説明

廃タイヤ加工方法及びそれに用いる廃タイヤ加工装置

【課題】ゴム部分を短時間で容易に反転させるとともに、製造コストを安くすることが可能な廃タイヤ加工方法及びそれに用いる廃タイヤ加工装置を提供する。
【解決手段】廃タイヤ加工装置1は、廃タイヤのホイール部分を固定する固定手段2と、天井クレーン(図示せず)に吊持される支持体7と、下端にそれぞれ掛合具8が取り付けられた8本のワイヤロープ9と、ワイヤロープ9の下端を連結する環状ワイヤロープ10と、支持体7によってワイヤロープ9を介して垂下させるように支持される掛合具8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤを加工して植木鉢を製造する方法とそれに用いる加工装置に係り、特に、ゴム部分を吊り上げるようにして反転させる廃タイヤ加工方法とその加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤを再利用する場合、タイヤの外観がそのままの状態で残っていると、用途が限定されてしまう。そのため、従来、廃タイヤからホイール部分が外されゴム部分だけが公園の遊具等に用いられていた。しかし、最近では、ホイール部分を外すことなく、廃タイヤ全体を活用する方法が提案されている。そして、それに関して、既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「古タイヤを利用した植木鉢」という名称で、使い捨てられた古タイヤを利用して安価に製造することが可能な植木鉢に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示された「植木鉢」は、古タイヤの片側をホイールから外した後、反転して起立壁を形成するとともに、ホイール部分を下にして全体を塗装することによって製造されることを特徴とする。
このような構造によれば、使い捨てられた古いタイヤであっても新品同様に再生利用することができる。また、製品内に通水板を敷いて盛り土を施すことにより、植物の栽培を行うことも可能である。さらに、台座がホイールで形成されているため、風などで振動して倒れるおそれがない。
【0004】
また、特許文献2には、「植木鉢及び植木鉢製造装置」という名称で、廃タイヤのゴムの部分を反転させて製造される植木鉢と、ホイールの処分をする必要がなく、廃タイヤを簡単に植木鉢に加工することができる装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された「植木鉢製造装置」は、縦長に組み立てられた枠と、この枠の上部に着脱可能に設置されるチェーンブロックと、可動押圧棒が取り付けられたL形部材と、このL形部材が底板上に固定された押圧部からなるタイヤ加工装置と、このタイヤ加工装置の底板に固定される支持棒と,この支持棒の上端に固定される載置板とからなる載置台を備えており、可動押圧棒でタイヤの周囲を抑えた状態で、チェーンブロックを用いてホイールを持ち上げることによってタイヤを反転させる構造となっている。
このような構造によれば、廃タイヤのすべてを植木鉢の構成部材として再利用できるため、製造コストを安くすることが可能である。また、焼却処分にされる廃タイヤの量を削減し、排煙の発生量を少なくすることで、大気汚染の発生を抑えることができる。
【0005】
特許文献3には、「ホイール付き廃タイヤのタイヤ部反転方法、およびそのための廃タイヤ側面切断機とホイール付き廃タイヤのタイヤ部反転機」という名称で、車両用のホイール付き廃タイヤのリサイクルに必要となるタイヤ部の反転方法等に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された「ホイール付き廃タイヤのタイヤ部反転機」は、ホイールの通過孔を中央に有し、廃タイヤを載置可能な抜き枠台部と、この抜き枠台部が設置される機枠本体と、この機枠本体に設置され、油圧によって上下駆動される円形状の押圧板を備えており、抜き枠台部で廃タイヤの周囲を保持し、押圧板でホイールを下方へ押すことによりタイヤを反転する構造となっている。
このような構造によれば、タイヤ部の反転加工を1人の作業者が短時間で実施できるため、製造効率を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登第3018553号公報
【特許文献2】特開平7−87846号公報
【特許文献3】特開平10−156790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、古いタイヤを利用した植木鉢の形状に関する記載があるのみで、タイヤを反転させる方法に関する記載がないため、本考案の植木鉢を実際に製造することは困難である。
【0008】
特許文献2に記載されているように、ホイールを持ち上げる際に廃タイヤの切断線のやや外側を可動押圧棒で押圧する方法では廃タイヤを反転させることは難しい。また、ホイールを持ち上げる途中で、可動押圧棒で押圧されている廃タイヤのゴム部分が可動押圧棒から外れてしまい、作業が中断するおそれがあった。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された発明においては、押圧板でホイールを下方へ押す際に、抜き枠台部では廃タイヤの周囲を十分に保持できないという課題があった。また、油圧によって上下駆動される押圧板でホイールを下方へ押す構造であるため、装置全体が大掛かりなものとなってしまい、安価に製造することができないという課題があった。
【0010】
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたものであり、ゴム部分を短時間で容易に反転させるとともに、製造コストを安くすることが可能な廃タイヤ加工方法及びそれに用いる廃タイヤ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ゴム部分の側面に円形状の切り込みが設けられた廃タイヤを加工する廃タイヤ加工装置であって、上面に廃タイヤが水平に載置され、切り込みが下方を向くようにホイール部分が固定される載置台と、切り込みに掛合可能に形成される掛合具と、ワイヤロープを介して掛合具を垂下させるように支持する支持体と、この支持体を吊持するとともに上下方向へ移動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とするものである。
なお、本願明細書において、「円形状の切り込み」というときは「略円形状の切り込み」も含まれ、「廃タイヤが載置台に水平に載置される」というときは「廃タイヤが載置台に略水平に載置される」場合も含まれるものとする。
【0012】
このような構造の廃タイヤ加工装置においては、廃タイヤの切り込みに掛合具を掛合させた状態で駆動手段を稼働して支持体を上昇させると、ゴム部分は掛合具によりホイール部分に接する内周縁の近傍を内側から押し上げられる。
このとき、ゴム部分の外周縁は固定されていないため、容易に回転する。この場合、支持体の上昇に伴って、掛合具はゴム部分に対し内周縁の近傍から外周縁に向かって順々に内側から捲り上げるように作用する。
さらに、上記構造の廃タイヤ加工装置においては、掛合具がゴム部分に掛合しているため、支持体の上昇中にゴム部分から外れ難いという作用を有する。従って、加工作業が中断するおそれがない。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の廃タイヤ加工装置において、掛合具は、一の脚部にワイヤロープが連結されるU型金具と、平面視円弧状をなす棒状体と、を備え、この棒状体はU型金具の一の脚部及び他の脚部によって形成される平面に対して直交するように、他の脚部の先端に設けられることを特徴とするものである。
なお、本願明細書において、「棒状体がU型金具の一の脚部及び他の脚部によって形成される平面に対して直交する」というときは「略直交する」場合も含まれるものとする。
このような構造の廃タイヤ加工装置においては、請求項1記載の発明の作用に加えて、廃タイヤの切り込みに掛合具を掛合させた状態で駆動手段により支持体を上昇させた場合に、円弧の内側がゴム部分の内面に当接する棒状体によってU型金具の水平面内での回転が抑制されるという作用を有する。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の廃タイヤ加工装置において、掛合具及びワイヤロープを複数組備え、掛合具は、載置台に固定された廃タイヤに対し、ホイール部分を囲むとともに、円周方向に等間隔で配置されるように、ワイヤロープを介して前記支持体に支持されることを特徴とするものである。なお、本願明細書において、「円周方向に等間隔で配置される」というときは「円周方向に略等間隔で配置される」場合も含まれるものとする。
このような構造の廃タイヤ加工装置においては、廃タイヤの切り込みに掛合具を掛合させた状態で駆動手段を稼働させて支持体を上昇させた場合に、掛合具によってゴム部分が内側から廃タイヤの回転中心に向かって均等に押し上げられる。従って、廃タイヤのゴム部分が容易に反転するとともに、掛合具がゴム部分から外れ難くなるという請求項1又は請求項2に記載の発明の作用がより一層発揮される。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の廃タイヤ加工装置において、複数のワイヤロープの下端を連結する環状ワイヤロープを備えたことを特徴とするものである。
このような構造の廃タイヤ加工装置においては、請求項3に記載の発明の作用に加えて、万一、支持体を上昇させる途中で掛合具がゴム部分から外れたとしても、そのはずみでワイヤロープの下端に取り付けられた係合具が大きく振れてしまうことがないという作用を有する。
【0016】
請求項5記載の発明である廃タイヤ加工方法は、廃タイヤのゴム部分の一の側面に対してホイール部分を囲む円形状の切り込みを形成する工程と、この切り込みを下方に向けて廃タイヤのホイール部分を載置台に固定する工程と、一の脚部を切り込みへ差し込むようにしてU型金具をゴム部分に掛合させる工程と、ゴム部分に掛合させたU型金具を駆動手段によって吊り上げる工程と、を備えたことを特徴とするものである。
このような加工方法によれば、廃タイヤの切り込みに掛合させたU型金具を駆動手段によって吊り上げる工程で、ゴム部分がU型金具によりホイール部分に接する内周縁の近傍を内側から押し上げられる。このとき、ゴム部分の外周縁は固定されていないことから、容易に回転する。そして、U型金具を吊り上げていくに従って、ゴム部分はU型金具により内周縁の近傍から外周縁に向かって順々に内側から捲り上げられるようにして反転する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の廃タイヤ加工装置によれば、廃タイヤのゴム部分を短時間で容易に反転させることができる。また、構造が簡単であるため、製造コストを安くすることができる。
【0018】
本発明の請求項2記載の廃タイヤ加工装置においては、支持体を上昇させる際に掛合具のゴム部分に対する掛合状態がさらに強固なものとなるため、廃タイヤのゴム部分を短時間で容易に反転させることができるという請求項1記載の発明の効果がより一層発揮される。
【0019】
本発明の請求項3記載の廃タイヤ加工装置によれば、支持体の上昇時において、請求項2に記載の発明の場合よりもさらに掛合具がゴム部分から外れ難くなるため、廃タイヤのゴム部分を短時間で容易に反転させることができるという請求項2に記載の発明の効果がより一層発揮される。
【0020】
本発明の請求項4記載の廃タイヤ加工装置においては、請求項3に記載の発明と同様の効果を奏するとともに、万一、支持体の上昇中に掛合具がゴム部分から外れた場合でも作業者が掛合具に当たって怪我をするおそれがないため、安全である。
【0021】
本発明の請求項5記載の廃タイヤ加工方法によれば、廃タイヤのゴム部分を容易に効率良く反転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る廃タイヤ加工装置の実施例の外観斜視図である。
【図2】(a)は図1において支持体を下方から見た平面図であり、(b)はホイール固定板の平面図である。
【図3】(a)及び(b)はそれぞれ掛合具の正面図及び平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る廃タイヤ加工方法の手順を示す工程図である。
【図5】(a)はゴム部分の側面に切り込みが設けられた廃タイヤの外観斜視図であり、(b)は図5(a)の廃タイヤが載置台に固定された状態を示す縦断面図である。
【図6】(a)は本実施例の廃タイヤ加工装置に廃タイヤが取り付けられた状態を示す平面図であり、(b)は図6(a)のA−A線矢視断面図である。
【図7】(a)は図6(b)の一部を拡大して模式的に示した図であり、(b)及び(c)は従来技術の作用を説明するための模式図である。
【図8】(a)は図6(b)のA−A線矢視断面図であり、(b)はゴム部分を反転させた状態の廃タイヤの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の廃タイヤ加工装置は、植木鉢の形状に加工するために廃タイヤのゴム部分を吊り上げるようにして反転させるものである。以下、本発明の廃タイヤ加工装置及び廃タイヤ加工方法の実施例について図1乃至図8を用いて説明する。
【実施例】
【0024】
本実施例の廃タイヤ加工装置の構造について図1乃至図3を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、廃タイヤ加工装置1は、廃タイヤが略水平になるようにホイール部分を固定する固定手段2と、廃タイヤのゴムの一部を吊り上げる吊り上げ手段3と、吊り上げ手段3を上下方向へ移動させる駆動手段(図示せず)によって構成されている。なお、本実施例では、上記駆動手段として天井クレーンを用いている。
固定手段2は、地面に固定されたコンクリート製のブロック4の上面に載置台5が固定され、さらに載置台5の上面にホイール固定板6が着脱可能に取り付けられた構造となっている。また、後述するようにホイール固定板6の上面にはボルト6bが立設されている。
【0025】
吊り上げ手段3は、天井クレーン(図示せず)に吊持される支持体7と、下端にそれぞれ掛合具8が取り付けられた8本のワイヤロープ9と、ワイヤロープ9の下端を連結する環状ワイヤロープ10とからなる。
支持体7はベース部材7aの中心に棒状の取付部材7bが立設され、取付部材7bの下部とベース部材7aの間に4本の補強部材7cが設置された構造となっている。そして、取付部材7bの上端には、天井クレーンのフック11に係止するU字状の係止具12が設置されている。
また、ベース部材7aの下面には、ワイヤロープ9の上端に設けられた環状部9aに係止するU字状の係止具13が設置されている。すなわち、支持体7はワイヤロープ9を介して掛合具8を垂下させるように支持している。さらに、ワイヤロープ9の下端に設けられた環状部9bには環状ワイヤロープ10が挿通されている。
【0026】
図2(a)に示すように、ベース部材7aは平面視八角形をなす枠体14aと、枠体14aの開口部に設置される十字状の補強部材14bとからなり、係止具13は枠体14aの下面に対して円形状に略等間隔に設置されている。そして、係止具13の設置個所を結ぶことによって形成される仮想の円の直径は、ホイール部分21(図5(a)参照)の直径よりも大きく、廃タイヤ19の直径よりも小さく設定されている。
【0027】
図2(b)に示すように、ホイール固定板6には廃タイヤをボルト締めするために4本のボルト6bが立設されるとともに、載置台5にボルト締めするために4個のボルト孔6aが設けられている。そして、ボルト6bはホイール部分のボルト孔に対応する個所に配置されている。
なお、ホイール部分のボルト孔の配置は廃タイヤの種類によって異なるため、廃タイヤ加工装置1では複数種類の廃タイヤに対応できるようにボルト6bの配置が異なる複数のホイール固定板6を備えている。
【0028】
図3(a)に示すように、掛合具8は、ワイヤロープ9の環状部9bに挿通されるU型金具15と、U型金具15の両脚部に設けられたボルト孔15b,15bに挿通され開口部15aを閉じるように取り付けられる棒金具17と、円弧状の棒状体18が脚部16a,16bによって形成される平面に対して略直交するように、脚部16aの先端に取り付けられたU型金具16によって構成されている。なお、棒状体18の円弧の半径は、ホイール部分21(図5(a)参照)の半径よりも大きく、廃タイヤ19の半径よりも小さく設定されている。
また、U型金具16は脚部16a,16bに、内径がボルト孔15bよりも大きいボルト孔16c,16cがそれぞれ設けられている。さらに、U型金具16の脚部16bは棒金具17を介してU型金具15に回動自在に連結されている。
【0029】
次に、廃タイヤ加工装置1を用いて廃タイヤを加工して植木鉢を製造する方法について図5乃至図8を適宜参照しながら図4を用いて説明する。
なお、図5(b)では廃タイヤ以外の部材についてのハッチングを省略している。図6(a)ではワイヤロープ9の図示を省略し、図6(b)と図7(a)乃至図7(c)と図8(a)では廃タイヤと棒状体18以外の部材についてのハッチングを省略している。
また、図7(a)乃至図7(c)は廃タイヤ加工装置1の作用を説明するための模式図であり、図8(a)は図6(b)の状態から吊り上げ手段3を上昇させた状態を示している。さらに、図1乃至図3に示した構成要素については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0030】
図4に示すように、まず、ステップS1において、エアーソー等を用いて廃タイヤ19のゴム部分20の側面20aに対してホイール部分21を囲むように花びら状の切り込み22を入れる(図5(a)参照)。次に、ステップS2では、切り込み22が下方に向いた状態で廃タイヤ19のホイール部分21のボルト孔21aにホイール固定板6のボルト6bを挿通させる。そして、ボルト6bにナット6cを締め付けて廃タイヤ19を載置台5に固定する(図5(b)参照)。
【0031】
ステップS3では、廃タイヤ19のホイール部分21を囲むとともに円周方向へ略等間隔に配置される8個の掛合具8を廃タイヤ19に掛合させる(図6(a)参照)。すなわち、U型金具16の脚部16aを切り込み22からゴム部分20の内部へ差し込むようにして吊り下げ手段3を廃タイヤ19に取り付ける(図6(b)参照)。
【0032】
ここで、廃タイヤ加工装置1の作用について従来技術と対比しながら図7を用いて説明する。なお、図7(b)及び図7(c)はゴム部分20を固定してホイール部分21を移動させた場合のゴム部分20の挙動を説明するための図であり、図7(a)において廃タイヤ加工装置1の吊り上げ手段3の代わりに、特許文献1又は特許文献2に開示された従来技術を適用した場合に相当する。
【0033】
ステップS4において、図6(b)に示すように廃タイヤ19の切り込み22にU型金具16の脚部16aを差し込んだ状態で、図7(a)に矢印Cで示すようにU型金具16が上昇すると、U型金具16の脚部16aがゴム部分20に掛合するため、棒状体18によりゴム部分20はホイール部分21に接する内周縁20dの近傍を内側から押し上げられる。
【0034】
このとき、棒状体18は円弧の内側がゴム部分20の内面に当接することで、U型金具16が水平面内で回転しないように抑制するという作用を有する。また、ゴム部分20に対する棒状体18の上記押し上げ力は、U型金具16が廃タイヤ19に対し、ホイール部分21を囲むとともに、円周方向に略等しい間隔で配置されていることから、廃タイヤ19の回転中心に向かって均等に作用する。これらの作用により、U型金具16はゴム部分20からさらに外れ難くなる。
【0035】
なお、ゴム部分20の外周縁20cは固定されていないため、矢印Bで示すように容易に回転する。従って、U型金具16の上昇に伴い、棒状体18は内周縁20dの近傍から外周縁20cに向かって順々にゴム部分20を内側から捲り上げるように作用する。その結果、廃タイヤ19はゴム部分20の上部が完全に反転する(図8(b)参照)。
【0036】
一方、図7(b)に矢印Dで示すように、ゴム部分20の外周縁20cの近傍に押圧部材23が設置された状態でホイール部分21が下降すると、ゴム部分20は外周縁20cの近傍を押圧部材23により外側から押し上げられる。
そして、ホイール部分21がさらに下降すると、ゴム部分20は押圧部材23によって折り曲げられたような状態で矢印Eで示すように押し上げられる(図7(c)参照)。この場合、ゴム部分20の折り曲げられた部分がゴム部分20を押し上げる際の抵抗として作用する。
【0037】
なお、押圧部材23を内周縁20dから離れる方向に移動させれば、ゴム部分20の折り曲げられた状態が緩和されるため、ゴム部分20の折り曲げられた部分による上述の抵抗を弱めることができる。しかし、押圧部材23はゴム部分20に掛合しておらず、押圧部材23がゴム部分20を押し上げる力は両者の摩擦によって発生することから、押圧部材23を内周縁20dから離れる方向に移動させると、ゴム部分20を押し上げる力も弱まってしまう。
また、ゴム部分20は押圧部材23によって外周縁20cの近傍を外側から押圧されており、外周縁20cが回転可能な状態となっていないため、押圧部材23でゴム部分20を押し上げるだけでは、外周縁20cは容易に反転しない。
【0038】
このように、廃タイヤ加工装置1によれば、廃タイヤ19のゴム部分20を容易に反転させることができる。また、U型金具16の脚部16aがゴム部分20に掛合し、外れ難いため、ゴム部分20の反転作業が中断するおそれがない。従って、作業効率が良い。なお、廃タイヤ加工装置1は構造が簡単であるため、安価に製造することが可能である。
【0039】
さらに、廃タイヤ加工装置1では、ワイヤロープ9の下端が環状ワイヤロープ10で連結されていることから、ゴム部分20の反転作業の途中で、万一、U型金具16がゴム部分20から外れたとしても、そのはずみで掛合具8が大きく振れてしまうおそれがない。従って、作業者が掛合具8に当たって怪我をする心配がなく、安全である。
【0040】
ステップS4の工程により、ゴム部分20の上部が完全に反転させられた廃タイヤ19は、ステップS5において、載置台5から取り外され、ステップS6において、表面に塗装が施される。
このようにして加工された廃タイヤ19においては、ホイール部分21が植木鉢のステイ部として機能し、ゴム部分20のうち、反転された上部と反転されなかった下部がそれぞれ植木鉢のポット部及び脚部20b(図8(b)参照)として機能する。従って、そのまま植木鉢として再利用することが可能である。
【0041】
なお、本発明の廃タイヤ加工装置の構造は本実施例に示した場合に限定されるものではない。例えば、吊り上げ手段3を上下方向へ移動させる駆動手段として、天井クレーンの代わりにチェーンブロックなどを用いても良い。
また、係止具13の設置個所を結ぶことによって形成される仮想の円の直径は、本実施例に示した場合に限定されず、適宜変更可能である。ただし、掛合具8をゴム部分20に掛合させた場合にワイヤロープ9が鉛直方向となす角度が大きいと、ゴム部分20を吊り上げる際に大きな力が必要となる。従って、係止具13は、掛合具8をゴム部分20に掛合させた場合にワイヤロープ9が鉛直方向と平行をなすように、ベース部材7aの下面に設置されることが望ましい。
さらに、ゴム部分20の側面20aに形成される切り込み22は花びら状に限らず、例えば、単なる円形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
請求項1乃至請求項4に記載の廃タイヤ加工装置と請求項5に記載の廃タイヤ加工方法は、廃タイヤを用いて植木鉢を製造する場合に限らず、廃タイヤを各種の用途で再利用するためにゴム部分を反転させる必要がある場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…廃タイヤ加工装置 2…固定手段 3…吊り上げ手段 4…ブロック 5…載置台 6…ホイール固定板 6a…ボルト孔 6b…ボルト 6c…ナット 7…支持体 7a…ベース部材 7b…取付部材 7c…補強部材 8…掛合具 9…ワイヤロープ 9a,9b…環状部 10…環状ワイヤロープ 11…フック 12,13…係止具 14a…枠体 14b…補強部材 15,16…U型金具 15a…開口部 15b…ボルト孔 16a,16b…脚部 16c…ボルト孔 17…棒金具 18…棒状体 19…廃タイヤ 20…ゴム部分 20a…側面 20b…脚部 20c…外周縁 20d…内周縁 21…ホイール部分 21a…ボルト孔 22…切り込み 23…押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム部分の側面に円形状の切り込みが設けられた廃タイヤを加工する廃タイヤ加工装置であって、
上面に前記廃タイヤが水平に載置され、前記切り込みが下方を向くように前記ホイール部分が固定される載置台と、
前記切り込みに掛合可能に形成される掛合具と、
ワイヤロープを介して前記掛合具を垂下させるように支持する支持体と、
この支持体を吊持するとともに上下方向へ移動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする廃タイヤ加工装置。
【請求項2】
前記掛合具は、
一の脚部に前記ワイヤロープが連結されるU型金具と、
平面視円弧状をなす棒状体と、
を備え、
この棒状体は前記U型金具の前記一の脚部及び他の脚部によって形成される平面に対して直交するように、前記他の脚部の先端に設けられることを特徴とする請求項1に記載の廃タイヤ加工装置。
【請求項3】
前記掛合具及び前記ワイヤロープを複数組備え、
前記掛合具は、
前記載置台に固定された前記廃タイヤに対し、前記ホイール部分を囲むとともに、円周方向に等間隔で配置されるように、前記ワイヤロープを介して前記支持体に支持されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃タイヤ加工装置。
【請求項4】
前記複数のワイヤロープの下端を連結する環状ワイヤロープを備えたことを特徴とする請求項3に記載の廃タイヤ加工装置。
【請求項5】
廃タイヤのゴム部分の一の側面に対してホイール部分を囲む円形状の切り込みを形成する工程と、
この切り込みを下方に向けて前記廃タイヤの前記ホイール部分を載置台に固定する工程と、
一の脚部を前記切り込みへ差し込むようにしてU型金具を前記ゴム部分に掛合させる工程と、
前記ゴム部分に掛合させた前記U型金具を駆動手段によって吊り上げる工程と、
を備えたことを特徴とする廃タイヤ加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71366(P2013−71366A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213032(P2011−213032)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【特許番号】特許第4908656号(P4908656)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(511189805)株式会社トータルホーム山口 (1)
【Fターム(参考)】