説明

廃ガラスを原料とする人工ゼオライトの製造方法

【課題】原料として廃ガラスびんカレット粉末を用い、簡易な工程で、かつ短時間で製造することのできる、人工ゼオライトの製造方法を提供する。
【解決手段】粒径0.15mmの粉末ガラスと水道水だけを出発原料として、水熱合成反応を行う。すなわち、(1)ソーダ石灰ガラスと水だけを原料とし、水熱合成することを特徴とする人工ゼオライト製造方法。(2)前記ソーダ石灰ガラスの粒径は0.15mm以下であることを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。(3)前記水熱合成の工程における加熱条件は、200℃以上300℃以下であり、加熱終了後は徐冷することを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。(4)前記水熱合成の工程における加圧条件は、1MPa以上20MPa以下であることを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソーダ石灰ガラスから簡易に人工ゼオライトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の有効利用として、近年、廃棄物を原料とする人工ゼオライト製造方法の開発が行われている。石炭灰から製造される人工ゼオライトにおいては実用化されており、溶融スラグからゼオライトを合成する方法も研究されている(逸見彰男著:無機系廃棄物の人工ゼオライト転換による有効利用)。
【0003】
溶融スラグを原料とする場合、ゼオライト化を阻害するCa分を多量に含む場合が多く、Ca分を除去した後にゼオライト化を行う製造方法が提案されている。
【0004】
特開08−259221では高炉水砕スラグを原料とし、Ca分を除去した後、ゼオライトを製造する方法が提案されている。それによれば、〈1〉スラグを1N以上の硫酸に溶解、〈2〉生成する石膏を分離、〈3〉ろ液をpH3未満に調整、〈4〉生成するシリカゲルをろ過して分離、〈5〉そのろ液をpH13以上に調整、〈6〉重金属等の沈殿物を分離、〈7〉そのろ液をpH4〜9に調整、〈8〉沈殿したアルミナを分離、〈9〉上記のシリカとアルミナにナトリウム分を調整し85〜150℃、6〜100時間の条件でゼオライトを水熱合成する。以上のような9工程を経てA型、またはX型のゼオライトを製造している。
【0005】
特開昭60−108357では溶鉱炉スラグを原料として、〈1〉粉砕したスラグを廃硫酸(他用途で使用したもの)にpH1.5前後で溶解、〈2〉生成した石膏をろ過、〈3〉ろ液に炭酸カルシウムを添加してpH3.2前後に調整、〈4〉得られた石膏とシリカゲルの沈殿物のうち、浮遊法によってシリカゲル沈殿を分離、〈5〉シリカゲルろ過後のろ液にシリカ対アルミナの比が0.1になるように可溶性シリカを添加、〈6〉炭酸カルシウムを添加してpH3.9に調整後、水酸化ナトリウムを添加してpH4.6に調整、〈7〉アルミナゲルと石膏の沈殿物をろ過、〈8〉浮遊法によりアルミナゲルと石膏を分離、〈9〉上記のシリカゲル、アルミナゲルを水酸化ナトリウムでpH10まで中和、〈10〉中和ゲル各々に一定量の水酸化ナトリウム溶液を添加し、アルミナゲルを溶解、〈11〉アルミナゲルを溶解した溶液の重金属等の不溶解物をろ別、〈12〉上記の二液を混合し、常温で一夜熟成、〈13〉85℃で2時間加熱して結晶化する。以上の13工程を経て高炉スラグからA型ゼオライトを製造している。
【0006】
特開昭58−120512では水砕スラグ粉末を原料として、〈1〉水砕スラグ粉末を無機酸水溶液(硫酸を除く)に溶解、〈2〉アンモニアガスを吹き込んでpHを4〜9に調整、〈3〉沈殿物(シリカ、アルミナが主成分、カルシウム分は濾液側)をろ別、〈4〉沈殿物にアルカリを添加して100〜150℃で5時間以上水熱合成する。以上の4工程を経てA型、またはP型のゼオライトを製造している。
【0007】
特開2006−232597では、溶融還元スラグを原料とし、重金属の含有量がきわめて少ない安全な人工ゼオライトを製造することができ、さらに溶融還元スラグの原料として、生活ごみ、下水汚泥、産業廃棄物を焼却して生じた焼却灰および飛灰を用いることができ、廃棄物の有効利用を図ることができる。簡易な工程で、かつ短時間で製造することのできる、溶融還元スラグからの人工ゼオライトの製造方法を提供することである。
【特許文献1】特開平08−259221号公報「高純度のゼオライトの製造方法」
【特許文献2】特開昭60−108357号公報「ゼオライトAの製造方法および得られた生成物」
【特許文献3】特開昭58−120512号公報「ゼオライト質組成物の製法」
【特許文献4】特開2006−232597号公報「溶融還元スラグからの人工ゼオライトの製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したようにCa分を含む溶融スラグを出発原料とする従来のゼオライト合成法は、ゼオライトの直接的な原料であるシリカ、アルミナをゼオライト化を阻害するCa分と分離するために多大な工程を必要としていた。また、溶融スラグを出発原料とする従来の水熱合成反応では、固体粉末と水酸化ナトリウム溶液との固液反応のため、ゼオライト化に5時間以上の長い時間を要していた。
【0009】
溶融還元スラグを原料とすれば、重金属の含有量がきわめて少ない安全な人工ゼオライトを製造することができ、さらに溶融還元スラグの原料として、生活ごみ、下水汚泥、産業廃棄物を焼却して生じた焼却灰および飛灰を用いることができ、廃棄物の有効利用を図ることができるが、薬品を使用する多数の工程を要していた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、原料として廃ガラスびんカレットと水だけを用い、簡易な工程で製造することのできる、ソーダ石灰ガラスからの人工ゼオライトの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は上記課題について検討した結果、粒径0.15mmの粉末ガラスと水道水のみを出発原料とした水熱合成反応を行うことによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下のとおりである。
(1)ソーダ石灰ガラスと水だけを原料とし、水熱合成することを特徴とする人工ゼオライト製造方法。
(2)前記ソーダ石灰ガラスの粒径は0.15mm以下であることを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。
(3)前記水熱合成の工程における加熱条件は、200℃以上300℃以下で加熱終了後は徐冷することを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。
(4)前記水熱合成の工程における加圧条件は、1MPa以上20MPa以下であることを特徴とする、(1)に記載の人工ゼオライト製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のソーダ石灰ガラスからの人工ゼオライトの製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、廃ガラスびん微粉末と水だけを原料として、人工ゼオライトを簡易な工程で製造することができ、また、6〜12時間の短い時間で水熱合成することができる。また、廃ガラスびんカレットをゼオライトの原料としているので、廃棄物の有効利用をはかれるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明では、一般家庭で排出される廃ガラスびんカレットを粒径0.15mm以下に粉砕したものと水道水を水熱合成することを主たる構成とする。これにより薬品を使用した処理工程を含まないので、簡便で短時間でゼオライトを合成することができる。
【0014】
より具体的には、〈1〉廃ガラスびんカレットを粒径0.15mm以下になるように粉砕。〈2〉粉砕したソーダ石灰ガラスに水道水を加え200℃以上に加熱し、5MPaの圧力を加えて水熱合成を行う。以上の2工程により非常に簡便に人工ゼオライトを製造することができる。
【0015】
なお、ここでいう廃ガラスびんカレットとは、Si分とAl分とNa分Ca分を含有した、ソーダ石灰ガラスのビンを粗粉砕したものを指し、重金属を多く含まないという特徴を有する。
【0016】
廃ガラスびんカレットを粒径0.15mm以下になるように粉砕したソーダ石灰ガラスの粉末はゼオライト化を進行させるため200℃以上に加熱する。耐圧容器で密閉して5MPa以上に加圧できる装置で行うとよい。実際的には200℃〜250℃で加熱処理することが望ましい。加熱時間は少なくとも6時間が必要である。本発明の方法であれば、少なくとも6時間加熱を行うことで人工ゼオライトを得ることができる。加熱時間は長時間であってもよいが、6〜12時間程度の加熱で人工ゼオライトを充分に生成することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明の実施例に用いたガラスの主な組成はSiOが63%、Na2Oが18%、CaOが13%、Al2O3が4%であった。
【0018】
<実施例1>
粉砕し粒径を0.75mm以下としたソーダ石灰ガラス350gを肉厚0.15mm、容量350mlのアルミ製容器に入れた。これをステンレス製の加圧容器に入れ、水道水を950ml添加した。加圧容器を密閉した後、液温200℃、圧力5MPaで12時間水熱反応した。その後、容器ごと徐冷した。容器内の水はPH11のアルカリ性を示す水ガラスが得られた。アルミ製容器から内部に生じた白色の固まりを取り出し、水洗、乾燥して白色の固形物を得た。
固形物を105℃で乾燥したもののかさ密度は1.38g/cmであった。水蒸気を用いた等温吸着曲線からBET法にて算定した比表面積は350m/gであった。
これを粉砕しX線回折したところ、モルデナイトを含むピークが見られた(図1)。なお、図2は得られた粉末の走査型電子顕微鏡写真である。



【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば廃ガラスびんカレットを原料として、ガラス粉末と水だけを原料として人工ゼオライトを簡易な工程で、かつ短い時間で製造することができる。また、重金属の含有量がきわめて少ない安全な人工ゼオライトが製造できる。したがって、産業上利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施例1により得られる人工ゼオライトのX線回折グラフである。
【図2】本発明実施例1により得られる人工ゼオライトの走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダ石灰ガラスと水だけを原料とし、水熱合成することを特徴とする人工ゼオライト製造方法。
【請求項2】
前記ソーダ石灰ガラスの粒径は0.15mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の人工ゼオライト製造方法。
【請求項3】
前記水熱合成の工程における加熱条件は、200℃以上300℃以下で、加熱終了後は徐冷することを特徴とする、請求項1に記載の人工ゼオライト製造方法。
【請求項4】
前記水熱合成の工程における加圧条件は、1MPa以上20MPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の人工ゼオライト製造方法。

【図1】
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【図2】
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