説明

座式作業用下肢補助装置

【課題】座って作業をする作業者が別途の椅子を使用しないでも、しゃがんだ時に脚と膝に加わる荷重を分散および吸収し、脚の疲労を低減させるとともに、座った姿勢で腰を真っ直ぐに伸ばして作業をしやすくし、移動の際にも煩わしさが無いようにした座式作業用下肢補助装置を提供すること。
【解決手段】ふくら脛Aの内側に密着するように形成された背面曲面部1と、ふくら脛Aと太股Bとが折り合わさる部分に挟まれるように本体の裏面に傾斜して形成された支持部1とを有する本体3と、本体3をふくら脛Aに着脱できるように本体3に設けられた締結手段6,7と、支持部2にヒンジ手段8〜10で結合され、太股Bに密着するように回動可能に構成された密着プレート10と、本体3と密着プレート10との間に設けられ、密着プレート10を押し上げる弾性力を発揮するように構成された弾性手段12〜16と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座式作業用下肢補助装置に関し、詳しくは、例えば、農村で水田の仕事や畑仕事をするために座って作業をしたり、溶接作業のように座って作業をする際などに、ふくら脛と臀部を支持し、脚に無理を与えず、しかも、腰を楽にすることができるようにした座式作業用下肢補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、農村で畑仕事や水田の仕事をしたり、または溶接等のような作業をするときには、作業をする人はしゃがんで長時間作業をしなければならないため、作業が大変困難で、脚が痙攣したり、脚や膝が大変痛むことがある。
【0003】
すなわち、しゃがんで仕事をすると、体重が脚に集中するとともに、膝に集中することにより、血液の循環が悪くなるなどの問題により、脚が痺れやすくなったり、膝が痛くなったりする。
【0004】
そこで、しゃがんで仕事をする人たちは、別途用意した小さな椅子に座って仕事をするようになるが、この場合には、椅子を持って移動するのが不便であるため、前記の小さな椅子を紐などで太股に縛って移動の不便さを相殺するようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように、しゃがんだ状態で作業をするようになると、膝と脚全体に大きな負荷が掛かることにより、脚が疲れやすく、小さな椅子に座って作業をすると、椅子に座った作業者の体重が後にいくため、体を前に傾けて作業をしなければならない人たちの作業が不便になり、作業疲労度が荷重する。
【0006】
また、椅子を太股に縛った状態で立ち上がって移動するようになると、姿勢がひどく不便になり、そのため作業能率が非常に低下するという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、座って作業をする作業者が別途の椅子を使用しなくとも、しゃがんだ時に脚と膝に加わる荷重を分散及び吸収し、脚の疲労を低減させることができるとともに、座った姿勢で腰を真っ直ぐに伸ばして作業をしやすくし、移動の際にも煩わしさが無いようにすることが可能な、新規かつ改良された座式作業用下肢補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ふくら脛の内側に密着するように形成された背面曲面部と、ふくら脛と太股とが折り合わさる部分に挟まれるように本体の裏面に傾斜して形成された支持部とを有する本体と;本体をふくら脛に着脱できるように本体に設けられた締結手段と;支持部にヒンジ手段で結合され、太股に密着するように回動可能に構成された密着プレートと;本体と密着プレートとの間に設けられ、密着プレートを押し上げる弾性力を発揮するように構成された弾性手段と;を備えることを特徴とする、座式作業用下肢補助装置が提供される。
【0009】
また、上記締結手段は、本体の両側フランジ部分に形成された複数の締結孔と、一端が締結孔に固定され、他端に面ファスナーが取り付けられており、互いに結合可能な複数の結合バンドと、から構成されるようにしてもよい。
【0010】
また、上記ヒンジ手段は、支持部の上端に形成され、第1のヒンジ孔が形成された第1のヒンジ部と、密着プレートの一端に形成され、第2のヒンジ孔が形成された第2のヒンジ部と、第1及び第2のヒンジ部の第1及び第2のヒンジ孔を貫通し、本体と密着プレートとを回動自在に結合する回動軸と、から構成されるようにしてもよい。
【0011】
また、上記弾性手段は、本体における支持部とは他側に配設された第1の弾性体支持部と、密着プレートにおける第1の弾性体支持部に対応する位置に配設された第2の弾性体支持部と、両端が第1及び第2の弾性体支持部にそれぞれ挿入され、密着プレートを本体から離隔させる向きに弾性力を与える弾性体と、第1及び第2の弾性体支持部の側面に形成された貫通孔を貫通して、弾性体の両端を第1及び第2の弾性体支持部にそれぞれ固定する固定ピンと、から構成されるようにしてもよい。
【0012】
また、上記密着プレートの上面には、所定の弾性を有する材質からなる弾性パッドが付着されるようにしてもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、少なくとも足首部分を収納可能に形成されるとともに、足首部分に固定するための固定バンドが設置され、着用した際に地面に下部が密着する下部ベースと;下部ベースの上部に回動可能に結合されるとともに、ふくら脛の内側を支持するように形成された第1のプレートと;一端が第1のプレートにヒンジ軸により結合され、太股及び臀部を支持するように形成された第2のプレートと;下部ベースと第2のプレートとの間に設けられ、第2のプレートが人の荷重により押圧されるとき、当該荷重を弾性的に支持するとともに下部ベースに当該荷重を伝えるように設けられた弾性手段と;から構成されることを特徴とする、座式作業用下肢補助装置が提供される。
【0014】
また、上記弾性手段は、下部ベースの背面に突設された1又は2以上のアームと、アームに固設されたピストン部材と、ピストン部材が挿入されるように形成され、上端が第2のプレートに支持されるシリンダ部材と、シリンダ部材内に挿入され、ピストン部材との間で弾性力を発生させる弾性体と、から構成されるようにしてもよい。
【0015】
また、上記第2のプレートとシリンダ部材とをヒンジで結合するようにしてもよい。
【0016】
また、上記下部ベースの底面に、使用者が着用後、足で踏むことができるように形成された底面部が設けられるようにしてもよい。
【0017】
また、上記ピストン部材と下部ベースとの間に設けられ、ピストン部材の高さ調節を可能にする高さ調節手段を含むようにしてもよい。
【0018】
また、上記高さ調節手段は、ピストン部材に所定間隔で複数形成された挿入孔と、挿入孔に対応するようにアームに形成された固定孔と、固定孔と挿入孔に挿入され、ピストン部材とアームとを固定する固定棒と、から構成されるようにしてもよい。
【0019】
また、上記ピストン部材の端部とシリンダ部材の端部に形成され、ピストン部材とシリンダ部材とが分離しないように相互に係止する係止突起を含むようにしてもよい。
【0020】
また、上記第2のプレートとシリンダ部材との間に形成され、第2のプレートを折り畳めるように構成された折り畳み手段を含むようにしてもよい。
【0021】
また、上記折り畳み手段は、シリンダ部材の上端に形成された挿入部と、第2のプレートの底面に形成され、挿入部が挿入される係止溝と、第2のプレートの底面に形成され、係止溝から離脱したシリンダ部材の移動を案内するガイド部と、から構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、座って作業をする作業者が別途の椅子を使用しなくとも、しゃがんだ時に脚と膝に加わる荷重を分散及び吸収し、脚の疲労を低減させることができるとともに、座った姿勢で腰を真っ直ぐに伸ばして作業をしやすくし、移動の際にも煩わしさが無いようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を示した分解斜視図と組み立て側面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置は、本装置を使用する作業者のふくら脛に取り付けられる本体3と、上記本体3をふくら脛に着脱できるように本体3に形成された締結手段と、本体3の支持部2にヒンジ手段で結合され、太股の下方部分(内側部分)に密着するように回動可能に構成された密着プレート4と、上記本体3と密着プレート4との間に設けられ、密着プレート4を押し上げる弾性力を付与するように構成された弾性手段と、からなる。本体3には、ふくら脛の内側に密着するように、弓なりに陥没形成された背面曲面部1が、本体3の長手方向に沿って形成されている。また、本体3の裏面(ふくら脛との密着面とは他側の面)の一側(膝側)には、ふくら脛と太股の折り合わさる部分に挟まれるように支持部2が傾斜して形成されており、この支持部2は、本体3の一端(膝側の端部)に向かって下るような傾斜形状で形成されている。
【0025】
上記締結手段は、本体3の両側フランジ部分に形成された複数の締結孔5と、一端が上記各締結孔5に挿入されて固定され、他端に面ファスナー(例えば、マジックテープ(登録商標))がそれぞれ取り付けられ、相互に結合可能な複数の結合バンド7とからなる。
【0026】
すなわち、上記本体3をふくら脛に密着させた状態で、結合バンド7をふくら脛に巻いて、端部の面ファスナー6を結合バンド7の所定位置に結合させることで、本体3をふくら脛に固定することができる。
【0027】
上記ヒンジ手段は、支持部2の上端に形成され、ヒンジ孔8(第1のヒンジ孔)が貫通形成された第1のヒンジ部9と、密着プレート4の一端に上記第1のヒンジ部9を両側から挟むように対となって形成され、ヒンジ孔8(第2のヒンジ孔)が貫通形成された第2のヒンジ部10と、上記第1及び第2のヒンジ部9,10のヒンジ孔8を貫通し、第1及び第2のヒンジ部9,10を回動自在に結合させる回動軸11と、からなる。
【0028】
また、上記弾性手段は、本体3において支持部2とは反対側の位置に形成された円筒形の第1の弾性体支持部12と、密着プレート4の底面において上記第1の弾性体支持部12と対応する位置に形成された第2の弾性体支持部13と、上記第1及び第2の弾性体支持部12,13に両端がそれぞれ挿入されることで本体3と密着プレート4との間に挟まれ、密着プレート4を本体3から離隔する方向に付勢する弾性力を発揮する弾性体、例えば、スプリング14と、上記スプリング14が第1及び第2の弾性体支持部12,13から外れないように、第1及び第2の弾性体支持部12,13の側面に形成された貫通孔15を貫通してスプリング14を固定する固定ピン16と、からなっている。
【0029】
すなわち、図3に示されたように、上記スプリング14の一端に固定ピン16が挟まれることにより、上記スプリング14が第1及び第2の弾性体支持部12,13から外れないようになる。スプリング14は例えばコイルスプリングであるが、その他の弾性体で代用することもできる。
【0030】
また、上記密着プレート4の上面(太股と密着する側の面)には、所定の弾性のある材質であるゴムなどからなる弾性パッド17が取り付けられている。
【0031】
特に、上記支持部2は、強度を維持しつつ、太股と部分的に密着したときに汗などが充満しないようにするため、リブ状に形成されている。
【0032】
また、上記本体3の先端、すなわち支持部2の前面部には、図4に示されたように、本体の内側に向かって略弧状に切り欠かれた湾曲切り欠き18が形成されており、この湾曲切り欠き18によって、作業者が膝を曲げてふくら脛と太股とが接触するときに、本体3の先端が膝の内側部分を押さないようにできる。
【0033】
次に、図5を参照して、上記のような本実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置の作用効果を説明する。水田の仕事、畑仕事、溶接などのような作業をする作業者が座った姿勢での仕事をするために、本実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を作業者の下肢に装着する。まず、ふくら脛Aに本体3の背面曲面部1を密着させるとともに、結合バンド7でふくら脛Aを巻きながら面ファスナー6を結合させ、本体3をふくら脛Aに固定させる。
【0034】
本体3をふくら脛Aに固定させた状態では密着プレート4がスプリング14の弾性により最も高く位置された状態であるため、この状態で作業者が膝を曲げてしゃがむと、本体3はふくら脛Aに結合バンド7で固定されており、密着プレート4は太股Bの下部分に密着した状態になる。
【0035】
この状態では、太股Bが密着プレート4を押している状態であるため、上記密着プレート4が押されるとスプリング14が圧縮して弾性力を発揮して、太股Bを支えるようになる。
【0036】
スプリング14が所定の弾性力で太股Bを支えるようになると、結果的に太股Bが持ち上げられる状態になるので、作業者の体重がスプリング14によって緩衝及び吸収される状態になる。
【0037】
また、上記スプリング14の弾性力によって太股Bが持ち上げられれば、作業者が腰を伸ばした状態で座っていられるようになるため、とても楽な姿勢で作業をすることができるようになる。
【0038】
このとき、上記本体3の支持部2は、太股Bとふくら脛Aの折り合わさる部分に位置するが、支持部2がリブ状に形成されているため、太股Bが密着した支持部2の部分で空気が循環され易いので、当該部分に汗が溜まるのを防止できるようになり、より一層すっきりとした感じで作業をするようになる。
【0039】
座った姿勢で作業をした後、別の場所で作業をするため立ち上がると、本体3がふくら脛Aに装着された状態であるため、普段歩くのと同様に歩いて移動できるようになる。
【0040】
(第2の実施の形態)
上記のような第1の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を改良し、より便利に座っての作業ができるように構成した第2の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を図6〜図9に示す。
【0041】
図6〜図9に示すように、第2の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置は、下部ベース105と、第1のプレート108と、第2のプレート111と、弾性手段とを備えている。
【0042】
下部ベース105は、靴Cと足首部分を収納するように形成されるとともに、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナー101が設置された固定バンド102を結合又は分離できるように結合孔103が形成されたバンド結合部104が突設されている。固定バンド102は、下部ベース105を作業者の靴と足首に固定させるためのものであり、例えば、ゴム製のバンドである。
【0043】
第1のプレート108は、ふくら脛の内側面を支持するように緩慢な曲面で形成されており、下部ベース105の上部に対して、リンク部材106及びヒンジ107を介して、回動可能に結合される。第2のプレート111は、太股B及び臀部の底面を支持するように形成され、弾性パッド110が設けられている。この第2のプレート111は、その一側が上記第1のプレート108とヒンジ軸109で結合されている。
【0044】
弾性手段は、上記下部ベース105と第2のプレート111との間に設けられ、第2のプレート111が人の荷重により押されると、弾性力によりこれを支持するとともに、下部ベース105に荷重を伝達して地面に分散及び吸収させるように設けられる。
【0045】
上記弾性手段は、図7及び図9に示されたように、下部ベース105の背面に突設され、上下に配置された2つのアーム112と、上記アーム112に固設されたピストン部材113と、上記ピストン部材113が挿入されるように構成され、その上端が上記第2のプレート111の他側に支持されているシリンダ部材114と、上記シリンダ部材114内に挿入されピストン部材113との間で弾性力を発揮する弾性体、例えば、スプリング115と、からなっている。
【0046】
すなわち、上記第2のプレート111が使用者の体重によって押されると、スプリング115が圧縮しながら衝撃及び荷重を緩衝するとともに、荷重がピストン部材113とアーム112を介して下部ベース105に伝わるようにすることで、地面と密着されている下部ベース105を介して荷重が地面に分散及び吸収されるようにするものである。
【0047】
使用者の体重が下部ベース105を介して地面に分散及び吸収されれば、実質的に使用者の脚を支持する第1及び第2のプレート108,111にかかる荷重が小さくなるため、使用者のふくら脛などに過度に多く荷重がかかることを防止し、より楽に座って作業ができるようにできる。
【0048】
ここで、上記下部ベース105の底面には、図8に示すように、使用者が着用した後に足で踏むことができるように底面部116が形成されているため、上記底面部116を足で踏んだ状態で座ると、下肢補助装置全体が足によって固定されることで、より安定的に使用者を支持できるようになる。
【0049】
また、上記ピストン部材113と下部ベース105の間には、使用者が座る第2のプレート111の高低の調節が可能なように、高さ調節手段が設けられている。この高さ調節手段は、図6に示すように、ピストン部材113に一定間隔で複数形成された挿入孔117と、上記挿入孔117に対応するように、下部ベース105のアーム112に形成された固定孔118と、上記固定孔118と挿入孔117に挿入され、ピストン部材113とアーム112とを所望の相対位置で固定する固定棒119と、からなっている。
【0050】
上記固定棒119は、例えば“⊃”字状又は“コ”の字形に形成され、2つの固定孔118に同時に挿入できるようになっているので、固定力を一層向上させることができる。
【0051】
また、図9に示すように、上記ピストン部材113の終端(上端)とシリンダ部材114の終端(下端)には、ピストン部材113とシリンダ部材114とが互いに係止するように係止突起120が形成されている。このため、上記係止突起120が係止した状態では、スプリング115の弾性力によりピストン部材113とシリンダ部材114とが容易に分離しないようになる。
【0052】
ここで、上記第2のプレート111とシリンダ部材114との間には、図9と図10に示されたように、第2のプレート111を折り畳むことができるように折り畳み手段が設けられている。この折り畳み手段は、使用者が座って仕事をしてから立ち上がった際に、第2のプレート111が折り畳まれ、移動がしやすいようにしたものである。
【0053】
上記の折り畳み手段は、上記シリンダ部材114の上端に突設された挿入部121と、この挿入部121が挿入されて比較的浅く結合するように、第2のプレート111底面に形成された係止溝122と、第2のプレート111底面に形成され、上記係止溝122から離脱したシリンダ部材114が支持されながら移動自在となるように挿入部121を案内するガイド部123と、からなっている。
【0054】
すなわち、上記第2のプレート111がヒンジ軸109を中心に折り畳み方向(図10における時計回りとは逆方向)に回転するようになると、シリンダ部材114がガイド部123に沿って移動するようになることで、図10のように折り畳まれる。
【0055】
勿論、上記第2のプレート111とシリンダ部材114とを係止溝122でだけ結合させても折り畳めるが、シリンダ部材114が第2のプレート111の左右両方に外れる恐れがあるので、上述したガイド部123を設けることが好ましい。
【0056】
このような第2の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置の動作及び作用効果を説明すると、水田の仕事、畑仕事、溶接などのように、座って作業をする作業者が仕事をするためには、まず、第2のプレート111を開きながら、シリンダ部材114を第2のプレート111の係止溝122に係止するように調節する。
【0057】
この状態で、下部ベース105を足のかかとに位置させ、下部ベース105の底面部116を足で踏んだ後、上記固定バンド102を足首に巻き、固定バンド102の両端に設置された面ファスナー101を付着させて、下部ベース105を足首に固定する。
【0058】
固定バンド102により下部ベース105を足首に固定すると、図7に示されたように、作業者が第2のプレート111に座るようになるが、この状態では第2のプレート111は太股Bの下に位置しており、第1のプレート108はふくら脛Aの背面に位置されるようになる。
【0059】
上記のように、第1及び第2のプレート108,111がふくら脛Aと太股Bとの間に位置すると、座った姿勢での脚を支持する形態を成すようになり、第2のプレート111の底面下部に位置したシリンダ部材114がスプリング115により弾性支持されているため、作業者が楽に座って作業ができるというわけである。
【0060】
すなわち、作業者の荷重は、第2のプレート111からシリンダ部材114に伝達されるとともに、スプリング115によって緩衝され、再びピストン部材113とアーム112を介して下部ベース105に伝達されることにより、地面に接触している下部ベース105が作業者の荷重を支持することになる。
【0061】
地面に作業者の荷重が伝達及び吸収されると、実質的に作業者の脚にかかる荷重が急激に減少されるため、作業者が座って作業をしても、脚が痺れたり痛くなったりすることを大幅に緩和させることができるようになる。
【0062】
ここで、上記の作業者の座ったときの身長が高い又は低い場合には、上記第2のプレート111の高さを調節するため、上記固定棒119を外した後、ピストン部材113を下部ベース105のアーム112に対して上方または下方に移動させて高さ調整した後に、ピストン部材113の挿入孔117とアーム112の固定孔118に固定棒119を挿入して、固定する。これにより、第2のプレート111の高さ調節がなされるようになり、作業者の身体に合わせて適切に高さ調節して使用できるようになる。
【0063】
また、上記のように、作業者が座って作業をした後、移動するため立ち上がろうとすると、第1のプレート108が起立側(図10の左側)に押されて、第2のプレート111を折り畳み方向(図10における時計回りとは逆方向)に回転させるようになるので、座式作業用下肢補助装置がふくら脛以下の脚に密着して、移動が容易になる。
【0064】
すなわち、第1のプレート108が左側に押されると、第2のプレート111の底面の係止溝122からシリンダ部材114が離脱して、第2のプレート111はヒンジ軸109を中心に折り畳み方向に回転するようになることで、第1のプレート108と第2のプレート111とが折り畳まれた状態になる。
【0065】
このとき、上記シリンダ部材114とピストン部材113は、係止突起120により係止されるため、スプリング115の弾性力によっても分離しないようになる。
【0066】
ここで、変更例として、図11に示すように、上記第2のプレート111とシリンダ部材114とをヒンジHで結合してもよい。この場合には、第2のプレート111がシリンダ部材114に固定された状態となるため、作業者がより一層安定して第2のプレート111に座ることができるようになり、ある程度第2のプレート111を折り畳むことも可能になる。
【0067】
以上説明したように、本発明の第1及び第2の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置では、長時間座って作業をする人が、上記本体3又は第1のプレート108をふくら脛Aに密着させて座るとき、密着プレート4又は第2のプレート111により太股Bを弾性的に支持し、脚と膝に荷重が集中しないようにするとともに、スプリング14,115の弾性力で体を支える。これにより、座って作業をする作業者が別途の椅子を使用しなくとも、しゃがんだ時に脚と膝に加わる荷重を分散及び吸収し、脚の疲労を低減させることができるとともに、座った姿勢で腰を真っ直ぐに伸ばして作業をしやすくし、移動の際にも煩わしさが無いようにすることができ、座って行う作業が非常に容易になるという長所がある。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を示す分解斜視図である。
【図2】同実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置の組み立て側面図である。
【図3】図2におけるスプリング支持部の拡大断面図である。
【図4】同実施形態にかかる背面曲面部が見えるように本体を裏返して示した底面図である。
【図5】同実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を装着し、作業をする状態を示した概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置を示す分解斜視図である。
【図7】同実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置の組み立て側面図であって、作業者が座った状態を示した側面図である。
【図8】同実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置の組み立て底面斜視図である。
【図9】図7の部分断面図である。
【図10】同実施形態にかかる座式作業用下肢補助装置が折り畳まれた状態を示した側面図である。
【図11】同実施形態の変更例にかかる第2のプレートとシリンダ部材とをヒンジで結合した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 背面曲面部
2 支持部
3 本体
4 密着プレート
5 締結孔
6 面ファスナー
7 結合バンド
8 ヒンジ孔
9 第1のヒンジ部
10 第2のヒンジ部
11 回動軸
12 第1の弾性体支持部
13 第2の弾性体支持部
14 スプリング
15 貫通孔
16 固定ピン
17 弾性パッド
18 湾曲切り欠き
101 面ファスナー
102 固定バンド
103 結合孔
104 バンド結合部
105 下部ベース
106 リンク部材
107 ヒンジ
108 第1のプレート
109 ヒンジ軸
110 弾性パッド
111 第2のプレート
112 アーム
113 ピストン部材
114 シリンダ部材
115 スプリング
116 底面部
117 挿入孔
118 固定孔
119 固定棒
120 係止突起
121 挿入部
122 係止溝
123 ガイド部
A ふくら脛
B 太股
C 靴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふくら脛の内側に密着するように形成された背面曲面部と、ふくら脛と太股とが折り合わさる部分に挟まれるように本体の裏面に傾斜して形成された支持部とを有する本体と;
前記本体をふくら脛に着脱できるように前記本体に設けられた締結手段と;
前記支持部にヒンジ手段で結合され、太股に密着するように回動可能に構成された密着プレートと;
前記本体と前記密着プレートとの間に設けられ、前記密着プレートを押し上げる弾性力を発揮するように構成された弾性手段と;
を備えることを特徴とする、座式作業用下肢補助装置。
【請求項2】
前記締結手段は、
前記本体の両側フランジ部分に形成された複数の締結孔と、
一端が前記締結孔に固定され、他端に面ファスナーが取り付けられており、互いに結合可能な複数の結合バンドと、
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項3】
前記ヒンジ手段は、
前記支持部の上端に形成され、第1のヒンジ孔が形成された第1のヒンジ部と、
前記密着プレートの一端に形成され、第2のヒンジ孔が形成された第2のヒンジ部と、
前記第1及び第2のヒンジ部の前記第1及び第2のヒンジ孔を貫通し、前記本体と前記密着プレートとを回動自在に結合する回動軸と、
から構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項4】
前記弾性手段は、
前記本体における前記支持部とは他側に配設された第1の弾性体支持部と、
前記密着プレートにおける前記第1の弾性体支持部に対応する位置に配設された第2の弾性体支持部と、
両端が前記第1及び第2の弾性体支持部にそれぞれ挿入され、前記密着プレートを前記本体から離隔させる向きに弾性力を与える弾性体と、
前記第1及び第2の弾性体支持部の側面に形成された貫通孔を貫通して、前記弾性体の両端を前記第1及び第2の弾性体支持部にそれぞれ固定する固定ピンと、
から構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項5】
前記密着プレートの上面には、所定の弾性を有する材質からなる弾性パッドが付着されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項6】
少なくとも足首部分を収納可能に形成されるとともに、足首部分に固定するための固定バンドが設置され、着用した際に地面に下部が密着する下部ベースと;
前記下部ベースの上部に回動可能に結合されるとともに、ふくら脛の内側を支持するように形成された第1のプレートと;
一端が前記第1のプレートにヒンジ軸により結合され、太股及び臀部を支持するように形成された第2のプレートと;
前記下部ベースと前記第2のプレートとの間に設けられ、前記第2のプレートが人の荷重により押圧されるとき、当該荷重を弾性的に支持するとともに前記下部ベースに当該荷重を伝えるように設けられた弾性手段と;
から構成されることを特徴とする、座式作業用下肢補助装置。
【請求項7】
前記弾性手段は、
前記下部ベースの背面に突設された1又は2以上のアームと、
前記アームに固設されたピストン部材と、
前記ピストン部材が挿入されるように形成され、上端が前記第2のプレートに支持されるシリンダ部材と、
前記シリンダ部材内に挿入され、前記ピストン部材との間で弾性力を発生させる弾性体と、
から構成されることを特徴とする、請求項6に記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項8】
前記第2のプレートと前記シリンダ部材とをヒンジで結合することを特徴とする、請求項7に記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項9】
前記下部ベースの底面に、使用者が着用後、足で踏むことができるように形成された底面部が設けられたことを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項10】
前記ピストン部材と前記下部ベースとの間に設けられ、前記ピストン部材の高さ調節を可能にする高さ調節手段を含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項11】
前記高さ調節手段は、
前記ピストン部材に所定間隔で複数形成された挿入孔と、
前記挿入孔に対応するように前記アームに形成された固定孔と、
前記固定孔と前記挿入孔に挿入され、前記ピストン部材と前記アームとを固定する固定棒と、
から構成されることを特徴とする、請求項10に記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項12】
前記ピストン部材の端部と前記シリンダ部材の端部に形成され、前記ピストン部材とシリンダ部材とが分離しないように相互に係止する係止突起を含むことを特徴とする、請求項6〜11のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項13】
前記第2のプレートと前記シリンダ部材との間に形成され、前記第2のプレートを折り畳めるように構成された折り畳み手段を含むことを特徴とする、請求項6〜12のいずれかに記載の座式作業用下肢補助装置。
【請求項14】
前記折り畳み手段は、
前記シリンダ部材の上端に形成された挿入部と、
前記第2のプレートの底面に形成され、前記挿入部が挿入される係止溝と、
前記第2のプレートの底面に形成され、前記係止溝から離脱した前記シリンダ部材の移動を案内するガイド部と、
から構成されることを特徴とする、請求項13に記載の座式作業用下肢補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−105478(P2007−105478A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278142(P2006−278142)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(506342132)
【Fターム(参考)】