴム組成物中には、上記の如きゴム成分の他、床用ゴムシート材を形成するゴム組成物に一般に含有される各種添加剤、具体的には、無機難燃剤、充填材、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、活性剤、補強剤、加工助剤、粘着付与剤、カップリング剤、ハロゲン系有機難燃剤等が配合されていてもよい。
これらの添加剤の配合量は、特に限定されず、例えばゴム床材のゴム組成物として一般
的に配合される量とすることができる。
【0018】
なお、床材に最適であるという観点から、加硫後のゴム硬度(JIS K 6253 タイプAデュロメータ硬さ)が80度以上となるようこれらの配合量を調整することが好ましく、90度以上となるように調整されることがより好ましい。
【0019】
また、表面シート材とゴムシート片との風合いを異ならせて本実施形態の床用ゴムシート材1の表面に矢印マークを形成させる方法としては、例えば、用いる顔料を異ならせるなどして前記表面シート材に用いるゴム組成物の色調と、前記ゴムシート片に用いるゴム組成物の色調とを異ならせる方法が挙げられる。
なお、このような場合、表面シート材、裏面シート材、及びゴムシート片における顔料以外の組成については、共通していても、異なっていてもよいが、表面層2(4)と裏面層3と接着性を向上させて界面剥離を防止させうる点において、表面シート材、裏面シート材、及びゴムシート片の顔料以外の組成を共通させていることが好ましい。
【0020】
次いで、この床用ゴムシート材1を製造する製造方法について説明する。
図3は、本実施形態の床用ゴムシート材1の製造方法の概要を示す平面図である。
この図3にも示されているように、本実施形態の床用ゴムシート材1の製造方法においては、表面シート材2bを形成するための未加硫ゴムシート2a、裏面シート材3bを形成するための未加硫ゴムシート3a、ゴムシート片4bを形成するための未加硫ゴムシート4aそれぞれ作製する未加硫ゴムシート作製工程と、該未加硫ゴムシート作製工程で作製された未加硫ゴムシートに外形加工を施すなどして、未加硫の表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを作製する外形加工工程と、この外形加工工程によって作製された表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを積層して積層体を形成させる積層工程とを実施する。
また、本実施形態の床用ゴムシート材1の製造方法においては、積層工程によって作製された積層体を熱プレスして表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを加硫して、これらを一体化させ床用ゴムシート材1を形成させる加硫工程をさらに実施する。
【0021】
1)未加硫ゴムシート作製工程
前記未加硫ゴムシート作製工程においては、従来一般に用いられている方法を採用することができ、例えば、ゴム組成物をニーダーやバンバリーミキサーなどで混練し、混練されたゴム組成物を、カレンダーロールなどを通して所望の幅及び厚みとなるようにシート出しして未加硫ゴムシート形成させることができる。
なお、図3においては、未加硫ゴムシートの幅を床用ゴムシート材1と同幅にシート出しした帯状の未加硫ゴムシートを例示している。
また、この未加硫ゴムシート作製工程では、表面シート材用の未加硫ゴムシート2aと、裏面シート材用の未加硫ゴムシート3aとを、通常、その合計厚みが、製造する床用ゴムシート材1と同じか、わずかに厚くなるようにそれぞれの厚みを調整する。
そして、ゴムシート片用の未加硫ゴムシート4aは、通常、表面シート材用の未加硫ゴムシート2aと同じ厚みに形成される。
【0022】
2)外形加工工程
この外形加工工程においては、図3中に破線2C、3C、4Cで示されている切断線に沿って未加硫ゴムシート2a、3a、4aをそれぞれ切断し、表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを作製する。
すなわち、表面シート材用の未加硫ゴムシート2aと裏面シート材用の未加硫ゴムシート3aとを、切断後に床用ゴムシート材1と同じ矩形状となるように長手方向前後二箇所を幅方向に切断する。
それとともに、表面シート材用の未加硫ゴムシート2aについては、その中央部に未加硫のゴムシート片4bを嵌合させ得るようにゴムシート片4bと同形(矢印マーク)の打ち抜き孔を穿設する。
また、ゴムシート片用の未加硫ゴムシート4aについては、切断線4Cに沿った形状を打ち抜き、未加硫のゴムシート片4bを作製する。
【0023】
この表面シート材用の未加硫ゴムシート2aに矢印マークの孔部2dを形成させる方法及びゴムシート片用の未加硫ゴムシート4aから、矢印マーク形状にゴムシート片4bを切り出す方法について、その好適な態様を、図4、図5を参照しつつ説明する。
図4は、矩形状に切断された未加硫ゴムシート2a(4a)を打ち抜き台10の上に載置し、打ち抜き用刃型C1(C2)にて打ち抜く様子を示した平面図であり、図5は、図4のB−B’線矢視断面図である。
【0024】
この図にも示されているように、表面シート材用の未加硫ゴムシート2aに孔部2dを穿設するための打ち抜き用刃型C1は、水平に配された平板状の基板C1aの下面側に、刃先を垂直方向下方に向けた状態で固定された板状の抜刃C10を有し、該抜刃C10が打ち抜き形状(矢印マーク)に沿って基板C1aの下面側に配置されている。
【0025】
この表面シート材用の打ち抜き用刃型C1の抜刃C10には片刃が用いられており、しかも、その刃面C11を内側に向けた状態で打ち抜き形状に沿って設けられている。
すなわち、この抜刃C10は、打ち抜き形状外側面C12が面一で、内側面が刃先に向けて外側に傾斜する傾斜面(刃面C11)となるように配されている。
【0026】
そして、打ち抜き台10の上に載置した未加硫ゴムシート2aの上面側から抜刃C10の刃先を進入させて打ち抜き台10の表面に当接するまで刃型C1を下方に移動(図5のa1〜a2)させた後に、再び上昇させる(図5のa2〜a3)ことにより表面シート材用の未加硫ゴムシート2aに孔部2dを穿設して表面シート材2bを形成させることができる。
このようにして、打ち抜き形状の外側が面一となるように抜刃C10が配された打ち抜き用刃型C1で孔部2dを穿設することにより孔部2dを上面側で画成する表面シート材2bのエッジ部2eをその断面形状がほぼ直角となるシャープな形状とすることができ。
【0027】
一方、ゴムシート片用の打ち抜き用刃型C2には、打ち抜き形状外側に刃面C21を有し、且つ内側面C22が面一となるように片刃の抜刃C20が用いられている。
したがって、この刃型C2を用いてゴムシート片用の未加硫ゴムシート4aから、ゴムシート片4bを打ち抜くとゴムシート片4bの端縁部のエッジ部4eを表面シート材2bにおける孔部周囲のエッジ部2eと同様に断面形状がほぼ直角な状態とすることができる。
【0028】
このように表面シート材2bとゴムシート片4bのエッジ部に丸みが形成されず、いずれも、断面がほぼ直角となるよう形成されるため、表面シート材2bとゴムシート片4bとの間に裏面側から表面側まで殆ど隙間を生じないようにして孔部2dにゴムシート片4bを嵌合させることができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、予定された形状を床用ゴムシート材1によりいっそう容易に表出させることができる点において上記のような方法を例示しているが、本発明においては、表面シート材2bとゴムシート片4bとの形成方法を上記のような方法に限定するものではなく、両刃の抜刃を有する刃型で打ち抜き加工を行っても良く、他の打ち抜き手段(あるいは切断手段)を上記に代えて採用することも可能である。
【0030】
3)積層工程
前記積層工程は、外形加工工程によって作製された表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを積層して積層体を形成させる工程である。
この積層工程は、例えば、まず、水平な台上に裏面シート材3bを載置し、該裏面シート材3bの上に表面シート材2bを重ね合わせて裏面シート材3bの上面部をもって表面シート材2bの孔部2dを裏面側から閉塞させ、該孔部2dと裏面シート材3bとによって有底の凹入部を形成させ、該凹入部にゴムシート片4bを嵌合させて積層体を形成させる方法などによって実施可能である。
【0031】
4)加硫工程
前記加硫工程は、積層工程によって作製された積層体を熱プレスして表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bを加硫して、これらを一体化させ床用ゴムシート材1を形成させる工程である。
前記積層工程は、例えば、この加硫工程と一連の工程内において実施可能である。
図6は、積層工程から加硫工程を一連の工程内に実施する様子を示した側面図であり、この図6に示すごとく、床用ゴムシート材1と同じ厚みを有し、床用ゴムシート材1と同じ矩形の中抜き領域を有する矩形枠31とプレスボード30a、30bを用いることにより、積層工程と加硫工程とを一連の工程内に実施可能である。
より具体的に説明すると、例えば、プレスボード30a上に矩形枠31を載置し、この矩形枠31に未加硫の裏面シート材3bをセットした後に表面シート材2bをセットして、上面側に凹入部2fが形成された一次積層体を形成させ、該凹入部2fに未加硫のゴムシート片4bを嵌合させて二次積層体1a(以下、単に「積層体1a」ともいう)を形成させた後に、該積層体1a上に新たなプレスボード30bを載置して、このプレスボード30a、30b間を加圧しつつ加熱してゴム組成物の加硫を進行させて表面シート材2b、裏面シート材3b、ゴムシート片4bの加硫一体化を実施させる方法を採用することができる。
【0032】
このとき、表面シート材2bと裏面シート材3bとの接触界面23、ゴムシート片4bと凹入部2fの側壁部(表面シート材2b)との接触界面24、ゴムシート片4bと凹入部2fの底面部(裏面シート材3b)との接触界面34などにゴム糊などを配して接着性を向上させることも可能である。
【0033】
このようにしてゴムシート片4bを孔部2d(凹入部2f)に嵌合させた状態でプレスを実施することで、プレス時には、ゴムシート片4bの流動が表面シート材2bと裏面シート材3bとによって規制されることとなり、未加硫状態のゴムシート片4bの形状が加硫後のゴムシート片(第二表面層4)の形状として保持されることとなる。
したがって、床用ゴムシート材1の表面に、当初予定されたデザインを表出させることができる。
しかも、上述のような簡便な方法によって当初予定されたデザインを床用ゴムシート材1の表面に表出させることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、表面シート材2b、裏面シート材3b、及びゴムシート片4bにそれぞれ別個の未加硫ゴムシートを作製する場合を例にして床用ゴムシート材の製造方法を説明したが、例えば、単一の未加硫ゴムシートによって床用ゴムシート材を作製することも可能である。
例えば、図7は、この単一の未加硫ゴムシートによって床用ゴムシート材を作製する場合を示した平面図である。
この図を参照しつつ単一の未加硫ゴムシートによって床用ゴムシート材を作製する場合について説明すると、二色のゴムチップを作製し、このゴムチップを混合してカレンダーロールを通じてシート出しすることによりカレンダー方向に流れ模様が形成された未加硫ゴムシート2a’を予め作製しておいて、この未加硫ゴムシート2a’を切断線2c’に沿って切断することで孔部2d’を有する未加硫の表面シート材2b’を作製するとともに、同じ未加硫ゴムシート2a’から、シート片4b’を切り出し、しかも、未加硫ゴムシート2a’の流れ模様が表面シート材2b’と揃わないようにしてシート片4b’を切り出してこれらを嵌合させて積層体1a’を形成させ、この積層体1a’を加硫一体化させることでシート片4b’の形状を表出させて床用ゴムシート材を作製することが可能である。
【0035】
また、本実施形態においては、表面層と裏面層との2層構造の床用ゴムシート材を例示したが、例えば、裏面層のさらに裏面側に第3の層を設けることも可能であり、層数に限定を設けるものではない。
また、表面シート材とシート片との風合いを異ならせる方法については、色調や模様の他に表面の光沢など種々の態様を採用することができる。
さらに、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては従来公知の床用ゴムシート材の製造方法に採用されている技術事項を本発明の床用ゴムシート材の製造方法に採用することも可能である。
【実施例】
【0036】
赤い色調を有する未加硫ゴムシートと、黄色い色調を有する未加硫ゴムシートとを作製し、前記赤色未加硫ゴムシート及び前記黄色未加硫ゴムシートを略正方形に切断し、中央部に「福」の字を模った孔部を形成させた。
これらを別の未加硫ゴムシート上に並べて配置し、前記赤色未加硫ゴムシート及び前記黄色未加硫ゴムシートから別途「福」の字を模るように切り出したゴムシート片を互いに異なる色の未加硫ゴムシートに設けられた孔部に嵌合させて積層体を形成させた。
この積層体を熱プレスすることにより一体化させて床用ゴムシート材を作製した。
得られた床用ゴムシート材の外観写真を図8に示す。
この図8にも示されているように、床用ゴムシート材には「福」の字の形状が美麗に表出されており、本発明によれば予定された形状を床用ゴムシート材に容易に表出させうることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】床用ゴムシート材を示す平面図。
【図2】図1のA−A’線矢視断面図。
【図3】本実施形態の床用ゴムシート材の製造方法概要を示す平面図。
【図4】本実施形態の床用ゴムシート材の製造方法における外形加工工程を示す平面図。
【図5】本実施形態の床用ゴムシート材の製造方法における外形加工工程を示す断面図(図4のB−B’線断面図)。
【図6】本実施形態の床用ゴムシート材の製造方法における積層工程、加硫工程を示す断面図。
【図7】他実施形態の床用ゴムシート材の製造方法概要を示す平面図。
【図8】本発明の製造方法によって製造された床用ゴムシート材の一例を示す外観写真。
【図9】未加硫ゴムシートを切断刃にて切断する様子を示した側面図。
【符号の説明】
【0038】
1:床用ゴムシート材、1a:積層体、2:第一表面層、2a:(表面シート材用)未加硫ゴムシート、2b:表面シート材、2d:孔部、2e:エッジ部、2f:凹入部、3:裏面層、3a:(裏面シート材用)未加硫ゴムシート、3b:裏面シート材、4:第二表面層、4a:(ゴムシート片用)未加硫ゴムシート、4b:ゴムシート片、4e:エッジ部、10:打ち抜き台、30a、30b:プレスボード、31:矩形枠、34:接触界面、100:切断刃、100b:刃面、100c:刃先、200:未加硫ゴムシート、200e1:エッジ部、C1、C2:刃型、C10、C20:抜刃、C11、C21:刃面、C1a、C2a:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムシートが用いられてなる裏面シート材の上に、表裏に貫通する孔部を有する未加硫ゴムシートが用いられてなる表面シート材が積層され、該表面シート材の孔部に前記表面シート材と異なる風合いを呈するように形成された未加硫のゴムシート片が嵌合されている積層体を形成させ、該積層体を加圧して加硫を実施することにより前記表面シート材、前記裏面シート材、及び前記ゴムシート片を一体化させて床用ゴムシート材を製造することを特徴とする床用ゴムシート材の製造方法。
【請求項2】
板状の抜刃が打ち抜き形状に沿って配置され、且つ前記抜刃が内側にのみ刃面を有する片刃である刃型を用いて未加硫ゴムシートに打ち抜き孔を穿設して前記孔部が形成された表面シート材を作製するとともに外側にのみ刃面を有する片刃の抜刃が前記ゴムシート片の形状に沿って配置された刃型を用いて未加硫ゴムシートから前記ゴムシート片を切り出し、該ゴムシート片を前記表面シート材の孔部に嵌合させて前記積層体を形成させる請求項1記載の床用ゴムシート材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−281047(P2009−281047A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133993(P2008−133993)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】