説明

底質試料のメタン含有量の決定

メタンハイドレート結晶を含む底質試料のメタン含有量は、水深の大きい領域の底質(3)からコア試料(5)を採取するステップと、貯蔵チャンバ(4)にコア試料(5)を貯蔵するステップと、コア試料(5)内の任意のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する所定の水深(ガスハイドレート安定ゾーンのベース(BGHZ=Base of Gas Hydrate stability Zone))まで貯蔵チャンバ(4)を持ち上げるステップと、持ち上げられたコア試料(5)によって放出されるメタンの量を測定するステップと、によって決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底質試料のメタン含有量を決定するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法およびシステムは、米国特許第6,659,204号明細書によって、および論文:
2007年12月20日に公表された、雑誌Marine Chemistry、vol.107,issue no.4、498〜515ページにおいて、K.U.Heeschenらによって公表された「In situ hydrocarbon concentrations from pressurized cores in surface sediments,Northern Gulf of Mexico」、(XP002569753)、および
2009年3月7日に刊行された、Scientific Drilling Journalにおいて、P.Shultheissらによって公表された「Wireline Coring and Analysis under Pressure,Recent Use and Future Developments of Hyacinth System」、(XP002569762,ISSN:1816−8957)、によって知られており、その論文は、URL:http://www.iodp.org/iodpJoumals/7_Wireline_Coring_and_Ana lysis_SD7.pdf でインターネットから検索できる。
【0003】
これらの先行技術の参照文献により知られているコアサンプリング方法およびシステムは、メタンハイドレート資源を評価するためのコアサンプラーを備え、その場合、コア試料は、コア試料が水面に持ち上げられた場合に圧力降下および/または温度上昇によるハイドレート結晶の分解を抑制するように、その場での圧力および温度で貯蔵される。
【0004】
これらの知られている加圧コア試料の欠点は、それらが高価であり、信頼できず、その結果、その場での圧力よりも低圧で、および/またはその場での温度よりも高温で試料を回収するのに頻繁に失敗が生じ、それにより成功したコアによる報告されたハイドレート含有率に系統的バイアスを生じる場合があるという点である。
【0005】
したがって、ハイドレートは解離する場合があり、そのためコア試料が採取された後に、どのくらいのハイドレートが失われ得るかが知られていないので、これらの先行技術の参照文献によって知られているようにコアデータを直接測定することは信頼できない。
【0006】
水深の大きい領域、および/または極寒領域に配置されることが多いハイドレート資源を経済的に開発する際の主要課題のうちの1つは、浅いメタンハイドレート堆積物を発見し評価するコストの低い方法を見つけることにある。
【0007】
現行の技術は信頼できないと共に高価でもあるので、最も大きな課題のうちの1つは、海洋掘削中に回収されるコアの実際のハイドレート含有量を測定することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,659,204号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/089528号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】2007年12月20日に公表された、雑誌 海洋化学(Marine Chemistry)、vol.107,issue no.4、498〜515ページにおいて、K.U.Heeschenらによって公表された「In situ hydrocarbon concentrations from pressurized cores in surface sediments,Northern Gulf of Mexico」(XP002569753)
【非特許文献2】2009年3月7日に刊行された、Scientific Drilling Journalにおいて、P.Shultheissらによって公表された「Wireline Coring and Analysis under Pressure,Recent Use and Future Developments of Hyacinth System」(XP002569762,ISSN:1816−8957)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
他の現在利用できるハイドレートサンプリング技術およびハイドレート検出技術に関する問題は、
間接的地球物理学的方法(電磁気(EM)、地震波)が、ハイドレートの性質により信頼できず、
淡水化に基づくハイドレート含有量の評価が、隙間水の塩分濃度ベースラインに関する不確実性により信頼できない、ことである。
【0011】
現存する方法およびシステムよりも安価であると共により信頼できることが期待される、ハイドレート含有コアのメタン含有量を測定するための改良された技術を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、底質試料のメタン含有量を決定するための方法が提供され、この方法は、
水底の堆積物からコア試料を採取するステップと、
貯蔵チャンバにコア試料を貯蔵するステップと、
コア試料内の任意のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する周囲圧力において所定の水深まで貯蔵チャンバおよびコア試料を持ち上げるステップと、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を測定するステップと、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を基礎として堆積物のメタン含有量を決定するステップと、を含む。
【0013】
メタンハイドレート結晶が依然として安定である水深の大きい領域に、底質がある場合に、次いで、貯蔵チャンバおよびコア試料は、周囲圧力がコア試料内の任意のメタンハイドレート結晶のメタンハイドレート解離圧力よりも低い水深まで水底から持ち上げられることができ、それによって、メタンおよび水の中に解離するように、持ち上げられたコア試料内の任意のメタンハイドレートを誘導する。コア試料によって放出されるメタンの量は、水面で浮遊する船舶に配置される貯蔵チャンバに導管によって連結されるメタン感知装置によって測定され得る。
【0014】
底質試料が底質内のメタンハイドレートの回収可能な量を確認した場合に、メタンハイドレートがその後に底質から掘削され得ると、掘削されたメタンハイドレートは、減圧されかつ/または加熱されて、メタンを解離し放出するようにメタンハイドレートを誘導させ、これは、その後に市場に運び出され、または、産業用または家庭用のパイプライン化可能な天然ガス、液体天然ガス(Liquid Natural Gas(LNG))、および/または合成ガス−ツー−リキッド(synthetic Gas To Liquid(GTL))生成物などの商品に変換される。
【0015】
本発明によれば、底質試料のメタン含有量を決定するためのシステムがさらに提供され、このシステムは、
水底の堆積物からコア試料を採取するためのコアサンプリング装置と、
コア試料を貯蔵するための貯蔵チャンバと、
コア試料内の任意のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する周囲圧力において所定の水深まで貯蔵チャンバおよびコア試料を持ち上げるための手段と、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を測定するためのメタン感知装置と、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を基礎として底質のメタン含有量を決定するための手段と、を備える。
【0016】
コアサンプリング装置は、
脚部、ホイール、および/または水域の底部を横切って任意の所望の方向にフレームを移動させるように構成されるキャタピラ機構に取り付けられるフレームと、
コア試料貯蔵チャンバの中に各コア試料を移動させるように構成される垂直コア掘削装置であり、このコア試料貯蔵チャンバが、装置を取り囲む海水などの流体の周囲圧力に実質的に等しい圧力でコア試料を貯蔵するように構成され、かつフレームに回転可能かつ取り外し可能なカルーセル組立体として取り付けられるコア試料貯蔵チャンバの束の一部を形成する、垂直コア掘削装置とを備え、このコア試料貯蔵チャンバの束は、水上船舶から懸架される巻き上げラインに固定される可撓性導管の束に連結される。
【0017】
本発明による方法およびシステムのこれらのおよび他の特徴、実施形態、および利点は、添付の図面に示される非限定的な実施形態についての添付の特許請求の範囲、要約、および次の詳細な説明に記載され、その場合、図面に示される対応する参照数字を指す説明のための参照数字が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コアサンプリングチャンバの束を担持する水中コアサンプリング装置を示す図である。
【図2】水中コアサンプリング装置から取り外された後に、コアサンプリングチャンバの束がいかにコア試料で充満されるかを示す図である。
【図3】コアサンプリングチャンバの束が、いかにガスハイドレート安定ゾーンのベース(Base of Gas Hydrate stability Zone(BGHZ))の上方の水深まで持ち上げられるかを示す図である。
【図4】メタンおよびハイドレート枯渇コア試料を含むコアサンプリングチャンバの束が、いかに洋上または陸上実験室でさらなる分析のために船舶または他の水上船舶までその後に持ち上げられ得るかを示す図である。
【図5】捕集されたメタンがガス計量および分析装置に放出される船舶または他の水上船舶に取り付けられる気水分離タンクを示す図である。
【図6】封止可能なコアサンプリングチャンバの他の形態を示す図である。
【図7】カルーセル組立体の上下のジョーが、いかに図6のコアサンプリングチャンバを封止するように枢動されるかを示す図である。
【図8】上下のジョーによって封止される、図6のコアサンプリングチャンバを示す図である。
【図9】BGHZ(ガスハイドレート安定ゾーンの基部(Base of Gas Hydrate stability Zone))の上方の水深までコア試料チャンバを持ち上げた後に、いかにメタンガス(CH)が、減圧されたコア試料内のハイドレート解離によって放出されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による方法およびシステムは、メタンハイドレートを含み、かつガスハイドレート安定ゾーンの基部(Base of Gas Hydrate stability Zone(BGHZ))内の水深で海底から回収されるコア試料の総メタン含有量を評価するための新しい技術を提供するものである。利用される通常の技術は分析のために水上船舶にコア試料を回収することであるので、歴史的に、これは困難であった。海面までの行程の間に、コアは、(温度に応じて約400mよりも浅い水深で)ガスハイドレート安定ゾーンを離れ、コア内のメタンハイドレートが、解離し始める。コアが船舶に到達する時(通常、コア採取装置が船舶までウィンチで巻き上げられ得る速度によって制限される)までには、未知量の解離が発生してしまい、発生ガスが漏出しており、それによって、解離以前のハイドレートの初期量は知ることができない。残った水塩分濃度を測定し、バックグラウンドの初期レベルに関して発生している淡水化を算定するなどの、放出されたガスの量を評価するための技術が存在するが、初期の塩分濃度は推測され得るだけであるので、この方式で得られるハイドレート含有量の評価を信頼することは困難である。
【0020】
これを克服するために、米国特許第6,659,204号明細書に記載されているような「加圧式コア採取(Pressure Coring)」の技術が、サンプリングの箇所で気密容器内にコア試料を封止するために使用されており、それによって、コアは水上船舶に回収されるので、容器内の圧力は、周囲の水圧の低下につれて降下しない。いったん船舶に回収されると、加圧コアは、ハイドレート堆積物を可視化するようにx線またはCATスキャナを用いて分析されることができ、存在するガスの量は、放出されたガスの体積を取り込み測定する制御された方法で内部圧力を低下させることによって測定され得る。
【0021】
米国特許第6,659,204号明細書によって知られている加圧式コア採取の技術に関する問題は、次の通りである:
高コスト:高価なコアレセプタクルがある。
困難な取り扱い:これらは、良好な資料を得るのに使用される掘削装置内に全く特化した取り扱い設備を必要とする。
低い信頼性:これらは、所定圧力でコア試料を回収できない場合が多い。これは、コアがコアレセプタクルに入ることができるようになるボール弁の気密封止を得ることができないためであることが多い。
【0022】
気密封止を得ることができないことは、コア採取されている材料の性質に関係があり得るので、低い信頼性は、特に問題がある。砂泥試料は、不十分な封止を一層有しがちである場合があり、また砂泥試料は、最もハイドレートに富んでいることが多い。したがって、加圧コアシステムは、低いハイドレート含有量を有する試料を優先的に回収するので、固有のバイアスを有する場合がある。
【0023】
本発明による方法およびシステムは、ハイドレートをそのままの状態で水上船舶に試料を回収することを目的としていない。対照的に、その目的は、コアが依然として水柱内のいくらかの深さにありながら、コア試料内のハイドレートが完全に解離できるようになることである。しかしながら、ハイドレートが解離するので、発生ガスのすべては、コアから放出されるメタンの全体積が知られように捕集されかつ/または測定され、したがって、コアの初期メタン含有量が知られる。深部の水の中のメタンの溶解度についてのこの情報および知識から、コアのハイドレート含有量は確実に算定され得る。
【0024】
図1は、本発明によるコアサンプリング装置1を示しており、その装置1は、装置1が水底3を横切って任意の方向に移動できるようになる可動脚部1Bに取り付けられるフレーム1Aを備えている。フレーム1Aは、いくつかの管から成るコアサンプリングチャンバ4の束を担持し、このいくつかの管は、それぞれ、水底3から採取される1つのコア試料5を容易に含むのに十分に大きい。管は、通常、約10cmの直径、および1mから2mの長さを有するPVC管であることができる。
【0025】
図1は、コアサンプリングチャンバ4がカルーセル組立体8に束として固定されることを示しており、これは、フレーム1Aに回転可能に取り付けられる。
【0026】
図1は、フレーム1Aが、国際公開第2009/089528号によって知られているBenthic Geotech PROD掘削装置などの、従来の海底掘削装置9を担持し、これは、水底3から、ハイドレートを含有するいくつかのコア試料5を捕集し、コアサンプリングチャンバ4の中に捕集された試料を挿入し、これは、回転可能なカルーセル組立体8によって支持されることを示している。
【0027】
コアサンプリング装置1が水底3にとどまっている間に、コア試料5で充満されたガス捕集チャンバ4の束は、カルーセル組立体8から取り外される。この種の操作タスクは、たとえばワーククラスROV(遠隔操作車両(Remote Operated Vehicle))を用いると困難ではないはずである。この移送ステップが全く回避されるように、カルーセル組立体8を有する底部が開いたコアサンプリングチャンバ4を一体化することが可能な場合がある。
【0028】
図2から図4により詳細に示されるように、コアサンプリングチャンバ4は、底部で開いており頂部で閉鎖された管であり、各管の閉鎖された頂部4Aは、可撓性気密導管6に連なる穴9を備えており、これは、その上端で、水上船舶(図示せず)のところのメタン感知組立体に連結される。
【0029】
図2および図3は、コアサンプリング装置1から取り外された後に、コアサンプリングチャンバ4の束が、水上船舶(図示せず)のウィンチに連結される巻き上げケーブル10などによって、100mから400mの水深のような、ガスハイドレート安定ゾーンの基部(Base of the Gas Hydrate stability Zone(BGHZ))より下の水深まで持ち上げられ、各コアサンプリングチャンバ4は単一のコア試料5を備えることを示している。これらの変化した周囲条件の下で、コア試料5内のハイドレートは、解離し始め、メタン(CH)ガス11および淡水を放出する。放出されたメタン(CH)ガス11は、浮力によってコアサンプリングチャンバ4内を上昇し、穴5を介して可撓性導管6の中に離脱する。チャンバ4を離脱すると、メタン(CH)は、導管6内で浮遊的に上昇し、図3の矢印で示されるように、測定および分析のためにメタン感知装置(図示せず)まで浮上する。
【0030】
図4は、すべてのハイドレートがコア試料9から解離した後に(これは、おそらく、底部が開いたチャンバ4の頂部でのメタン捕集の停止によって明らかであろう)、ガス捕集チャンバ4の束は、水上船舶に回収されることができ、その場合、コア試料は、チャンバ4から取り外されることができ、チャンバ4内の残っている堆積物および水は、もっと後の分析のために回収され得ることを示している。
【0031】
本発明による方法およびシステムが水底の回収可能なハイドレート堆積物を確認した場合には、次いで、コア試料が採取されている現場に、生産システムが設置されることができ、その生産システムは、水底からメタンハイドレート、堆積物および海水のスラリーを掘削することができ、これは、水面の生産プラットフォームまで立ち上がり管を通して掘削されたスラリーをポンプで汲み上げ、そしてそこでメタンは、スラリーから分離され、市場に運び出され得る。図5は、気水分離タンク20を備える随意の水上船舶の上甲板の装置を示しており、この気水分離タンク20は、図3に示される導管6の上端に、およびまた排水導管21に、およびガス琲出導管22に連結される。
【0032】
排水導管21は、水ポンプ23を備え、この水ポンプ23は、捕集された水を水処理タンクの中に、または随意の掃除の後に水域24の中にポンプで注入する。
【0033】
別個の水分離タンク20が、可撓性のガス/水導管6のそれぞれに、およびしたがって底部が開いたスチール試料貯蔵チャンバ4のそれぞれに連結され得る。このような場合には、各導管6は、初めは水で充満される別個の気−液分離タンク20に入る。このタンク20は、目盛を付したガラス側窓、またはタンク20内の水のレベルを容易に確認するいくつかの他の手段を有することができる。タンク20の底部に、貯蔵タンクから徐々に海水を引き出す水ポンプ23が連結され、その結果、水が、可撓性のガス/水導管6を介して試料貯蔵チャンバ4から引き出されるようになっている。水ポンプ23を通過する水は、清浄にされ、次いで海の中に排出され、または(たとえば、ハイドレート解離による淡水化の証明のために塩分濃度についての)もっと後の分析のために貯蔵される。
【0034】
ハイドレートが解離し、底部が開いた試料貯蔵チャンバ4の頂部にガスが入るので、ガスおよび水の混合物は、可撓性の水/ガス導管6を上り、気水分離タンク20に入る。タンク20に入ると、混合物の気体状部分は、タンク20の頂部まで上昇し、水部分は、既に貯蔵タンク20内の水と混合する。したがって、コア試料チャンバ4から放出されるすべてのメタンガス(CH)が、貯蔵タンク20に捕集される。ガスの体積は、容易に測定され、別個の貯蔵および/または分析(たとえば、組成についての)のために貯蔵タンク20の頂部から引き出され得る。
【0035】
本発明による方法は、いくつかの他の実施形態に適用されることができ、たとえば、
A)解離中に水上船舶までガスを回収する可撓性導管6を排除するが、その代わりとして単に、発生ガスのすべてを貯蔵するのに十分に大きい底部が開いた試料捕集チャンバ4をつくること。底部が開いた試料捕集チャンバ4のガスの量は、たとえば、ガスを含む部分の高さを評価するように底部が開いた管内に音響測深器などの音響装置を用いて、回収の前に底部が開いた管の水レベルを観察することによって、確実に評価され得る。
B)ガスが、試料捕集チャンバ4の頂部のオリフィスを通して放出されるガスの体積および組成を計量する計量装置を介して、底部が開いた試料捕集チャンバ4の頂部から漏出できるようになること。計量装置は、有効なデータ転送ケーブルを介して船舶に連結されることもでき、または計量装置には、無線計測データ送信システム、もしくはその後になってデータの検索のために取り付けられる記録装置が装着されることもできる。後者の場合には、記録装置は、所与の量のガスの体積が圧力に依存するので、圧力に対する計量体積を記録する必要があることになる。また、通常の調査環境の下で、調査機器の水深よりも下方の深さはタイムログされ、したがって、時間から水深したがって圧力への変換が可能であるので、計量された量についてのタイムシグネチャ(time−signature)は、この目的に役に立ち得る。
C)水中の充満されたコア管の操作が困難であると分かった場合には、これは掘削ストリングから取り外されるので、コア管を気密にするように気密封止のシステムを使用することができる場合がある。BGHZよりも上方に掘削リグを引き揚げた後に、ガスハイドレートは、解離し始め、追い払われているガスは、ガスラインを介して捕集され(船舶に送られ、または掘削リグに貯蔵され)、または上で説明したように計量されることもできる。
【0036】
封止の気密性は、米国特許第6,659,204号明細書によって知られている加圧式コア採取技術で実現されるように、ガスハイドレートの保存に必要とされるのと同じ高い圧力まで評価される必要はないことになるが、実質的に封止される試料貯蔵チャンバにコア試料を貯蔵し、減圧することができる。
【0037】
図6から図9は、いかにコア試料が、実質的に封止された試料貯蔵チャンバに貯蔵され、減圧されるかを示している。
【0038】
図6では、矢印60は、コア試料5が、いかに(図1に示されるように)コアサンプリング装置1の掘削パイプ61から引き揚げられ、次いで、スチールコア試料保持管62の中に挿入されるかを示しており、この保持管62には、その下端にコアキャッチャ63が備え付けられる。
【0039】
図7では、矢印64は、コア試料保持管62が、いかに(図1に示されるように)カルーセル組立体8の圧力封止装置の枢動ジョー65、66の中に移動されるかを示している。
【0040】
図8は、エラストマー封止部72、73がコア試料保持管62の上端および下端に押し付けられるように、ジョー65、66が、いかにピボット70、71を中心に枢動されるかを示している。上方のジョー65は、可撓性ガス放出導管76に連結される開口75を備える。
【0041】
図9は、コア試料5が、いかにBHGZよりも浅い水深まで封止されたコア試料管62を持ち上げることによって減圧されるかを示しており、ここに、減圧は、ガス放出導管76の可撓性壁によって実現され、これは、コア試料5の細孔内の流体圧力が周囲の海水77の周囲圧力に実質的に等しいように導管76の外部と内部との間で均圧膜として働き、その圧力は、BHGZよりも浅い水深で、コア試料7内の任意のメタンハイドレートが水およびメタン(CH)の中に解離し、任意のメタンが、コア試料5を通しておよびそれに沿って上昇し、矢印78で示されるように、導管76の中に流れる。コア試料5によって放出されるメタン78のフラックスは、上方のジョー65の開口75に隣接して取り付けられるメタンフラックスメータ79によって計量され得る。メタン78の放出されるフラックスは、海水77の中に放出され、またはさらなる分析のために図5に示されるガス貯蔵タンクに貯蔵され得る。図1から図4に示される開いた底部を有するコア試料管4と比較して、図5から図9に示される封止されたコア試料保持管組立体の利点は、コア試料5内の底質のいかなる分解された部分も、図5から図9に示される封止されたコア試料保持管62によって形成されるコア試料保持チャンバの開いた底部から落下しないので、コア試料5は、コア試料研究実験室でのさらなる分析のために、より良好にそのまま残っていることが理解されよう。
【0042】
要約すると、本発明による方法およびシステムは、コア試料がサンプリング深さからガスハイドレート安定ゾーンの基部(Base of the Gas Hydrate stability Zone(BGHZ)より上方のレベルまで水柱において持ち上げられるので、それによって、コア試料のメタン含有量がガスハイドレートを含むコア試料によって放出されるガスの体積を測定することによって評価される手段を提供する。
【0043】
本発明によるシステムで使用されるコア試料貯蔵チャンバは、コア試料およびコア試料から放出されるガスを含む底部が開いた管を備えることが好ましい。
【0044】
このように放出されるガスは、底部が開いた管から、放出される発生ガスの体積が測定される水上船舶まで持ち上げられ得る。
【0045】
あるいは、発生ガスは、ガス計量システムを介して底部が開いた管の頂部から漏出できるようになることができ、それによって放出されたガスの体積を測定する。
【0046】
あるいは、放出されたガスは、底部が開いた管の頂部に捕捉されることができ、ガス柱の高さが測定されることができ、それによって放出されたガスの体積を測定する。
【0047】
ガス捕集装置は、海底掘削およびコア採取装置の一体的部分であることができ、それによってコアマガジンからガス捕集装置までのコアの移送の必要を回避し、そこでは、気密封止が、海底掘削リグの貯蔵カルーセル内のコア管の周りに作り出され、それによってカルーセル内の底部が開いた管の中にコアの移送の必要を回避する。
【0048】
本発明による方法は、海洋、海、峡湾、湖、または川などの任意の水域の任意の水深の大きい領域に適用されることができ、深海および/または海底についての参照は任意の水域および/または任意の水域の底部に適用されることが読み取られるべきであることが理解されよう。
【0049】
要約すると、底質(3)を含む水中メタンハイドレートのメタン含有量は、
底質(3)からコア試料(5)を採取するステップと、
貯蔵チャンバ(4)内にコア試料(5)を貯蔵するステップと、
コア試料(5)内のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する所定の水深(BGHZ=Base of Gas Hydrate stability Zone(ガスハイドレート安定ゾーンの基部)と呼ばれる)まで貯蔵チャンバ(4)を持ち上げるステップと、
持ち上げられたコア試料(5)によって放出されるメタンの量を測定するステップと、によって本発明により決定され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底質試料のメタン含有量を決定する方法であって、
水底の堆積物からコア試料を採取するステップと、
貯蔵チャンバにコア試料を貯蔵するステップと、
コア試料内の任意のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する周囲圧力において所定の水深まで貯蔵チャンバおよびコア試料を持ち上げるステップと、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を測定するステップと、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を基礎として底質のメタン含有量を決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
底質は、メタンハイドレート結晶が依然として安定である水深の大きい領域に位置し、貯蔵チャンバは、周囲圧力がコア試料内の任意のメタンハイドレート結晶のメタンハイドレート解離圧力よりも低い水深まで水底から持ち上げられ、それによって、メタンおよび水の中に解離するように、持ち上げられたコア試料内の任意のメタンハイドレートを誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コア試料によって放出されるメタンの量が、水上に浮く船舶に配置される貯蔵チャンバに導管によって連結されるメタン感知装置によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
貯蔵チャンバは、放出されたメタンがメタン感知装置の中に導管を介して浸透するのを誘導するように、導管によって貫入される、開いた底部および封止された頂部を有する管である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コア試料が、水中コア掘削機によって採取される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水中コア掘削機が、底部をそれ自体移動することができる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水中コア機が、脚部、ホイールおよび/またはキャタピラ機構に取り付けられるフレームと、コア試料貯蔵チャンバの中に各コア試料を移動させるように構成される垂直コア掘削装置とを備え、このコア試料貯蔵チャンバが、フレームに回転可能かつ取り外し可能なカルーセル組立体として取り付けられるコア試料貯蔵チャンバの束の一部を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コア試料貯蔵チャンバの束が、水上船舶から懸架される巻き上げラインに固定される可撓性導管の束に連結される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水深が、400メートルよりも大きく、コア試料チャンバの束は、周囲の水圧がコア試料内の任意のメタンハイドレート結晶のメタンハイドレート解離圧力よりも低いハイドレート安定ゾーンよりも上方の水深まで巻き上げラインによって持ち上げられ、そのゾーンは、水深400メートルよりも小さいところに位置する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
底質試料が底質内のメタンハイドレートの回収可能な量を確認した場合に、メタンハイドレートがその後に底質から掘削されると、掘削されたメタンハイドレートが、メタンを解離し放出するようにメタンハイドレートを誘導するように、減圧されかつ/または加熱される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
産出されたメタンが、パイプライン化可能な天然ガス、液体天然ガス(Liquid Natural Gas(LNG))、および/またはガス−ツー−リキッド(Gas To Liquid(GTL))生成物などの商品に変換される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
底質試料のメタン含有量を決定するためのシステムであって、
水底の堆積物からコア試料を採取するためのコアサンプリング装置と、
コア試料を貯蔵するための貯蔵チャンバと、
コア試料内の任意のメタンハイドレート結晶が水およびメタンの中に解離する周囲圧力において所定の水深まで貯蔵チャンバおよびコア試料を持ち上げるための手段と、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を測定するためのメタン感知装置と、
持ち上げられたコア試料によって放出されるメタンの量を基礎として底質のメタン含有量を決定するための手段と、を備えるシステム。
【請求項13】
コアサンプリング装置が、
脚部、ホイール、および/または水域の底部を任意の所望の方向にフレームを移動させるように構成されるキャタピラ機構に取り付けられるフレームと、
コア試料貯蔵チャンバの中に各コア試料を移動させるように構成される垂直コア掘削装置であり、このコア試料貯蔵チャンバが装置を取り囲む流体の周囲圧力に実質的に等しい圧力でコア試料を貯蔵するように構成され、かつフレームに回転可能かつ取り外し可能なカルーセル組立体として取り付けられるコア試料貯蔵チャンバの束の一部を形成する、垂直コア掘削装置とを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
コア試料貯蔵チャンバの束が、水上船舶から懸架される巻き上げラインに固定される可撓性導管の束に連結される、請求項13に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−514470(P2013−514470A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543558(P2012−543558)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067439
【国際公開番号】WO2011/082870
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)