説明

床衝撃音体験装置

【課題】体験者自らが床に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、下階室において実際にどのように聞こえるのかを体験者自らがリアルに体験することができる床衝撃音体験装置を提供する。
【解決手段】この床衝撃音体験装置は、体験室1の床2に設けた圧力センサ3と、この体験室1の直上に配された上階室4の床5に設けた起振機6とを、ディレイ7及びアンプ8を介して電気的に接続してなり、体験者M自らが体験室1の床2に与えた衝撃力を圧力センサ3によって検出し、その検出信号をディレイ7によって遅延及びアンプ8によって増幅しながら起振機6に入力して、この起振機6によって検出信号に応じた衝撃力を上階室4の床5に与えることで、その衝撃力に伴う床衝撃音を体験室1において体験可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体験者自らが床に対して与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、下階室においてどのように聞こえるのかを体験者自らが体験できるようにした床衝撃音体験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床衝撃音を体験できるようにした体験装置が各種提案されている。例えば特許文献1や特許文献2に開示されている装置では、各種機器を使用して上階室の床に衝撃力を与え、このときに発生する床衝撃音を体験者が下階の体験室で体験できるようになっている。
【0003】
ところが、このような体験装置では、各種機器を使用して発生させた床衝撃音を、体験者が体験室において単に聞くだけであって、体験者自らが床に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、下階室においてどのように聞こえるのかを体験者自らが体験することはできなかった。従って、体験者は、上階室において歩行したり、飛び跳ねたり、物を落としたりする日常の生活行為が、下階室に居る人に対してどの程度迷惑をかけているのか、どうすれば迷惑をかけないのかを身をもって実感することができなかった。また、上記の体験装置においては、仕様の異なる床の遮音性能の違いを体験できるようになっているが、体験者が実際に生活する上で、どの程度の遮音性能を有する床が必要であるのかを正しく理解することまではできなかった。
【0004】
そこで、体験者自らが床に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、どのように聞こえるのかを体験することができる体験装置が各種提案されている。例えば特許文献3や特許文献4に開示されている装置では、体験室において体験者自らが床に与えた衝撃力を検出して、その検出信号に基づいて生成した床衝撃音を体験室に配置したスピーカーから出力することで、体験者は体験室に居ながらにして床衝撃音を聞くことができるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−212441号公報
【特許文献2】特開2004−226705号公報
【特許文献3】特開平10−31409号公報
【特許文献4】特開2004−53776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献3や特許文献4に開示されているような体験装置において、体験者が聞くことができる床衝撃音は、実際に上階室において床に衝撃力を与えることによって発生したものではなく、解析処理やフィルター設計等によって模擬的に再現してスピーカーから出力させたものである。一般に、床衝撃音がどのように聞こえるかは、上階室における床仕様や音源の種類だけでなく、上階室の床の振動を固体音として伝える下階室の構造、下階室の内壁からの音響放射、下階室の音響モード等の各種条件によっても大きく影響されることから、床衝撃音を模擬的に再現させるには限界があり、実際の床衝撃音とは大きくかけ離れたものとなることが多かった。
【0007】
この発明は、上記不具合を解消するため、体験者自らが床に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、下階の体験室において実際にどのように聞こえるのかを体験者自らがリアルに体験することができ、また体験者の生活行為に即した床仕様の比較、選定を行うことができる床衝撃音体験装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の床衝撃音体験装置は、体験室1の床2に設けた圧力センサ3と、この体験室1の直上に配された上階室4の床5に設けた起振機6とを、ディレイ7及びアンプ8を介して電気的に接続してなり、前記体験室1の床2に与えた衝撃力を前記圧力センサ3によって検出し、その検出信号を前記ディレイ7によって遅延及び前記アンプ8によって増幅しながら前記起振機6に入力して、この起振機6によって前記検出信号に応じた衝撃力を前記上階室4の床5に与えることで、その衝撃力に伴う床衝撃音を前記体験室1において体験可能としたことを特徴とする。
【0009】
また、前記上階室4は、仕様の異なる複数の床5A、5Bを備え、これら複数の床5A、5Bに対して前記起振機6A、6Bをそれぞれ設けて、前記圧力センサ3と各起振機6A、6Bとを、それぞれディレイ7A、7B及びアンプ8A、8Bを介して電気的に接続している。この場合、各ディレイ7A、7Bによる遅延時間を異ならせるようにしている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の床衝撃音体験装置によれば、体験室において体験者自らが床に衝撃を与えると、この衝撃力を圧力センサによって検出して、同程度の衝撃力を起振機によって上階室の床に実際に与えるようになっているので、体験者は、自らが床に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、体験室すなわち下階室において実際にどのように聞こえるのかを、リアルに体験することができる。
【0011】
また、体験者自らが床に衝撃力を与えることによって、上階室に設けた仕様の異なる床の遮音性能の違いを体験することができるので、体験者の生活行為に即した床仕様の比較、選定を行うことができる。しかも、圧力センサからの共通の検出信号を、仕様の異なる床に対して設けた複数の起振機にそれぞれ入力して、これら起振機によって仕様の異なる床に同じ強さの衝撃力をそれぞれ与えるようになっているので、仕様の異なる床の遮音性能を正確に比較することができる。
【0012】
さらに、ディレイによって起振機の作動を適宜遅らせることで、体験者が体験室の床に衝撃力を与えたときに発生する音と起振機によって発生させた床衝撃音とが重複したり、起振機によって発生させた仕様の異なる床における床衝撃音同士が重複することがなく、床衝撃音をはっきりと聞き取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
この発明の第1実施形態に係る床衝撃音体験装置は、図1に示すように、体験室1の床2に設けた圧力センサ3と、この体験室1の直上に配された上階室4の床5に設けた起振機6とを、ディレイ7及びアンプ8を介して電気的に接続することによって構成されている。
【0014】
体験室1及び上階室4は、例えば戸建て住宅の上下階室、或いは、アパートやマンション等の集合住宅の上下階室を想定したもので、それら室内は防音処理が施されている。また、体験室1の床2と上階室4の床5は、例えば同仕様とされている。
【0015】
圧力センサ3は、平板状に形成されていて、その表面が床表面と略面一になるようにして体験室1の床2に埋め込まれている。なお、圧力センサ3を床2に埋め込まずに、床表面に敷設するだけであっても良い。このようにして床2に設けた圧力センサ3の表面上で、体験者Mが足踏みをしたり、飛び跳ねたり、物を落下させることで、このときの衝撃力が圧力センサ3によって検出されるようになっている。
【0016】
起振機6としては、永久磁石型又は電磁石型の垂直起振機が使用され、上階室4の床5に据え付けられている。そして、この起振機6が振動することによって、上階室4の床5に衝撃力を与えて、固体音を起因とする床衝撃音を発生させることができるようになっている。
【0017】
また、ディレイ7は、圧力センサ3の検出信号を例えば3〜5秒遅延してアンプ8に入力し、アンプ8は、圧力センサ3の検出信号を増幅して起振機6に入力するようになっている。
【0018】
次に、上記構成の床衝撃音体験装置を使用した床衝撃音の体験方法について説明する。体験者M自らが、体験室1において圧力センサ3の表面上で足踏みをしたり、飛び跳ねたり、物を落下させることによって、床2に対して衝撃を与えると、このときの衝撃力が圧力センサ3によって検出される。圧力センサ3の検出信号は、ディレイ7に入力されて、このディレイ7において例えば3〜5秒遅延された後、アンプ8に入力されて、このアンプ8において増幅される。
【0019】
そして、この増幅された検出信号が起振機6に入力されると、起振機6が振動を発生して、上階室4の床5に対して検出信号に応じた衝撃力すなわち体験室1の床2に与えた衝撃力と同程度の衝撃力を与える。すると、この衝撃力に伴う床衝撃音が、体験者Mが床2に対して衝撃力を与えた時点から例えば3〜5秒遅れて、上階室4直下の体験室1に伝播する。
【0020】
これにより、体験者Mは、下階の体験室1に居ながらにして、自らが床2に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、体験室1すなわち下階室において実際にどのように聞こえるのかをリアルに体験することができる。従って、体験者Mは、上階室において歩行したり、飛び跳ねたり、物を落としたりする日常の生活行為が、下階室に居る人に対してどの程度迷惑をかけているのか、どうすれば迷惑をかけないのかを身をもって実感することができる。
【0021】
(第2実施形態)
この発明の第2実施形態に係る床衝撃音体験装置は、図2に示すように、体験室1の床2に設けた圧力センサ3と、この体験室1の直上に配された上階室4の第1床5Aに設けた第1起振機6Aとを、第1ディレイ7A及び第1アンプ8Aを介して電気的に接続するとともに、上記の圧力センサ3と、上階室4の第2床5Bに設けた第2起振機6Bとを、第2ディレイ7B及び第2アンプ8Bを介して電気的に接続することによって構成されている。
【0022】
体験室1及び上階室4は、例えば戸建て住宅の上下階室、或いは、アパートやマンション等の集合住宅の上下階室を想定したもので、それら室内は防音処理が施されている。また、上階室4の第1床5Aと第2床5Bとは、仕様が異なっている。例えば、第1床5Aは、ALC板を使用したコンクリート床となっていて、第2床5Bは、在来の木造床となっている。
【0023】
圧力センサ3は、平板状に形成されていて、その表面が床表面と略面一になるようにして体験室1の床2に埋め込まれている。なお、圧力センサ3を床2に埋め込まずに、床表面に敷設するだけであっても良い。このようにして床2に設けた圧力センサ3の表面上で、体験者Mが足踏みをしたり、飛び跳ねたり、物を落下させることで、このときの衝撃力が圧力センサ3によって検出されるようになっている。
【0024】
第1及び第2起振機6A、6Bとしては、永久磁石型又は電磁石型の垂直起振機が使用され、上階室4の第1床5A、第2床5Bにそれぞれ据え付けられている。そして、これら第1及び第2起振機6A、6Bが振動することによって、上階室4の第1床5A、第2床5Bに衝撃力をそれぞれ与えて、固体音を起因とする床衝撃音を発生させることができるようになっている。
【0025】
また、第1ディレイ7Aは、圧力センサ3の検出信号を例えば3〜5秒遅延して第1アンプ8Aに入力し、第2ディレイ7Bは、圧力センサ3の検出信号を例えば6〜8秒遅延して第2アンプ8Bに入力するようになっている。すなわち、第1ディレイ7Aによる遅延時間と第2ディレイ7Bによる遅延時間とを異ならせるようにしている。第1アンプ8Aは、圧力センサ3の検出信号を増幅して第1起振機6Aに入力し、第2アンプ8Bは、圧力センサ3の検出信号を増幅して第2起振機6Bに入力するようになっている。
【0026】
次に、上記構成の床衝撃音体験装置を使用した床衝撃音の体験方法について説明する。体験者M自らが、体験室1において圧力センサ3の表面上で足踏みをしたり、飛び跳ねたり、物を落下させることによって、床2に対して衝撃を与えると、このときの衝撃力が圧力センサ3によって検出される。圧力センサ3からの共通の検出信号は、第1及び第2ディレイ7A、7Bにそれぞれ同時に入力される。そして、第1ディレイ7Aに入力された検出信号は、例えば3〜5秒遅延された後、第1アンプ8Aに入力されて、この第1アンプ8Aにおいて増幅される。また、第2ディレイ7Bに入力された検出信号は、例えば6〜8秒遅延された後、第2アンプ8Bに入力されて、この第2アンプ8Bにおいて増幅される。
【0027】
第1アンプ8Aにおいて増幅された検出信号が第1起振機6Aに入力されると、第1起振機6Aが振動を発生して、上階室4の第1床5Aに対して検出信号に応じた衝撃力すなわち体験室1の床2に与えた衝撃力と同程度の衝撃力を与える。すると、この衝撃力に伴う床衝撃音が、体験者Mが床2に対して衝撃を与えた時点から例えば3〜5秒遅れて、上階室4直下の体験室1に伝播する。
【0028】
また、第2アンプ8Bにおいて増幅された検出信号が第2起振機6Bに入力されると、第2起振機6Bが振動を発生して、上階室4の第2床5Bに対して検出信号に応じた衝撃力すなわち体験室1の床2に与えた衝撃力と同程度の衝撃力を与える。すると、この衝撃力に伴う床衝撃音が、体験者Mが床2に対して衝撃を与えた時点から例えば6〜8秒遅れて、上階室4直下の体験室1に伝播する。
【0029】
これにより、体験者Mは、下階の体験室1に居ながらにして、自らが床2に与えた衝撃力に伴う床衝撃音が、体験室1すなわち下階室において実際にどのように聞こえるのかをリアルに体験することができるとともに、自らが床2に与えた衝撃力に基づいて仕様の異なる第1床5Aと第2床5Bの遮音性能の違いを体験することができ、体験者Mが実際に生活する上で、どの程度の遮音性能を有する床が必要であるのかを正しく理解して、体験者Mの生活行為に即した床仕様の比較、選定を行うことができる。
【0030】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1実施形態に係る床衝撃音体験装置の構成図である。
【図2】この発明の第2実施形態に係る床衝撃音体験装置の構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・体験室、2・・体験室の床、3・・圧力センサ、4・・上階室、5・・上階室の床(第1床5A、第2床5B)、6・・起振機(第1起振機6A、第2起振機6B)、7・・ディレイ(第1ディレイ7A、第2ディレイ7B)、8・・アンプ(第1アンプ8A、第2アンプ8B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体験室(1)の床(2)に設けた圧力センサ(3)と、この体験室(1)の直上に配された上階室(4)の床(5)に設けた起振機(6)とを、ディレイ(7)及びアンプ(8)を介して電気的に接続してなり、前記体験室(1)の床(2)に与えた衝撃力を前記圧力センサ(3)によって検出し、その検出信号を前記ディレイ(7)によって遅延及び前記アンプ(8)によって増幅しながら前記起振機(6)に入力して、この起振機(6)によって前記検出信号に応じた衝撃力を前記上階室(4)の床(5)に与えることで、その衝撃力に伴う床衝撃音を前記体験室(1)において体験可能としたことを特徴とする床衝撃音体験装置。
【請求項2】
前記上階室(4)は、仕様の異なる複数の床(5A)(5B)を備え、これら複数の床(5A)(5B)に対して前記起振機(6A)(6B)をそれぞれ設けて、前記圧力センサ(3)と各起振機(6A)(6B)とを、それぞれディレイ(7A)(7B)及びアンプ(8A)(8B)を介して電気的に接続した請求項1記載の床衝撃音体験装置。
【請求項3】
各ディレイ(7A)(7B)による遅延時間を異ならせた請求項2記載の床衝撃音体験装置。

【図1】
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【図2】
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